特許第6835557号(P6835557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835557
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】耐熱粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210215BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20210215BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/06
   C09J11/06
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-238616(P2016-238616)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2017-106013(P2017-106013A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-240347(P2015-240347)
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 徳之
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 耕平
(72)【発明者】
【氏名】土居 智
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086339(JP,A)
【文献】 特開2009−091479(JP,A)
【文献】 特開2011−148864(JP,A)
【文献】 特開2008−106262(JP,A)
【文献】 特開2015−193754(JP,A)
【文献】 特開2015−178595(JP,A)
【文献】 特開2015−59204(JP,A)
【文献】 特開2009−196169(JP,A)
【文献】 特開2013−194227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル粘着剤、軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂、及び、多官能エポキシ架橋剤を含有する粘着剤層を有し、
前記(メタ)アクリル粘着剤は、溶液重合(メタ)アクリル共重合体を含有する溶剤系(メタ)アクリル粘着剤であり、
前記溶液重合(メタ)アクリル共重合体は、ブチルアクリレートに由来する構成単位を40重量%以上、80重量%以下含み、かつ、2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位を10重量%以上、40重量%以下含み、
前記粘着剤層のゲル分率が50〜70%である
ことを特徴とする耐熱粘着テープ。
【請求項2】
空気中において昇温速度10℃/minで35℃から500℃まで昇温したときの重量減少率が5%以下であることを特徴とする請求項1記載の耐熱粘着テープ。
【請求項3】
基材を有しないノンサポートタイプであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、300℃の高温にさらされても、発泡することなく、充分な粘着力を発揮することができる耐熱粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは簡便に接合が可能なことから各種産業分野に用いられている。例えば、建築分野では養生シートの仮固定、内装材の貼り合わせ等に、自動車分野ではシート、センサー等の内装部品の固定、サイドモール、サイドバイザー等の外装部品の固定等に、電気電子分野ではモジュール組み立て、モジュールの筐体への貼り合わせ等に粘着テープが用いられている。更に、半導体チップの製造においては、厚膜ウエハを所定の厚さにまで研磨時のウエハ保護や、ウエハを個々の半導体チップにダイシングする際にも粘着テープが用いられている。
【0003】
また、例えば、近年ますます進展する半導体装置の小型化、高集積化に対応するために、半田等からなる突起電極(バンプ)を有する半導体チップ(例えば、Through Silicon Via(TSV)チップ)を用いたフリップチップ実装が注目されている。
フリップチップ実装においては、チップ間の接合を図る為に半田からなる先端部を有する突起電極を有する半導体チップと他の半導体チップ又は基板とを、半田の溶融温度以上の温度(通常は300℃以上)に加熱して電気的に接合して実装する工程(リフロー工程、TCB(Thermal Compression Bonding)が行われる(例えば、特許文献1)。
また、半導体装置の配線回路基板としてフレキシブル印刷回路基板(FPC)が広く利用されている。FPCを基板や筐体に固定する場合に、粘着テープが使用されることがある。半導体チップの実装工程で、このFPCがリフロー工程を経ることがある。
【0004】
TSVチップのフリップチップ実装やFPC固定用途のように、リフロー工程といった高温処理を伴う用途にも粘着テープを用いることが検討されているが、従来の粘着テープでは、300℃もの高温にさらされると、発泡してしまったり、粘着力が不充分であったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−278334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、300℃の高温にさらされても、発泡することなく、充分な粘着力を発揮することができる耐熱粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(メタ)アクリル粘着剤、軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂、及び、多官能エポキシ架橋剤を含有する粘着剤層を有し、前記粘着剤層のゲル分率が50〜70%である耐熱粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、(メタ)アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する粘着テープにおいて、粘着剤層に軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂とともに、架橋剤として多官能エポキシ架橋剤を配合してゲル分率を一定の範囲に調整することにより、300℃の高温にさらされても、発泡したり、粘着力が低下したりすることがない耐熱粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の耐熱粘着テープ(以下、単に「粘着テープ」ともいう。)は、(メタ)アクリル粘着剤を含有する粘着剤層を有する。
上記(メタ)アクリル粘着剤は特に限定されないが、特に高い粘着力を発揮できることから、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位を含有する(メタ)アクリル共重合体が好適である。
【0010】
上記(メタ)アクリル共重合体中のブチルアクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は40重量%、好ましい上限は80重量%である。上記ブチルアクリレートに由来する構成単位の含有量がこの範囲内であると、高い凝集力と粘着力、タックを発揮することができる。
上記(メタ)アクリル共重合体中の2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は40重量%である。上記2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位の含有量がこの範囲内であると、高い凝集力と優れた粘着力、タックを発揮することができる。
【0011】
上記(メタ)アクリル共重合体は、必要に応じてブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレート以外の共重合可能な他の重合性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。
上記共重合可能な他の重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等のアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、グリセリンジメタクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、等の官能性モノマーが挙げられる。
【0012】
上記(メタ)アクリル共重合体は、上記モノマーを含有するモノマー混合物を共重合することにより調製することができる。具体的には、上記モノマー混合物を、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記モノマー混合物をラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
【0013】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。上記有機過酸化物として、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましい下限が40万、好ましい上限が200万である。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量がこの範囲内であると、高い凝集力と優れた粘着力、タックを発揮することができる。上記(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は50万、より好ましい上限は150万である。
重量平均分子量を上記範囲に調整するためには、重合開始剤、重合温度等の重合条件を調整すればよい。
なお、重量平均分子量(Mw)とは、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0015】
上記粘着剤層は、軟化点が150℃以上である粘着付与樹脂(以下、単に「粘着付与樹脂」ともいう。)を含有する。軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂を用いることにより、300℃の高温にさらされても、発泡することなく、充分な粘着力を発揮することができる耐熱粘着テープを得ることができる。
上記粘着付与樹脂として、例えば、ロジンエステル系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、脂環族飽和炭化水素系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5−C9共重合系石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記粘着付与樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ペンセルD−160(荒川化学工業製)、YSポリスターT−160(ヤスハラケミカル社製)等が挙げられる。
【0017】
上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル粘着剤100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量がこの範囲内であると、特に優れた粘着力、タックを有し、耐熱性に優れた粘着テープを得ることができる。上記粘着付与樹脂の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0018】
上記粘着剤層は、多官能エポキシ架橋剤を含有する。架橋剤として多官能エポキシ架橋剤を用いることにより、300℃の高温にさらされても、発泡することなく、充分な粘着力を発揮することができる耐熱粘着テープを得ることができる。
【0019】
上記多官能エポキシ架橋剤は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ系架橋剤であれば特に限定されないが、例えば、ジグリシジルアニリン、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノエチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン等が挙げられる。これらの多官能エポキシ架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記多官能エポキシ架橋剤のうち市販されているものとしては、例えば、綜研化学社製の商品名E−AX、E−5C等が挙げられる。
【0021】
上記多官能エポキシ架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル粘着剤100重量部に対する好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は10重量部である。上記多官能エポキシ架橋剤の含有量がこの範囲内であると、特に耐熱性に優れた粘着テープを得ることができる。上記多官能エポキシ架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0022】
上記粘着剤層は、上記多官能エポキシ架橋剤以外のその他の架橋剤(以下、「その他の架橋剤」ともいう。)、例えばイソシアネート系架橋剤等を含有してもよい。ただし、イソシアネート系架橋剤等のその他の架橋剤を併用する場合であっても、上記(メタ)アクリル粘着剤100重量部に対するその他の架橋剤の含有量を0.05重量部以下とすることが好ましく、0.02重量部以下とすることがより好ましい。その他の架橋剤の含有量が多くなると、300℃の高温にさらされたときに、発泡しやすくなったり、充分な粘着力を発揮できなかったりすることがある。
【0023】
上記粘着剤層は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
【0024】
上記粘着剤層のゲル分率の下限は50%、上限は70%である。上記粘着剤層のゲル分率をこの範囲内とすることにより、高い粘着性と、300℃の高温にさらされても発泡することのない耐熱性とを両立することができる。上記ゲル分率の好ましい下限は55%、好ましい上限は65%である。
なお、上記粘着剤層のゲル分率は、粘着剤層をW1(g)採取し、この粘着剤層を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬して不溶解分を200メッシュの金網で濾過し、金網上の残渣を真空乾燥して乾燥残渣の重量W2(g)を測定し、下記式(1)により算出する。
ゲル分率(%)=W2/W1×100 (1)
【0025】
本発明の粘着テープは、空気中において昇温速度10℃/minで35℃から500℃まで昇温したときの重量減少率が5%以下であることが好ましい。上記重量減少率が5%以下であると、300℃の高温にさらされても、粘着剤層に含まれる(メタ)アクリル粘着剤や粘着付与樹脂等の分解が少なく、より発泡を抑えながら、高い粘着力を発揮することができる。上記重量減少率は、3%以下であることがより好ましい。
本発明の粘着テープの上記重量減少率は、例えば、上記多官能エポキシ架橋剤の種類や配合量を調整したり、軟化点の異なる複数の粘着付与樹脂を併用したりすることにより、5%以下に調整することができる。
なお、上記重量減少率は、例えば、熱重量・示差熱分析装置(例えば、日立ハイテクサイエンス社製、(TG/DTA)7300等)を用いて、空気中において昇温速度10℃/minで35℃から500℃まで昇温する処理前後でのサンプルの重量を測定し、下記式にて算出することができる。
重量減少率(%)=(処理前重量−処理後重量)/(処理前重量)×100
【0026】
本発明の粘着テープは、上記粘着剤層のみからなる、基材を有しないノンサポートタイプであってもよく、基材の片面又は両面に上記粘着剤層を有するサポートタイプであってもよい。なかでも、特に優れた耐熱性を発揮できることから、ノンサポートタイプが好適である。
本発明の粘着テープがサポートタイプである場合、上記基材としては、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の耐熱性に優れる基材を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の粘着テープの製造方法としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル粘着剤、軟化点が150℃以上の粘着付与樹脂、多官能エポキシ架橋剤、及び、必要に応じて配合する添加剤に溶剤を加えて溶液を作製して、この溶液を離型処理を施した基材の表面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去する方法等が挙げられる。
【0028】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、高い耐熱性を有することから、高温処理を伴う用途に好適に用いることができる。具体的には例えば、リフロー工程やTCB工程のような高温過程を経るFPCの固定用途等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、300℃の高温にさらされても、発泡することなく、充分な粘着力を発揮することができる耐熱粘着テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
(1)(メタ)アクリル共重合体の調製
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、モノマー混合物(ブチルアクリレート65.0重量部、2−エチルヘキシルアクリレート31.9重量部、アクリル酸3.0重量部、及び、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部)を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、アクリル共重合体含有溶液を得た。
得られたアクリル共重合体の重量平均分子量を測定したところ、それぞれ123万であった。
【0032】
(2)粘着テープの製造
得られた(メタ)アクリル共重合体の溶液に含まれる(メタ)アクリル共重合体の固形分100重量部に対して、粘着付与樹脂として軟化点150℃の重合ロジンエステル15重量部、軟化点100℃の水添ロジンエステル10重量部、軟化点150℃のテルペンフェノール10重量部を加え混合し、多官能エポキシ架橋剤(綜研化学社製、E−5C、硬化剤濃度5%)を固形分比で0.05重量部添加し、攪拌して、粘着剤組成物を得た。
【0033】
離型紙を用意し、この離型紙の離型処理面に粘着剤組成物を塗布し、100℃で5分間乾燥させることにより、厚み50μmの粘着剤層からなるノンサポートタイプの粘着テープを得た。得られた粘着テープを40℃で48時間養生した。
得られた粘着剤層のゲル分率は58%であった。
【0034】
得られた粘着テープについて、熱重量・示差熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、(TG/DTA)7300)を用いて、空気中において昇温速度10℃/minで35℃から500℃まで昇温する処理前後でのサンプルの重量を測定し、上記式にて算出したところ、重量減少率は2.9%であった。
【0035】
(実施例2〜6、比較例1〜8)
組成を表1、表2に示したようにした以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
なお、架橋剤としては以下のものを用いた。
【0036】
多官能エポキシ架橋剤:綜研化学社製、E−AX、硬化剤濃度5%
イソシアネート架橋剤:日本ポリウレタン社製、コロネートL−45、硬化剤濃度45%
【0037】
<評価>
実施例、比較例で得られた粘着テープについて以下の評価を行った。結果を表1、表2に示した。
【0038】
(1)高温処理後の発泡の評価
得られた粘着テープを25mm×100mmのサイズに切断し、片面をアルミニウム板(A1050)に貼り合わせ、もう片面をポリイミドフィルムに貼り合わせた。これを300℃に調整したオーブン中に9分間置いた後、テープが300℃になっていることを確認し、更に1分間加熱した後、取り出して23℃にまで自然冷却した。目視にて観察して粘着剤層中に発泡が認められなかった場合を「○」と、発泡が認められた場合を「×」と評価した。
【0039】
(2)粘着性の評価
得られた粘着テープを25mm幅の短冊状に細切した試験片を、23℃及び相対湿度50%RHの環境下でアルミニウム板(A1050)に貼り付けた。貼り付けた面と別の面に30mm幅に細切したポリイミドフィルムを貼り合わせ裏打ちした。JIS Z0237に準拠して、被着体から引張速度300mm/分で90°方向に粘着テープを剥離し、初期粘着力を測定した。
一方、粘着テープを25mm幅の短冊状に細切した試験片を、23℃及び相対湿度50%RHの環境下でアルミニウム板(A1050)に貼り付けた。貼り付けた面と別の面に30mm幅に細切したポリイミドフィルムを貼り合わせ裏打ちした。これを300℃に調整したオーブン中に9分間置いた後、テープが300℃になっていることを確認し、更に1分間加熱した後、取り出して23℃にまで自然冷却した。高温処理後の試験片を用いて、上記と同様の方法により高温処理後の粘着力を測定した。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、300℃の高温にさらされても、発泡したり、粘着力が低下したりすることがない耐熱粘着テープを提供することができる。