【文献】
Chakravorty S. et al.,Rapid Detection of Fluoroquinolone-Resistant and Heteroresistant Mycobacterium tuberculosis by Use of Sloppy Molecular Beacons and Dual Melting-Temperature Codes in a Real-Time PCR Assay,Journal of Clinical Microbiology,2011年,Vol.49,No.3,pp.932-940
【文献】
Antonova O. V. et al.,Detection of Mutations in Mycobacterium tuberculosis Genome Determining Resistance to Fluoroquinolones by Hybridization on Biological Microchips,Bulletin of Experimental Biology and Medicine,2008年,Vol.145,No.1,pp.108-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
rpoB遺伝子、gyrA遺伝子、gyrB遺伝子、inhAプロモーター、rrs遺伝子、eisプロモーター、embB遺伝子、katG遺伝子、dosR遺伝子、IS6110遺伝子およびIS1081遺伝子からなる群から選択される結核菌(M.tuberculosis)領域の一部分を増幅するためのオリゴヌクレオチドセットであって、
前記群から選択される第1の領域の第1の部分に特異的な第1の対のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含み、各プライマーは、配列番号2〜5および7〜52からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列と同一である配列を有する、オリゴヌクレオチドセット。
前記耐性がイソニアジド、リファンピシン、フルオロキノロン類の薬剤、アミカシン、カナマイシン、カプレオマイシン、およびエタンブトールからなる群から選択される薬剤に対するものである、請求項11〜20のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、少なくとも一部では、M.tb DNAおよびイソニアジド、リファンピシン、アミカシン、カナマイシン、カプレオマイシン、エタンブトール、およびフルオロキノロン類の薬剤などの抗結核薬への耐性の存在を同定するためのM.tbにおける11の異なる遺伝子の断片増幅のための新規プライマー、SMBプローブ、およびMBプローブの予期せぬ発見に基づく。
【0019】
プライマーおよびプローブ
本明細書では、rpoB、gyrA、gyrB、inhAプロモーター領域、rrs、eisプロモーター領域、embBおよびkatG遺伝子を増幅することを特徴とするプライマーは、M.tbにおける突然変異ホットスポットを誘発する薬剤耐性の感受性増幅を可能にする。対応するSMBプローブは、最も一般的に使用される第一および第二選択薬への薬剤耐性をもたらすこれらの突然変異を標的および同定する。これらのプライマーは、対称および非対称の両方のPCRアッセイにおいて非常に高い効率で使用することができる。本明細書に記載のプライマーおよびプローブ配列は、M.tbに対する迅速で正確な分子薬剤感受性試験アッセイを開発するために本発明者らにより使用されている。M.tbに対する分子診断アッセイにおける明らかな有用性とは別に、これらのプライマーはまた、ターゲット遺伝子をシークエンシングするために使用され、サーベイランスアッセイおよびその他のプローブに基づくアッセイにおける突然変異を誘発する耐性を同定し、M.tbにおける突然変異を誘発する共通の薬剤耐性の特異的で高感度な同定を目的とする。dosR、IS6110およびIS1081遺伝子を増幅するプライマー配列は、M.tbの非常に高感度で特異的な同定を可能にし、結核の非常に特異的で高感度な分子診断を目的とするいかなるPCRアッセイフォーマットにおいても使用できる。下記表において記載されたものは、本発明の例示的なプライマーおよびプローブである。
【0023】
表2において、1以上のプローブ配列は、ライナー(liner)プローブを含む二重ラベルプローブ、Taqmanプローブ、分子ビーコンプローブ、およびスロッピー分子ビーコンプローブなど、様々な検出フォーマットで作製することができる。「スロッピー(sloppy)」プローブは、ミスマッチ耐性(mismatch−tolerant)があるプローブを意味する。ミスマッチ耐性プローブは、アッセイにおいて検出可能な温度で2つ以上のターゲット配列の検出可能なシグナルとハイブリダイズし、検出可能なシグナルを生成し、それにより形成された様々なハイブリッドは、異なる融点を有するであろう。ライナー、またはランダムコイルの、一本鎖プローブは、一般的にミスマッチ耐性である。かかるプローブの例は、1つまたは別のターゲット鎖へのハイブリダイゼーション時に蛍光のレベルが増加する内部蛍光部分を有するヘアピンまたはリニアプローブである。例えば、米国特許第7662550号明細書および第5925517号明細書、米国特許出願公開第20130095479号明細書参照。
【0024】
好ましくは、スロッピープローブは、米国特許第7662550号明細書および第5925517号明細書に記載の二重ラベルヘアピンプローブまたは分子ビーコンプローブである。これらのヘアピンプローブは、互いに補完する一対のアームによって挟まれているターゲット結合配列を含む。これらは、DNA、RNA、もしくはPNA、または3つの核酸全ての組み合わせであり得る。さらに、これらは、修飾ヌクレオチドおよび修飾インターヌクレオチド結合を含んでもよい。これらは、第1のフルオロフォアを一方のアーム、第2のフルオロフォアをもう一方のアームに有し、第2のフルオロフォアの吸収スペクトルは、第1のフルオロフォアの発光スペクトルと実質的に重なる。最も好ましくは、かかるヘアピンプローブは、溶液中に遊離するとプローブがダークであるように、一方のアームにフルオロフォア、もう一方のアームにクエンチャーを有する「分子ビーコンプローブ(molecular beacon probes)」である。これらはまた、たとえば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって相互作用する一方のアームの複数のフルオロフォアと、もう一方のアームのクエンチャーとを有する波長シフト分子ビーコンプローブであり得る。ターゲット結合配列は、例えば、長さ12〜50、または25〜50のヌクレオチドであり得、ハイブリダイズするアームは、長さ4〜10または4〜6(例えば、5もしくは6)のヌクレオチドであり得る。分子ビーコンプローブは、米国特許第7662550号明細書および第5925517号明細書ならびに国際公開第01/31062号に記載のとおり、プライマーにつなぐことができる。
【0025】
したがって、スロッピー分子ビーコンプローブは、そのようなクラスの蛍光ラベルされたヘアピンオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブを意味する。かかるプローブは、ホモジニアスアッセイにおいて、検出可能なシグナルを生成する、すなわちターゲットにハイブリダイズしたプローブを結合していないプローブから分離する必要がない。所与のターゲット配列の2つ以上の変異に結合するそれらの能力のおかげで、プローブは、多くの可能な変異の中から関心のある核酸配列セグメントの1つの変異の存在を検出するために、または2つ以上の変異の存在を検出するためにアッセイにおいて使用することができる。したがって、プローブは、同じアッセイにおいて2以上の組み合わせで使用することができる。それらは、ターゲット結合配列が異なるので、異なる変異に対するそれらの相対的な親和性は、異なる。例えば、第1のプローブは、野生型配列に強く、第1の対立遺伝子にほどほどに、第2の対立遺伝子に弱く結合でき、第3の対立遺伝子には全く結合しない;一方、第2のプローブは、野生型配列および第1の変異に弱く、第2および第3の変異にほどほどに結合できる。さらなるスロッピープローブは、それらの異なるターゲット結合配列により、さらに異なる結合パターンを示すだろう。したがって、スロッピープローブの組み合わせからの蛍光発光スペクトルは、異なる微生物株または種、および遺伝子の対立遺伝子変異(variants)または突然変異(mutation)を明確にする。
【0026】
スロッピープローブは、異なるDNA配列に結合した後、様々な強度で再現性よく蛍光を発するので、例えば、単一の反応容器で複数の病原体または変異を同定する、単純、迅速および精度の高い核酸増幅反応アッセイ(例えば、PCRに基づくアッセイ)において、組み合わせを使用することができる。しかし、アッセイを直接検出可能な量の非増幅ターゲット核酸を含むと疑われるサンプルにおいても実施できることが理解されよう。この同定アッセイは、種特異的または変異特異的なDNA配列の「シグネチャスペクトル(signature spectra)」を生成するのに最適な異なる波長の光を発するフルオロフォアでそれぞれ標識された、スロッピー分子ビーコンプローブなどの、一連の部分的にハイブリダイズするスロッピーシグナル伝達プローブのスペクトルを分析することに基づく。
【0027】
前記プローブを用いて、例えば、各ターゲットに対して異なる対立遺伝子識別(allele−discriminating)分子ビーコンプローブをデザインすることおよび各プローブを区別してラベル化することにより、多重化を達成できる。(例えば、米国特許第7662550号明細書および第5925517号明細書、国際公開第01/31062号、ならびにTyagi et al.(2000)Nature Biotechnology 18:1191−1196参照)。対立遺伝子識別プローブの混合物は、それぞれが複数の色のありコートを含み、プローブシグネチャの数を拡張する。そのために、固有の融解温度を有する分子ビーコン−ターゲットハイブリッドのすべては、明らかな温度ならびにプローブおよび単位複製配列の濃度で、対応する固有のシグナル強度を有するであろう。したがって、リアルタイムPCR反応において多くの異なる可能性のあるターゲット配列を同定するために、限られた数のスロッピープローブをプローブとして使用することができる。前記プローブは、増幅前、増幅中、または増幅後に増幅反応混合物に加えることができる。米国特許第7662550号明細書参照。
【0028】
本発明はさらに、PCRおよび/またはプローブ−ターゲットハイブリダイゼーション反応を含む、上記方法を実施するための試薬を含むキットを提供する。そのために、本明細書に記載の方法のために、1以上の反応成分、例えば、PCRプライマー、ポリメラーゼ、およびプローブは、使用のためのキットの形態で提供することができる。かかるキットにおいて、適切な量の1以上の反応成分が1以上の容器で提供される、または基材上に保持される。
【0029】
前記キットはまた、上記方法を実施するための追加の材料を含む。いくつかの実施形態において、キットは、試薬、本発明に係るプライマーおよび/またはプローブを用いる方法を実施するための材料の一部またはすべてを含む。キットの成分の一部またはすべては、本発明のプライマーおよび/またはプローブを含む容器とは別の容器で提供することができる。キットの追加の成分の例は、特に制限されないが、1以上の異なるポリメラーゼ、1以上のコントロール試薬(例えば、プローブもしくはPCRプライマーまたはコントロールテンプレート)、および反応のためのバッファー(1Xまたは濃縮形態)を含む。キットはまた、1以上の下記成分:支持体、終結、修飾または消化試薬、オスモライトおよび検出のための装置を含む。
【0030】
使用される反応成分は、様々な形態で提供され得る。例えば、前記成分(例えば、酵素、プローブおよび/またはプライマー)は、水溶液中に、または乾燥凍結もしくは凍結乾燥粉末、ペレット、もしくはビーズとして、懸濁することができる。後者の場合、成分は、再構成された場合、アッセイに使用する成分の完全な混合物を形成する。本発明のキットは、任意の適切な温度で提供することができる。例えば、液体にタンパク質成分(例えば、酵素)を含むキットの保管のために、それらを0℃以下、好ましくは−20℃以下、またはその他の凍結状態で提供し、維持することが好ましい。
【0031】
この発明のキットまたはシステムは、少なくとも1つのアッセイに十分な量で、任意の組み合わせの本明細書に記載の成分を含んでもよい。いくつかの用途において、1以上の反応成分は、個々の、一般的には使い捨ての、チューブまたは同等の容器中のあらかじめ測定した1回使用量で提供されてもよい。このような準備で、PCR反応は、ターゲット核酸または個々のチューブに対して直接ターゲット核酸を含むサンプル/細胞を加えることにより実施することができる。キットに含まれる成分の量は、任意の適切な量にすることができ、製品が対象にするターゲット市場に依存するであろう。成分が提供される容器は、提供形態を保持できる任意の一般的な容器、例えば、微量遠心管チューブ、アンプル、ボトル、または流体装置、カートリッジ、側方流動、もしくは他の同様な装置などの不可欠の試験装置であり得る。
【0032】
キットはまた、容器または容器の組み合わせを保持するための包装材料も含むことができる。かかるキットおよびシステムのための典型的な包装材料は、任意の様々な構成(例えば、バイアル、マイクロタイタープレートウェル、マイクロアレイなど)において反応成分または検出プローブを保持する固体マトリクス(例えば、ガラス、プラスチック、紙、箔、微小粒子など)を含む。キットは、成分の使用のための具体的な形態で記録された指示書をさらに含むことができる。
【0033】
定義
核酸は、DNA分子(例えば、制限されないが、cDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子(例えば、制限されないが、mRNA)、またはDNAもしくはRNAアナログを意味する。DNAまたはRNAアナログは、ヌクレオチドアナログから合成することができる。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得る。「単離された(isolated)」核酸は、その構造がいかなる天然起源の核酸構造、または天然起源のゲノム核酸のいかなる断片の構造とも同一ではない核酸である。したがって、この用語は、例えば、(a)天然起源のゲノムDNA分子の一部の配列を有するが、天然起源の生物のゲノムにおける分子のその部分に隣接するコード配列の両方に隣接していないDNA;(b)結果として生じる分子がいかなる天然起源のベクターまたはゲノムDNAと同一ではないように、ベクターまたは原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み込まれた核酸;(c)cDNA、ゲノム断片、PCRにより生成された断片、または制限断片などの別の分子;ならびに(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組み換え核酸配列をカバーする。
【0034】
本明細書において、用語「ターゲット核酸(target nucleic acid)」または「ターゲット(target)」は、関心のあるターゲット核酸配列を含む核酸を意味する。ターゲット核酸は、一本鎖または二本鎖であり得、多くの場合、二本鎖DNAである。「ターゲット核酸配列(target nucleic acid sequence)」、「ターゲット配列(target sequence)」または「ターゲット領域(target region)は、一本鎖核酸の配列の全てまたは一部を含む特定の配列を意味する。ターゲット配列は、核酸テンプレート内、または細胞のゲノム内にあってもよく、一本鎖または二本鎖核酸の任意の形態でもあり得る。テンプレートは、精製されたまたは単離された核酸でもよく、または精製されていないまたは単離されていないものでもよい。
【0035】
「相補的な(complementary)」配列は、本明細書において、ハイブリダイズするそれらの能力に関する上記要件が満たされる限り、ワトソン−クリック塩基対(例えば、A−T/UおよびC−G)、非ワトソン−クリック塩基対および/または非天然および修飾ヌクレオチドからから形成される塩基対を含んでも、またはすべてがこれらから形成されてもよい。完全な相補体(full complement)または完全に相補的な(fully complementary)は、核酸分子のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ間で100%(完全に)相補的なまたは実質的に相補的な塩基対合を意味するであろう。
【0036】
「実質的に相補的な(substantially complementary)」は、核酸またはオリゴヌクレオチドが例えばPCR反応のアニーリング条件またはプローブ−ターゲットハイブリダイゼーション条件下、ターゲット核酸配列にハイブリダイズまたはアニールできるように、核酸またはオリゴヌクレオチドがターゲット核酸配列の少なくとも10の隣接する塩基に対して少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%)である少なくとも10の隣接する塩基を含む配列を有することを意味する。配列間の相補性は、比較される少なくとも10の隣接する塩基の各セットにおいて塩基ミスマッチの数を表すことができる。用語「実質的に同一(substantially identical)」は、第1の核酸がPCRアニーリングまたはプローブ−ターゲットハイブリダイゼーション条件下、第2の核酸の相補体と実質的に相補的であるまたはハイブリダイズできるように、第1の核酸が第2の核酸に対して少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%)相補的であることを意味する。
【0037】
「ハイブリダイゼーション(hybridization)」もしくは「ハイブリダイズすること(hybridizing)」もしくは「ハイブリダイズする(hybridize)」または「アニールする(anneal)は、2つの構成鎖が水素結合で結合されている安定な二本鎖構造または領域(時には、「ハイブリッド(hybrid)」または「二本鎖(duplex)」または「ステム(stem)」と呼ばれる)を形成するために平行配向または好ましくは非平行配向で完全にまたは部分的に相補的な核酸鎖を特定のハイブリダイゼーション条件下で一つにする能力を意味する。水素結合は、典型的にはアデニンおよびチミンもしくはウラシル(AおよびTもしくはU)またはシステインおよびグアニン(CおよびD)の間で形成されるが、他の塩基対が形成されてもよい(例えば、Adams et al.,The Biochemistry of the Nucleic Acids,11th ed.,1992)。
【0038】
「核酸二本鎖(nucleic acid duplex)」、「二本鎖(duplex)」、「ステム(stem)」、「核酸ハイブリッド(nucleic acid hybrid)」または「ハイブリッド(hybrid)」は、二本鎖、水素結合領域、例えばRNA:RNA、RNA:DNAおよびDNA:DNA二本鎖分子およびそのアナログを含む安定した核酸構造を意味する。かかる構造は、例えば、ラベル化されたプローブ、その表面の質量の変化に敏感な光学活性プローブでコーティングされた基材(米国特許第6,060,237号明細書)、または結合剤(米国特許第5,994,056号明細書)を用いることで公知の手段により検出することができる。
【0039】
本明細書において、用語「増幅(amplification)」およびそのバリアントは、ポリヌクレオチドの少なくともある部分の複数のコピーまたは相補体を生成するための任意のプロセスを含み、前記ポリヌクレオチドは、通常「テンプレート(template)」と呼ばれる。テンプレートポリヌクレオチドは、一本鎖でも二本鎖でもよい。テンプレートはまた、精製されたまたは単離された核酸でもよく、精製されていないまたは単離されていない核酸でもよい。所与のテンプレートの増幅は、ポリヌクレオチド増幅産物の集団の生成をもたらすことができ、集団で「単位複製配列(amplicon)」と呼ばれる。単位複製配列のポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖または両方の混合物であり得る。通常、テンプレートは、ターゲット配列を含むであろうし、結果として生じる単位複製配列は、ターゲット配列と実質的に同一または実質的に相補的のいずれかである配列を有するポリヌクレオチドを含むであろう。いくつかの実施形態において、特定の単位複製配列のポリヌクレオチドは、互いに、実質的に同一であるか、実質的に相補的であり;または、いくつかの実施形態において、所与の単位複製配列内のポリヌクレオチドは、互いに異なるヌクレオチド配列を有することができる。増幅は、直線的にまたは指数関数的に進行することができ、2以上の増幅産物を形成するために所与のテンプレートの反復および連続した複製を含むことができる。いくつかの典型的な増幅反応は、テンプレートに基づく核酸合成の連続および反復サイクルを含み、テンプレートのクレオチド配列の少なくともある部分を含み、テンプレートと少なくともある程度の核酸配列同一性(または相補性)を共有する複数の娘ヌクレオチド(daughter polynucleotide)の形成をもたらす。いくつかの実施形態において、増幅の「サイクル(cycle)」と呼ばれることがある、核酸合成の各過程は、遊離3’末端(例えば、dsDNAの一方の鎖を切断することによる)を生成し、それによりプライマーおよびプライマー伸長工程を生成することを含み;任意に、追加の変性工程を含むことも可能であり、この際テンプレートは、部分的または完全に変性される。いくつかの実施形態において、増幅の1ラウンドは、増幅のシングルサイクルの所与の数の反復を含む。例えば、増幅のラウンドは、特定サイクルの5、10、15、20、25、30、35、40、50、またはそれ以上の反復を含むことができる。1つの例示的な実施形態において、増幅は、任意の反応を含み、この際特定のポリヌクレオチドテンプレートは、核酸合成の2つの連続するサイクルに供される。合成は、テンプレート依存性核酸合成を含むことができる。
【0040】
本発明の増幅はまた、等温増幅を含んでもよい。用語「等温(isothermal)」は、実質的に一定の温度で、すなわち核酸重合反応が起こる反応温度を変化させることなく、反応を行うことを意味する。等温増幅反応の等温温度は、反応で使用される鎖置換核酸ポリメラーゼによる。一般的に、等温温度は、以下の一般的な反応産物の融解温度(Tm;混合物中の二本鎖の半分が一本鎖で、変性状態である可能性の温度)、すなわち一般的には、90℃以下、通常約20℃から75℃の間、好ましくは30℃から60℃の間、またはより好ましくは約37℃である。
【0041】
用語「プライマー(primer)」または「プライマーオリゴヌクレオチド(primer oligonucleotide)」は、核酸合成用テンプレート核酸の組成物に従い、テンプレート核酸にハイブリダイズでき、伸長ヌクレオチドを組み込むための開始点の機能を果たすことができる核酸またはオリゴヌクレオチドの鎖を意味する。「伸長ヌクレオチド(Extension nucleotide)」は、増幅の間の伸長産物、すなわちラベルを含んでもよい、DNA、RNAまたはDNAもしくはRNAの誘導体に組み込まれることができる任意のヌクレオチド(例えば、dNTP)およびそのアナログを意味する
本明細書において、用語「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」は、短いポリヌクレオチド、通常300以下の長さ(例えば、5から150の範囲、好ましくは10から100の範囲、より好ましくは15から50の範囲の長さ)を意味する。しかし、本明細書において、この用語はまた、より長いまたはより短いポリヌクレオチド鎖を包含することも意味する。「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」は、他のポリヌクレオチドとハイブリダイズでき、よってポリヌクレオチド検出のためのプローブ、またはポリヌクレオチド鎖伸長のためのプライマーとしての機能を果たす。
【0042】
本明細書において、用語「プローブ(probe)」は、1以上のタイプの化学結合により、通常相補的な塩基対合により、通常水素結合形成により、相補的な配列のターゲット核酸に結合できるオリゴヌクレオチドを意味する。プローブは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに依存して、完全な相補性を欠くターゲット配列とプローブ配列とを結合させることができる。ターゲット配列と本明細書に記載の一本鎖核酸とのハイブリダイゼーションを妨げるであろう任意の数の塩基対ミスマッチがあってもよい。しかし、突然変異の数が多すぎるため、最小のストリンジェントのハイブリダイゼーション条件下でさえ、ハイブリダイゼーションが起こらない場合、配列は、相補的なターゲット配列ではない。プローブは、一本鎖であってもよく、または部分的に一本鎖でありおよび部分的に二本鎖であってもよい。プローブの鎖は、構造、構成、およびターゲット配列の特性により決定される。プローブは、ストレプトアビジン複合体が後に結合するビオチンなどのラベルで直接ラベル化または間接的にラベル化されてもよい。
【0043】
用語「検出プローブ(detection probe)」は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、検出のために安定なプローブ:ターゲットハイブリットを形成するために、ターゲット配列と十分に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを意味する。プローブは通常、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、ターゲット核酸とのハイブリダイゼーションを妨げないターゲットとされた領域の外側の配列に相補的な塩基を含んでもよい合成オリゴマーである。ターゲットに相補的ではない配列は、ホモポリマートラクト(例えば、poly−Aまたはpoly−T)、プロモーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識配列、もしくは所望の二次または三次構造をもたらす配列(例えば、触媒サイトまたはヘアピン構造)、または検出および/または増幅を促進することができるタグ領域でもよい。「安定(stable)」または「検出のために安定(stable for detection)」は、反応混合物の温度が前記混合物に含まれる核酸二本鎖の融解温度(Tm)より少なくとも2℃低い、好ましくはTmより少なくとも5℃低い、よりさらに好ましくはTmより少なくとも10℃低いことを意味する。
【0044】
「ラベル(label)」または「レポーター分子(reporter molecule)」は、核酸(単一ヌクレオチドを含む)、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはタンパク質リガンド、例えばアミノ酸もしくは抗体をラベル化するために有用な化学的または生化学的部分である。例としては、蛍光剤、化学発光剤、消光剤、放射性ヌクレオチド、酵素、基質、補助因子、阻害剤、磁気粒子、および公知のその他の部分を含む。ラベルまたはレポーター分子は、測定可能なシグナルを生成することができ、オリゴヌクレオチドもしくはヌクレオチド(例えば、非天然ヌクレオチド)またはリガンドに共有結合または非共有結合することができる。
【0045】
本明細書において、用語「接触させる(contacting)」およびそのバリアントは、任意のセットの成分に関して使用される場合、任意のプロセスを含み、それにより接触される成分は、同じ混合物に混合され(例えば、同じ区画または溶液に添加される)、列挙した成分間の実際の物理的接触を必ずしも必要としない。列挙した成分は、任意の順番および任意の組み合わせ(またはサブコンビネーション)で接触することができ、1つまたはいくつかの列挙した成分がその後混合物から除かれる(その他の列挙した成分の添加より前でもよい)状況を含むことができる。例えば、「AとBおよびCとを接触させる(contacting A with B and C)」は、以下の状況のいずれかまたはすべてを含む:(i)AがCと混合され、その後Bが混合物に加えられる;(ii)AおよびBが混合物中に混合する;Bを混合物から除き、その後Cを混合物に添加する;ならびに(iii)AをBおよびCの混合物に添加する。ターゲット核酸または細胞と1以上の反応成分、例えばポリメラーゼ、プライマーセットもしくはプローブとを「接触させる(contacting)」は、以下の状況のいずれかまたはすべてを含む:(i)ターゲットまたは細胞を反応混合物の第1の成分と接触させて混合物を生成する;その後、反応混合物のその他の成分を任意の順番または組み合わせで混合物に加える;(ii)反応混合物をターゲットまたは細胞との混合より前に完全に形成する。
【0046】
本明細書において、用語「混合物(mixture)」は、散在しており、特定の順序ではない、要素の組み合わせを意味する。混合物は、不均一であり、空間的のその異なる物質に分離できない。混合物の要素の例は、同じ水溶液中に溶解された多くの異なる要素、または異なる要素が空間的に区別されず、個体支持体にランダムにもしくは特定の順番ではなく付着した多くの異なる要素を含む。換言すると、混合物は、アドレス可能ではない。
【0047】
本明細書において、用語「被験体(subject)」は、ゲノムを有する任意の生命体、好ましくは生きている動物、例えば、哺乳類を意味し、診断、治療、観察または実験の対象である。被検体の例は、ヒト、家畜動物(肉牛および乳牛、ヒツジ、家禽、ブタなど)、またはコンパニオン動物(イヌ、ネコ、ウマなど)であり得る。
【0048】
本明細書において、「サンプル(sample)」は、生命体(例えば、患者)から、または生命体の構成要素(例えば、血液)から得られた任意の生物学的液体または組織を意味する。サンプルは、任意の生物学的組織、細胞または液体であり得る。サンプルは、ヒト患者または獣医学的被検体などの被検体に由来するサンプルである「臨床サンプル(clinical sample)」であり得る。有用な生物学的サンプルは、制限されないが、全血、唾液、尿、滑液、骨髄、脳脊髄液、膣粘液、子宮頸管粘液、鼻分泌物、唾液、精液、羊水、気管支肺胞洗浄液、および患者または被験体からのその他の細胞滲出液を含む。かかるサンプルは、生理食塩水、バッファーまたは生理学的に許容される希釈剤でさらに希釈されてもよい。または、かかるサンプルは、従来の方法により濃縮される。生物学的サンプルはまた、組織学的目的のために採取された凍結切片などの組織の切片を含むことができる。生物学的サンプルはまた、「患者サンプル(patient sample)」と呼ぶこともできる。生物学的サンプルはまた、実質的に精製されたまたは単離されたタンパク質、膜調製物、または細胞培養物を含むことができる。
【0049】
用語「決定する(determining)」、「測定する(measuring)」、「評価する(assessing)」および「アッセイする(assaying)」は、交換可能に使用され、定量的および定性的測定の両方を含み、特性、形質、または特徴が存在するかどうかを決定することを含む。アッセイすることは、相対的または絶対的なものであり得る。ターゲットの存在を評価することは、存在するターゲットの量を決定すること、およびそれが存在するか否かを決定することを含む。
【0050】
本明細書において、用語「基準(reference)」値は、アッセイ結果と比較した場合、統計的に特定のアウトカムと相関する値を意味する。好ましい実施形態において、基準値は、野生型値の平均を分析する統計的分析から決定することができる。基準値は、閾値スコア値またはカットオフスコア値であってもよい。一般的には、基準値は、1つのアウトカムがより可能性がある閾値を超える(またはそれより低い)もの、および代替のアウトカムがより可能性がある閾値より下のものでもよい。
【0051】
本明細書に開示されているように、値の差は、病原体(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis))または突然変異の有無を示す。レベルまたは値の「差(difference)」というフレーズは、コントロールまたは基準レベルもしくは基準値と比較して、サンプルにおける検査対象(例えば、プローブ−ターゲットハイブリット)の変数(例えば、Tm)での差を意味する。一実施形態において、値またはレベルの差は、コントロールと比較して、サンプルにおける存在する検査対象の量の間の統計学的に有意な差であり得る。例えば、差は、分析対象の測定レベルが任意のコントロールまたは基準群の平均値の約1.0、2.0、3.0、4.0、または5.0標準偏差の範囲外である場合、統計学的に有意であり得る。
【0052】
本明細書に開示されているように、多くの範囲の値が提供される。その範囲の上限および下限の間に、明確に記載されない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値もまた、具体的に開示されることが理解される。言及した範囲におけるいかなる言及した値または介在値と、その言及した範囲におけるその他の言及または介在値との間の、より小さい範囲のそれぞれは、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、範囲に含まれても、含まれなくてもよく、いずれか一方、どちらでもない、または両方の限界値がより小さい範囲に含まれる範囲のそれぞれはまた、本発明に包含され、言及した範囲における任意の特定の除外された範囲に依存する。言及した範囲が一つまたは両方の限界値を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。用語「約(about)」は、一般的に示された数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。例えば、「約10%(about 10%)」は、9%〜11%範囲を示すであろうし、「約20%(about 20%)」は、18〜22を意味するであろう。「約(about)」のその他の意味は、四捨五入などの文脈から明らかであり、よって、例えば「約1(about 1)」はまた、0.5から1.4を意味するであろう。
【0053】
用途
リファンピンおよびフルオロキノロン(FQ)耐性に大きく関与しているM.tb突然変異体を迅速かつ確実に同定する2つの別々なSMBアッセイは、最近説明された(Chakravorty,S.,B.et al.,2011,J Clin Microbiol 49:932−940;Chakravorty,S.,H.,et al.,2012,J Clin Microbiol 50:2194−2202)。本明細書に開示されるアッセイは、リアルタイムPCRフォーマットであるという利点を有するので、それらは使用が容易であり、単位複製配列二次汚染を受けない。また、突然変異の検出では、ハイスループット試験に対して頑強で適していることが示されている。以下の実施例は、SMB TB薬剤耐性検出アッセイシステムを示し、AMKおよびKANに対する耐性の検出を可能にするアッセイを追加する。本明細書で開示されるアッセイと表現型感受性試験方法との間の不一致の原因もまた、調査された。結果は、最も一般的に使用される表現型方法のいくつかが、突然変異がKANへの最小発育阻止濃度(MIC)を適度に増加させるだけの場合、耐性−付与突然変異を有するM.tb単離株を見逃し得ることを示す。低レベルKAN耐性に関連するwhiB7での新規の突然変異もまた、発見された。
【0054】
本明細書に開示されているように、多重化SMB PCRおよび溶解アッセイ(melt assay)は、AMKおよび/またはKANに対する耐性に関連するrrs遺伝子およびeisプロモーターにおける突然変異を正確に同定した。アッセイは、NTM、グラム陽性細菌、およびグラム陰性細菌に対して試験した場合、偽の耐性信号(resistance call)を生成しなかった。ヘテロ−抵抗性のほとんどのケースは、存在する場合、アッセイによっても検出された。MTBDRslプラットフォームとは異なり、アッセイは、クローズドのリアルタイムPCRシステムで実施することができ、全てのアッセイの工程が384ウェルプレートで行われるように、ハイスループット試験に容易に適合することができる。SMBアッセイはまた、突然変異の検出の代替方法に関連する潜在的な問題を回避する。高分解能融解曲線分析は、融解曲線の微妙な変化を検出する能力を必要とする(Yadav,R.,S.,et al.,2012,J Appl Microbiol 113:856−862)。その他のポストPCR融解に基づく分子アッセイは、複雑な蛍光の輪郭を解読することにより突然変異を検出しなければならない(Rice,J.E.,et al.,2012.Nucleic Acids Res 40:e164.)。一方、SMBアッセイは、明確かつ容易に識別可能なTmピークおよび明確なTmシフトを生成し、関心ある突然変異を同定する。個々のTm値はまた、同じ遺伝子型を有するサンプルをクラスター化するために使用することができる。
【0055】
本明細書に開示されているように、アッセイは、TBの新たなケースと未解決の再処置のケースの両方を表す603の臨床サンプルのパネルで試行され、臨床単離株の感受性パターンを有するターゲットの突然変異の関係を評価した。rrs A1401G突然変異を有する単離株の100%は、AMKおよびKANの両方に対する高いレベルの耐性と強い相関を有することが観察された。しかし、eisプロモーター突然変異は、中(moderate)から低レベルKAN耐性およびAMKに対する耐性がないことだけをもたらし、これは、以前の研究と一致している(Campbell,P.J.,et al,2011,Antimicrob Agents Chemother 55:2032−2041;Zaunbrecher,M.A.,et al.,2009,Proc Natl Acad Sci U S A 106:20004−20009)。本研究はまた、感受性試験のためのLJ絶対濃度法が中から低レベルのKAN耐性を適切に検出しないことを示した。実際には、eisプロモーター変異を有するサンプルのほぼ3分の2は、LJ培地におけるKAN感受性として検出された。しかし、eisプロモーター変異を有する1つのサンプルを除くすべてがMGIT法によりKAN耐性として検出された。2つのかかる単離株は、eis C(−12)T突然変異を含んだ。これらの突然変異体はまた、MYCOTBにより試験した場合、KANにも耐性であり、5μg/mlのKAN MICを示した。これまでの研究は、C(−12)T突然変異を有する臨床単離株がKAN耐性と相関がないこと(Zaunbrecher(2009))または相関が低いこと(Campbell,2011;Hoshide,M.,L.et al.,2014,J Clin Microbiol 52:1322−1329.)を示唆している。これらの研究はおそらく、表現型感受性を確立するために使用された試験方法によりこの突然変異と低レベルKAN耐性との関係を見落としていた。これらの結果は、MGITまたはMYCOTB法がKANに対する表現型耐性を試験するのに好ましいはずであることを示唆している。それらはまた、本明細書に開示されるように、低レベル耐性を引きおこし、表現型試験単独では見落とされるであろう突然変異を検出するための遺伝子型耐性試験の力を強調している(Rigouts,L.,M.et al.,2013,J Clin Microbiol 51:2641−2645;Sirgel,F.A.,et al.,2012,Microb Drug Resist 18:193−197;およびVan Deun,A.,et al.,2013,J Clin Microbiol 51:2633−2640)。
【0056】
ここでの一揃いの研究は、rrs野生型およびrrs C1402T突然変異体の混合物である1つのサンプルが含まれていた。このサンプルは、LJ培地においてAMKおよびKANの両方に対して感受性であった。C1402T突然変異を有する単離株は、AMKに対して感受性であるがKANに対して耐性であることが報告されている(Maus,C.E.,et al.,2005,Antimicrob Agents Chemother 49:3192−3197)。この特定のケースにおいて、LJ培地を用いた度重なる感受性試験は、おそらくサンプルのヘテロ−耐性のために、KANに対する感受性を示した。ここで、SMBアッセイが野生型および突然変異のDNA型の両方の存在を明確に検出したので、表現型アッセイよりも潜在的に生じる耐性のよりよい予測因子として役立った。
【0057】
AMKまたはKAN耐性を有する臨床株におけるrrs1484突然変異の発生率は、とても低いものであり(Georghiou,S.B.,et al.,2012,PLoS One 7:e33275)、その臨床的意義は議論の余地がある。rrs1484コドンをターゲットにした別のバージョンのアッセイは、603の単離株のいずれにおいて、および33のAMKおよびKAN耐性単離株を含んでいた、ニュージャージー−ニューヨークエリアからの追加の259の単離株においていかなる突然変異を検出しなかった。この拡大された一揃いの研究において、いかなるrrs 1484突然変異の欠如は、サンガーシークエンシングにより確認された(データ示さず)。rrs 1484突然変異の非常に低い罹患率に照らすと、このコドンは、アミノグリコシド耐性を予測する上で、大きな価値を提供するとは考えにくい。したがって、アミノグリコシド耐性の分子アッセイは、rrs遺伝子の1401〜1402コドンのみをターゲットにすることが推奨される。
【0058】
22のAMKまたはKAN耐性サンプルは、rrs遺伝子およびeisプロモーター領域において野生型配列を有することが見出された。最近の研究は、説明できないKAN耐性を有する単一の臨床株での5’UTR whiB7突然変異を同定することにより、whiB7突然変異の5’UTRでの突然変異とKAN耐性との間の関連の可能性を示している(Reeves,A.Z.,et al.,2013,Antimicrob Agents Chemother 57:1857−1865)。KAN耐性に関連すると思われる、いくつかの新規5’UTR whiB7突然変異、および欠失もまた示された。野生型rrs、eisプロモーター領域を有する臨床株の残り15〜20%におけるKANおよびAMK耐性を説明できる、適切で普遍的なバイオマーカーは同定されていない。KANまたはAMK耐性亜集団からの微量の変異体ターゲットと混合された野生型rrs遺伝子およびeisプロモーター領域DNAを含むサンプルはまた、表現型耐性試験と本明細書に開示されるSMBアッセイとの間の残りの不一致を説明できる。しかし、ヘテロ耐性の高額な調査は、この研究の範囲を超えている。いくつかの最近の研究は、臨床の場面において確認されることが残っているが、PPE60およびRv3168遺伝子が説明できないKAN耐性に関連する可能性を示唆している(Farhat,M.R.,et al.,2013.Nat Genet 45:1183−1189;Zhang,H.,et al.,2013,Nat Genet 45:1255−1260)。
【0059】
要約すると、高感度で特異的なアッセイは、M.tbにおけるAMKおよびKAN耐性の検出のために開発され、MDRおよびXDR TBの罹患率が高い臨床単離株でそれを実証した。結果は、rrs A1401G突然変異がAMKおよびKANの両方に対する高レベルの交差耐性をコードし、eisプロモーター突然変異が以前の機能的ゲノム研究と一致する、中から低レベルのKAN耐性をコードすることを示す(Zaunbrecher 2009)。本明細書に開示されたアッセイの性能と固体および液体培地における3つの異なる表現型感受性試験方法とを比較すると、eisプロモーター突然変異により引き起こされる低から中レベルのKAN耐性がLJに基づく感受性試験により大きく見落とされていることが明らかになった。これらの結果は、アミノグリコシド耐性を検出するための遺伝子型試験の価値を強く示し、結果は、本明細書に開示されるSMBに基づくアッセイの特異的有用性を明らかにする。
【実施例】
【0060】
実施例1
この実施例は、下記実施例2〜7で使用した材料および方法を記載する。
【0061】
DNAサンプル
M.tbテストサンプルは、大韓民国カンウォンのナショナルマサン病院のMDR結核(NCT00341601 clinicaltrials.gov)の自然史研究に登録された503人の患者から培養された603の一連の単離株から単離されたDNAから構成された。2つのコホートを試験した。コホートAは、未治療の新たに疑われるTBのケース(158サンプル)から構成され、コホートBは、再治療のTBケース(445サンプル)から構成された。新鮮な唾液サンプルを処置の開始時に各患者から採取し、M.tbを培養した。患者のサブセットにおいて、反復して唾液サンプルを処置の1、4および6月目に採取し、まtM.tbのために培養された。非結核性抗酸菌(Non−Tuberculosis Mycobacteria)(NTM)ならびにグラム陽性およびグラム陰性菌テストサンプルを以前に記載のNew Jersey Medical School(NJMS) DNAリポジトリから採取した(Chakravorty,S.,2012.J Clin Microbiol 50:2194−2202)。
【0062】
表現型薬剤感受性試験
表現型薬剤感受性試験(phenotypic drug susceptibility testing)は、韓国のInternational Tuberculosis Research Center (ITRC)で、LJ培地上で絶対濃度法により603の単離株の全てで行われ、両方の抗生物質(Jnawali,H.N.,2013,Diagn Microbiol Infect Dis 76:187−196)に対して40μg/mlの臨界濃度(2012年の間に、単離株を試験したときに使用した標準濃度)を用いてAMKおよびKANに対する感受性を決定した。173/603サンプルのAMKおよびKANに対するMICもまた、以前に記載されているように(Lee,J.,2014,Antimicrob Agents Chemother 58:11−18)、TREK Sensititre(登録商標) MYCOTB MICプレート(“MYCOTB”;TREK Diagnostic Systems,Cleveland,Ohio,USA)を用いて評価された。560/603サンプルについて、KANに対する耐性はまた、2.5μg/mlの臨界濃度でMycobacterial Growth Indicator Tube (MGIT)システム(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ,USA)を用いて評価された。ターゲット遺伝子のサンガーシークエンシング結果と一致しなかった表現型感受性試験結果を有するサンプルについて、表現型感受性試験を繰り返して、初期の所見を確認した。MGITおよびLJ感受性試験結果が不一致を示した場合、両方のアッセイを繰り返して、初期の所見を確認または修正した。
【0063】
DNA調製およびシークエンシング
SMBアッセイ試験およびサンガーシークエンシングのためのDNAは、10〜15分間、0.1% Triton X100の存在下で200μlのInstagene Matrix樹脂(Bio−Rad Laboratories,Hercules California,USA)中の一白金耳量の培養物をボイルすることにより培養した単離株から調製された。上清を遠心分離後に回収し、Nanodropマイクロボリューム分光光度計(Thermo Fisher Scientific,Waltham,Massachusetts,USA)を用いて定量した。サンガーシークエンシングのために、rrs遺伝子の2つの異なる断片(ヌクレオチド420〜980および1293〜1537)ならびに上流のeisコード領域およびeisプロモーター全体を0.5μMのフォワードおよびリバースプライマー1X PCRバッファー、250mM dNTPs、2.5mM MgCl
2および0.03U/μlのAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ酵素 (Applied Biosystems,Foster City,California,USA)を用いて、以下のパラメータに従って増幅した:最初の変性を95℃で10分間、続いて95℃で10秒、58〜60℃で30秒、および単位複製配列のサイズに依存して70℃で10〜30秒の40サイクル。eisプロモーター領域およびrrs遺伝子断片を以前に記載されているように(10,33)増幅した。サンプルのサブセットについて、412bpの5’非翻訳領域およびORFからの126bpを含むwhiB7遺伝子からの538bpの断片を増幅し、whiB7F 5’aaacgcgcaggtcagaaaat 3’およびwhiB7R 5’cagtgtcttggctacctcga 3’(配列番号70および71)のプライマーを用いて配列決定した。さらに、ほぼ全体のwhiB7 ORFを含む、whiB7遺伝子からの275bpの断片もまた、whiB7−ingene−F 5’ GTCGGTACTGACAGTCCCC 3’およびwhiB7−ingene−R 5’ATGCAACAGCATCCTTGCG 3’(配列番号72および73)のプライマーを用いて増幅した。PCR産物は、製造業者の説明書に従い、BigDye Terminator,version 3.1,cycle sequencing kit (Applied Biosystems)を用いる3130XL Genetic Analyzer(Applied Bio−systems,Foster City,California,USA)で遺伝子特異的フォワードおよびリバースプライマーを用いて、双方向性のシークエンシングを受けた。
【0064】
アッセイ分子ビーコンおよびプライマー
SMBアッセイは、rrs遺伝子のコドン1401および1402のM.tb突然変異およびeis遺伝子のプロモーター領域に沿った突然変異をターゲットにした。113bpの断片(ヌクレオチド1335〜1451)をAMG−F(5’−GCTAGTAATCGCAGATCAGCAACGCTGC−3’,配列番号51)およびAMG−R(5’−CCTCCCGAGGGTTAGGCCACT−3’,配列番号52)のプライマーを用いてrrs遺伝子から増幅し、プロモーター領域およびeis遺伝子の最初の5つのコドン(ヌクレオチド−81から17)を包含する98bpの断片をeis−F(5’−CACAGGGTCACAGTCACAGAATC−3’,配列番号18)およびeis−R(5’−GCATCGCGTGATCCTTTGCCAGAC−3’,配列番号53)のプライマーを用いて増幅した。rrsプライマーは、マイコバクテリウム属(Mycobacterium genus)に特異的に設計され、eisプライマーは、M.tb複合体に特異的に設計された。1つのSMBプローブrrs−1400(5’−6carboxyfluorescein−
cacgaccgcccgtcacgtcatgaaagtcggt
cgtg−BHQ1−3’,配列番号59)と2つのSMBプローブeis−1(5’−Cyanine5−
caggcggtcgtaatattcacgtgcacctggccgc
cgcctg−BHQ2−3’,配列番号16)およびeis−2(5’−TexasRed−
ctcgcggcatatgccacagtcggattctctgac
gcgag−BHQ2−3’,配列番号61)(配列がSMBのステム部分を示すものおよびBHQがブラックホールクエンチャーを示すものに下線を引いた)とは、それそれrrs遺伝子およびeisプロモーター領域に対するターゲットとされた。rrsプローブは、アンチセンス鎖に相補的であるように設計され、eisプローブは、センス鎖に相補的であるように設計された。SMBは、http://mfold.rna.albany.edu/?q_mfold/dna−folding−formのin silico DNAフォールディングプログラムを用いて設計され、http://mfold.rna.albany.edu/?q_DINAMelt/Two−state−meltingのプローブ−ターゲットハイブリッドフォールディングプログラムは、可能なプローブ−ターゲットハイブリッド構造および溶解温度(Tm)を予測するために使用された。プローブは、明確な突然変異の同定を可能にするために、それぞれの標的領域における野生型配列および突然変異体配列の間の最大のTm差を生成するように設計された。プライマーは、Sigma Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)から、SMBプローブは、Biosearch Technologies(Novato,California,USA)から手に入れた。
【0065】
アッセイ手順
全てのサンプルは、アッセイの検証が盲検法で行われることを確保するために、独立してコード化して、ランダムに分配された。アッセイは、韓国マサンのITRCおよびニュージャージーメディカルスクール(NJMS),Rutgers,Newark,New Jerseyの両方で試験された。603サンプル全体の試験が完了すると、サンプルはデコードされ、PCR結果は、対応するシークエンシング、および表現型薬剤感受性試験結果と比較された。各サイトで得られた結果も比較された。アッセイ結果は、治療する医師に報告されず、いかなる治療決定を導くために使用されなかった。PCRは、Roche Light Cycler 480 II real−time PCR system(Roche Diagnostics Co.Indianapolis,Indiana,USA)を用いて384ウェルプレートで実施され、20μlの反応ボリュームは、rrs遺伝子のための100nMのフォワードプライマーおよび1μMのリバースプライマーならびにeisプロモーター領域のための1μMフォワードプライマーおよび50nMリバースプライマー、1ng/μlのrrs−1400およびeis−1プローブならびに0.8ng/μlのeis−2プローブ、4mM MgCl
2、250mMデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、1X PCRバッファー、8%グリセロール、0.06U/μlのPlatinum(登録商標) TfiExo(−) DNAポリメラーゼ (Life Technologies,Grand Island,New York,USA),ならびに2から5ngのサンプルDNAまたは等ボリュームの水を含む。PCRは、以下の工程で実施された:95℃で2分間の酵素の活性化、続いて95℃で10秒間の変性および67℃で30秒間のアニーリングと伸長との組み合わせの50サイクル。PCRサイクル後、1℃あたり1データの取得速度でプロセス中の蛍光の連続モニタリングと共に、95℃で2分間の変性後、45℃に冷却して、85℃に徐々に加熱することにより、ポストPCR−Tm分析を行った。Tm値は、Tmコーリングソフトウェア(Light Cycler 480 software)を用いて反応終了時に同定された。しかし、各Tmはまた、Tm値の最終的な同定が行われる前に、訓練を受けた観察者により検証された。野生型および突然変異体のTmに対応する任意のプローブの明確なダブルピークを示すサンプルは、ヘテロ耐性を示すと考えられた。テンプレートとしてDNAの代わりに滅菌水を用いたテンプレートなしのコントロールは、DNA−ネガティブコントロールとして使用され、テンプレートとしてM.tb H37Rvからの1ngのゲノムDNAを用いたDNA−ポジティブコントロールはまた、各アッセイプレートに含まれた。
【0066】
ヒト被検体の承認
この研究は、National Masan Hospital、NIAIDおよびRutgers(旧UMDNJ)institutional review boardsにより承認され、すべての被検体は、同意書を渡した(Rutgers IRB protocol number 0120090104)。
【0067】
実施例2.野生型および突然変異体の配列に関連するTm値の同定
本明細書に開示されるSMBに基づくアッセイは、耐性との関連性が知られているM.tbのrrs遺伝子およびeisプロモーターにおける突然変異を探すことによりAMKおよびKANに対する耐性を検出した。本アッセイは、rrsおよびeisターゲット単位複製配列の一部分に相補的なSMBプローブの存在下でのTm分析に続くPCR工程からなる。本発明者らは、最初に、人工オリゴヌクレオチドでのターゲットの突然変異を同定するためにアッセイの能力を評価し、選択された野生型および突然変異体のM.tb株からのDNAテンプレートを配列決定した(データ示さず)。野生型の配列は、野生型ターゲットの既知の平均値の1℃以内のTm値の存在によって同定された。突然変異体の配列は、平均野生型Tm値から少なくとも5標準偏差のTm値のシフトによって同定された。AMKおよびKAN耐性に関連する最も一般的な突然変異を検出する本アッセイの能力は、その後の臨床DNAサンプルで評価された。試験は、野生型配列を有する487のサンプルおよびアッセイターゲットに突然変異を有する116のサンプルからなる、603の臨床サンプルのパネルで行われた。これらのサンプルの5つは、野生型およびサンダーシークエンシングで検出された突然変異株のDNAの混合物を有していた。SMBアッセイは、突然変異体または混合として115/116(99%)の突然変異体または混合(突然変異体および野生型のDNAの両方を含む不均一サンプル)サンプルおよび野生型として487/487(100%)の純野生型サンプルを正確に同定した。ただ一つの混合サンプル(サンガーシークエンシングにより示される)は、本明細書で開示するアッセイにより野生型サンプルとして同定された。野生型および突然変異体のターゲットの設定において各SMBプローブにより生成されたTm値は、高い再現性があった。野生型ターゲットについて、rrs−1400、eis−1およびeis−2のプローブは、それぞれ70.1℃±0.15、63.9℃±0.19および69℃±0.23の平均Tm値を示した(表3)。A1401GおよびC1402Tの突然変異体のTmターゲットについて、突然変異は、それぞれプローブrrs−1400におけるTm値の3.9℃(±0.17)および5.6℃(±0.21)の減少もたらした(表3)。同様に、eis−1およびeis−2プローブは、期待された野生型Tm値と比較して、Tm値の4.3℃から6.5℃の減少を発生させることによって突然変異としてeisプロモーター領域における突然変異の範囲を確実に検出した(表3)。RutgersおよびITRCでの2つの異なる実験室で実施されたPCRアッセイは、野生型および突然変異体ならびに混合物として検出されたすべてのサンプルについて完全に一致した。
【0068】
アッセイの結果は、我々が個々の3点Tmパターンに基づき、603のサンプルを野生型および突然変異体のTmクラスター型に明確に分離することを可能にした(
図1)。本アッセイは、A1401G突然変異のみを含む75サンプルの全てにおいて突然変異を正しく同定した(表3、
図2パネルA)。A1401Gおよび野生型配列の混合物を含む4つのサンプルのうち3つはまた、二重のTmピークの存在に基づき、混合野生型/突然変異体として検出された。C1402T突然変異および野生型DNAの混合物を含むただ一つのサンプルはまた、C1402T突然変異に特異的な突然変異体のTmを有するサンプルからの二重のTmピークの存在によって同定された(表3、
図2パネルA)。eisプロモーター領域の突然変異を有する32のサンプルは、5つの異なる多型(−8、−10、−12、−14および−37の位置)を含んだ。これらの突然変異のすべては、eis SMBのいずれか一つによって成功裏に検出された(表3、
図2パネルBおよびC)。rrs遺伝子およびeisプロモーター領域の両方に突然変異を有する4つのサンプルはまた、二重突然変異体として正しく検出された(表3)。rrs遺伝子のシークエンシングは、その薬剤感受性パターンにもかかわらず、コドン1484突然変異を有するサンプルのいずれも同定しなかった。
【0069】
アミカシン耐性の同定
この実施例では、アッセイを行い、表現型薬剤感受性試験結果と比較して、分子アッセイの性能を評価した。遺伝型薬剤感受性試験の見かけの性能は、試験に含まれるために選択された突然変異およびゴールドスタンダードとして使用される表現型アッセイに依存して変化しうる(Kim,S.J.2005 Eur Respir J 25:564−569;Rigouts,L.,et al.,2013,J Clin Microbiol 51:2641−2645;およびVan Deun,A.,et al.,2013,J Clin Microbiol 51:2633−2640)。LJに基づく薬剤感受性試験方法をゴールドスタンダードとして考慮すると(603の試験サンプルすべてに対して実施された)、A1401G突然変異のrrs SMB Tm特性は、AMK耐性サンプルの82/90を耐性として分類した(91.1%の感度;95%CI、82.8%から96.8%)。野生型Tmは、AMK感受性サンプルの512/513を感受性として分類した。513のAMK感受性単離株中のただ一つの単離株は、野生型Tmおよび特異的なC1402T突然変異体Tmに対応する、rrs SMBプローブによって生成された明らかな二重ピークの存在により、本明細書に開示されるSMBアッセイによって野生型およびC1402T突然変異体のDNAの混合物として同定された(
図2パネルA)。これは、サンガーシークエンシングによっても確認された。これまでの研究では、C1402T突然変異がAMK耐性をコードしていないことが示されているため(24)、C1402T突然変異に対応する特異的なTmは、AMK感受性の指標として考えることができる。この考察は、100%の特異性(95%CI、99から100%)をもたらすすべての513/513AMK感受性サンプルを正しく検出する本明細書に開示されるアッセイをもたらした。分析においてeisプロモーター領域での突然変異に特徴があるTm値を含むことは、AMK耐性を検出する感受性を増加させないが、特異性は100%から93.8%に減少した(95%CI、91.2から95.6%)。これらの結果は、eisプロモーター突然変異がLJ薬剤感受性試験によって明らかにされたようにAMK耐性に関連しないことを示唆する以前の報告と一致する(Campbell 2011およびZaunbrecher 2009)。
【0070】
実施例4.カナマイシン耐性の同定
KAN耐性を検出するアッセイの性能はまた、603のサンプルのすべてについてゴールデンスタンダードとしてLJに基づく薬剤感受性試験を用いて評価された。耐性を明らかにするためにA1401GまたはC1402T突然変異のいずれかに典型的な本明細書に開示されたrrs SMBにより生成されたTm値を用いて、本アッセイは、82/106サンプルをKAN耐性として検出した(感受性77.4%;95%CI 68.0から84.7%)。逆に、感受性を明らかにするために野生型ターゲットに特徴的なrrs SMB Tmを用いると、496/497のKAN感受性サンプルが感受性として同定された(表4)(特異性99.8%;95%CI、98.7から100%)。eisプロモーター領域において突然変異に特徴的な2つのeisSMBのTM値を耐性の定義に加えると、11の追加のKAN耐性サンプルが耐性として分類されたので、KAN耐性を検出する感受性が77.4%から87.7%(95%CI、79.5から93%)に増加した。しかし、eisプロモーター突然変異を有する21のKAN感受性サンプルが現状KAN耐性として「誤って(falsely)」検出されたので、特異性は、99.8%から95.6%(95%CI、93.3から97.1%)に減少した(表4)。
【0071】
次に、MGIT結果が利用可能であった506のサンプルのゴールドスタンダードとして、MGITに基づく薬剤感受性試験結果を用いて同様の分析を行った。このサブセットは、eisプロモーター突然変異のみを有する全てのサンプルを含んでいた。アッセイ結果とMGITに基づくゴールドスタンダードとの比較は、LJ培地における不一致なKAN耐性を有するeis突然変異体を明らかにするのに役立った。KAN耐性を明らかにするためにゴールドスタンダードとしてMGITおよびA1401GまたはC1402T突然変異に特徴的なrrs SMB Tm値のみを用いると、63/113のKAN耐性サンプルだけがSMBアッセイによって耐性のあるものとして同定された(感受性55.8%;95%CI、46.1から65%)。逆に、感受性を明らかにするために野生型ターゲットに特徴的なrrs SMB Tmを用いると、445/447サンプルをKAN感受性として同定した(感受性99.8%;95%CI、9+8.5から100%;表4)。LJに基づく感受性試験の場合とは異なり、この場合におけるeisプロモーター突然変異に特徴的なTm値を含むことで、99.5%(95%CI、98.2から100%)と非常に高いままであるKAN耐性のアッセイの特異性を用いて、耐性試験の感受性が55.8%から82.3%へと増加した。したがって、MGITに基づく感受性試験に基づいて、eisアッセイは、特異性に影響を及ぼすことなく29の追加のKAN耐性サンプルの検出を可能にした(表4)。
【0072】
実施例5.本アッセイおよびMicによって検出された突然変異間の関係
本明細書で開示されるアッセイにより明らかにされた耐性と本明細書で開示される2つの表現型感受性試験方法によって明らかにされた耐性との間の不一致は、主にeisプロモーター突然変異を有する単離株に関係していた。以前の研究は、eisプロモーター突然変異が比較的低レベルのKAN耐性を引き起こし、一方rss遺伝子突然変異がAMK、KANおよびCAPに対する高レベルの耐性をもたらすことを示している(Campbell 2011;Du,Q.,et al.,2013,Diagn Microbiol Infect Dis 77:138−142;Georghiou 2012;およびZaunbrecher 2009)。結果についてのさらなる知見は、LJ対MGITに基づく感受性試験結果の間の不一致であった。MIC試験は、rrsおよびeisプロモーター突然変異、ならびにLJおよびMGITシステムにおけるそれらの感受性パターンの間の関係をより慎重に探索するために行われた。AMKおよびKAN(およびターゲット領域の両方で野生型)の両方に対して感受性であるもの、または2つのターゲット遺伝子(rrs A1401Gならびにeis G(−10)A、C(−14)TおよびG(−37)T)における最も一般的な突然変異型を代表するように選択されるものいずれかであるサンプルは、MYCOTB法によって試験され、それらのMICを決定した。アッセイターゲットの両方における野生型として知られる追加の単離株もまた、コントロールとして試験された。eisプロモーター突然変異のみ(rrs突然変異なし)を有する単離株のAMK MICは、0.5μg/mlから1μg/mlのMICを示すサンプルの大部分で、0.25μg/mlおよび2μg/mlの間の範囲であることが観察された(
図3)。一つのeisプロモーター突然変異体だけが4μg/mlのAMK MICを有した。eisプロモーターまたはrrs突然変異を有さないコントロールの単離株は、0.25μg/mlおよび0.5μg/mlの範囲の間にMICを有した。したがって、野生型または突然変異体のeisプロモーター配列のいずれかを有する単離株のAMK MICは、実質的に重複していた。一方、同じeisプロモーター突然変異のほとんどのKAN MICは、5μg/mlから20μg/mlの範囲であり、一つの単離株が40μg/mlのMICを示した(
図3)。2つのeisプロモーター突然変異体だけが2.5μg/mlの低いMICを有した。野生型eisプロモーター配列を有する単離株は、eisプロモーター突然変異体の平均MICの2から30分の1である、0.6μg/mlおよび2.5μg/mlの間のMICを示した(
図3)。したがって、AMKの状況とは対照的に、野生型単離体のKAN MICは、eisプロモーター突然変異体のKAN MICとほとんど重複しなかった。これらの結果は、耐性がLJに基づくまたはMGITに基づく感受性試験で検出されなくても、eisプロモーター突然変異体が小から中レベルKAN耐性を有すると考えられるべきであることを強く示唆する。
【0073】
実施例6.M.tb以外の菌に対するアッセイ特異性
本アッセイの分析特異性は、ATCCリポジトリ(Manassas、Virginia、USA)から得られた非結核性マイコバクテリア(Mycobacteria)(NTM)の18種、26種を代表する121の臨床NTM株、ならびにグラム陽性およびグラム陰性菌の18種のパネルに対して試験された。本アッセイでターゲットとするrrs領域は、異なるNTM種の間で高度に保存されている。したがって、rrsアッセイは、いかなるTmも生成しない、M・ゼノピ(M.xenopi)を除き、配列ホモロジーに基づいて予想されたとおり、試験したすべてのNTMについて70℃のTmを生成した(野生型M.tb DNAの存在下で生成されたTmと同一である)。アミノグリコシド感受性M.tbと同一のTm値を生成するNTM種は、偽の耐性試験結果の原因になるとは予想されない。rrs突然変異体AMKおよびKAN耐性株からのM.tb DNAが10から20倍過剰なNTM DNAと混合された場合、明確な二重Tmピークがアッセイによって生成され、M.tbターゲットからの突然変異体Tm値およびNTM配列からの野生型Tm値(データ示さず)に相当することは、耐性−関連rrs突然変異がNTM DNAの大きなバックグラウンドの存在下でさえ本アッセイによってM.tbで検出され得ることを示している。10
7ゲノム当量のDNAをPCRアッセイに添加した場合でさえ、試験した任意のNTM種の存在下で、eisプローブによって明らかな融解曲線は生成されなかった。グラム陽性またはグラム陰性菌のいずれも、rrsまたはeis SMBのいずれにもTm値を生成しなかった;したがって、それらは、アッセイによって生成されるべきいかなる偽の耐性コールを引き起こさなかった。
【0074】
実施例7.AMKおよびKAN耐性のさらなる遺伝的原因
この実施例における研究は、AMKおよび/またはKANに対して耐性であるが、野生型rrs遺伝子およびeisプロモーター配列を有する22のサンプルを含んでいた。最近の研究により、whiB7遺伝子の5’非翻訳領域(UTR)での突然変異がM.tbにおけるアミノグリコシド耐性を引き起こすことが示唆されている。whiB7突然変異が表現型の上では耐性であるがアッセイ−感受性である単離株のいくつかの原因でありうるかどうかを決定するために、22サンプル全ては、whiB7遺伝子開始部位の上流412bp領域、加えてwhiB7オープンリーディングフレームの一部分において、配列決定された。コントロールセットとして、30のランダムに選別された総感受性単離株もまた、配列決定された。22の不一致な単離株のうち、3人の患者からの6の単離株がwhiB7 5’UTR領域において突然変異を示した。転写開始部位を+1と考えると、1つのサンプルは、5’UTRの+138位にシトシン欠失を有し、一人の患者からの2つのサンプルは、+237位にAからGの突然変異を含み、ただ一人の患者からの残りの3つのサンプルは、+237位にAからGの突然変異を示した(表5)(Reeves,A.Z.,2013,57:1857−1865)。ただ一人の患者からの3つのサンプルは、機能するポジティブPCRコントロールにもかかわらず、繰り返しPCRを試した後、5’UTRからのいかなる増幅も生成しなかった。これは、275bpの断片が3つのサンプル全てについてwhiB7 ORF内から容易に増幅されうるため、5’UTR領域での大きな欠失の存在を示唆した。whiB7突然変異を有するすべてのサンプルは、eis遺伝子の上方制御によって推定されるwhiB7作用機序と一致するKANに対してのみ耐性であった(Reeves 2013)。これらの単離株についてのKAN MICはまた、5μg/mlと低く、これはeisプロモーター突然変異株で観察されたものと同じであった。アミノグリコシドに感受性である30のコントロールサンプルのいずれも、whiB7遺伝子の5’UTRにいかなる突然変異も有していなかった。これらの突然変異とアミノグリコシド耐性を有するwhiB7遺伝子の5’UTRにおける欠失との関係を確認するために、さらなる研究が必要である。しかし、感受性株にかかる突然変異が存在しないことは、それらがアミノグリコシド耐性において何らかの役割を有するであろうことを暗示し、さらなるアッセイが低レベルKAN耐性を検出するための感受性を改善するためにこれらの突然変異をターゲットにすることができる。
【0075】
【表3】
【0076】
SDは、異なる臨床サンプルのプローブそれぞれのTm値の+/−標準偏差を表し、dTmは、各プローブの野生型配列と突然変異体配列とのTm差を表す。
【0077】
SD;標準偏差、dTm:デルタTm
プローブ番号1、2および3は、それぞれrrs−1400、eis−1およびeis−2プローブに対応する。
【0078】
【表4】
【0079】
LJおよびMGITは、それぞれLJ比率およびMGIT法による感受性試験を意味する。
【0080】
【表5】
【0081】
LJおよびMGITは、それぞれLJ比率およびMGIT法による感受性試験を意味する。
【0082】
ND:未決定、NM:変異なし、R:耐性、S:感受性。
【0083】
好ましい実施形態である前述の実施例は、特許請求の範囲により規定される本発明を限定するものではなく、例示とされるべきである。容易に理解されるように、上記特徴の多くの変形および組み合わせは、特許請求の範囲に記載された本発明から逸脱することなく利用することができる。かかる変形は、本発明の範囲からの逸脱とは見なされず、かかる変形のすべては、下記の特許請求の範囲内に含まれるものとする。本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。