特許第6835742号(P6835742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835742ナノサイズ粒子を含有するゾルを用いたセラミック物品を作製するための付加製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835742
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ナノサイズ粒子を含有するゾルを用いたセラミック物品を作製するための付加製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/624 20060101AFI20210215BHJP
   C04B 35/486 20060101ALI20210215BHJP
   A61K 6/887 20200101ALI20210215BHJP
   A61C 5/30 20170101ALI20210215BHJP
   A61C 5/70 20170101ALI20210215BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20210215BHJP
   A61C 7/14 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C04B35/624
   C04B35/486
   A61K6/887
   A61C5/30
   A61C5/70
   A61C13/083
   A61C7/14
【請求項の数】10
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2017-561624(P2017-561624)
(86)(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公表番号】特表2018-524251(P2018-524251A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016032986
(87)【国際公開番号】WO2016191162
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】15169580.6
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマー ベー.マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マルテ コルテン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン エム.アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ブラント ユー.コルブ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ハウプトマン
(72)【発明者】
【氏名】ガルス シェヒナー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヤーンス
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン エム.ハンパール
(72)【発明者】
【氏名】メリッサ エー.ラッキー
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−502309(JP,A)
【文献】 特開2012−017327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/624
A61C 5/30
A61C 5/70
A61C 7/14
A61C 13/083
A61K 6/887
C04B 35/486
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック物品の製造方法であって、
プリンティングゾルを提供する工程であって、前記プリンティングゾルが、溶媒、ナノサイズ粒子、一又は複数の放射線硬化性モノマー及び光開始剤を含み、前記プリンティングゾルが、23℃において500mPa・秒未満の粘度を有する工程と、
前記プリンティングゾルを付加製造加工における構成材料として加工処理し、ゲル状態である三次元物品を得る工程であって、前記三次元物品が体積Aを有する工程と、
ゲル状態である前記三次元物品を、乾燥状態である三次元物品、すなわちエアロゲル又はキセロゲルに移行させる工程と、
熱処理工程を適用し、焼結されたセラミック物品を得る工程であって、前記セラミック物品が体積Fを有する工程と、を含み、
ゲル状態の前記三次元物品の体積Aが、前記焼結されたセラミック物品の体積Fの500%超である、方法。
【請求項2】
ゲル状態である前記三次元物品の、乾燥状態である三次元物品への前記移行が、超臨界乾燥工程の適用により実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加製造加工が、ステレオリソグラフィプリンティングから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記付加製造加工が、
前記構成材料の層を表面上に提供する工程と、
作製される前記三次元物品の一部となる構成材料の前記層の複数部分を放射線硬化させる工程と、
前記前の層の前記放射線硬化された表面と接触している、前記構成材料の更なる層を提供する工程と、
前記三次元物品が得られるまで前記前の工程を繰り返す工程と、を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記付加製造加工工程中の前記構成材料を70℃超の温度まで加熱する工程と、
前記焼結工程中に圧力を加える工程と、
のうちのいずれか又は全てを含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プリンティングゾルが、以下の特色:
波長範囲420〜600nmにおいて、路長10mmについて半透明であることと、
路長10mmについての測定で、420nmにおいて少なくとも5%の透過率を示すことと、
pH値が1〜6であることと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プリンティングゾルが、以下の特色:
前記ナノサイズ粒子が、前記プリンティングゾルの重量に対して20〜70重量%の量で存在することと、
前記ナノサイズのジルコニア粒子の平均一次粒径が、最大50nmの範囲にあることと、
のうちの少なくとも1つ以上又は全てを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノサイズ粒子が、以下の特色:
結晶性であることと、
本質的に球状、立方状又はこれらの混合であることと、
非会合であることと、
ZrOを70〜100モル%の量で含むことと、
HfOを0〜4.5モル%の量で含むことと、
、CeO、MgO、CaO、La又はこれらの組み合わせから選択される安定剤を、0〜30モル%の量で含むことと、
Alを0〜1モル%の量で含むことと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プリンティングゾルが、一又は複数の有機染料をさらに含み、
前記有機染料が、以下の特色:
前記プリンティングゾルの重量に対して0.001〜0.5重量%の量で存在することと、
200〜500nmの範囲で放射線吸収を示すことと、
100〜1,000g/モルの範囲の分子量を有することと、
前記溶媒に可溶であることと、
800℃未満の温度で残渣を残さず燃焼可能であることと、
原子質量が40超の重金属を含有しないことと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一又は複数の前記放射線硬化性モノマーが、以下の特色:
式A−B(式中、Aは、酸性基、シラン基、アミン、アミド又はアルコール基を含み、かつBは、ビニル基を含む)によって表されることと、
前記プリンティングゾルの重量に対して2〜30重量%の量で前記プリンティングゾル中に存在することと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズ粒子を含有するゾルを構成材料として用いたセラミック物品を作製するための付加製造方法に関する。本発明はまた、このような方法によって得ることが可能なセラミック物品にも関する。本発明は、特に、歯科及び歯科矯正領域において、歯科修復物及び歯列矯正ブラケットの作製に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来のセラミックの加工処理において、例えば、セラミックスラリーをキャスティングするスリップは、通常、高いグリーン密度の中間体を得るため、可能な限り高い粒子充填を有さなくてはならなかった。高いグリーン密度が、高密度の焼結セラミックの作製を可能とするために所望され、かつ必要とされる。
【0003】
粉末ベースの付加製造技術では、低充填密度の粉末層が高度に多孔質の三次元物体をもたらし、典型的には、加熱処理中に大きな圧力を加えずに高密度セラミックを得ることができず、高密度の複雑な三次元形状の実現を困難としている。典型的には、この方法は、セラミック材料の理論密度の95%未満の密度をもたらす。
【0004】
セラミック充填フォトポリマーに基づくスラリーのステレオリソグラフィによる加工処理は、比較的高密度の三次元構造を有するセラミック物品の作製においてグリーン体としての役割を果たすその能力のため、有望視されている。
【0005】
その一方で、セラミック物品の作製用のポリマーの加工処理に主として用いられている、(SLA技術のような)付加製造技術も用いようとする取り組みがある。
【0006】
しかしながら、スラリーの高い粒子充填は、付加製造技術におけるスラリーの加工処理に必要なレオロジー特性にとって不都合な場合がある。
【0007】
一方、スラリーの粒子充填を低下させると、ひび割れを起こさずに最大密度まで焼結することができない、低いグリーン密度を有する物品がもたらされることになってしまう。
【0008】
付加製造方法によって得られる中間体は、多くの場合、自己支持型でないことも認められた。
【0009】
米国特許第7,927,538(B2)号(Mosznerら)は、歯科用セラミックのステレオリソグラフィ調製のための光硬化スリップを記載している。スリップは、多反応性バインダー、光開始剤、表面改質されているセラミック粒子及び連鎖移動剤を含む。スリップの粘度は、200mPa・秒〜2,000Pa・秒(23℃)の範囲である。
【0010】
米国特許第6,283,997(B1)号(Gargら)は、高体積率のセラミック組成物を有する光硬化性ポリマーによる多孔質ネットワークを有する、セラミック複合体骨インプラントの製造方法に関する。光硬化性セラミック組成物の作製には、粒径が0.05〜10μm(マイクロメートル)の範囲であるアルミナ又はヒドロキシアパタイトが推奨される。
【0011】
米国特許第8,003,040(B2)号(El−Siblani)は、パターンのある相乗的促進性の電磁放射線で層を凝固させることによって三次元物体を作製するための製造方法に関する。
【0012】
米国特許出願公開第2007/0072762号(Neilら)は、ステレオリソグラフィを用いたランプに適用するためのセラミック製の注出容器の製造方法を記載している。この方法に用いられるセラミック樹脂混合物は、光硬化性アクリレート樹脂と、酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、イットリウム・アルミニウム・ガーネット及び窒化アルミニウム粉末のような、d50=0.6μmの範囲の平均粒度を有するセラミック粉末と、を含有する。混合物の粘度は、200〜25,000mPa・秒の範囲である。
【0013】
米国特許第6,955,776号(Feenstra)は、粉末ベースの3Dプリンティング技術を用いることによる歯科用エレメントの製造方法に関する。粉末は、乾燥形態で、又は、分散形態(スラリー)で使用可能である。粉末は、セラミック材料又は金属とすることができる。セラミック材料は、好ましくは、SiO、Al、KO、NaO、CaO、BaO、CrO、TiO、BaO、CeO、La、MgO、ZnO及びLiOから選択される。この例で用いられた粉末は、中央粒径d50が0.5〜0.7μmである。
【0014】
米国特許出願公開第2003/0222366(A1)(Stangelら)は、歯科修復物部位のデジタル化光学印象を口腔内カメラを用いて撮像する、歯科修復物の作製を記載している。撮像された光学印象は、ステレオリソグラフィを用いたコンピュータ支援作製に好適なデータファイルに変換される。セラミック材料は、200センチポアズ(mPa・秒)〜350万mPa・秒の範囲の粘度を有する。セラミック材料の平均粒径は、0.05〜5μmである。
【0015】
米国特許第8,133,831号(Laubersheimerら)は、ホットメルトインクジェットプリンティング方法による歯科用セラミックの調製のためのスリップを記載している。スリップは、セラミック粒子、ラジカル重合性モノマー及びワックスを含有する。Al2O3又はZrO2ベースのセラミック粒子は、50〜500nm(ナノメートル)の粒径を有する。
【0016】
同様に、米国特許出願公開第2012/308837(A1)号(Schlechtriemenら)は、異なった種類のセラミックスリップを用いた3Dインクジェットプリンティングによる、造形セラミック体の生成製造(generative preparation)の方法を記載している。スリップの粘度は、室温で200mPa・秒超であると言われている。
【0017】
米国特許出願第2014/0183799(A1)号(Fischerら)は、ラジカル重合性バインダー、重合開始剤、フィラー、及びラジカル重合性基を含む特定の酸性モノマーに基づくスリップを用いた、高強度セラミックのステレオリソグラフィによる調製のための光硬化セラミックスリップについて論じている。Y−TZP二酸化ジルコニウムの場合、粒径50〜3500nmが好ましいと言われている。スリップのレオロジー特性は、0.02〜20,000Pa・秒の範囲(23℃)であると言われている。
【0018】
米国特許第8,329,296(B2)号(Apelら)は、発色団構成成分でコーティングされた、一次粒径が10〜1,000nmの範囲である酸化物セラミック材料の一次粒子に関する。粒子は、多反応性バインダー、有機溶媒及び添加剤を含む、懸濁液として提供され得る。懸濁液は、粘度が200〜2,000Pa・秒(23℃)であると言われている。
【0019】
国際公開第01/13815(A1)号(Feenstra)は、三次元プリンティング技術による歯科用エレメントの製造方法を記載している。硬化性材料としては、好ましくは、表面に重合性有機基を有するナノメートル無機固体粒子からなる、ナノメートル材料が用いられる。プリンティング方法後、典型的には、歯科用エレメントに、60〜150℃の熱後処理を施し、硬化を完了する。これらの代わり、又はこれらの補足として、歯科用構成要素が少なくとも250℃の温度まで加熱される、熱高密度化が実施される。しかしながら、上記の参考文献に記載されている組成物には欠点がある。
【0020】
多くの場合、直径50nm超のセラミック粒子を有するスラリー又はスリップの使用が推奨される。スラリーの特性だけでなく、密に充填した場合であっても、より大きな粒径が、高度に精密なセラミック物品の作製には典型的には好適でなく、依然として可能な理論密度の割合を制限し、機械的並びに視覚的な性能等の最終的な材料特性を制限している。したがって、改良された付加製造方法に対する必要性が存在する。
【0021】
また、高強度で半透明なプリントされた物品、好ましくは高強度で半透明なプリントされたジルコニア物品に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0022】
本発明の目的は、既存の付加製造方法を改良することである。特に、本発明の目的は、理論密度に近い密度、高強度、高精度及び/又は良好な半透明性を有するセラミック物品の作製を可能とする方法を提供することである。
【0023】
特に、良好な表面品質を有するセラミック物品の作製を可能とする付加製造方法が望ましい。
【0024】
この目的は、本明細書の以下に記載の方法により達成可能である。
【0025】
このような方法は、
プリンティングゾルを提供する工程であって、プリンティングゾルが溶媒、ナノサイズ粒子、放射線硬化性構成成分(複数可)及び光開始剤を含み、プリンティングゾルが500mPa・秒未満又は200mPa・秒(23℃)未満の粘度を有する工程と、
プリンティングゾルを付加製造方法における構成材料として加工処理する工程であって、ゲル状態である三次元物品を得る工程であって、三次元物品が体積Aを有する工程と、
ゲル状態である前記三次元物品を、乾燥状態である三次元物品、好ましくはエアロゲル又はキセロゲルに移行させる工程と、
熱処理工程を適用し、焼結された三次元セラミック物品を得る工程であって、前記セラミック物品が体積Fを有する工程と、を含み、
ゲル状態の三次元物品の体積Aは、その焼結状態のセラミック物品の体積Fの200%超又は300%超又は400%超又は500%超である。
【0026】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得ることができる、又は、得られたセラミック物品も対象とし、セラミック物品は、以下の特色のうちの少なくとも1つ、より多く又は全てを特徴とする:
密度:理論密度に対して98.5%超、
半透明度:厚さ1mmを有する磨かれた試料についての測定で30%超、
2軸曲げ強度:ISO 6872に従い、少なくとも450MPa、
x、y又はz方向のいずれかの寸法:少なくとも0.25mm。
【0027】
定義
「セラミック」又は「セラミック物品」は、熱を加えることによって作製される非金属材料を意味する。セラミックは、通常、硬く、かつ脆性であり、ガラス又はガラスセラミックとは対照的に、本質的に純粋な結晶構造を示す。セラミックは通常、無機物に分類される。
【0028】
「結晶性」とは、三次元の周期的なパターンで配置された原子からなる(すなわち、X線回折等の技術によって決定され得る長周期結晶構造を有する)固体を意味する。
【0029】
「微結晶」は、明確な結晶構造を有する固体の結晶性ドメインを意味する。微結晶は、1種の結晶相のみを有することができる。
【0030】
「付加製造」は、三次元物品を作製するのに用いられる方法を意味する。付加製造技術の例は、コンピュータ制御下で材料の連続層が形成される、ステレオリソグラフィ(SLA)である。物品はほとんどあらゆる形状又は形態とすることができ、かつ三次元モデル又は他の電子データソースから作製される。
【0031】
用語「歯科用セラミック物品又は歯科矯正セラミック物品」は、歯科領域又は歯科矯正領域において、特に歯科修復物、歯科矯正装置、歯模型及びこれらの部品の作製に用いられる任意のセラミック物品を意味する。
【0032】
歯科用物品の例としては、クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、前装、コーピング、クラウンブリッジフレームワーク、インプラント、橋脚歯、歯科用ミリングブロック、モノリシックな歯科修復物及びこれらの部品が挙げられる。
【0033】
歯科矯正物品の例としては、ブラケット、頬面管、クリート及びボタン、並びにこれらの部品が挙げられる。
【0034】
歯科用物品又は歯科矯正物品は、患者の健康に有害である構成成分を含有してはならず、したがって、歯科用物品又は歯科矯正物品から移動可能な有害かつ毒性の構成成分を含まない。歯の表面は、歯科用物品又は歯科矯正物品ではないものとみなされる。
【0035】
「ジルコニア物品」は、x、y、z寸法のうちの少なくとも1つが少なくとも1mm、少なくとも0.5mm、又は少なくとも0.25mmである三次元物品を意味するものとし、この物品は、少なくとも約80又は少なくとも約85又は少なくとも約90又は少なくとも約95重量%のジルコニアからなる。
【0036】
「モノリシックな歯科修復物」は、その表面に前装又はベニアが接着されていない歯科用セラミック物品を意味するものとする。すなわち、モノリシックな歯科修復物は、本質的に、1つの材料組成のみからなる。しかしながら、所望により、薄いグレージング層が適用される場合がある。
【0037】
「ガラス」は、熱力学的に過冷却されかつ凍結された溶融物である無機の非金属非晶質材料を意味する。ガラスは、硬く、脆性の、透明な固体を指す。典型的な例としては、ソーダ石灰ガラス及びホウケイ酸ガラスが挙げられる。ガラスは、結晶化することなく剛性状態まで冷却された融合物の無機生成物である。ほとんどのガラスは、それらの主構成成分としてのシリカ及び一定量のガラス形成剤を含有する。本明細書に記載の材料又は物品は、ガラスを含有しない。
【0038】
「ガラス−セラミック」は、この材料が、組み合わせ又は混合物でガラス材料とセラミック材料とを含むように、1つ以上の結晶相がガラス相によって囲まれている無機の非金属材料を意味する。したがって、ガラスセラミックは、ガラスとより伝統的な結晶性セラミックの両方の多くの特性を併せ持つ材料である。ガラスセラミックはガラスとして形成された後、熱処理によって部分的に結晶化するように作製される。ガラスセラミックは、酸化リチウム、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムの混合物を指す場合がある。
【0039】
本明細書に記載の材料又は物品は、ガラスセラミックを含有しない。
【0040】
「ゾル」は、1nm〜100nm又は1nm〜50nmの範囲のサイズを有する離散粒子を含有する連続的な液相、いわゆる「コロイド溶液」を指す。本明細書に記載のゾルは半透明であり、いわゆる「チンダル効果」又は「チンダル散乱」を示す。粒子のサイズは、可視光(400〜750nm)の波長よりも小さい。
【0041】
透明な材料は、スネルの法則(屈折の古典的法則)に従い、光を通過させる。したがって、透明材料のプレートレットを通し、像をその細部まで見ることができる。
【0042】
半透明材料は完全には透明でないが、光を部分的に透過させ、すなわち、透過された光につき顕著な量の散乱を示す。半透明度の逆の特性が不透明度(O)である。O=1/T=I/I0(T=透過率、I=透過された光の強度、I=透過前の光の強度)。したがって、直径15mmで厚さが1mmのプレートレットについて約0.9未満の不透明度値は、半透明であるとみなされる(例えば、Color i7装置(X−Rite corporation USA)の測定モード:レミッションコントラスト比(remission contrast ratio)による測定の場合)。不透明度は、各種の手段:透過率、レミッション(remission)、及びコントラスト比法を用いたレミッションにおいて測定することができる。
【0043】
「機械加工」は、機械による材料のミリング加工、研削、切断、カービング、又は成形を意味する。ミリング加工は、通常、研削よりも速く、対費用効果が高い。「機械加工可能な物品」は、三次元形状を有し、かつ機械加工されるのに十分な強度を有する物品である。
【0044】
「粉末」は、振とう又は傾斜された際に自由に流動し得る多数の微粒子からなる乾燥したバルク材料を意味する。
【0045】
「粒子」は、幾何学的に特定可能な形状を有する固体である物質を意味する。形状は規則的又は不規則的であり得る。粒子は、典型的には、例えば粒径及び粒径分布に関して分析することができる。粒子は、1種以上の微結晶を含み得る。したがって、粒子は、1種以上の結晶相を含み得る。
【0046】
用語「会合した(associated)」は、凝集した(aggregated)及び/又は粒塊した(agglomerated)2個以上の一次粒子の集合を指す。同様に、用語「非会合の(non-associated)」は、凝集(aggregation)及び/若しくは粒塊(agglomeration)していない、又は、実質的にしていない2個以上の一次粒子を指す。
【0047】
用語「凝集」は、2個以上の一次粒子の強い会合を指す。例えば、一次粒子は、互いに化学的に結合され得る。一般に、凝集体をより小さい粒子(例えば一次粒子)に分割することは困難である。
【0048】
用語「粒塊」は、2個以上の一次粒子の弱い会合を指す。例えば、粒子は、電荷又は極性により共に保持され得る。粒塊をより小さい粒子(例えば、一次粒子)に分割することは、凝集体をより小さい粒子に分割するほど困難ではない。
【0049】
用語「一次粒径」は、一次粒子であるとみなされる、非会合の単結晶ジルコニア粒子のサイズを指す。X線回折(XRD)は、一次粒径の測定に典型的に用いられる。
【0050】
「可溶な」とは、構成成分(例えば固体)が溶媒中に完全に溶解できるという意味である。すなわち、23℃で水中に分散された際に、物質は、個々の分子(グルコースのように)又はイオン(塩化ナトリウムのように)又は非沈降粒子(ゾルのように)を形成することができる。しかしながら、溶解方法にしばらく時間がかかる場合があり、例えば、組成物を数時間(例えば10又は20時間)にわたって撹拌することが必要となる場合がある。
【0051】
「密度」は、物体の体積に対する質量の比を意味する。密度の単位は、典型的には、g/cmである。物体の密度は、例えば、その体積を求め(例えば、計算により又はアルキメデスの原理若しくは方法を適用することにより)、かつその質量を測定することによって、算出することができる。
【0052】
試料の体積は、試料の全体の外形寸法に基づいて求めることができる。試料の密度は、測定された試料体積及び試料質量から算出することができる。材料試料の総体積は、試料の質量及び用いた材料の密度から算出することができる。試料中の気泡の総体積は、試料体積の残部であると想定される(100%から材料の総体積を減算したもの)。
【0053】
「多孔質材料」とは、セラミックの技術分野では、空隙、細孔、又は気泡によって形成される部分容積を含む材料を指す。したがって、材料の「連続気泡」構造は「開放多孔質」構造と呼ばれることがあり、「独立気泡」材料の構造は「閉鎖多孔質」構造と呼ばれることがある。本技術分野では、用語「気泡」の代わりに「細孔」が用いられるのが見受けられる場合もある。材料構造分類の「連続気泡」及び「独立気泡」は、DIN 66133に従って、異なる材料試料について(例えば、Quantachrome Inc.(USA)の水銀「Poremaster 60−GT」を用いて)測定された異なる多孔度について判定することができる。連続気泡又は開放多孔質構造を有する材料には、例えば気体を通過させることができる。
【0054】
「平均連結細孔径」は、材料の連続気泡細孔の平均サイズを意味する。平均連結細孔径は、実施例の項に記載のとおり算出することができる。
【0055】
用語「か焼(calcining)」又は「脱バインダー(debindering)」は、(例えば、物理的に結合している水を加熱により除去する乾燥に対し、)固体材料を加熱して、揮発性化学結合成分(例えば、有機成分)の少なくとも90重量%を除去する工程を指す。か焼は、予備焼結工程の実施に必要な温度よりも低い温度で実施される。
【0056】
用語「焼結(sintering)」又は「焼成(firing)」は互換的に使用される。予備焼結されたセラミック物品は、焼結工程中、すなわち、適切な温度が適用される場合に、収縮する。適用される焼結温度は、選択されたセラミック材料に応じて異なる。ZrO系セラミックの場合、典型的な焼結温度範囲は、約1100℃〜約1550℃である。焼結は、典型的には、多孔質材料を、より高い密度を有する、より多孔質ではない材料(又はより少ない気泡を有する材料)に高密度化することを含み、場合によっては、材料相の組成の変化(例えば、非晶質相から結晶相への部分的変換)を含むこともある。
【0057】
「ダイアフィルトレーション」は、限外濾過膜を用い、有機分子を含有する溶液から、塩又は溶媒を完全に除去する、置き換える、又は、これらの濃度を低減する手法である。この方法では、透過性(多孔質)のメンブランフィルターを選択的に利用して、溶液及び懸濁液の構成成分をそれらの分子のサイズに基づいて分離する。
【0058】
「グリーン体ゲル」は、有機バインダー及び有機溶媒等の、ゾルに含有された重合性構成成分の硬化反応の結果得られた、三次元のゲルを意味する。
【0059】
「エアロゲル」は、三次元の低密度(例えば、理論密度の20%未満の)固体を意味する。エアロゲルは、ゲルの液体構成成分が気体で置き換えられている、ゲルに由来する多孔質材料である。この溶媒除去は、多くの場合、超臨界条件下で行われる。この方法の間、ネットワークは実質的に縮小せず、高度に多孔質で低密度の材料を得ることができる。
【0060】
「キセロゲル」は、グリーン体ゲルから得られる、ゲルの液体成分が、周囲条件下又は高温において、蒸発によって除去された三次元の固体を指す。
【0061】
「グリーン体」は、未焼結のセラミック品で、典型的には有機バインダーを有するセラミック品を意味する。
【0062】
「ホワイト体」は、予備焼結されたセラミック品を意味する。
【0063】
「幾何学的に定義された物品」は、その形状が幾何学的な用語、例えば、円形、正方形、長方形のような二次元の用語、及び層、立方体、立方体様、球体のような三次元の用語で描写可能な物品を意味する。
【0064】
「等方性線状焼結挙動」は、焼結方法中の多孔質体の焼結が、方向x、y及びzに対して本質的に一様に生じることを意味する。「本質的に一様」とは、方向x、y及びzに対する焼結挙動における差が、+/−5%又は+/−2%又は+/−1%以下の範囲であるという意味である。
【0065】
材料又は組成物は、その材料又は組成物が本質的な特色として特定の構成成分を含有しない場合、本発明の意味内において上記の特定の構成成分を「本質的に又は実質的に含まない」ことである。したがって、上記の構成成分は、それ自体、若しくは他の構成成分との組み合わせで、又は他の構成成分の成分としてのいずれでも、組成物又は材料に意図的に加えられることはない。特定の構成成分を本質的に含まない組成物又は材料は、通常、その構成成分を、組成物又は材料全体に対して、約1重量%未満、又は約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満(又は溶媒1L当たり約0.05モル未満、又は溶媒1L当たり約0.005モル未満、又は溶媒1L当たり約0.0005モル未満)の量で含有する。理想的には、組成物又は材料は、上記の構成成分を全く含有しない。しかしながら、例えば、不純物が原因となり、上記の構成成分が少量存在してしまうことを回避できないこともある。
【0066】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、互換的に使用される。用語「含む(comprises)」又は「含有する(contains)」及びこれらの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。また、本明細書において、数値の範囲を端点によって記述する場合、その範囲内に包含される全ての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0067】
用語に「(複数可)」又は「一又は複数の」を付加することは、その用語が単数形及び複数形を含むという意味である。例えば、用語「添加剤(複数可)」又は「一又は複数の添加剤」は、1つの添加剤及びそれより多い添加剤(例えば、2、3、4等)という意味である。
【0068】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される、下記のような、成分の量、物性の測定値等を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものと理解することとする。
【0069】
用語「含む(comprise)」は、用語「本質的に〜からなる(consist essentially of)」及び「〜からなる(consist of)」を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1A】プリントされた試料から焼結後の最終的なセラミック物品までの収縮の進行を示す写真である。
図1B】プリントされた試料から焼結後の最終的なセラミック物品までの収縮の進行を示す写真である。
図1C】プリントされた試料から焼結後の最終的なセラミック物品までの収縮の進行を示す写真である。
図1D】プリントされた試料から焼結後の最終的なセラミック物品までの収縮の進行を示す写真である。
図2】プリントされたゲル様の直方体のサイズを、この直方体から得られた焼結直方体セラミック物品のサイズと比較した写真である。
図3】上向きの投影法を用いてステレオリソグラフィ方法(SLA)を実施するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本明細書に記載の方法は、高い表面精度を有するセラミック物品の作製に特に有用であることが見出された。
【0072】
ゾルを加工処理し、焼結後のセラミック物品の体積よりもはるかに大きい体積の三次元物品を得ることにより、高精度及び表面平滑性を有するセラミック物品の作製が促進される。
【0073】
ゲル状態の三次元物品を作製するための拡大率が大きくなるほど、焼結後のセラミック物品上の表面欠陥が小さくなる。
【0074】
目に見える表面欠陥は、付加製造方法中に発生する場合があり、また、製造装置の制限された解像度が原因である場合があるが、このような欠陥は、選択された拡大率による焼結処理中に収縮する。
【0075】
しかしながら、付加製造方法後に得られた三次元物品は、自立型である必要があるため、拡大率を自由に選択することはできない。すなわち、三次元物品は、付加製造装置から変形又は破壊なしに取り外せるよう、十分な一貫性及び安定性を有する必要がある。
【0076】
本明細書に記載のゾルは、付加製造技術を適用することにより、ゲル状態の三次元物品の作製を促進し、三次元物品を焼結し、後にひび割れがないセラミック物品とすることができることが判明した。
【0077】
プリンティングゾルは、典型的には、ゲル状態の三次元物品の寸法を、その焼結状態の最終的なセラミック物品に比べ、少なくとも50%以上に拡大する場合であっても、ゲル状態の自立型三次元物品を作製するのに十分に高い量のナノサイズ粒子を含有する。
【0078】
一方、ナノサイズ粒子の含量は、後にひび割れなしに焼結可能な、そのゲル状態の三次元物品を作製するためには十分に低い。ゾル中に存在するナノサイズ粒子の量は、その粘度に関連する。
【0079】
ナノサイズ粒子の体積含量を増加させると、拡大された、そのゲル状態の自立型三次元物品の作製が促進される。しかしながら、このような三次元物品は、ひび割れなしに、その所望のサイズ及び形状に焼結させることができない。ナノサイズ粒子の含量が、高すぎる。
【0080】
一方、ナノサイズ粒子の含量を下げすぎると、拡大された、そのゲル状態の自立型三次元物品の作製が不可能となる。
【0081】
本明細書に記載のゾルが、本明細書に記載の方法によるセラミック物品を作製するための構成材料として、非常に好適であることが判明した。
【0082】
削除加工技術に比べ、付加製造技術を適用すると、部品サイズがより小さいため、材料の使用について顕著な低減を更にもたらし、また、燃焼時間及び/又は焼結時間を顕著に低減する可能性がある。
【0083】
焼結されると、セラミック物品は、高い曲げ強度及び/又は耐破壊性のような、良好な物性を示す。
【0084】
更に、セラミック物品は、十分に半透明であるため、特に、歯科及び歯科矯正領域で使用可能である。
【0085】
セラミック物品は、特に表面の細部又は平滑度に関し、高精度で作製可能である。
【0086】
付加製造方法中に、構成材料を十分に流動性とし、これらをノズルを通して加工処理するために、熱を加える必要はない。
【0087】
付加製造技術を実施した後に得られた三次元物品の安定化に必要な、ワックスのような更なる添加剤を構成材料に加える必要もない。
【0088】
本発明は、既存の鋳造及び/又は例えば、ミルブランクからセラミック物品を機械加工する削除加工と比べ、最終的な部品の作製に対し、付加的な、鋳型を用いない手法を促進する。
【0089】
拡大段階で中間体を製造することにより、製造方法中の高い表面解像度に対する必要条件が低減されるため、向上した加工処理速度を得ることが可能となり得る。表面の不良は、焼結工程中に起こる収縮方法中に、消失する、又は、最小化される。
【0090】
更に、ゾル−ゲルベースの方法の使用の別の有益な側面は、拡大されたゲル状態において、削除方法(例えばミリング加工等)又は仕上げ加工(例えば研磨等)により、機能表面又は機能特徴の仕上げを行い、収縮効果を、非常に正確な細部及び滑らかな表面のために活用できることである。これにより、機械的特性(表面欠陥の低減)の向上が更に見込まれる。
【0091】
本明細書(present test)に記載の方法により、z方向に25μmかつx−y方向に40μm×40μm(=画素サイズ)の解像度を有するゾル−ゲル体を作製し、例えば、z方向に12.5μmかつx−y方向に20×20μmの解像度を有するセラミック体(焼結後)を得ることができる。
【0092】
ここで、本発明について、更に詳細に記載する。
本明細書に記載の方法により、ナノサイズ粒子を含むプリンティングゾルが提供される。
【0093】
プリンティングゾルは、付加製造方法において構成材料として加工処理される。
【0094】
プリンティングゾルの加工処理により、ゲル状態である三次元物品が得られる。この三次元物品は、体積Aを有する。
【0095】
三次元物品は、乾燥状態である三次元物品、好ましくはエアロゲル又はキセロゲルに移行される。
【0096】
乾燥状態である三次元物品を加熱処理し、体積Fを有する焼結された三次元物品を得る。
【0097】
熱処理中に、三次元物品は、50%超又は200%超又は300%超又は400%超又は500%超の体積収縮を受ける。
【0098】
使用可能な付加製造技術としては、ステレオリソグラフィプリンティングが挙げられる。
【0099】
他の一実施形態によると、方法は、以下の工程:
(a)本明細書に記載の、ナノサイズ粒子、溶媒、放射線硬化性モノマー(複数可)、光開始剤、任意に含まれる有機染料(複数可)、及び任意に含まれる阻害剤(複数可)を含むプリンティングゾルを提供する工程と、
(b)プリンティングゾルを付加製造方法における構成材料として加工処理する工程であって、ゲル状態である三次元物品を得る工程であって、三次元物品が体積Aを有する工程と、
(c)光硬化により、所望の形状を付加製造する工程と、
(d)任意に、特に未反応のゾルの残渣を除去する目的で、ゲル状態である三次元物品の表面を清浄化する工程と、
(e)任意に、特にゲル状態である三次元物品の安定性を高める目的で、ゲル状態である三次元物品を、(例えば加熱又は光硬化により)35〜80℃の範囲の温度又は更なる光硬化により後硬化させ、三次元物品が体積Bを有する工程と、
(f)任意に、ゲル状態である三次元物品を別の溶媒(例えばジエチレングリコールエチルエーテル又はエタノール)に浸漬することと、
(g)特に溶媒を除去する目的で、好ましくは、超臨界乾燥工程をゲル状態である三次元物品に適用することにより、ゲル状態である三次元物品を乾燥状態である三次元物品に移行させ、三次元物品が体積Cを有する工程と、
(h)任意に、特に、残留有機成分を除去し、かつ安定性を更に高め、グリーン体を得る目的で、乾燥状態である三次元物品を400〜800℃の範囲の温度まで加熱し、三次元物品が体積Dを有する工程と、
(i)任意に、特に多孔質構造を有する予備焼結体又はホワイト体を形成する目的で、前の工程の三次元物品を800〜1100℃の範囲の温度まで加熱し、三次元物品が体積Eを有する工程と、
(j)任意に、特に、色を調整し、かつ所望の三次元物品を個別化する目的で、前の工程の三次元物品の表面の少なくとも一部を着色する工程と、
(k)熱処理工程を適用し、焼結された三次元セラミック物品を得る工程であって、セラミック物品が体積Fを有する工程と、を含み、
体積A=又は>体積B>体積C>体積D>体積E>体積Fである。
【0100】
符号「=」は、体積Aが体積Bと本質的に等しいことを意味する。したがって、わずかな偏差、例えば+/−5%は許容される。
【0101】
所望により、また、あらかじめ着色構成成分を含有しているプリンティングゾルを用いる場合、工程(h)、(i)、(j)及び(k)を1つにまとめることができる。
【0102】
同様に、着色が所望でない場合、工程(j)は省略可能であり、また、工程(h)、(i)及び(k)を1つの工程内で実施可能である。したがって、それらの工程を別々に実施する必要性又は必要条件はない。
【0103】
エアロゲル状態である三次元物品を連続的に最大1000又は1050又は1100℃の温度まで加熱することにより、まず有機残渣が燃焼された後、残存する無機構成成分が共に付着し始め、予備焼結物品を形成する。
【0104】
一実施形態によると、個々の体積の関係は、体積Aの大きさを100とすると、以下のとおりである:
体積A=100
体積B=100〜99又は100〜99.5又は100〜99.9
体積C=90〜50
体積D=70〜25又は
体積E=35〜15
体積F=25〜2。
【0105】
すなわち、ゲル状態である三次元物品に比べ、エアロゲル状態の三次元物品は、典型的には、0〜50%の範囲の体積収縮を示す。
【0106】
ゲル状態である三次元物品に比べ、予備焼結状態の三次元物品は、典型的には、25〜75%の範囲の体積収縮を示す。
【0107】
ゲル状態である三次元物品に比べ、焼結状態の三次元物品は、典型的には、75〜98%の範囲の体積収縮を示す。
【0108】
一実施形態によると、個々の体積の関係は、体積Fの大きさを100とすると、以下のとおりである:
体積A(ゲル体)=850〜1250又は900〜1100。
体積B=850〜1250又は900〜1100。
体積C(エアロゲル体)=600〜900又は650〜850
体積D=250〜700又は300〜600
体積E(予備焼結体)=140〜360又は150〜250
体積F(完全焼結体)=100
【0109】
一実施形態によると、ゲル状態である三次元物品の体積Aは、その焼結状態であるセラミック物品の体積Fの200%超又は300%超又は500%超又は800%超又は900%超である。
【0110】
ゾルの加工処理
本明細書に記載のプリンティングゾルは、付加製造方法において、特にステレオリソグラフィ方法(SLA)において加工処理する。
【0111】
一実施形態によると、本明細書に記載のセラミック物品の製造方法において、加工処理工程は、
構成材料の層を表面上に提供する工程と、
作製される三次元物品の一部となる構成材料の層の複数部分を放射線硬化させる工程と、
前の層の放射線硬化された表面と接触している、構成材料の更なる層を提供する工程と、
三次元物品が得られるまで前の工程を繰り返す工程と、を含む。
【0112】
このような方法は、放射線硬化性材料の表面に放射線を適用する工程を含み、放射線は、作製される物品の一部を後に形成する表面の複数部分のみに適用される。
【0113】
放射線は、例えばレーザー光を用いることにより、又は、マスク画像の投影により、適用することができる。物品のより迅速な製造が可能であるため、ステレオリソグラフィ方法(MIP−SL)に基づいたマスク画像の投影が好ましい場合がある。
【0114】
MIP−SL方法は以下のように記述することができる:
i.作製される物品の三次元デジタルモデルを提供する。
ii.三次元デジタルモデルを、一連の水平面によってスライスする。
iii.それぞれの薄いスライスを、二次元のマスク画像に変換する。
iv.次に、マスク画像を、放射線源を用い、構築プラットフォーム(例えば、バットの形状を有する)に配置されている放射線硬化性材料の表面に投影する。
v.放射線硬化性材料は、暴露された領域のみが硬化される。
vi.放射線硬化性材料又は硬化された材料の層を含む構築プラットフォームは、放射線源に対して移動し、前の工程で生成された硬化された材料の層と接触している、放射線硬化性材料の新しい層が提供される。
vii.工程(iv)〜(vi)を、所望の物品が形成されるまで繰り返す。
【0115】
放射線硬化性材料へのマスク画像の投影は、バットの向きに対し、下向き又は上向きのいずれでも実施可能である。
【0116】
必要な放射線硬化性材料がより少ないため、上向き法を用いるのが有益であり得る。
【0117】
この方法では、放射線硬化された層が、バットの透明な底部上に形成される。図3は、このような上向き法の動作の仕組みを概略的に示している。(1)は光源であり、(2)はミラーであり、(3)はレンズであり、(4)はバットの形状を有する構築プラットフォームであり、(5)は構築プラットフォームに配置されている放射線硬化性構成材料であり、(6)は親ねじ(7)に連結されたモーターである。親ねじ(7)に取り付けられているのは、ホルダー(8)である。ホルダー(8)は、作製される三次元物品を保持するために用いられる。
【0118】
本明細書に記載のプリンティングゾルは、これを、マスク画像投影ステレオリソグラフィ方法において、上向きの投影法を用いて加工処理するのに特に有用であることが見出された。
【0119】
このような加工処理工程の更なる詳細は、米国特許第4,575,330号(Hull)、同第6,283,997号(Gargら)又は同第8,003,040(B2)号(El−Siblani)に記載されている。これらの文書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
プリンティングゾルの加工処理は、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上を用いる、又は、適用することにより、実施することができる:
放射線に暴露されるプリンティングゾルのスライス厚:0.001〜0.500mm又は0.01〜0.4mm、
5mJ/cm〜100mJ/cm又は8mJ/cm〜50mJ/cmの範囲の1層当たりのエネルギー線量。
【0121】
ナノサイズ粒子を含有するプリンティングゾルは、ゲル化によって固化される。
【0122】
好ましくは、ゲル化方法により、グリーン体ゲルが任意の形状でひび割れなしに形成され、また、ひび割れを誘発することなく更に加工処理できるグリーン体ゲルが可能となる。例えば、好ましくは、ゲル化方法は、溶媒が除去される際に崩れることがない構造を有するグリーン体ゲル、いわゆる「自立型ゲル」をもたらす。このグリーン体ゲル構造は、多様な溶媒及び超臨界抽出に必要とされ得る条件と適合性があり、かつこれらにおいて安定である。更に、ゲル構造は、超臨界抽出流体(例えば、超臨界CO)と適合性がなくてはならない。換言すれば、ゲルは、ひび割れを誘発することなく、加熱されて有機物を燃焼させ、予備焼結され、かつ高密度化され得る安定なエアロゲルを生成するように、乾燥に耐えられるよう十分に安定かつ強固でなくてはならない。好ましくは、得られるエアロゲルは、比較的小さく均一な細孔径を有し、低い焼結温度でこれらを高密度に焼結させるのに役立つ。しかしながら、好ましくは、エアロゲルの細孔は、エアロゲルのひび割れを起こさずに、有機物の燃焼で生じたガスを逃がせるよう、十分に大きい。ゲル化工程の迅速な性質が、ゲル全体にわたってジルコニア系粒子の本質的に均質な分布をもたらすものと考えられ、超臨界抽出、有機物の燃焼、及び焼結等の後続の加工処理工程において役立ち得る。ゲルは、最小限の量の有機材料又はポリマー改質剤を含有することが好ましい。
【0123】
プリンティングゾルを加工処理してグリーン体ゲルを形成した後、そのゲル状態の三次元物品は、典型的には、付加製造方法の実施のために用いた装置から取り外される。
【0124】
所望により、そのゲル状態の三次元物品の表面を、例えば、三次元物品を溶媒ですすぐ、又は、溶媒に浸漬することによって、清浄化する。
【0125】
好適な溶媒としては、好ましくは、本明細書に記載のゾルで用いられる同一の溶媒(複数可)の混合物又は同一の溶媒(複数可)が挙げられる。
【0126】
好適な溶媒としては、本明細書に記載のような低沸点アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールのように、沸点が100℃未満であるアルコール)及びこれらの混合物、又は本明細書に記載の高沸点溶媒のいずれか、好ましくはゾル中に存在する同一の溶媒(複数可)、例えばジエチレングリコールエチルエーテルが挙げられる。
【0127】
所望により、そのゲル状態の三次元物品は、放射線又は熱を適用することにより、後硬化させることができる。
【0128】
このような工程は、重合度を更に高めることにより、そのゲル状態の三次元物品の安定性を向上するのに役立ち得る。
【0129】
適用される場合、後硬化工程は、以下の特色のうちの少なくとも1つ、又は全てを特徴とし得る:
200〜500又は350〜450nmの波長を有する放射線を適用すること、
乾燥が起こる、又は、脱バインダー若しくはか焼に用いられる温度よりも低い温度、例えば、30〜110又は40〜80℃による加熱工程を適用すること。
【0130】
本明細書に記載のセラミック物品の製造方法はまた、典型的には、存在し得る任意の有機溶媒又は水を除去するための乾燥工程も含み、ゲル状態である三次元物品を、乾燥状態である三次元物品に移行させる。これは、有機溶媒の除去に用いられる方法に関わらず、グリーンゲル体又はプリントされたゲル物品の乾燥と呼ばれる場合がある。
【0131】
いくつかの実施形態において、有機溶媒の除去は、プリントされたゲル物品を室温(例えば、20℃〜25℃)又は高温で乾燥して実施する。最高200℃の任意の所望の温度を用いることができる。乾燥温度がより高い場合、有機溶媒除去の速度が高すぎることがあり、その結果ひび割れが発生する場合がある。有機溶媒除去のこの方法から、キセロゲルが得られる。
【0132】
キセロゲルの形成は、任意の寸法のプリントされたゲル物品の乾燥に用いることができるが、最も頻繁には、比較的小さい焼結物品の調製に用いられる。室温又は高温のいずれにおいても、ゲル組成物の乾燥に伴い、構造体の密度が増加する。毛管力が構造体を引き寄せ、最大約30%、最大25%又は最大30%といった、多少の線収縮をもたらす。収縮率は、典型的には、存在する無機酸化物の量及び全体的な組成によって異なる。線収縮率は、多くの場合、5〜30%、10〜25%、又は5〜15%の範囲である。乾燥は、典型的には、外面で最も急速に起こるため、密度勾配が構造体全体に確立される。密度勾配が、ひび割れの形成を来す場合がある。ひび割れ形成の可能性は、プリントされたゲル物品のサイズ及び複雑さ、並びに構造の複雑さと共に増大する。いくつかの実施形態において、キセロゲルは、約1cm以下の最長寸法を有する焼結体の調製に用いられる。
【0133】
いくつかの実施形態において、キセロゲルは、若干の残留有機溶媒を含有する。残留溶媒は、キセロゲルの総重量に基づいて最大6重量%であり得る。例えば、キセロゲルは、最大5重量%、最大4重量%、最大3重量%、最大2重量%、又は最大1重量%の有機溶媒を含有し得る。
【0134】
プリントされたゲル物品が、容易に破損又はひび割れし得る微細な特徴を有する場合、キセロゲルよりもむしろエアロゲル中間体を形成することが好ましい場合が多い。任意のサイズ及び複雑さのプリントされたゲル物品は、乾燥してエアロゲルとすることができる。エアロゲルは、プリントされたゲル物品を、好ましくは超臨界条件下で乾燥することによって形成することができる。このタイプの乾燥については、毛管効果はなく、また、線収縮率は、多くの場合、0〜25%、0〜20%、0〜15%、5〜15%、又は0〜10%の範囲である。密度は、典型的には、構造全体にわたって均一なままである。
【0135】
適用される場合、超臨界乾燥工程は、以下の特色のうちの少なくとも1つ、より多く又は全てを特徴とし得る:
a)温度:20〜100℃又は30〜80℃又は15〜150℃、
b)圧力:5〜200MPa又は10〜100MPa又は1〜20MPa又は5〜15MPa、
c)継続時間:2〜175時間又は5〜25時間又は1〜5時間、
d)抽出又は乾燥媒体:その超臨界段階の二酸化炭素。
【0136】
特色(a)、(b)及び(d)の組み合わせが好ましい場合がある。
【0137】
超臨界抽出により、プリントされたゲル物品中の有機溶媒の全て又はほとんどを除去することができる。いくつかの実施形態において、エアロゲルは、若干の残留有機溶媒を含有する。残留溶媒は、エアロゲルの総重量に基づいて最大6重量%であり得る。例えば、エアロゲルは、最大5重量%、最大4重量%、最大3重量%、最大2重量%、又は最大1重量%の有機溶媒を含有し得る。
【0138】
有機溶媒の除去の結果、乾燥された構造体内に細孔が形成される。好ましくは、細孔は、乾燥された構造体を更に加熱して有機物を燃焼させ、焼結物品を形成する際、構造体にひび割れを起こさずに、ポリマー材料の分解生成物によるガスを逃がせるよう、十分大きい。
【0139】
超臨界乾燥工程を実施した後に得られた物品は、典型的には、以下の特性のうちの少なくとも1つ以上を特徴とし得る:
ヒステリシスループを伴うN吸着及び/又は脱着等温線を示すこと、
IUPAC分類によるIV型の等温線のN吸着及び脱着、並びにヒステリシスループを示すこと、
IUPAC分類によるH1型のヒステリシスループを伴うIV型のN吸着及び脱着等温線を示すこと、
p/p0範囲0.70〜0.99において、IUPAC分類によるH1型ヒステリシスループを伴うIV型N吸着及び脱着等温線を示すこと、
BET表面:120〜200m/g又は130〜190m/g。
【0140】
加熱工程は、三次元物品中に依然として存在する有機残留物を、最終焼結前に除去するために実施する。焼結前に有機残留物を除去することにより、焼結中のひび割れのリスクを低減する。
【0141】
このような加熱工程は、脱バインダー又はか焼工程とも呼ばれる場合がある。その結果、いわゆる「ホワイト体」が得られる。
【0142】
加熱工程は、典型的には、800℃未満又は700未満又は600℃未満の温度で実施する。典型的な温度範囲は、400〜800℃又は500〜700℃である。
【0143】
加熱工程は、典型的には、三次元物品中の有機成分を燃焼させるのに必要な時間実施する。
【0144】
典型的な時間枠は、5〜100時間又は10〜50時間である。
【0145】
加熱は、典型的には、周囲条件(すなわち、周囲空気、周囲気圧)で実施する。
【0146】
脱バインダー又はか焼工程後に得られた本体は、熱で更に処理し、予備焼結物品を得ることができる。
【0147】
このような予備焼結物品は多孔質であり、市販の着色液を用いて着色することができる。非着色が所望の場合、及び物品が既に着色されている場合、予備焼結工程は省略することができる。
【0148】
予備焼結物品は、典型的には、以下の特性を特徴とし得る:
ヒステリシスループを伴うN吸着及び/又は脱着等温線を示すこと、
IUPAC分類によるIV型の等温線のN吸着及び脱着、並びにヒステリシスループを示すこと、
IUPAC分類によるH1型のヒステリシスループを伴うIV型のN吸着及び脱着等温線を示すこと、
p/p0範囲0.70〜0.99において、IUPAC分類によるH1型ヒステリシスループを伴うIV型N吸着及び脱着等温線を示すこと、
BET表面:15〜100m/g又は16〜60m/g。
【0149】
予備焼結工程を実施するために適用される条件は、以下のように記述することができる:
温度:800〜1100℃又は950〜1090℃又は975〜1080℃、
雰囲気:空気又は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)、
持続時間:材料の最終密度の40〜60%の密度に到達するまで。
【0150】
所望により、予備焼結物品は、任意に、水酸化アンモニウムの水溶液等の塩基性溶液に浸漬することができる。浸漬は、方法のこの段階における物品の多孔質性のため、硫酸イオン等の望ましくないイオン種の除去に効果的である場合がある。硫酸イオンは、ヒドロキシルイオンとイオン交換することができる。硫酸イオンが除去されていない場合、硫酸イオンは、焼結物品において、半透明度及び/又は強度を低下させる傾向の小さい細孔を生成し得る。
【0151】
より具体的には、イオン交換方法は、多くの場合、加熱して有機物を除去した物品を、1N水酸化アンモニウム水溶液に浸漬することを含む。この浸漬工程は、多くの場合、少なくとも8時間、少なくとも16時間、又は少なくとも24時間である。浸漬後、物品を水酸化アンモニウム溶液から取り出し、水で十分に洗浄する。物品は、任意の所望の時間、例えば、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、又は少なくとも4時間水に浸漬することができる。水への浸漬は、所望により、新鮮な水に交換し、数回繰り返すことができる。
【0152】
浸漬後、物品は、典型的には、オーブン中で乾燥し、水を除去する。例えば、物品は、少なくとも80℃、少なくとも90℃、又は少なくとも100℃に等しい温度に設定したオーブン中で加熱することにより、乾燥することができる。例えば、温度は80℃〜150℃、90℃〜150℃、又は90℃〜125℃の範囲で、少なくとも30分間、少なくとも60分間、又は少なくとも120分間であり得る。
【0153】
所望により、吸収性の段階である三次元物品の表面の少なくとも一部を着色することができる。着色は、着色溶液を用いて実施することができる。
【0154】
好適な着色溶液は、典型的には、溶媒及び特定のイオンを含有する。
【0155】
溶媒は、処理溶液中に含有されるイオン(複数可)を溶解することができる。所望により、異なる溶媒の混合物を用いることができる。
【0156】
適切な溶媒としては、水、アルコール(特に低沸点アルコール、例えば沸点が約100℃未満のアルコール)及びケトンが挙げられる。非着色剤のカチオンを溶解させるために使用可能な溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、アセトン、及びこれらの混液が挙げられる。
【0157】
溶媒は、典型的には、全着色溶液に対する重量%として、50〜99.9重量%又は60〜99重量%又は75〜95重量%の量で存在する。
【0158】
着色溶液、典型的には、十分な量の溶液が多孔質ジルコニア物品の表面に塗布可能であるだけでなく、ジルコニア物品の細孔中に移動できるように、適切な粘度を有する。
【0159】
粘度を上記の値に調整することは、溶液を、プリントされたセラミック物品の予備焼結後に得られた多孔質歯科用ジルコニア物品の特定のセクション又は領域に、より正確に塗布できるという点から、有益であり得る。
【0160】
着色溶液の粘度が高すぎる場合、着色溶液は、ジルコニア材料の細孔に十分に入り込めない場合がある。一方、着色溶液の粘度が低すぎる場合、着色溶液は過度に急速に細孔中に移動する場合があり、物品全体に拡散する場合がある。
【0161】
一実施形態によると、着色溶液は、Fe、Mn、Er、Pr、Tb、V、Cr、Co、Mo及びこれらの混合物から選択される着色イオンを含む。これらのイオンは、歯科用又は歯科矯正領域における使用に特に有用であることが見出された。
【0162】
これらの溶液はまた、Y、Ce、Mg、Ca、希土類元素及びこれらの混合物のイオンを含む相安定剤も含有し得る。相安定剤の添加により、セラミック物品に存在するジルコニア構成成分の特定の結晶相(例えば立方晶相又は正方晶相)の安定化を更に促進することができる。
【0163】
溶液は、1種以上の錯化剤(複数可)も含み得る。錯化剤(複数可)は、着色溶液の浸透を助けることができる。
【0164】
着色溶液は、ブラシ、スポンジ、(中空)ニードル、ペン、混合器具及びこれらの組み合わせ等の塗布装置を用いて、三次元物品の表面に塗布することができる。
【0165】
しかしながら、着色溶液は、本明細書に記載の付加製造方法で用いるためのゾルにも加えることができる。この場合、得られる物品は既に着色されている。
【0166】
焼結工程を最後に実施し、理論密度の少なくとも99又は少なくとも99.5又は少なくとも99.9%の密度を有するセラミック物品を得る。
【0167】
三次元物品の焼結は、典型的には、以下の条件下で実施する:
温度:1150〜1500℃又は1200〜1400℃又は1250〜1350℃又は1200〜1400°又は1300超〜1400℃又は1320℃超〜1400℃又は1340℃超又は1350℃超、
雰囲気:空気又は不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)、
圧力:周囲気圧(例えば1013mbar)、
持続時間:材料の最終密度の約99〜約100%の密度に達するまで。
【0168】
焼結セラミック物品の特性は、本明細書において、更に後述する。
【0169】
付加製造方法で用いられるプリンティングゾルの調製は、典型的には、出発ゾルの調製から開始される。
【0170】
ジルコニウム塩(例えば酢酸塩)溶液及び溶媒(例えば水)を混合し、前駆体溶液を調製する。相安定化剤(例えば酢酸イットリウム)を前駆体溶液に加え、溶解する。得られた組成物を、例えば水熱反応器を通して送液する。
【0171】
好適な水熱反応器は、例えば、米国特許第5,453,262号(Dawsonら)及び同第5,652,192号(Matsonら)に記載されている。
【0172】
ジルコニア微結晶の正方晶相及び/又は立方晶相の含量は、作製法の実施中に加えられる相安定化構成成分の量を変化させることによって調整することができる。
【0173】
使用可能な相安定化構成成分としては、Ce、Mg、Ca、Y、希土類元素、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0174】
各種の既知の方法のいずれを用いてもジルコニア系粒子を提供することができるが、水熱技術を用いてジルコニア系粒子を調製するのが好ましい。
【0175】
1つの例示的な実施形態では、ジルコニア系ゾルは、水性金属塩(例えば、ジルコニウム塩、イットリウム塩、及び任意のランタニド元素塩又はアルミニウム塩)溶液、懸濁液又はこれらの組み合わせの水熱処理によって調製される。
【0176】
水に可溶であるように選択される水性金属塩は、典型的には、水性媒体中に溶解される。水性媒体は、水、又は水と他の水溶性若しくは水混和性材料との混合物とすることができる。更に、存在し得る水性金属塩及び他の水溶性材料又は水混和性材料は、典型的には、後続の加工処理工程中に除去可能であり、非腐食性であるように選択される。
【0177】
供給材料中の溶解塩の少なくとも大多数は、通常、ハロゲン塩、オキシハロゲン塩、硝酸塩、又はオキシ硝酸塩ではなく、カルボン酸塩である。理論による束縛を望むものではないが、供給材料中のハロゲン化物及び硝酸アニオンは、より望ましい正方晶相又は立方晶相ではなく、主として単斜晶相からなるジルコニア系粒子の形成をもたらす傾向があると考えられている。更に、カルボン酸塩及び/又はそれらの酸は、ハロゲン化物及び硝酸塩に比べ、有機マトリックス材料とより適合性がある傾向がある。任意のカルボン酸アニオンが使用可能であるが、カルボン酸アニオンは、多くの場合、4個以下の炭素原子を有する(例えば、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、又はこれらの組み合わせ)。溶解塩は、多くの場合、酢酸塩である。供給材料は、例えば、カルボン酸アニオンの対応するカルボン酸を更に含む場合がある。例えば、酢酸塩から調製される供給材料は、多くの場合、酢酸を含有する。
【0178】
1つの例示的なジルコニウム塩は、ZrO((4−n)/2)n+(CH3COO(式中、nは1〜2の範囲である)等の式で表わされる酢酸ジルコニウム塩である。ジルコニウムイオンは、例えば、供給材料のpHに応じて、様々な構造で存在し得る。酢酸ジルコニウムの好適な水性溶液は、例えば、Magnesium Elektron,Inc.(Flemington,NJ)より市販されており、これは、例えば、溶液の総重量に基づいて、最大17重量%のジルコニウム、最大18重量%のジルコニウム、最大20重量%のジルコニウム、最大22重量%、最大24重量%、最大26重量%、及び最大28重量%のジルコニウムを含有する。
【0179】
同様に、例示的なイットリウム塩及びアルミニウム塩は、多くの場合、カルボン酸アニオンを有し、市販されている。しかし、これらの塩は、典型的には、ジルコニウム塩よりも非常に低い濃度で用いられるため、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩)以外の塩もまた有用であり得る(例えば、硝酸塩)。
【0180】
供給材料中に溶解された各種の塩の総量は、供給材料用に選択された総固体含有率に基づいて容易に求めることができる。各種の塩の相対的な量を計算し、ジルコニア系粒子用に選択された組成をもたらすことができる。
【0181】
典型的には、供給材料のpHは、酸性である。例えば、pHは、通常は6未満、5未満、又は4未満(実施形態によっては、3〜4の範囲)である。
【0182】
供給材料の液相は、典型的には、主として水である(すなわち、液相は、水系媒体である)。水は脱イオンし、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はこれら両者が供給材料に入り込むのを最小化することが好ましい。任意に、水混和性有機共溶媒が、液相の重量に基づいて、例えば、最大20重量%の量で液相に含まれる。好適な共溶媒としては、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンが挙げられる。
【0183】
水熱処理を施すと、供給材料中の各種の溶解塩は、加水分解及び縮合反応を受け、ジルコニア系粒子を形成する。これらの反応は、多くの場合、酸性副生成物の遊離を伴う。すなわち、副生成物は、多くの場合、供給材料中の任意の他のカルボン酸塩を加えたジルコニウムカルボン酸塩に対応する1つ以上のカルボン酸である。例えば、塩が酢酸塩である場合、水熱反応の副生成物としては酢酸が形成される。
【0184】
任意の好適な水熱反応器を、ジルコニア系粒子の調製に用いることができる。この反応器は、バッチ式又は連続式反応器とすることができる。連続式水熱反応器では、バッチ式水熱反応器に比べ、加熱時間は典型的にはより短く、温度は典型的にはより高い。水熱処理の時間は、例えば、反応器の種類、反応器の温度、及び供給材料の濃度に応じて変動し得る。反応器内の圧力は、自発性(すなわち、反応器の温度における水の蒸気圧)とすることができ、液圧式(すなわち、拘束に対する流体のポンピングによって生じる圧力)とすることができ、又は窒素若しくはアルゴン等の不活性ガスの付加から生じさせることができる。好適なバッチ式水熱反応器は、例えば、Parr Instruments Co.(Moline,IL)より入手可能である。
【0185】
いくつかの実施形態において、供給材料を、連続式水熱反応器に通過させる。本明細書で使用する場合、水熱反応器システムに関する用語「連続式」は、供給材料が連続的に導入され、流出物が加熱ゾーンから連続的に取り出されることを意味する。供給材料の導入及び流出物の取り出しは、典型的には反応器の異なる場所で行われる。連続的な導入及び取り出しは、持続的又は間欠的とすることができる。
【0186】
管状反応器の寸法は様々であり得、供給材料の流速と共に、管状反応器内の反応物に好適な滞留時間をもたらすよう選択することができる。滞留時間及び温度が、供給材料中のジルコニウムをジルコニア系粒子に変換するのに十分でさえあれば、任意の好適な長さの管状反応器を用いることができる。管状反応器は、多くの場合、長さが、少なくとも0.5メートル(実施形態によっては、少なくとも1m、2m、5m、10m、15m、20m、30m、40m、又は少なくとも50m)である。管状反応器の長さは、500m未満(実施形態によっては、400m、300m、200m、100m、80m、60m、40m、又は20m未満)である。
【0187】
比較的小さい内径を有する管状反応器が好ましい場合もある。例えば、約3cm以下の内径を有する管状反応器は、これらの反応器によって達成可能な供給材料の加熱速度が高いため、用いられることが多い。更に、管状反応器全体の温度勾配は、より大きな内径のものに比べ、より小さい内径の反応器の方が小さい。管状反応器の内径が大きいほど、この反応器はバッチ式反応器に類似する。しかしながら、管状反応器の内径が小さすぎる場合には、反応器の壁に材料が付着することから、稼働中に反応器が詰まる、又は、部分的に詰まる可能性が高まる。管状反応器の内径は、多くの場合、少なくとも0.1cm(実施形態によっては、少なくとも0.15cm、0.2cm、0.3cm、0.4cm、0.5cm、又は少なくとも0.6cm)である。いくつかの実施形態において、管状反応器の直径は、3cm以下(実施形態によっては、2.5cm、2cm、1.5cm以下、又は1cmより大きく、実施形態によっては、0.1〜2.5cm、0.2cm〜2.5cm、0.3cm〜2cm、0.3cm〜1.5cm、又は0.3cm〜1cmの範囲である)。
【0188】
連続式水熱反応器では、温度及び滞留時間は、典型的には、1回の水熱処理を用いて、供給材料中のジルコニウムの少なくとも90モル%をジルコニア系粒子に変換するように、管状反応器の寸法と共に選択される。すなわち、連続式水熱反応器システムを1回通過するうちに、供給材料中に溶解したジルコニウムの少なくとも90モル%が、ジルコニア系粒子に変換される。
【0189】
あるいは、例えば、複数段階の水熱方法を用いることができる。例えば、供給材料に第1の水熱処理を施すことができ、ジルコニウムを含有する中間体及びカルボン酸等の副生成物を形成する。第2の供給材料は、ジルコニウムを含有する中間体から第1の水熱処理の副生成物の少なくとも一部を除去することによって形成することができる。次に、第2の供給材料に第2の水熱処理を施し、ジルコニア系粒子を含有するゾルを形成することができる。この方法に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第7,241,437号(Davidsonら)に記載されている。
【0190】
2段階の水熱方法が用いられる場合、ジルコニウムを含有する中間体の変換率は、典型的には、40〜75モル%の範囲である。第1の水熱処理で用いられる条件は、この範囲内の変換をもたらすように調整することができる。任意の好適な方法を用い、第1の水熱処理の副生成物の少なくとも一部を除去することができる。例えば、酢酸等のカルボン酸は、蒸発、透析、イオン交換、沈殿、及び濾過等の各種の方法によって除去することができる。
【0191】
連続式水熱反応器に言及するとき、用語「滞留時間」は、供給材料が連続式水熱反応器システムの加熱部分内にある時間の平均的な長さを意味する。
【0192】
滞留時間が、溶解されたジルコニウム塩をジルコニア系粒子に変換するのに十分に長いものである限り、管状反応器を通過する供給材料について任意の好適な流速を用いることができる。すなわち、流速は、多くの場合、供給材料中のジルコニウムをジルコニア系粒子に変換するために必要な滞留時間に基づいて選択される。処理能力を増大させるため、また、管状反応器の壁への材料の付着を最小化するため、より高い流速が望ましい。反応器の長さを増加させる場合、又は反応器の長さと直径の両方を増加させる場合、より速い流速を用いることができる場合が多い。管状反応器を通過する流れは、層流又は乱流のいずれかであり得る。
【0193】
一部の連続式熱水反応器例では、反応器の温度は、170℃〜275℃、170℃〜250℃、170℃〜225℃、180℃〜225℃、190℃〜225℃、200℃〜225℃、又は更には200℃〜220℃の範囲である。温度が約275℃を超える場合、圧力は、一部の熱水反応器システムにとっては許容できないほど高くなる恐れがある。しかしながら、温度が約170℃未満である場合、供給材料中のジルコニウムスラット(zirconium slat)のジルコニア系粒子への変換は、典型的な滞留時間を用いると、90重量%未満となる場合がある。
【0194】
水熱処理の流出物(すなわち、水熱処理の生成物)はジルコニア系ゾルであり、「ゾル流出物」と呼ばれる場合がある。ゾル流出物は、水系媒体中のジルコニア系粒子の分散体又は懸濁液である。ゾル流出物は、分散した、懸濁した、又はこれらの組み合わせである、ゾルの重量に基づいて少なくとも3重量%のジルコニア系粒子を含有する。いくつかの実施形態において、ゾル流出物は、ゾルの重量に基づいて、少なくとも5重量%、少なくとも6重量%、少なくとも8重量%、又は少なくとも10重量%のジルコニア系粒子を含む。ジルコニア系粒子の重量%は、最大16重量%若しくはこれより高く、最大15重量%、最大12重量%、又は最大10重量%であり得る。
【0195】
ゾル流出物は、通常、非会合のジルコニア系粒子を含有する。ゾル流出物は、典型的には、澄明又はわずかに濁っている。対照的に、粒塊又は凝集した粒子を含有するジルコニア系ゾルは、通常、乳濁性又は濁った外観を有する傾向がある。ゾル流出物は、多くの場合、ゾル中の一次ジルコニア粒子の小さなサイズ及び非会合の形態のため、高い光透過率を有する。ゾル流出物の光透過率が高いことは、透明又は半透明な焼結物品の調製において望ましい場合がある。本明細書で使用する場合、「光透過率」は、試料(例えば、ゾル流出物又はプリンティングゾル)を通過する光の量を、試料に入射する光の総量で除算したものを指す。光透過率は式
100(I/I
(式中、Iは試料を通過する光の強度であり、かつIは試料に入射する光の強度である)によって算出することができる。
【0196】
ゾル流出物の光透過率は、プリンティングゾル(ゲル体を形成するために用いられる反応混合物)の光透過率に関連することが多い。良好な透過率は、ゲル体の形成中に適切な硬化を確実に行うのに役立つ。
【0197】
光透過率は、例えば、1cmの路長で、420nm又は600nmの波長に設定された紫外/可視分光光度計を用いて測定することができる。光透過率は、ゾル中のジルコニアの量の関数である。約1重量%のジルコニアを含有するゾル流出物の場合、光透過率は、典型的には、420nm又は600nmのいずれかにおいて、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%である。約10重量%のジルコニアを含有するゾル流出物の場合、光透過率は、典型的には、420nm又は600nmのいずれかにおいて、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも70%である。
【0198】
ゾル流出物中のジルコニア系粒子は結晶性であり、立方晶、正方晶、単斜晶、又はこれらの組み合わせであり得る。立方晶相及び正方晶相はX線回折法を用いて識別することが困難であるため、これらの2つの相は、典型的には、定量的な目的で1つにまとめ、「立方晶/正方晶」相と呼ぶ。立方晶/正方晶相含有率は、例えば、各相についてX線回折のピーク面積を測定し、以下の等式を用いて求めることができる。
%C/T=100(C/T)÷(C/T+M)
【0199】
この式において、「C/T」は、立方晶/正方晶相についての回折ピークの面積を指し、「M」は、単斜晶相についての回折ピークの面積を指し、「%C/T」は、立方晶/正方晶相の重量%を指す。X線回折測定の詳細は、後述の実施例に更に記載されている。
【0200】
典型的には、ゾル流出物中の少なくとも50重量パーセントのジルコニア系粒子が、立方晶構造、正方晶構造、又はこれらの組み合わせを有する。立方晶/正方晶相の含量がより高いことが、通常望ましい。立方晶/正方晶相の量は、多くの場合、ジルコニア系粒子中に存在する全ての結晶相の総重量に基づいて、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%である。
【0201】
所望により、ジルコニア微結晶に含有された立方晶相対正方晶相含量の比を調整するため、異なるイットリア含量を有する、異なるゾルを混合することができる。
【0202】
ゾル流出物内のジルコニア系粒子は結晶性であり、平均一次粒径は50nm以下、45nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、又は10nm以下である。ジルコニア系粒子は、典型的には、平均一次粒径が、少なくとも1nm、少なくとも2nm、少なくとも3nm、少なくとも4nm、又は少なくとも5nmである。いくつかの実施形態において、平均一次粒径は、5〜50nm、5〜45nm、2〜40nm、5〜40nm、2〜25nm、5〜25nm、2〜20nm、5〜20nm、2〜15nm、5〜15nm、又は2〜10nmの範囲である。ジルコニア粒子の非会合の粒径を指す平均一次粒径は、実施例の項に記載のX線回折によって測定することができる。
【0203】
ゾル流出物中の粒子は、典型的には非会合であり、平均粒径は一次粒径と同一である。一次粒子間の会合の程度は、体積平均粒径から求めることができる。体積平均粒径は、後述の実施例の項でより詳細に説明される、光子相関分光法を用いて測定することができる。簡潔に説明すると、粒子の体積分布(所与のサイズ範囲に対応する総体積の百分率)を測定する。粒子の体積は、直径の3乗に比例する。体積平均サイズは、体積分布の平均に対応する粒子のサイズである。ジルコニア系粒子が会合している場合、体積平均粒径は、一次粒子の凝集体及び/又は粒塊のサイズの測定値をもたらす。ジルコニア粒子が非会合である場合、体積平均粒径は、一次粒子のサイズの測定値をもたらす。ジルコニア系粒子は、典型的には、体積平均サイズが最大100nmである。例えば、体積平均サイズは、最大90nm、最大80nm、最大75nm、最大70nm、最大60nm、最大50nm、最大40nm、最大30nm、最大25nm、最大20nm、又は15nm、又は最大10nmであり得る。
【0204】
ゾル流出物中の一次粒子間の会合度の定量的尺度は、分散指数である。本明細書で使用する場合、「分散指数」は、体積平均粒径を一次粒径で除算したものと定義する。一次粒径(例えば、加重平均微結晶サイズ)はX線回折技術を用いて測定し、体積平均粒径は光子相関分光法を用いて測定する。一次粒子間の会合の減少に伴い、分散指数は1の値に近づくが、それよりやや高い、又は、低い場合もある。ジルコニア系粒子は、典型的には、分散指数が1〜7の範囲である。例えば、分散指数は、多くの場合、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2.5、又は1〜2の範囲である。
【0205】
光子相関分光法はまた、Z平均一次粒径の計算に用いることもできる。Z平均サイズは、累積分析を用いて散乱光の強度の変動から計算され、粒子径の6乗に比例する。体積平均サイズは、典型的には、Z平均サイズよりも小さい値になる。ジルコニア系粒子は、典型的には、最大100nmのZ平均サイズを有する傾向がある。例えば、Z平均サイズは、最大90nm、最大80nm、最大70nm、最大60nm、最大50nm、最大40nm、最大35nm、最大30nm、最大20nm、又は最大15nmであり得る。
【0206】
ジルコニア系粒子の調製方法に応じ、粒子は、無機酸化物に加え、少なくともいくつかの有機材料を含有し得る。例えば、粒子を水熱法を用いて調製する場合には、ジルコニア系粒子の表面に結合したいくつかの有機材料が存在し得る。理論による束縛を望むものではないが、有機材料は、供給材料中に含まれる、又は、加水分解及び縮合反応の副生成物として形成されたカルボン酸塩種(アニオン、酸、又はこれら両方)に由来する(すなわち、有機材料は、多くの場合、ジルコニア系粒子の表面に吸着されている)ものと考えられている。例えば、いくつかの実施形態において、ジルコニア系粒子は、ジルコニア系粒子の総重量に基づいて、最大15重量%、最大12重量%、最大10重量%、最大8重量%、又は最大6重量%の有機材料を含有する。
【0207】
出発ゾルは、典型的には、水性媒体中に分散した、懸濁した、又はこれらの組み合わせである少なくとも2重量%のジルコニア系粒子を含有する。いくつかの実施形態において、ジルコニア系粒子は、(a)ジルコニア系粒子中の無機酸化物の総モルに基づいて、0〜10モル%のランタニド元素酸化物、及び(b)ジルコニア系粒子中の無機酸化物の総モルに基づいて、0〜30モル%の酸化イットリウムを含有し得る。ジルコニア系粒子は結晶性であり、平均一次粒径が50nm以下又は45nm以下である。いくつかの実施形態において、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化イッテルビウム、及び/又は酸化カルシウムを、酸化イットリウムと共に又は酸化イットリウムの代わりに用いる場合がある。
【0208】
最終的な焼結物品の使用目的に応じ、酸化ジルコニウムに加え、他の無機酸化物を、ジルコニア系粒子中に含む場合がある。
【0209】
したがって、一実施形態によると、本明細書に記載のゾルは、1種以上の無機着色剤(複数可)を含む場合がある。無機着色剤(複数可)の性質及び構造は、いずれも、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0210】
好ましい実施形態において、金属イオンが塩を含まないことはなく、むしろジルコニア系粒子中に取り込まれる。
【0211】
ジルコニア系粒子の最大30モル%、最大25モル%、最大20モル%、最大10モル%、最大5モル%、最大2モル%、又は最大1モル%は、Y、La、Al、CeO、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Fe、MnO、Co、Cr、NiO、CuO、V、Bi、Ga、Lu、HfO、又はこれらの混合物であり得る。Fe、MnO、Co、Cr、NiO、CuO、Ga、Er、Pr、Eu、Dy、Sm、V、又はW等の無機酸化物を、例えば、作製されるセラミック物品の色を変えるために加える場合がある。
【0212】
ゾルを歯科用物品又は歯科矯正物品の作製のために用いる場合、以下の無機着色剤(複数可):Mn、Fe、Cu、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Er、Biのイオン及びこれらの混合物、好ましくはEr、Tb、Mn、Bi、Nd又はFe、Pr、Co、Cr又はV、Cu、Eu、Sm、Dyのイオンが有用であることが判明しており、場合により、また、Er、Tb、Mn、Bi、Ndが特に好ましい。
【0213】
無機着色剤(複数可)が存在する場合、以下の量で存在する:
下限量(Lower amount):少なくとも0.001又は少なくとも0.005又は少なくとも0.01重量%、
上限量(Upper amount):最大0.02又は最大0.05又は最大0.5重量%、
範囲:0.001〜0.5又は0.005〜0.05重量%
(ここで、着色剤中に存在する着色イオンの重量について、ゾルの重量に対して算出した)。出発ゾルは、典型的には濃縮されている。
【0214】
より濃縮されたゾルを得るため、水系媒体の少なくとも一部を、ジルコニア系ゾルから除去する。水系媒体を除去するための任意の既知の手段を用いることができる。この水系媒体は水を含有し、かつ供給材料中に存在する、又は、水熱反応器内で生じる反応の副生成物である、溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンを含有することが多い。本明細書で使用する場合、用語「カルボン酸及び/又はこれらのアニオン」は、カルボン酸、これらのカルボン酸のカルボン酸アニオン、又はこれらの混合物を指す。これらの溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部を、ジルコニア系ゾルから除去することが、いくつかの実施形態では望ましい場合がある。ジルコニア系ゾルには、例えば、蒸発、乾燥、イオン交換、溶媒交換、ダイアフィルトレーション、又は透析のうちの少なくとも1つを、例えば、濃縮のため、不純物の除去のため、又はゾル中に存在する他の構成成分と適合させるために施すことができる。
【0215】
一実施形態によると、ジルコニア系ゾルに、透析又はダイアフィルトレーションを施すことができる。
【0216】
透析及びダイアフィルトレーションは両方とも、溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部を除去する傾向がある。透析では、流出物の試料を、閉じられた膜バッグ内に入れた後、水浴内に置くことができる。カルボン酸及び/又はカルボン酸アニオンは、膜バッグ内の試料から拡散する。すなわち、これらの種は、膜バッグ内の濃度を水浴内の濃度に等しくするために、膜バッグを通過して溶出物から水浴内に拡散する。水浴内の水は、典型的には数回交換し、バッグ内の種の濃度を低下させる。膜バッグは、典型的には、カルボン酸及び/又はこれらのアニオンを拡散させるが、膜バッグからジルコニア系粒子を拡散させないものが選択される。
【0217】
ダイアフィルトレーションでは、透過性膜を用い試料を濾過する。ジルコニア粒子は、フィルターの孔径が適切に選択されれば、フィルターによって保持することができる。溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンは、フィルターを通過する。フィルターを通過するいずれの液体も、新鮮な水で置き換えられる。不連続なダイアフィルトレーション方法では、試料を、多くの場合、所定の体積に希釈した後、限外濾過によって濃縮して元の体積に戻る。希釈工程及び濃縮工程は、カルボン酸及び/又はこれらのアニオンが除去される、又は、許容できる濃度レベルに低下するまで、1回以上繰り返される。連続ダイアフィルトレーション方法(定容ダイアフィルトレーション方法と呼ばれることが多い)では、液体が濾過によって除去されるのと同じ速度で、新鮮な水を加える。溶解されたカルボン酸及び/又はこれらのアニオンは、除去される液体中にある。
【0218】
イットリウム及びランタニドが存在する場合、これらの大部分は、結晶性ジルコニア粒子中に取り込まれているが、ダイアフィルトレーション又は透析方法中に除去され得るこれらの金属の分画が存在する。ダイアフィルトレーション後のゾルの実際の組成は、透析前のものと異なってもよい。
【0219】
濃縮された出発ゾル中の結晶性のナノサイズのジルコニア粒子は、典型的には、20〜70重量%の範囲である。
【0220】
いくつかの実施形態において、濃縮されたジルコニア系ゾルに溶媒交換方法を施すことができる。
【0221】
水よりも高い沸点を有する有機溶媒を、流出物に加えることができる。溶媒交換法での使用に好適な有機溶媒の例としては、1−メトキシ−2−プロパノール、N−メチルピロリドン又はジエチレングリコールエチルエーテルが挙げられる。次に、蒸留、回転蒸発、又はオーブン乾燥等の方法により水を除去することができる。水の除去に用いられる条件に応じ、溶解されたカルボン酸及び/又はそのアニオンの少なくとも一部も、除去することができる。他の有機マトリックス材料を、処理された流出物に加えることができる(すなわち、他の有機マトリックス材料を、溶媒交換方法で用いた有機溶媒中に懸濁したジルコニア系粒子に加えることができる)。
【0222】
ジルコニア系ゾルは、水性/有機マトリックス中に分散及び/又は懸濁した(すなわち、分散し、懸濁し、又はこれらの組み合わせで存在する)ジルコニア系粒子を含む。
【0223】
本明細書に記載の付加製造方法で用いられるゾル(プリンティングゾル)は、更なる構成成分を出発ゾルに加えることによって得られる。
【0224】
これには、表面改質剤の添加、放射線硬化性モノマー(複数可)又はオリゴマー(複数可)、光開始剤、阻害剤、有機染料、溶媒、及びこれらの混合物又は組み合わせの添加が含まれ得る。濃度及び組成は、所望により、ダイアフィルトレーション、蒸留又は同等の方法によって更に調整することができる。
【0225】
特定の実施形態において、付加製造方法で用いられるプリンティングゾルは、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
a)波長範囲420〜600nmで半透明であること、
b)路長10mmについての測定で、420nmにおいて少なくとも5%の透過率を示すこと、
c)会合したナノサイズのジルコニア粒子を実質的に含まないこと、
d)酸性であること、すなわち、水と接触した場合のpHの範囲が1〜6又は2〜5又は2〜4であること、
e)粘度:23℃において、200mPa・秒未満又は180mPa・秒未満又は150mPa・秒未満又は100mPa・秒未満又は50mPa・秒未満又は20mPa・秒未満であること。
【0226】
半透明のプリンティングゾルの使用は、セラミック物品の表面のプリンティング結果又は細部解像度の向上に有益であり得ることが判明した。例えば、スリップ又はスラリーとは対照的に、本明細書に記載の半透明のプリンティングゾルは、ゾルに含有される放射線硬化性構成成分の重合に用いられる光について、より少ない散乱を示す。
【0227】
半透明度が高まると、より浅い硬化グラジエントが可能となり、半透明材料を通して硬化させるのに要するエネルギー線量はより低くなるため、得られる構造の全体にわたり、より均一な硬化も可能となり得る。
【0228】
従来技術に記載の付加製造方法における構成材料として推奨されている組成物及びスラリーの多くは、より大きいサイズの分散粒子のため半透明ではなく、むしろ不透明である。
【0229】
本明細書に記載のプリンティングゾルは、紫外線/可視光線を通過させる。
【0230】
40重量%のジルコニア系粒子を含有するプリンティングゾルの透過率パーセントは、420nmにおいて1cmの試料セル中(すなわち、分光光度計は1cmの路長を有する)で測定するとき、典型的には、少なくとも5%である。いくつかの実施例において、これらの同一条件下での透過率パーセントは、少なくとも7%、少なくとも10%であり、かつ最大20%若しくはそれよりも高く、最大15%、又は最大12%であり得る。40重量%のジルコニア系粒子を含有するプリンティングゾルの透過率パーセントは、600nmにおいて1cmの試料セル中で測定するとき、典型的には、少なくとも20%である。いくつかの実施例において、これらの同一条件下での透過率パーセントは、少なくとも30%、少なくとも40%であり、かつ最大80%若しくはそれよりも高く、最大70%、又は最大60%であり得る。プリンティングゾルは半透明であり、不透明ではない。いくつかの実施形態において、硬化されたグリーン体ゲル組成物もまた、半透明である。
【0231】
紫外線/可視光線の透過率は十分に高くなくてはならない。これは、ゲル組成物においてデジタルファイル入力の形状を十分に実現するため、過剰な構築を最小化するように、先に構築されたゲル組成物層に接着するゲル組成物層を形成するためである。「スライス厚」は、多くの場合、層を接着させるため、硬化の深度よりもわずかに小さい。「スライス厚」と硬化深度の差を最小化することは、解像度を向上するために有益であり得る。
【0232】
更に、充填された放射線硬化性組成物、例えば、スラリー又はスリップは、典型的には、無充填の硬化性組成物に比べ、グリーン体強度の低下を来す。より小さい非会合の粒子は、典型的には、SLA方法において相互作用する2つの相に対し、より大きい表面積をもたらす。これにより、より頑健なグリーン体又はグリーン体ゲルを得ることができる。
【0233】
更に、ナノスケール粒子の使用により、理論的には、ナノスケール層をプリントできる可能性がある。これは、より大きな粒子では不可能である。例えば、50μmの粒子を有するスラリーで25μmの層厚を硬化させても、小さな層厚によって得られる忠実度の微細な実現は不可能である。これには、部品を構成する材料の解像度だけでなく、3Dプリントされた部品内で実現され得る空隙及び内部構造も含まれる。これにはまた、超薄壁を実現する能力も含まれる。
【0234】
同様に、均一に分散されたナノスケール粒子を有するゾルでは、より大きな粒子を有するゾルに比べ、理論的には、より滑らかな表面仕上げを得ることが可能となる。
【0235】
最後に、より小さいナノ粒子により、より均一で、より高密度の、最終的な焼結部品が得られる可能性がもたらされ、いくつかの用途では重要な、機械的及び視覚的性能により優れた部品が得られる。
【0236】
酸性ゾルの使用もまた、有益であることが多い。ナノジルコニア粒子を含有する酸性ゾルは、中性又は塩基性ゾルよりも安定であることが判明した。ゾルに含有された粒子の粒塊又は凝集の形成のリスクが、低減される。しかしながら、ゾルは酸性度が高すぎてはならない。ゾルの酸性度が高すぎると、粒子の粒塊又は凝集の形成のリスクが高まる場合がある。
【0237】
上記の範囲内の粘度を有するプリンティングゾルは、例えば、薄いノズル及び管を通して容易に加工できるため、有益である。製造装置のノズル若しくは管、又は構成材料自体のいずれも加熱する必要はない。
【0238】
典型的には、フィラー粒子を含有する反応混合物(例えばスラリー又はスリップ)は、無充填の反応混合物よりも顕著に粘性である。これにより、材料が定位置に流動するためにより時間を要するため、典型的には、構築時間はより長くなり、材料を定位置に移動させるために更なる機械的作動操作が必要となり、更に、物品の造形が終了した際に、(特にグリーン体強度がより低いことを考慮すると)部品の表面から材料を除去するのが困難となる。
【0239】
反応混合物の粘度を低減すると、向上した性能及び効率をもたらすことができる。
【0240】
低粘度ゾルにより、歯列矯正ブラケット上の狭いワイヤスロットの場合のように、内部チャネル又は深いスロットから余剰材料を簡便に除去することもまた可能となる。より高粘度のゾルは、機械的強度がより低いグリーン体との組み合わせで、チャネルの小さな解像度を十分に実現し、かつくぼみを浅くする可能性がある。
【0241】
本明細書に記載の範囲の粘度を有するゾルは、例えば、次の層を作製するための硬化領域の上に容易に流れ込めるため、有益であり得る。
【0242】
このゾルは、先の硬化層を、より密接に浸潤させることができるため、より良好な層の接着性を促進することもできる。
【0243】
プリンティングゾルは、典型的には、小さい、複雑な特徴を形成することができるような、十分に低い粘度を有する。多くの実施形態において、プリンティングゾルは、ニュートン流体又はほぼニュートン流体様の粘度を有する。すなわち、粘度は、剪断速度には非依存的である、又は、剪断速度にわずかな依存性のみを有する。
【0244】
粘度は、反応混合物の固体の割合、ジルコニア系粒子のサイズ、溶媒媒体の組成、場合により含まれる非重合性表面改質剤の有無、及び重合性材料の組成に応じて変動し得る。
【0245】
ジルコニア系粒子の低粘度と小粒径との組み合わせにより、重合前に、プリンティングゾルを有利に濾過することができる。反応混合物は、多くの場合、ステレオリソグラフィ加工処理の前に濾過される。濾過は、光透過率及び強度等の、ゲル組成物の特性及び焼結物品の特性に悪影響を及ぼす可能性がある破片及び不純物を除去する上で有益であり得る。好適なフィルターは、多くの場合、孔径が0.22μm、0.45μm、1μm、2μm、又は5μmである。伝統的なセラミックプリンティング組成物は、粒径及び/又は粘度が原因となり、容易には濾過できなかった。
【0246】
いくつかの実施形態において、プリンティングゾルの粘度は、少なくとも2mPa・秒、少なくとも5mPa・秒、少なくとも10mPa・秒、少なくとも25mPa・秒、少なくとも50mPa・秒、少なくとも100mPa・秒、又は少なくとも150mPa・秒である。粘度は、最大200mPa・秒、最大100mPa・秒、最大50mPa・秒、最大30mPa・秒、又は最大10mPa・秒であり得る。例えば、粘度は、2〜200mPa・秒、2〜100mPa・秒、2〜50mPa・秒、2〜30mPa・秒、2〜20mPa・秒、又は2〜10mPa・秒の範囲であり得る。
【0247】
本明細書に記載のプリンティングゾルをステレオリソグラフィに基づく方法で加工処理することにより、プリントされた部品の表面から、過剰な非重合材料を容易かつ効率的に除去することもできる。
【0248】
本明細書に記載の付加製造方法で用いるためのプリンティングゾルは、1種以上の溶媒を含む。
【0249】
溶媒の性質及び構造は、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0250】
特定の実施形態において、溶媒(複数可)は、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
沸点:70℃超又は100℃超又は120℃超又は150℃超、
分子量:25〜300g/モル又は30〜250g/モル又は40〜200g/モル又は50〜175g/モル、
粘度:0.1〜50又は0.2〜10又は0.3〜5mPa・秒(23℃)、
水と混和性であること、
超臨界二酸化炭素又は液体二酸化炭素に可溶であること。
【0251】
沸点が70℃超又は100℃超又は150℃超の溶媒の使用は、方法中の溶媒の蒸発のリスクを低減するために有益であり得る。
【0252】
上記の範囲の分子量及び/又は粘度を有する溶媒の使用は、ゾルの粘度の調整に役立つため、有益であり得る。分子量サイズはまた、拡散定数と、いかに容易に溶媒を除去できるかと、に影響を及ぼし得る。
【0253】
異なる溶媒の混合物の使用は、粘度又は加工処理後の特性、例えばプリンティング後の過剰なゾルの除去を更に調整することが可能となるため、有益であり得る。
【0254】
溶媒は、ゾルに存在する他の構成成分を溶解させる、又は分散させることができなくてはならない。
【0255】
溶媒はまた、ゾルに存在する他の構成成分に対し、概ね非反応性でなくてはならない。
【0256】
溶媒はまた、セラミック物品の実現に必要な更なる加工処理工程中に、容易に除去可能でなくてはならない。
【0257】
更に、溶媒は、ゾルに存在する放射線硬化性構成成分の重合を阻害してはならない、又は、悪影響を及ぼしてはならない。
【0258】
この点において、重合性部分を有しない溶媒の使用が有益であり得る。
【0259】
溶媒の溶解能力又は特性を高めるため、溶媒は、典型的には、エーテル部分、アルコール部分又はカルボキシ部分等の、1つ以上の極性部分を有する。
【0260】
一実施形態によると、溶媒は、多くの場合、グリコール又はポリグリコール、モノエーテルグリコール又はモノエーテルポリグリコール、ジエーテルグリコール又はジエーテルポリグリコール、エーテルエステルグリコール又はエーテルエステルポリグリコール、カーボネート、アミド、又はスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)である。有機溶媒は、通常、1つ以上の極性基を有する。有機溶媒は、重合性基を有さない。すなわち、有機溶媒は、フリーラジカル重合を受けることが可能な基を含まない。更に、溶媒媒体の構成成分はいずれも、フリーラジカル重合を受けることが可能な重合性基を有さない。
【0261】
好適なグリコール又はポリグリコール、モノエーテルグリコール又はモノエーテルポリグリコール、ジエーテルグリコール又はジエーテルポリグリコール、及びエーテルエステルグリコール又はエーテルエステルポリグリコールは、多くの場合以下の式(I)のものである。
O−(RO)−R (I)
【0262】
式(I)中、各Rは、独立して、水素、アルキル、アリール、又はアシルである。好適なアルキル基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なアリール基は、多くの場合、6〜10個の炭素原子を有し、また、多くの場合、フェニル、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニルである。好適なアシル基は、多くの場合、式−(CO)R(式中、Rは、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、2個の炭素原子、又は1個の炭素原子を有するアルキルである)のものである。アシルは、多くの場合、アセチル基(すなわち、−C(O)CH)である。式(I)において、各Rは、典型的には、エチレン又はプロピレン等のアルキレン基である。変数nは、少なくとも1であり、また、1〜10、1〜6、1〜4、又は1〜3の範囲であり得る。
【0263】
式(I)のグリコール又はポリグリコールは、2つのR1基が水素である。グリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリプロピレングリコールが挙げられる。
【0264】
式(I)のモノエーテルグリコール又はモノエーテルポリグリコールは、第1のR1基が水素であり、かつ第2のR1基がアルキル又はアリールである。モノエーテルグリコール又はモノエーテルポリグリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0265】
式(I)のジエーテルグリコール又はジエーテルポリグリコールは、2つのR1基がアルキル又はアリールである。ジエーテルグリコール又はジエーテルポリグリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びペンタエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0266】
式(I)のエーテルエステルグリコール又はエーテルエステルポリグリコールは、第1のR1基がアルキル又はアリールであり、かつ第2のR1基がアシルである。エーテルエステルグリコール又はエーテルエステルポリグリコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、及びジエチレングリコールエチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0267】
他の好適な有機溶媒は、式(II)のカーボネートである。
【0268】
【化1】
【0269】
式(II)において、Rは、水素、又は1〜4個の炭素原子、1〜3個の炭素原子、若しくは1個の炭素原子を有するアルキル等のアルキルである。例としては、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが挙げられる。
【0270】
更に他の好適な有機溶媒は、式(III)のアミドである。
【0271】
【化2】
【0272】
式(III)において、基Rは、水素、アルキルである、又は、Rと結合し、Rに結合したカルボニル及びRに結合した窒素原子を含む、5員環を形成する。基Rは、水素、アルキルである、又は、Rと結合し、Rに結合したカルボニル及びRに結合した窒素原子を含む、5員環を形成する。基Rは、水素又はアルキルである。R、R、及びRに好適なアルキル基は、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、1〜3個の炭素原子、又は1個の炭素原子を有する。式(III)のアミド有機溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、及びN−エチル−2−ピロリドンが挙げられる。
【0273】
使用可能な溶媒の具体例としては、以下が挙げられる:モノアルコール(例えばC2〜C8アルコールで、第一級、第二級及び第三級アルコールを含む)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールエチルエーテル(Carbitol(登録商標))、1−メトキシ−2−プロパノール、N−メチルピロリドンアセトニトリル、クロロベンゼン、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、及びこれらの混合物。
【0274】
以下の溶媒が好ましい場合がある:エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、N−メチルピロリドン、ジエチレングリコールエチルエーテル、及びこれらの混合物。一部の状況において、好適な溶媒としてはまた、複数の低沸点アルコール(100℃未満、メタノール、エタノール、プロパノール等)及びこれらの組み合わせ、又は好ましくは、上記の同一の溶媒(複数可)も挙げることができる。
【0275】
溶媒(複数可)は、典型的には、以下の量で存在する:
下限量(Lower amount):少なくとも25又は少なくとも30又は少なくとも35重量%、
上限量(Upper amount):最大70又は最大65又は最大60重量%、
範囲:25〜70又は30〜65又は35〜60又は35〜55又は35〜50重量%
(ここで、重量%は、プリンティングゾルの重量に対するものである)。
【0276】
一実施形態において、本明細書に記載の付加製造方法で用いるためのプリンティングゾルは、ナノサイズのジルコニア粒子を含む。
【0277】
ナノサイズのジルコニア粒子の性質及び構造は、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0278】
プリンティングゾルは、好ましくは、特定の正方晶相含量を有するジルコニア微結晶と、特定の立方晶相含量を有するジルコニア微結晶を含むゾルと、を含む。
【0279】
特定の実施形態において、ナノサイズのジルコニア粒子(複数可)は、以下のパラメータ又は特色のうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
XRDによる一次粒径(直径):2〜50又は2〜20nm又は2〜15又は4〜15nm、
本質的に球状、立方体様、又は球状及び立方体様の混合であること、
非会合であること、
結晶性であること、
無機着色剤によってコーティングされていないこと。
【0280】
「本質的に球状」とは、粒子の形状が球体に近いという意味である。この粒子は、ミリング加工方法から生じ得る鋭い縁を含まない。
【0281】
ナノサイズのジルコニア粒子は、以下の特色のうちの少なくとも1つ以上又は全てを特徴とし得る:
ZrO含量:70〜100モル%又は80〜97モル%、
HfO含量:0〜4.5モル%又は0〜3モル%又は0.1〜2.8モル%、
、CeO、MgO、CaO、La又はこれらの組み合わせから選択される、0〜30モル%又は1.5〜16モル%又は2〜10モル%又は2〜5モル%の量の安定剤、
Al含量:0〜1モル%又は0.005〜0.5モル%又は0.01〜0.2モル%。
【0282】
一実施形態によると、ナノサイズのジルコニア粒子の特徴は以下のとおりである:ZrO含量:70〜98.4モル%;HfO含量:0.1〜2.8モル%;Y含量:1.5〜20モル%。
【0283】
ナノサイズのジルコニア粒子は、金属塩水溶液又は懸濁液(例えばジルコニウム塩、イットリウム塩)の水熱処理の工程を含む方法によって得ることができる、又は、得ることが可能である。このような方法は、国際公開第2013/055432号(3M)に記載されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0284】
重量%に関しては、ゲル組成物の形成に用いられるプリンティングゾルは、典型的には、プリンティングゾルの総重量に基づいて、20〜70重量%のジルコニア系粒子を含有する。ジルコニア系粒子の量は、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%であり得、かつ最大55重量%、最大50重量%、又は最大45重量%であり得る。いくつかの実施形態において、ジルコニア系粒子の量は、プリンティングゾルの総重量に基づいて、25〜55重量%、30〜50重量%、30〜45重量%、35〜50重量%、40〜50重量%、又は35〜45重量%の範囲である。
【0285】
体積%で表すと、ジルコニア系粒子の量は以下のとおりである:
下限量(Lower amount):少なくとも2又は少なくとも4又は少なくとも5体積%、
上限量(Upper amount):最大25又は最大18又は最大16体積%、
範囲:2〜25又は4〜18体積%又は5〜16体積%、
(ここで、体積%は、プリンティングゾルの体積に対するものである)。
【0286】
従来技術(例えば米国特許第7,927,538(B2)号)に記載の、ジルコニアを含有するスラリー又はスリップに比べ、本明細書に記載のプリンティングゾルは、ジルコニア粒子を、同程度に低体積含量でのみ含有する。これにより、ゾルを、より容易な加工処理に寄与し得る、所望の低粘度に調整するのが容易になる。これにより、本明細書で後述するように、後に所望の寸法に焼結可能な、拡大された状態の三次元物品の製造もまた可能となり得る。
【0287】
本明細書に記載のプリンティングゾルは、有機マトリックスの一部である、又は、有機マトリックスを形成する、1種以上の放射線硬化性モノマーを含む。
【0288】
プリンティングゾル中に存在する放射線硬化性モノマーは、第1、第2、第3等のモノマーとして記載する場合がある。
【0289】
放射線硬化性モノマー(複数可)の性質及び構造は、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0290】
重合の際に、放射線硬化性モノマーは、均質に分散されたナノサイズのジルコニア粒子と共にネットワークを形成する。
【0291】
一実施形態によると、本明細書に記載のプリンティングゾルは、第1のモノマーとして重合性表面改質剤を含有する。
【0292】
表面改質剤は、ゾルに含有されたジルコニア粒子の、同じくゾル中に存在する有機マトリックス材料との相溶性の向上に役立ち得る。
【0293】
表面改質剤は、式A−B(式中、A基はジルコニア系粒子の表面に結合することができ、かつB基は放射線硬化性である)によって表わすことができる。
【0294】
基Aは、吸着、イオン結合の形成、共有結合の形成、又はこれらの組み合わせによってジルコニア系粒子表面に結合することができる。
【0295】
基Aの例としては、酸性部分(カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基及びこれらのアニオン等)及びシランが挙げられる。
【0296】
基Bは、放射線硬化性部分を含む。
【0297】
基Bの例としては、ビニル、特にアクリル部分又はメタクリル部分が挙げられる。
【0298】
好適な表面改質剤は、重合性カルボン酸及び/又はこれらのアニオン、重合性スルホン酸及び/又はこれらのアニオン、重合性リン酸及び/又はこれらのアニオン、並びに重合性シランが挙げられる。好適な表面改質剤は、例えば、国際公開第2009/085926号(Kolbら)に更に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0299】
ラジカル重合性表面改質剤の例は、酸性部分又はそのアニオン、例えばカルボン酸基を含む、重合性表面改質剤である。
【0300】
例示的な酸性ラジカル重合性表面改質剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、及びモノ−2−(メタクリルオキシエチル)スクシネートが挙げられる。
【0301】
例示的なラジカル重合性表面改質剤は、ヒドロキシル含有重合性モノマーの、無水コハク酸、無水マレイン酸及び無水フタル酸等の環式無水物との反応生成物であり得る。例示的な重合性ヒドロキシル含有モノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、及びヒドロキシブチルメタクリレートが挙げられる。アクリルオキシ及びメタクリルオキシ官能性ポリエチレンオキシド、並びにポリプロピレンオキシドもまた、重合性ヒドロキシル含有モノマーとして用いてもよい。
【0302】
極性と反応性の両方をジルコニア含有ナノ粒子に付与するための例示的なラジカル重合性表面改質剤は、モノ(メタクリルオキシポリエチレングリコール)スクシネートである。
【0303】
ラジカル重合性表面改質剤の別の例は、重合性シランである。
【0304】
例示的な重合性シランとしては、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、又はアクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン;3−(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシランとして、及び3−(アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシシラン);メタクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン又はアクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン(例えば、3−(メタクリルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン);メルカプトアルキルトリアルコキシルシラン(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン);アリールトリアルコキシシラン(例えば、スチリルエチルトリメトキシシラン);ビニルシラン(例えば、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン)が挙げられる。
【0305】
表面改質剤は、従来の技術を用いて、ジルコニア系粒子に加えることができる。表面改質剤は、ジルコニア系ゾルからのカルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部のいずれかの除去の前又は後に加えることができる。表面改質剤は、ジルコニア系ゾルからの水の除去の前又は後に加えることができる。有機マトリックスは、表面改質の前又は後に、又は表面改質と同時に加えることができる。表面改質剤を加える各種の方法は、例えば、国際公開第2009/085926号(Kolbら)に更に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0306】
表面改質反応は、室温(例えば、20℃〜25℃)で、又は高温(例えば、最大95℃)で実施することができる。表面改質剤がカルボン酸等の酸である場合、ジルコニア系粒子は、典型的には、室温で表面改質することができる。表面改質剤がシランである場合、ジルコニア系粒子は、典型的には、高温で表面改質される。
【0307】
第1のモノマーは、重合性表面改質剤として機能することができる。複数の第1のモノマーを用いることができる。第1のモノマーは、唯一の表面改質剤とすることができる、又は、1種以上の他の非重合性表面改質剤と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、第1のモノマーの量は、重合性材料の総重量に基づいて少なくとも20重量%である。例えば、第1のモノマーの量は、多くの場合、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、又は少なくとも40重量%である。第1のモノマーの量は、最大100重量%、最大90重量%、最大80重量%、最大70重量%、最大60重量%、又は最大50重量%であり得る。一部のプリンティングゾルは、重合性材料の総重量に基づいて、20〜100重量%、20〜80重量%、20〜60重量%、20〜50重量%、又は30〜50重量%の第1のモノマーを含有する。
【0308】
第1のモノマー(すなわち重合性表面改質剤)は、重合性材料中の唯一のモノマーとすることができる、又は、溶媒媒体に可溶な1種以上の第2のモノマーと組み合わせることができる。
【0309】
一実施形態によると、本明細書に記載のプリンティングゾルは、少なくとも1つ又は2つの放射線硬化性部分を含む1種以上の第2のモノマーを含む。特に、少なくとも2種の放射線硬化性部分を含む第2のモノマーは、ゲル形成工程中に、架橋剤(複数可)の働きをし得る。
【0310】
表面改質基を有しない任意の好適な第2のモノマーを、用いることができる。第2のモノマーは、ジルコニア系粒子の表面に結合可能な基を有しない。
【0311】
好結果の構築には、典型的には、ある程度のグリーン体ゲル強度並びに形状の解像度が必要とされる。架橋させる手法は、重合によってより強固なネットワークが形成されるため、多くの場合、より低いエネルギー線量で、より大きなグリーン体ゲル強度が実現できる。いくつかの実施例では、より高いエネルギー線量を適用し、非架橋系の層の接着を高めた。物品が首尾よく構築される一方で、より高いエネルギーが最終物品の解像度に影響を及ぼす場合が多く、特に、高度に半透明な材料の場合、光及び光と共に硬化深度が材料に更に貫入する可能性があり、過剰な構築を引き起こす。
【0312】
複数の重合性基を有するモノマーが存在すると、プリンティングゾルが重合される際に形成されるゲル組成物の強度を高める傾向がある。このようなゲル組成物は、ひび割れなしに、加工処理がより容易であり得る。複数の重合性基を有するモノマーの量は、グリーン体ゲルの可撓性及び強度を調整するために用いることができ、グリーン体の解像度及び最終物品の解像度を間接的に最適化することができる。
【0313】
光源が下方から適用される場合、例えば架橋の化学的作用を適用すると、層間の接着強度の増加の助けとなり得、その結果、硬化工程後に構築プラットフォームが引き上げられる際、新たに硬化された層は、構築物の残りの部分から分離されて透明なフィルム上に取り残される(これは構築の失敗とみなされる)のではなく、構築されつつある形状と共に移動することが見出された。
【0314】
好結果の構築は、材料が、構築トレイフィルムに対してよりも、先に硬化された層に対して良好に接着し、三次元構造体を一度に1層増大させる際のシナリオとして定義され得る。
【0315】
この性能は、理論的には、より高いエネルギー線量(より高い出力、又はより長い光暴露)の適用により達成可能であり、バルク材料に特有なある点までは、より強固な接着をもたらすことができる。しかしながら、光吸収添加剤が存在しない、かなり透明な系では、より高いエネルギー暴露が、最終的に「スライス厚」よりも著しく大きい硬化の深度をもたらし、部品の解像度が「スライス厚」の解像度よりも著しく大きい、過硬化状態を形成する。
【0316】
少なくとも2つの放射線硬化性部分を含む放射線硬化性構成成分を本明細書に記載のプリンティングゾルに加えることにより、解像度並びにグリーン体強度の最適化を促進し得る。
【0317】
グリーン体を十分に高密度のセラミックに変換した場合、グリーン体ゲルの増加した強度が、構築手順後の頑健性の助けとなる。
【0318】
すなわち、場合により含まれる第2のモノマーは、カルボン酸基又はシリル基を有さない。第2のモノマーは、多くの場合、極性モノマー(例えば、非酸性の極性モノマー)、複数の重合性基を有するモノマー、アルキル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物である。
【0319】
重合性材料の総合的な組成は、多くの場合、材料の重合体が溶媒媒体に可溶であるように選択される。有機相の均質性は、ゲル組成物中の有機成分の相分離を回避するために好ましい場合が多い。これによって、その後に形成されるエアロゲルにおいて、より小さくかつより均質な細孔(より狭いサイズ分布の細孔)が得られる傾向がある。更に、重合性材料の総合的な組成は、溶媒媒体との相溶性を調整するため、かつゲル組成物の強度、可撓性、及び均一性を調整するために選択することができる。更にまた、重合性材料の総合的な組成は、焼結前の有機物の燃焼特性を調整するために選択することができる。
【0320】
多くの実施形態において、第2のモノマーは、複数の重合性基を有するモノマーを含む。重合性基の数は、2〜6の範囲又はより多数であり得る。多くの実施形態において、重合性基の数は、2〜5又は2〜4の範囲である。重合性基は、典型的には、(メタ)アクリロイル基である。
【0321】
2個の(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレン/ポリプロピレンコポリマージアクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート変性カプロラクトンが挙げられる。
【0322】
3個又は4個の(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、商標表記TMPTA−NでCytec Industries,Inc.(Smyrna,GA,USA)より、また商標表記SR−351でSartomer(Exton,PA,USA)より市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、商標表記SR−444でSartomerより市販)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、商標表記SR−454でSartomerより市販)、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、商標表記SR−494でSartomerより市販)、トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート(例えば、商標表記SR−368でSartomerより市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(例えば、Cytec Industries,Inc.より、商標表記PETIAでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約1:1のもの、及び商標表記PETA−Kでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約3:1のものが市販)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、商標表記SR−295でSartomerより市販)、及びジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、商標表記SR−355でSartomerより市販)が挙げられる。
【0323】
5個又は6個の(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、これらに限定されるものではないが、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、商標表記SR−399でSartomerより市販)及びヘキサ官能性ウレタンアクリレート(例えば、商標表記CN975でSartomerより市販)が挙げられる。
【0324】
一部のプリンティングゾル組成物は、複数の重合性基を有する、重合性材料の総重量に基づいて0〜80重量%の第2のモノマーを含有する。例えば、量は、10〜80重量%、20〜80重量%、30〜80重量%、40〜80重量%、10〜70重量%、10〜50重量%、10〜40重量%、又は10〜30重量%の範囲であり得る。
【0325】
いくつかの実施形態において、場合により含まれる第2のモノマーは極性モノマーである。本明細書で使用する場合、用語「極性モノマー」は、フリーラジカル重合性基及び極性基を有するモノマーを指す。極性基は、典型的には、非酸性であり、また多くの場合、ヒドロキシル基、第一級アミド基、第二級アミド基、第三級アミド基、アミノ基、又はエーテル基(すなわち、式−R−O−R−(式中、各Rは、1〜4個の炭素原子を有するアルキレンである)のアルキレン−オキシ−アルキレン基を少なくとも1つ含有する基)を有するものが挙げられる。
【0326】
ヒドロキシル基を有する好適な場合により含まれる極性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド)、エトキシル化ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、Sartomer(Exton,PA,USA)より商標表記CD570、CD571、及びCD572で市販されているモノマー)、及びアリールオキシ置換ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシ−2−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)が挙げられる。
【0327】
第一級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。第二級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−tert−オクチル(メタ)アクリルアミド、及びN−オクチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。第三級アミド基を有する例示的な極性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、並びにN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0328】
アミノ基を有する極性モノマーとしては、各種のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。例としては、これらに限定されるものではないが、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0329】
エーテル基を有する例示的な極性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシル化アルキル(メタ)アクリレート;並びにポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、及びポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート等のポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)アクリレートは、ポリ(アルキレングリコール)(メタ)アクリレートと呼ばれることが多い。これらのモノマーは、ヒドロキシル基又はアルコキシ基等の任意の好適な末端基を有する場合がある。例えば、末端基がメトキシ基である場合、モノマーは、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートと呼ばれる場合がある。
【0330】
第2のモノマーとして使用可能な好適なアルキル(メタ)アクリレートは、直鎖構造、分枝構造、又は環状構造を有するアルキル基を有し得る。好適なアルキル(メタ)アクリレートの例としては、これらに限定されるものではないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−オクチルデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びヘプタデカニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0331】
極性モノマー及び/又はアルキル(メタ)アクリレートモノマーである第2のモノマーの量は、多くの場合、重合性材料の総重量に基づいて、0〜40重量%、0〜35重量%、0〜30重量%、5〜40重量%、又は10〜40重量%の範囲である。
【0332】
重合性材料の総量は、多くの場合、プリンティングゾルの総重量に基づいて、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%である。重合性材料の量は、プリンティングゾルの総重量に基づいて、最大30重量%、最大25重量%、最大20重量%、又は最大15重量%であり得る。例えば、重合性材料の量は、プリンティングゾルの総重量に基づいて、2〜30重量%、3〜20重量%、又は5〜15重量%の範囲であり得る。
【0333】
全体としては、重合性材料は、典型的には、重合性材料の総重量に基づいて、20〜100重量%の第1のモノマー及び0〜80重量%の第2のモノマーを含有する。例えば、重合性材料は、30〜100重量%の第1のモノマー及び0〜70重量%の第2のモノマー、30〜90重量%の第1のモノマー及び10〜70重量%の第2のモノマー、30〜80重量%の第1のモノマー及び20〜70重量%の第2のモノマー、30〜70重量%の第1のモノマー及び30〜70重量%の第2のモノマー、40〜90重量%の第1のモノマー及び10〜60重量%の第2のモノマー、40〜80重量%の第1のモノマー及び20〜60重量%の第2のモノマー、50〜90重量%の第1のモノマー及び10〜50重量%の第2のモノマー、又は60〜90重量%の第1のモノマー及び10〜40重量%の第2のモノマーを含む。
【0334】
一部の用途では、反応混合物中の重合性材料対ジルコニア系粒子の重量比を最小化することが有益な場合がある。これは、焼結物品の形成に先立って燃焼させる必要がある有機物の分解生成物の量を低減する傾向がある。重合性材料対ジルコニア系粒子の重量比は、多くの場合、少なくとも0.05、少なくとも0.08、少なくとも0.09、少なくとも0.1、少なくとも0.11、又は少なくとも0.12である。重合性材料対ジルコニア系粒子の重量比は、最大0.8、最大0.6、最大0.4、最大0.3、最大0.2、又は最大0.1であり得る。例えば、この比は、0.05〜0.8、0.05〜0.6、0.05〜0.4、0.05〜0.2、0.05〜0.1、0.1〜0.8、0.1〜0.4、又は0.1〜0.3の範囲内であり得る。
【0335】
特定の実施形態において、第2のモノマー(複数可)は、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
ゾルに含有される溶媒に可溶であること、
少なくとも1つ又は2つ又は3つの放射線硬化性部分を有すること、
ビニル、アクリル又はメタクリル部分から選択される放射線硬化性部分を有すること、
70〜5,000又は70〜1,000g/モル又は100〜500g/モルの分子量。
【0336】
上記の範囲の分子量を有する上記のような放射線硬化性構成成分(複数可)を用いると、所望の粘度を有するゾルの供給が容易になる。より低分子量の構成成分は、典型的には、高分子量構成成分よりも可溶性がより良好でもある。
【0337】
第2のモノマーが存在する場合、典型的には、以下の量で存在する:
下限量(Lower amount):少なくとも0.5又は少なくとも1又は少なくとも3重量%、
上限量(Upper amount):最大5又は最大10又は最大24重量%、
範囲:0.5〜24又は3〜10重量%
(ここで、重量%は、プリンティングゾルの重量に対するものである)。
【0338】
放射線硬化性モノマー(複数可)をナノ粒子に加える方法は、当該技術分野において既知である。放射線硬化性モノマー(複数可)は、例えば、ジルコニア含有ゾルからのカルボン酸及び/又はこれらのアニオンの少なくとも一部のいずれかの除去の前又は後に加えることができる。放射線硬化性構成成分は、例えば、ジルコニア含有ゾルからの水の除去の前又は後に加えることができる。
【0339】
放射線硬化性構成成分は、ゾルを含有するナノ粒子に直接加えることができる。加えられる放射線硬化性モノマー(複数可)は、後に重合及び/又は架橋され、ゲルを形成する。
【0340】
本明細書に記載のプリンティングゾルは、1種以上の光開始剤(複数可)を含む。
【0341】
光開始剤の性質及び構造はいずれも、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0342】
特定の実施形態において、光開始剤(複数可)は、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
ゾルに含有される溶媒に可溶であること、
放射線吸収:200〜500又は300〜450nmの範囲内。
【0343】
光開始剤は、プリンティングゾル中に存在する放射線硬化性構成成分(複数可)の硬化(curing又はhardening)反応を開始させる(start又はinitiate)ことができなくてはならない。
【0344】
以下の種類の光開始剤(複数可)が使用可能である:a)ラジカルが、ドナー化合物からの水素原子の引き抜きによって生成される二成分系;b)2つのラジカルが開裂によって生成される一成分系。
【0345】
タイプ(a)による光開始剤の例は、典型的には、脂肪族アミンと組み合わせた、ベンゾフェノン、キサントン又はキノンから選択される部分を含有する。
【0346】
タイプ(b)による光開始剤の例は、典型的には、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシム又はアシルホスフィンから選択される部分を含有する。
【0347】
例示的なUV反応開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(例えば、商標表記「IRGACURE 184」でCiba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)より入手可能)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例えば、商標表記「IRGACURE 2529」でCiba Specialty Chemicals Corp.より入手可能)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(例えば、商標表記「DAROCURE D111」でCiba Specialty Chemicals Corp.より入手可能)及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(例えば、商標表記「IRGACURE 819」でCiba Specialty Chemicals Corp.より入手可能)が挙げられる。
【0348】
光開始剤(複数可)は、典型的には、以下の量で存在する:
下限量(Lower amount):少なくとも0.01又は少なくとも0.05又は少なくとも0.1重量%、
上限量(Upper amount):最大0.5又は最大1又は最大3重量%、
範囲:0.01〜3又は0.01〜1重量%又は0.01〜0.5重量%、
(ここで、重量%は、プリンティングゾルの重量に対するものである)。
【0349】
本明細書に記載のプリンティングゾルは、1種以上の有機染料(複数可)も含み得る。
【0350】
有機染料(複数可)の性質及び構造は、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0351】
有機染料を加えることにより、本明細書に記載の半透明のゾルの放射線を吸収する能力が向上され得ることが判明した。
【0352】
更に、有機染料の添加は、ゾル中の散乱光の透過率の抑制又は低減に寄与することが判明した。これは、付加製造方法から得られるセラミック物品の表面の精度又は細部の解像度の向上に役立つ場合が多い。
【0353】
特定の実施形態において、有機染料(複数可)は、以下のパラメータの全てのうちの少なくとも1つ、より多くを特徴とし得る:
ゾルに含有される溶媒に可溶であること、
放射線吸収:200〜500又は300〜450nmの範囲内、
800℃未満の温度で残渣を残さず燃焼可能であること、
50〜1,000g/モルの範囲の分子量を有すること。
【0354】
有機染料は、典型的には、アルカリ金属イオン(例えばLi、Na、K)、アルカリ土類金属イオン(例えばMg、Ca)、C、N、O、H、S、P、ハロゲン(F、Cl、Br)以外の元素又はイオンを含有しない。すなわち、有機染料分子は、典型的には、いかなる重金属イオン(例えば、40超又は45超の原子質量を有する金属イオン)も含有しない。
【0355】
使用可能な染料としては、アゾ基及び/若しくは芳香族(複素)環、又は非局在化したπ電子を有する他の系から選択される部分を含有するものが挙げられる。特に、食品の着色に有用な染料が有用であることが判明した。
【0356】
使用可能な染料(複数可)の具体例としては、リボフラビン(E101)、タートラジン(E102)、イサチン、アゾルビン(E122)及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0357】
有機染料(複数可)が存在する場合、以下の量で存在する:
下限量(Lower amount):少なくとも0.001又は少なくとも0.002又は少なくとも0.005重量%、
上限量(Upper amount):最大0.5又は最大0.2又は最大0.1重量%、
範囲:0.001〜0.5又は0.002〜0.2又は0.005〜0.1重量%
(ここで、重量%は、プリンティングゾルの重量に対するものである)。
【0358】
更なる実施形態によると、本明細書に記載のプリンティングゾルは、1種以上の阻害剤(複数可)を含む。
【0359】
阻害剤(複数可)の性質及び構造はいずれも、所望の結果が達成不能でない限り、特に限定されない。
【0360】
阻害剤は、プリンティングゾルの有効期間を延長し、望ましくない副反応の防止を助け、ゾル中の放射線硬化性構成成分(複数可)の重合を調整することができる。
【0361】
1種以上の阻害剤(複数可)をプリンティングゾルに加えることで、セラミック物品の表面の精度又は細部の解像度の向上に更に役立つ場合がある。
【0362】
特に、阻害剤(複数可)を本明細書に記載のプリンティングゾルに加えると、望ましくない散乱効果を弱める、又は、防止することにより、SLA方法の解像度及び精度を高め、並びにプリンティングゾルの有効期間を延長するのに役立ち得ることが判明した。
【0363】
阻害剤(複数可)は、ゾルに含有される溶媒に可溶でなくてはならない。使用可能な阻害剤は、多くの場合、フェノール部分を含む。
【0364】
使用可能な阻害剤(複数可)の具体例としては、以下が挙げられる:p−メトキシフェノール(MOP)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−フェノール(BHT:Ionol)、フェノチアジン、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシルラジカル(TEMPO)及びこれらの混合物。
【0365】
阻害剤(複数可)が存在する場合、典型的には以下の量で存在する:
下限量(Lower amount):少なくとも0.001又は少なくとも0.005又は少なくとも0.01重量%、
上限量(Upper amount):最大0.02又は最大0.05又は最大0.5、最大1重量%、
範囲:0.001〜1又は0.005〜0.05重量%
(ここで、重量%は、プリンティングゾルの重量に対するものである)。
【0366】
一実施形態によると、付加製造方法において構成材料として用いられる本明細書に記載のプリンティングゾルは、以下を特徴とする:
溶媒含量:25〜70又は40〜65重量%、−ゾルが、好ましくは70℃超の沸点を有し、かつアルコール及びグリコールエーテルから選択されること、
重合性材料含量:2〜30重量%、又は3〜20重量%又は5〜15重量%(ここで、重合性材料は、少なくとも1つの放射線硬化性部分と、酸性部分又はシリル部分とを有する第1のモノマーを含む)、
光開始剤含量:0.01〜3又は0.5〜1.5重量%、
ナノサイズの結晶性ジルコニア粒子含量:20〜70又は30〜50重量%、
阻害剤含量:0〜0.25又は0.001〜0.15重量%、
有機染料含量:0〜0.2又は0.01〜0.1重量%
(ここで、重量%は、プリンティングゾルの重量に対するものである)。
【0367】
本明細書に記載のゾルは、典型的には、以下の構成成分のうちの1つ以上又は全てを含まない:
0.1重量%超又は0.01重量%超の量のワックス(複数可)、
0.5重量%超又は0.1若しくは0.01重量%の量の不溶性顔料(複数可)、
0.5重量%超又は0.1若しくは0.01重量%の量のN,N−ジアルキルアミン基を含む安定剤
(ここで、重量%は、プリンティングゾルの重量に対するものである)。
【0368】
本明細書に記載のゾルにそれらの構成成分を加えると、加工処理によって付加製造方法において問題の原因となり得る組成物がもたらされる場合がある。
【0369】
特に、溶媒に不溶な顔料(複数可)のような構成成分は、例えば、光散乱のため、問題の原因となり得る場合がある。
【0370】
本明細書に記載のゾルは、以下のように得ることができる。
【0371】
本明細書に記載のナノサイズ粒子を含有する出発ゾルを提供する。
【0372】
この出発ゾルに、以下の他の構成成分を加える:放射線硬化性構成成分(複数可)、光開始剤(複数可)、並びに所望により、任意に加えられる有機染料(複数可)、任意に加えられる阻害剤(複数可)、及び任意に加えられる無機着色剤(複数可)。
【0373】
ゾルの調製は、典型的には、望ましくない早期の重合を回避するため、安全な光条件下で実施する。
【0374】
ゾルは、典型的には、使用前に、容器(vessel)、瓶、カートリッジ又は容器(container)のような好適な器具に保存される。
【0375】
好適であることも判明したゾルは、例えば、ジルコニアを含む、エアロゲル、か焼物品及び結晶性物品、並びにこれらの製造方法に関する、国際公開第2013/055432号(3M)に記載されている。米国特許第7,429,422号(Davidsonら)はまた、使用可能なジルコニア系ゾルの製造方法を記載している。使用可能な更なるゾルは、2015年3月3日出願の米国特許出願公開第62/127,569号(3M)に記載されている。上記の参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0376】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得られた、又は、得ることが可能なセラミック物品も対象とする。一実施形態によると、セラミック物品は、歯科用又は歯科矯正セラミック物品である。
【0377】
特定の実施形態において、セラミック物品は、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
密度:理論密度の少なくとも約98.5(実施形態によっては、99、99.5、99.9、又は更には少なくとも99.99)、
ビッカース硬度:450MPa〜2,200MPa、又は500MPa〜1,800MPa.HV(2)、
相含量:正方晶相:0〜100重量%又は10〜100重量%;立方晶相:0〜100重量%又は50〜90重量%、
曲げ強度:450MPa〜2,200MPa、又は500MPa〜2,000MPa(ISO 6872による)、
半透明度:厚さ1mmを有する磨かれた試料についての測定で30%超、
x、y、z寸法のうちの少なくとも1つが少なくとも0.25又は少なくとも1mmであること。
【0378】
平均粒度は、多くの場合、75nm〜400nmの範囲又は100nm〜400nmの範囲である。粒度は、典型的には、400nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下、又は150nm以下である。この粒度が、焼結物品の高強度に寄与しているものと仮定される。
【0379】
本明細書に記載の方法によって得ることが可能な、又は、得られたセラミック物品は、多くの場合、長手方向に切断した場合、積層構造を示す。長手方向は、それによって付加製造方法が実施される方向を意味する。
【0380】
特定の実施形態において、セラミック物品は、以下の特色のうちの少なくとも1つ以上、場合によっては全てを特徴とし得る:
ZrO含量:70〜100モル%又は80〜97モル%、
HfO含量:0〜4.5モル%又は0〜3モル%又は0.1〜2.8モル%、
、CeO、MgO、CaO、La又はこれらの組み合わせから選択される、0〜30モル%又は1.5〜20モル%又は2〜10モル%又は2〜5モル%の量の安定剤、
Al含量:0〜1モル%又は0.005〜0.5モル%又は0.01〜0.2モル%、
任意に、Er、Tb、Mn、Bi、Nd、Fe、Pr、Co、Cr、V、Cu、Eu、Sm、Dy、Tb、好ましくはFe、Mn、Er、Pr、Tb及びこれらの組み合わせから選択される元素の酸化物を含むこと。
【0381】
セラミック物品は、異なった形状を有し得る。
【0382】
一実施形態によると、セラミック物品は、歯科用セラミック物品の形状、特に、歯科修復物(上記のような歯科用クラウン、ブリッジ、インレー、オンレー、べニア、インプラントの形状を含む)又は歯列矯正ブラケットの形状を有する。
【0383】
本発明の歯科用組成物に用いられる全ての構成成分は、十分に生体適合性でなくてはならず、すなわち、組成物は、生体組織中で毒性反応、有害反応、又は免疫反応を引き起こしてはならない。
【0384】
セラミック物品の作製は、典型的には、熱間静水圧圧縮成形工程(HIP)の適用を必要とすることがない。
【0385】
一実施形態によると、本明細書に記載のセラミック物品の製造方法は、以下の工程のうちのいずれか又は全てを含まない。
加工処理工程中に構成材料を70℃超の温度まで加熱する工程、
焼結方法中に圧力を加える工程。
【0386】
本明細書で言及した特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、それらの全容が参照により組み込まれる。本発明の範囲及び趣旨から逸脱のない、本発明への様々な改変及び変更が、当業者には明らかであろう。上の明細書、実施例及びデータが、本発明の組成物及び方法の製造及び使用について説明を提供する。本発明は、本明細書に開示の実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の多くの代替的実施形態が、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく実施できることを理解するであろう。
【0387】
下記の実施例は例示のために示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【0388】
本明細書に記載の本発明はまた、以下の実施形態も対象とする:
実施形態OD1:
セラミック物品の製造方法であって、方法が、
プリンティングゾルを提供する工程であって、プリンティングゾルが、ナノサイズのジルコニア粒子、放射線硬化性構成成分及び光開始剤系を含む工程と、
プリンティングゾルを付加製造方法における構成材料として加工処理する工程であって、ゲル状態である三次元物品を得る工程であって、三次元物品が体積Aを有する工程と、
ゲル状態である三次元物品に超臨界乾燥工程を適用する工程と、
熱処理工程を適用し、体積Fを有する、焼結された三次元セラミック物品を得る工程と、を含む方法。
【0389】
実施形態OD2:
ゲル状態の三次元物品の体積Aが、その焼結状態の三次元物品の体積Fの200%超である、OD1に記載の方法。
【0390】
実施形態OD1〜OD8に記載のプリンティングゾルは、本明細書の他のプリンティングゾルについての記載と同様に作製及び加工処理することができる。
【0391】
本発明はまた、三次元物品の製造方法にも関し、方法は、本明細書に記載のプリンティングゾルを、本明細書に記載の付加製造技術を使用又は適用することによって加工処理する工程を含む。
【0392】
本発明はまた、本明細書に記載の方法によって得ることが可能な、又は、得られたジルコニアゲル体も対象とし、ジルコニアゲル体は、好ましくは、ジルコニアエアロゲル体又はジルコニアキセロゲル体である。
【実施例】
【0393】
特に指示がない限り、全ての部及び百分率は重量に基づいており、全ての水は脱イオン水であり、全ての分子量は重量平均分子量である。更に、特に指示がない限り、全ての実験は周囲条件(23℃、1013mbar)で実施した。
【0394】
以下の実施例は例示のために示すものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0395】
【表1】
【0396】
方法
総細孔容積、平均連結細孔径及びBET表面積の測定法
総細孔容積及び平均細孔径は、N吸着等温線及びBET表面積分析によって分析した。直管に挿入するため、必要であれば、より大きい試料から試料約0.3〜0.5gを切断した。全ての試料を、分析前に100℃で1日超脱気した。次に、Quantachrome Autosorb IQ(Quantachrome Instruments(Florida,USA))を用い、12mmのセルでバルブ及びロッドなしで、試料をNガスの吸着及び脱着によって分析した。吸収データポイントは0.0003〜0.995P/P0で収集し、脱着ポイントは0.995〜0.05P/P0で収集する。分析を2回繰り返し(又は再現性が理想的でなかった場合は3回繰り返した)、平均した結果を報告した。比表面積Sを、BET法により算出した(計算に関する詳細10は、Autosorb−1操作説明書Ver.1.51IV.Theory and Discussion;Quantachrome Instruments,Inc.を参照)。総細孔体積Vliqは、細孔がその後液体吸着質で満たされると仮定することにより、単位元に近い相対圧力(1に最も近いp/p0)で吸着された蒸気の量に由来する(計算に関する詳細は、Autosorb−1操作説明書Ver.1.51IV.Theory and Discussion;Quantachrome Instruments,Inc.を参照)。平均細孔径(d)は、表面積(S)及び総細孔体積(Vliq)から算定される。総細孔容積及び平均細孔径は、密度汎関数理論法によって測定したものとして報告する。
【0397】
アルキメデス密度の測定法
測定は、密度測定キット(Mettler Instrument Corp.(Hightstown,NJ)の型番「ME 33360」)を用い、精密天秤(Mettler Instrument Corp.(Hightstown,NJ)の型番「AE 160」)で行った。この手順において、試料をまず空気中で秤量した(A)後、水に浸漬して(B)秤量した。水は蒸留し、脱イオン化した。湿潤剤(商標表記「TERGITOL−TMN−6」でDow Chemical Co.(Danbury,CT,USA)より入手)を1滴、水250mLに加えた。密度を、式ρ=(A/(A−B))ρ0(式中、ρ0は水の密度である)を用いて算出した。相対密度は、材料の理論密度(ρt)を参照することにより、算出することができる、ρrel=(ρ/ρt)100。
【0398】
セラミック物品の曲げ強度の測定法
曲げ強度は、ISO 6872(2008)に従って測定した。本発明に従い、試験片をプリントし、おおよその寸法が1mm×4mm×12mmのフレックスバーの形状に加工処理する。フレックスバーの大きい面の両方を、Beta,Grinder−Polisher(Buehler(Lake Bluff,IL))上の15ミクロン等級のダイヤモンドラップ仕上げフィルム(668X Diamond Lapping Film PSA,3M(St.Paul,MN))により、100rpmで稼働し、水で潤滑化して研磨し、表面仕上げした。フレックスバーの長さに沿った4つのへりを面取りした。すなわち、試料のへりに沿って45度の角度で斜角を形成した。スパン10.0mmの3点ビーム曲げ試験(3-point beam bend test)の構成を用いた。クロスヘッド試験速度は1mm/分とした。Instron 5954試験フレーム(Instron Corporation(Canton,MA))を利用した。最低5つの試料を測定し、平均強度を求めた。
【0399】
セラミック物品の半透明度の測定法
所望により、セラミック物品の半透明度は以下の手順によって評価することができる。本発明に記載のように、試験片をプリントし、おおよその寸法が厚さ1±0.03mm×直径13mmのディスクの形状に加工処理する。ディスクの平行な大きい面の両方を、Beta,Grinder−Polisher(Buehler(Lake Bluff,IL))上の15マイクロメートル等級のダイヤモンドラップ仕上げフィルム(668X Diamond Lapping Film PSA,3M(St.Paul,MN))により、100rpmで稼働し、水で潤滑化して研磨し、表面仕上げした。研磨した試料を、分光光度計(X−Rite Color i7(Grand Rapids,USA))で、反射率モードにおいて測定した。半透明度は、T=1−RB/RW(式中、RB=黒色基材上のセラミックディスクを通した反射率、かつRW=白色基材上の同一のディスクを通した反射率)によって求められる。より高い半透明度の値は、光の透過率がより高く、不透明度がより低いことを示す。最低5つの試料を測定し、平均半透明度を求めた。
【0400】
結晶構造及びサイズの方法(XRD分析)
所望により、セラミック物品の結晶構造は以下の手順によって評価することができる。乾燥したジルコニア試料をメノウ乳鉢及び乳棒を用い、手で磨砕する。十分量の試料を、顕微鏡のスライドガラス上の、両面接着テープを接着させた部分に、スパーテルで塗布する。スパーテルの刃で試料を接着剤に対して押し当て、試料をテープ上の接着剤に押し付ける。スパーテルの刃の端で試料領域をこすって過剰の試料を除去し、粒子の薄層を接着剤に付着させる。こすった後に残った、ゆるく接着した材料は、顕微鏡のスライドを硬い表面に対し強めにタップして除去する。同様に、鋼玉石(Linde 1.0μmのアルミナ研磨粉、ロット番号C062、Union Carbide(Indianapolis,IN))を調製して用い、X線回折計を装置による広がりについて較正する。
【0401】
X線回折走査を、反射配置、銅Kα放射線、及び散乱放射線の比例検出器レジストリを有するPhilips垂直回折計を用いて得る。回折計には、可変入射ビームスリット、固定回折ビームスリット、及び黒鉛回折ビームモノクロメータを取り付ける。調査スキャンを、刻み幅0.04度及び測定時間8秒間を用い、25〜55度の2シータ(2θ)で記録する。X線発生器の設定45kV及び35mAを用いる。鋼玉石標準物質のデータは、いくつかの個々の鋼玉石マウントの3つの別々の領域上で収集する。同様に、データは薄層試料マウントの3つの別々の領域上で収集する。
【0402】
観察された回折ピークは、International Center for Diffraction Data(ICDD)の粉末回折データベース(sets 1〜47,ICDD(Newton Square,PA,USA))内に収録された参照回折パターンとの比較により同定する。試料の回折ピークを、ジルコニアの立方晶/正方晶(C/T)形又は単斜晶(M)形のいずれかに帰属する。ジルコニア系粒子については、立方晶相の(111)ピーク及び正方晶相の(101)ピークが分離できないため、これらの相をまとめて報告する。各ジルコニア形態の量を相対的に評価し、最も強い回折ピークを有するジルコニアの形態に、相対強度値100を割り当てる。残りの結晶性ジルコニア形態の最も強い線を、最も強い線に対してスケールを変更し、1〜100の値を与える。
【0403】
鋼玉石に起因して観察された回折極大のピーク幅を、プロファイルフィッティングによって測定する。平均鋼玉石ピーク幅と鋼玉石ピーク位置(2θ)との関係を、これらのデータに多項式を当てはめることにより求め、鋼玉石試験範囲内の任意のピーク位置における装置幅の評価に用いる連続関数を得る。ジルコニアに起因して観察された回折極大のピーク幅を、観察された回折ピークのプロファイルフィッティングにより測定する。以下のピーク幅を、存在が認められたジルコニア相に応じて評価する:
立方晶/正方晶(C/T):(111)
単斜晶(M):(−111)、及び(111)
【0404】
Kα1及びKα2波長成分を伴うピアソンVIIピーク(Pearson VII peak)形状モデル、及び線形バックグラウンドモデルを、全ての測定に用いる。幅は、度の単位を有するピークの半値全幅(FWHM)として算出する。プロファイルフィッティングは、JADE回折ソフトウェア一式の機能を用いて実施する。試料ピーク幅は、同一の薄層試料マウントについて得られた3つの別々のデータ収集について評価する。
【0405】
試料のピークは、鋼玉石装置較正から得られた装置幅値の補間と、ラジアンの単位に変換された補正ピーク幅とにより、装置による広がりについて補正する。Scherrerの式を用い、一次結晶サイズを算出する。
微結晶サイズ(D)=Kλ/β(cosθ)
【0406】
Scherrerの式において、Kは形状因子(ここでは0.9)、λは波長(1.540598Å)、βは装置による広がりについての補正後に算出されたピーク幅(ラジアン単位)、かつθはピーク位置の半値(散乱角)に等しい。βは[算出されたピークFWHM−装置幅](ラジアンに変換されている)に等しい(式中、FWHMは半値全幅である)。立方晶/正方晶(C/T)平均微結晶サイズは、(111)ピークを用いた3つの測定の平均として測定する。すなわち、
C/T平均微結晶サイズ=[D(111)領域1+D(111)領域2+D(111)領域3]/3。
【0407】
単斜晶(M)微結晶サイズは、(−111)ピークを用いた3つの測定値と、(111)ピークを用いた3つの測定値と、の平均として測定する。
M平均微結晶サイズ=[D(−111)領域1+D(−111)領域2+
D(−111)領域3+D(111)領域1+D(111)領域2+D(111)領域3]/6
【0408】
立方晶/正方晶相(C/T)及び単斜晶相(M)の加重平均を算出する。
加重平均=[(%C/T)(C/Tサイズ)+(%M)(Mサイズ)]/100
【0409】
この式において、%C/Tは、ZrO粒子の立方晶及び正方晶微結晶含量によりもたらされたパーセント結晶化度に等しく、C/Tサイズは、立方晶及び正方晶微結晶のサイズに等しく、%Mは、ZrO粒子の単斜晶微結晶含量が寄与するパーセント結晶化度に等しく、かつMサイズは、単斜晶微結晶のサイズに等しい。
【0410】
光子相関分光法(PCS)の方法
所望により、粒径測定は、633nmの波長の光を有する赤色レーザーを装備した光散乱型粒径測定器(商標表記「ZETA SIZER−Nano Series,Model ZEN3600」でMalvern Instruments Inc.(Westborough,MA)より入手)を用いて実施する。各試料を、1平方センチメートルのポリスチレン試料キュベット中で分析する。試料キュベットに約1グラムの脱イオン水を充填した後、数滴(約0.1グラム)のジルコニア系ゾルを加える。各試料キュベット内の組成物(例えば、試料)は、組成物を清浄なピペット中に吸引し、かつ組成物を試料キュベット中に戻す操作を数回行うことによって混合する。次に試料キュベットを装置に入れ、25℃で平衡化する。装置のパラメータは以下のように設定する:分散屈折率1.330、分散粘度0.8872MPa−秒、材料屈折率2.10、及び材料吸収値0.10ユニット。次に、自動サイズ測定手順を実行する。粒径の最良の測定を得るため、装置は、レーザー光の位置及び減衰器の設定を自動的に調整した。
【0411】
光散乱型粒径測定装置は、試料をレーザーで照射し、粒子から散乱された光の強度変動を173度の角度で分析した。光子相関分光法(PCS)の方法を装置によって用い、粒径を算出する。PCSは、変動する光の強度を用いて液体中の粒子のブラウン運動を測定する。次に、粒径を、測定された速度で移動する球体の直径になるよう算出する。
【0412】
粒子によって散乱される光の強度は、粒子径の6乗に比例する。Z平均サイズ又はキュムラント平均は、強度分布から計算される平均であり、計算は、粒子が単峰性、単分散、及び球状であるという前提に基づいている。変動する光強度から計算される関連の関数は、強度分布及びその平均である。強度分布の平均は、粒子が球状であるという前提に基づいて計算される。Z平均サイズと強度分布平均の両方とも、より小さい粒子に対してよりも、より大きな粒子に対して、より感度が高い。
【0413】
体積分布は、所与のサイズ範囲内の粒子に対応する粒子の総体積の百分率をもたらす。体積平均サイズは、体積分布の平均に対応する粒子のサイズである。粒子の体積は直径の3乗に比例するため、この分布は、より大きな粒子に対しては、Z平均サイズよりも感度が低い。したがって、体積平均は、典型的には、Z平均サイズよりも小さい値となる。
【0414】
分散指数(DI)の測定法
分散指数は、光子相関分光法を用いて測定した体積平均サイズをXRDにより測定した加重平均微結晶サイズで除算したものに等しい。
【0415】
多分散指数(PI)の測定法
多分散指数は、粒子サイズ分布の幅の尺度であり、光子相関分光法を用いた強度分布のキュムラント解析においてZ平均サイズと共に算出される。0.1以下の多分散指数の値については、分布の幅は狭いとみなされる。0.5超の値については、分布の幅は広いとみなされ、粒径を十分に特徴付けるためには、Z平均サイズに頼るのは賢明ではない。代わりに、強度又は体積分布等の分布解析を用いて粒子を特徴付けるべきである。Z平均サイズ及び多分散指数の計算は、ISO 13321:1996 E(「Particle size analysis−Photon correlation spectroscopy」,International Organization for Standardization,Geneva,Switzerland)に規定されている。
【0416】
pH値の測定法
所望により、pH値の測定は、当業者に既知の手段で実施することができる。例えば、Metrohm(登録商標)826のような装置が使用可能である。
【0417】
固体重量%の測定法
固体重量%は、3〜6gの重量の試料を120℃で30分間乾燥することによって測定することができる。固体%は、湿潤試料の重量(すなわち、乾燥前の重量、重量湿潤)及び乾燥試料の重量(すなわち、乾燥後の重量、重量乾燥)から、以下の式を用いて算出することができる:固体重量%=100(重量乾燥)/重量湿潤
【0418】
酸化物含量の測定法
ゾル試料の酸化物含量は、「固体重量%の測定法」に記載のとおり固体含量%を測定した後、本項に記載のとおり、これらの固体の酸化物含量を測定することによって求めることができる。
【0419】
固体の酸化物含量は、熱重量分析測定法(商標表記「TGA Q500」でTA Instruments(New Castle,DE,USA)より入手)により測定する。固体(約50mg)をTGAに入れ、温度を900℃に設定する。固体の酸化物含量は、900℃まで加熱した後の残留重量に等しい。
【0420】
酸化物体積%の測定法
ゾル中の酸化物体積%は、まずメスフラスコを用いて既知の体積のゾルの質量を測定し、ゾルの密度ρをg/mLで求めることによって求めることができる。次に、酸化物重量%(上記の「酸化物含量の測定法」のとおり測定)を用い、酸化物体積%を以下のとおり計算する:酸化物体積%=(ρ×酸化物重量%)/(酸化物の密度)、(式中、値6.05g/mLを酸化物の密度として用いた)。
【0421】
粘度の測定法
所望により、粘度は、Brookfield Cone and Plate Viscometer(型番DV II、Brookfield Engineering Laboratories(Middleboro,MA,USA)より入手可能)を用いて測定することができる。測定値は、スピンドルCPE−42を用いて得られる。装置は、Brookfield Fluid I(192 1/秒(50RPM)における実測粘度が5.12mPa・秒(cp))で較正する。組成物を測定チャンバーに入れる。測定は、3〜4の異なるRPM(1分当たりの回転数)で行う。測定された粘度は、剪断速度によって顕著な影響を受けない。剪断速度は、3.84にRPMを乗算して算出する。報告する場合、粘度値は、トルクが範囲内にある最小剪断速度についてのものである。
【0422】
光透過率(%T)の測定法
所望により、光透過率は、Perkin Elmer Lambda 35 UV/VIS Spectrometer(Perkin Elmer Inc.(Waltham,MA,USA)より入手可能)を用いて測定することができる。透過率は、水を充填した10mmの石英キュベットを参照として、10mmの石英キュベット中で測定する。水性ZrOゾルは、1及び10重量%のZrOで測定することができる。
【0423】
ビッカース硬度
所望により、ビッカース硬度は、ISO 843−4に従い、下記の変更によって測定することができる:
試料の表面を、炭化ケイ素研削紙(P400及びP1200)を用いて研磨する。試験荷重は、試料の硬度レベルに調整する。用いた試験荷重は0.2kg〜2kgであり、各くぼみに15秒間加えた。最低10個の凹部を測定し、平均ビッカース硬度を求める。試験は、硬度試験器Leco M−400−G(Leco Instrumente GmbH)によって実施可能である。
【0424】
A 出発ゾルの調製
ゾルの組成は、モル%無機酸化物の単位で報告する。以下の水熱反応器を用いて、ゾルを調製した。水熱反応器は、15mのステンレス鋼編組平滑管ホース(内径0.64cm、壁厚0.17cm;商標表記「DuPont T62 CHEMFLUOR PTFE」でSaint−Gobain Performance Plastics(Beaverton,MI)より入手可能)から作製した。この管を、所望の温度に加熱したピーナッツオイルの浴槽中に浸漬した。反応管に続き、更なる3mの同一のステンレス鋼編組平滑管ホースと、0.64cmのステンレス鋼管(直径0.64cmかつ壁厚0.089cm)3mとの、材料を冷却するために氷水浴に浸漬したコイルと、背圧制御弁と、を用い、排出圧を3.45MPaに維持した。
【0425】
酢酸ジルコニウム溶液2,000gを脱イオン水1,889.92gと混合し、前駆溶液を調製した。酢酸イットリウム112.2gを、完全に溶解するまで、混合しながら加えた。得られた溶液の固体含量を重量測定(120℃/時間;強制対流式オーブン)により測定したところ、19.31重量%であった。脱イオン水65.28gを加え、最終濃度を19重量%に調整した。得られた溶液を、熱水反応器を通して11.48mL/分で揚送した。温度は225℃であり、平均滞留時間は42分間であった。澄明かつ安定なジルコニアゾルが得られた。
【0426】
得られたゾルを、膜カートリッジ(商標表記「M21S−100−01P」でSpectrum Laboratories Inc.(Rancho Dominguez,CA)より入手)を用い、限外濾過によって濃縮した(35〜45固体重量%)。濾過方法の媒体には、エタノールを用いた。これにより、ゾルの固体含量を増加させるのに次ぎ、エタノールによる水の部分的な交換がなされた。
【0427】
得られたジルコニア粒子のサイズは、光散乱測定(Z平均)により、15〜25nmの範囲であった。
【0428】
B ゾルの調製
適量のジエチレングリコールエチルエーテル(ゾル中のジルコニアの目的とする最終濃度、例えば50重量%に調整した)をエタノールゾルに加えることにより、ジエチレングリコールエチルエーテル系ゾルを作製した後、減圧下で穏やかに加熱してエタノール及び水を除去した。更に、2,2,2−MEEAA(2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸)を加え、粘度を調整した。
【0429】
C プリンティングゾルの調製
4.3重量%のアクリル酸、2.2重量%のヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、0.08重量%の光開始剤(Irgacure(登録商標)819)、0.02重量%の染料(Isatin:1H−インドール−2,3−ジオン)及び0.02重量%の阻害剤(MOP)をゾルに加えた。
【0430】
【表2】
【0431】
C プリンティングゾルの加工処理
C1 平坦な直方体の製造
プリンティングゾルを以下のとおり加工処理した:
ゾルを、市販のSLA/DLPプリンター(Rapidshape S50(Heimsheim,Germany))の作業トレイに注いだ。
【0432】
以下の条件を適用した:
硬化光波長:405nmの光、
照射時間:2秒間、
層厚:50μm、
プリンティング手順:材料GP101用の標準パラメータセットを用いた(ソフトウェア:Rapidshape用Netfabb Professional5.2 64bit)。
【0433】
得られた試料をUV光炉(Heraeus(Germany))中で60秒間後硬化させ、空気中に保存した(図1A)。
【0434】
以下の超臨界条件を適用し、試料を乾燥した:
液体:二酸化炭素、
圧力:200bar、
温度:100℃、
継続時間:40時間。
【0435】
超臨界乾燥工程実施後に得られた試料を、図1Bに示す。
【0436】
試料を1035℃まで72時間加熱し、残存する有機成分を燃焼させた。この燃焼及び予備焼結工程後に得られた試料を、図1Cに示す。
【0437】
最後に、試料を1300℃で2時間焼結させた(図1D)。
【0438】
試料はひび割れを示さなかった。更に、試料は滑らかな表面を有していた。
【0439】
C2 立方体の製造
同一の方法により、直方体(異なる形状を有する)を製造した。
【0440】
全体的な体積収縮を視覚化するため、図2に、SLAプリンティング後の直方体(右)及び最終的な焼結後の直方体(左)を示す。
【0441】
D 体積収縮率の測定
約40重量%のジルコニアナノ粒子、アクリレート構成成分及び光開始剤を含有するゾルを、矩形の型に入れて成形し、光硬化させた。試料は、寸法が75×44×35mmであった。
【0442】
試料を上記のとおり超臨界乾燥し、再測定した。この工程の収縮率は、主として、マトリックス構成成分(アクリレート)の量及び性質によって決まる。
【0443】
次の工程で、有機成分を燃焼させ、試料を1035℃で70時間予備焼結させた。この工程の収縮は、主として、有機含有量、ジルコニアの含量及びグリーン体の均質性によって調節される。この工程において、主要な収縮が起こる。
【0444】
最終工程において、試料を1300℃で2時間、最終密度が得られるまで焼結させた。
【0445】
最終的な総収縮率は、それぞれ、線収縮率が約53%、体積収縮率が90%である。体積収縮率、線収縮率及び密度の値を、表2に示す。相対体積及び相対的長さは、100にスケーリングした体積Fを基準として算出した。
【0446】
【表3】
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[15]に記載する。
[1]
セラミック物品の製造方法であって、
プリンティングゾルを提供する工程であって、前記プリンティングゾルが、溶媒、ナノサイズ粒子、一又は複数の放射線硬化性モノマー及び光開始剤を含み、前記プリンティングゾルが、23℃において500mPa・秒未満の粘度を有する工程と、
前記プリンティングゾルを付加製造加工における構成材料として加工処理し、ゲル状態である三次元物品を得る工程であって、前記三次元物品が体積Aを有する工程と、
ゲル状態である前記三次元物品を、乾燥状態である三次元物品、すなわちエアロゲル又はキセロゲルに移行させる工程と、
熱処理工程を適用し、焼結された三次元セラミック物品を得る工程であって、前記セラミック物品が体積Fを有する工程と、を含み、
ゲル状態の前記三次元物品の体積Aが、その焼結状態の前記セラミック物品の体積Fの500%超である、方法。
[2]
ゲル状態である前記三次元物品の、乾燥状態である三次元物品への前記移行が、超臨界乾燥工程の適用により実施される、項目1に記載の方法。
[3]
前記付加製造加工が、ステレオリソグラフィプリンティングから選択される、項目1又は2に記載の方法。
[4]
前記付加製造加工が、
前記構成材料の層を表面上に提供する工程と、
作製される前記三次元物品の一部となる構成材料の前記層の複数部分を放射線硬化させる工程と、
前記前の層の前記放射線硬化された表面と接触している、前記構成材料の更なる層を提供する工程と、
前記三次元物品が得られるまで前記前の工程を繰り返す工程と、を含む、項目1〜3のいずれかに記載の方法。
[5]
前記付加製造加工工程中の前記構成材料を70℃超の温度まで加熱する工程と、
前記焼結工程中に圧力を加える工程と、
のうちのいずれか又は全てを含まない、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
[6]
前記プリンティングゾルが、以下の特色:
波長範囲420〜600nmにおいて、路長10mmについて半透明であることと、
路長10mmについての測定で、420nmにおいて少なくとも5%の透過率を示すことと、
pH値が1〜6であることと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、項目1〜5のいずれかに記載の方法。
[7]
前記プリンティングゾルが、以下の特色:
前記ナノサイズ粒子が、前記ゾルの重量に対して20〜70重量%の量で存在することと、
前記ナノサイズのジルコニア粒子の平均一次粒径が、最大50nmの範囲にあることと、
のうちの少なくとも1つ以上又は全てを特徴とする、項目1〜6のいずれかに記載の方法。
[8]
前記ナノサイズ粒子が、以下の特色:
結晶性であることと、
本質的に球状、立方状又はこれらの混合であることと、
非会合であることと、
ZrOを70〜100モル%の量で含むことと、
HfOを0〜4.5モル%の量で含むことと、
、CeO、MgO、CaO、La又はこれらの組み合わせから選択される安定剤を、0〜30モル%の量で含むことと、
Alを0〜1モル%の量で含むことと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、項目1〜7のいずれかに記載の方法。
[9]
前記プリンティングゾルが、一又は複数の有機染料を更に含む、項目1〜8のいずれかに記載の方法。
[10]
前記有機染料が、以下の特色:
前記ゾルの重量に対して0.001〜0.5重量%の量で存在することと、
200〜500nmの範囲で放射線吸収を示すことと、
100〜1,000g/モルの範囲の分子量を有することと、
前記溶媒に可溶であることと、
800℃未満の温度で残渣を残さず燃焼可能であることと、
原子質量が40超の重金属を含有しないことと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、項目1〜9のいずれかに記載の方法。
[11]
前記プリンティングゾルが、一又は複数の阻害剤を、好ましくは、前記ゾルの重量に対して0.001〜1重量%の量で更に含む、項目1〜10のいずれかに記載の方法。
[12]
一又は複数の前記放射線硬化性モノマーが、以下の特色:
式A−B(式中、Aは、酸性基、シラン基、アミン、アミド又はアルコール基を含み、かつBは、ビニル基を含む)によって表されることと、
前記プリンティングゾルの重量に対して2〜30重量%の量で前記プリンティングゾル中に存在することと、
のうちの少なくとも1つ又は全てを特徴とする、項目1〜11のいずれかに記載の方法。
[13]
前記プリンティングゾルが、以下の構成成分:
0.1重量%超の量の一又は複数のワックスと、
0.5重量%超の量の一又は複数の不溶性顔料と、
1重量%超の量の、100nm超の一次粒子径を有する粒子と
(ここで、重量%は、前記ゾルの重量に対するものである)のうちのいずれか又は全てを含まない、項目1〜12のいずれかに記載の方法。
[14]
項目1〜13のいずれかに記載の方法によって得られたセラミック物品であって、前記セラミック物品が、以下の特色:
密度:理論密度に対して98.5%超、
半透明度:厚さ1mmを有する磨かれた試料についての測定で30%超、
曲げ強度:ISO 6872に従い、少なくとも450MPa、
正方晶相の相含量:0〜100重量%、
立方晶相の相含量:0〜100重量%、
x、y又はz方向のいずれかの寸法:少なくとも0.25mm、
のうちのいずれか又は全てを特徴とする、セラミック物品。
[15]
前記セラミック物品が、歯科様物品又は歯科矯正物品の形状を有する、項目14に記載のセラミック物品。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3