(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ドーム状膜体の側部の内面には、前記ドーム状膜体の軸線方向と垂直な断面において前記連通口と対向する位置に、前記ドーム状膜体の軸線方向に延びる凸部が形成されている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニットについて、図面を用いて説明する。
なお、以下では、本発明に係る液圧制御ユニットを含むブレーキシステムが、四輪車に搭載されている場合について説明しているが、本発明に係る液圧制御ユニットを含むブレーキシステムは、四輪車以外の他の車両(二輪車、トラック、バス等)に搭載されてもよい。また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係る液圧制御ユニットを含むブレーキシステムは、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分には、同一の符号を付している、又は、符号を付すことを省略している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係るブレーキシステムを説明する。
<ブレーキシステムの構成及び動作>
実施の形態1に係るブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係るブレーキシステムの、システム構成の例を示す図である。
【0017】
図1に示されるように、ブレーキシステム1は、車両100に搭載され、マスタシリンダ11とホイールシリンダ12とを連通させる主流路13と、主流路13のブレーキ液を逃がす副流路14と、副流路14にブレーキ液を供給する供給流路15と、有する液圧回路2を含む。液圧回路2には、ブレーキ液が充填されている。
【0018】
マスタシリンダ11には、ブレーキシステム1の入力部の一例であるブレーキペダル16と連動して往復動するピストン(図示省略)が内蔵されている。ブレーキペダル16とマスタシリンダ11のピストンとの間には、倍力装置17が介在しており、ピストンには、使用者の踏力が倍力されて伝達される。ホイールシリンダ12は、ブレーキキャリパ18に設けられている。ホイールシリンダ12のブレーキ液の液圧が増加すると、ブレーキキャリパ18のブレーキパッド19がロータ20に押し付けられて、車輪が制動される。
【0019】
副流路14の上流側端部は、主流路13の途中部13aに接続され、副流路14の下流側端部は、主流路13の途中部13bに接続されている。また、供給流路15の上流側端部は、マスタシリンダ11に連通し、供給流路15の下流側端部は、副流路14の途中部14aに接続されている。
ここで、副流路14の上流側端部が、本発明の第2上流側端部に相当する。副流路14の下流側端部が、本発明の第1下流側端部に相当する。主流路13の途中部13bが、本発明の第2途中部に相当する。
主流路13の途中部13aが、本発明の第3途中部に相当する。供給流路15の上流側端部が、本発明の第1上流側端部に相当する。供給流路15の下流側端部が、本発明の第2下流側端部に相当する。副流路14の途中部14aが、本発明の第1途中部に相当する。
【0020】
主流路13のうちの、途中部13bと途中部13aとの間の領域(途中部13bを基準とするホイールシリンダ12側の領域)には、込め弁(EV)31が設けられている。副流路14のうちの、上流側端部と途中部14aとの間の領域には、弛め弁(AV)32が設けられている。副流路14のうちの、弛め弁32と途中部14aとの間の領域には、アキュムレータ33が設けられている。副流路14のうちの、途中部14aと下流側端部との間の領域には、ポンプ34が設けられている。ポンプ34の吸込側は、途中部14aに連通し、ポンプ34の吐出側は、副流路14の下流側端部に連通する。込め弁31は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁32は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0021】
主流路13のうちの、途中部13bを基準とするマスタシリンダ側の領域には、第1切換弁(USV)35が設けられている。供給流路15には、第2切換弁(HSV)36と、ダンパユニット37と、が設けられている。ダンパユニット37は、供給流路15のうちの、第2切換弁36と下流側端部との間の領域に設けられている。第1切換弁35は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。第2切換弁36は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0022】
込め弁31と弛め弁32とアキュムレータ33とポンプ34と第1切換弁35と第2切換弁36とダンパユニット37とは、主流路13、副流路14、及び供給流路15を構成するための流路が内部に形成されている基体51に設けられている。各部材(込め弁31、弛め弁32、アキュムレータ33、ポンプ34、第1切換弁35、第2切換弁36及びダンパユニット37)が、1つの基体51に纏めて設けられていてもよく、また、複数の基体51に分かれて設けられていてもよい。
【0023】
少なくとも、基体51と、基体51に設けられている各部材と、制御器(ECU)52と、によって、液圧制御ユニット50が構成される。液圧制御ユニット50において、込め弁31、弛め弁32、ポンプ34、第1切換弁35、及び第2切換弁36の動作が制御器52によって制御されることで、ホイールシリンダ12のブレーキ液の液圧が制御される。
【0024】
制御器52は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御器52は、基体51に取り付けられていてもよく、また、他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御器52の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0025】
制御器52は、例えば、周知の液圧制御動作(ABS制御動作、ESP制御動作等)に加えて、以下の液圧制御動作を実施する。
込め弁31が開放され、弛め弁32が閉鎖され、第1切換弁35が開放され、且つ、第2切換弁36が閉鎖されている状態で、車両100のブレーキペダル16が操作された際に、ブレーキペダル16のポジションセンサの検出信号及び液圧回路2の液圧センサの検出信号から、液圧回路2の液圧の不足又は不足の可能性が検知されると、制御器52は、アクティブ増圧制御動作を開始する。
【0026】
アクティブ増圧制御動作において、制御器52は、込め弁31を開放状態のままにすることで、主流路13の途中部13bからホイールシリンダ12へのブレーキ液の流動を可能にする。また、制御器52は、弛め弁32を閉鎖状態のままにすることで、ホイールシリンダ12からアキュムレータ33へのブレーキ液の流動を制限する。また、制御器52は、第1切換弁35を閉鎖することで、マスタシリンダ11からポンプ34を介することなく主流路13の途中部13bに至る流路のブレーキ液の流動を制限する。また、制御器52は、第2切換弁36を開放することで、マスタシリンダ11からポンプ34を介して主流路13の途中部13bに至る流路のブレーキ液の流動を可能にする。また、制御器52は、ポンプ34を駆動させることで、ホイールシリンダ12のブレーキ液の液圧を増加させる。
【0027】
液圧回路2の液圧の不足の解消又は回避が検知されると、制御器52は、第1切換弁35を開放させ、第2切換弁36を閉鎖させ、且つ、ポンプ34の駆動を停止することで、アクティブ増圧制御動作を終了する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態1に係るブレーキシステムの、システム構成の他の例を示す図である。
ブレーキシステム1は、
図2に示されるような、倍力装置17が省略されたブレーキシステム1であってもよい。このような倍力装置17が省略されたブレーキシステム1の場合、使用者のブレーキペダル16の踏力は、倍力装置17で倍力されず、直接、マスタシリンダ11のピストンに伝達されることとなる。このため、使用者がブレーキペダル16を踏み込もうとした際、マスタシリンダ11のピストンを介して、ブレーキペダル16には、液圧回路2内のブレーキ液の液圧が反力として作用する。
【0029】
したがって、使用者がブレーキペダル16を踏み込んでからアクティブ増圧制御動作が開始されるまでの期間において、ブレーキペダル16に伝わる液圧回路2内のブレーキ液のこの反力により、使用者は、倍力装置17を備えたブレーキシステム1と比べ、ブレーキペダル16を踏み込むことができない。つまり、倍力装置17が省略されたブレーキシステム1の場合、使用者がブレーキペダル16を踏み込んでからアクティブ増圧制御動作が開始されるまでの期間において、倍力装置17を備えたブレーキシステム1と比べ、ブレーキペダル16の踏み込み量が小さくなってしまう。
【0030】
このため、倍力装置17が省略されたブレーキシステム1である場合には、ダンパユニット37が、供給流路15のうちの、上流側端部と第2切換弁36との間の領域に設けられているとよい。このような位置にダンパユニット37を設けることにより、使用者がブレーキペダル16を踏み込んだ際、ブレーキ液がダンパユニット37に流れ込むことができ、ブレーキペダル16に伝わる液圧回路2内のブレーキ液の反力が低減する。したがって、使用者がブレーキペダルを踏み込んだ際、倍力装置17を備えたブレーキシステム1と同様のブレーキペダル16の踏み込み量が得られる。このため、使用者は、倍力装置17が省略されたブレーキシステム1において、倍力装置17を備えたブレーキシステム1と同様の使用感を得ることができる。
【0031】
ブレーキシステム1は、
図2に示されるように、副流路14のうちの、途中部14aと下流側端部との間の領域に、複数のポンプ34が並列に接続されているとよい。そのように構成されることで、個々のポンプ34からのブレーキ液の吐出量を低減することができる。また、ポンプ34のそれぞれのブレーキ液の吐出タイミングをずらすこともできる。このため、
図2のように複数のポンプ34を並列に接続して設けることにより、第2切換弁36が開いた状態でポンプ34が駆動されることで生じる脈動を抑制することができる。なお、
図1で示した倍力装置17を備えたブレーキシステム1において、
図2のように複数のポンプ34を並列に接続して設けても勿論よい。
【0032】
<ダンパユニットの詳細>
実施の形態1に係るブレーキシステムのダンパユニットの詳細について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係るブレーキシステムの、ダンパユニットの搭載状態を示す部分断面図である。また、
図4は、
図3におけるA−A線での断面図である。なお、
図3及び
図4では、ダンパユニット37以外の部材のみが、断面で示されている。
図5及び
図6は、本発明の実施の形態1に係るブレーキシステムの、ダンパユニットの詳細を示す断面図である。なお、
図5は、
図3におけるB−B線での断面図であり、
図6は、
図5におけるC−C線での断面図である。
【0033】
図3及び
図4に示されるように、基体51には、収容室61が形成されている。収容室61は、基体51の外壁に形成されている有底穴である。また、基体51には、収容室61とポンプ34の吸込側との間を連通させる内部流路62が形成されている。内部流路62は、連通口61aを介して収容室61に連通する。この内部流路62は、供給流路15の一部を構成するものである。つまり、収容室61には、ブレーキ液が流入する。なお、連通口61aは、収容室61の側部に形成されていてもよく、また、底部に形成されていてもよい。
【0034】
例えば
図1の場合、供給流路15は、第2切換弁36と下流側端部との間において分岐している。そして、この分岐している流路の1つがダンパユニット37に接続されている。
図1の位置にダンパユニット37を設ける場合、ダンパユニット37に接続されているこの分岐した流路部分の少なくとも一部が、内部流路62となる。すなわち、
図1の位置にダンパユニット37を設ける場合、収容室61は、ポンプ34の吸込側に加えて、第2切換弁36にも連通する。また、
図2の場合、供給流路15は、上流側端部と第2切換弁36との間において分岐している。そして、この分岐している流路の1つがダンパユニット37に接続されている。
図2の位置にダンパユニット37を設ける場合、ダンパユニット37に接続されているこの分岐した流路部分の少なくとも一部が、内部流路62となる。すなわち、
図2の位置にダンパユニット37を設ける場合、収容室61は、ポンプ34の吸込側に加えて、マスタシリンダ11にも連通する。なお、
図2の位置にダンパユニット37を設ける場合、収容室61は、第2切換弁36を介してポンプ34の吸込側に連通する。
【0035】
また、基体51は、収容室61の内面に形成された凹部63を備えている。そして、収容室61と内部流路62とを連通させる連通口61aは、凹部63の底部に形成されている。詳しくは、本実施の形態1においては、凹部63は、収容室61の側部の内面全周に渡って、環状に形成されている。このような形状の凹部63においては、収容室61を基体51に形成した際、該収容室61の開口部から中ぐりバイトを挿入し、収容室61の側部の内面を中ぐり加工することで形成できる。このため、凹部63の加工が容易になる。換言すると、基体51の製造コストを削減することができる。なお、凹部63の形状は、このような形状に限定されるものではない。連通口61aの位置を収容室61の内面よりも凹んだ位置に形成できれば、凹部63の形状は任意である。例えば、凹部63は、収容室61の軸線(
図3において上下方向に延びる中心線)方向に沿って形成された溝でもよい。
【0036】
ダンパユニット37は、収容室61に収容される。ダンパユニット37は、収容室61に収容された状態で後述の基部71等が基体51に加締められて保持されることにより、基体51に固定される。加締めによって、収容室61内のブレーキ液が封止される。なお、ダンパユニット37の基体51への加締め構成の詳細については、後述する。
【0037】
図5及び
図6に示されるように、ダンパユニット37は、柱状体70と、ドーム状膜体80と、環状体90と、を備えている。
【0038】
柱状体70は、基体51に保持されている基部71と、基部71に立設されているポール部72と、を有する。基部71及びポール部72は、別部材である。基部71の凹部71aにポール部72の底部が圧入されることで、基部71及びポール部72は、一体化される。ポール部72は、断面が円形状である。ポール部72の底面に有底穴が形成されており、基部71及びポール部72の一体化によってその有底穴が塞がれることとなって、ポール部72の内部に空間72aが形成される。また、ポール部72の側部には、空間72aに通じる貫通穴72bが形成されている。貫通穴72bは、複数(例えば3つ)であり、ポール部72の軸線を基準とする互いに異なる周方向に、等しい角度間隔で形成されている。
【0039】
ドーム状膜体80は、弾性体(例えばゴム等)で形成され、先端部に向かって徐々に細くなる形状である。特に、先端部が球状であることで、収容室61に流入するブレーキ液によって生じる応力集中が抑制される。ドーム状膜体80は、ポール部72の先端部及び側部を覆う状態で保持される。ドーム状膜体80の底部に、外側に突出するフランジ部80aが形成されている。フランジ部80aを介在させた状態で、環状体90が基部71に圧入されることで、ドーム状膜体80は、柱状体70に保持される。すなわち、環状体90は、ドーム状膜体80のフランジ部80aを押圧しつつ、基部71に固定されている。ドーム状膜体80の内側には、流体(例えば空気等)が充填されている。フランジ部80aの環状体90と当接する面には、環状凸部80bが形成されており、環状体90の基部71への圧入に伴って環状凸部80bが押し潰されることによって、収容室61のブレーキ液がドーム状膜体80の内側に流入すること、及び、ドーム状膜体80の内側の流体が収容室61に流出することが抑制される。
【0040】
収容室61にブレーキ液が充填されていない状態において、ドーム状膜体80の内面とポール部72の側部との間には、隙間が形成されている。また、収容室61にブレーキ液が充填されていない状態において、ドーム状膜体80の先端部の内面は、ポール部72の先端部の端面に当接する。ドーム状膜体80の先端部の内面及びポール部72の先端部の端面の互いに当接する領域は、平坦である。
【0041】
貫通穴72bは、ポール部72の軸線方向において、連通口61aと比較して基部71に近い側に形成されている。また、ドーム状膜体80の内面とポール部72の側部との間の隙間は、ポール部72の先端部に近づく程狭くなる。そのため、ドーム状膜体80は、収容室61のブレーキ液の液圧の上昇に伴って、先端部に近い領域から先にポール部72の外面に当接することとなり、また、その当接する領域は、貫通穴72bを塞ぐまで徐々に広がっていくこととなる。ドーム状膜体80は、収容室61のブレーキ液の液圧の減少に伴って、変形前の状態に復帰する。このようなドーム状膜体80の動作によって、第2切換弁36が開いた状態でポンプ34が駆動されることで生じる脈動が、供給流路15及びマスタシリンダ11を介して、ブレーキペダル16に伝搬することが抑制される。そして、ドーム状膜体80の変形が最大となった場合でも、ポール部72の内部に形成されている空間72aに圧縮された流体が残存できるため、圧縮された流体がドーム状膜体80を透過して、ダンパユニット37の減衰性能が劣化してしまうことが抑制される。
【0042】
ポール部72の基部71に近い側の端部の外周面には、ドーム状膜体80の内面を受ける環状凸部72cが形成されている。環状凸部72cの基部71から遠い側の端部の外側エッジ72dは、丸められた形状である。また、環状体90の基部71から遠い側の端部の内側エッジ90aは、丸められた形状である。
【0043】
上述のように、ダンパユニット37は、収容室61に収容された状態で後述の基部71等が基体51に加締められて保持されることにより、基体51に固定されている。この際、本実施の形態1では、
図3に示すような加締め構成を採用している。詳しくは、基体51は、収容室61の内面に、環状体90と対向する環状の台座部64を備えている。この台座部64は、収容室61の内面に形成された凹部63よりも、収容室61の開口部側に配置されている。換言すると、台座部64は、凹部63よりも、収容室61の開口部外縁61c側に配置されている。また、凹部63の底部と収容室61の軸線(
図3において上下方向に延びる中心線)との間の距離L1は、台座部64と収容室61の軸線との間の距離L2よりも大きくなっている。換言すると、本実施の形態1においては、凹部63は、収容室61の側部の内面全周に渡って、環状に形成されている。このため、収容室61の軸線を中心として形成された凹部63の底部の半径が、収容室61の軸線を中心として形成された台座部64の半径よりも大きいということもできる。
【0044】
そして、ダンパユニット37は、
図6のように組み付けられた基部71、ドーム状膜体80のフランジ部80a及び環状体90が台座部64と収容室61の開口部外縁61cとで挟持されることにより、基体51に加締め固定される。ダンパユニット37が基体51に加締め固定されることにより、ダンパユニット37の基部71及び環状体90の外周面と、台座部64の環状体90と対向する領域及び収容室61の内面のうちの基部71及び環状体90の外周面と対向する領域61bと、が密着して、収容室61内のブレーキ液が封止される。
【0045】
<ブレーキシステムの効果>
実施の形態1に係るブレーキシステムの効果について説明する。
ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、供給流路15にダンパユニット37が設けられている。そのため、第2切換弁36が開いた状態でポンプ34が駆動されることで生じる脈動が、供給流路15及びマスタシリンダ11を介して、ブレーキシステム1の入力部(例えばブレーキペダル16等)に伝搬することが抑制される。
【0046】
特に、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50が、込め弁31が開き、弛め弁32が閉じ、第1切換弁35が閉じ、第2切換弁36が開き、且つ、ブレーキシステム1の入力部にブレーキ操作が入力されている状態で、ポンプ34を駆動させる、アクティブ増圧制御動作を行うものである場合において、ダンパユニット37が供給流路15に設けられている場合には、使用者のブレーキシステム1の使用感を確保しつつ、倍力装置17を小型化又は省略して、ブレーキシステム1の車両100への搭載性を向上することが可能である。
【0047】
ダンパユニット37は、供給流路15のうちの、第2切換弁36と下流側端部との間の領域に設けられていてもよく、また、供給流路15のうちの、上流側端部と第2切換弁36との間の領域に設けられていてもよい。
【0048】
例えば、供給流路15のうちの、第2切換弁36と下流側端部との間の領域に、ダンパユニット37が設けられている場合には、ポンプ34の吸入側の近くで、脈動の伝搬が抑制されることとなって、液圧制御ユニット50の基体51等に生じる異音等を効率的に抑制することができる。
【0049】
例えば、ブレーキシステム1が、倍力装置17が省略されているものであり、且つ、供給流路15のうちの、上流側端部と第2切換弁36との間の領域に、ダンパユニット37が設けられている場合には、使用者がブレーキシステム1の入力部を操作してからアクティブ増圧制御動作が開始されるまでの期間において、使用者が、倍力装置17が省略されていることに起因する反力の増大を感じてしまうことが、ダンパユニット37のクッション性によって抑制されることとなる。そのため、供給流路15のうちの、上流側端部と第2切換弁36との間の領域にダンパユニット37を設けることは、ブレーキシステム1が、倍力装置17が省略されているものである場合において、特に好適である。
【0050】
そして、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、更に、ダンパユニット37が、ポール部72を有する柱状体70と、ドーム状膜体80と、を備えており、収容室61にブレーキ液が充填されていない状態で、ドーム状膜体80の内面とポール部72の側部の少なくとも一部との間に隙間が形成されている構成である。ダンパユニット37は、マスタシリンダ11に連通する供給流路15、つまり、使用者のブレーキシステム1の使用感に多大な影響を及ぼす箇所に設けられるものであり、高い減衰性能を有することが望まれる。一方、液圧制御ユニット50が車両100に搭載される場合には、そのサイズも重要視される。ダンパユニット37は、受圧面の面積が三次元的に拡大される構造であるため、減衰性能の向上に伴う液圧制御ユニット50の大型化が効率的に抑制される。すなわち、ダンパユニット37は、ブレーキシステム1の供給流路15に設けられることが、特に好適なものであり、そのようなダンパユニット37の採用によって、使用者のブレーキシステム1の使用感を向上することの実現性が格段向上される。
【0051】
ここで、ダンパユニット37は、ドーム状膜体80の外面側の圧力(つまり収容室61内のブレーキ液の液圧)と内面側の圧力との圧力差によって該ドーム状膜体80が変形し、ポンプ34の駆動時に発生する脈動を減衰する構成となっている。このため、ダンパユニット37は、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも低下し、
図7に示すようにドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形する場合がある。
なお、
図7は、本発明の実施の形態1に係るブレーキシステムの、ダンパユニットの搭載状態を示す部分断面図であり、ドーム状膜体が外面側に膨張するように変形した状態を示す図である。この
図7は、
図3と同じ方向からダンパユニット37の搭載状態を観察した図であり、
図3と同様にダンパユニット37以外の部材のみが断面で示されている。
【0052】
例えば、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50が、込め弁31が開き、弛め弁32が閉じ、第1切換弁35が閉じ、第2切換弁36が開き、且つ、ブレーキシステム1の入力部にブレーキ操作が入力されている状態で、ポンプ34を駆動させる、アクティブ増圧制御動作を行うとする。この場合、ポンプ34の起動直後において、ダンパユニット37が収容されている収容室61からポンプ34によって吸引されるブレーキ液の量が、収容室61に流入するブレーキ液の量を一時的に上回ることがある。このとき、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも一時的に低下し、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形する。
【0053】
また例えば、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50が、車輪がロックすることを防止するため、込め弁31が閉じ、弛め弁32が開き、第1切換弁35が開き、第2切換弁36が閉じ、且つ、ブレーキシステム1の入力部にブレーキ操作が入力されている状態で、ポンプ34を駆動させる制御動作を行うとする。この場合、
図1の位置にダンパユニット37を設けたブレーキシステム1の液圧制御ユニット50においては、ポンプ34の起動直後、ダンパユニット37が収容されている収容室61からポンプ34によって吸引されるブレーキ液の量が、収容室61に流入するブレーキ液の量を一時的に上回ることがある。このとき、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも一時的に低下し、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形する。
【0054】
また例えば、ブレーキシステム1の入力部への入力が解除された際(例えば、使用者がブレーキペダル16の踏み込みを解除した際)、ブレーキ液がマスタシリンダ11に引き込まれる。この際、
図2の位置にダンパユニット37を設けたブレーキシステム1の液圧制御ユニット50においては、マスタシリンダ11のブレーキ液の引き込みによって収容室61から吸引されるブレーキ液の量が、収容室61に流入するブレーキ液の量を一時的に上回ることがある。このとき、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも一時的に低下し、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形する。
【0055】
また例えば、ブレーキシステム1(換言すると液圧制御ユニット50)にブレーキ液を充填する際、主流路13、副流路14及び供給流路15に空気が残ることを防止するため、これらの流路を真空状態(大気圧よりも低い状態)にし、真空状態となったこれらの流路にブレーキ液を流し込む手法を採用する場合がある。このような場合、供給流路15が真空状態になったときに、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも低下し、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形する。また例えば、ブレーキシステム1(換言すると液圧制御ユニット50)は、広い温度範囲での使用を想定して設計される。このため、ブレーキシステム1(換言すると液圧制御ユニット50)周辺の温度が使用温度範囲のうちの上限温度付近となった場合、ドーム状膜体80の熱膨張によって、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形することもある。
【0056】
上述のようにドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形した場合、ドーム状膜体80が連通口61aに接触し、連通口61aを閉塞して供給流路15(換言すると液圧回路2)内のブレーキ液の流れを阻害してしまう、ドーム状膜体80が損傷してしまう等を懸念するかもしれない。しかしながら、本実施の形態1に係る液圧制御ユニット50においては、収容室61の内面に形成された凹部63を備え、該凹部63の底部に連通口61aが形成されている。このため、本実施の形態1に係る液圧制御ユニット50は、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形した場合でも、
図7に示すように、ドーム状膜体80が連通口61aに接触することを抑制できる。すなわち、本実施の形態1に係る液圧制御ユニット50は、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形した場合でも、連通口61aを閉塞して供給流路15(換言すると液圧回路2)内のブレーキ液の流れを阻害してしまう、ドーム状膜体80が損傷してしまう等を抑制できる。
【0057】
好ましくは、凹部63は、収容室61の側部の内面全周に渡って、環状に形成されている。このように凹部63を形成することにより、凹部63の加工が容易となり、基体51の製造コストを削減することができる。
【0058】
好ましくは、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、収容室61にブレーキ液が充填されていない状態で、ドーム状膜体80の先端部の内面は、ポール部72の先端部の外面の少なくとも一部に当接する。そのように構成されることで、収容室61のブレーキ液の液圧の変化に伴うドーム状膜体80の変形及び復帰が、安定化されることとなって、第2切換弁36が開いた状態でポンプ34が駆動されることで生じる脈動が、供給流路15及びマスタシリンダ11を介して、ブレーキシステム1の入力部に伝搬することの抑制が、確実化される。
【0059】
更に、ドーム状膜体80の先端部及びポール部72の先端部の互いに当接する領域が、平坦であるとよい。そのように構成されることで、例えば、環状体90を基部71に圧入する等の組立作業に際して、ドーム状膜体80を位置決めすることが可能となって、組立性が向上される。また、ドーム状膜体80が損傷したまま組み付けられることが抑制されて、液圧制御ユニット50が高品質化される。
【0060】
更に、ポール部72の軸線方向において、貫通穴72bは、収容室61のポンプ34に連通する連通口61aと比較して、基部71に近い側に形成されているとよい。そのように構成されることで、収容室61のブレーキ液の液圧の上昇の際に、ドーム状膜体80が、早い段階で貫通穴72bを塞いで、ダンパユニット37の減衰性能が低下してしまうことが抑制される。
【0061】
好ましくは、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、貫通穴72bは複数であり、複数の貫通穴72bは、ポール部72の軸線を基準とする互いに異なる周方向に形成されている。そのように構成されることで、ポール部72の1方向に応力集中が生じてしまうことが抑制されて、ダンパユニット37の耐久性が向上される。
【0062】
好ましくは、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、ドーム状膜体80の底部にフランジ部80aが形成され、ダンパユニット37は、更に、フランジ部80aを押圧しつつ基部71に固定されている環状体90を備えている。そのように構成されることで、ドーム状膜体80の損傷を抑制しつつ、ドーム状膜体80を柱状体70に組付けることが可能となって、ダンパユニット37の耐久性が向上される。
【0063】
更に、フランジ部80aの環状体90と当接する面に、環状凸部80bが形成されているとよい。そのように構成されることで、収容室61のブレーキ液がドーム状膜体80の内側に流入すること、及び、ドーム状膜体80の内側の流体が収容室61に流出することの抑制を、簡易な構成で確実化することができる。
【0064】
更に、環状体90の基部71から遠い側の端部の内側エッジ90aは、丸められた形状である。そのように構成されることで、例えば、ABS制御動作時、ESP制御動作時等において、収容室61のブレーキ液の液圧が減少する際に、ドーム状膜体80の外面が損傷してしまうことが抑制されて、ダンパユニット37の耐久性が向上される。
【0065】
好ましくは、ダンパユニット37が、フランジ部80aを押圧しつつ基部71に固定されている環状体90を備え、基体51に加締め固定される場合、基体51は、収容室61の内面に、環状体90と対向する環状の台座部64を備えている。この台座部64は、収容室61の内面に形成された凹部63よりも、収容室61の開口部外縁61c側に配置されている。また、凹部63の底部と収容室61の軸線(
図3において上下方向に延びる中心線)との間の距離L1は、台座部64と収容室61の軸線との間の距離L2よりも大きくなっている。そして、ダンパユニット37は、基部71、ドーム状膜体80のフランジ部80a及び環状体90が台座部64と収容室61の開口部外縁61cとで挟持されることにより、基体51に加締め固定される。
【0066】
このような加締め固定においては、収容室61の開口部外縁61cに荷重をかけ、開口部外縁61cを変形させる際、該荷重は、基部71、ドーム状膜体80のフランジ部80a及び環状体90を介して、台座部64で支持される。この際、台座部64における荷重を支持する面積が小さいと、台座部64が塑性変形してしまう。そして、台座部64が塑性変形してしまうと、加締め部分において隙間ができてしまい、収容室61内のブレーキ液が基体51外へ漏れ出してしまう。一方、上述のように台座部64を形成することにより、台座部64における荷重を支持する面積を大きく確保することができるため、台座部64の塑性変形を抑制できる。すなわち、上述のように台座部64を形成することにより、加締め部分において隙間ができてしまうことを抑制でき、収容室61内のブレーキ液が基体51外へ漏れ出してしまうことを抑制できる。
【0067】
好ましくは、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、ポール部72の基部71に近い側の端部の外周面に、ドーム状膜体80の内面を受ける環状凸部72cが形成されており、環状凸部72cの基部71から遠い側の端部の外側エッジ72dは、丸められた形状である。環状凸部72cがドーム状膜体80の受け部として機能することとなって、収容室61のブレーキ液の液圧の変化に伴うドーム状膜体80の変形及び復帰が、安定化される。また、環状凸部72cの基部71から遠い側の端部の外側エッジ72dが、丸められた形状であることで、収容室61のブレーキ液の液圧の上昇の際に、ドーム状膜体80の内面が損傷してしまうことが抑制されて、ダンパユニット37の耐久性が向上される。
【0068】
好ましくは、基部71及びポール部72は、別部材であり、ポール部72の底面に、空間72aを構成する有底穴が形成されている。そのように構成されることで、空間72aを有する柱状体70の製造性が向上される。
【0069】
なお、本実施の形態1では、供給流路15に分岐した流路を形成し、この分岐した流路にダンパユニット37を設けた。しかしながら、ダンパユニット37の設置構成はこのような構成に限定されるものではなく、供給流路15を分岐させずにダンパユニット37を設けてもよい。例えば、
図1で示したブレーキシステム1(つまり液圧制御ユニット50)の場合、供給流路15のうち、第2切換弁36と接続されて下流側端部まで延びる流路部分に、直接、ダンパユニット37を設けてもよい。また例えば、
図2で示したブレーキシステム1(つまり液圧制御ユニット50)の場合、供給流路15のうち、第2切換弁36と接続されて上流側端部まで延びる流路部分に、直接、ダンパユニット37を設けてもよい。以下、
図2に示したブレーキシステム1(つまり液圧制御ユニット50)において、供給流路15を分岐させずにダンパユニット37を設けた例を、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0070】
図8は、本発明の実施の形態1に係るブレーキシステムの、システム構成の更に別の例を示す図である。また、
図9は、
図8に示すブレーキシステムの、ダンパユニットの搭載状態を示す部分断面図である。なお、
図9では、ダンパユニット37以外の部材のみが、断面で示されている。
【0071】
図8に示すブレーキシステム1(つまり液圧制御ユニット50)は、供給流路15のうち、第2切換弁36と接続されて上流側端部まで延びる流路部分に、直接、ダンパユニット37が設けられている。このような場合、供給流路15の一部を構成する内部流路62として、2つの内部流路62a,62bが形成される。内部流路62aは、一端が連通口61aを介して収容室61と連通し、他端が第2切換弁36を介してポンプ34の吸込側に連通している。また、内部流路62bは、一端が連通口61aを介して収容室61と連通し、他端がマスタシリンダ11に連通している。内部流路62として2つの内部流路62a,62bが形成される場合、内部流路62a,62bの一方を通ってブレーキ液が収容室61に流入し、内部流路62a,62bの他方を通って収容室61からブレーキ液が流出することとなる。
ここで、内部流路62a,62bのうち、収容室61にブレーキ液を流入させる流路が、本発明の第1内部流路に相当する。内部流路62a,62bのうち、収容室61からブレーキ液を流出させる流路が、本発明の第2内部流路に相当する。
【0072】
例えば、アクティブ増圧制御動作等のように、マスタシリンダ11側から第2切換弁36側にブレーキ液が流れる場合、内部流路62bを通ってブレーキ液が収容室61に流入し、内部流路62aを通って収容室61からブレーキ液が流出することとなる。また例えば、ブレーキシステム1の入力部への入力が解除された際(例えば、使用者がブレーキペダル16の踏み込みを解除した際)、マスタシリンダ11のブレーキ液の引き込みによって、第2切換弁36側からマスタシリンダ11側にブレーキ液が流れる。この場合、内部流路62aを通ってブレーキ液が収容室61に流入し、内部流路62bを通って収容室61からブレーキ液が流出することとなる。
【0073】
したがって、内部流路62として2つの内部流路62a,62bが形成される場合、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形した際に、連通口61aを閉塞して供給流路15(換言すると液圧回路2)内のブレーキ液の流れを阻害してしまうことを防止するためには、内部流路62aの連通口61a及び内部流路62bの連通口61aの双方を該凹部63の底部に形成する必要がある。この際、凹部63を、収容室61の側部の内面全周に渡って環状に形成するとよい。内部流路62aの連通口61aが形成される凹部63と内部流路62bの連通口61aが形成される凹部63とを一回の中ぐり加工で形成できるため、基体51の製造コストを削減することができる。
【0074】
以上のように供給流路15を分岐させずにダンパユニット37を設けた場合においても、
図1〜
図7を用いて説明した上記に記載のものと同様の効果を得ることができる。
【0075】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係るブレーキシステムについて説明する。
なお、実施の形態1に係るブレーキシステムと重複又は類似する説明は、適宜簡略化又は省略している。
【0076】
<ダンパユニットの詳細>
実施の形態2に係るブレーキシステムのダンパユニットの詳細について説明する。
図10〜
図12は、本発明の実施の形態2に係るブレーキシステムの、ダンパユニットの詳細を示す断面図である。また、
図13は、本発明の実施の形態2に係るブレーキシステムの、ダンパユニットの搭載状態を示す部分断面図である。なお、
図10は、
図3におけるB−B線に相当する線での断面図である。また、
図11は、
図10におけるC−C線での断面図であり、
図12は、
図10におけるD−D線での断面図である。また、
図13は、
図3におけるA−A線に相当する線での断面図である。
【0077】
図10〜
図12に示されるように、ドーム状膜体80の側部の内面に、ドーム状膜体80の軸線方向に延びる複数(例えば6つ)の凸部80cが、その軸線を基準とする互いに異なる周方向に、等しい角度間隔で形成されている。ドーム状膜体80の軸線に直交する断面において、凸部80cは、その軸線に近づく程幅が狭くなる形状である。収容室61にブレーキ液が充填されていない状態で、複数の凸部80cの頂部と、ポール部72の側部との間には、隙間が形成されている。特に、貫通穴72bの数と凸部80cの数とが、互いに素であるとよい。そのような場合には、貫通穴72bと凸部80cとが同じ周方向に位置する状態で、ドーム状膜体80が柱状体70に組み付けられることが抑制されて、複数の凸部80cが形成されていることに起因して、収容室61のブレーキ液の液圧の上昇の際に、ドーム状膜体80が、早い段階で貫通穴72bを塞いで、ダンパユニット37の減衰性能が低下してしまうことが抑制される。
【0078】
また、
図13に示すように、ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において、凸部80cの1つは、連通口61aと対向する位置に設けられている。換言すると、ドーム状膜体80の側部の内面には、ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において、連通口61aと対向する位置に凸部80cが形成されている。
【0079】
<ブレーキシステムの効果>
実施の形態2に係るブレーキシステムの効果について説明する。
好ましくは、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、ドーム状膜体80の側部の内面に、ドーム状膜体80の軸線方向に延びる複数の凸部80cが、その軸線を基準とする互いに異なる周方向に形成されている。そのように構成されることで、ドーム状膜体80の剛性を向上しつつ、ダンパユニット37の減衰性能を最適化することが可能となる。また、ドーム状膜体80の側部の内面に凸部80cが形成されていないダンパユニット37では、収容室61のブレーキ液の液圧が上昇していくと、収容室61に流入するブレーキ液の増加が早い段階で飽和してしまうが、複数の凸部80cが形成されていることにより、その飽和を遅らせることが可能であるため、高圧領域における減衰性能が向上される。
【0080】
更に、収容室61にブレーキ液が充填されていない状態で、複数の凸部80cの頂部と、ポール部72の側部との間には、隙間が形成されている。つまり、複数の凸部80cの頂部の少なくとも一部は、ポール部72の側部に当接しない。そのように構成されることで、ドーム状膜体80を柱状体70に組み付ける際に、ドーム状膜体80の内面が損傷してしまうことが抑制されて、ダンパユニット37の耐久性が向上される。
【0081】
また、好ましくは、ドーム状膜体80の側部の内面には、ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において、連通口61aと対向する位置に凸部80cが形成されている。当該位置に凸部80cを形成することにより、ドーム状膜体80における連通口61aと対向する範囲近傍の剛性が向上する。このため、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも低下した際、ドーム状膜体80における連通口61aと対向する範囲近傍では、該ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形することを抑制できる。したがって、当該位置に凸部80cを形成することにより、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも低下した際、実施の形態1と比較し、ドーム状膜体80が連通口61aに接触することをより抑制できる。すなわち、本実施の形態2に係る液圧制御ユニット50は、実施の形態1と比較し、連通口61aを閉塞して供給流路15(換言すると液圧回路2)内のブレーキ液の流れを阻害してしまう、ドーム状膜体80が損傷してしまう等をより抑制できる。なお、本実施の形態2に示した効果のうち、当該効果のみを得ようとするのであれば、凸部80cを複数設ける必要は必ずしもない。ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において連通口61aと対向する位置に、凸部80cが形成されていればよい。
【0082】
実施の形態3.
以下に、実施の形態3に係るブレーキシステムについて説明する。
なお、実施の形態1及び実施の形態2に係るブレーキシステムと重複又は類似する説明は、適宜簡略化又は省略している。
【0083】
<ダンパユニットの詳細>
実施の形態3に係るブレーキシステムのダンパユニットの詳細について説明する。
図14〜
図16は、本発明の実施の形態3に係るブレーキシステムの、ダンパユニットの詳細を示す断面図である。また、
図17は、本発明の実施の形態3に係るブレーキシステムの、ダンパユニットの搭載状態を示す部分断面図である。なお、
図14は、
図3におけるB−B線に相当する線での断面図である。また、
図15は、
図14におけるC−C線での断面図であり、
図16は、
図14におけるE−E線での断面図である。また、
図17は、
図3におけるA−A線に相当する線での断面図である。
【0084】
図14〜
図16に示されるように、ドーム状膜体80の側部の内面に、ドーム状膜体80の軸線方向に延びる複数の凸部80cが、その軸線を基準とする互いに異なる周方向に、等しい角度間隔で形成されている。ドーム状膜体80の軸線に直交する断面において、凸部80cは、その軸線に近づく程幅が狭くなる形状である。収容室61にブレーキ液が充填されていない状態で、複数の凸部80cの頂部を結ぶ円の径は、ポール部72の径と比較して若干大きい。つまり、ポール部72は、ドーム状膜体80の内側に隙間嵌めの状態で嵌合する。そのように構成されることで、低圧領域において、収容室61に流入するブレーキ液が急増してしまうことが抑制されて、低圧領域における減衰性能と高圧領域における減衰性能との間の連続性を確保することが可能である。特に、凸部80cの数が、4つであるとよい。そのような場合には、低圧領域における減衰性能と高圧領域における減衰性能と間の連続性が、簡易な構成によって確保されるとともに、ドーム状膜体80の変形及び復帰が安定化される。
【0085】
また、
図17に示すように、本実施の形態3でも実施の形態2と同様に、ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において、凸部80cの1つは、連通口61aと対向する位置に設けられている。換言すると、ドーム状膜体80の側部の内面には、ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において、連通口61aと対向する位置に凸部80cが形成されている。
【0086】
<ブレーキシステムの効果>
実施の形態3に係るブレーキシステムの効果について説明する。
好ましくは、ブレーキシステム1の液圧制御ユニット50では、ドーム状膜体80の側部の内面に、ドーム状膜体80の軸線方向に延びる複数の凸部80cが、その軸線を基準とする互いに異なる周方向に形成されている。更に、収容室61にブレーキ液が充填されていない状態で、ポール部72は、ドーム状膜体80の内側に隙間嵌めの状態で嵌合する。つまり、複数の凸部80cの頂部の少なくとも一部は、ポール部72の側部に当接しない。そのように構成されることで、ドーム状膜体80を柱状体70に組み付ける際に、ドーム状膜体80の内面が損傷してしまうことが抑制されて、ダンパユニット37の耐久性が向上される。
【0087】
また、好ましくは、ドーム状膜体80の側部の内面には、ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において、連通口61aと対向する位置に凸部80cが形成されている。当該位置に凸部80cを形成することにより、ドーム状膜体80における連通口61aと対向する範囲近傍の剛性が向上する。このため、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも低下した際、ドーム状膜体80における連通口61aと対向する範囲近傍では、該ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形することを抑制できる。したがって、当該位置に凸部80cを形成することにより、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも低下した際、実施の形態1と比較し、ドーム状膜体80が連通口61aに接触することをより抑制できる。すなわち、本実施の形態3に係る液圧制御ユニット50は、実施の形態1と比較し、連通口61aを閉塞して供給流路15(換言すると液圧回路2)内のブレーキ液の流れを阻害してしまう、ドーム状膜体80が損傷してしまう等をより抑制できる。なお、本実施の形態3に示した効果のうち、当該効果のみを得ようとするのであれば、凸部80cを複数設ける必要は必ずしもない。ドーム状膜体80の軸線方向と垂直な断面において連通口61aと対向する位置に、凸部80cが形成されていればよい。
【0088】
以上、実施の形態1〜実施の形態3について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されない。例えば、各実施の形態の全て又は一部が組み合わされてもよい。
【0089】
例えば、実施の形態2及び実施の形態3では、ドーム状膜体80の側部の内面に凸部80cが形成されているが、ドーム状膜体80の側部の内面に凸部80cが形成されず、ポール部72の側部の外面に凸部が形成されてもよい。また、ポール部72の環状凸部72cを除く領域の断面が、三角形状等の円形状以外の形状であってもよい。ただし、ドーム状膜体80の外面側の圧力が内面側の圧力よりも低下した際、ドーム状膜体80が外面側に膨張するように変形することを抑制できるという効果を得るための凸部は、ドーム状膜体80側に形成する必要がある。
【0090】
また例えば、実施の形態1〜実施の形態3では、ポール部72の環状凸部72cの基部71から遠い側の端部の端面が、ポール部72の軸線に対して直角であるが、傾斜していてもよく、その傾斜面に貫通穴72bが形成されていてもよい。