【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によると、垂直共振器型面発光レーザが提供される。垂直共振器型面発光レーザは、第1の電気接点と、基板と、第1の分布ブラッグ反射器と、活性層と、第2の分布ブラッグ反射器と、第2の電気接点と、を備える。垂直共振器型面発光レーザは、0.95≦y≦1である、少なくとも40nmの厚さを有する少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層を備え、Al
yGa
(1−y)As層が少なくとも1つの酸化制御層によって分離される。
【0007】
用語「層」は、層が2つ以上の副層を含むことを排除するものではない。VCSELは、第1及び第2の電気接点によって供給される駆動電流を活性層の規定された領域に閉じ込めるための電流開口層を含む。VCSELは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は多数のAl
yGa
(1−y)As層を含む。Al
yGa
(1−y)As層は、DBR、又は例えば、電流開口層によって構成される。Al
yGa
(1−y)As層の厚さは、少なくとも40nm、好ましくは少なくとも50nm、より好ましくは少なくとも60nmである。Al
yGa
(1−y)As層の厚さは、最も好ましくは、所定の電流で駆動されたときにVCSELの発光波長の4分の1の範囲にある。Al
yGa
(1−y)As層のアルミニウム含有量は、95%よりも大きく、好ましくは98%よりも大きく、より好ましくは99%よりも大きく、最も好ましくは100パーセントである。Al
yGa
(1−y)As層は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の酸化制御層によって分離される。Al
yGa
(1−y)As層内部の酸化制御層の数は、特に、Al
yGa
(1−y)As層の厚さが40nmとVCSELの発光波長の4分の1との間の範囲にある場合は、4つ又は5つの酸化制御層に限定される。酸化制御層は、酸化制御層のない同一のアルミニウム含有量を有するAl
yGa
(1−y)As層と比較して、Al
yGa
(1−y)As層の酸化速度を低下させるようになされる。
【0008】
第1又は第2の分布ブラッグ反射器は、好ましくは少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層を含む。Al
yGa
(1−y)As層は、この場合、DBRの反射率に寄与する。
【0009】
酸化制御層の材料は、0≦x≦0.9であるAl
xGa
(1−x)Asを含み、又はそのようなAl
xGa
(1−x)Asから構成される。アルミニウム含有量の範囲は、好ましくは0.2〜0.7、より好ましくは0.4〜0.6である。純粋なガリウム砒素の酸化制御層は、比較的厚い酸化制御層を使用する場合、約800nmの発光波長を超えると吸収が増加するという欠点を有する。この影響は、薄い酸化制御層(約1nmの厚さ)の場合は無視できる。
【0010】
垂直共振器型面発光レーザは、好ましくは、アルミニウム含有量がy>0.99である少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層を含む。少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層は、好ましくは少なくとも2つの酸化制御層、より好ましくは正確に2〜5の酸化制御層によって分離される。酸化制御層の材料は、好ましくは0.4≦x≦0.6、より好ましくはアルミニウム含有量が約50%であるAl
xGa
(1−x)Asを含む。少なくとも第1の(底部)DBRの各低屈折率層は、アルミニウム含有量がy>0.99であるAl
yGa
(1−y)As層を含み、又はそのようなAl
yGa
(1−y)As層から構成され、少なくとも1つの酸化制御層を含む。第2のDBR、及び1つ又は複数の電流開口層は、アルミニウム含有量がy>0.99であるAl
yGa
(1−y)As層を含み、又はそのようなAl
yGa
(1−y)As層から構成され、少なくとも1つの酸化制御層を含むのがさらに有利である。電流開口層は、発光波長の2分の1又はその整数倍の厚さを有する。
【0011】
少なくとも1つの酸化制御層は、0.7nm〜3nm、好ましくは0.8nm〜2nm、より好ましくは0.9nm〜1.5mmの厚さを有する。少なくとも1つの酸化制御層(119、125b)の厚さは、Al
yGa
(1−y)As層の全厚さの3%〜10%を構成する。Al
yGa
(1−y)As層の全厚さは、酸化制御層によって分離されたAl
yGa
(1−y)As層のすべての副層の厚さ全体、及び酸化制御層の厚さによって決定される。
【0012】
電流開口層は、少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層を含む。電流開口層は、VCSELの発光波長の2分の1又はその整数倍の厚さを有する。電流開口層は、この場合、隣接するDBRの反射率に影響を及ぼさない。電流開口層は、電流開口層が隣接するDBRの反射率に寄与するように、さらにはDBRの一部となるようにVCSELの発光波長の4分の1又はその奇数倍の厚さを有するのが好ましい。
【0013】
垂直共振器型面発光レーザは、第1の電気接点と、基板と、第1の分布ブラッグ反射器と、活性層と、第2の分布ブラッグ反射器と、第2の電気接点と、を備える。垂直共振器型面発光レーザは、少なくとも2つの電流開口層を含み、電流開口層は、活性層の下又は上に配置される。少なくとも2つの電流開口層の両方が好ましくは活性層の下又は上に配置される。或は、少なくとも2つの電流開口層の一方を活性層の下に配置し、少なくとも2つの電流開口層のもう一方を好ましくは活性層の上に配置することが可能である。少なくとも2つの電流開口層の第1の電流開口層は、少なくとも2つの電流開口層の第2の電流開口層よりも活性層により近く配置される。より近くとは、この点において、層に垂直な層間の距離がより近いことを意味する。少なくとも2つの電流開口層の第1の電流開口層は、活性層と少なくとも2つの電流開口層の第2の電流開口層との間に配置されるのが好ましい。第1の電流開口層は、第2の電流開口層の第2の電流開口よりも大きなサイズを有する第1の電流開口を含む。電流開口のサイズは、電流開口層の酸化されていない部分によって与えられる。電流開口は、電流開口のサイズを直径によって規定することができるように、円形の形状を有する。或は、電流開口の形状は、楕円、矩形、三角形などである。電流開口の形状は、主としてVCSELのメサの形状及び酸化プロセスによって決定される。電流開口は、円形電流開口の場合、円の中心が共通の回転軸に沿って配置されるように共通の対称軸を含む。少なくとも2つの電流開口層のそれぞれは、好ましくは1つ又は複数の酸化制御層を有するAl
yGa
(1−y)As層を含む。Al
yGa
(1−y)As層の厚さは、40nm未満、例えば30nm、さらには20nmである。Al
yGa
(1−y)As層は、開口のサイズを精密なやり方で製造することができるように、異なるサイズを有する電流開口の製造又は処理を単純化する。或は、AlGaAs層の酸化は、AlGaAs層(傾斜アルミニウム含有量を有する層)又は異なるAl濃度のAlGaAs層内部にアルミニウム含有量の規定された変化を与えることによって制御される。また、少なくとも2つの電流開口層は、この場合、平均的なアルミニウム濃度又は95%未満のアルミニウム濃度を有するAlGaAs層を含む。異なる電流開口層の酸化幅の十分な制御を可能にし、それにより酸化制御層を有するAl
yGa
(1−y)As層が好ましいものとなるように、AlGaAs層内部のアルミニウム濃度は、非常に精密に制御される必要がある。第1及び第2の電流開口層は、VCSELの高い信頼性及び寿命が可能になるように、VCSELの動作中に、第1の電流開口のエッジでの高電流密度が回避される、又は少なくとも制限されるように配置される。第1及び第2の電流開口層は、好ましくは、第1又は第2のDBRの層構成に配置される。
【0014】
第1の電流開口を有する第1の電流開口層は、電荷キャリアの横方向広がりが回避されるように、好ましくは活性層の上側又は下側に、言い換えると活性層に近接して取り付けられる。第2の電流開口を有する第2の電流開口層は、第1の電流開口のエッジの電流密度がVCSELの動作中に100kA/cm
2未満となるように配置される。第1の電流開口のエッジでの電流(電流ピーキング)を制限することによって、VCSELの信頼性及び寿命が向上し、加えて、特に単一モードのVCSELにとって望ましくない高次のレーザモードのサポートを回避することができる。
【0015】
第2の電流開口、又はより一般的には最小のサイズを有する電流開口は、活性層に対して、好ましくはVCSELの発光波長の2分の1の整数倍に相当する距離に、より好ましくはVCSELの発光波長の2分の1の偶数倍に相当する距離に、最も好ましくはVCSELの発光波長の2分の1の6倍の距離に配置される。DBRの低屈折層と比較して高屈折層である活性層と、第2の電流開口との間の距離は、第2の電流開口を有する層に隣接する活性層の側の(支持層を含む)活性層内部の定在波パターンのノードと、第2の電流開口を含む第2の電流開口層内部の定在波パターンのノードとから得られる。最小のサイズを有する電流開口の酸化プロファイルは、光誘導を回避するためにテーパ付けされる。
【0016】
垂直共振器型面発光レーザは、好ましくは、以下の方法に従って製造される。本方法は、
第1の電気接点を設けるステップと、
基板を設けるステップと、
第1の分布ブラッグ反射器を設けるステップと、
活性層を設けるステップと、
第2の分布ブラッグ反射器を設けるステップと、
第2の電気接点を設けるステップと、
少なくとも2つの電流開口層を設けるステップであって、少なくとも2つの電流開口層が活性層の下又は上に配置される、ステップと、
少なくとも2つの電流開口層の第1の電流開口層を少なくとも2つの電流開口層の第2の電流開口層よりも活性層に近く配置するステップと、
第1の電流開口層に第1の電流開口を設けるステップと、
第1の電流開口よりも小さなサイズを有する第2の電流開口を第2の電流開口層に設けるステップと、
を有する。
【0017】
本方法のステップは、必ずしも上記の順番で行う必要はない。基板が、例えば、第1のステップで、第1の電気接点が第2のステップで設けられてもよい。第1及び第2の電流開口を設けるステップは、第1及び第2の電流開口層を設けるステップと、その後のステップでこれらの層を酸化させるステップと、を含む。第1及び第2の電流開口層は、上記及び下記のように副層及び酸化制御層を交互に堆積させることによって設けられる。酸化制御層の数、及び酸化制御層間の距離を使用して、酸化幅、したがって電流開口のサイズを制御する。或は、第1及び第2の電流開口層は、上記のように層内部で滑らかに変化するアルミニウム含有量又は異なるアルミニウム濃度を有する層を堆積させることによって設けられる。アルミニウム含有量の変化又はアルミニウム含有量は、各層における電流開口層の意図された酸化幅に適合される。或は、酸化プロセスは、同一のアルミニウム含有量を有する電流開口層によって行われる。異なる電流開口の酸化幅は、それぞれの酸化制御層に対して酸化開口部を引き続きエッチングすることによって制御される。電流開口の連続するエッチングを異なるアルミニウム含有量及び/又は酸化制御層と組み合わせることも可能である。第1の電流開口と第2の電流開口のサイズ間の差異は、円形開口を基準として、好ましくは直径で1μm〜6μmである。
【0018】
また、上記の及び以下の好ましい実施形態はすべて、第1の電流開口がより大きなサイズを有する、少なくとも第1及び第2の電流開口層を備えるVCSELに含まれる。
【0019】
VCSELは、電流開口を有する3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の電流開口層を備える。活性層に隣接する第1の電流開口層の側に配置されている電流開口層の少なくとも1つの電流開口のサイズは、第1の電流開口のサイズよりも小さい。電流開口のうちの2つ以上のサイズは、同じであってもよい。或は、すべての電流開口のサイズは、異なり、その場合、電流開口のサイズが活性層に垂直な方向に減少し、第1の電流開口が最大のサイズを有する。電流開口層は、活性層の方向に垂直な、2つの隣接する電流開口層間の距離が、すべての電流開口層について同じになるように、等距離で配置される。或は、電流開口層間の距離は、変わることが可能である。第1又は第2のDBRは、例えば、第1の電流開口を有する第1の電流開口層を構成する第1の低屈折率層を含む。第4の低屈折率層は、第2の電流開口を有する第2の電流開口層を構成し、第5の低屈折率層は、第3の電流開口を有する第3の電流開口層を構成する。第2の電流開口のサイズは、第3の電流開口のサイズよりも小さい。
【0020】
垂直共振器型面発光レーザは、テーパ付けされた酸化プロファイルを含む少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層、又は1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上のAl
yGa
(1−y)As層を備える。テーパ付けされた酸化プロファイルを有する少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層は、好ましくは少なくとも2つの酸化制御層を含む。少なくとも2つの酸化制御層は、少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層を少なくとも3つの副層に分離し、3つの副層の少なくとも1つが他の副層とは異なる厚さを有する。異なる厚さを有する副層は、他の副層と比較してより厚いことが好ましい。より厚い副層は、テーパ付けされた酸化プロファイルが酸化プロセス中に構築されるように、隣接する副層よりも速く酸化する。テーパ付けされた酸化プロファイルは、酸化プロセス中に酸化されないAl
yGa
(1−y)As層内部に最小の直径を意味するウェストラインを含む。テーパ付けされた酸化プロファイルのウェストラインは、所定の電気的な駆動電流で駆動されたときに垂直共振器型面発光レーザの定在波パターンのノードの範囲内に好ましくは配置される。ノードの範囲内とは、ウェストラインが定在波パターンの最大値よりもノードにはるかに近く配置されることを意味する。ノードとウェストラインとの間の距離は、好ましくは35nm未満、より好ましく25nm未満である。定在波パターンのノードの範囲内にテーパ付けされた酸化プロファイルのウェストラインを配置することは、厚いAl
yGa
(1−y)As層内部での定在波パターンの強い誘導が回避され、又は少なくとも低減するという利点を有する。そうした誘導は、通常、約30nm以下の厚さを有する薄い電流開口層を使用することによって回避され、又は制限される。
【0021】
第1又は第2の分布ブラッグ反射器は、複数のAl
yGa
(1−y)As層を含み、このAl
yGa
(1−y)As層が少なくとも1つの酸化制御層によって分離される。Al
yGa
(1−y)As層は、最大3つの酸化制御層を含む。Al
yGa
(1−y)As層は、冷却構造に取り付けられたときに、冷却構造に対する垂直共振器型面発光レーザ(100)の熱抵抗を低減させるように配置される。Al
yGa
(1−y)As層を含むDBRは、VCSEL及び冷却構造の構成に応じて頂部又は底部DBRである。最も一般的な構成は、頂部発光VCSELの場合の底部DBRである。Al
yGa
(1−y)As層の高いアルミニウム含有量は、結果として高い熱伝導率をもたらす。したがって、アルミニウム含有量は、好ましくは、できるだけ高く、例えば、100パーセントである。Al
yGa
(1−y)As層は、この場合、AlAs層である。
【0022】
Al
yGa
(1−y)As層の高いアルミニウム含有量は、VCSELの寄生容量を低減させるためにさらに使用される。したがって、第1又は第2の分布ブラッグ反射器は、複数のAl
yGa
(1−y)As層を含む。Al
yGa
(1−y)As層は、少なくとも1つの酸化制御層、好ましくは最大3つの酸化制御層によって分離される。Al
yGa
(1−y)As層を含むDBRは、VCSELの構成に応じて頂部又は底部DBRである。最も一般的な構成は、頂部発光VCSELの場合の頂部DBRである。
【0023】
第1及び第2の分布ブラッグ反射器は、複数の高屈折率層及び複数の低屈折率層を含み、低屈折率層がAl
yGa
(1−y)As層を含み、又はAl
yGa
(1−y)As層である。Al
yGa
(1−y)As層は、少なくとも1つの酸化制御層、好ましくは最大3つの酸化制御層によって分離される。
【0024】
第2の態様によると、レーザ素子が提供される。レーザ素子は、上記のいずれかの実施形態による少なくとも1つの垂直共振器型面発光レーザ、及び垂直共振器型面発光レーザを電気的に駆動するための電気的な駆動回路を備える。レーザ素子は、任意選択で、例えば、電池又は充電式電池装置のような電源をさらに備える。レーザ素子は、光センサデバイス、光データ・コミュニケーション・デバイスなどに結合される。
【0025】
第3の態様によると、垂直共振器型面発光レーザを製造する方法が提供される。本方法は、
第1の電気接点を設けるステップと、
基板を設けるステップと、
第1の分布ブラッグ反射器を設けるステップと、
活性層を設けるステップと、
第2の分布ブラッグ反射器を設けるステップと、
第2の電気接点を設けるステップと、
0.95≦y≦1である、少なくとも40nmの厚さを有する少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層を設けるステップであって、Al
yGa
(1−y)As層が少なくとも1つの酸化制御層によって分離される、ステップと、
を有する。
【0026】
本方法のステップは、必ずしも上記の順番で行う必要はない。基板が、例えば、第1のステップで、第1の電気接点が第2のステップで設けられてもよい。少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層は、第1及び/又は第2のDBRを設けるステップ内で設けられる。本方法は、任意選択で、少なくとも1つのAl
yGa
(1−y)As層である電流開口層を設ける追加のステップを有する。
【0027】
第4の態様によると、レーザ素子を製造する方法が提供される。本方法は、
上記のようなVCSELを設けるステップと、
電気的な駆動回路を設けるステップと、
任意選択で電源を設けるステップと、
を有する。
【0028】
請求項1乃至13に記載のVCSEL及び請求項15の方法は、特に、従属請求項に規定されたものと同様の及び/又は同一の実施形態を有することを理解されたい。
【0029】
また、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項とそれぞれの独立請求項との任意の組合せとすることができることを理解されたい。請求項5及び6の特徴は、例えば、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の特徴と組み合わされてもよい。請求項7又は8、11、12、及び13の特徴は、例えば、上記請求項のいずれか一項に記載の特徴と組み合されてもよい。請求項9の特徴は、例えば、請求項8の特徴と組み合わされてもよい。
【0030】
さらに有利な実施形態が以下で規定される。
【0031】
本発明のこれら及び他の態様は、以降に記載される実施形態を参照することによって明らかとなり、明瞭となるであろう。
【0032】
本発明は、添付図面を参照して実施形態に基づいて、例示によって記載される。