(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の方向に積層された複数のセラミック層、及び前記複数のセラミック層の間に配置された複数の内部電極を有する容量形成部と、前記容量形成部を前記第1の方向から被覆するカバー部と、前記容量形成部を前記第1の方向と直交する第2の方向から被覆するサイドマージン部と、前記第1の方向を向いた主面と、を有する素体を具備し、
前記容量形成部は、前記カバー部に隣接する表層部を有し、前記表層部における前記内部電極の前記第2の方向の端部が前記カバー部側に湾曲し、
前記カバー部に隣接する前記内部電極では、前記端部において前記第2の方向の中央部よりも前記主面との間の前記第1の方向の距離が短い
積層セラミックコンデンサ。
第1の方向に積層された複数のセラミック層、及び前記複数のセラミック層の間に配置された複数の内部電極を有する容量形成部と、前記容量形成部を前記第1の方向から被覆するカバー部と、を有する未焼成の積層チップを作製し、
前記容量形成部に、前記内部電極の前記第1の方向と直交する第2の方向の端部が前記カバー部側に湾曲し、前記カバー部に隣接する表層部を形成し、
絶縁性セラミックスからなるサイドマージン部で、前記第2の方向から前記積層チップを覆う
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0020】
[積層セラミックコンデンサ10の全体構成]
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA−A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB−B'線に沿った断面図である。
【0021】
積層セラミックコンデンサ10は、素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を具備する。
素体11は、典型的には、Z軸方向を向いた2つの主面S1,S2と、Y軸方向を向いた2つの側面S3,S4と、を有する。素体11の各面を接続する稜部は面取りされている。なお、素体11の形状はこのような形状に限定されない。例えば、素体11の各面は曲面であってもよく、素体11は全体として丸みを帯びた形状であってもよい。
第1及び第2外部電極14,15は、素体11のX軸方向両端面を覆い、X軸方向両端面に接続する4つの面に延出している。これにより、第1及び第2外部電極14,15のいずれにおいても、X−Z平面に平行な断面及びX−Y軸に平行な断面の形状がU字状となっている。
【0022】
素体11は、積層部16と、サイドマージン部17と、を有する。
積層部16は、複数のセラミック層がZ軸方向に積層された構成を有する。
【0023】
積層部16は、容量形成部18と、カバー部19と、を有する。
容量形成部18は、複数の第1内部電極12と、複数の第2内部電極13と、を有する。第1及び第2内部電極12,13は、複数のセラミック層の間に、Z軸方向に沿って交互に配置されている。第1内部電極12は、第1外部電極14に接続され、第2外部電極15から絶縁されている。第2内部電極13は、第2外部電極15に接続され、第1外部電極14から絶縁されている。
【0024】
第1及び第2内部電極12,13は、それぞれ導電性材料からなり、積層セラミックコンデンサ10の内部電極として機能する。当該導電性材料としては、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)、又はこれらの合金を含む金属材料を用いることができ、典型的にはニッケル(Ni)を主成分とする金属材料が採用される。
【0025】
容量形成部18は、
図2及び
図3に示すように、カバー部19に隣接する表層部18aと、表層部18aにZ軸方向に隣接する中央部18bと、から構成される。つまり、表層部18aは容量形成部18のZ軸方向両端部を構成し、中央部18bは容量形成部18のZ軸方向中央部を構成する。
【0026】
表層部18aは、
図3に示すようにZ軸方向からカバー部19に被覆され、Y軸方向からサイドマージン部17に被覆される。中央部18bは、同図に示すようにZ軸方向から表層部18aに被覆され、Y軸方向からサイドマージン部17に被覆される。
【0027】
ここで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10では、
図3に示すように、表層部18aにおける内部電極12,13のY軸方向の端部が、中央部18bから離間する方向に湾曲している。
即ち、カバー部19とサイドマージン部17とが交わる容量形成部18の角部付近における内部電極12,13のY軸方向の端部が、中央部18bから離間する方向に湾曲している。これにより、容量形成部18の角部付近における内部電極12,13のY軸方向の端部間の間隔が良好に確保され、この角部付近での短絡不良が抑制される。内部電極12,13の端部については後述する。
【0028】
容量形成部18は、セラミックスによって形成されている。容量形成部18では、第1内部電極12と第2内部電極13との間の各セラミック層の容量を大きくするため、セラミック層を構成する材料として高誘電率の材料が用いられる。容量形成部18では、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系材料の多結晶体、つまりバリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の多結晶体を用いることができる。
【0029】
また、容量形成部18は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO
3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO
3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O
3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO
3)系又は酸化チタン(TiO
2)系材料等の多結晶体であってもよい。
【0030】
カバー部19は、容量形成部18のZ軸方向上下面をそれぞれ覆っている。カバー部19には、第1及び第2内部電極12,13が設けられていない。
【0031】
サイドマージン部17は、
図3に示すように、カバー部19と一体的に形成され、容量形成部18をY軸方向から覆っている。
【0032】
このように、素体11において、容量形成部18の第1及び第2外部電極14,15が設けられたX軸方向両端面以外の面がサイドマージン部17及びカバー部19によって覆われている。サイドマージン部17及びカバー部19は、主に、容量形成部18の周囲を保護し、第1及び第2内部電極12,13の絶縁性を確保する機能を有する。
【0033】
サイドマージン部17及びカバー部19も、セラミックスによって形成されている。サイドマージン部17及びカバー部19を構成する材料は絶縁性セラミックスであり、容量形成部18と共通の組成系のセラミックスを用いることにより素体11における内部応力が抑制される。
【0034】
サイドマージン部17、カバー部19及び容量形成部18は、例えば、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)以外に、例えば、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、イットリウム(Y)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)、カリウム(K)又はナトリウム(Na)等の金属元素を一種又は複数種更に含有してもよい。
【0035】
上記の構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間の複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、第1外部電極14と第2外部電極15との間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0036】
なお、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、積層部16及びサイドマージン部17を備えていればよく、その他の構成について適宜変更可能である。例えば、第1及び第2内部電極12,13の枚数は、積層セラミックコンデンサ10に求められるサイズや性能に応じて、適宜決定可能である。
また、
図2,3では、第1及び第2内部電極12,13の対向状態を見やすくするために、第1及び第2内部電極12,13の枚数をそれぞれ4枚に留めている。しかし、実際には、積層セラミックコンデンサ10の容量を確保するために、より多くの第1及び第2内部電極12,13が設けられている。
【0037】
図4は、
図3に示した領域Pを拡大して示す模式図である。表層部18aに配置された内部電極12,13のY軸方向の端部は、
図4に示すように、主面S1側のカバー部19に向かって湾曲している。内部電極12,13のY軸方向の端部は、サイドマージン部17に隣接している。
なお、積層セラミックコンデンサ10では、主面S1とZ軸方向反対側の主面S2側の表層部18aに配置された内部電極12,13のY軸方向の端部も、
図4に示す構成と同様の構成を有する。
【0038】
表層部18aにおける第1内部電極12のY軸方向の端部と、第2内部電極13のY軸方向の端部との間隔は、
図4に示すように、サイドマージン部17に向かって徐々に拡大し、表層部18aのY軸方向中央部付近の第1及び第2内部電極12,13間の距離よりも大きい。
【0039】
特に、カバー部19に隣接する第1内部電極12では、Y軸方向の端部においてY軸方向の中央部よりも主面S1との間のZ軸方向の距離が短い。即ち、カバー部19に隣接している第1内部電極12のY軸方向の端部と主面S1との間の距離D1は、カバー部19に隣接する第1内部電極12のY軸方向中央部と主面S1との間の距離D2よりも短い。
【0040】
これにより、カバー部19に隣接する第1内部電極12のY軸方向の端部と、この端部とセラミック層を介してZ軸方向に対向する第2内部電極13のY軸方向の端部との間隔D3が、表層部18aのY軸方向中央部付近の第1及び第2内部電極12,13間の平均距離よりも大きくなる。
従って、カバー部19に隣接する第1内部電極12のY軸方向の端部と、第2内部電極13のY軸方向の端部との間隔が良好に確保される。
【0041】
また、表層部18aにおいて、内部電極12,13のカバー部19側に湾曲している端部が配置されている部分のZ軸方向の寸法D4(カバー部19に隣接する第1内部電極12のY軸方向の端部と中央部18bとの間の距離)は、5μmより大きいことが好ましい。
これにより、第1内部電極12と第2内部電極13との間隔を良好に確保可能な第1及び第2内部電極12,13のY軸方向の端部が、容量形成部18の角部付近において広範囲に設けられる。従って、容量形成部18の角部付近での短絡不良を確実に抑制することが可能となる。
【0042】
中央部18bの内部電極12,13は、
図4に示すように、サイドマージン部17に向かってY軸方向に延び、第1内部電極12と第2内部電極13との間において一定の間隔が確保されている。
【0043】
本実施形態では、表層部18aにおける第1及び第2内部電極12,13のY軸方向の端部が上記構成であることにより、容量形成部18の角部付近において、第1及び第2内部電極12,13のY軸方向の端部間の間隔が良好に確保される。これにより、容量形成部18の角部付近での内部電極12,13同士の導通が効果的に抑制され、積層セラミックコンデンサ10の短絡不良が抑制される。
【0044】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図5は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図6〜13は積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図5に沿って、
図6〜13を適宜参照しながら説明する。
【0045】
(ステップS01:セラミックシート準備工程)
ステップS01では、容量形成部18を形成するための第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、カバー部19を形成するための第3セラミックシート103と、を準備する。セラミックシート101,102,103は、絶縁性セラミックスを主成分とし、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードを用いてシート状に成形される。
【0046】
図6は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103は各積層セラミックコンデンサ10ごとに切り分けられていない。
図6には、各積層セラミックコンデンサ10ごとに切り分ける際の切断線Lx,Lyが示されている。切断線LxはX軸に平行であり、切断線LyはY軸に平行である。
【0047】
図6に示すように、第1セラミックシート101には第1内部電極12に対応する未焼成の第1内部電極112が形成され、第2セラミックシート102には第2内部電極13に対応する未焼成の第2内部電極113が形成されている。なお、カバー部19に対応する第3セラミックシート103には内部電極が形成されていない。
【0048】
第1及び第2内部電極112,113は、例えば、ニッケル(Ni)を含む導電性ペーストを用いて形成することができる。導電性ペーストによる第1及び第2内部電極112,113の形成には、例えば、スクリーン印刷法やグラビア印刷法を用いることができる。
【0049】
第1及び第2内部電極112,113は、切断線Lyによって仕切られたX軸方向に隣接する2つの領域にわたって配置され、Y軸方向に帯状に延びている。第1内部電極112と第2内部電極113とでは、切断線Lyによって仕切られた領域1列ずつX軸方向にずらされている。つまり、第1内部電極112の中央を通る切断線Lyが第2内部電極113の間の領域を通り、第2内部電極113の中央を通る切断線Lyが第1内部電極112の間の領域を通っている。
【0050】
(ステップS02:積層工程)
ステップS02では、ステップS01で準備したセラミックシート101,102,103を積層することにより積層シート104を作製する。
【0051】
図7は、ステップS02で得られる積層シート104の分解斜視図である。
図7では、説明の便宜上、セラミックシート101,102,103を分解して示している。しかし、実際の積層シート104では、セラミックシート101,102,103が静水圧加圧や一軸加圧などにより圧着されて一体化される。これにより、高密度の積層シート104が得られる。
【0052】
積層シート104では、容量形成部18に対応する第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層されている。
また、積層シート104では、交互に積層された第1及び第2セラミックシート101,102のZ軸方向上下面にカバー部19に対応する第3セラミックシート103が積層される。なお、
図7に示す例では、第3セラミックシート103がそれぞれ3枚ずつ積層
されているが、第3セラミックシート103の枚数は適宜変更可能である。
【0053】
(ステップS03:切断工程)
ステップS03では、ステップS02で得られた積層シート104を回転刃や押し切り刃などによって切断することにより未焼成の積層チップ116を作製する。
【0054】
図8は、ステップS03の後の積層シート104の平面図である。積層シート104は、保持部材Cに固定された状態で、切断線Lx,Lyに沿って切断される。これにより、積層シート104が個片化され、積層チップ116が得られる。このとき、保持部材Cは切断されておらず、各積層チップ116は保持部材Cによって接続されている。
【0055】
図9は、ステップS03で得られる積層チップ116の斜視図である。積層チップ116には、未焼成の容量形成部118及びカバー部119が形成されている。積層チップ116では、切断面であるY軸方向を向いた両側面S5,S6に未焼成の第1及び第2内部電極112,113が露出している。
【0056】
(ステップS04:サイドマージン部形成工程)
ステップS04では、積層チップ116の側面S5,S6に未焼成のサイドマージン部117を設けることにより、未焼成の素体111を作製する。
【0057】
ステップS04では、積層チップ116の両側面S5,S6にサイドマージン部117を設けるために、テープなどの保持部材の貼り替えなどにより積層チップ116の向きが適宜変更される。
特に、ステップS04では、ステップS03における積層チップ116の切断面であるY軸方向を向いた両側面S5,S6にサイドマージン部117が設けられる。このため、ステップS04では、予め保持部材Cから積層チップ116を剥がし、積層チップ116の向きを90度回転させておくことが好ましい。
【0058】
図10〜
図12は、ステップS04のプロセスを示す模式図であり、積層チップ116にサイドマージンシート117sが打ち抜かれる様子を示す図である。以下、ステップS04のプロセスについて順を追って説明する。
【0059】
先ず、サイドマージン部117を形成するためのサイドマージンシート117sが準備される。サイドマージンシート117sは、ステップS01で準備されるセラミックシート101,102,103と同様に、絶縁性セラミックスを主成分とし、未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。
サイドマージンシート117sは、例えばロールコーターやドクターブレードが用いられることによりシート状に成形される。
【0060】
次いで、
図10に示すように、平板状の弾性体400の上にサイドマージンシート117sが配置される。そして、積層チップ116の側面S6とサイドマージンシート117sがY軸方向に対向するように、積層チップ116が配置される。ステップS04では、積層チップ116の向きがテープ等の保持部材の貼り替え工程によって適宜変更されることにより、
図10に示すように、積層チップ116の側面S5がテープTに保持されている。
【0061】
続いて、積層チップ116をサイドマージンシート117sに向かってY軸方向に移動させることにより、積層チップ116の側面S6をサイドマージンシート117sに押し付ける。
【0062】
この際、
図11に示すように、積層チップ116がサイドマージンシート117sと共に弾性体400に食い込む。これに伴い、積層チップ116から弾性体400に加わるY軸方向の押圧力によって、弾性体400がY軸方向に隆起してサイドマージンシート117sを押し上げる。
これにより、弾性体400からサイドマージンシート117sにせん断力が加わり、側面S6とY軸方向に対向するサイドマージンシート117sが切り離される。そして、このサイドマージンシート117sが側面S6に貼り付く。
【0063】
ここで、ステップS04では、サイドマージンシート117sが切り離される際に、サイドマージンシート117sがZ軸方向に引き延ばされる。この際、弾性体400は、積層チップ116を構成するセラミック層に含まれるバインダーのガラス転移温度以上、好ましくはガラス転移点よりも20℃以上高温で保持されるように加熱されている。
これにより、側面S6とY軸方向に対向するサイドマージンシート117sがZ軸方向に引き延ばされることによって発生するZ軸方向の応力がカバー部119付近で集中的に開放され、カバー部119近傍の内部電極112,113のY軸方向の端部がカバー部119側に湾曲する。
【0064】
この際、カバー部近傍の内部電極112,113のY軸方向の端部の湾曲量を制御する方法として、積層チップ116の側面S6をサイドマージンシート117sに押し付ける際に、カバー部119近傍のY軸方向の端部に加わる加圧力が非線形に変化するような制御を行ってもよい。
具体的には、積層チップ116の側面S6をサイドマージンシート117sに押し付けて、積層チップ116をY軸方向に引き上げる直前に、一気にカバー部119近傍のY軸方向の端部に加わる圧力が高まるような制御を行ってもよい。
このような、制御としては、例えば、積層チップ116の側面S6をサイドマージンシート117sに押し付けて、積層チップ116をY軸方向に引き上げる直前に、側面S6がサイドマージンシート117sを押し込む押し込み速度を上げる方法等が挙げられる。
【0065】
次いで、積層チップ116が弾性体400と離間するように積層チップ116をY軸方向に移動させると、
図12に示すように、側面S6に貼り付いたサイドマージンシート117sのみが弾性体400と離間する。これにより、積層チップ116の側面S4にサイドマージン部117が形成される。
【0066】
続いて、テープTに保持されている積層チップ116を別のテープに保持させることにより、積層チップ116の側面S5を露出させ、側面S5とサイドマージンシート117sとをY軸方向に対向させる。そして、側面S6にサイドマージン部117を形成する上記工程と同様の工程を経て側面S5にもサイドマージン部117が形成され、側面S5側のカバー部119近傍の内部電極112,113のY軸方向の端部もカバー部119側に湾曲する。
これにより、積層チップ116の両側面S5,S6に、サイドマージン部117が形成された未焼成の素体111が得られる。
【0067】
図13は、ステップS04によって得られる未焼成の素体111の断面図である。
未焼成の素体111は、側面S5,S6に露出している内部電極112,113のY軸方向の端部がサイドマージン部117に覆われ、内部電極112,113のX軸方向の端部がX軸方向端面に露出する。
【0068】
また、ステップS04では、素体111は側面S5,S6にサイドマージン部117が形成されることによって、
図13に示すように、容量形成部118に第1及び第2内部電極112,113のY軸方向の端部がカバー部119側に湾曲し、カバー部119に隣接する表層部118aと、表層部118aにZ軸方向に隣接する中央部118bとが形成される。
【0069】
(ステップS05:焼成工程)
ステップS05では、ステップS04で得られた未焼成の素体111を焼成することにより、
図1〜3に示す積層セラミックコンデンサ10の素体11を作製する。
つまり、ステップS05により第1及び第2内部電極112,113が第1及び第2内部電極12,13になり、積層チップ116が積層部16になり、サイドマージン部117がサイドマージン部17になる。また、表層部118aが表層部18aになり、中央部118bが中央部18bになる。
【0070】
ステップS05における素体111の焼成温度は、積層チップ116及びサイドマージン部117の焼結温度に基づいて決定することができる。例えば、セラミックスとしてチタン酸バリウム(BaTiO
3)系材料を用いる場合には、素体111の焼成温度は1000〜1300℃程度とすることができる。また、焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0071】
ここで、本実施形態では、先のステップS04により、カバー部119近傍の第1及び第2内部電極112,113のY軸方向の端部がカバー部119側に湾曲することで、容量形成部118の角部付近の第1内部電極112のY軸方向の端部と第2内部電極113のY軸方向の端部との間隔が良好に確保される。
【0072】
これにより、素体111の焼成時において、サイドマージン部117、容量形成部118及びカバー部119の焼成時の収縮挙動がそれぞれ異なること等により、容量形成部118の角部付近の内部電極112,113のY軸方向の端部が中央部118b側に変形したとしても、内部電極112,113のY軸方向の端部間の間隔が確保され、内部電極112,113のY軸方向の端部同士の接触が抑制される。
【0073】
(ステップS06:外部電極形成工程)
ステップS06では、ステップS05で得られた素体11に第1及び第2外部電極14,15を形成することにより、
図1〜3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。
【0074】
ステップS06では、まず、素体11の一方のX軸方向端面を覆うように未焼成の電極材料を塗布し、素体11の他方のX軸方向端面を覆うように未焼成の電極材料を塗布する。塗布された未焼成の電極材料を、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において焼き付け処理を行って、素体11に下地膜を形成する。そして、素体11に焼き付けられた下地膜の上に、中間膜及び表面膜を電解メッキなどのメッキ処理で形成して、第1及び第2外部電極14,15が完成する。
【0075】
なお、上記のステップS06における処理の一部を、ステップ05の前に行ってもよい。例えば、ステップS05の前に未焼成の素体111のX軸方向両端面に未焼成の電極材料を塗布し、ステップS05において、未焼成の素体111を焼結させると同時に、未焼成の電極材料を焼き付けて第1及び第2外部電極14,15の下地膜を形成してもよい。
【0076】
(変形例)
積層セラミックコンデンサ10の製造方法は、上述の製造方法に限定されず、製造工程
の変更や追加等が適宜行われてもよい。
【0077】
例えば、上記の製造方法では、積層チップ116の側面S5,S6にサイドマージン部117を形成することにより、容量形成部118に表層部118aが形成される。しかし、容量形成部118に表層部118aを形成する方法は上記の方法に限定されない。
【0078】
本実施形態では、積層チップ116の側面S5,S6にサイドマージン部117を形成する前に、積層チップ116の側面S5,S6を押圧することにより、容量形成部118に表層部118aを形成してもよい。
図14,15は、本発明の変形例に係る積層セラミックコンデンサの製造過程を示す模式図である。以下、本発明に変形例に係る表層部118aの形成方法について、
図14,15を参照して説明する。
【0079】
先ず、
図14に示すように、積層チップ116の側面S6と金属板MがY軸方向に対向するように、積層チップ116を配置する。この金属板Mは、積層チップ116を構成するセラミック層に含まれるバインダーのガラス転移温度以上、好ましくはガラス転移点よりも20℃以上高温で保持されるように加熱されている。
【0080】
続いて、積層チップ116を金属板Mに向かってY軸方向に移動させることにより、積層チップ116の側面S6を金属板Mに押し付ける。この際、積層チップ116の側面S6付近が軟化する。これにより、Z軸方向に拘束されていないカバー部119付近がZ軸方向に広がるように変形すると共に、カバー部119近傍の内部電極112,113のY軸方向の端部もカバー部119側に変形する。
【0081】
次いで、側面S6を金属板Mに押し付ける上記工程と同様の行程を行うことにより、側面S5側のカバー部119近傍の内部電極112,113のY軸方向の端部もカバー部119側に湾曲させる。これにより、容量形成部118に表層部118aが形成される。
【0082】
また、本実施形態では、積層チップ116の側面S5,S6にサイドマージン部117を事後的に形成する場合に限られず、容量形成部118に表層部118aを上記方法と異なる方法によっても形成可能である。
このような方法の一例としては、セラミックシート101,102の厚みを調整する方法が挙げられる。例えば、未焼成の素体111を作製した際に、カバー部119近傍の5〜10層のセラミック層の厚みが素体111のY軸方向中央部からY軸方向両側面に向かって徐々に厚くなるように、セラミックシート101,102の厚みを調整する。
【0083】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0084】
例えば、積層セラミックコンデンサ10では、容量形成部18がZ軸方向に複数に分割して設けられていてもよい。この場合、各容量形成部18において第1及び第2内部電極12,13がZ軸方向に沿って交互に配置されていればよく、容量形成部18が切り替わる部分において第1内部電極12又は第2内部電極13が連続して配置されていてもよい。