【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(メタ)アクリル粘着剤、軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂、及び、多官能エポキシ架橋剤を含有する粘着剤層を有し、前記粘着剤層のゲル分率が50〜70%である耐熱粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(メタ)アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープにおいて、粘着剤層に軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂とともに、架橋剤として多官能エポキシ架橋剤を配合してゲル分率を一定の範囲に調整することにより、300℃の高温にさらされても、発泡したり、粘着力が低下したりすることがない耐熱粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の耐熱粘着テープ(以下、単に「粘着テープ」ともいう。)は、(メタ)アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する。
上記(メタ)アクリル粘着剤は特に限定されないが、特に高い粘着力を発揮できることから、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位を含有する(メタ)アクリル共重合体が好適である。
【0010】
上記(メタ)アクリル共重合体中のブチルアクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は80重量%である。上記ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有量がこの範囲内であると、高い凝集力と粘着力、タックを発揮することができる。
上記(メタ)アクリル共重合体中の2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。上記2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位の含有量がこの範囲内であると、高い凝集力と優れた粘着力、タックを発揮することができる。
【0011】
上記(メタ)アクリル共重合体は、必要に応じてブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレート以外の共重合可能な他の重合性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
上記共重合可能な他の重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等のアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、等の官能性モノマーが挙げられる。
【0012】
上記(メタ)アクリル共重合体は、上記モノマーを含有するモノマー混合物を共重合することにより調製することができる。具体的には、上記モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記モノマー混合物をラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0013】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましい下限が40万、好ましい上限が200万である。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量がこの範囲内であると、高い凝集力と優れた粘着力、タックを発揮することができる。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は50万、より好ましい上限は150万である。
重量平均分子量を上記範囲に調整するためには、重合開始剤、重合温度等の重合条件を調整すればよい。
なお、重量平均分子量(Mw)とは、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0015】
上記粘着剤層は、軟化点が150℃以上である粘着付与樹脂(以下、単に「粘着付与樹脂」ともいう。)を含有する。軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂を用いることにより、300℃の高温にさらされても、発泡することなく、充分な粘着力を発揮することができる耐熱粘着テープを得ることができる。
上記粘着付与樹脂として、例えば、ロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5−C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記粘着付与樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ペンセルD−160(荒川化学工業製)、YSポリスターT−160(ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0017】
上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル粘着剤100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量がこの範囲内であると、特に優れた粘着力、タックを有し、耐熱性に優れた粘着テープを得ることができる。上記粘着付与樹脂の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0018】
上記粘着剤層は、多官能エポキシ架橋剤を含有する。架橋剤として多官能エポキシ架橋剤を用いることにより、300℃の高温にさらされても、発泡することなく、充分な粘着力を発揮することができる耐熱粘着テープを得ることができる。
【0019】
上記多官能エポキシ架橋剤は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ系架橋剤であれば特に限定されないが、例えば、ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等が挙げられる。これらの多官能エポキシ架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記多官能エポキシ架橋剤のうち市販されているものとしては、例えば、綜研化学社製の商品名E−AX、E−5C等が挙げられる。
【0021】
上記多官能エポキシ架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル粘着剤100重量部に対する好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は10重量部である。上記多官能エポキシ架橋剤の含有量がこの範囲内であると、特に耐熱性に優れた粘着テープを得ることができる。上記多官能エポキシ架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0022】
上記粘着剤層は、上記多官能エポキシ架橋剤以外のその他の架橋剤(以下、「その他の架橋剤」ともいう。)、例えばイソシアネート系架橋剤等を含有してもよい。ただし、イソシアネート系架橋剤等のその他の架橋剤を併用する場合であっても、上記(メタ)アクリル粘着剤100重量部に対するその他の架橋剤の含有量を0.05重量部以下とすることが好ましく、0.02重量部以下とすることがより好ましい。その他の架橋剤の含有量が多くなると、300℃の高温にさらされたときに、発泡しやすくなったり、充分な粘着力を発揮できなかったりすることがある。
【0023】
上記粘着剤層は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0024】
上記粘着剤層のゲル分率の下限は50%、上限は70%である。上記粘着剤層のゲル分率をこの範囲内とすることにより、高い粘着性と、300℃の高温にさらされても発泡することのない耐熱性とを両立することができる。上記ゲル分率の好ましい下限は55%、好ましい上限は65%である。
なお、上記粘着剤層のゲル分率は、粘着剤層をW1(g)採取し、この粘着剤層を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬して不溶解分を200メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を真空乾燥して乾燥残渣の重量W2(g)を測定し、下記式(1)により算出する。
ゲル分率(%)=W2/W1×100 (1)
【0025】
本発明の粘着テープは、空気中において昇温速度10℃/minで35℃から500℃まで昇温したときの重量減少率が5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であると、300℃の高温にさらされても、粘着剤層に含まれる(メタ)アクリル粘着剤や粘着付与樹脂等の分解が少なく、より発泡を抑えながら、高い粘着力を発揮することができる。上記重量減少率は、3%以下であることがより好ましい。
本発明の粘着テープの上記重量減少率は、例えば、上記多官能エポキシ架橋剤の種類や配合量を調整したり、軟化点の異なる複数の粘着付与樹脂を併用したりすることにより、5%以下に調整することができる。
なお、上記重量減少率は、例えば、熱重量・示差熱分析装置(例えば、日立ハイテクサイエンス社製、(TG/DTA)7300等)を用いて、空気中において昇温速度10℃/minで35℃から500℃まで昇温する処理前後でのサンプルの重量を測定し、下記式にて算出することができる。
重量減少率(%)=(処理前重量−処理後重量)/(処理前重量)×100
【0026】
本発明の粘着テープは、上記粘着剤層のみからなる、基材を有しないノンサポートタイプであってもよく、基材の片面又は両面に上記粘着剤層を有するサポートタイプであってもよい。なかでも、特に優れた耐熱性を発揮できることから、ノンサポートタイプが好適である。
本発明の粘着テープがサポートタイプである場合、上記基材としては、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の耐熱性に優れる基材を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の粘着テープの製造方法としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル粘着剤、軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂、多官能エポキシ架橋剤、及び、必要に応じて配合する添加剤に溶剤を加えて溶液を作製して、この溶液を離型処理を施した基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去する方法等が挙げられる。
【0028】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、高い耐熱性を有することから、高温処理を伴う用途に好適に用いることができる。具体的には例えば、リフロー工程やTCB工程のような高温過程を経るFPCの固定用途等に好適に用いることができる。