(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
なお、以下では、本発明に係るブレーキ液圧制御装置が、モータサイクル用ブレーキシステムに用いられる場合を説明するが、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、モータサイクル以外の車両(例えば、自動車、トラック等)のブレーキシステムに用いられてもよい。また、以下では、本発明に係るブレーキ液圧制御装置が、前輪液圧回路及び後輪液圧回路を備えているブレーキシステムに適用される場合を説明するが、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、前輪液圧回路及び後輪液圧回路の一方のみを備えているブレーキシステムに適用されてもよい。
【0013】
また、以下で説明する構成、動作などは、一例であり、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、そのような構成、動作などである場合に限定されない。例えば、本発明に係るブレーキ液圧制御装置は、ABSとしての動作以外を行うものであってもよい。
【0014】
また、各図では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、各図において、同一又は相当関係にある部材又は部分には、同一の符号を付すか、又は、符号を付すことを省略している。また、各図において、詳細部分の図示が適宜簡略化または省略されている。
【0015】
<モータサイクル200の外観構成>
図1を用いて、モータサイクル200の構成について説明する。なお、以下の説明において、本発明の実施の形態に係るモータサイクル用ブレーキシステムを、ブレーキシステム100と称する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置を含むモータサイクル用ブレーキシステムが適用されたモータサイクルの、構成の一例を示す模式図である。
【0016】
モータサイクル200は、車輪W及び車体Bとブレーキシステム100とを合わせたものである。なお、本実施の形態では、モータサイクル200が自動二輪車であるものとして説明するが、それに限定されるものではなく、自動三輪車でもよい。
【0017】
<ブレーキシステム100の全体構成>
図2を用いて、ブレーキシステム100の全体構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置を含むモータサイクル用ブレーキシステムの、構成図である。
【0018】
ブレーキシステム100は、モータサイクル200の車輪Wに発生する制動力を変化させるブレーキ液圧制御装置1を備えている。また、ブレーキシステム100は、自動二輪車を運転するユーザー等が操作するハンドルレバー24及びフットペダル34を備えている。このハンドルレバー24を操作すると前輪20に制動力が発生し、フットペダル34を操作すると後輪30に制動力が発生する。
【0019】
ブレーキシステム100は、前輪20における制動力の発生に利用されるブレーキ液が流れる前輪液圧回路C1と、後輪30における制動力の発生に利用されるブレーキ液が流れる後輪液圧回路C2とを含む。前輪液圧回路C1と後輪液圧回路C2とは、互いに独立して制動力を発生させる。前輪液圧回路C1は、本発明における「第1液圧回路」に相当する。後輪液圧回路C2は、本発明における「第2液圧回路」に相当する。
【0020】
ブレーキシステム100は、前輪20に制動力を発生させる機構として次の構成を備えている。すなわち、ブレーキシステム100は、前輪20に対応して設けられるフロントブレーキパッド21と、フロントブレーキパッド21を作動させるフロントブレーキピストン(図示省略)が摺動自在に設けられているフロントホイールシリンダ22と、フロントホイールシリンダ22に接続されたブレーキ液管23とを備えている。
【0021】
なお、フロントブレーキパッド21は、前輪20とともに回転するロータ(図示省略)を挟みこむように設けられている。そして、フロントブレーキパッド21は、フロントホイールシリンダ22内のフロントブレーキピストンに押されるとロータに当接して、摩擦力が発生し、ロータとともに回転する前輪20に制動力が発生する。
【0022】
ブレーキシステム100は、ハンドルレバー24に付設される第1マスターシリンダ25と、ブレーキ液を貯留する第1リザーバ26と、第1マスターシリンダ25に接続されたブレーキ液管27とを備えている。なお、第1マスターシリンダ25には、マスターシリンダピストン(図示省略)が摺動自在に設けられている。ハンドルレバー24が操作されると、第1マスターシリンダ25内のマスターシリンダピストンが動く。マスターシリンダピストンの位置によって、フロントブレーキピストンにかかるブレーキ液の圧力が変わるため、フロントブレーキパッド21がロータを挟み込む力が変わり、前輪20の制動力が変わる。
【0023】
ブレーキシステム100は、後輪30に制動力を発生させる機構として次の構成を備えている。すなわち、ブレーキシステム100は、後輪30に対応して設けられるリアブレーキパッド31と、リアブレーキパッド31を動かすリアブレーキピストン(図示省略)が摺動自在に設けられているリアホイールシリンダ32と、リアホイールシリンダ32に接続されたブレーキ液管33とを備えている。
【0024】
なお、リアブレーキパッド31は、後輪30とともに回転するロータ(図示省略)を挟みこむように設けられている。そして、リアブレーキパッド31は、リアホイールシリンダ32内のリアブレーキピストンに押されるとロータに当接して、摩擦力が発生し、ロータとともに回転する後輪30に制動力が発生する。
【0025】
ブレーキシステム100は、フットペダル34に付設される第2マスターシリンダ35と、ブレーキ液を貯留する第2リザーバ36と、第2マスターシリンダ35に接続されたブレーキ液管37とを備えている。なお、第2マスターシリンダ35には、マスターシリンダピストン(図示省略)が摺動自在に設けられている。フットペダル34が操作されると、第2マスターシリンダ35内のマスターシリンダピストンが動く。マスターシリンダピストンの位置によって、リアブレーキピストンにかかるブレーキ液の圧力が変わるため、リアブレーキパッド31がロータを挟み込む力が変わり、後輪30の制動力が変わる。
【0026】
<ブレーキ液圧制御装置1の構成>
図2〜
図5を用いて、ブレーキ液圧制御装置1の構成について説明する。
図3は、発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の、ケーシング側から見た斜視図である。
図4は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の、基体側から見た斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の、分解斜視図である。
【0027】
ブレーキ液圧制御装置1は、ブレーキ液が流れる内部流路4(
図2参照)が形成された基体10と、基体10に組み付けられるポンプ装置2と、前輪液圧回路C1及び後輪液圧回路C2に設けられた開閉自在の液圧調整弁3と、液圧調整弁3を駆動する駆動コイル11と、駆動コイル11を収納するケーシング12と、ポンプ装置2の駆動源であるモータ13と、ポンプ装置2や液圧調整弁3の動作を制御する制御部を含む制御器7と、制御器7の回路基板7Fを収納する制御装置ケーシング14等により構成されている。
【0028】
次に、
図2〜
図5を参照しながら、ブレーキ液圧制御装置1の各部の構成を説明する。
【0029】
(基体10)
基体10は、例えばアルミニウム等の金属製であり、略直方体形状のブロックから形成されている。基体10は、側面10A、側面10B、側面10C、側面10D、側面10E、側面10Fを有している。各側面は、平坦である場合に限られない。つまり、各側面が段差等を含んでいてもよい。側面10Eは、本発明における「第1側面」に相当する。側面10Dは、本発明における「第2側面」に相当する。
【0030】
側面10Aは、
図3及び
図4において紙面上側に位置している側面をいう。側面10Bは、
図4において紙面左側に位置している側面をいう。側面10Cは、
図3において紙面左側に位置する側面をいう。側面10Dは、
図3及び
図4において紙面下側に位置している側面をいう。側面10Eは、
図3においてケーシング12が取り付けられている側面をいう。側面10Fは、
図4において紙面右側に位置している側面をいう。つまり、側面10Aと側面10Dとが対向し、側面10Bと側面10Cとが対向し、側面10Eと側面10Fとが対向している。
【0031】
基体10の内部には、ブレーキ液が流通する内部流路4が形成されている。内部流路4は、前輪液圧回路C1の一部を構成する第1内部流路4A、第2内部流路4B及び第3内部流路4Cと、後輪液圧回路C2の一部を構成する第4内部流路4D、第5内部流路4E及び第6内部流路4Fと、を含んで構成されている。
【0032】
また、基体10の側面10Aには、各種ポートPが開口している。各種ポートPは、ハンドルレバー24等の駆動機構に対応する第1ポートP1と、フットペダル34等の駆動機構に対応する第2ポートP2と、フロントブレーキパッド21等の駆動機構に対応する第3ポートP3と、リアブレーキパッド31等の駆動機構に対応する第4ポートP4と、により構成されている。第1ポートP1には、ブレーキ液管27が接続される。第2ポートP2には、ブレーキ液管37が接続される。第3ポートP3には、ブレーキ液管23が接続される。第4ポートP4には、ブレーキ液管33が接続される。
【0033】
内部流路4のうち第1内部流路4Aは、ポンプ装置2のブレーキ液の流出側と、液圧調整弁3の一つである第1増圧弁3Aと、第1ポートP1とに接続されている。また、第1内部流路4Aには、内部流路4を流れるブレーキ液の流量を規制する第1フローリストリクタ5Aが設けられている。内部流路4のうち第2内部流路4Bは、第1増圧弁3Aと、液圧調整弁3の一つである第1減圧弁3Bと、第3ポートP3とに接続されている。内部流路4のうち第3内部流路4Cは、ポンプ装置2のブレーキ液の流入側と、第1減圧弁3Bとに接続されている。また、第3内部流路4Cには、内部流路4内のブレーキ液を貯留するアキュムレータ6が設けられている。
【0034】
内部流路4のうち第4内部流路4Dは、ポンプ装置2のブレーキ液の流出側と、液圧調整弁3の一つである第2増圧弁3Cと、第2ポートP2とに接続されている。また、第4内部流路4Dには、内部流路4を流れるブレーキ液の流量を規制する第2フローリストリクタ5Bが設けられている。内部流路4のうち第5内部流路4Eは、第2増圧弁3Cと、液圧調整弁3の一つである第2減圧弁3Dと、第4ポートP4とに接続されている。内部流路4のうち第6内部流路4Fは、ポンプ装置2のブレーキ液の流入側と、第2減圧弁3Dとに接続されている。また、第6内部流路4Fには、内部流路4内のブレーキ液を貯留するアキュムレータ6が設けられている。
【0035】
図5に示されるように、基体10の側面10Eの略中央には、モータ13等が収納される、有底のモータ用穴13Hが形成される。また、このモータ用穴13Hの周囲には、液圧調整弁3が収納される、有底の調整弁用穴3Hが形成されている。また、基体10の側面10Eには、ケーシング12を位置決めするための位置決め穴12Hが形成されている。また、基体10の側面10Eには、ビス18と係合するビス穴18Hが形成されている。基体10の側面10B及び側面10Cには、ポンプ装置2が収納されるポンプ用穴2Hが形成されている。基体10の側面10Dには、アキュムレータ6が収納される、アキュムレータ用穴6Hが形成されている。各穴については、後に詳述される。
【0036】
(ポンプ装置2)
ポンプ装置2は、基体10の内部流路4内のブレーキ液を第1マスターシリンダ25及び第2マスターシリンダ35側に搬送するものである。ポンプ装置2は、モータ13によって駆動される。例えば、ポンプ装置2は、2つである。一方のポンプ装置2は、前輪液圧回路C1内のブレーキ液の搬送に用いられ、第3内部流路4C内のブレーキ液を第1内部流路4A側に搬送する。他方のポンプ装置2は、後輪液圧回路C2内のブレーキ液の搬送に用いられ、第6内部流路4F内のブレーキ液を第4内部流路4D側に搬送する。ポンプ装置2は、例えば、ポンプ用穴2H内で往復動するピストン(図示省略)と、ピストンに取り付けられた弾性体(図示省略)と、ポンプ用穴2Hを塞ぐポンプカバー(図示省略)と、により構成されている。
【0037】
(モータ13及び減速機構60)
モータ13は、固定子、回転子、出力軸等から構成される電動部13Aを含む。モータ13は、基体10に対するケーシング12側に設けられている。モータ13の回路基板7F側の端部には、2つのモータ端子13Tが回路基板7Fに向かって立設されている。モータ端子13Tのうち1つはプラス端子13T1であり、モータ端子13Tのうちもう1つはマイナス端子13T2である。モータ13の動作は、制御器7によって制御される。
【0038】
減速機構60は、モータ13で発生した回転を減速するものである。つまり、モータ13で発生したトルクは、減速機構60により増幅される。減速機構60は、モータ13の電動部13Aの出力軸と嵌合する。つまり、減速機構60は、モータ13のうちの、モータ用穴13Hの底部側の端部に取り付けられる。モータ13の一端及び減速機構60は、モータ用穴13H内に収納されて、基体10に一体的に固定される。
【0039】
(偏心機構17)
偏心機構17は、モータ13から伝達された回転力によってポンプ装置2を駆動するものである。つまり、偏心機構17は、減速機構60で増幅された回転力を、ポンプ装置2に伝達する。偏心機構17の外周面は、モータ13の回転軸に対して偏心している。その外周面と接触しているポンプ装置2のピストン(図示省略)は、その外周面に押されて、モータ13の回転軸と直交する方向において往復運動する。
【0040】
(液圧調整弁3及び駆動コイル11)
液圧調整弁3は、基体10の内部流路4を開閉するために設けられた弁である。
図2及び
図5に示されるように、液圧調整弁3は、第1増圧弁3A、第1減圧弁3B、第2増圧弁3C及び第2減圧弁3Dを含む。液圧調整弁3は、例えば、駆動コイル11を駆動源とする電磁弁である。駆動コイル11の通電が、制御器7によって制御されることで、開閉状態が切り替えられる。
【0041】
駆動コイル11は、円筒形状のコイルハウジング15の内部に巻線を収納している。コイルハウジング15を貫通する円柱開口部15A内には、液圧調整弁3の一端側が収納される。その他端側は、調整弁用穴3H内に収納される。この状態で、駆動コイル11の通電をオン−オフすると、液圧調整弁3の基体10内に収納された可動子が移動して、可動子に連動する弁体が閉位置と開位置との間で移動する。
【0042】
コイルハウジング15の一方の端部は、基体10の側面10Eに固定される。コイルハウジング15の他方の端部15Cには、一対の端子台16が立設されている。端子台16にはコイル端子16Aが設けられており、コイル端子16Aを介して駆動コイル11に動力が供給される。
【0043】
第1増圧弁3Aは、ABS作動時において、フロントホイールシリンダ22内のブレーキ液の圧力を増圧するときに開かれる弁である。すなわち、第1増圧弁3Aが開かれると、第1マスターシリンダ25の作用によって第1内部流路4A側のブレーキ液が第2内部流路4B側に押し込まれる。その結果、フロントホイールシリンダ22のブレーキ液の圧力が上昇して、前輪20の制動力が強まる。
【0044】
第1減圧弁3Bは、ABS作動時において、フロントホイールシリンダ22内のブレーキ液の圧力を減圧するときに開かれる弁である。すなわち、第1減圧弁3Bが開かれると、フロントホイールシリンダ22のブレーキ液が第2内部流路4Bを介してアキュムレータ6に流入する。その結果、フロントホイールシリンダ22のブレーキ液の圧力が低下して、前輪20の制動力が弱まる。
【0045】
第2増圧弁3Cは、ABS作動時において、リアホイールシリンダ32内のブレーキ液の圧力を増圧するときに開かれる弁である。すなわち、第2増圧弁3Cが開かれると、第2マスターシリンダ35の作用によって第4内部流路4D側のブレーキ液が第5内部流路4E側に押し込まれる。その結果、リアホイールシリンダ32のブレーキ液の圧力が上昇して、後輪30の制動力が強まる。
【0046】
第2減圧弁3Dは、ABS作動時において、リアホイールシリンダ32内のブレーキ液の圧力を減圧するときに開かれる弁である。すなわち、第2減圧弁3Dが開かれると、リアホイールシリンダ32のブレーキ液が第5内部流路4Eを介してアキュムレータ6に流入する。その結果、リアホイールシリンダ32のブレーキ液の圧力が低下して、後輪30の制動力が弱まる。
【0047】
(アキュムレータ6)
アキュムレータ6は、内部流路4内のブレーキ液を貯留するものである。例えば、アキュムレータ6は、2つである。一方のアキュムレータ6は、前輪液圧回路C1内のブレーキ液の貯留に用いられる。他方のアキュムレータ6は、後輪液圧回路C2内のブレーキ液の貯留に用いられる。アキュムレータ6は、例えば、アキュムレータ用穴6H内で往復動するピストン(図示省略)と、ピストンに取り付けられた弾性体(図示省略)と、アキュムレータ用穴6Hを塞ぐアキュムレータカバー(図示省略)と、により構成されている。
【0048】
(制御器7)
図5に示されるように、制御器7は、検出機構からの信号を受ける入力部や演算を行うプロセッサ部、プログラムを記憶する記憶部等が設けられている回路基板7Fを含む。回路基板7Fとモータ端子13Tとは、金属片7Eを介して電気的に接続される。金属片7Eについては、後に詳述される。
【0049】
回路基板7Fには、金属片7Eの先端部(
図7における第1端部7Eaの先端部7Ea1)が挿入される第1端子用穴7Daが形成されている。また、回路基板7Fには、コイル端子16Aの先端部が挿入される第2端子用穴7Dbが形成されている。また、回路基板7Fには、ケーシング12の第1面部50に立設されているピン13Xの先端部が挿入されるピン用穴7Dcが形成されている。
【0050】
なお、制御器7は、回路基板7Fに検出信号を出力する各種検出機構を含む。検出機構としては、例えば、路面の勾配値を取得するのに用いられる加速度センサ、前輪20の車輪速を算出するのに用いられる前輪速度センサ、後輪30の車輪速を算出するのに用いられる後輪速度センサ等がある。
【0051】
(ケーシング12)
ケーシング12は、枠部12Aと、枠部12Aの側方に形成され、制御器7に接続されるコネクタ7Aを収納する収納部12Bと、により構成されている。ケーシング12の回路基板7Fと対向する面部が、第1面部50と定義され、ケーシング12の基体10と対向する面部が、第2面部40と定義される。
【0052】
図5に示されるように、枠部12Aには、コイル挿入穴53と、モータ挿入穴56と、が形成されている。コイル挿入穴53に駆動コイル11が収納されると、コイル端子16Aが、ケーシング12の第1面部50からに突出することとなり、回路基板7Fが接続可能となる。モータ挿入穴56にモータ13が収納されると、モータ端子13Tが、モータ挿入穴56の底部56Aに形成されているモータ端子用開口56Bを貫通して、ケーシング12の第1面部50から突出することとなって、金属片7Eの回路基板7Fに接続されない側の端部(
図7における第2端部7Eb)に接続される。金属片7Eについては、後に詳述される。
【0053】
枠部12Aには、ビス18を挿入するビス挿入穴18Aが形成されている。ビス18が、基体10に形成されているビス穴18Hに係合して、ケーシング12が基体10の側面10Eに保持される。
【0054】
ケーシング12の第2面部40には、位置決め突起(図示省略)が形成されている。ケーシング12は、その位置決め突起が位置決め穴12Hに挿入された状態で、基体10に取り付けられる。つまり、金属片7Eは、ケーシング12が基体10に取り付けられた状態において、基体10に対する規定位置に保持されるものである。
【0055】
(制御装置ケーシング14)
制御装置ケーシング14は、ケーシング12の第1面部50に取り付けられ、内部に制御器7の回路基板7Fを収納する蓋部材として機能する。
【0056】
<ブレーキ液圧制御装置1の要部の詳細>
図5〜
図7を用いて、ブレーキ液圧制御装置1の要部の詳細について説明する。
図6は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の基体の、斜視図である。
図7は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置の金属片の周辺の、第1面部側から見た斜視図である。
【0057】
まず、基体10に形成されている各穴について詳述する。
図6に示されるように、モータ用穴13H及び複数の調整弁用穴3Hは、基体10の同一の側面、つまり基体10の側面10Eに形成されている。具体的には、モータ用穴13Hの軸を含む基準平面Aの両側のそれぞれに、複数の調整弁用穴3Hが形成されている。そして、モータ用穴13Hは、複数の調整弁用穴3Hの間に形成されている。
【0058】
前輪液圧回路C1に含まれる第1増圧弁3A及び第1減圧弁3Bが収納される調整弁用穴3Hが、基体10の側面10Eにおいて
図6の紙面左側に形成され、後輪液圧回路C2に含まれる第2増圧弁3C及び第2減圧弁3Dが収納される調整弁用穴3Hが、基体10の側面10Eにおいて
図6の紙面右側に形成されている。つまり、前輪液圧回路C1に含まれる第1増圧弁3A及び第1減圧弁3Bが収納される調整弁用穴3Hと、後輪液圧回路C2に含まれる第2増圧弁3C及び第2減圧弁3Dが収納される調整弁用穴3Hと、が、基準平面Aの両側に分けられて形成されている。
【0059】
また、前輪液圧回路C1に含まれる第1増圧弁3A及び第1減圧弁3Bが収納される調整弁用穴3Hと、後輪液圧回路C2に含まれる第2増圧弁3C及び第2減圧弁3Dが収納される調整弁用穴3Hと、は、基準平面Aから等しい距離だけ離れた位置に形成されている。
【0060】
また、ビス18と係合するビス穴18Hは、基準平面Aの両側のそれぞれにおいて、モータ用穴13Hと複数の調整弁用穴3Hとの間に形成されている。
【0061】
また、アキュムレータ6が収納されるアキュムレータ用穴6Hは、側面10Eとは異なる側面である基体10の側面10Dに形成されている。具体的には、前輪液圧回路C1のアキュムレータ6は、基準平面Aの、前輪液圧回路C1に含まれる第1増圧弁3A及び第1減圧弁3Bが収納される調整弁用穴3Hと同じ側に形成されている。後輪液圧回路C2のアキュムレータ6は、基準平面Aの、後輪液圧回路C2の第2増圧弁3C及び第2減圧弁3Dが収納される調整弁用穴3Hと同じ側に形成されている。
【0062】
次に、金属片7Eについて詳述する。
図7に示されるように、金属片7Eは、ケーシング12の第1面部50に取り付けられている。金属片7Eは、回路基板7Fに接続される側の端部である第1端部7Eaと、モータ端子13Tに接続される側の端部である第2端部7Ebと、第1端部7Eaと第2端部7Ebとを連結する中間延設部7Ecと、を含んで構成されている。金属片7Eは、1枚の板金部材を加工して形成することができる。第1端部7Eaは、本発明における「回路基板に接続される側の端部」に相当する。
【0063】
第1端部7Eaの先端部7Ea1は、モータ13の回転軸と平行な方向に延びる。先端部7Ea1は、回路基板7Fの第1端子用穴7Daに挿通しやすくするために、先細り形状となっている。また、第1端部7Eaの基部7Ea2は、ケーシング12の第1面部50の突起56Dに形成されている凹部50Aに挿入されている。つまり、第1端部7Eaの基部7Ea2は、凹部50Aによって、ケーシング12側から支承されている。
【0064】
第2端部7Ebは、平板状になっており、略中央にスリット部7Eb1が形成されている。スリット部7Eb1は、ケーシング12のモータ端子用開口56Bと連通する。モータ端子用開口56Bを貫通して、第1面部50から突出するモータ端子13Tは、スリット部7Eb1に挟持される。
【0065】
中間延設部7Ecは、第1端部7Eaと第2端部7Ebとの間の領域を、蛇行する形状である。つまり、中間延設部7Ecの途中部には、振動の伝達を抑制するためのバネ構造が設けられている。
【0066】
図5及び
図7に示されるように、回路基板7Fがケーシング12に取り付けられると、第1端部7Eaの先端部7Ea1は、回路基板7Fの第1端子用穴7Daに挿入される。一対のモータ端子13Tのそれぞれに、金属片7Eが設けられており、一方のモータ端子13Tに接続されている金属片7Eの第1端部7Eaと、他方のモータ端子13Tに接続されている金属片7Eの第1端部7Eaと、は、それらのモータ端子13Tを通る直線Lを含む基準平面Aに対して、互いに反対側にずれた位置に設けられている。そのような構成によって、回路基板7Fに部品搭載スペースを確保することが可能となる。また、第1端部7Eaが、コイル端子16Aに近づくことで、回路基板7Fの限られた領域のみを支えつつ、回路基板7Fを取り付けることが可能となって、モータ端子13T及びコイル端子16Aと、回路基板7Fと、の接続の作業性が向上する。
【0067】
<ブレーキ液圧制御装置1の効果>
実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置1では、モータ用穴13H及び複数の調整弁用穴3Hが、基体10の同一の側面10Eに形成されており、モータ用穴13Hの軸を含む基準平面Aの両側のそれぞれに、複数の調整弁用穴3Hが形成されており、モータ用穴13Hが、複数の調整弁用穴3Hの間に形成されている。つまり、モータ用穴13Hは、複数の調整弁用穴3Hの間のスペースを活用するような位置に形成されている。そのため、ブレーキ液圧制御装置1を小型化することが可能である。
【0068】
好ましくは、実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置1では、前輪液圧回路C1の複数の液圧調整弁3を収納する複数の調整弁用穴3Hと、後輪液圧回路C2の複数の液圧調整弁3を収納する複数の調整弁用穴3Hと、が、基準平面Aの両側に分けられて形成されている。そのため、液圧回路が1つであるブレーキ液圧制御装置との製造工程及び製造設備等の共通化が可能となって、製造コストが低減される。
【0069】
特に、前輪液圧回路C1の複数の液圧調整弁3を収納する複数の調整弁用穴3Hと、後輪液圧回路C2の複数の液圧調整弁3を収納する複数の調整弁用穴3Hと、が、基準平面Aから等しい距離だけ離れた位置に形成されているとよい。そのような構成によって、液圧回路が1つであるブレーキ液圧制御装置との製造工程及び製造設備等の更なる共通化が可能となって、製造コストが更に低減される。
【0070】
特に、前輪液圧回路C1のアキュムレータ6を収納するアキュムレータ用穴6Hが、基準平面Aの、前輪液圧回路C1の複数の液圧調整弁3を収納する複数の調整弁用穴3Hと同じ側に形成されており、後輪液圧回路C2のアキュムレータ6を収納するアキュムレータ用穴6Hが、基準平面Aの、後輪液圧回路C2の複数の液圧調整弁3を収納する複数の調整弁用穴3Hと同じ側に形成されているとよい。そのような構成によって、液圧回路が1つであるブレーキ液圧制御装置との製造工程及び製造設備等の更なる共通化が可能となって、製造コストが更に低減される。
【0071】
特に、複数のアキュムレータ用穴6Hが、基体10の側面10Eとは異なる側面10Dに形成されているとよい。そのような構成によって、基体10の内部流路4を短縮して、ブレーキ液圧制御装置1を小型化することが可能である。
【0072】
好ましくは、実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置1では、基体10の側面10Eに、複数のビス穴18Hが形成されており、そのビス穴18Hが、基準平面Aの両側のそれぞれにおいて、モータ用穴13Hと複数の調整弁用穴3Hとの間に形成されている。そのため、基体10の限られたスペースを有効に活用することができ、ブレーキ液圧制御装置1の更なる小型化が可能となる。
【0073】
好ましくは、実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置1では、一対のモータ端子13Tの一方に接続されている金属片7Eの第1端部7Eaと、該一対のモータ端子13Tの他方に接続されている金属片7Eの第1端部7Eaと、が、基準平面Aに対して、互いに反対側に位置している。そのため、回路基板7Fのモータ13と対向する領域に、大きな部品搭載スペースを確保して、大型の電子部品を搭載したり、多くの電子部品を集積して搭載したりすることが可能となって、設計自由度が向上する。
【0074】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は実施の形態の説明に限定されない。つまり、実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【0075】
例えば、モータ用穴13Hが、複数の調整弁用穴3Hの間に形成されていないブレーキ液圧制御装置1において、アキュムレータ用穴6Hが、モータ用穴13H及び複数の調整弁用穴3Hと異なる側面に形成されていてもよい。また、そのようなブレーキ液圧制御装置1において、一方の金属片7Eの第1端部7Eaと、他方の金属片7Eの第1端部7Eaと、が、基準平面Aに対して、互いに反対側に位置していてもよい。それらのような構成であっても、上述と同様の効果が発揮される。