特許第6835807号(P6835807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835807
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】保護部材及び飛行装置
(51)【国際特許分類】
   B64C 7/00 20060101AFI20210215BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20210215BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   B64C7/00
   B64C27/04
   B64C39/02
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-239939(P2018-239939)
(22)【出願日】2018年12月21日
(65)【公開番号】特開2020-19471(P2020-19471A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/029294
(32)【優先日】2018年8月3日
(33)【優先権主張国】WO
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】李 顕一
(72)【発明者】
【氏名】井沼 孝慈
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0029101(US,A1)
【文献】 特開2018−112485(JP,A)
【文献】 特開2018−030431(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0221671(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 7/00
B64C 27/04
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部及び前記本体部に保持される1以上のプロペラを有する飛行体に装着される保護部材であって、
前記本体部に接続される支持部材に支持され、平面視において前記本体部の外側を囲うように張り渡される可撓性部材を備え、
前記可撓性部材が帯状であり、厚み方向に曲げ変形可能で幅方向には剛性を有し、
前記可撓性部材は、その厚み方向視において前記プロペラと重複しないよう保持される保護部材。
【請求項2】
前記可撓性部材は、前記プロペラの回転軸の径方向視において、前記プロペラと重複するよう保持される請求項に記載の保護部材。
【請求項3】
前記可撓性部材は、その厚み方向が前記プロペラの回転軸に略平行である請求項に記載の保護部材。
【請求項4】
前記可撓性部材は、その厚み方向が前記プロペラの回転軸に略直角である請求項に記載の保護部材。
【請求項5】
前記可撓性部材は、前記プロペラの回転軸の径方向視において前記プロペラと重複しないよう保持される請求項に記載の保護部材。
【請求項6】
前記可撓性部材を前記支持部材に固定するとともに、前記可撓性部材の張設方向の張力を調整可能な緊張調整部材をさらに備える請求項1から5のいずれかに記載の保護部材。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の保護部材と、
本体部及び前記本体部に保持される1以上のプロペラを有する飛行体と、
前記本体部に接続され、前記保護部材を支持する支持部材と、
を備える飛行装置。
【請求項8】
前記支持部材は、平面視において前記飛行体から外側に延びる固定部と、前記固定部の先端部から前記プロペラの回転軸と略平行に延びる延設部とを有し、
前記可撓性部材は、前記延設部の先端部に支持される請求項に記載の飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のプロペラを有する飛行体に装着される保護部材、及びそのような保護部材を備える飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロペラの回転によって生じる揚力により、自在に空中を移動するドローン等の飛行体が知られている。この種の飛行体は、ユーザの操縦や風の影響等により、木や建物へ衝突したり、地面に不時着したりしたときの接触等によってプロペラが損傷することがあった。プロペラの損傷は飛行に支障をきたすこともあるため、外的な衝撃を受けた際のプロペラの破損や歪みを防ぐために保護部材を飛行体に設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6245566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術を含む従来技術のみでは、プロペラの保護のみに重点が置かれており、飛行体への保護部材の装着簡易性や保護部材を含めた飛行装置の持ち運びの利便性の観点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、飛行体への装着簡易性を保ちつつ、持ち運びが容易な保護部材及びそのような保護部材を備える飛行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の保護部材は、
本体部及び前記本体部に保持される1以上のプロペラを有する飛行体に装着される保護部材であって、
前記本体部に接続される支持部材に支持され、平面視において前記本体部の外側を囲うように張り渡される可撓性部材を備え、
前記可撓性部材が帯状である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装着簡易性を保ちつつ、持ち運びが容易な飛行体の保護部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の保護部材の一実施形態に係るプロペラガードが装着されたドローンの構成例を示す斜視図である。
図2図1のドローンの模式平面図である。
図3図1のプロペラガードの緊張調整部材を示す模式平面図である。
図4図1の支持部材に装着前の緊張調整部材を示す斜視図である。
図5図1の支持部材に装着後の緊張調整部材を示す斜視図である。
図6A】張力付与前のガード部と当該ガード部の両端部のそれぞれに接続される緊張調整部材を模式的に示した図である。
図6B】張力付与後のガード部と当該ガード部の両端部のそれぞれに接続される緊張調整部材を模式的に示した図である。
図7】第1変形例のプロペラガードが適用されるドローンの模式平面図である。
図8】第2変形例のプロペラガードが適用されるドローンの模式平面図である。
図9】第3変形例のプロペラガードが適用されるドローンの模式平面図である。
図10】第4変形例のプロペラガードの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、特に断りのない限り、飛行体としてのドローンが着陸する平面を「着陸平面」とし、特に、着陸平面からみてドローンが離陸する方向を「上方向」と呼び、その逆方向を「下方向」とする。また、着陸平面から上方向に向けた距離を「高さ」と、「垂直方向」は、上下方向に一致する方向とする。
【0010】
図1は、本発明の保護部材の一実施形態に係るプロペラガード2が装着されたドローン1の構成例を示す斜視図である。図2は、図1のドローン1の模式平面図である。なお、図2では、図1に比べてドローン1を模式的に示しており、一部の構成の図示を省略している。
【0011】
図1及び図2に示すように、ドローン1は、プロペラガード2を装着した状態で飛行する。なお、ドローン1にプロペラガード2を装着したものを飛行装置Fという。プロペラガード2は、ドローン1に装着され、飛行装置Fの飛行時にプロペラ13等が建物や木々と直接衝突することを防止し、外的な衝撃から当該ドローン1を保護するための保護部材である。
【0012】
まず、飛行装置Fの全体構成について説明する。本実施形態の飛行装置Fは、ドローン1と、プロペラガード2と、ドローン1にプロペラガード2を取り付けるための支持部材22とを備える。ドローン1は、本体部11と、アーム部12と、プロペラ13と、を備える。
【0013】
本体部11は、ドローン1の飛行等に必要な各種の制御処理を実行する電子機器(図示省略)を内蔵する。例えば、電子機器は、プロペラ13を駆動させるためのモータの制御や、ドローン1の操縦者(以下「ユーザ」とも呼ぶ)が操縦するコントローラ等の外部との信号の送受信や、本体部11に設けられるカメラ(図示省略)等の各種センサの情報に基づく処理を実行するコンピュータである。
【0014】
本体部11の下面には、着陸平面に接地する脚部15、搬送物を収容するボックス16を保持する保持フレーム17等が設けられる。
【0015】
アーム部12は、水平方向に沿う棒状に形成される。アーム部12の一側の端部が本体部11に接続され、他側の端部(以下、先端部)にはプロペラ13が配置される。本実施形態では、6本(複数)のアーム部12のそれぞれが、平面視において本体部11から放射状かつ対称に延びている。6本のアーム部12の間隔は、周方向で等間隔となっている。
【0016】
プロペラ13は、アーム部12を介して本体部11に保持される。具体的には、プロペラ13は、アーム部12の先端部の上面に回転可能に配置される。回転面が水平面に一致するようにアーム部12にプロペラ13が取り付けられている。本実施形態では、6本のアーム部12のそれぞれにプロペラ13が設けられている。ドローン1は、合計6本のプロペラ13の回転によってドローン1を飛行させるための揚力を発生させることができる。
【0017】
支持部材22は、プロペラガード2をドローン1に装着するための部材である。本実施形態では、6本のアーム部12のそれぞれの先端部に、支持部材22が配置されており、合計6本の支持部材22によってプロペラガード2が保持される。本実施形態の6本の支持部材22は、棒状に形成されるアーム接続部(固定部)221と、プロペラ13の回転軸と略平行に延びるガード接続部(延設部)222と、をそれぞれ備える。ガード接続部222はアーム接続部221の一側の端部に接続されており、支持部材22は全体として略L字状に形成される。なお、「略平行」とは、相対角度が5°以下であることを意味する。
【0018】
支持部材22が、アーム接続部221とガード接続部222を有することによって、プロペラガード2の高さを容易に調節することができる。これにより、ガード部23がプロペラ13に接触しないようにガード部23を支持することができる。
【0019】
アーム接続部221は、アーム部12の先端部に接続される部位である。本実施形態のアーム接続部221は、一側の端部(以下、内端部と呼ぶ)に回転機構225が配置されており、アーム部12の先端部に対して回転可能となっている。これにより、支持部材22を折り畳んだ状態でドローン1を搬送することができる。ドローン1を使用するときは、図1に示すように、支持部材22のアーム接続部221が水平方向に沿う状態(以下、支持部材22の使用状態と呼ぶ)にする。
【0020】
ガード接続部222は、プロペラガード2に接続される部位である。ガード接続部222は、アーム接続部221の内端部の反対側の端部(以下、外端部と呼ぶ)に接続される。支持部材22の使用状態では、ガード接続部222の長手方向が上方を向いている。
【0021】
次に、プロペラガード2について説明する。プロペラガード2は、平面視で少なくともドローン1の本体部11の外側を囲うよう設けられ、本体部11からアーム部12の外側を囲うよう設けられることが好ましく、図2に模式的に示すように、本体部11からプロペラ13よりも外側に設けられることがさらに好ましい。ここで、「外側」とは、平面視において、ドローン1の本体部11の重心又は中心を起点としたときに、回転状態を含むプロペラ13よりも起点から離れた側のことを意味する。また、外側は、起点を円の中心として径方向外側と表現することもできる。プロペラ13を囲むようにプロペラガード2が配置されるので、プロペラ13が建物や木々に直接衝突することが防止される。また、プロペラガード2は、プロペラ13と同一又はそれ以上の高さに位置する。本実施形態のドローン1によれば、下降局面において本体1及びプロペラ13の下方に位置する脚部15によってプロペラ13の損傷を防ぎつつ、上昇局面においては同一又はそれ以上の高さに位置するプロペラガード2によってプロペラ13の損傷を効果的に防ぐことができる。
【0022】
本実施形態のプロペラガード2の構成について説明する。プロペラガード2は、平面視においてドローン1を囲うように張設される複数のガード部(可撓性部材)23と、ガード部23に付与する張力を調整可能な複数の緊張調整部材5と、を備える。
【0023】
プロペラガード2は、ガード部23がプロペラ13の回転軸の径方向視においてプロペラ13と重複しないような高さに保持されるよう配置されることが好ましい。これにより、ガード部23が、水平方向にたわみ振動した場合にプロペラ13と接触することを防止することができる。
【0024】
ガード部23は、可撓性及び弾性を有する材料、例えば、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics, CFRP)等の炭素繊維複合材によって細長の帯状に構成される。つまり、ガード部23は、ある程度の弾性率を有する材料を厚みの小さい帯状に成形することによって、厚み方向に曲げ変形可能な可撓性を有し、幅方向には十分な剛性を有する部材とすることが望ましい。なお、「帯状」とは、平均幅が平均厚みの5倍以上であることを意味する。ただし、平均幅及び平均厚みは、ガード接続部222に接続するための構造部や、ガード接続部222間の部分に別の目的で付設される構造部(本実施形態には不存在)を除外して算出するものとする。
【0025】
ガード部23は、厚み方向がプロペラ13の回転軸と略直角となるように支持されることが好ましい。これにより、飛行装置Fがプロペラ13の径方向に他の物体と衝突した場合に、ガード部23が面で他の物体に接触してその衝撃を和らげることができ、プロペラ13の損傷のみならず、当該他の物体の損傷をも抑制することができる。なお、「略直角」とは、相対角度が85°以上95°以下であることを意味する。
【0026】
また、ガード部23は、厚み方向がプロペラ13の回転軸と略直角であることによって、ガード部23は、プロペラ13の回転軸と平行な方向(垂直方向)にたわみ難くなる。つまり、ガード部23は、プロペラ13の回転軸と直角な方向(水平方向)のたわみ振動(横ブレ)と比較してプロペラ13の回転軸と平行な方向のたわみ振動(縦ブレ)が発生し難い。これにより、径方向視でプロペラ13と重複しないように保持されるガード部23がたわみ振動してもプロペラ13の回転軸方向の成分が小さくなるので、ガード部23がプロペラ13と接触し難くなる。
【0027】
従って、プロペラガード2は、プロペラ13の回転軸の径方向視でガード部23をプロペラ13に接近して配置することができるので、プロペラ13の保護をより確実にすることができる。また、例えば本体部11のみを保護するために、ガード部23をプロペラ13とアーム部12との隙間に、つまり平面視でプロペラ13と重複するよう配置しても、ガード部23がプロペラ13と接触することを防止できる。このようなガード部23とプロペラ13との接触を防止する効果は、経年変化や何らかの異常によりガード部23が緩んでその張力が低下した場合に特に有効となる。
【0028】
また、プロペラ13の回転軸の径方向視でガード部23をプロペラ13に接近して配置することによって、ガード部23とプロペラ13との接触を避けつつ飛行装置Fの全体の高さ及び水平投影面積を小さくすることができるので、飛行装置Fの機動性を向上すると共に空気抵抗を小さくすることができる。
【0029】
また、ガード部23は、その厚み方向視においてプロペラ13と重複しないよう保持されることが好ましい。これにより、ガード部23がその振動が比較的大きくなりやすい方向にはプロペラ13と重複しないので、ガード部23とプロペラ13との接触を効果的に防止することができる。
【0030】
プロペラ13の回転軸と平行な方向にたわみ振動(縦ブレ)し難いガード部23がプロペラ13の回転軸と略平行に延びるガード接続部222に支持されることによって、ガード部23がその振動によってガード接続部222上で位置ずれすることを抑制できるので、このような原因でガード部23とプロペラ13とが接触するリスクも低減することができる。
【0031】
図2に示すように、ガード部23は、6本の支持部材22の外端部に位置するガード接続部222の間を接続するように張り渡される。即ち、平面視において、6本(複数本)のガード部23によって6角形(多角形)が形成されており、複数のプロペラ13の全ては、この6角形の内側に位置する。以下、ガード部23の長手方向に沿う方向、つまりプロペラガード2全体の周方向に沿う方向を「張設方向」として説明する。
【0032】
緊張調整部材5は、変形可能な材料、例えば、アルマイト処理を施したアルミニウム合金によって構成される。なお、弾性変形可能な樹脂材料によって緊張調整部材5を構成してもよい。
【0033】
緊張調整部材5の構成について説明する。図3は、本実施形態のプロペラガード2の緊張調整部材5を示す平面図である。緊張調整部材5は、図3中の縦の一点鎖線Cを中心に左右対称な形状である。なお、図3中の縦の一点鎖線Cは、平面視で緊張調整部材5の中心を通る仮想的な直線である。以下の緊張調整部材5の説明において、同一部材であっても、図3中の左側にある部材には最後に符号Aを付し、右側にある部材には最後に符号Bを付して区別して説明することがある。しかしながら、以下の説明では、特にこれら区別する必要がない場合、この符号A又は符号Bを省略するものとする。
【0034】
本実施形態の緊張調整部材5は、支持部材22のガード接続部222が固定される装着部21と、ガード部23が接続される張力付与部120と、張力付与部120によってガード部23に付与する張力を調整する調整ボルト200が締結される張力調整部100と、を備える。装着部21、張力付与部120及び張力調整部100は、一体的に形成されており、各部の変形が相互に作用する形状となっている。
【0035】
装着部21には、支持部材22(ガード接続部222)の端部が固定される嵌合孔130が形成される。嵌合孔130は、平面視で長方形の形状をしており、上下方向に貫通している。嵌合孔130は、張力付与部120A,120Bに張設方向で挟まれる位置関係になっている。ガード接続部222の先端は、調整ボルト200が締め込まれていない状態における嵌合孔130の縦幅及び横幅と略同一又は僅かに狭い縦幅及び横幅を有している。
【0036】
張力付与部120A,120Bは、緊張調整部材5の両側のそれぞれに形成される部位であり、嵌合孔130の内壁の一部と一体的な構成となっている。張力付与部120A,120Bのそれぞれにはガード部23の端部が差し込まれるスリット121A,121Bが形成される。ガード部23は、その両側の端部に幅広の接続片230が形成されており、この接続片230がスリット121に差し込まれた状態で固定ネジ210A,210Bがそれぞれ締結されることによってガード部23が張力付与部120に固定される。なお、張力付与部120A,120Bの作用については後述する。
【0037】
張力調整部100A,100Bは、張力付与部120A,120Bのそれぞれに接続されるとともに嵌合孔130の内壁110A,110Bの一部を形成する。張力調整部100A,100Bは、嵌合孔130に連通するとともに一点鎖線Cが通過する隙間131をあけて対向している。調整ボルト200は、張力調整部100Aを貫通して張力調整部100Bに締結される。調整ボルト200を締め込む方向に回転させると張力調整部100Aと張力調整部100Bとが互いに近づく方向に移動し、調整ボルト200を締め込む方向と反対方向に回転させると張力調整部100Aと張力調整部100Bとが互いに離れる方向に移動する。
【0038】
プロペラガード2の状態としては、図1に示すように、ドローン1が飛行する際にプロペラ13を保護するために使用される状態と、図示はしないが、ドローン1が飛行せずにユーザ等により持ち運びされたり、保管されたりしているため、使用されていない状態と、が存在する。次に、プロペラガード2をドローン1に装着する方法及び張力付与部120A,120Bの作用について説明する。
【0039】
まず、ユーザ等は、プロペラガード2を使用状態にするために、図1に示すように、アーム接続部221の長手方向が水平方向に沿うように支持部材22を使用状態にする。この状態で支持部材22のガード接続部222に対して装着部21を有する緊張調整部材5を固定する作業を行う。
【0040】
図4は、支持部材22に装着前の緊張調整部材5を示す斜視図である。図4では、2本のガード部23が接続される緊張調整部材5が支持部材22に固定される前の状態が表されている。図4に示すように、使用状態の支持部材22のガード接続部222の先端(支持部材22の外端部)を緊張調整部材5の嵌合孔130に差し込む。
【0041】
図5は、図1の支持部材22に装着後の緊張調整部材5を示す斜視図である。次に、図5に示すように、嵌合孔130にガード接続部222の先端が差し込まれた状態で調整ボルト200を締め込む方向に回転させる。
【0042】
ここで、図3の白抜きの矢印を参照して緊張調整部材5の嵌合孔130の締め込み及び張力の付与について説明する。本実施形態では、張力調整部100A,100Bによる嵌合孔130に支持部材22を固定する動作と、張力付与部120A,120Bによる張力を付与する動作と、が連動するように構成されている。各動作に分けて説明する。
【0043】
調整ボルト200の締め込みによって張力調整部100Aと張力調整部100Bとが互いに近づく方向に移動すると、張力調整部100A,100Bにおける嵌合孔130の内壁110A,110Bを形成する部位がガード接続部222(支持部材22)を押し込む方向に移動する。調整ボルト200を締め込む力が嵌合孔130を狭める方向に作用することにより、ガード接続部222が嵌合孔130から外れないように固定される。
【0044】
調整ボルト200の締め込みによって張力調整部100Aと張力調整部100Bとが互いに近づく方向に移動すると、張力調整部100Aに接続される張力付与部120Aが支点140を回転中心としてドローン1の本体部11から離れる方向(外側)に回動するとともに、張力調整部100Bに接続される張力付与部120Bが支点140を回転中心としてドローン1の本体部11から離れる方向(外側)に回動するように緊張調整部材5が変形する。これによって張力付与部120A,120Bのそれぞれに接続されるガード部23が外側に引っ張られる状態となり、張力が付与される。
【0045】
以上、説明した嵌合孔130に支持部材22を固定する動作と、張力付与部120A,120Bによる張力を付与する動作と、は、張力調整部100Aと張力調整部100Bの移動によって略同時に開始される。即ち、調整ボルト200を締め込むという1つの動作により、調整ボルト200の締結力が張力調整部100から内壁110及び張力付与部120のそれぞれに伝達され、嵌合孔130の締め込み及び張力付与部120の張力の付与が行われることになる。そして、嵌合孔130の締め込む力の大きさ及び張力付与部120に付与される張力の大きさは、挿入された調整ボルト200の締め付け度合いに応じて調整することができる。プロペラガード2を装着する装着部21が緊張調整部材5を兼ね備えていると言うこともできる。緊張調整部材5は、6本の支持部材22のそれぞれに装着される。
【0046】
ガード部23は、その両側に緊張調整部材5が配置されており、張設方向で両側の緊張調整部材5側に引っ張られる張力が付与されることになる。ここで、図6A及び図6Bを参照して1本のガード部23に両側から付与される張力について説明する。図6Aは、張力付与前のガード部23と、当該ガード部23の両端部のそれぞれに接続される緊張調整部材5A,5Bと、を模式的に示した図である。図6Bは、張力付与後のガード部23と、当該ガード部23の両端部のそれぞれに接続される緊張調整部材5A,5Bと、を模式的に示した図である。
【0047】
図6Aの状態は、緊張調整部材5A,5Bの調整ボルト200の締め込みが行われる前の状態であり、ガード部23は相対的に弛緩しており、外部から加えられた力によって容易に変形が可能な状態である。図6Aに示す状態から各緊張調整部材5A,5Bの調整ボルト200を締め込むと、各緊張調整部材5A,5Bの張力付与部120が支点140を回転中心としてドローン1の本体部11から離れる方向に回動するように変形する。これによって、ガード部23が緊張調整部材5A側と緊張調整部材5B側とのそれぞれに引っ張られた状態となり、図6Bに示す状態に遷移する。
【0048】
図6Bに示すように、調整ボルト200の締め込みにより、各緊張調整部材5A,5Bの張力付与部120は、互いに離間する方向であって、ガード部23を外側に巻き込むように回動するので、ガード部23が各緊張調整部材5A,5Bのそれぞれに引っ張られて図6Aに示す状態よりも緊張した状態となる。これによってガード部23の撓みがなくなり、張設方向に直交する方向に変位し難い状態となる。
【0049】
特に、張力付与部120がガード部23を外側に巻き込むように回動することによって、緊張調整部材5A,5B間の距離がガード部23の有効長(緊張調整部材5A,5B間部分の長さ)よりも小さい場合に、ガード部23を平面視で外側に凸なアーチ状に変形させることでガード部23の外側面に張力が作用するよう内部応力を付与する。このようにガード部23に内部応力を付与することで、外力の影響が相対的に小さくなるため、さらなる変形、つまりガード部23の振動が生じ難くなる。
【0050】
また、ガード部23のたわみ振動は、弦の振動と考えることができる。ガード部23に張力を付与することによって、ガード部23内の音速(振動の伝搬速度)が増大するので、ガード部23の固有振動数が大きくなる。ガード部23の振動はプロペラ13の回転によって生じる風に起因する部分が大きいため、その振動は低周波成分が比較的多い。さらに、高次振動モードと比べてガード部23を比較的大きく振動させ得る1次振動モードの振動周波数は、高次振動モードの固有周波数よりも低い。このため、ガード部23に張力を付与して固有振動数を大きくすることによって、ガード部23のたわみ振動を効率よく抑制することができる。
【0051】
6本の支持部材22(ガード接続部222)の全てに対して緊張調整部材5の装着部21を装着し、各緊張調整部材5で調整ボルト200の締め込みを行うことにより、適切な張力が付与された状態でガード部23が周方向に張り渡される。これによってドローン1に対するプロペラガード2の装着作業が完了する。本実施形態のプロペラガード2は使用状態になると、上述の通り、ドローン1に放射対称型に六角形の形状でガード部23が張り渡される。本実施形態では、ガード部23は、その高さがプロペラ13の高さと同一又はそれ以上になるように、略L字状の支持部材22によって支持されている。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。以下、本発明の別の実施例について説明する。なお、上記実施形態と共通又は同様の構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0053】
上記実施形態では、緊張調整部材5が装着部21と一体的に構成される例について説明したが、緊張調整部材5は、ガード部(可撓性部材)23の張力の調整ができる機能を有すれば足り、緊張調整部材5が装着部21を兼ねない構成とすることができる。緊張調整部材が異なる第1変形例について説明する。図7は、ドローン1に第1変形例のプロペラガード402を装着した飛行装置Faの模式平面図である。図7に示すプロペラガード402は、複数の係合部421と、複数の係合部421に張り渡される1本のガード部423と、ガード部423に張力を付与する1つの緊張調整部材405と、を備える。
【0054】
第1変形例では、6本の支持部材22の外端部のそれぞれに係合部421が固定されている。各支持部材22に配置される合計6個の係合部421は、何れも、ガード部423の張設方向(周方向)の移動を許容するように形成される。例えば、係合部421は、凹状に形成される周面に係合されたガード部423が張力の付与具合により張設方向に摺動可能な摺動機構として構成してもよい。あるいは、係合部421を回転可能なローラによって構成し、当該ローラの周面にガード部423が掛け回される構成としてもよい。この構成では、張力の付与具合によりローラが回転しながらガード部423が張設方向に移動することになる。
【0055】
ガード部423は、1本の可撓性及び弾性を有する材料によって構成される帯状部材又は線状部材である。例えば、炭素繊維複合材やゴム等の素材によってガード部423が構成される。この変形例では、1本のガード部423が6個の係合部421に掛け回されることにより、平面視で六角形の環が形成される。そして、ドローン1の全てのプロペラ13がガード部423の環の内側に位置する状態となる。
【0056】
緊張調整部材405は、ガード部423における支持部材22の間に位置し、支持部材22に固定される係合部421とは別体である。緊張調整部材405には、ガード部423の一側の端部と、ガード部423の他側の端部と、の両方が連結される。緊張調整部材405は、環状に掛け回されたガード部423の一側の端部と他側の端部を近づけることにより、ガード部423に張設方向の張力を付与する。本変形例の緊張調整部材405は、ネジ機構等によって構成される張力調整部(図示省略)を有し、該張力調整部によってガード部423の引き込み量を調整可能に構成される。張力調整部のネジ機構を所定方向に回転させるとガード部423の引込量が増え、反対方向に回転させると引き込み量が減るように緊張調整部材405は動作する。
【0057】
上述の通り、本変形例では、1本のガード部423によってプロペラ13を囲う環が形成される。従って、ガード部423が一側の端部と他側の端部とが張設方向で近付くように移動すると、各係合部421に掛け回されているガード部423が移動して緊張調整部材405側に引き込まれ、ガード部423の環全体に張力が付与される状態となる。逆に、緊張調整部材405によってガード部423が一側の端部と他側の端部とが張設方向で離間するように移動すると、ガード部423は相対的に弛緩した状態となる。
【0058】
プロペラガード402をドローン1に装着するときは、ガード部423を係合部421に掛け回し、その後、緊張調整部材405によるガード部423の引込量を増加させることにより、ガード部423の全周にわたって張力が付与される状態となる。このように、複数の係合部421に張り渡されるガード部423への張力を1つの緊張調整部材405によって付与する構成とすることもできる。
【0059】
次に、第1変形例と同様の構成を有するプロペラガード2bを異なる構成のドローン1bに装着した第2変形例の飛行装置Fbについて説明する。図8は、第2変形例のプロペラガード452が適用されるドローン1bの模式平面図である。図8に示すように、第2変形例のドローン1bは、本体部11から3本のアーム部12が延出し、アーム部12のそれぞれに支持部材22が配置される構成である。支持部材22の外端部には、第1変形例と同様の係合部453が配置される。第2変形例では、1本のガード部455が係合部453に掛け回されることによって形成される環が平面視において三角形状となる。第2変形例における緊張調整部材405も、第1変形例と同様の構成である。即ち、本変形においても、1つの緊張調整部材405によってガード部455の全周に張力が付与されることになる。
【0060】
以上説明した第1変形例及び第2変形例では、1本のガード部423,455に対して緊張調整部材405が配置される例を説明したが、緊張調整部材405は、その数が1個に限定されるわけではなく、複数配置する構成としてもよい。例えば、六角形や三角形の各辺の全てに緊張調整部材405を配置する構成や、間欠的に緊張調整部材405を配置する構成としてもよい。また、ガード部423,455を複数に分割し、複数のガード部によって1つの環を形成し、ガード部ごとに緊張調整部材405を配置する構成としてもよい。
【0061】
また、第2変形例で示した構成において、緊張調整部材405を第1の実施形態で説明した装着部21と一体的に構成される緊張調整部材5に変更することもできる。次に、第2変形例の緊張調整部材405を装着部21の機能を兼ねる緊張調整部材5に変更した第3変形例について説明する。図9は、第3変形例のプロペラガード502を第2変形例と同様のドローン1bに装着した飛行装置Fcの模式平面図である。
【0062】
図9に示すように、第3変形例では、3本の支持部材22のうちの1本には、最初の実施形態で説明した装着部21を兼ねる緊張調整部材5が配置されている。また、残りの2本の支持部材22には、第1変形例及び第2変形例で説明した係合部453が配置されている。プロペラガード502をドローン1bに装着するときは、ガード部455を2個の係合部453に掛け回した状態で、緊張調整部材5を支持部材22に固定する作業を行う。ガード部455は、一側の端部が緊張調整部材5の一側(張力付与部120A)に固定されるとともに他側の端部が緊張調整部材5の他側(張力付与部120B)に接続されている。即ち、ガード部455の一側の端部と他側の端部とは同一の緊張調整部材5に接続されている。上述の通り、緊張調整部材5は、支持部材22の固定とガード部455への張力の付与を1つの動作によって完了することができるので、緊張調整部材5の支持部材22への固定とともに、ガード部455に適切な張力を付与するための作業が完了する。第3変形例においても、1本のガード部455によって平面視で三角形状の環が形成される。
【0063】
以上説明したように、1本のガード部455に対して装着部21を兼ねる緊張調整部材5を配置する構成においても、1個の緊張調整部材5によってガード部455の全周にわたって張力を付与することができる。
【0064】
以上、第1変形例〜第3変形例を参照して説明してきたように、可撓性部材としてのガード部によって形成される環の形状は、六角形に限定されない。例えば、第2変形例及び第3変形例で示した三角形に限らず、四角形、五角形、七角形、八角形等、角数が3つ以上の多角形の環や円環等、適宜の形状を可撓性部材によって形成できる。また、必ずしも全周を囲う構成に限定されるわけではなく、可撓性部材における周方向の一部に隙間が形成されてもよい。即ち、プロペラガード(保護部材)における使用状態の全体形状は、ドローンの形状、プロペラの数、配置位置に応じて適宜変更できる。また、装着部の数に対する緊張調整部材の数も、一致する必要はなく、装着部の数に対して緊張調整部材の数の方が少ない構成とすることもできる。例えば、第3変形例のガード部455によって形成される環を六角形や七角形等の角数の大きい多角形とし、1本のガード部455に対して1個の緊張調整部材5で張力を付与する構成とすることもできる。なお、緊張調整部材の数が装着部の数(プロペラガードが形成する多角形の角の数)よりも少ない構成において、装着部の数が多い場合、ガード部は柔らかい素材によって構成されることが好ましい。これによって、弾性が比較的高い素材を用いた場合に、緊張調整部材の数が装着部の数より少ないために張力が十分に付与されずにガード部が外側に膨らむような事態を避けることができる。
【0065】
このように、可撓性部材、緊張調整部材及び装着部は、何れも、任意の個数の任意の場所に配置することができる。また、本発明は、以上説明してきた上述の実施形態や変形例の形状や構成に限定されない。装着簡易性を保ちつつ持ち運びが容易な保護部材を実現する範囲において各種各様な形状や構成を有することができる。
【0066】
例えば、上述の実施形態や変形例において、調整ボルト200によって装着部21と支持部材22を固定する例を説明したが、この構成に限定されない。例えば、調整ボルト200を使用せず、装着部21の嵌合孔130に嵌合させる支持部材22の外端部が専用のコネクタ等であってもよい。同様に、固定ネジ210によって装着部21とガード部23とを固定する例を説明したが、この構成に限定されない。例えば、固定ネジ210に替えてベルトを固定するために使用されるバックル等の留め金等によってガード部23を固定する構成としてもよい。
【0067】
また、可撓性部材の張力を調整する機構を、飛行体又は支持部材に設けてもよい。具体的には、アーム部又は支持部材に、可撓性部材と飛行体の本体部との距離を変更することにより可撓性部材の張力を調整する緊張調整機構を設けてもよい。
【0068】
また、図10は、第4変形例のプロペラガード602を示す。プロペラガード602は、図1のプロペラガード2に換えて、ドローン1に支持部材22を介して装着することができる。
【0069】
プロペラガード602は、平面視においてドローン1を囲うように張設される複数のガード部623を備える。また、プロペラガード602は、ガード部623の張設方向の張力を調整可能な緊張調整部材605をさらに備える。緊張調整部材605は、ガード部623を支持部材22に固定する装着部621と、ガード部623に張力を付与する張力付与部620A,620Bとを有する。
【0070】
プロペラガード602において、ガード部623は、その厚み方向がドローン1のプロペラ13の回転軸と略平行になるよう支持される。これにより、水平視におけるプロペラガード602の投影面積が小さくなるので、飛行装置が飛行する際のガード部623の空気抵抗を小さくすることができる。また、ガード部623は、プロペラ13の回転軸と略平行な方向(垂直方向)には比較的振動しやすいが、プロペラ13の回転軸と直角な方向(平面方向)には振動し難くなる。これにより、平面視におけるガード部623とプロペラ13とのクリアランス(隙間)を小さくしても、ガード部623がプロペラ13と接触し難い。つまり、プロペラガード602は、飛行装置全体の平面寸法を小さくして機動性を向上すると共に、空気抵抗を低減することができる。
【0071】
プロペラガード602は、プロペラ13の回転軸の径方向視においてガード部623がプロペラ13と重複するようドローン1に装着されることが好ましい。これにより、飛行装置全体の高さ寸法及び水平投影面積をより小さくして機動性をさらに向上すると共に空気抵抗をさらに低減することができる。
【0072】
また例えば、ガード部23,423,455,623は、可撓性の部材であれば足り、その材質は特に限定されない。例えば、炭素繊維複合材やゴム等の素材以外、例えば、軟質樹脂等により可撓性部材を構成してもよい。
【0073】
また例えば、上述の実施形態や変形例では、6本のガード部23,623によって1つの環を形成する構成や1本のガード部423,455によって1つの環を形成する例を説明したが、この構成に限定されない。1本、又は複数本の可撓性部材によって形成される環を上下方向に複数配置する構成としてもよい。例えば、上記実施形態において、プロペラ13よりも高い位置に第1の可撓性部材によって形成される環を配置し、プロペラと略同じ高さの位置に第2の可撓性部材によって形成される環を配置し、プロペラよりも低い位置に第3の可撓性部材によって形成される環を配置する構成としてもよい。このように、プロペラに対する可撓性部材の位置は、その高さ及び水平方向の距離を含めて事情に応じて適宜変更することができる。
【0074】
また例えば、上述の実施形態において、ガード部23の張力の調整については、調整ボルト200等の回転に合わせて、緊張調整部材が変形してガード部23の張力が調整される構成を例として説明を行ったが、この構成に限定されない。例えば、上述の緊張調整部材5の一部が変形する構成だけでなく、緊張調整部材の全体が変形する構成や、リンク機構等のような機械的な機構を連動させて張力付与部及び嵌合孔の動作を連動する構成としてもよい。例えば、平面視においてドローン1の本体部11を中心としたときの本体部11の中心から離れる方向(径方向外側)に移動する機構によってガード部に張力を付与する構成としてもよい。また、張力付与部が可撓性部材に張力を付与する方向に動作すると、リンク機構を介して嵌合孔が狭まる構造としてもよい。また、空気等の流体を注入して膨張する部材によって張力付与部及び嵌合孔の動作を連動する構成としてもよい。
【0075】
また例えば、上述の実施形態において支持部材22がアーム部12に対して回転可能な構成を説明したが、この構成に限定されない。支持部材がアーム部の内部に収容可能な構成やアーム部に対して着脱自在な構成や支持部材がアーム部と一体的な構成であってもよい。また、保護部材が、支持部材を備える構成としてもよい。例えば、装着部21と支持部材22が一体的な構成としてもよい。
【0076】
また、例えば、上述の実施形態や変形例にアーム部12及び支持部材22の水平方向の長さを調整したり、支持部材22の高さを調整したりすることが可能な調整機構を加えてもよい。プロペラ13がプロペラガード2に接触せずに自在に回転できるとともに、プロペラ13を適切に保護できる位置にプロペラガード2がドローン1に装着される必要がある。この変形例によれば、異なるサイズのドローンであっても、1種類の保護部材で対応できる。
【0077】
また、例えば、上述の実施形態においてガード部の両側のそれぞれに緊張調整部材が配置される構成を説明したが、この構成に限定されない。可撓性部材の張設方向の一側だけに緊張調整部材(張力付与部)が配置され、張設方向の他側は単に固定される構成としてもよい。本構成によっても、可撓性部材の一側が引っ張られることにより、当該可撓性部材が緊張状態となる。
【0078】
また、上述の実施形態では、ガード部23,423,455,623が本体部11(プロペラ13)の外側を囲うように平面的に張り渡されているだけであるが、これに加えて、異なる高さに張り渡される可撓性部材を設けてもよい。例として、対象位置にある装着部21間に、側面視において本体部11の上部を覆う形状(例えば三角形状、台形状、アーチ状等)になるよう、さらなる可撓性部材を張り渡してもよい。このために、本体部11又はアーム部12に接続されてプロペラ13よりも上方に突出するさらなる支持部材を設けてもよい。
【0079】
また、場合によっては上述の実施形態から緊張調整機構を省略することもできる。この場合、プロペラガードをドローンに装着した時点で十分な張力がガード部(可撓性部材)に付与されるように設計されることが好ましい。
【0080】
また例えば、上述の実施形態では、保護部材は、ドローン1に装着されるプロペラガードとしたが、装着対象はドローン1に特に限定されず、有人も含めて飛行体であれば足りる。
【0081】
以上を換言すると、次のような構成により、以下の効果を奏する。即ち、1以上のプロペラ(例えば、プロペラ13)を有する飛行体(例えばドローン1,1b)の保護部材(例えば、プロペラガード2,402,502,602)は、飛行体に接続される支持部材(例えば、支持部材22)に支持され、平面視において1以上のプロペラの外側を囲うように張り渡される可撓性部材(例えば、ガード部23,423,455,623)と、前記可撓性部材の張設方向の張力を調整可能な緊張調整部材(例えば、緊張調整部材5,405)と、を備える。これにより、飛行中は緊張調整部材の調整によって可撓性部材に付与される張力を強くして衝撃を効果的に吸収し、使用していない状態では可撓性部材を所望の形状に容易に変形させることができる。例えば、ユーザ等は飛行体としてのドローン1を持ち運ぶ際に専用ケースを使用する場合があるが、このような専用ケースの大きさに合わせてガード部23の形状を変形させてドローン1とともに保護部材を持ち運ぶことができる。これによって、ドローン等の飛行体への装着簡易性を保ちつつ、持ち運びが容易な保護部材(プロペラガード等)を実現できる。
【0082】
また、前記飛行体の前記保護部材は、前記可撓性部材を前記支持部材に固定する装着部(例えば、装着部21)を備え、前記装着部は、前記緊張調整部材と一体的に構成されてもよい。これにより、保護部材の部品点数を少なくすることができるとともに、装着作業を迅速かつスムーズに行うことができる。
【0083】
また、前記装着部は、前記支持部材に対して着脱自在に構成されてもよい。これにより、装着簡易性の高い保護部材を場面に応じて繰り返し使用できる。
【0084】
また、前記装着部は、前記支持部材の端部が嵌合される嵌合孔(例えば、嵌合孔130)を有し、前記緊張調整部材は、前記可撓性部材が接続される張力付与部(例えば、張力付与部120)を有し、前記張力付与部が前記可撓性部材に張力を付与する動作と前記嵌合孔が狭まる動作とが連動してもよい。これにより、1つの動作で可撓性部材への張力の付与と嵌合孔への支持部材の固定を完了することができる。
【0085】
また、前記緊張調整部材は、前記張力付与部及び前記嵌合孔の内壁(例えば、内壁110)と一体的かつ変形可能に構成されるとともに締結部材が締結される張力調整部(例えば、張力調整部100)を有し、前記締結部材(例えば、調整ボルト200)が締め込まれると前記張力調整部が移動し、該張力調整部の移動に伴って前記張力付与部が前記可撓性部材に張力を付与する方向に変形するとともに、前記内壁が前記嵌合孔を狭めるように変形してもよい。これにより、張力付与部による張力の付与と嵌合孔への支持部材の固定作業の連動をシンプルな構成で実現できる。また、張力を付与する前の状態に変形させることもできるので、取り外す作業も容易に行うことができる。
【0086】
また、前記張力付与部(例えば、張力付与部120A,120B)は、前記嵌合孔を挟んで一側と他側に2箇所配置されるとともに、それぞれに前記可撓性部材が接続され、前記張力調整部(例えば、張力調整部100A,100B)は、前記嵌合孔に連通する隙間(例えば、隙間131)を挟んで一側と他側とに2箇所配置され、前記締結部材が一側の前記張力調整部を貫通した状態で他側の前記張力調整部に締め込まれると、一側と他側との前記張力調整部が互いに近づく方向に移動し、これらの前記張力調整部の移動に伴って一側と他側との前記張力付与部のそれぞれに接続される前記可撓性部材に張力が付与されるとともに前記嵌合孔が狭まってもよい。これにより、張力の付与及び嵌合孔の締め込みを1回の作業で完了することができるとともに、2本の可撓性部材の張力をバランス良く設定できる。
【0087】
また、前記飛行体は本体部(例えば、本体部11)及び前記本体部から延出し、前記プロペラが配置されるアーム部(例えば、アーム部12)を複数備え、前記支持部材の前記本体部側の端部が前記アーム部の先端部に接続され、前記支持部材の先端側で複数の前記プロペラの全ての外側を囲うように前記可撓性部材が張り渡されてもよい。これにより、プロペラが本体部から離れた位置にあっても、干渉することなく複数のプロペラの外側に可撓性部材を張り渡すことができる。
【0088】
また、前記可撓性部材は、上下方向において前記プロペラの高さと同一又はそれ以上の高さに位置するように張り渡されてもよい。これにより、プロペラが建物や木々に直接接触する事態を効果的に防止できる。特に、飛行体の上昇局面において上方に保護部材がないプロペラ13の損傷を効果的に防止することができる。
【0089】
また、前記可撓性部材は、弾性を有してもよい。これにより、保護部材の装着性及び衝撃吸収性を高いレベルで実現できる。また、弾性変形によって衝突時の衝撃を逃がすことができるので、耐衝撃の観点で要求される可撓性部材の強度を低減することも可能であり、強度上のメリットがある。
【0090】
また、前記可撓性部材は、炭素繊維複合材によって構成されてもよい。これにより、軽量かつ高い強度により、ドローンの飛行性能を損なうことなく十分な耐衝撃性を有する保護部材を実現できる。
【0091】
また、前記可撓性部材は、張設方向に複数配置される係合部(例えば、係合部421,453)によって摺動可能に係合され、前記緊張調整部材は、前記複数の係合部間の少なくとも1つに配置されてもよい。これにより、1つの緊張調整部材により、係合部をまたいで広範囲に可撓性部材に張力を付与でき、全体として緊張調整部材の数を少なくすることができる。
【0092】
また、1以上のプロペラ(例えば、プロペラ13)を有する飛行体(例えばドローン1)の保護部材(例えば、プロペラガード2,402,502)は、飛行体に接続される支持部材(例えば、支持部材22)に支持され、平面視において1以上のプロペラの外側を囲うように張り渡される可撓性部材(例えば、ガード部23,423,455)と、前記可撓性部材における張設方向の一側の端部が接続され、前記支持部材に支持された状態の前記可撓性部材を張設方向の一側に引っ張って当該可撓性部材を緊張させる張力付与部(例えば、緊張調整部材5Aの張力付与部120)と、を備える。これにより、可撓性部材を張設方向で撓みのない緊張状態とし、張設方向に交差する方向で変位し難い状態にすることができる。これによって、上下方向や水平面において張設方向に直交する方向等、張設方向に交差する方向で障害物が可撓性部材に接触しても、その位置を保持してプロペラの損傷を確実に防止できる。また、本構成においても、使用していない状態では可撓性部材を所望の形状に容易に変形させることができ、飛行体への装着簡易性を保ちつつ、持ち運びが容易な保護部材(プロペラガード等)を実現できる。
【0093】
また、飛行体の保護部材は、前記可撓性部材の他側の端部が接続され、前記支持部材に支持された状態の前記可撓性部材を張設方向の他側に引っ張る第2の張力付与部(例えば、緊張調整部材5Bの張力付与部120)を更に備えてもよい。これにより、両側の張力付与部のそれぞれに可撓性部材が引っ張られることになるので、可撓性部材にバランス良く強い張力を付与でき、可撓性部材の保持力を一層向上させることができる。
【0094】
また、本体部(例えば、本体部11)及び前記本体部に保持される1以上のプロペラ(例えば、プロペラ13)を有する飛行体(例えばドローン1,1b)に装着される保護部材(例えば、プロペラガード2,402,502,602)は、前記本体部に接続される支持部材(例えば、支持部材22)に支持され、平面視において前記本体部の外側を囲うように張り渡される可撓性部材(例えば、ガード部23,423,455,623)と、を備え、前記可撓性部材が帯状である。このように帯状の可撓性部材は、その厚み方向には容易に曲げ変形可能であるため、使用していない状態では飛行体から取り外して可撓性部材を所望の形状に容易に変形させることができる。一方、帯状の可撓性部材は、その幅方向には変形し難いので、飛行体に装着したときには飛行体を取り囲んで保護することが容易である。従って、保護部材は、飛行体への装着が容易でありながら、持ち運びが容易なものとできる。また、可撓性部材は、その厚み方向には容易に曲げ変形可能でありながら、その幅方向には変形し難いので、たわみ振動の方向をその厚み方向に制限することができる。従って、保護部材は、可撓性部材とプロペラとのクリアランスを小さくしても、可撓性部材とプロペラとの接触を効果的に防止することができる。
【0095】
また、前記可撓性部材は、その厚み方向が前記プロペラの回転軸に略直角であってもよい。これにより、飛行装置が他の物体に衝突する場合に可撓性部材が他の物体を損傷させるリスクを低減できる。
【0096】
また、前記可撓性部材は、前記プロペラの回転軸の径方向視において前記プロペラと重複しないよう保持されてもよい。このように、厚み方向が前記プロペラの回転軸に略直角でプロペラの回転軸と平行な方向のたわみ振動(縦ブレ)が小さい可撓性部材をプロペラと高さ位置が重ならないように支持することで、可撓性部材とプロペラとの接触を効果的に防止することができる。
【0097】
また、前記可撓性部材は、その厚み方向が前記プロペラの回転軸に略平行であってもよい。これにより、可撓性部材の厚み方向をプロペラの回転軸と略平行にすることによって、飛行装置が飛行する際の空気抵抗を低減することもできる。また、この構成によって、可撓性部材のプロペラの回転軸と直角な方向のたわみ振動(横ブレ)が小さくなるので、可撓性部材がプロペラと近い高さ位置に支持される場合にも、平面視における可撓性部材とプロペラとのクリアランスを小さくすることができる。
【0098】
また、前記可撓性部材は、前記プロペラの回転軸の径方向視において前記プロペラと重複するよう保持されてもよい。このように、その厚み方向が前記プロペラの回転軸に略平行であることにより可撓性部材のプロペラの回転軸と直角な方向のたわみ振動(横ブレ)が小さい可撓性部材をプロペラと同じ高さに配置することによって、プロペラが他の物体に直接衝突することをより確実に防止することができる。また、この場合には、平面視における可撓性部材とプロペラとのクリアランスを小さくできる効果が特に顕著となる。
【0099】
また、前記可撓性部材は、その厚み方向視において前記プロペラと重複しないよう保持されてもよい。このように、可撓性部材をその振動が比較的大きくなりやすい厚み方向にプロペラと重複しないよう保持することによって、可撓性部材とプロペラとの接触をさらに効果的に防止することができる。
【0100】
また、前記可撓性部材を前記支持部材に固定するとともに、前記可撓性部材の張設方向の張力を調整可能な緊張調整部材をさらに備えてもよい。これにより、可撓性部材のたわみ振動を抑制し、可撓性部材とプロペラとの接触をより効果的に防止することができる。
【0101】
また、飛行装置(例えば飛行装置F,Fa,Fb,Fc)は、保護部材(例えば、プロペラガード2,402,502,602)と、本体部(例えば、本体部11)及び前記本体部に保持される1以上のプロペラ(例えば、プロペラ13)を有する飛行体(例えばドローン1,1b)と、前記本体部に接続され、前記保護部材を支持する支持部材(例えば、支持部材22)と、を備える。このように、飛行装置は、飛行体への装着が容易でありながら、持ち運びが容易な保護部材を備えるため、飛行装置全体としても、組立が容易でありながら、持ち運びが容易であり、且つ可撓性部材とプロペラとの接触を効果的に防止することができる。
【0102】
前記支持部材は、平面視において前記飛行体から外側に延びる固定部と、前記固定部の先端部から前記プロペラの回転軸と略平行に延びる延設部とを有し、前記可撓性部材は、前記延設部の先端部に支持されてもよい。これにより、飛行体に対する保護部材の高さを容易に調節することができるので、可撓性部材をプロペラに接触し難いよう支持することができる。
【符号の説明】
【0103】
1,1b・・・ドローン、2,402,502,602・・・プロペラガード、5,405・・緊張調整部材、11・・・本体部、12・・・アーム部、13・・・プロペラ、21,621・・・装着部、22・・・支持部材、23,423,455,623・・・ガード部、100・・・張力調整部、110・・・内壁、120・・・張力付与部、130・・・嵌合孔、140・・・支点、200・・・調整ボルト、221・・・アーム接続部、222・・・ガード接続部、係合部・・・421,453、F,Fa,Fb,Fc・・・飛行装置
図1
図2
図3
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図5
図6A
図6B
図7
図8
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図10