特許第6835754号(P6835754)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835754
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】タイヤ封止システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/02 20060101AFI20210215BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210215BHJP
   C09K 3/12 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   B29C73/02
   C09K3/10 A
   C09K3/10 K
   C09K3/12
   C09K3/10 Z
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-568400(P2017-568400)
(86)(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公表番号】特表2018-527215(P2018-527215A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】GB2016051957
(87)【国際公開番号】WO2017001849
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】1511468.9
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518000408
【氏名又は名称】ホルト・ロイド・インターナショナル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】エリス,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ヒッチマン,リチャード
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−016307(JP,A)
【文献】 特表2003−504235(JP,A)
【文献】 特開昭61−014277(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/133546(WO,A2)
【文献】 特開2008−049598(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/148629(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/148854(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/115730(WO,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02753653(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 73/00 − 73/22
C09K 3/10
C09K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ補修用キットであって、
第1の噴射剤、スチレンブタジエンゴムエマルジョン、及び発泡剤を含む第1の流体を含む第1の加圧容器;並びに
第2の噴射剤及びイソプロピルアルコールを含む第2の流体を含む第2の加圧容器;
を含む、前記キット。
【請求項2】
前記第1の加圧容器内に含まれている前記第1の噴射剤が、前記スチレンブタジエンゴムを含むフォームをタイヤの内部全体に分散させるためのものである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第2の加圧容器内に含まれている前記第2の噴射剤が、タイヤを膨らませるためのものである、請求項1又は請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記第1の流体が、
26重量%〜34重量%のスチレンブタジエンゴム;
38重量%〜52重量%の水;及び
2重量%〜5.5重量%の1種類以上の発泡剤;
を含む、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記第1の流体が、
1重量%〜10重量%のオレイン酸カリウム;及び
0.1重量%〜5重量%のラウリル硫酸アンモニウム;
を含む、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記第1の流体が、
0.01重量%〜5重量%のブチル化ヒドロキシアニソール;
を含む、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記第1の流体が、
10重量%〜50重量%のモノプロピレングリコール;
を含む、請求項5又は請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記第2の流体が、
5重量%〜25重量%のイソプロピルアルコール;
を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のキット。
【請求項9】
前記第2の流体が、
60重量%〜99重量%の前記第2の噴射剤;
を含む、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
穴を有するタイヤを封止する方法であって、
請求項1〜9のいずれかに記載のキットを与える工程;
第1の噴射剤、及びスチレンブタジエンゴムを含むエマルジョン、並びに発泡剤を含む第1の流体を前記タイヤ中に注入する工程;
前記第1の流体を前記タイヤ中に注入した後に、第2の噴射剤及びイソプロピルアルコールを含む前記第2の流体をタイヤ中に注入する工程;
を含み;
前記第1の流体中の前記スチレンブタジエンゴムと前記第2の流体中の前記イソプロピルアルコールとの間の相互作用によって、凝集して前記タイヤ中の前記穴を封止する複数のゴム粒子が形成される;
前記方法。
【請求項11】
前記第1の流体が、
26重量%〜34重量%のスチレンブタジエンゴム;
38重量%〜52重量%の水;及び
2重量%〜5.5重量%の1種類以上の発泡剤;
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の流体が、
5重量%〜25重量%のイソプロピルアルコール;及び
60重量%〜90重量%の前記第2の噴射剤;
を含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、乗物用タイヤを膨らませるために用いるタイヤインフレーターに関し、より詳しくは、タイヤを一時的に膨らませ且つタイヤ中の穴を封止して、乗物の運転者が安全な場所まで運転できるようにするために用いるタイヤインフレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]パンクしたタイヤに一時的な処置を与えるために封止及び膨らませるタイヤインフレーターは周知であり、これらによって、乗物の運転者はスペアタイヤを装着することなしにガレージまで運転してタイヤを修理することができる。幾つかの問題に対処してこれらの性能及び実用性を向上させるように開発がなされている。より具体的には、タイヤインフレーターは封止剤組成物及び加圧ガスの源物質を含み、加圧ガスは、封止剤組成物を容器から修理が必要なタイヤ中に注入するように機能し、次に封止剤組成物によってパンクを引き起こした穴をある程度封止したらタイヤを膨らませるように機能する。加圧ガスの源物質は、機械的コンプレッサーからもたらされるか、或いは噴射剤の形態のエアゾールタイプのキャニスターからもたらされる。従来技術の噴射剤はクロロフルオロカーボンを含む。しかしながら、これらの製造はこれらのオゾン層破壊性の結果として徐々に廃止されているので、新しい噴射剤が求められていた。好適な噴射剤のための要件としては、低い蒸気圧(タイヤの空気の入れすぎ又はキャニスターの破裂をもたらす可能性がある高い圧力を回避するため)、環境適合性、燃焼性がないこと、並びに噴射剤をタイヤ封止剤とよく混合することを可能にする化学的及び物理的特性が挙げられる。WO−2011/133546−A2は、周囲条件において不燃性であり、許容しうる蒸気圧を有する、環境に適合しうる噴射剤を用いたタイヤインフレーターを提供する。噴射剤に関する問題は広く研究されているが、公知のタイヤインフレーターシステムの環境に適合しうる噴射剤と混合可能な封止剤組成物はしばしば最適ではない。特に、タイヤの圧が許容しうるレベルより低く低下するのには少量の漏出しか必要でないので、上述の理由のために比較的低い蒸気圧の噴射剤を用いることは、ガスの損失によって補修の耐久性が限定される可能性があることを意味する。したがって、環境に適合しうる噴射剤と混合可能であり、例えば封止操作を行った後に長時間測定して改良されたパンク封止性を与えるタイヤインフレーター封止剤組成物に対する必要性が存在する。
【0003】
[0003]パンクによってタイヤの漏れが生じる場合に加えて、パンクがタイヤ中に大きな寸法の開口をもたらす問題が生起する。例えば高速でタイヤに物体が衝突する場合には直径が6又は更には10mmまでの開口が生じる可能性があり、このようなパンクを補修するための特にキャニスタータイプのタイヤ封止剤組成物は現在は入手できない。大きな開口は、封止剤組成物を用いる際にタイヤの補修に対して大きな封止剤噴射剤の損失をもたらし、封止が完全に達成されたとしても、封止が達成される前に噴射剤及び封止剤の大きな損失が起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO−2011/133546−A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0004]通常は最も早い都合の良い機会にタイヤを交換することが意図されており、したがって封止効果の寿命はあまり重要ではない場合のパンクしたタイヤの補修の問題に加えて、これは、不完全に装着されたタイヤ又はタイヤの不良封止を修理する必要があり、タイヤを交換せずに永久的又は半永久的に意図的に継続使用する状況においてますます有用になってきている。これは、腐食によってチューブレスタイヤとホイールリムの間の劣った封止をもたらす可能性がある所謂「合金」ホイールリムに関して特に重要である。したがって、耐久性があり且つ有効な永久的な補修のために好適なタイヤ封止剤組成物に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0005]その種々の形態における本発明は、添付の特許請求の範囲において示す通りである。本発明の第1の形態においては、第1の形態の方法を実施するのに好適な部品のキット又はシステムが提供される。タイヤ封止剤として用いるためのキット又はシステムは、第1の噴射剤、スチレンブタジエンゴムエマルジョン、及び発泡剤を含む第1の流体が収容されている第1の加圧容器、並びに、第2の噴射剤及びイソプロピルアルコールを含む第2の流体が収容されている第2の加圧容器を含む。
【0007】
[0006]本発明の第2の形態においては、タイヤを膨らませる方法において第1の形態のキットを用いる。この方法においては、第1の加圧容器の内容物をタイヤ中に注入し、次に第2の加圧容器の内容物をタイヤ中に注入し、第1の流体中のスチレンブタジエンゴムエマルジョンと第2の流体中のイソプロピルアルコールの間の相互作用を、エマルジョンを崩壊させるように機能させる。スチレンブタジエンエマルジョンが崩壊するにつれて、凝集粒子が形成され、これによってタイヤ中の穴又はパンク部を覆い及び/又は充填することができる。最終的には、十分に凝集した粒子が結合して、タイヤ中の穴又はパンク部が封止される。
【0008】
[0007]その種々の形態における本発明は、添付の特許請求の範囲において示す通りである。
[0008]上記の複数の成分の組合せによって、第1の容器からタイヤの空洞部内に初期封止剤ゴムエマルジョンが有効に分布されるが、タイヤ中の開口を通して封止剤が排出される可能性がある大きな内圧は伴わない。第2の容器は、タイヤを膨らませ、ゴムの形態を低粘度のエマルジョンフォームから、連続相としてゴムを有する高粘度の流体に変化させて、それによってタイヤなどの中の開口を封止することができる圧力源を与える。
【0009】
[0009]これら及び他の有利性並びに特徴は、図面と合わせて以下の説明からより明らかになるであろう。
[0010]本発明とみなされる主題は、明細書の最後の特許請求の範囲において特に示され、且つ明確に特許請求されている。本発明の上記の特徴及び他の特徴並びに有利性は、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】[0011]図1は、第1の加圧容器及び第2の加圧容器を含むタイヤ補修システムの斜視図である。
図2】[0012]図2は、タイヤ中のパンク部又は穴を有する、自動車に取り付けられているパンクしたタイヤの斜視図である。
図3】[0013]図3は、図2からのタイヤ及び図1からの第1の加圧容器の斜視図であり、第1の加圧容器の内容物をタイヤに注入している。
図4】[0014]図4は、タイヤ、及びインライン圧力ゲージを除いた図1からの第2の加圧容器の斜視図であり、第2の加圧容器の内容物をタイヤに注入している。
図5】[0015]図5は、図5と同様の斜視図であり、第2の加圧容器はインライン圧力ゲージを含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0016]本発明の他の形態及び有利性は以下の詳細な説明を考察することによって明らかになるであろう。ここで、同様の構造は類似又は同様の参照番号を有する。
[0017]本発明は、タイヤ補修システム、及びタイヤ補修システムを用いてタイヤを封止する方法に関する。本発明のシステム及び方法は多くの異なる形態で具現化することができるが、本明細書においては、本発明は発明の原理の例示としてのみ考えられ、本発明を記載されている態様に限定することは意図しないという理解の元に幾つかの具体的な態様を議論する。
【0012】
[0018]図1を参照すると、タイヤ補修システム20は、第1の加圧容器22及び第2の加圧容器24を含むように示されている。図2によって示唆されるように、補修が必要なタイヤ10は、少なくとも1つのパンク部又は穴12を含んでいてよい。タイヤ補修方法は、第1の流体32を第1の加圧容器22内からタイヤ10中に注入し、次に第2の流体34を第2の加圧容器24内からタイヤ10中に注入することを含む。第1の流体32は、第1の噴射剤及び封止剤組成物を含む。封止剤組成物は、この例においては水中のスチレンブタジエンゴム(SBR)のエマルジョンを含む。
【0013】
[0019]第2の流体34は、第2の噴射剤、及びイソプロパノール(IPA)とも呼ばれるイソプロピルアルコールを含む。第2の流体34をタイヤ10中に注入した後、SBRとIPAアルコールは相互作用してゴム凝集体を形成する。凝集したゴムは、タイヤ中の1以上の穴を封止して、それを補修するように機能する。タイヤ補修方法の更なる詳細及び例を、下記においてより詳細に議論する。
【0014】
[0020]第1の容器22は、第1の流体32を含むエアゾール缶であってよい。第1の流体32は、第1の噴射剤及び封止剤組成物を含む。第1の流体32には、約5重量パーセント(重量%)〜約25重量%の第1の噴射剤を含めることができる。好ましくは、第1の流体32には、約5重量%〜約10重量%の第1の噴射剤を含めることができる。最も好ましくは、第1の流体32は約6重量%の第1の噴射剤を含む。第1の流体32には、約75重量%〜約99重量%の封止剤組成物を含めることができる。好ましくは、第1の流体32は約85重量%〜約95重量%の封止剤組成物を含む。最も好ましくは、第1の流体32は約94重量%の封止剤組成物を含む。第1の流体32は、約6重量%の第1の噴射剤及び約94重量%の封止剤組成物を含む。
【0015】
[0021]本発明によれば、エアゾールタイプの噴射剤が意図される。用いることができる代表的な噴射剤としては、プロパン、ブタン、イソブタン、及びトランス−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン;並びにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、第1の噴射剤としては、ブタン、イソブタン、及びプロパンのような可燃性の噴射剤、或いはより好ましくはHFO−1234zeとも呼ばれるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンが挙げられる。HFO−1234zeは、有利にはASTM−E−681及びEU−A11試験法によって不燃性である。これらの噴射剤は、低い蒸気圧を与え、第1の流体を第1の容器からタイヤ中に注入するように機能するが、第2の流体を加えて封止を可能にする形態への第1の流体の変化を引き起こす前は、流体が漏れによって大きく排出されるのに十分な力又は体積(規定レベル)を有しない。
【0016】
[0022]より好ましくは、第1の噴射剤は、ブタン及びイソブタンを含み、これらから実質的に構成され、又はこれらから構成される。より好ましくは、第1の噴射剤は、約46重量%のn−ブタン、約23重量%のイソブタン、及び約1重量%のプロパンを含む。好ましくは、第1の流体32は、流体を大きく排出させないでSBRをタイヤ10全体に分散させるのに十分な噴射剤を含む。特に、エマルジョン中のSBRとブタン噴射剤との重量比は、6:1〜8:1、好ましくは15:2であってよい。46重量%のn−ブタン、23重量%のイソブタン、及び1重量%のプロパン(それぞれ±2%)のような好ましい噴射剤組成物の場合には、SBRと全噴射剤との比は、4:1〜6:1、好ましくは5:1であってよい。他の態様においては、第1の流体32は、タイヤ10を完全に膨らませるのに十分な噴射剤は含んでいなくてよい。
【0017】
[0023]封止剤組成物には、水中のSBRのエマルジョンと少なくとも1種類の発泡剤を含めることができ、又はこれらから実質的に構成することができ、或いはこれらから構成することができる。封止剤組成物はSBRの水性分散液を含む。SBRの水性分散液には、60〜75%のSBR、最も好ましくは約67重量%のSBRを含めることができる。下記において、SBRの与えられる重量%は水の重量を除いたものである。封止剤組成物には、約13重量%〜約40重量%のSBRを含めることができる。好ましくは、封止剤組成物は約26重量%〜約34重量%のSBRを含む。最も好ましくは、封止剤組成物は約31重量%のSBRを含む。封止剤組成物には、約26重量%〜約80重量%の水(SBRの水性分散液の一部である水を含む)を含めることができる。好ましくは、封止剤組成物は約38重量%〜約52重量%の水を含む。より好ましくは、封止剤組成物は、約31重量%のSBR及び約47重量%の水を含む。最も好ましくは、封止剤組成物は約47重量%の水を含む。
【0018】
[0024]第1の流体32をタイヤ10中に注入すると、SBRのエマルジョンを含むフォームがタイヤの少なくとも一部を満たす。少なくとも1種類の発泡剤を存在させることによって、SBRのエマルジョンから構成されるフォームを生成させることが可能になり、第1の噴射剤は発泡剤として機能し、第1の噴射剤によって膨張したフォーム中に形成された複数の気泡は発泡剤として機能する。発泡剤の例としては、オレイン酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、他の好適な界面活性剤、及び/又は1種類若しくは複数の任意の他の好適な発泡剤を挙げることができる。
【0019】
[0025]封止剤組成物には、1種類又は複数の発泡剤としてオレイン酸カリウム及び/又はラウリル硫酸アンモニウムを含めることができる。更には又は或いは、他の発泡剤を単独か又は言及した任意の発泡剤と組み合わせて用いることができる。封止剤組成物は、約1重量%〜約15重量%の1種類以上の発泡剤を含む。好ましくは、封止剤組成物は約2重量%〜約5.5重量%の1種類以上の発泡剤を含む。最も好ましくは、封止剤組成物は約4重量%の1種類以上の発泡剤を含む。
【0020】
[0026]封止剤組成物には、約1重量%〜約10重量%のオレイン酸カリウムを含めることができる。好ましくは、封止剤組成物は約2重量%〜約4重量%のオレイン酸カリウムを含む。最も好ましくは、封止剤組成物は約3重量%のオレイン酸カリウムを含む。封止剤組成物には約0.1重量%〜約5重量%のラウリル硫酸アンモニウムを含めることができる。好ましくは、封止剤組成物は約0.5重量%〜約1.5重量%のラウリル硫酸アンモニウムを含む。最も好ましくは、封止剤組成物は約0.8重量%のラウリル硫酸アンモニウムを含む。
【0021】
[0027]封止剤組成物には、約1重量%〜約10重量%のオレイン酸カリウム及び約0.1重量%〜約5重量%のラウリル硫酸アンモニウムを含めることができる。好ましくは、封止剤組成物は、約2重量%〜約4重量%のオレイン酸カリウム及び約0.5重量%〜約1.5重量%のラウリル硫酸アンモニウムを含む。最も好ましくは、封止剤組成物は、約3重量%のオレイン酸カリウム及び約0.8重量%のラウリル硫酸アンモニウムを含む。
【0022】
[0028]封止剤組成物には、場合によって酸化防止剤を含めることができる。酸化防止剤を含めることによって、変色及び酸化が阻止される。代表的な態様においては、封止剤組成物は酸化防止剤としてブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含む。或いは又は更には、1種類又は複数の任意の他の好適な酸化防止剤を用いることができる。封止剤組成物には、約0.01重量%〜約5重量%の1種類以上の酸化防止剤、例えばBHAを含めることができる。より好ましくは、封止剤組成物は約0.01重量%〜約2重量%の1種類以上の酸化防止剤を含む。更により好ましくは、封止剤組成物は、約0.01重量%〜約0.5重量%の1種類以上の酸化防止剤、例えばBHAを含む。最も好ましくは、封止剤組成物は約0.1重量%のBHAを含む。
【0023】
[0029]封止剤組成物にはまた、場合によっては凝固点降下剤を含めることができる。凝固点降下剤を存在させることによって、第1の流体32が低温において凍結するのが阻止される。第1の流体が凍結すると、SBRエマルジョン中の水が膨張して、第1の流体の容器22を破裂又は他の形態で損傷させる可能性がある。更に、凝固点降下剤を存在させることによって、バルブが注入プロセス中に凍結するのが阻止される。凝固点降下剤の例はモノプロピレングリコール(MPG)である。MPG又は任意の他の好適な凝固点降下剤の1以上を用いることができる。封止剤組成物には、約10重量%〜約50重量%のMPGを含めることができる。好ましくは、封止剤組成物は約15重量%〜約20重量%のMPGを含む。最も好ましくは、封止剤組成物は約18重量%のMPGを含む。
【0024】
[0030]封止剤組成物は、水中のSBRのエマルジョン、及び少なくとも1種類の発泡剤から実質的に構成することができる。他の態様においては、封止剤組成物は、水中のSBRのエマルジョン、少なくとも1種類の発泡剤、及び酸化防止剤から実質的に構成することができる。幾つかの他の態様においては、封止剤組成物は、水中のSBRのエマルジョン、少なくとも1種類の発泡剤、酸化防止剤、及び凝固点降下剤から実質的に構成することができる。
【0025】
[0031]第2の容器24は、第2の流体34を含むエアゾール缶であってよい。第2の流体34は第2の噴射剤及びIPAを含む。第2の流体34には、約60重量%〜約99重量%の第2の噴射剤を含めることができる。好ましくは、第2の流体34には約60重量%〜約90重量%の第2の噴射剤を含めることができる。より好ましくは、第2の流体34には約85重量%〜約90重量%の第2の噴射剤を含めることができる。最も好ましくは、第2の流体34には約86.3重量%の第2の噴射剤を含めることができる。第2の噴射剤は、好ましくは高蒸気圧の液体又は気体であり、好ましくは空気成分を有し;二酸化炭素、窒素、アルゴン、又はこれらの混合物である。
【0026】
[0032]第1のブタンベースの噴射剤と第2の空気由来の噴射剤を組み合わせることによって、幾つかの問題に対処している。第1に、炭化水素ベースで6%程度の低さのような少量を用いることによって、噴射剤とSBRベースの封止剤との均一な混合が容易になる。これにより、空気が抜けたタイヤの内部を膨らませる際に発泡を引き起こすのに十分な噴射剤をそれ自体が含む液体をタイヤに注入することが可能になる。過度に多い噴射剤は大きなパンク開口から封止剤を噴出させ(したがって、これは現在の製品が大開口のパンクのためには不適当である理由である)、過度に少ない量では封止剤を(第1の)流体容器からタイヤ中に押し込むことができない。しかしながら、かかる最適化された第1の流体は、タイヤを有効に膨らませることができず、SBRエマルジョンを崩壊させることもない(或いは、発泡した際にタイヤの充填さえも起こらない)。したがって、空気単独による更なる膨らませは不十分である。したがって、第2の流体が必要であり、ブタン及び同様の噴射剤は、0℃より低い温度においてはタイヤを膨らませるためには効果がない可能性がある。したがって、空気由来の噴射剤をイソプロパノールと共に含む第2の流体によって、タイヤを膨らませるためのガスの圧力及び体積の両方が与えられ、一方でSBRエマルジョンが崩壊して、フォームから誘導されるそれまでに均一に分配されたSBRがタイヤの内表面上に堆積する。これによって直径6mmまでのパンク部を封止することができ、これは単一キャニスターエアゾール型のタイヤインフレーターではこれまで可能ではなかった。
【0027】
[0033]第2の流体34には、約1重量%〜約25重量%のIPAを含めることができる。好ましくは、第2の流体34には約10重量%〜約15重量%のIPAを含めることができる。より好ましくは、第2の流体34には約13.6重量%のIPAを含めることができる。最も好ましくは、第2の流体34には、約86.3重量%の第2の噴射剤及び約13.6重量%のIPAを含めることができる。
【0028】
[0034]第2の噴射剤は、好ましくは(上記に記載のように)空気由来であるが、或いは又は更には、プロパン、ブタン、イソブタン、及びトランス−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンの1以上を含めることができる。第2の噴射剤には、ブタン、イソブタン、及びプロパンを含めることができる。第2の噴射剤には、HFO−1234zeとも呼ばれるトランス−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペンを含めることができる。HFO−1234zeは、有利にはASTM−E−681及びEU−A11試験法によって不燃性である。第2の噴射剤にはブタン及びイソブタンを含めることができる。第2の噴射剤には、約46重量%のブタン、約23重量%のイソブタン、及び約1重量%のプロパンを含めることができる。他の態様においては、第2の容器24は、タイヤ10を膨らませるのに十分な噴射剤を含む。
【0029】
[0035]第2の流体34は、IPAがSBRエマルジョンを崩壊させた際に凝集反応を引き起こすIPAを含む。SBRエマルジョンが崩壊するにつれて凝集粒子が形成され、これがタイヤ10中の穴又はパンク部を覆うか、及び/又は充填することができる。最終的には、十分に凝集した粒子が結合して、タイヤ10中の穴又はパンク部を封止する。
【0030】
[0036]図3によって示されるように第1の流体32をタイヤ10中に注入すると、SBRのエマルジョンを含むフォームがタイヤ10の少なくとも一部に充填される。第1の流体32が第1の加圧容器22からタイヤ10のより大きな容積中に排出されると、第1の噴射剤はもはや封止剤組成物中に溶解しない。第1の噴射剤は発泡剤として機能し、封止剤組成物中の1種類又は複数の発泡剤が表面張力を減少させ、SBRエマルジョンが第1の噴射剤によって膨張した泡又は気泡を形成することを可能にする。これらの泡又は気泡の壁部はSBRエマルジョンを含む。フォームが形成されて、これがタイヤ10の少なくとも一部に充填され、SBRをタイヤ10の内部全体に拡げる。
【0031】
[0037]図4によって示されるように第2の流体34をタイヤ10中に注入すると、IPAは、第2の噴射剤からの高圧下でタイヤ10全体に拡がり、SBRエマルジョンと密に混合する。SBRエマルジョンが崩壊し、凝集したゴム粒子がタイヤ10の内部全体にわたって形成される。凝集したゴム粒子は、一緒に及びタイヤ10の壁部に結合し、少なくとも1つの穴又はパンク部12の上に拡がってタイヤ10を封止する。図4及び5によって示されるように、第2の噴射剤はタイヤ10を第1の圧力まで加圧して、タイヤ10を完全に膨らませる。一定時間の後、タイヤ10の内部は冷却され、タイヤ10の内部の圧力は、タイヤ10の膨らみを維持するのに未だ十分な第2の圧力まで低下する。
【0032】
[0038]具体的な態様においては、補修したタイヤ10を装着している乗り物は、タイヤ10の内部が冷える前に運転することができる。他の態様においては、タイヤ10を装着している乗り物は、タイヤ10の内部が冷えた後に運転することができる。
【0033】
[0039]第1の加圧容器22は種々の寸法を有していてよい。第1の加圧容器の最小必要寸法を決定するために、対象のタイヤ10の容積を考慮することができる。第1の加圧容器22には、約300mL〜約600mLの体積の第1の流体32を含めることができる。第1の加圧容器22には、約300mL、約350mL、約400mL、約450mL、約500mL、約550mL、又は約600mLの体積の第1の流体32を含めることができる。
【0034】
[0040]第2の加圧容器24は、対象のタイヤの容積によって決定される寸法を有していてよく、第2の加圧容器の適切な寸法を決定するために、好ましい圧力を考慮することができる。第2の加圧容器24には、約300mL〜約600mLの体積の第1の流体32を含めることができる。幾つかの態様においては、第2の加圧容器24には、約300mL、約350mL、約400mL、約450mL、約500mL、約550mL、又は約600mLの体積の第2の流体34を含めることができる。
【0035】
[0041]具体的な態様においては、第2の加圧容器24には、図5によって示されるようにインライン圧力ゲージ26を含めることができる。かかる具体的な態様においては、第2の加圧容器24には、第2の流体を含めることができ、及び第2の流体34を容器から補修するタイヤ10に供給するための、第2の加圧容器に取り付けられている供給装置を更に含めることができる。供給装置には、(1)第2の加圧容器のバルブを作動させ、作動させた際にバルブと流体連絡している流体流路によって第2の流体を容器から供給するためのアクチュエーター;及び(2)流体流路内の圧力を測定するための、流体流路と連絡している圧力ゲージ;を含めることができる。インライン圧力ゲージ26を装備する態様においては、第2の加圧容器24は、タイヤ10を所望の圧力まで膨らませるのに必要なものよりも大きくてよい。ユーザーは、圧力ゲージ26を見ながら、第2の加圧容器の内容物をタイヤ10中に注入することを選択することができる。タイヤ10内の圧力が目標範囲に達したら、ユーザーは第2の圧力容器の内容物の注入を停止することを選択することができる。このようにして、より大きな容器、例えば600mLの体積を有し、大部分のタイヤを満たすことができるであろう容器を用いることができる。インライン圧力ゲージ26によって、異なる寸法のタイヤのための種々の異なる寸法の容器の必要性を排除することができる。
【0036】
[0042]具体的な態様においては、ユーザーは、タイヤ10内の圧力が約18〜約50psiである時点で第2の圧力容器24の内容物の注入を停止するように決定することができる。他の態様においては、ユーザーは、タイヤ10内の圧力が約20〜約40psiである時点で第2の加圧容器24の内容物の注入を停止するように決定することができる。幾つかの態様においては、ユーザーは、タイヤ10内の圧力が約35〜約40psiである時点で第2の加圧容器24の内容物の注入を停止するように決定することができる。
【0037】
[0043]第1及び第2の流体並びにその成分の非限定的な具体例を下記に挙げる。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
表1〜4は、組み合わさって本発明のキット、方法、及び容器において用いるのに好ましい組成物を与える。
【0043】
【表5】
【0044】
[0044]下表6におけるそれぞれの実験に関して、P205/55/R16タイヤは、タイヤのトレッドパターンの中央部の間に穿孔した直径6mmの穴を有していた。タイヤを自動車に装着し、時計文字盤上の9時と3時の間のようなホイール円周の上半分に穴を位置させた。表1からの第1の流体を含む500mLの容積を有する第1の加圧容器を、タイヤ中に約2分間注入した。その直後に、表3からの第2の流体を含む500mLの容積を有する第2の加圧容器を、タイヤ中に約2分間注入した。直ちに自動車を運転し、6マイル(10km)後に停止して圧力をチェックした。自動車を更に6マイル(10km)、合計で12マイル(20km)運転し、圧力を再びチェックした。タイヤ中の穿孔穴の位置を真上に面して位置させて、自動車を周囲温度において一晩放置した。
【0045】
【表6】
【0046】
[0046]表6に見られるように、6マイル(10km)運転した後、タイヤの内部の高温の気体は37.5psig(258.6kPag)の平均圧力であった。12マイル(20km)運転した後は、圧力は39.4psig(271.7kPag)の平均値に更に上昇した。24時間冷却した後にデータを入手すると、タイヤは19.79psig(136.4kPag)の平均圧力を維持していた。タイヤは冷却後においても運転のために許容しうる圧力を維持しており、補修したタイヤを装着した自動車によって修理工場を探すことができた。
【0047】
[0047]現在市場に出回っている製品であるContinental ContiMobilityを用いて、上記の実験を繰り返した。下表7におけるそれぞれの実験に関して、P205/55/R16タイヤは、タイヤのトレッドパターンの中央部の間に穿孔した直径3mm〜6mmの穴を有していた。タイヤを自動車に装着し、時計文字盤上の9時と3時の間のようなホイール円周の上半分に穴を位置させた。Continental ContiMobilityキット(450mL)に関する製造者の取扱説明書にしたがった。450mLのContiMobility補修・インフレーション製品をタイヤ中に注入し、圧力を測定した。(可能な限り)直ちに自動車を運転し、6マイル(10km)後に停止して圧力をチェックした。自動車を(可能な限り)更に6マイル(10km)、合計で12マイル(20km)運転し、圧力を再びチェックした。
【0048】
[0048]
【0049】
【表7】
【0050】
[0049]Continental ContiMobilityキットは、5mmの穿孔穴及び6mmの穿孔穴に関しては封止を行うことができなかった。更に、4mmの穿孔穴に関しては、12マイル後の僅かな泡立ちによって非常に遅い漏れが示された。本発明の好ましい態様に関する表6におけるデータは、既存のContinental ContiMobilityキットよりも大きなパンク部に対する優れた性能を示す。
図1
図2
図3
図4
図5