特許第6835770号(P6835770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電線工業株式会社の特許一覧

特許6835770架橋ゴム組成物及びそれを用いたシール材
<>
  • 特許6835770-架橋ゴム組成物及びそれを用いたシール材 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835770
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】架橋ゴム組成物及びそれを用いたシール材
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/02 20060101AFI20210215BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20210215BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210215BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   C08L9/02
   C08K3/04
   C08K5/3415
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 Q
   F16J15/10 Y
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-103128(P2018-103128)
(22)【出願日】2018年5月30日
(65)【公開番号】特開2019-206663(P2019-206663A)
(43)【公開日】2019年12月5日
【審査請求日】2019年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 耕生
(72)【発明者】
【氏名】池原 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 智己
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−031151(JP,A)
【文献】 特開2013−142147(JP,A)
【文献】 特開平05−164194(JP,A)
【文献】 特開2003−165645(JP,A)
【文献】 特開2011−079974(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1042894(KR,B1)
【文献】 特開2012−214542(JP,A)
【文献】 特開2010−155883(JP,A)
【文献】 特開2004−092684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C09K 3/10
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ニトリルゴムを主体とする分子間が架橋されたゴム成分と、相対的に粒子径の小さい小粒径カーボンブラックと、相対的に粒子径の大きい大粒径カーボンブラックとを含有し、且つ硬さがA75以上である架橋ゴム組成物であって、
前記小粒径カーボンブラックは、SAF、ISAF、HAF、EPC、XCF、FEF、GPF、HMF、及びSRFのうちの1種又は2種以上を含み、
前記大粒径カーボンブラックは、FT及びMTのうちの1種又は2種を含む架橋ゴム組成物
【請求項2】
請求項1に記載された架橋ゴム組成物において、
前記小粒径カーボンブラックの含有量と前記大粒径カーボンブラックの含有量との総和が、前記ゴム成分100質量部に対して80質量部以上である架橋ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された架橋ゴム組成物において、
前記小粒径カーボンブラックの前記ゴム成分100質量部に対する含有量が、前記大粒径カーボンブラックの含有量以上である架橋ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された架橋ゴム組成物において、
前記ゴム成分の分子間が共架橋剤によっても架橋されている架橋ゴム組成物。
【請求項5】
請求項4に記載された架橋ゴム組成物において、
前記共架橋剤がマレイミド系共架橋剤を含む架橋ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された架橋ゴム組成物により形成されたシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴム組成物及びそれを用いたシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のゴム製品において、水素化ニトリルゴムをゴム成分とする架橋ゴム組成物を用いることが知られている。例えば、特許文献1には、有機過酸化物で架橋されたゴム成分の水素化ニトリルゴムとカーボンブラックとを含有する燃料電池用セパレータ用ゴムガスケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−285537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池用のカプラに設けられるシール材には、低温環境下での使用においてシール性が確保されることと、カプラ取り外しの際の摺動による摩耗が小さいこと、つまり、耐摩耗性が高いこととが要求される。従来、燃料電池用のカプラに設けられるシール材としては、主として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のゴム組成物で形成されたものが用いられているが、このものは、低温環境下での使用におけるシール性の確保はできるものの、十分な耐摩耗性を有さず、そのため寿命が短いという問題がある。かかる事情から、耐低温性と耐摩耗性を有するゴム材料が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、耐低温性と耐摩耗性が優れる架橋ゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水素化ニトリルゴムを主体とする分子間が架橋されたゴム成分と、相対的に粒子径の小さい小粒径カーボンブラックと、相対的に粒子径の大きい大粒径カーボンブラックとを含有し、且つ硬さがA75以上である架橋ゴム組成物であって、前記小粒径カーボンブラックは、SAF、ISAF、HAF、EPC、XCF、FEF、GPF、HMF、及びSRFのうちの1種又は2種以上を含み、前記大粒径カーボンブラックは、FT及びMTのうちの1種又は2種を含む
【0007】
本発明は、本発明の架橋ゴム組成物により形成されたシール材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた耐低温性と耐摩耗性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】耐摩耗性の試験方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する。
【0011】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、水素化ニトリルゴム(以下「HNBR」という。)を主体とする分子間が架橋されたゴム成分と、相対的に粒子径の小さい小粒径カーボンブラックと、相対的に粒子径の大きい大粒径カーボンブラックとを含有する。より具体的には、実施形態に係る架橋ゴム組成物は、HNBRを主体とするゴム成分に、小粒径カーボンブラック及び大粒径カーボンブラック並びに架橋剤を含むゴム配合剤を配合して混練した未架橋ゴム組成物を調製し、その未架橋ゴム組成物を加熱して架橋剤によりゴム成分を架橋させたものである。そして、実施形態に係る架橋ゴム組成物は、その硬さがA75以上である。
【0012】
以上の構成の実施形態に係る架橋ゴム組成物によれば、HNBRを主体とする分子間が架橋されたゴム成分と、相対的に粒子径の小さい小粒径カーボンブラックと、相対的に粒子径の大きい大粒径カーボンブラックとを含有し、且つ硬さがA75以上であることにより、優れた耐低温性と耐摩耗性を得ることができる。また、それに加えて、実施形態に係る架橋ゴム組成物によれば、優れた耐ブリスター性をも得ることができる。
【0013】
ここで、ゴム成分はHNBRを主体とする。ゴム成分におけるHNBRの含有量は50質量%よりも多く、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。HNBR以外のゴム成分としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)等が挙げられる。
【0014】
HNBRとしては、例えば、ニトリル−共役ジエン共重合ゴムの共役ジエン単位部分を水素化したもの、ニトリル−共役ジエン−エチレン性不飽和モノマー三元共重合ゴムの共役ジエン単位部分を水素化したもの、ニトリル−エチレン性不飽和モノマー系共重合ゴム等が挙げられる。より具体的には、例えば、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、イソプレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、イソプレン−アクリロニトリル共重合ゴム、ブタジエン−メチルアクリレート−アクリロニトリル共重合ゴムなどを水素化したもの;ブチルアクリレート−エトキシエチルアクリレート−ビニルクロロアセテート−アクリロニトリル共重合ゴム;ブチルアクリレート−エトキシエチルアクリレート−ビニルノルボルネン−アクリロニトリル共重合ゴム等が挙げられる。HNBRは、これらのうちの1種又は2種以上を含んで構成されていることが好ましい。
【0015】
HNBRのアクリロニトリル含量は、優れた耐低温性を得る観点から、好ましくは15.0質量%以上25.0質量%以下、より好ましくは17.0質量%以上21.0質量%以下である。なお、HNBRが複数種で構成される場合、そのアクリロニトリル含量は、各HNBRの分率にそのアクリロニトリル含量を乗じたものの総和である。
【0016】
HNBRのヨウ素価は、優れた耐低温性を得る観点から、好ましくは3mg/100mg以上70mg/100mg以下、より好ましくは3mg/100mg以上25mg/100mg以下である。HNBRが複数種で構成される場合、そのヨウ素価は、各HNBRの分率にそのヨウ素価を乗じたものの総和である。
【0017】
HNBRの100℃におけるムーニー粘度は、優れた耐低温性を得る観点から、好ましくは30ML1+4(100℃)以上100ML1+4(100℃)以下、より好ましくは60ML1+4(100℃)以上90ML1+4(100℃)以下である。このムーニー粘度は、JISK6300に基づいて測定されるものである。
【0018】
小粒径カーボンブラックの粒子径は、優れた耐摩耗性を得る観点から、好ましくは15nm以上80nm以下、より好ましくは30nm以上60nm以下である。具体的な小粒径カーボンブラックとしては、例えば、N110(SAF)、N220(ISAF)、N330(HAF)、N300(EPC)、N400(XCF)、N550(FEF)、N600(GPF)、N683(HMF)、N770(SRF)等が挙げられる。小粒径カーボンブラックは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、N550(FEF)を含むことがより好ましい。架橋ゴム組成物における小粒径カーボンブラックの含有量(A)は、優れた耐摩耗性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上150質量部以下、より好ましくは50質量部以上100質量部以下である。
【0019】
大粒径カーボンブラックの粒子径は、優れた耐低温性を得る観点から、好ましくは150nm以上500nm以下、より好ましくは200nm以上400nm以下である。具体的な大粒径カーボンブラックとしては、例えば、N880(FT)、N990(MT)等が挙げられる。大粒径カーボンブラックは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、N990(MT)を含むことがより好ましい。架橋ゴム組成物における大粒径カーボンブラックの含有量(B)は、優れた耐低温性と耐摩耗性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上70質量部以下、より好ましくは30質量部以上50質量部以下である。
【0020】
架橋ゴム組成物における小粒径カーボンブラックの含有量(A)及び大粒径カーボンブラックの含有量(B)の総和(A+B)は、優れた耐低温性と耐摩耗性を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以上150質量部以下、より好ましくは100質量部以上140質量部以下である。架橋ゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対する小粒径カーボンブラックの含有量(A)は、大粒径カーボンブラックの含有量(B)以上であることが好ましい。架橋ゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対する小粒径カーボンブラックの含有量(A)の大粒径カーボンブラックの含有量(B)に対する質量比(A/B)は、好ましくは1.0以上5.0以下、より好ましくは1.0以上4.0以下である。
【0021】
ゴム成分は、架橋剤として有機過酸化物が用いられて分子間が架橋されていても、また、架橋剤として硫黄が用いられて分子間が架橋されていても、さらに、架橋剤として有機過酸化物及び硫黄が併用されて分子間が架橋されていても、いずれでもよい。優れた耐低温性と耐摩耗性を得る観点からは、架橋剤として少なくとも有機過酸化物が用いられていることが好ましい。
【0022】
架橋剤の有機過酸化物としては、例えば、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。架橋剤の有機過酸化物は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましい。架橋前の未架橋ゴム組成物における架橋剤の有機過酸化物の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1質量部以上10質量部以下である。
【0023】
ゴム成分は、優れた耐低温性を得る観点から、分子間が共架橋剤によっても架橋されていることが好ましい。共架橋剤としては、例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、マレイミド、フェニルマレイミドなどのマレイミド系共架橋剤;トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリレート系共架橋剤;トリアリルシアヌレート、ジアリルフマレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートなどのアリル系共架橋剤;1,2−ポリブタジエン等が挙げられる。共架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐低温性と耐摩耗性と圧縮永久ひずみを得る観点から、マレイミド系共架橋剤を含むことがより好ましく、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドを含むことが更に好ましい。架橋前の未架橋ゴム組成物における共架橋剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば1質量部以上10質量部以下である。
【0024】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、その他のゴム配合剤として、例えば、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、活性助剤等を適宜含有していてもよい。
【0025】
実施形態に係る架橋ゴム組成物の硬さは、A75以上であって、好ましくはA80以上A95以下、より好ましくはA85以上A92以下である。この硬さは、JIS K6253−3:2012に基づいて、タイプAデュロメータにより測定されるものである。
【0026】
実施形態に係る架橋ゴム組成物のTR10は、好ましくは−30.0℃以上、より好ましくは−35.0℃以上である。このTR10は、JISK6261:2006の低温弾性回復試験(TR試験)に基づいて測定されるものである。
【0027】
実施形態に係る架橋ゴム組成物の引張強さは、好ましくは12.0MPa以上、より好ましくは15.0MPa以上である。実施形態に係る架橋ゴム組成物の切断時伸びは、好ましくは80%以上200%以下、より好ましくは100%以上180%以下である。これらの引張強さ及び切断時伸びは、JISK6251:2010に基づいて測定されるものである。
【0028】
実施形態に係る架橋ゴム組成物の圧縮永久ひずみ(120℃,70時間)は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下である。この圧縮永久歪みは、JISK6262:2013に基づいて、試験片に25%の圧縮ひずみを与え、圧縮試験温度120℃及び試験時間70時間として測定されるものである。
【0029】
実施形態に係る架橋ゴム組成物は、HNBRを主体とするゴム成分に、小粒径カーボンブラック及び大粒径カーボンブラック並びに架橋剤を含むゴム配合剤を配合して混練した未架橋ゴム組成物を調製し、その未架橋ゴム組成物を加熱して架橋剤によりゴム成分を架橋させることにより得ることができる。このとき、相対的に高温及び短時間の一次加工と、相対的に低温及び長時間の二次加工とを行うことが好ましい。一次加工の加工温度は、例えば150℃以上200℃以下であり、加工時間は、例えば3分以上30分以下である。二次加工の加工温度は、例えば130℃以上180℃以下であり、加工時間は、例えば0.5時間以上10時間以下である。
【0030】
以上の実施形態に係る架橋ゴム組成物は、優れた耐低温性を有することから、自動車用途に好適に用いることができる。具体的には、例えば、実施形態に係る架橋ゴム組成物により形成されたシール材のO−リングを、燃料電池自動車における燃料供給部のカプラに好適に用いることができる。
【実施例】
【0031】
(架橋ゴム組成物)
以下の実施例1〜6及び比較例1〜2の架橋ゴム組成物のゴムシート(150□×2t)、圧縮永久ひずみの試験片(φ29×12.5H)、及び耐摩耗性の試験片(φ6.3×8H)を作製した。それぞれの構成は、表1にも示す。
【0032】
<実施例1>
HNBR(結合アクリ ロニトリル量:18.6質量%、ヨウ素価:15mg/100mg、ムーニー粘度:62ML1+4(100℃))をゴム成分とし、このゴム成分100質量部に対して、小粒径カーボンブラック(N550 粒子径:39nm以上55nm以下)100質量部、大粒径カーボンブラック(N990 粒子径:250nm以上350nm以下)40質量部、架橋剤の有機過酸化物(α,α’−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン)2.4質量部、マレイミド系共架橋剤(N,N’−m−フェニレンビスマレイミド)3質量部、ベンズイミダゾール系老化防止剤1.5質量部、芳香族第二級アミン系老化防止剤1.5質量部、加工助剤(ステアリン酸)0.5質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤15質量部、及び活性助剤(酸化亜鉛)5質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物を調製した。そして、この未架橋ゴム組成物に、加工温度170℃及び加工時間20分のプレス成形の一次加工と、加工温度150℃及び加工時間4時間の二次加工とを施してゴム成分を架橋させることにより架橋ゴム組成物のゴムシートを作製した。この架橋ゴム組成物のゴムシートを実施例1とした。
【0033】
<実施例2>
ゴム成分100質量部に対する小粒径カーボンブラック及び大粒径カーボンブラックの配合量を、それぞれ90質量部及び30質量部としたことを除いて、実施例1と同様にして架橋ゴム組成物のゴムシートを作製し、それを実施例2とした。
【0034】
<実施例3>
ゴム成分100質量部に対する小粒径カーボンブラック及び大粒径カーボンブラックの配合量を、それぞれ50質量部及び50質量部としたことを除いて、実施例1と同様にして架橋ゴム組成物のゴムシートを作製し、それを実施例3とした。
【0035】
<実施例4>
マレイミド系共架橋剤に代えて、メタクリレート系共架橋剤(トリメチロールプロパントリメタクリレート)を、ゴム成分100質量部に対して5質量部配合したことを除いて、実施例2と同様にして架橋ゴム組成物のゴムシートを作製し、それを実施例4とした。
【0036】
<実施例5>
マレイミド系共架橋剤に代えて、アリル系共架橋剤(トリアリルシアヌレート)を配合したことを除いて、実施例2と同様にして架橋ゴム組成物のゴムシートを作製し、それを実施例5とした。
【0037】
<実施例6>
マレイミド系共架橋剤に代えて、共架橋剤の1,2−ポリブタジエンを配合したことを除いて、実施例2と同様にして架橋ゴム組成物のゴムシートを作製し、それを実施例6とした。
【0038】
<比較例1>
小粒径カーボンブラックを配合せず、且つ大粒径カーボンブラックを、ゴム成分100質量部に対して80質量部配合したことを除いて、実施例1と同様にして架橋ゴム組成物のゴムシートを作製し、それを比較例1とした。
【0039】
<比較例2>
大粒径カーボンブラックを配合せず、且つ小粒径カーボンブラックを、ゴム成分100質量部に対して60質量部配合したことを除いて、実施例1と同様にして架橋ゴム組成物のゴムシートを作製し、それを比較例2とした。
【0040】
【表1】
【0041】
(試験方法)
<硬さ>
実施例1〜6及び比較例1〜2のそれぞれについて、JISK6253−3:2012に基づいて、タイプAデュロメータにより硬さを測定した。
【0042】
<TR10>
実施例1〜6及び比較例1〜2のそれぞれについて、JISK6261:2006の低温弾性回復試験(TR試験)に基づいてTR10を測定した。
【0043】
<引張強さ及び切断時伸び>
実施例1〜6及び比較例1〜2のそれぞれについて、JISK6251:2010に基づいて引張強さ及び切断時伸びを測定した。
【0044】
<圧縮永久ひずみ>
実施例1〜6及び比較例1〜2のそれぞれについて、JISK6262:2013に基づいて、試験片に25%の圧縮ひずみを与え、圧縮試験温度120℃及び試験時間70時間として圧縮永久ひずみを測定した。
【0045】
<耐摩耗性>
実施例1〜6及び比較例1〜2のそれぞれについて、図1に示すように、試験片11を固定具12で固定すると共に金属板13に押接し、その状態で試験片11の底面が金属板13に摺接するように金属板13を往復運動させた。ここで、金属板13の材質はSS400、表面粗度Ryは3.2、及び仕上げ方向は摺動方向と直交する方法とした。また、試験片11の金属板13への押圧圧力は0.1MPa、金属板13の往復数は60回/分、金属板13の往復のストロークは10mm、及び金属板13の往復回数は10万回とし、試験片11と金属板13との間には、潤滑剤を介在させなかった。そして、試験前後の試験片11の質量の減量を試験片11の比重及び底面積で除すことにより摩耗量(mm)を算出した。
【0046】
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
【0047】
表1によれば、実施例1〜6は、TR−10が−35℃以下であり且つ摩耗量が著しく小さく、したがって、比較例1〜2よりも耐低温性及び耐摩耗性のいずれも優れることが分かる。また、実施例1〜6は、硬さがA75以上であるのに対し、比較例1〜2は、硬さがそれよりも非常に小さいことも分かる。さらに、実施例1〜6を比較すると、マレイミド系共架橋剤を用いることにより、より優れた耐摩耗性と圧縮永久ひずみを得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、架橋ゴム組成物及びそれを用いたシール材の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0049】
11 試験片
12 固定具
13 金属板
図1