(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の絶縁線芯と、前記複数の前記絶縁線芯を束ねるように覆う内層と、前記内層を覆う難燃層と、前記難燃層の一部を覆う耐外傷層と、を備えた平型電線・平型ケーブルであって、
前記複数の前記絶縁線芯は、
該平型電線・平型ケーブルの仕様に応じた所定の配列方向に並び、
前記難燃層は、
一対の前記耐外傷層によって該難燃層が前記配列方向において挟まれることにより、前記一対の前記耐外傷層によって覆われた被覆部と、前記一対の前記耐外傷層によって覆われていない露出部と、を有し、前記難燃層は、前記被覆部の表面積と前記露出部の表面積との割合が25:75〜5:95であるように、前記耐外傷層に覆われており、かつ、前記難燃層の厚みが0.05mm以上であり、
前記耐外傷層が、絶縁性を低下させる物質を含有する、
平型電線・平型ケーブル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る平型電線・平型ケーブルの実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の平型電線・平型ケーブルの一実施形態を説明するための断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る平型電線・平型ケーブル10は、複数の絶縁線芯12と、この絶縁線芯12を束ねるように覆う内層14と、内層14を覆う難燃層16と、さらに難燃層16の一部を覆う耐外傷層18A、18Bとを備えてなる。また、絶縁線芯12は、平型電線・平型ケーブル10の仕様に応じた所定の配列方向に並んでいる。この配列方向は、平型電線・平型ケーブル10の長手方向と一致する必要はない。例えば、この配列方向は、平型電線・平型ケーブル10の長手方向に対して直交する方向であることもできる。また、難燃層16は、一対の耐外傷層18A、18Bによって難燃層16が上記配列方向において挟まれている。この構成により、一対の耐外傷層18A、18Bによって覆われた被覆部Aと、一対の上記耐外傷層18Aによって覆われていない露出部Bとが形成されている。
【0021】
本発明の平型電線・平型ケーブル10は、耐外傷層18A、18Bが、絶縁性を低下させる物質を含有している。絶縁性を低下させる物質とは、典型的には滑剤であるが、その他にも、例えば、難燃剤、充填剤、酸化防止剤、及び架橋剤等を挙げることができる。
【0022】
上記複数の絶縁線芯12は、銅線等の導体122と、導体122の外周を被覆する絶縁体124とからなる。導体122は、1本の素線のみであってもよく、複数本の素線を束ねて形成したものであってもよい。導体122の材料としては、例えば、銅、メッキされた銅、銅合金、アルミニウム、及びアルミニウム合金等の導電性金属を用いることができる。
絶縁体124は、とくに制限されず、公知の絶縁体の中から適宜選択することができ、例えばポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びビニル混合物等からなるものが好ましく用いられる。
【0023】
内層14は、公知の樹脂組成物を用いて形成することができ、とくに制限されないが、本発明では、ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋し、得られた架橋体を押出し、絶縁線芯12の外周に架橋体からなる層を形成し、必要に応じてこれを発泡させることにより形成することができる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、架橋剤、架橋助剤、及び、必要に応じて発泡剤を含有する。
ポリオレフィン系樹脂としては、とくに制限されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、及び超低密度ポリエチレン(V−LDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリオレフィン系樹脂は、密度が0.85〜1.00g/cm
3であることが好ましく、0.90〜0.97g/cm
3がより好ましい。上記範囲の密度のポリオレフィン系樹脂を用いることで、機械的特性をさらに向上させることができる。また、ポリオレフィン系樹脂は、溶融粘度(MFR)が0.4〜2.5であることが好ましく、0.4〜1.0がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の溶融温度が上記範囲であると、押出加工性が向上する。
なお、本発明でいう密度は、JIS K7112に準拠して測定される値であり、MFRは、JIS K7210に準拠し、190℃、2.16kgf荷重にて測定される値である。
【0025】
なおベース樹脂としては、本発明の効果を損ねない限り、上記ポリオレフィン系樹脂以外の成分を必要に応じて適宜使用することができる。このような成分としては、例えばゴム成分が挙げられ、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)、及びスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。
上記ゴム成分の配合量は、ベース樹脂全体を100重量部としたときに、上記ポリオレフィン系樹脂が60〜95重量部、上記ゴム成分が5〜40重量部となるようにするのが好ましい。
【0026】
架橋剤としては、有機過酸化物が挙げられるが、これに限定されるものではない。具体的には、架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、及びtert−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
架橋助剤としては、とくに制限されないが、例えば分子内に二重結合を二個以上有する化合物が挙げられ、具体的には、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート;1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びトリメチロールエタントリメタクリレートなどのトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びテトラメチロールメタンテトラアクリレートなどのテトラアクリレート;ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート、及びトリアリルイソシアヌレートなどのシアヌレート;ジアリルフタレートなどのジアリル化合物;トリアリル化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
上記架橋剤及び上記架橋助剤の量的バランスを図ることにより、ポリオレフィン系樹脂組成物が架橋後であっても、良好な押出特性を提供することができる。
すなわち、上記架橋剤の配合量は、上記ベース樹脂100重量部に対し0.02〜0.5重量部が好ましい。架橋剤の配合量が0.02重量部以上であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに引張強度が向上する。0.5重量部以下であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに押出し後の外観も向上する。
また、上記架橋助剤の配合量は、上記架橋剤の1〜3倍量が好ましい。上記架橋助剤の配合量が上記架橋剤の1倍量以上であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに押出し後の外観も向上する。3倍量以下であることにより、良好な押出特性を提供できるとともに引張強度が向上する。
【0029】
発泡剤としては、化学的分解によって炭酸ガスや窒素ガスなどを発生させる公知の化学分解型発泡剤等を用いることができ、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)等のアゾ化合物、N−N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)やヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等のヒドラジン誘導体、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
上記発泡剤の配合量は、上記ベース樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部が好ましい。
【0030】
また内層14には、必要に応じて、充填剤、酸化防止剤、加工助剤、中和剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、及び分散剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。
【0031】
内層14は、公知の手段により形成することができる。例えば、上記各種成分を混合し、ポリオレフィン系樹脂組成物を作製し、架橋し、ポリオレフィン系樹脂組成物の架橋体を得て、これを絶縁線芯12の外周に押出し、必要に応じて発泡させる各工程を経ることにより内層14が形成される。
【0032】
難燃層16は、JIS K7201に準拠して測定された酸素指数が22以上であることが好ましい。そのため、下記の難燃層用樹脂組成物を使用することが好ましい。
難燃層用樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、架橋剤、架橋助剤、難燃剤を含有することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂を含むベース樹脂、架橋剤及び架橋助剤、並びにこれらの配合量は、上記内層14の形成の際に用いるポリオレフィン系樹脂組成物と同様である。
難燃剤としては、例えば、臭素化エチレンビスフタルイミド誘導体、ビス臭素化フェニルテレフタルアミド誘導体、臭素化ビスフェノール誘導体、及び1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン等の有機系臭素含有難燃剤;水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤;芳香族縮合リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、及びメラミンリン酸塩等のリン酸系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、及びピロリン酸ピペラジン等のイントメッセント系難燃剤等が挙げられる。難燃剤の配合量は、ベース樹脂100重量部に対し、5重量部以上が好ましく、10〜30重量部がさらに好ましい。
また難燃層16には、必要に応じて、酸化防止剤、及び着色剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。
また、難燃層用樹脂組成物には、後述する滑剤等の絶縁性を低下させる物質を含有してもよいが、難燃層の電気特性が低下しないよう、その含有量は、難燃層用樹脂組成物100重量部に対し、10重量部以下であることが好ましい。
【0033】
難燃層16は、上記難燃層用樹脂組成物を架橋し、得られた架橋体を押出し、内層14の外周に上記架橋体からなる層を設けることにより形成することができる。
難燃層16の厚みは、十分な難燃性を付与するために、0.05mm以上が好ましく、0.1mm〜0.3mmがさらに好ましい。
【0034】
耐外傷層18A、18Bは、本発明の平型電線・平型ケーブル10の通線性及び耐外傷性を担う層であり、JISA硬度が80以上、好ましくは83以上である層である。そのため、下記の耐外傷層用樹脂組成物を使用することが好ましい。
上記耐外傷層用樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂、絶縁性を低下させる物質、及び、必要に応じてその他の添加剤を含有する。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(V−LDPE)等のポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、及びエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)等が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリオレフィン系樹脂は、密度が0.90〜0.95g/cm
3であることが好ましく、0.91〜0.95g/cm
3がより好ましい。上記範囲の密度のポリオレフィン系樹脂を用いることで、通線性、及び耐外傷性をさらに向上させることができる。
【0035】
絶縁性を低下させる物質とは、典型的には滑剤であるが、その他にも、加工助剤で使用されるパラフィン系油、ナフテン系油等の石油系油や金属酸化物等の顔料等を挙げることができる。滑剤としては、具体的には、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、及びシリコーン系滑剤等を挙げることができる。絶縁性を低下させる物質は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.1〜10.0重量部が好ましく、0.1〜5.0重量部がさらに好ましい。
【0036】
また耐外傷層18A、18Bには、必要に応じて、充填剤、酸化防止剤、加工助剤、中和剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、及び分散剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。
【0037】
耐外傷層18A、18Bの厚みは、絶縁抵抗の低下を抑制する観点から、0.01mm〜0.5mmが好ましく、0.01mm〜0.2mmがより好ましい。
【0038】
なお、内層14、難燃層16、及び耐外傷層18A、18Bの合計の厚みは、JIS C3605に規定された厚みであることができる。
【0039】
上記実施形態の平型電線・平型ケーブル10によれば、一対の耐外傷層18A、18Bが難燃層16を絶縁線芯12の配列方向において挟むように構成され、これにより耐外傷層18A、18Bによって覆われていない露出部Bが存在し、かつ耐外傷層18A、18Bが絶縁性を低下させる物質を含有している。本発明では、難燃層16上の一部に形成された耐外傷層18A、18Bに滑剤等の絶縁性を低下させる物質を含有させることにより、滑剤等の多量配合を避けることができ、電気的特性の悪化を抑制できる。また、耐外傷層18A、18Bを例えばCD管の内壁との干渉部分に設けることにより、効率的に平型電線・平型ケーブル10の耐外傷性を向上させることができる。また、難燃層16が平型電線・平型ケーブル10の外周を覆うことにより、従来技術と同様に難燃性を維持することが可能となる。
【0040】
本発明の平型電線・平型ケーブルは、耐外傷層18A、18Bが、絶縁線芯12の配列方向において難燃層16の最も外側の箇所である始点から、所定の終点まで、上記難燃層の表面に沿って広がるように上記難燃層を覆い、かつ、上記終点が、上記配列方向に直交する厚み方向において上記難燃層の両外周面の間の長さが最大となる箇所のうち上記始点に最も近い箇所である基準点である、又は、上記配列方向における上記難燃層の中央の箇所である中央点と上記基準点との間の箇所であるのが好ましい。この形態によれば、難燃性、電気特性、通線性及び耐外傷性がさらに優れた平型電線・平型ケーブルを提供することができる。以下、説明する。
【0041】
図2は、上記始点、終点、基準点、中央点等を説明するための平型電線・平型ケーブルの断面図である。
図2で示すように、本発明で言う上記始点とは、絶縁線芯12の配列方向Cにおいて難燃層16の最も外側の箇所である点Dである。終点とは、上記始点Dから平型電線・平型ケーブル10の中央方向に向かって伸びる耐外傷層18A、18Bが途切れた点Eであり、換言すれば、耐外傷層18A、18Bによって覆われた被覆部Aと、耐外傷層18A、18Bによって覆われていない露出部Bとの境界点である。
基準点とは、絶縁線芯12の配列方向Cに直交する厚み方向において難燃層16の両外周面の間の長さFが最大となる箇所のうち上記始点に最も近い箇所である点Gである。
図2の形態の平型電線・平型ケーブル10では、断面が楕円形をなしているため、楕円を形成する曲面の始まる箇所が、基準点Gに相当している。
中央点とは、絶縁線芯12の配列方向Cにおける難燃層16の中央の箇所である点Hである。換言すれば、中央点Hは、平型電線・平型ケーブル10の厚み方向の中央部と言うこともできる。
上記のように、耐外傷層18A、18Bは、始点Dから終点Eまで、難燃層16の表面に沿って広がるようにして形成され、終点Eは、基準点Gであるか、あるいは
図2で示すように中央点Hと基準点Gとの間の箇所であるのが好ましい。この形態によれば、難燃性、電気特性、通線性及び耐外傷性が優れた平型電線・平型ケーブルを提供することができる。
【0042】
また本発明の平型電線・平型ケーブル10は、絶縁線芯12のうちの始点Dに最も近い絶縁線芯12の中心位置において、難燃層16の両外周面の間の長さFが最大となることが好ましい。この形態によれば、難燃性、電気特性、通線性及び耐外傷性が優れた平型電線・平型ケーブルを提供することができる。
図3は、このような本発明の平型電線・平型ケーブルの実施形態を説明するための断面図である(説明のため、1つの絶縁線芯12のみを示している)。
図3に示す平型電線・平型ケーブル10は、耐外傷層18A、18Bが、始点Dから終点Eまで、難燃層16の表面に沿って広がるようにして形成されている。絶縁線芯12は、絶縁線芯12のうちの始点Dに最も近い絶縁線芯であり、その中心位置Iにおいて、難燃層16の両外周面の間の長さFが最大となっている。中心位置Iから絶縁線芯12の配列方向Cに対して直交方向(厚み方向)に伸びる仮想線は、
図3のように基準点Gと交差していても、交差していなくてもよい。
【0043】
なお、終点Eの箇所は任意に設定できる。例えば、絶縁線芯12のうちの始点Dに最も近い絶縁線芯12の中心位置Iから絶縁線芯12の配列方向Cに対して直交方向(厚み方向)に伸びる仮想線と難燃層との交点から、上記配列方向に±25%の範囲内に終点Eを設定してもよい。
【0044】
また本発明の平型電線・平型ケーブル10は、難燃層16が、被覆部Aの表面積と露出部Bの表面積との割合が25:75〜5:95であるように、耐外傷層18A、18Bに覆われていることが好ましい。このような数値範囲を満たすように耐外傷層18A、18Bを形成することにより、その数値範囲を満たさない場合に比べ、被覆層の傷つきが抑制されることが明らかになった。なお、上記数値範囲は、15:85〜5:95であることが更に好ましい。
【0045】
なお、上記形態では、耐外傷層18A、18Bの終点Eが難燃層16に対して段差の無いように滑らかに形成されているが、本発明はこれに限定されず、任意の形状とすることができる。また、
図4に示すように、耐外傷層18A、18Bを含めて、平型電線・平型ケーブルの形状が楕円形となるように、耐外傷層18A、18Bを形成することもできる。
なお、上記形態では、平型電線・平型ケーブル10の断面形状が楕円形であるものを例にとり説明したが、本発明はこれに限定されず、平型電線・平型ケーブル10は断面形状が真円形以外のものであることができ、例えば
図5(a)に示す団子型や、
図5(b)に示すダンベル型であることもできる(説明のため、難燃層及び耐外傷層は図示せず)。
また、上記形態では、複数の絶縁線芯12が配列方向Cにおいて一列に並んだものを例にとり説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図6(a)に示すように複数列の絶縁線芯12が配列方向Cで交互にずれて配置したものや、
図6(b)に示すように複数列の絶縁線芯12が配列方向C及び厚み方向で整列して配置したものであることもできる。
【0046】
耐外傷層18A、18Bは、上記耐外傷層用樹脂組成物を押出し、難燃層16の外周の所定の範囲に、上記組成物からなる層を設けることにより形成することができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0048】
以下の材料を使用した。
(耐外傷層)
ポリオレフィン系樹脂:EVA NUC(株)製 NUC−8450
滑剤:信越シリコーン(株)製 X−22−2125H
酸化防止剤:BASF(株)製 イルガノックス1010
【0049】
(難燃層)
ポリオレフィン系樹脂:EVA 三菱化学(株)製 A543
ゴム成分:EPDM JSR(株)製 EP07AP
難燃剤:水酸化マグネシウム
酸化防止剤:BASF(株)製 イルガノックス1010
架橋剤:化薬アクゾ(株)製 カヤヘキサAD(2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン)
架橋助剤:第一工業製薬(株)製TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)
【0050】
(内層)
ポリオレフィン系樹脂:EVA 三菱化学(株)製 A543
ゴム成分:EPDM JSR(株)製 EP07AP
架橋剤:化薬アクゾ(株)製 カヤヘキサAD(2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン)
架橋助剤:第一工業製薬(株)製TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)
充填剤:水酸化マグネシウム
滑剤:日油(株)製ステアリン酸カルシウム
発泡剤:永和化成工業(株)製 ADCA(アゾジカルボンアミド)EV405D
【0051】
例1〜76
表1〜5に示す配合量(重量部)に従い、架橋剤及び架橋助剤を除く各成分をニーダーにて混練し、耐外傷層のためのポリオレフィン系樹脂組成物A、難燃層のためのポリオレフィン系樹脂組成物B、内層のためのポリオレフィン系樹脂組成物Cを作製した。続いて、ポリオレフィン系樹脂組成物B及びポリオレフィン系樹脂組成物Cについては、架橋剤及び架橋助剤を添加し、170〜200℃×1分以上で混練することにより架橋させ、架橋体を調製した。
続いて、押出成形機を用いて、直径2.0mmの銅線上に0.75〜0.8mm厚となるように絶縁体を形成し、絶縁線芯を作製した。絶縁線芯は計3本作製した。
作製した3本の絶縁線芯を一列に並べ、3本の絶縁線芯を覆うように、前記架橋体からなる内層を、架橋したポリオレフィン系樹脂組成物Cで、さらに内層の上に表1〜5に記載の厚さとなるように前記架橋したポリオレフィン系樹脂組成物Bからなる難燃層、さらに難燃層の上に、被覆部Aと露出部Bの割合が表1〜5に記載の割合となるように、ポリオレフィン系樹脂組成物Aからなる耐外傷層を押出成形機による多層押出成形により形成し、
図1に示す平型電線・平型ケーブルを作製した。なお、平型電線・平型ケーブルはいずれも、耐外傷層18A、18Bにおける終点Eは、
図2で示すように中央点Hと基準点Gとの間の箇所となるよう作製した。また、絶縁線芯のうちの始点Dに最も近い絶縁線芯の中心位置から絶縁線芯の配列方向に対して直交方向(厚み方向)に伸びる仮想線と難燃層との交点から、上記配列方向に±25%の範囲内に終点Eが設定されるように作製した。
【0052】
各平型電線・平型ケーブルについて、下記の評価を行った。
常温引張強さ:JIS C3005の4.16項の引張試験を実施することにより測定した。JIS C3605に規定の10MPa以上を規格値とし、規格値を満たすものをA、満たさないものをBと記載した。
加熱変形:JIS C3005の4.23項の加熱変形を実施することにより測定した。JIS C3605に規定の10%以下を規格値とし、規格値を満たすものをA、規格値を満たさないものをBと記載した。
難燃性:JIS C3005に準拠し試験を行い、JIS C3605に規定の60秒以内で火が消えるか否か評価を行った。60秒以内で火が消えるものをA、60秒以内で火が消えないものをBと記載した。
絶縁抵抗:JIS C3005の4.7項に準拠し、JIS C3605に規定の2500MΩkm以上である場合をA、2500MΩkm未満である場合をBと記載した。
耐外傷性:長さ8mのCD管(未来工業社製ミラフレキCD、内径28mm)を両端1m時点で曲げをつくりコの字型に設置し、通線速度12m/minで、通線剤を使用せず通線した際の傷を目視で確認し、傷が
ない場合をA、傷が
ある場合をBと記載した。
【0053】
結果を表1〜5に併せて示す。総合評価の欄において、各パラメータがすべてAであればA、1つだけBであればB、2つBがあればC、3つBがあればDとして記載した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
前記表1〜5の結果から、本発明の構成を有する各例は、難燃性及び電気特性を維持しつつ、通線性及び耐外傷性が優れた平型電線・平型ケーブルであることがわかる。
【0060】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、及び改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、及び配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0061】
ここで、上述した本発明に係る平型電線・平型ケーブルの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(4)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
複数の絶縁線芯(12)と、前記複数の前記絶縁線芯(12)を束ねるように覆う内層(14)と、前記内層(14)を覆う難燃層(16)と、前記難燃層(16)の一部を覆う耐外傷層(18A、18B)と、を備えた平型電線・平型ケーブル(10)であって、
前記複数の前記絶縁線芯(12)は、
該平型電線・平型ケーブル(10)の仕様に応じた所定の配列方向に並び、
前記難燃層(16)は、
一対の前記耐外傷層(18A、18B)によって該難燃層(16)が前記配列方向において挟まれることにより、前記一対の前記耐外傷層(18A、18B)によって覆われた被覆部と、前記一対の前記耐外傷層(18A、18B)によって覆われていない露出部と、を有し、
前記耐外傷層(18A、18B)が、絶縁性を低下させる物質を含有する、
平型電線・平型ケーブル(10)。
(2)
上記(1)に記載の平型電線・平型ケーブル(10)おいて、
前記耐外傷層(18A、18B)が、
前記配列方向において前記難燃層(16)の最も外側の箇所である始点から、所定の終点まで、前記難燃層(16)の表面に沿って広がるように前記難燃層(16)を覆い、
前記終点が、
前記配列方向に直交する厚み方向において前記難燃層(16)の両外周面の間の長さが最大となる箇所のうち前記始点に最も近い箇所である基準点である、又は、前記配列方向における前記難燃層(16)の中央の箇所である中央点と前記基準点との間の箇所である、
平型電線・平型ケーブル(10)。
(3)
上記(2)に記載の平型電線・平型ケーブル(10)において、
前記難燃層(16)が、
前記複数の前記絶縁線芯(12)のうちの前記始点に最も近い前記絶縁線芯の中心位置における該難燃層(16)の両外周面の間の長さが最大となる、
平型電線・平型ケーブル(10)。
(4)
上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平型電線・平型ケーブル(10)において、
前記難燃層(16)が、
前記被覆部の表面積と前記露出部の表面積との割合が25:75〜5:95であるように、前記耐外傷層(18A、18B)に覆われた、
平型電線・平型ケーブル(10)。