特許第6835715号(P6835715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835715
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20210215BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20210215BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20210215BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C03C27/12 D
   B32B3/30
   B32B27/06
   B32B17/06
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-519579(P2017-519579)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2017013674
(87)【国際公開番号】WO2017171032
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-73211(P2016-73211)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 和彦
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−150540(JP,A)
【文献】 特開平09−040444(JP,A)
【文献】 特開平11−035348(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/043206(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/031884(WO,A1)
【文献】 特開2015−107915(JP,A)
【文献】 特開2013−001594(JP,A)
【文献】 特開2008−201667(JP,A)
【文献】 特開2007−223883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 1/00−43/00
B29C 53/00−53/84
B29C 57/00−59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面に多数の凹部を有する合わせガラス用中間膜であって、
ポリビニルアセタールを含有し、
厚み方向に2層以上の樹脂層を有する積層構造を有し、かつ、最小厚みが100μm以上である樹脂層を有し、
JIS K−6732(1996)に準拠して測定される膜の最厚部の厚みT(μm)と、JIS B−0601(1994)に準拠して測定される最厚部の最大高さ粗さRy(μm)が下記式(1)及び下記式(1’)を満たす
ことを特徴とする合わせガラス用中間膜。
Ry ≦ 0.0195×T + 33.2 (1)
T≧850 (1’)
【請求項2】
更に、下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
Ry ≦ 0.0159×T + 32.2 (2)
【請求項3】
更に、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
Ry ≧ 0.020×T + 16.6 (3)
【請求項4】
更に、下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
Ry ≧ 0.025×T + 14.0 (4)
【請求項5】
T≧860であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
T≧1000であることを特徴とする請求項5記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
凹部が、底部が連続した溝形状を有し、隣接する凹部が平行して規則的に形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
凹部の間隔Smが600μm以下であることを特徴とする請求項7記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
断面形状が楔形であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されていることを特徴とする合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最厚部の厚みが850μm以上の厚い合わせガラス用中間膜であっても、合わせガラス製造時にガラスの周縁部で合わせガラス用中間膜とガラスとが充分に接着されて、周縁部のシール不良現象が発生しない合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスや、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとして、少なくとも一対のガラス間に、例えば、液状可塑剤とポリビニルアセタールとを含む合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。
【0003】
合わせガラスの製造では、通常、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を、ニップロールを通して扱くか(扱き脱気法)、又は、ゴムバッグに入れて減圧吸引し(真空脱気法)、ガラス板と中間膜との間に残留する空気を脱気しながら予備圧着する。次いで、予備圧着後の積層体を、例えばオートクレーブ内で加熱加圧して本圧着を行うことにより合わせガラスが製造される。合わせガラスの製造工程においては、ガラスと合わせガラス用中間膜とを積層する際の脱気性が重要である。合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面には、合わせガラス製造時の脱気性を確保する目的で、微細な凹部が形成されている。
【0004】
近年、合わせガラスに求められる性能も多様化し、該性能を満足するために合わせガラス用中間膜の構造も複雑化している。例えば、厚み方向の断面を楔形状とすることで、合わせガラスをヘッドアップディスプレイとして利用可能になる楔形中間膜(例えば、特許文献1)や、遮音層と保護層とを組み合わせることで遮音性能を発揮する遮音中間膜(例えば、特許文献2)や、これらを組み合わせることで両方の性能を発揮する中間膜等が検討されている。
このように構造が複雑化した合わせガラス用中間膜では、組み合わせる樹脂層の数が増えてしまうことから、合わせガラス用中間膜全体の厚みが増加する傾向にあり、最厚部の厚みが850μm以上となるものもある。しかしながら、このような厚い合わせガラス用中間膜では、合わせガラスを製造する際に、ガラスの周縁部で合わせガラス用中間膜とガラスとが充分に接着されない、いわゆる「周縁部のシール不良現象」が起こりやすい。「周縁部のシール不良現象」が発生すると、脱気直後には充分に空気が抜けていても、その後次第に周縁部から空気が進入してしまい、合わせガラスの透明性が周縁部から低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/132777号
【特許文献2】特開2007−331959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合わせガラス用中間膜表面を従来より粗くすれば、周縁部のシール不良現象を防止できると考えられる。しかしながら、合わせガラス用中間膜表面が粗すぎる場合には、合わせガラスの中央部の脱気が行われた後でも、膜とガラスとの密着までの時間が遅くなり、合わせガラスの生産効率が悪くなる、膜とガラスとが充分に密着しない場合がある。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、最厚部の厚みが850μm以上の厚い合わせガラス用中間膜であっても、合わせガラス製造時にガラスの周縁部で合わせガラス用中間膜とガラスとが充分に接着されて、周縁部のシール不良現象が発生せず、合わせガラスの生産効率も向上することが出来る合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも一方の表面に多数の凹部を有する合わせガラス用中間膜であって、JIS K−6732(1996)に準拠して測定される膜の最厚部の厚みT(μm)と、JIS B−0601(1994)に準拠して測定される最厚部の最大高さ粗さRy(μm)が下記式(1)及び下記式(1’)を満たす合わせガラス用中間膜である。
Ry ≦ 0.0195×T + 33.2 (1)
T≧850 (1’)
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、最厚部の厚みが850μm以上の厚い合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを製造する際にでも、充分な脱気性が発揮される条件を詳細に検討した。その結果、JIS K−6732(1996)に準拠して測定される膜の最厚部の厚みT(μm)(以下、単に「膜の最厚部の厚みT」ともいう。)と、JIS B−0601(1994)に準拠して測定される最厚部の最大高さ粗さRy(μm)(以下、単に「最厚部の最大高さ粗さRy」ともいう。)が一定の関係を満たす場合に、合わせガラス製造時にガラスの周縁部で合わせガラス用中間膜とガラスとが充分に接着されて、周縁部のシール不良現象が発生せず、合わせガラスの生産効率も向上することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜は、少なくとも一方の表面に、多数の凹部を有する。該凹部は、合わせガラスの製造において、脱気性を確保する役割を有する。
上記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する凹部が平行して規則的に形成されていることが好ましい。一般に、2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を予備圧着及び本圧着するときの空気の抜け易さは、上記凹部の底部の連通性及び平滑性と密接な関係がある。中間膜の少なくとも一方の面の凹部の形状を、底部が連続した溝形状である凹部が平行して規則的に形成することにより、上記の底部の連通性はより優れ、予備圧着及び本圧着の際に著しく脱気性が向上する。
なお、「規則的に形成されている」とは、隣接する上記凹部が平行して等間隔に形成されていてもよく、隣接する上記凹部が平行して形成されているが、すべての隣接する上記凹部の間隔が等間隔でなくともよいことを意味する。
図1及び図2に、表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して形成されている合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図を示した。
【0011】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記膜の最厚部の厚みTと上記最厚部の最大高さ粗さRyが上記式(1)及び上記式(1’)を満たす。
なお、上記式(1)及び下記式(2)において、Ryは、合わせガラス用中間膜の第1の表面のRyと、第1の表面とは反対側の第2の表面のRyとのいずれか大きい方のRy(以下、「Ry(Max)」ともいう。)である。
本発明者らは、従来の膜厚が厚い合わせガラス用中間膜では、合わせガラスの脱気工程において、合わせガラスの周縁部の圧力が増大する傾向にあり、膜の周縁部とガラスとの密着が早期に行われるため、充分に脱気が完了しない状態で合わせガラスが得られてしまうことにより、脱気後の透明度が悪化していると推測した。一方で、脱気性を充分に向上させるためにRyのみを高くすると、合わせガラスの中央部の脱気が充分に行われた後でも、膜とガラスとの密着までの時間が遅くなり、生産効率が悪くなると推測した。そこで、膜の最厚部の厚みTと最厚部の最大高さ粗さRyが上記式(1)及び上記式(1’)を満足すれば、脱気が充分に行われた後で、速やかに膜とガラスとの密着が行われ、合わせガラスの生産効率を向上可能な合わせガラス用中間膜を得ることができることを見出した。
【0012】
上記式(1’)に示したように、上記膜の最厚部の厚みTは850μm以上である。本願発明の優れた効果は、上記膜の最厚部の厚みTが850μm以上である場合に発揮される。上記膜の最厚部の厚みTは860μm以上であることが好ましく、900μm以上であることがより好ましく、910μm以上であることが更に好ましく、1000μm以上であることが特に好ましく、1100μm以上であることが最も好ましい。上記膜の最厚部の厚みTの上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜の取扱性が充分に向上することから、2800μm以下であることが好ましい。
なお、本発明の優れた効果は、本発明の合わせガラス用中間膜が、例えば厚み方向の断面が楔形状の合わせガラス用中間膜である場合にでも、膜の厚みが850μm以上である領域において発揮される。
【0013】
本発明の合わせガラス用中間膜は、最薄部の厚みが750μm以上であることが好ましい。上記最薄部の厚みが750μm以上であることにより、最厚部と最薄部の厚みの差を少なくすることができる。これにより、脱気が充分に行われた後で、より一層速やかに膜とガラスとの密着が行われ、合わせガラスの生産効率を向上可能な合わせガラス用中間膜を得ることができる。上記最薄部の厚みは800μm以上であることがより好ましく、850μm以上であることが更に好ましく、860μm以上であることが特に好ましく、900μm以上であることが最も好ましい。
【0014】
本発明の合わせガラス用中間膜は、更に、下記式(2)を満たすことが好ましい。
Ry ≦ 0.0159×T + 32.2 (2)
上記膜の最厚部の厚みTと上記最厚部の最大高さ粗さRyが上記式(2)を満たす場合に合わせガラスの生産効率を更により一層向上させることができ、且つ、「周縁部のシール不良現象」の発生を防止できる。
【0015】
本発明の合わせガラス用中間膜は、更に、下記式(3)を満たすことが好ましい。
Ry ≧ 0.020×T + 16.6 (3)
なお、上記式(3)及び下記式(4)において、Ryは、合わせガラス用中間膜の第1の表面のRyと、第1の表面とは反対側の第2の表面のRyとの平均値(以下、「Ry(Ave)」ともいう。)である。本発明者らは、従来の膜厚が厚い合わせガラス用中間膜では、合わせガラスの脱気工程において、合わせガラスの周縁部の圧力が増大する傾向にあり、膜の周縁部とガラスとの密着が早期に行われるため、充分に脱気が完了しない状態で合わせガラスが得られてしまうことにより、脱気後の透明度が悪化していると推測した。そこで、膜の最厚部の厚みTと最厚部の最大高さ粗さRyが上記式(3)を満足すれば、膜の周縁部とガラスとの密着が早期に行われることを防止でき、脱気後の透明度が充分に高い合わせガラスを得ることができる。
なお、合わせガラスの透明性の低下は、予備圧着時における脱気不良に起因する。従って、合わせガラス用中間膜の脱気性は、合わせガラスの気泡の有無等を評価するよりも、予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tpを測定することにより、より精密に評価することができる。
【0016】
本発明の合わせガラス用中間膜は、更に、下記式(4)を満たすことが好ましい。
Ry ≧ 0.025×T + 14.0 (4)
上記膜の最厚部の厚みTと上記最厚部の最大高さ粗さRyが上記式(4)を満たす場合に、合わせガラス製造時に充分な脱気性を発揮し、予備圧着後の積層体の透明度を更により一層向上させることができる。
【0017】
上記膜の最厚部の厚みTは、JIS K−6732(1996)に準拠して測定される。具体的には、定圧厚み測定器(例えば、尾崎製作所製社製、FFD−2等)を用い、サンプルとなる合わせガラス用中間膜の押し出し方向とは垂直に、一方の端部から他方の端部まで5cm毎に厚みを計測する。測定は、温度23℃、湿度30RH%の環境下で行う。なお、膜の最厚部の厚みTは、上記方法により膜の厚みを測定したときに、最も厚い点の厚みを意味する。
【0018】
合わせガラス用中間膜における、合わせガラス用中間膜製造時の押し出し方向は、例えば、以下の方法によって確認することができる。
即ち、合わせガラス用中間膜を140℃の恒温槽に30分保管した後、フィルムの平行方向と垂直方向の収縮率が大きいほうが押し出し方向であることにより確認することができる。他にも、該合わせガラス用中間膜のロール状体の巻取り方向によって確認することができる。これは、合わせガラス用中間膜のロール状体は、合わせガラス用中間膜製造時の膜の押し出し方向に巻き取られることから、ロール状体の巻取方向と、合わせガラス用中間膜製造時の膜の押し出し方向とが同一であることによる。
【0019】
上記最厚部の最大高さ粗さRyは、JIS B−0601(1994)に準拠して測定される。
具体的には、測定方向は底部が連続した溝形状に対して垂直方向、メルトフラクチャーを利用して成型されたエンボスの場合は、押し出し方向に対して平行とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、予備長さ2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行う。測定は、温度23℃、湿度30RH%の環境下で行う。
また、上記最厚部の最大高さ粗さRyは、測定用サンプルとして縦15cm、横15cmの大きさに切り出した合わせガラス用中間膜の中で、最厚部の測定点を通り、押し出し方法に対して平行な線上を第一の表面、第二の表面それぞれ3点測定し、評価にために切り出した全てのサンプルについて同様の操作を行って得られた各Ryの平均値を算出する。
【0020】
予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tpの測定方法について詳しく説明する。
まず、測定用サンプルとして、縦15cm、横15cmの大きさに合わせガラス用中間膜を切り出す。ここで、最厚部での測定には、最厚部の厚み測定点を通る、押し出し方向に対して平行な線が切り出した合わせガラス用中間膜の中央を通るように、縦15cm、横15cmの大きさに合わせガラス用中間膜を切り出す(図3(a)、(b))。一方、最薄部での測定には、最薄部の厚み測定点を通る、押し出し方向に対して平行な線が中央を通るように、縦15cm、横15cmの大きさに合わせガラス用中間膜を切り出す。ただし、最厚部及び最薄部が、膜端部から7.5cm以内の位置にある場合は、膜端部に接するように合わせガラス用中間膜を切り出す(図3(c))。
【0021】
次いで、切り出した測定サンプルの合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板(縦15cm×横15cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、積層体を得る。得られた積層体をガラスの表面温度が30℃になるまでオーブン内で予備加熱した後、ゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に−600mmHgの減圧下で、14分間後に積層体のガラスの表面温度(予備圧着温度)が90℃となるように加熱した後、積層体のガラスの表面温度が40℃になるまで冷却した後に、大気圧に戻して予備圧着を終了する。
【0022】
次いで、予備圧着後の積層体について、以下の方法により平行光線透過率を評価する。
即ち、JIS K 7105に準拠して、予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tp(%)を、ヘーズメーター(例えば、村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定する。
測定位置は積層体の2つの対角線が交差する中央部、積層体の各頂点から対角線方向に5.64cm離れた4点を合わせた5点として、その平均値をTpとする。
なお、測定は、上記測定点を中心に5cm×5cm以上で積層体から切り出したサンプルについて行う(図4)。
【0023】
シール温度の測定方法について詳しく説明する。
合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板(縦15cm×横15cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、こうして得られた合わせガラス構成体(積層体)をあらかじめ50℃に加熱したオーブン中で10分間予備加熱する。50℃に予備加熱したゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、合わせガラス構成体(積層体)の温度(予備圧着温度)を50℃に維持したまま、−600mmHgで5分間減圧した後、大気圧に戻して予備圧着積層体を得る。
予備圧着された合わせガラス構成体(積層体)をオートクレーブ中に入れ、13atm(1300kpa)に昇圧後、温度140℃に昇温し20分間保持した後、50℃まで温度を下げた後、大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを作製する。
得られる合わせガラスを本圧着後23℃で24時間保管した後に、140℃のオーブン中で2時間加熱する。次いで、オーブンから取り出して23℃24時間静置した後、合わせガラスの外観を目視で観察する。テスト枚数は5枚とする。
合わせガラスの端部から1cmよりも内側に気泡が生じた枚数を調べて、以下の基準により脱気性を評価する。
○:気泡が生じた枚数が3枚以下
×:気泡が生じた枚数が3枚を超える
合わせガラス構成体の予備加熱温度、ゴムバック温度を50℃から5℃ずつ増加させて同様の評価を行い、評価が〇となる最低温度をシール温度とする。
【0024】
得られるシール温度をもとに、合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを製造したときのシール性を以下のように評価する。
○:シール温度が75℃以下
×:シール温度が75℃を超える
【0025】
本発明の合わせガラス用中間膜の表面の凹部が、底部が連続した溝形状を有し、隣接する凹部が平行して規則的に形成されている場合、該凹部の間隔Smは100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、600μm以下であることが好ましく、450μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることが更に好ましい。上記凹部の間隔Smがこの範囲内であると、優れた脱気性を発揮することができる。
なお、本明細書において凹部の間隔Smは、JIS B−0601(1994)に準じる方法により測定される。なお、測定方向は底部が連続した溝形状に対して垂直方向、メルトフラクチャーを利用して成型されたエンボスの場合は、押し出し方向に対して平行とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、予備長さ2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行う。測定は、温度23℃、湿度30RH%の環境下で行う。
また、上記凹部の間隔Smは、測定用サンプルとして縦15cm、横15cmの大きさに切り出した合わせガラス用中間膜の中で、最厚部の測定点を通り、押し出し方法に対して平行な線上を第一の表面、第二の表面それぞれを測定し、評価にために切り出した全てのサンプルについて同様の操作を行って得られた各Smの平均値を算出する。
【0026】
上記凹部の最大高さ粗さ(Ry)の好ましい下限は20μm、より好ましい下限は30μm、更に好ましい下限は40μm、好ましい上限は80μm、より好ましい上限は65μmである。上記凹部の溝深さ(Rzg)をこの範囲内とすることにより、予備圧着及び本圧着の際の脱気性をより向上させることができる。
なお、本明細書において凹部の最大高さ粗さ(Ry)とは、JIS B−0601(1994)「表面粗さ−定義及び表示」に規定される。また、上記凹部の最大高さ粗さ(Ry)は、表面粗さ測定器(小坂研究所製「SE1700α」)を用いて測定されるデジタル信号をデータ処理することによって容易に得られる。
【0027】
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリビニルアセタールがより好ましい。
【0028】
上記ポリビニルアセタールは、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70〜99.8モル%の範囲内である。
【0029】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1700以上、特に好ましくは1700を超え、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、特に好ましくは3000未満である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0030】
上記ポリビニルアセタールに含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタールを製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタールにおけるアセタール基の炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は6である。上記ポリビニルアセタールにおけるアセタール基の炭素数が3以上であると、中間膜のガラス転移温度が充分に低くなり、また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が3〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0031】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは18モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
なお、上記ポリビニルアセタールの水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠して又はASTM D1396−92に準拠して、測定することにより求めることができる。
【0033】
上記ポリビニルアセタールのアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタールと可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
なお、上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセタール基が結合しているエチレン基量は、例えば、JISK6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して又はASTMD1396−92に準拠して測定できる。
【0034】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度(ポリビニルブチラールの場合にはブチラール化度)は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは53モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、特に好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタールと可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタールを製造するために必要な反応時間が短くなる。
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
なお、上記アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法又はASTM D1396−92に準拠した方法により、アセチル化度と水酸基の含有率とを測定し、得られた測定結果からモル分率を算出し、次いで、100モル%からアセチル化度と水酸基の含有率とを差し引くことにより算出され得る。
【0035】
本発明の合わせガラス用中間膜は、可塑剤を含有することが好ましい。
上記可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤であれば特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤や、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
【0036】
上記有機可塑剤として、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、又は、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートがより好ましい。
【0037】
上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100質量部に対する好ましい下限は25質量部、より好ましい下限は30質量部であり、好ましい上限は80質量部、より好ましい上限は70質量部である。上記可塑剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0038】
本発明の合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0039】
本発明の合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変性シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、顔料もしくは染料からなる着色剤等の添加剤を含有してもよい。
【0040】
本発明の合わせガラス用中間膜は、単層の樹脂層からなるものであってもよく、厚み方向に2層以上の樹脂層を有する積層構造を有するものであってもよい。特に2層以上の樹脂層の積層構造を有する場合には、合わせガラス用中間膜全体の厚みが増加する傾向にあり、最厚部の厚みが850μm以上となりやすい。本願発明は、このような厚い合わせガラス用中間膜において効果を発揮する。
【0041】
本発明の合わせガラス用中間膜では、2層以上の樹脂層として、少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層とを有し、上記第1の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールAという。)の水酸基量が、上記第2の樹脂層に含まれるポリビニルアセタール(以下、ポリビニルアセタールBという。)の水酸基量と異なることが好ましい。
ポリビニルアセタールAとポリビニルアセタールBとの性質が異なるため、1層だけでは実現が困難であった種々の性能を有する合わせガラス用中間膜を提供することができる。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より低い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、ポリビニルアセタールAの水酸基量がポリビニルアセタールBの水酸基量より高い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0042】
更に、上記第1の樹脂層及び上記第2の樹脂層が可塑剤を含む場合、上記第1の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Aという。)が、上記第2の樹脂層におけるポリビニルアセタール100質量部に対する可塑剤の含有量(以下、含有量Bという。)と異なることが好ましい。例えば、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより多い場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が低くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より軟らかくなり、合わせガラス用中間膜の遮音性が高くなる。また、2層の上記第2の樹脂層の間に、上記第1の樹脂層が積層されており、かつ、上記含有量Aが上記含有量Bより少ない場合、上記第1の樹脂層は上記第2の樹脂層と比較してガラス転移温度が高くなる傾向にある。結果として、上記第1の樹脂層が上記第2の樹脂層より硬くなり、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0043】
本発明の合わせガラス用中間膜を構成する2層以上の樹脂層の組み合わせとしては、例えば、合わせガラスの遮音性を向上させるために、上記第1の樹脂層として遮音層と、上記第2の樹脂層として保護層との組み合わせが挙げられる。合わせガラスの遮音性が向上することから、上記遮音層はポリビニルアセタールXと可塑剤とを含み、上記保護層はポリビニルアセタールYと可塑剤とを含むことが好ましい。更に、2層の上記保護層の間に、上記遮音層が積層されている場合、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜(以下、遮音中間膜ともいう。)を得ることができる。
以下、遮音中間膜について、より具体的に説明する。
【0044】
上記遮音中間膜において、上記遮音層は遮音性を付与する役割を有する。上記遮音層は、ポリビニルアセタールXと可塑剤とを含有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、得られる遮音中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、遮音層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0045】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。上記炭素数が4〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0046】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0047】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の下限は65モル%がより好ましく、68モル%以上が更に好ましい。
上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0048】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は8モル%、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0049】
特に、上記遮音層に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が65モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。また、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが、より好ましい。
【0050】
上記遮音層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールX100質量部に対する好ましい下限が45質量部、好ましい上限が80質量部である。上記可塑剤の含有量を45質量部以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができ、80質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトが生じて、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は50質量部、更に好ましい下限は55質量部、より好ましい上限は75質量部、更に好ましい上限は70質量部である。
【0051】
上記遮音層の厚み方向の断面形状が矩形状である場合には、厚さの好ましい下限は50μmである。上記遮音層の厚さを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層の厚さのより好ましい下限は80μmである。なお、上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は300μmである。
【0052】
上記遮音層は一端と、上記一端の反対側に他端とを有し、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい形状を有していても良い。上記遮音層は、厚み方向の断面形状が楔形状である部分を有することが好ましい。この場合、上記遮音層の最小厚みの好ましい下限は50μmである。上記遮音層の最小厚みを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層の最小厚みのより好ましい下限は80μmであり、更に好ましい下限は100μmである。なお、上記遮音層の最大厚みの上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は300μmである。上記遮音層の最大厚みのより好ましい上限は220μmである。
【0053】
上記保護層は、遮音層に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下するのを防止し、また、合わせガラス用中間膜に耐貫通性を付与する役割を有する。
上記保護層は、例えば、ポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することが好ましく、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することがより好ましい。
【0054】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの平均重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、保護層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの平均重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0055】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。
上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0056】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0057】
上記ポリビニルアセタールYは、アセタール基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記保護層とガラスとの接着力を確保することができる。上記アセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0058】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、保護層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。なお、ポリビニルアセタールA、B、及び、Yの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0059】
上記保護層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールY100質量部に対する好ましい下限が20質量部、好ましい上限が45質量部である。上記可塑剤の含有量を20質量部以上とすることにより、耐貫通性を確保することができ、45質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトを防止して、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30質量部、更に好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は43質量部、更に好ましい上限は41質量部である。合わせガラスの遮音性がよりいっそう向上することから、上記保護層における可塑剤の含有量は、上記遮音層における可塑剤の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0060】
合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、ポリビニルアセタールYの水酸基量はポリビニルアセタールXの水酸基量より大きいことが好ましく、1モル%以上大きいことがより好ましく、5モル%以上大きいことが更に好ましく、8モル%以上大きいことが特に好ましい。ポリビニルアセタールX及びポリビニルアセタールYの水酸基量を調整することにより、上記遮音層及び上記保護層における可塑剤の含有量を制御することができ、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
また、合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、上記遮音層におけるポリビニルアセタールX100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記保護層におけるポリビニルアセタールY100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)より多いことが好ましく、5質量部以上多いことがより好ましく、15質量部以上多いことが更に好ましく、20質量部以上多いことが特に好ましい。含有量X及び含有量Yを調整することにより、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
【0061】
上記保護層の厚さは、上記保護層の役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。ただし、上記保護層上に凹凸を有する場合には、直接接する上記遮音層との界面への凹凸の転写を抑えられるように、可能な範囲で厚くすることが好ましい。具体的には、上記保護層の断面形状が矩形状であれば、上記保護層の厚さの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記保護層の厚さの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層の厚さを確保するためには、実質的には500μm程度が上限である。
【0062】
上記保護層は一端と、上記一端の反対側に他端とを有し、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きい形状を有していても良い。上記保護層は、厚み方向の断面形状が楔形状である部分を有することが好ましい。上記保護層の厚さは、上記保護層の役割を果たし得る範囲に調整すればよく、特に限定されない。ただし、上記保護層上に凹凸を有する場合には、直接接する上記遮音層との界面への凹凸の転写を抑えられるように、可能な範囲で厚くすることが好ましい。具体的には、上記保護層の最小厚みの好ましい下限は100μm、より好ましい下限は300μm、更に好ましい下限は400μm、特に好ましい下限は450μmである。上記保護層の最大厚みの上限については特に限定されないが、充分な遮音性を達成できる程度に遮音層の厚さを確保するためには、実質的には1000μm程度が上限であり、800μmが好ましい。
【0063】
本発明の合わせガラス用中間膜は、一端と、上記一端の反対側に他端とを有していてもよい。上記一端と上記他端とは、中間膜において対向し合う両側の端部である。本発明の合わせガラス用中間膜では、上記他端の厚みが、上記一端の厚みよりも大きいことが好ましい。このような一端と他端の厚みが異なる形状を有することで、本発明の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスをヘッドアップディスプレイとして好適に用いることができ、その際に、二重像の発生を効果的に抑制できる。本発明の合わせガラス用中間膜は、断面形状が楔形であってもよい。合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形であれば、合わせガラスの取り付け角度に応じて、楔形の楔角θを調整することにより、ヘッドアップディスプレイにおいて二重像の発生を防止した画像表示が可能となる。二重像をより一層抑制する観点から、上記楔角θの好ましい下限は0.1mrad、より好ましい下限は0.2mradであり、更に好ましい下限は0.3mrad、好ましい上限は1mrad、より好ましい上限は0.9mradである。なお、例えば押出機を用いて樹脂組成物を押出し成形する方法により断面形状が楔形の合わせガラス用中間膜を製造した場合、薄い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、薄い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最小厚みを有し、厚い側の一方の端部からわずかに内側の領域(具体的には、一端と他端との間の距離をXとしたときに、厚い側の一端から内側に向かって0X〜0.2Xの距離の領域)に最大厚みを有する形状となることがある。本明細書においては、このような形状も楔形に含まれる。
【0064】
本発明の合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合、遮音層と、保護層を含む多層構造を有するものとすることもできる。上記遮音層の厚みを一定範囲とする一方、上記保護層を積層することにより、合わせガラス用中間膜全体としての断面形状が一定の楔角である楔形となるように調整することができる。
【0065】
本発明の合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合の、態様の一例を説明する模式図を、図5〜7に示した。なお、図5〜7では、図示の便宜上、合わせガラス用中間膜及び該合わせガラス用中間膜を構成する各層の厚みや楔角θは、実際の厚み及び楔角とは異なるように示されている。
【0066】
図5には、合わせガラス用中間膜5の厚み方向の断面が示されている。合わせガラス用中間膜5は、遮音層51の一方の面に保護層52が積層された2層構造を有する。ここで遮音層51は矩形であるのに対して、保護層52の形状を楔形、三角形又は台形とすることにより、合わせガラス用中間膜5全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
図6には、合わせガラス用中間膜6の厚み方向の断面が示されている。合わせガラス用中間膜6は、遮音層61の両面に保護層62と保護層63とが積層された3層構造を有する。ここで遮音層61と保護層63とが厚みが一定の矩形であるのに対して、保護層62の形状を楔形、三角形又は台形とすることにより、合わせガラス用中間膜6全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
図7には、合わせガラス用中間膜7の厚み方向の断面が示されている。合わせガラス用中間膜7は、遮音層71の両面に保護層72と保護層73とが積層された3層構造を有する。ここで遮音層71は楔形であり、楔形の保護層72、73を積層することにより、合わせガラス用中間膜7全体として楔角θが0.1〜1mradである楔形となっている。
【0067】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂と必要に応じて配合される他の成分とを混練し、合わせガラス用中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
本発明において合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面に多数の凹部を形成する方法としては、例えば、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法、メルトフラクチャー法等が挙げられる。なかでも、エンボスロール法が好適である。
【0068】
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明によれば、最厚部の厚みが850μm以上の厚い合わせガラス用中間膜であっても、合わせガラス製造時にガラスの周縁部で合わせガラス用中間膜とガラスとが充分に接着されて、周縁部のシール不良現象が発生しない合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して形成されている合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
図2】表面に底部が連続した溝形状である凹部が等間隔、かつ、隣接する凹部が平行して形成されている合わせガラス用中間膜の一例を表す模式図である。
図3】測定用サンプルの採取方法を説明する模式図である。
図4】予備圧着後の積層体において平行光線透過率を評価する位置を説明する模式図である。
図5】合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合の態様の一例を説明する模式図である。
図6】合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合の態様の一例を説明する模式図である。
図7】合わせガラス用中間膜の断面形状が楔形である場合の態様の一例を説明する模式図である。
図8】膜の最厚部の厚みT(μm)を横軸に、最厚部の最大高さ粗さRy(Max)(μm)を縦軸として、実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜についての評価結果をプロットした散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
(1)樹脂組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部を添加した。ミキシングロールで充分に混練し、樹脂組成物を得た。
【0073】
(2)合わせガラス用中間膜の作製
得られた樹脂組成物を押出機を用いて単層で押し出し、断面形状が矩形状である合わせガラス用中間膜を作製した。
【0074】
(3)凹部の付与
第1の工程として、下記の手順により合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。まず、鉄ロール表面に、ブラスト材を用いてランダムな凹凸を施した後、該鉄ロールをバーチカル研削し、更に、より微細なブラスト材を用いて研削後の平坦部に微細な凹凸を施すことにより、粗大なメインエンボスと微細なサブエンボスをもつ同形状の1対のロールを得た。該1対のロールを凹凸形状転写装置として用い、得られた合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。この時の転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を80℃、上記ロールの温度を145℃、線速を10m/min、プレス線圧を0〜200kN/mとした。
第2の工程として、下記の手順により合わせガラス用中間膜の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)の凹凸を付与した。三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールと45〜75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の工程でランダムな凹凸形状を転写した合わせガラス用中間膜をこの凹凸形状転写装置に通し、合わせガラス用中間膜の第1の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)である凹部が平行して等間隔に形成された凹凸を付与した。このときの転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を常温80℃、ロール温度を140℃、線速を10m/min、プレス圧を0〜500kPaとした。
次いで、合わせガラス用中間膜の第2の表面にも同様の操作を施し、底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部を付与した。その後、合わせガラス用中間膜の厚みを測定したところ、870μmの厚みを示した。
【0075】
(実施例2〜27、比較例1〜2)
第1の面及び第2の面のRy及びSmが表1〜4記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の厚みが表1〜4記載の値となるように、第1の工程及び第2の工程で用いるブラスト材の種類や、合わせガラス用中間膜の温度、ロールの温度、線速、プレス線圧、プレス圧を調節したこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0076】
(実施例28)
(1)樹脂組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部を添加した。ミキシングロールで充分に混練し、樹脂組成物を得た。
【0077】
(2)合わせガラス用中間膜の作製及び凹部の付与の第1の工程
得られた樹脂組成物を押出機を用いて単層で押し出し、合わせガラス用中間膜を製膜すると同時に、その両面に凹凸形状を付与した。即ち、メルトフラクチャー現象を制御したエンボス付与法において、金型入口の樹脂組成物の温度を150〜270℃、リップ金型の温度を180〜250℃の間で調整し、ラインスピード10m/分の条件にて、合わせガラス用中間膜を成膜すると同時に、その両面に第1の形状を付与した。その後、合わせガラス用中間膜の厚みを測定したところ、1150μmの厚みを示した。
【0078】
(実施例29)
第1の面及び第2の面のRy及びSmが表3記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の厚みが表3記載の値となるように、メルトフラクチャー現象を制御したエンボス付与法の条件を調整した以外は、実施例28と同様にして合わせガラス用中間膜を製造した。
【0079】
(実施例30)
第1の面及び第2の面のRy及びSmが表3記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の厚みが表3記載の値となるように、第1の工程及び第2の工程で用いるブラスト材の種類や、合わせガラス用中間膜の温度、ロールの温度、線速、プレス線圧、プレス圧を調節したこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0080】
(実施例31)
凹部の付与の第1の工程までは、実施例28と同様の方法により合わせガラス用中間膜に凹部を付与した。その後、凹部の付与の第2の工程として、第1の形状が付与された合わせガラス用中間膜の表面に、下記の手順により底部が連続した溝形状の凹凸を付与した。三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールと45〜75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の形状が付与された合わせガラス用中間膜をこの凹凸形状転写装置に通し、合わせガラス用中間膜の第1の表面に底部が連続した溝形状である凹部が平行して等間隔に形成された凹凸を付与した。このときの転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を70℃、ロール温度を140℃、線速を10m/min、プレス線圧を1〜100kN/mに調整した。次いで、合わせガラス用中間膜の第2の表面にも同様の操作を施し、底部が連続した溝形状の凹部を付与した。その際、第1の表面に付与した底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部と、第2の表面に付与した底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部との交差角度が20°となるようにした。その後、合わせガラス用中間膜の厚みを測定したところ、1000μmの厚みを示した。
【0081】
(実施例32)
第1の面及び第2の面のRy及びSmが表4記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の厚みが表4記載の値となるように、第1の工程及び第2の工程で用いるブラスト材の種類や、合わせガラス用中間膜の温度、ロールの温度、線速、プレス線圧、プレス圧を調節したこと以外は、実施例1と同様にして、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0082】
(実施例33)
(1)樹脂組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部を添加した。ミキシングロールで充分に混練し、樹脂組成物を得た。
【0083】
(2)合わせガラス用中間膜の作製
得られた樹脂組成物を押出機を用いて単層で押し出し、断面形状が楔形状である合わせガラス用中間膜を作製した。なお、凹部の付与後に得られる合わせガラス用中間膜において、合わせガラス用中間膜の最厚部の膜厚が1240μm、最薄部が790μmとなるように押出条件を設定した。この際、金型の温度を100℃から280℃の範囲で、合わせガラス用中間膜全体の厚みが薄い方の端部が低温に、中間膜全体の厚みが厚い方の端部が高温側となるように温度勾配を設けて調整し、かつ、リップ金型としてリップの間隙を1.0〜4.0mmの範囲で調整した。
【0084】
(3)凹部の付与
第1の工程として、下記の手順により合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。まず、鉄ロール表面に、ブラスト材を用いてランダムな凹凸を施した後、該鉄ロールをバーチカル研削し、更に、より微細なブラスト材を用いて研削後の平坦部に微細な凹凸を施すことにより、粗大なメインエンボスと微細なサブエンボスをもつ同形状の1対のロールを得た。該1対のロールを凹凸形状転写装置として用い、得られた合わせガラス用中間膜の両面にランダムな凹凸形状を転写した。この時の転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を80℃、上記ロールの温度を145℃、線速を10m/min、プレス線圧を0〜200kN/mとした。
第2の工程として、下記の手順により合わせガラス用中間膜の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)の凹凸を付与した。三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールと45〜75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の工程でランダムな凹凸形状を転写した合わせガラス用中間膜をこの凹凸形状転写装置に通し、合わせガラス用中間膜の第1の表面に底部が連続した溝形状(刻線状)である凹部が平行して等間隔に形成された凹凸を付与した。このときの転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を常温80℃、ロール温度を140℃、線速を10m/min、プレス圧を0〜500kPaとした。
次いで、合わせガラス用中間膜の第2の表面にも同様の操作を施し、底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部を付与した。
【0085】
(実施例34〜50、比較例3〜4)
第1の面及び第2の面のRy及びSmが表5〜9記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の最厚部及び最薄部の厚みが表5〜9記載の値となるように、第1の工程及び第2の工程で用いるブラスト材の種類や、合わせガラス用中間膜の温度、ロールの温度、線速、プレス線圧、プレス圧を調節したこと以外は、実施例33と同様にして、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0086】
(実施例51)
(1)樹脂組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)40質量部を添加した。ミキシングロールで充分に混練し、樹脂組成物を得た。
【0087】
(2)合わせガラス用中間膜の作製及び凹部の付与の第1の工程
得られた樹脂組成物を押出機を用いて単層で押し出し、合わせガラス用中間膜を製膜すると同時に、その両面に凹凸形状を付与し、断面形状が楔形状である合わせガラス用中間膜を作製した。なお、凹部の付与後に得られる合わせガラス用中間膜において、合わせガラス用中間膜の最厚部の膜厚が1270μm、最薄部が820μmとなるように押出条件を設定した。この際、金型の温度を100℃から280℃の範囲で、合わせガラス用中間膜全体の厚みが薄い方の端部が低温に、中間膜全体の厚みが厚い方の端部が高温側となるように温度勾配を設けて調整し、リップ金型としてリップの間隙を1.0〜4.0mmの範囲で調整し、ラインスピードを10m/分に調整した。
その後、凹部の付与の第2の工程として、第1の形状が付与された合わせガラス用中間膜の表面に、下記の手順により底部が連続した溝形状の凹凸を付与した。三角形斜線型ミルを用いて表面にミル加工を施した金属ロールと45〜75のJIS硬度を有するゴムロールとからなる一対のロールを凹凸形状転写装置として用い、第1の形状が付与された合わせガラス用中間膜をこの凹凸形状転写装置に通し、合わせガラス用中間膜の第1の表面に底部が連続した溝形状である凹部が平行して等間隔に形成された凹凸を付与した。このときの転写条件として、合わせガラス用中間膜の温度を70℃、ロール温度を140℃、線速を10m/min、プレス線圧を1〜100kN/mに調整した。次いで、合わせガラス用中間膜の第2の表面にも同様の操作を施し、底部が連続した溝形状の凹部を付与した。その際、第1の表面に付与した底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部と、第2の表面に付与した底部が連続した溝形状(刻線状)の凹部との交差角度が20°となるようにした。
【0088】
(実施例52)
第1の面及び第2の面のRy及びRsmが表9記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の厚みが表9記載の値となるように、メルトフラクチャー現象を制御したエンボス付与法の条件を調整し、第2の工程を行わなかったこと以外は、実施例51と同様にして合わせガラス用中間膜を製造した。
【0089】
(実施例53)
(1)保護層用樹脂組成物の調製
平均重合度が1700のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量1モル%、ブチラール基量69モル%、水酸基量30モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)36質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、保護層用樹脂組成物を得た。
【0090】
(2)遮音層用樹脂組成物の調製
平均重合度が2300のポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドでアセタール化することにより得られたポリビニルブチラール(アセチル基量12モル%、ブチラール基量66モル%、水酸基量22モル%)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)78質量部を添加し、ミキシングロールで充分に混練し、遮音層用樹脂組成物を得た。
【0091】
(3)合わせガラス用中間膜の作製
得られた保護層用樹脂組成物及び遮音層用樹脂組成物を、得られる保護層、遮音層、保護層及び中間膜全体の断面形状、最大厚み及び最小厚みが表10記載の値となるように共押出機を用いて共押出することにより、保護層、遮音層、保護層の順に積層された3層構造の合わせガラス用中間膜を得た。
なお、表10において保護層の最大厚み及び最小厚みは、2つの保護層の厚みの合計の最大厚み及び最小厚みを記載した。
【0092】
(4)凹部の付与
第1の面及び第2の面のRy及びSmが表10記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の最厚部及び最薄部の厚みが表10記載の値となるように、第1の工程及び第2の工程で用いるブラスト材の種類や、合わせガラス用中間膜の温度、ロールの温度、線速、プレス線圧、プレス圧を調節したこと以外は、実施例33と同様にして、合わせガラス用中間膜を製造した。
なお、遮音層の厚みは、以下の手順に従って測定し、保護層の厚みは中間膜全体の厚みから遮音層の厚みを差し引くことで、保護層の合計の厚みを求めた。即ち、凹部を付与した後の合わせガラス用中間膜を、カミソリ刃(フェザー安全剃刀社製、フェザーカミソリS片刃、品番FAS−10)を用いて膜厚み方向に垂直に切断し、その断面をマイクロスコープ(オリンパス社製、DSX−100)を用いて観察した。マイクロスコープ付属ソフト内の計測ソフトを用いて、保護層と遮音層の界面間の距離を計測し、これを遮音層厚みとした。測定時の環境は23℃、30RH%であった。
【0093】
(実施例54〜57、比較例5)
保護層及び遮音層に用いるポリビニルブチラールの組成及び含有量、可塑剤の組成及び含有量、第1の面及び第2の面のRy及びSmが表10記載の値となるように、また、凹部の付与後の合わせガラス用中間膜の厚みが表10記載の値となるように、第1の工程及び第2の工程で用いるブラスト材の種類や、合わせガラス用中間膜の温度、ロールの温度、線速、プレス線圧、プレス圧を調節したこと以外は、実施例52と同様にして、合わせガラス用中間膜を製造した。
【0094】
(評価)
実験例で得られた合わせガラス用中間膜について、以下の方法により評価を行った。
結果を表1〜10に示した。
【0095】
(1)測定サンプルの準備
実施例33〜52及び比較例3、4の厚み方向の断面形状が楔形状である合わせガラス用中間膜の測定サンプルは以下の手順によって作成した。測定用サンプルとして、縦15cm、横15cmの大きさに合わせガラス用中間膜を切り出した。最厚部での測定には、最厚部の厚み測定点を通る、押し出し方向に対して平行な線が切り出した合わせガラス用中間膜の中央を通るように、縦15cm、横15cmの大きさに合わせガラス用中間膜を切り出した。また、最薄部での測定には、最薄部の厚み測定点を通る、押し出し方向に対して平行な線が中央を通るように、縦15cm、横15cmの大きさに合わせガラス用中間膜を切り出した。
ただし、最厚部及び最薄部が、膜端部から7.5cm以内の位置にある場合は、膜端部に接するように合わせガラス用中間膜を切り出した。
なお、膜の厚みTは、JIS K−6732(1996)に準拠して、定圧厚み測定器(尾崎製作所製、FFD−2)を用い、サンプルとなる合わせガラス用中間膜の押し出し方向とは垂直に、一方の端部から他方の端部まで5cm毎に計測し、最も厚い点を膜の最厚部の厚みTとした。
実施例1〜32及び比較例1、2の厚み方向の断面形状が矩形状である合わせガラス用中間膜の測定サンプルは、一方の端部から他方の端部まで5cm毎に膜の厚みを測定し、その平均値を膜厚としたこと以外は、実施例33〜52及び比較例3、4と同様にして測定した。
【0096】
(2)最厚部の最大高さ粗さRyの測定
最厚部の最大高さ粗さRyを、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した。即ち、測定方向は底部が連続した溝形状に対して垂直方向、メルトフラクチャーを利用して成型されたエンボスの場合は、押し出し方向に対して平行とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、予備長さ2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行った。
最厚部の最大高さ粗さRyは、測定用サンプルの中で、最厚部の測定点を通り、押し出し方法に対して平行な線上を第一の表面、第二の表面それぞれを測定し、評価にために切り出した全てのサンプルについて同様の操作を行って得られた各RyよりRy(Ave)とRy(Max)を算出した。
【0097】
(3)凹部の間隔Smの測定
凹部の間隔Smを、JIS B−0601(1994)に準拠して測定した。即ち、測定方向は底部が連続した溝形状に対して垂直方向、メルトフラクチャーを利用して成型されたエンボスの場合は、押し出し方向に対して平行とし、カットオフ値=2.5mm、基準長さ=2.5mm、予備長さ2.5mm、評価長さ=12.5mm、触針の先端半径=2μm、先端角度=60°、測定速度=0.5mm/sの条件で測定を行った。
凹部の間隔Smは、測定用サンプルとして縦15cm、横15cmの大きさに切り出した合わせガラス用中間膜の中で、最厚部の測定点を通り、押し出し方法に対して平行な線上を第一の表面、第二の表面それぞれを測定し、評価にために切り出した全てのサンプルについて同様の操作を行って得られた各Smの平均値を算出した。
【0098】
(4)合わせガラス製造時のシール性の評価
測定サンプルの合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板(縦15cm×横15cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、こうして得られた合わせガラス構成体(積層体)をあらかじめ50℃に加熱したオーブン中で10分間予備加熱した。50℃に予備加熱したゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、合わせガラス構成体(積層体)の温度(予備圧着温度)を50℃に維持したまま、−600mmHgで5分間減圧した後、大気圧に戻して予備圧着積層体を得た。
予備圧着された合わせガラス構成体(積層体)をオートクレーブ中に入れ、13atm(1300kpa)に昇圧後、温度140℃に昇温し20分間保持した後、50℃まで温度を下げた後、大気圧に戻すことにより本圧着を終了して、合わせガラスを作製した。
得られた合わせガラスを本圧着後23℃で24時間保管した後に、140℃のオーブン中で2時間加熱した。次いで、オーブンから取り出して23℃24時間静置した後、合わせガラスの外観を目視で観察した。テスト枚数は5枚とした。
合わせガラスの端部から1cmよりも内側に気泡が生じた枚数を調べて、以下の基準により脱気性を評価した。
○:気泡が生じた枚数が3枚以下
×:気泡が生じた枚数が3枚を超える
合わせガラス構成体の予備加熱温度、ゴムバック温度を50℃から5℃ずつ増加させて同様の評価を行い、評価が〇となる最低温度をシール温度とした。
【0099】
得られるシール温度をもとに、合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを製造したときのシール性を以下のように評価した。
○:シール温度が75℃以下
×:シール温度が75℃を超える
【0100】
(5)合わせガラス製造時の脱気性の評価
測定サンプルの合わせガラス用中間膜を二枚のクリアガラス板(縦15cm×横15cm×厚さ2.5mm)の間に挟み、はみ出た部分を切り取り、積層体を得た。得られた積層体をガラスの表面温度が30℃になるまでオーブン内で予備加熱した後、ゴムバッグ内に移し、ゴムバッグを吸引減圧機に接続し、加熱すると同時に−600mmHgの減圧下で、14分間後に積層体のガラスの表面温度(予備圧着温度)が90℃となるように加熱した後、積層体のガラスの表面温度が40℃になるまで冷却した後に、大気圧に戻して予備圧着を終了した。
【0101】
次いで、予備圧着後の積層体について、以下の方法により平行光線透過率を評価した。
即ち、JIS K 7105に準拠して、予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tp(%)を、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定した。
測定位置は積層体の2つの対角線が交差する中央部、積層体の各頂点から対角線方向に5.64cm離れた4点を合わせた5点として、その平均値をTpとした。なお、測定は、測定点を中心に5cm×5cm以上で積層体から切り出したサンプルについて行った。
得られた平行光線透過率Tpをもとに、合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを製造したときの脱気性を以下のように評価した。
○:予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tpが45%以上
×:予備圧着後の積層体の平行光線透過率Tpが45%未満
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
【表8】
【0110】
【表9】
【0111】
【表10】
【0112】
膜の最厚部の厚みT(μm)を横軸に、最厚部の最大高さ粗さRy(Max)(μm)を縦軸として、実施例及び比較例で得られた合わせガラス用中間膜についての評価結果をプロットした散布図を図8に示した。
図8の散布図より、上記式(1)に対応する「Ry = 0.0195×T + 33.2」の線形(式(1))と、上記式(2)に対応する「Ry = 0.0159×T + 32.2」の線形(式(2))の2本の線形を描画することができることがわかる。そして、Ryが線形(式(1))以下であるときに、高い脱気性を発揮して透明度が高い合わせガラスが得られること、Ryが線形(式(2))以下であるときに、より高い脱気性を発揮してより透明度が高い合わせガラスが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によれば、最厚部の厚みが850μm以上の厚い合わせガラス用中間膜であっても、合わせガラス製造時にガラスの周縁部で合わせガラス用中間膜とガラスとが充分に接着されて、周縁部のシール不良現象が発生せず、合わせガラスの生産効率を向上させることができる合わせガラス用中間膜、及び、該合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスを提供できる。
【符号の説明】
【0114】
5 合わせガラス用中間膜
51 遮音層
52 保護層
6 合わせガラス用中間膜
61 遮音層
62 保護層
63 保護層
7 合わせガラス用中間膜
71 遮音層
72 保護層
73 保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8