特許第6835521号(P6835521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835521
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】排気ターボ過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   F02B39/00 B
   F02B39/00 D
   F02B39/00 H
   F02B39/00 S
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-192491(P2016-192491)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-53836(P2018-53836A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】澤下 真人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 章
(72)【発明者】
【氏名】毛利 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】小西 基樹
(72)【発明者】
【氏名】浜田 翔一
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−203379(JP,A)
【文献】 特開2008−196327(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/103570(WO,A1)
【文献】 特開平09−177557(JP,A)
【文献】 特開2015−165108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F01D 25/24
F01P 7/14 − 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平状の回転軸で連結されて同心に回転するタービン及びコンプレッサと、前記タービンが配置されたタービン室と、前記コンプレッサが配置されたコンプレッサ室と、前記回転軸を回転自在に保持する軸受け部とを有しており、
前記タービン室はタービンハウジングに形成されていて、前記タービンハウジングに、前記タービン室と連通すると共に前記タービンを外周外側から囲うタービン側スクロール空間と、前記タービン側スクロール空間を囲う冷却水ジャケットとが形成されている一方、
前記軸受け部は中間ハウジングに形成されており、前記タービンハウジングと中間ハウジングとが一体に鋳造されている構成であって、
前記軸受け部とタービンハウジングとの間に、下方に開口すると共に前記コンプレッサ室の側に入り込んだ凹入部を有するタービン側空洞部が形成されている一方、
前記冷却水ジャケットは、前記タービン側スクロール空間の外周方向に長く延びる隔壁により、前記中間ハウジングの側に位置したインサイドジャケットと、前記中間ハウジングと反対側に位置したアウトサイドジャケットとに区分されて、前記インサイドジャケットは、前記タービン側スクロール空間に向けて凹むように湾曲した断面形状になっており、当該インサイドジャケットの内周部は、前記アウトサイドジャケットの内周部よりも前記回転軸の側に位置しつつ前記タービン側空洞部とタービン側スクロール空間との間の部位まで入り込んでおり
更に、前記タービン側空洞部における凹入部の箇所において、前記インサイドジャケットの内径は前記タービンの外径及び前記凹入部の外径よりも小径であり、かつ、前記タービン側空洞部は、前記インサイドジャケットの内面のうち前記タービン側スクロール空間に最も近い部分よりも前記コンプレッサ室の側に位置している、
排気ターボ過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動車用等の内燃機関に設ける排気ターボ過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排気ターボ過給機は、排気ガスで回転するタービンによってコンプレッサを回転させるものであり、タービンとコンプレッサとは回転軸によって連結されており、タービン室やコンプレッサ室を有するハウジングを備えている。また、タービンの外周外側にはタービン側スクロール空間が形成されている一方、コンプレッサの外周外側には、コンプレッサ側スクロール空間が形成されている。
【0003】
タービンとコンプレッサとは回転軸で連結されており、例えば特許文献1に開示されているように、回転軸は、一般に、オイル層を介して軸受け部に配置されたフローティングメタルで回転自在に保持されていることが多く、従って、軸受け部にはオイルが連続的に供給されており、軸受け部を経由したオイルは、軸受け部の下方に流下して管路で機関本体に戻るようになっている。また、軸受け部を挟んでタービンの側とコンプレッサの側とにはオイル切り用等の空洞部が形成されており、オイルが回転軸を伝ってタービンの側に流れたりコンプレッサの側に流れたりすることを阻止している。
【0004】
排気ターボ過給機を構成するハウジングは、耐熱性や加工性の点から、鋳鋼製のタービンハウジングとコンプレッサハウジング、及び両者の間に位置して軸受け部が形成されている中間ハウジング(軸受けハウジング)とで構成されていることが多く、特許文献1には、タービンハウジングに、タービン側スクロール空間を囲う冷却水ジャケットを形成し、更に、タービンハウジングと中間ハウジングとの重合部に、断熱用の空室部を環状に形成することが開示されている。
【0005】
上記のとおり、ハウジングは鋳鋼品が一般的であるが、軽量化のためにアルミ化することも考えられており、その例として特許文献2には、タービンタービンと中間ハウジングとコンプレッサハウジングとの全体をアルミ鋳造品として一体化して、内部に冷却水ジャケットを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭58−152528号のマイクロフィルム
【特許文献2】国際公開WO2014/103570
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、タービンスクロール空間と中間ハウジングとの間に空室部を形成すると、タービンハウジングの熱が軸受け部に伝わることを抑制できるが、空室部は軸受け部よりもかなり外周外側に位置しているため、軸受け部に対する断熱性は必ずしも高くないといえる。
【0008】
また、タービンハウジングと中間ハウジングとをアルミ鋳造品として一体化した場合は、ループ構造の空室部を形成することは不可能となり、従って、特許文献1は、タービンハウジングと中間ハウジングとを一体化したものには適用できないという不具合もある。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の排気ターボ過給機は、
「水平状の回転軸で連結されて同心に回転するタービン及びコンプレッサと、前記タービンが配置されたタービン室と、前記コンプレッサが配置されたコンプレッサ室と、前記回転軸を回転自在に保持する軸受け部とを有しており、
前記タービン室はタービンハウジングに形成されていて、前記タービンハウジングに、前記タービン室と連通すると共に前記タービンを外周外側から囲うタービン側スクロール空間と、前記タービン側スクロール空間を囲う冷却水ジャケットとが形成されている一方、
前記軸受け部は中間ハウジングに形成されており、前記タービンハウジングと中間ハウジングとが一体に鋳造されている
という基本構成である。
【0011】
そして、上記基本構成において、
「前記軸受け部とタービンハウジングとの間に、下方に開口すると共に前記コンプレッサ室の側に入り込んだ凹入部を有するタービン側空洞部が形成されている一方、
前記冷却水ジャケットは、前記タービン側スクロール空間の外周方向に長く延びる隔壁により、前記中間ハウジングの側に位置したインサイドジャケットと、前記中間ハウジングと反対側に位置したアウトサイドジャケットとに区分されて、前記インサイドジャケットは、前記タービン側スクロール空間に向けて凹むように湾曲した断面形状になっており、当該インサイドジャケットの内周部は、前記アウトサイドジャケットの内周部よりも前記回転軸の側に位置しつつ前記タービン側空洞部とタービン側スクロール空間との間の部位まで入り込んでおり、
更に、前記タービン側空洞部における凹入部の箇所において、前記インサイドジャケットの内径は前記タービンの外径及び前記凹入部の外径よりも小径であり、かつ、前記タービン側空洞部は、前記インサイドジャケットの内面のうち前記タービン側スクロール空間に最も近い部分よりも前記コンプレッサ室の側に位置している、
という特徴を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明において、軸受け部とタービンハウジングとの間の空洞部はオイル切りのために従来から存在しており、下方に開口しているため、中間ハウジングとタービンハウジングとをアルミ鋳造品として一体化しても、製造上の問題は生じない。
【0014】
そして、空洞部とタービン側スクロール空間との間に冷却水ジャケットが介在しているため、タービン側スクロール空間の部位の熱が軸受け部に伝わることを、冷却水と空洞部とで抑制できる。すなわち、本願発明では、冷却水と空洞部とのダブル効果により、タービンから軸受け部へ伝熱を著しく抑制できる。
特に、タービン側空洞部に凹入部を形成しているため、タービン側空洞部による遮熱性が一層向上して、軸受け部33の熱害防止効果をより万全なものとすることができる。
【0015】
従って、タービンハウジングと中間ハウジングとを軽金属の鋳造品として一体化して排気ターボ過給機を軽量化することを、軸受け部の熱害を防止した状態で実現することができる。これにより、ハウジングの軽量化を促進して燃費の向上に大きく貢献できる。
【0016】
空洞部に凹入部を形成しているため、空洞部による遮熱性が一層向上する利点がある。また、冷却水ジャケットの冷却水入口を下端部に設けて、冷却水が冷却水ジャケットを下から上に流れる構成を採用すると、昇温していない冷却水で軸受け部とタービンハウジングとを遮断できるため、軸受け部に対する遮熱性を一層向上できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の縦断正面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】(A)はハウジングを前から見た斜視図、(B)はハウジングを(A)のB−B視方向から見た(シリンダヘッドの側から見た)背面図である。
図4】(A)は図2のA−A視断面図、(B)は図2のB−B視断面図である。
図5】冷却水の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1).実施形態の概要とタービンハウジング
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、概要を説明する。本実施形態では、方向を明確にするため前後・左右の文言を使用するが、これは、回転軸の長手方向を左右方向として、これと直交した水平方向を前後方向として、シリンダヘッドの排気側面を背にして向いた方向を前としている。念のため、図3に方向を明示している。
【0019】
図1に示すように、排気ターボ過給機は、ブレード式のタービン1及びコンプレッサ2を備えており、両者は水平状に配置された回転軸3の一端部と他端部とに固定されている。また、排気ターボ過給機は、タービンハウジング4とコンプレッサハウジング5、及び、両者の間に位置した中間ハウジング6とを有しており、タービンハウジング4と中間ハウジング6とは、アルミ等の軽金属の鋳造によって一体に製造されている。コンプレッサハウジング5は、アルミ等の軽金属のダイキャスト品又は鋳造品である。
【0020】
タービンハウジング4には、タービン1が回転自在に配置されたタービン室7と、タービン室7の外周部に連通したタービン側スクロール空間8とが形成されている。タービン側スクロール空間8は、始端の断面積が終端の断面積よりも大きくて環状に近い渦状になっており、その始端に、図5に模式的に示すように(図3も参照)、タービン側スクロール空間8の始端部の接線方向に延びる排気ガス導入通路9が連通している。
【0021】
従って、タービンハウジング4は、図3,4に示すように、排気ガス導入通路9が形成された入口筒部4aと、タービン側スクロール空間8が形成されたタービン側スクロール部4bとを有しており、入口筒部4aの先端に、シリンダヘッド11(又は排気マニホールド)にボルト(及びナット)で固定されるフランジ12を形成している。図4に示すように、本実施形態では、シリンダヘッド11の排気側面11aは、上に行くほど鉛直線13との間隔が広がるように少し後傾姿勢になっている。
【0022】
排気ガス導入通路9からタービン側スクロール空間8に流入した排気ガスは、タービン側スクロール空間8の周方向に流れながらタービン1を回転駆動しつつ、軸方向に排出される。従って、タービンハウジング4には、図1のとおり、排気ガスを排出する筒状の排気出口14が、回転軸3の軸心方向に向けて開口しており、この排気出口14に排気管又は触媒ケースが接続される。
【0023】
また、図1に部分的に示すように、タービンハウジング4のうち排気出口14の近くには、排気ガス導入通路9から排気出口14に排気ガスを逃がすバイパス通路15が形成されている。バイパス通路15は排気出口14の上に位置している。そこで、図3から容易に理解できるように、タービンハウジング4に、排気ガス導入通路9と排気出口14とに繋がった拡張部16を形成し、この拡張部16に、バイパス通路15と、これに連通したウエストゲートバルブ配置空間17(図1参照)とを形成している。
【0024】
ウエストゲートバルブ配置空間17は、排気出口14に連通して回転軸3の軸心方向に開口しており、ウエストゲートバルブは、排気出口14の開口方向から挿入されて、支軸によってタービンハウジング4に連結される。図3に符号18で示すのは、支軸が挿通される穴である。
【0025】
タービンハウジング4には、更に、冷却水による冷却手段として、タービン側スクロール空間8及び排気ガス導入通路9を中間ハウジング6の側から囲うインサイドジャケット19と、タービン側スクロール空間8及び排気ガス導入通路9を排気出口14の側から囲うアウトサイドジャケット20とが、タービン側スクロール空間8及び排気ガス導入通路9に向けて凹むように湾曲した断面形状に形成されており、これらインサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20とは、隔壁21によって左右に分断されている。従って、隔壁21は、排気出口14とスクロール部とを左右に(軸方向)に2つ割りする面に沿って延びている。
【0027】
図3(B)に示すように、インサイドジャケット19及びアウトサイドジャケット20は、入口筒部10の後面に開口している。また、図5から理解できるように、インサイドジャケット19及びアウトサイドジャケット20は、排気ガス導入通路9の箇所では1本の流れになっているが、タービン側スクロール空間8の箇所では環状になっている。
【0028】
両ジャケット19,20の通水態様は、幾つかのパターンが有り得る。図5(A)に示す例では、インサイドジャケット19からアウトサイドジャケット20に冷却水が流れるように設定している。すなわち、隔壁21を、フランジ12と反対側の先端部においてある程度の寸法だけ除去することにより、タービンハウジング4の先端部に、冷却水がインサイドジャケット19からアウトサイドジャケット20に向けて流れる連通路22を形成している。従って、インサイドジャケット19の後端が冷却水入口45となり、アウトサイドジャケット20の後端が冷却水出口46になっている。
【0029】
図5(B)では、インサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20とを独立した流路として、それぞれ下部に冷却水入口45を設けている。冷却水出口46は、両ジャケット19,20の後端に開口させている。両ジャケット19,20を独立した流路とした場合、インサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20との下端部を連通させて、この連通部に冷却水入口を設けてもよい。
【0030】
これらの場合は、冷却水は、タービン側スクロール空間8の箇所では二股に分かれて上昇し、それから一つの流れに合流して排気ガス導入通路9の後端に向かい、冷却水出口46から流出する。冷却水出口46は、シリンダヘッド11に形成されているジャケットに連通させてもよいし、別途、パイプを接続してもよい。
【0031】
この実施形態では、冷却水は、重力に抗して上昇するため、インサイドジャケット19及びアウトサイドジャケット20の隅々まで広がりながら上昇する傾向を呈する。このため、インサイドジャケット19及びアウトサイドジャケット20の全体に冷却水を均等に行き渡らせることができて、冷却性能に優れている。また、インサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20とで流量などを異ならせることができるため、きめ細かい冷却を実現できる。更に、冷却水中に気泡が存在しても、気泡を速やかに排除することができる。
【0032】
図2に示すように、アウトサイドジャケット20は、タービン側スクロール空間8の周囲を、概ね1/4程度の範囲で囲っている。インサイドジャケット19は、アウトサイドジャケット20と対称に近い形態になっているが、インサイドジャケット19の内周端は、タービンハウジング4の貫通穴(内周穴)23の近くまで延ばしている。インサイドジャケット19と貫通穴23との間隔寸法は、例えば、インサイドジャケット19の箇所でのタービン側スクロール部4bの肉厚t(図2参照)と同じ程度に設定できる。なお、回転軸3のうち貫通穴23に嵌まっている箇所には複数の環状溝24が形成されており、環状溝24にオイルシール24aが嵌まっている。
【0033】
(2).コンプレッサハウジング・中間ハウジング
図1,2に示すように、コンプレッサハウジング5には、コンプレッサ2が回転自在に配置されたコンプレッサ室26と、コンプレッサ室26の外側に位置したコンプレッサ側スクロール空間27とが形成されており、両者は連通路28で繋がっている。コンプレッサ側スクロール空間27は環状に近い状態に形成されており、始端から終端に向けて断面積が大きくなっている。コンプレッサ側スクロール空間27の終端は接線方向に向かって開口しており、これに、吸気吐出口29が接続されている。図1に符号30で示すのは、ダイヤフラム式アクチェータの取り付けボスである。
【0034】
コンプレッサハウジング5には、蓋部材31が中間ハウジング6の側から嵌まっており、コンプレッサハウジング5と蓋部材31とでコンプレッサ側スクロール空間27が形成されている。また、コンプレッサ室26及び連通路28は、蓋部材31と中間ハウジング6との間に形成されている(従って、正確には、コンプレッサハウジング5が、本体部と蓋部材31とで構成されている。)。
【0035】
図1,2に示すように、中間ハウジング6には、回転軸3が回転自在に嵌まる軸受け部33が形成されており、軸受け部33に、オイル層を介して中空のフローティングメタル34が配置されており、回転軸3の中途部が、フローティングメタル34の内部に回転自在に嵌まっている。フローティングメタル34は、軸受け部33に下方から嵌着又はねじ込んだストッパー35によって回転不能に保持されている。
【0036】
軸受け部33の上部の左右中間部には、上下方向に貫通したオイル入口36が形成されている。また、軸受け部33の下方には、空洞状のオイル出口空間37が形成されている。図5(A)に示すように、オイル出口空間37は、側面視で半円状の形態を成している。
【0037】
更に、軸受け部33は、タービンハウジング4の側に位置したタービン側空洞部38と、コンプレッサハウジング5の側に位置したコンプレッサ側空洞部39とにより、タービンハウジング4及びコンプレッサハウジング5から分断されている。これら空洞部38,39は、下向きに開口したオイル出口空間37と連通している。
【0038】
タービン側空洞部38とタービン側スクロール空間8との間に、インサイドジャケット19の内周部が入り込んでいる。また、両空洞部38,39には、軸受け部33の左右中間部の側に入り込んだ凹入部38a,39aが形成されている。従って、軸受け部33の左右端部は、空洞部38,39で包まれた突出部になっている。
図2から理解できるように、タービン側空洞部38の凹入部38aの箇所において、インサイドジャケット19の内径19aは、タービン1の外径1a及び凹入部38aの外径38cよりも小径になっており、かつ、図2に記入した点線38b,19cの対比から明らかなように、 タービン側空洞部38は、タービン側スクロール空間19の内面19b(タービン側スクロール空間19に向いた面)のうちタービン側スクロール空間8に最も近い部分よりもコンプレッサハウジング6の側に位置している。
【0039】
図1,2に示すように、軸受け部33のうちコンプレッサハウジング5の側の端部には、金属製等の第1オイルシール40を固定しており、第1オイルシール40とフローティングメタル34との間には若干の隙間が空いている。なお、第1オイルシール40の断面表示(ハッチング)は省略している。また、中間ハウジング6の左端部は大きく開口しており、この大径の開口部に、金属製等のリテーナリング41を固定し、リテーナリング41と第1オイルシール40との間に、第2オイルシール41aを配置している。第2オイルシール41aは第1オイルシール40に固定されている。回転軸3の端部は、ナット42でコンプレッサ2に固定されている。
【0040】
図1に示すように、中間ハウジング6のうちタービンハウジング4と反対側の端部は、コンプレッサハウジング5によって外側から抱持されており、両者の間には、弾性を有するC型のストッパーリング43が嵌まっており、これにより、両者は抜け不能に保持されている。
【0041】
(3).まとめ
以上の構成において、冷却水をインサイドジャケット19,アウトサイドジャケット20に流すことにより、タービン側スクロール部4bや入口筒部4aを冷却できるため、タービンハウジング4と中間ハウジング6とをアルミ製の一体鋳造品とした場合であっても、過剰な熱変形や溶損を防止した状態で、タービン1の円滑な回転を確保できる。従って、燃費向上に貢献できるハウジングの軽量化を大きく前進させることができる。
【0042】
そして、軸受け部33は回転軸3を円滑に回転保持する機能を担うものであり、過度に熱膨張すると回転軸3のガタつきが生じるなどの不具合が生じるおそれがあるが、本実施形態では、軸受け部33とタービン側スクロール空間8との間に、インサイドジャケット19とタービン側空洞部38とが存在するため、タービンハウジング4と中間ハウジング6とを一体化したものでありながら、タービンハウジング4から軸受け部33の熱の伝達を著しく抑制して、軸受け部33の過剰な昇温を防止できる。これにより、回転軸3の円滑な回転を確保しつつ、排気ターボ過給機の軽量化を促進できる。
【0043】
実施形態のように、タービン側空洞部38に凹入部38aを形成すると、タービン側空洞部38による遮熱性が一層向上するため、軸受け部33の熱害防止効果をより万全なものとすることができる。
【0044】
また、インサイドジャケット19を貫通穴23に近づけると、タービンハウジング4の内周部の昇温も抑制できるため、タービンハウジング4から回転軸3への伝熱も抑制できる。この面でも、回転軸3の円滑な回転の確保に貢献できる。
【0045】
なお、実施形態では、インサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20とは、タービンハウジング4を上部と前部と下部との三方から囲う隔壁21で左右に分断されているため、タービンハウジング4は高い強度を確保することができると共に、インサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20との流路単純化するため、冷却水の淀み現象を生じることなく、インサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20との全体に冷却水をまんべんなく流すことができる。
【0046】
従って、いびつな熱変形を防止して、熱ひずみも大幅に抑制できる。その結果、高い信頼性・耐久性を得ることができる。入口筒部10及びスクロール部は、中間ハウジング6の側よりも排気出口14の側の方が高温になるが、インサイドジャケット19からアウトサイドジャケット20に冷却水を流すと、タービンハウジング4から中間ハウジング6への伝熱性を大幅に抑制できるため、軸受け部33の伝熱防止の面で好適である。インサイドジャケット19とアウトサイドジャケット20とに冷却水を別々に流した場合も、軸受け部33への伝熱阻止効果に優れている。
【0047】
上記の実施形態では、入口筒部4aにもジャケット19,20を形成したが、タービン側スクロール部4bだけに環状のジャケット19,20を形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明は、排気ターボ過給機に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 タービン
2 コンプレッサ
3 回転軸
4 タービンハウジング
5 コンプレッサハウジング
6 中間ハウジング
7 タービン室
8 タービン側スクロール空間
9 排気ガス導入通路
14 排気出口
19 インサイドジャケット
19a インサイドジャケットの内径
19b インサイドジャケットの内面
20 アウトサイドジャケット
21 隔壁
33 軸受け部
38 軸受け部とタービンハウジングとの間のタービン側空洞部
38a タービン側空洞部の凹入部
38c 凹入部の外径
図1
図2
図3
図4
図5