特許第6835751号(P6835751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835751アンモニアの燃焼のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835751
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】アンモニアの燃焼のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/34 20060101AFI20210215BHJP
   F02C 3/14 20060101ALI20210215BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   F23R3/34
   F02C3/14
   F02C7/22 A
【請求項の数】14
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-566676(P2017-566676)
(86)(22)【出願日】2016年6月20日
(65)【公表番号】特表2018-524544(P2018-524544A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2016064222
(87)【国際公開番号】WO2016207117
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年5月14日
(31)【優先権主張番号】1510999.4
(32)【優先日】2015年6月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲナディエ ブラト
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ヒューズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン メイ
(72)【発明者】
【氏名】イアン ウィルキンソン
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−031215(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082359(WO,A1)
【文献】 特開2012−255420(JP,A)
【文献】 特開2014−095370(JP,A)
【文献】 特表2009−504964(JP,A)
【文献】 特開2015−094496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/34−3/36
F02C 3/14
F02C 3/22
F02C 3/30
F02C 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃焼室は、制御された比率のアンモニアおよび水素ならびに酸素含有ガスを受け取り、アンモニアおよび水素を燃焼させることで燃焼生成物の中でも特に窒素酸化物を生成し、第2燃焼室は、さらに制御された比率の更なるアンモニアおよび水素ならびに更なる酸素含有ガスに加えて窒素酸化物を受け取り、その結果、窒素酸化物が燃焼し、窒素および水になる、アンモニアの燃焼方法であって、
− 第1燃焼室の燃焼生成物の窒素酸化物含有量を測定すること、および
− 第1燃焼室の燃焼生成物の測定された窒素酸化物含有量に従ってアンモニアおよび水素ならびに酸素含有ガスの比率を、アンモニアおよび水素ならびに酸素含有ガスが、供給された水素と反応して窒素および水のみを生成するのに必要な量を超える過剰のアンモニアと共に第2燃焼室13中に注入されるように制御すること
をさらに含み、
第2燃焼室からの排気ガスの一部が、排気ガス中に残っているアンモニアを燃焼させるために、第1燃焼室中に再循環されることを特徴とする、前記燃焼方法。
【請求項2】
第1燃焼室(2)での燃焼によるエネルギーを第1タービン(8)の作動によって回収し、第1燃焼室での燃焼により放出されたエネルギーを機械エネルギーに変換する、請求項1記載のアンモニアの燃焼方法。
【請求項3】
第2燃焼室(13)での燃焼によるエネルギーを第2タービン(16、22)の作動によって回収し、第2燃焼室での燃焼により放出されたエネルギーを機械エネルギーに変換する、請求項1記載のアンモニアの燃焼方法。
【請求項4】
第2燃焼室(13)からの排気ガスを第2タービン(22)に直接作用させることによって第2タービン(22)を作動させる、請求項3記載のアンモニアの燃焼方法。
【請求項5】
第2燃焼室(13)での燃焼によるエネルギーで熱交換器(15)中の水を加熱して蒸気により第2タービン(16)を駆動させることによって第2タービン(22)を作動する、請求項3記載のアンモニアの燃焼方法。
【請求項6】
熱が第2燃焼室(24)から、組み込まれた熱交換器によって回収される、請求項1または2記載のアンモニアの燃焼方法。
【請求項7】
制御された比率のアンモニア(3)および水素(4)ならびに酸素含有ガスを受け取るように連結された第1燃焼室(2)と、さらに制御された比率の更なるアンモニアおよび水素ならびに更なる酸素含有ガスに加えて第1燃焼室からの排気ガス(102)を受け取るように連結された第2燃焼室(13)と、を含む、アンモニア燃焼用システムであって、
− 第1燃焼室の燃焼生成物の窒素酸化物含量を測定するためのガス分析センサ(9)
− コントローラ(18)およびマスフローコントローラ(19、10、11、12)、ここでコントローラ(18)は、第1燃焼室の燃焼生成物の窒素酸化物の比率を示すガス分析センサ(9)からの測定値を受け取り、したがって、第1燃焼室の燃焼生成物の測定された窒素酸化物含有量に従ってアンモニアおよび水素ならびに酸素含有ガスの比率を制御して、アンモニアおよび水素ならびに酸素含有ガスが、供給された水素と反応して窒素および水のみを生成するのに必要な量を超える過剰のアンモニアと共に第2燃焼室(13)中に注入されるように、マスフローコントローラ(19、10、11、12)を制御すること
をさらに含
第2燃焼室からの排気ガスの一部が、排気ガス中に残っているアンモニアを燃焼させるために、第1燃焼室中に再循環されることを特徴とする、前記システム。
【請求項8】
第1燃焼室からの排気ガス(102)を受け取り、機械的出力を生成しかつ排気ガスを第2燃焼室(13)に供給するように連結された第1タービン(8)をさらに含む、請求項記載のシステム。
【請求項9】
第2燃焼室からの排出ガスを受け取るように連結された第2タービン(22)をさらに含む、請求項または記載のシステム。
【請求項10】
第2燃焼室(13)からの排気ガスを第2タービン(22)に直接作用させることによって第2タービン(22)を作動させる、請求項記載のアンモニアの燃焼システム。
【請求項11】
第2燃焼室からの排出ガスを受け取るように連結された熱交換器(15)をさらに含み、それによって水を加熱して蒸気を生成し、第2タービン(16)を駆動することをさらに含む、請求項または記載のシステム。
【請求項12】
熱交換器が第2燃焼室に組み込まれた、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
第2燃焼室(13)からの排気ガスの一部を第1燃焼室(2)に戻して再循環するように構成された再循環ライン(20)を含む、請求項から12までのいずれか1項記載のアンモニア燃焼用システム。
【請求項14】
再循環された排出ガスの一部と吸気酸素含有ガスとを混合するように再循環ラインがミキサー(26)に連結された、請求項13記載のアンモニア燃焼用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アンモニアはエネルギー蓄積材として使用され得る。アンモニアは、後の燃焼のために合成されかつ貯蔵され得る。ガスタービン中でのアンモニア燃焼により、化学的に蓄積されたエネルギーが機械エネルギー中に放出され得る。しかしながら、アンモニアの燃焼により、窒素酸化物NOxが生成し、これは排出目標に到達するためには、排気ガスから除去されるべきである。
【0002】
したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された装置および方法を提供する。このような装置および方法は、アンモニア燃焼中の窒素酸化物NOxの排出を低減または排除する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、熱交換器で水を加熱して第2タービンを蒸気で駆動するアンモニアの燃焼システムを示す。
図2図2は、第2燃焼室からの排気ガスを第2タービンに直接作用させるアンモニアの燃焼システムを示す。
図3図3は、熱交換器が第2燃焼室に組み込まれたアンモニアの燃焼システムを示す。
図4図4は、再循環ライン20が設けられて、第2燃焼室からの排出ガスの一部を再循環し、ミキサーで吸気酸素含有ガスと混合するアンモニアの燃焼システムを示す。
【0004】
本発明の上記および更なる対象、特徴および利点は、添付の図面と関連して、非限定的な例としてのみ与えられるその特定の実施形態の以下の説明からより明らかになるであろう。図1〜4は、本発明の各実施形態を図式的に示す。
【0005】
図1に示す本発明のある実施形態では、アンモニアの燃焼は、空気または他の酸素含有ガスを圧縮し、これを比較的高圧かつ高温の第1燃焼室2に通過させる圧縮機1を含む。アンモニア3と水素4との第1混合物を、第1燃焼室2に入れて、そこで燃焼させて熱および排気ガス流を発生させる。例えば、第1燃焼室2内の操作圧力は10〜30バールの範囲にあり、典型的な操作圧力は12〜25バールの範囲にある。第1燃焼室からの排気ガス102の出口温度は、1400〜2100K、典型的には1500〜1800Kの範囲内であってもよい。
【0006】
第1燃焼室2に供給される水素に対するアンモニアの比率の制御は、現場ガス分析センサ7と連結されたマスフローコントローラ5および6を介してコントローラ18によって達成される。ガス混合物は、燃焼時に最大の出力を発揮するように最適化されている。しかしながら、高い燃焼温度およびアンモニア燃料の高い窒素含有量のために、燃焼室2からの排気ガス流102は、高レベルの窒素酸化物NOxを有するであろう。
【0007】
排気ガス102は、第1タービン8に供給され、そこで仕事量はシャフトに移されるかまたは機械的出力を供給することに類似する。第1タービン8を出る排気ガスは熱いものであり、比較的低圧かつ比較的低温領域で作動する第2燃焼室13に送られる。例えば、第2燃焼室13内の操作圧力は、1〜10バールの範囲内にあってよく、典型的な操作圧力は1〜5バールの範囲内にある。第2燃焼室からの排気ガスの出口温度は、300〜1300K、典型的には750〜880Kの範囲にあってもよい。
【0008】
この第2燃焼室に入る前に、窒素酸化物NOxを含む排気ガスを現場ガス分析センサ9で測定する。
【0009】
アンモニア3、水素4および空気の第2混合物が、高められた当量比で、典型的には1.0〜1.2で、すなわち供給された水素と反応してNとHOのみを生成するのに必要な量を超える過剰のアンモニアが第2燃焼室13中に注入される。混合物が燃焼される。高められた比率は、燃焼によってかなりの割合のNHイオンが生じ、これが窒素酸化物NOxと結合してNとHOを生成し、それによって排気ガス流102からNOxを除去することを保証する。
【0010】
第2混合物中のアンモニアの水素に対する正確な当量比は、コントローラ18により、マスフローコントローラ10、11および任意でエアマスフローコントローラ19を現場ガス分析センサ12と共に使用して設定され、第2燃焼室13に供給される第2ガス混合物中の、アンモニアの水素に対する比、さらに任意で空気などの酸素含有ガスの割合を制御する。要求される当量比は、ガスセンサ9による入力NOx比率の測定によって、および現場ガスセンサ14で測定された出力NOx排出量の測定によって決定される。コントローラ18は、センサ12、9、14からデータを受信し、マスフローデバイス11、12および任意で19に適切なコマンドを送る。コントローラ18は、センサ7およびマスフローデバイス5、6に関連するコントローラと同じコントローラであってよく、または別個のコントローラであってもよい。
【0011】
熱交換器15を使用して、廃熱を除去し、第2燃焼室からの排出ガスからエネルギーを回収し得る。図示された例では、このことは、熱交換器15の熱を回収し、これを用いて蒸気タービン16を駆動することによって達成されるが、適宜、廃熱からエネルギーを回収するための他の機構が設けられてもよい。
【0012】
例えば、図2に示すように、第2燃焼室13からの排出ガスは、機械的な回転として廃棄エネルギーを回収するために第2タービン22に送られてもよい。
【0013】
図3は、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、第2燃焼室24には熱交換器が組み込まれる。これは助燃式熱回収蒸気発生器に類似し得る。熱回収蒸気発生器(HRSG)は、ガスタービンまたは大型往復動エンジンなどの発電プラントの原動機から排出される「廃」熱を回収し、したがって総合エネルギー効率を改善するように設計された熱交換器である。助燃(または「ダクト」)燃焼は、酸素源として高温ガスタービン排気ガスを使用し、必要に応じてより多くの蒸気を発生させるために追加のエネルギーを供給する。これはシステムの出力と柔軟性を向上させる経済的に魅力的な方法である。助燃は、より低い資本コストで過剰の電気出力を供給することができ、ピーキングに適している。バーナーは、通常、HRSGにつながる排気ガス流に位置するが、必ずしもそうではない。必要に応じて過剰の酸素(または空気)が追加され得る。周囲温度が高い場合、小さなダクトバーナーは、ガスタービンの排気エネルギーを補って、蒸気タービンへの設計された絞り流量を維持できる。
【0014】
図4に示す本発明の更なる実施形態では、再循環ライン20が設けられて、第2燃焼室13からの排出ガスの一部を第1燃焼室2中に戻して再循環し得る。再循環された排出ガスは、例えばミキサー26で吸気酸素含有ガスと混合することによって、入力ガス流と組み合わされ得る。これには、排気ガス中の未燃焼NHがリサイクルされ、燃焼されるという利点がある。その割合は、第2燃焼室からの排気ガス中の未燃焼NHの割合、および系からの排出ガス中のNHの許容可能な割合に応じて、例えば0%〜80%の間で変化し得る。
【0015】
したがって本発明は、以下の利点のうち1つ以上を提供することを目的とする:
(1) − 窒素酸化物NOx分が排出ガスから低減または除去される;
(2) − すべてのアンモニアおよび水素がエネルギー、窒素および水に変換されるため、システムの総合効率が最大になる;
(3) − 第1および第2燃焼室2、13、24が、タービン8、16、22とは異なる位置に配置されて、様々な可能なレイアウトを環境上の制約に適合させることができる;
(4) − 排出ガス中のNH含有量が最小になる。
【0016】
上記の利点に寄与し得るそれぞれの技術的特徴は以下の通りである。
(1)第2燃焼室13、24の使用により、適切な当量比で燃焼させることができ、NHイオンの形成が可能である。NおよびHOを形成する排出ガス中のNOxと、その後に組み合わせて、排出ガスのアンモニア含有量を減少させる。
(2)第2燃焼室中に入力前のタービン8からの排気ガス102中のNOx含有量の測定9、第1燃焼室中へのNH/Hガスマスフローの制御および第2室の出力でのNOx排出量の測定14により、排気ガスおよび排出ガスのNOx含有量に応じて当量比を正確に設定することができる。これは、第1燃焼室での燃焼条件が排気ガス102のNOx含有量を決定することになるため必要である。これらの条件は、動的にかつシステムごとに変更することができる。
(3)エネルギー損失を最小限に抑えるための熱交換器15、24の使用は、第2燃焼室13、24における第2燃焼と関連している。
(4)第2燃焼室から第1燃焼室へ排出ガスを戻して再循環させることにより、NH排出量を最小限に抑える。
【0017】
したがって本発明は、添付の特許請求の範囲に規定されるアンモニアを燃焼するための方法およびシステムを提供する。
【0018】
第1燃焼室2での燃焼によるエネルギーは、第1タービン8の作動により回収され、第1燃焼室での燃焼により放出されたエネルギーを機械エネルギーに変換し得る。
【0019】
第2燃焼室13での燃焼によるエネルギーは、第2タービン16、22の作動により回収され、第2燃焼室での燃焼により放出されたエネルギーを機械エネルギーに変換し得る。第2タービン22の作動は、第2燃焼室13からの排気ガスをタービン22に直接作用させることによって、または熱交換器15で水を加熱して第2タービン16を蒸気で駆動することによって行われ得る。
【0020】
第2燃焼室24には、第2燃焼室からの排気ガスから熱を回収するための熱交換器が組み込まれていてもよい。熱交換器は、熱を回収するために蒸気を加熱する役割を果たし得る。
【0021】
第2燃焼室からの排出ガスの一部は、排気ガス中に残っているアンモニアを燃焼させるために、第1燃焼室中に再循環され得る。
【0022】
本出願は、限定された数の特定の実施形態を参照して記載されているが、多くの改変および変形が当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4