特許第6835818号(P6835818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835818セルロース、ヘミセルロース、リグニンを含有するエアフレッシュナーゲル
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  • 特許6835818-セルロース、ヘミセルロース、リグニンを含有するエアフレッシュナーゲル 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835818
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】セルロース、ヘミセルロース、リグニンを含有するエアフレッシュナーゲル
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/012 20060101AFI20210215BHJP
   A61L 9/04 20060101ALI20210215BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   A61L9/012
   A61L9/04
   A61L9/01 U
   A61L9/01 V
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-504257(P2018-504257)
(86)(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公表番号】特表2018-522664(P2018-522664A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016068150
(87)【国際公開番号】WO2017017251
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年7月17日
(31)【優先権主張番号】62/198,168
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15184080.8
(32)【優先日】2015年9月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リュトガー ファン スレーウェン
(72)【発明者】
【氏名】アネック ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド アリソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー ノルマン
【審査官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0031572(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0037080(US,A1)
【文献】 特表2010−530219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル組成物であって、
a)前記組成物の総重量に対して0.1重量%〜10重量%の量の、セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤、
b)前記組成物の総重量に対して0.1重量%〜5重量%の量の活性揮発性成分含有油、
c)前記組成物の総重量に対して85重量%〜98.9重量%の量の水、
d)前記組成物の総重量に対して0.01重量%〜1重量%の量の2価カチオン、
e)前記ゲル組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量の金属イオン封鎖剤および
f)前記ゲル組成物の総重量に対して3重量%未満の量のpH調整剤
を含み、ここで、前記組成物は、エアフレッシュナーである、ゲル組成物。
【請求項2】
前記活性揮発性成分が、香料である、請求項1記載のゲル組成物。
【請求項3】
前記2価カチオンが、リン酸カルシウムである、請求項1記載のゲル組成物。
【請求項4】
前記pH調整剤が、グルコノデルタラクトンである、請求項1記載のゲル組成物。
【請求項5】
前記金属イオン封鎖剤が、トリポリリン酸ナトリウムである、請求項1記載のゲル組成物。
【請求項6】
請求項1記載のゲル組成物を調製する方法であって、以下の工程:
a)セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤を水と混合する工程、
b)工程a)で得られた混合物に金属イオン封鎖剤を添加する工程、
c)任意に、工程b)で得られた混合物を加熱する工程、
d)工程c)で得られた混合物に
i)2価カチオン、
ii)pH調整剤および
iii)活性揮発性成分含有油
を添加する工程
を含む、方法。
【請求項7】
前記ゲルを、室温に冷却させる前に、型または適切な容器にさらに注ぐ、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記pH調整剤が、グルコノデルタラクトンである、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記pH調整剤を、前記ゲル組成物の総重量に対して0.01重量%〜3重量%の量で添加する、請求項6記載の方法。
【請求項10】
エアフレッシュナーとしての請求項1記載のゲル組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフレッシュナー(air fresheners)の分野に関する。それは、より詳細には、中に含まれる活性揮発性成分、例えば香料の有効かつ長期の蒸発を可能にするゲル組成物に関する。本発明のゲル組成物は、活性揮発性成分と、セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤とを含む。
【背景技術】
【0002】
近年、揮発性化合物、例えば、香料、消毒剤、防虫剤などを拡散するための様々なデバイスの使用がますます増加している。エアフレッシュナーデバイスまたは消臭デバイスは、実際にすべての家庭において、悪臭を隠蔽するために、または香気成分(fragrances)もしくはその他の揮発性活性成分を、該デバイスを取り巻く空気、特に部屋および食器棚、ゴミ箱およびその他の閉鎖環境に拡散するために現在使用されている。
【0003】
香気成分およびその他の空気改質物質、例えば清浄剤または消毒剤を拡散するのに使用されることができる様々な種類のデバイスの中でも、活性揮発性成分を拡散することができる系の1つの分類が、固体材料または有効成分を含浸させた担体からなる固体デバイスである。そのようなデバイスは、活性成分を吸収し、その後に程度の差はあれ制御された様式で該活性成分を放出することができる様々な材料から形成されていてよい。そのような既知の材料の例には、寒天またはステアリン酸ナトリウムゲルなどのゲル、合成ポリマー樹脂、または無機材料のブロック、例えば、石膏またはシリカが含まれる。
【0004】
ヒドロゲルとしても知られている、ゲルをベースとするデバイスは、当技術分野において周知である。ゲル組成物は、通常、水、ゲル化剤および揮発性化合物を含み、ここで、ゲル化剤は、いわゆる超吸収性ポリマー、例えばデンプンをベースとする系、化学修飾セルロースまたは天然ゴムから選択される吸収材料である。
【0005】
米国特許出願公開第20050037080号明細書(US20050037080)において報告されているエアフレッシュナーとして有用なゲル組成物の例は、ゲル形成ポリマーとしてのアルギン酸塩、カルボキシメチルセルロースなどの添加ポリマー、2価カチオンおよび香料のような活性物質を含む。しかしながら、前記ゲル組成物は、カルボキシメチルセルロースなどの天然には存在しない成分の存在を必要とする。
【0006】
一般的に使用されるゲル組成物の1つは、ゲル化剤としての天然のカラギナンをベースとする。この種類のヒドロゲルは、経時的な活性成分放出プロファイルの点で満足のいくものであるが、それは高熱に曝されると不安定になり、多量の香料の使用を必要とするオフノート(off−notes)を有していることから、この組成物のコストを増加させる。
【0007】
したがって、オフノートのような先行技術の解決策の欠点を克服しつつ、カラギナンとして長期間にわたって揮発性化合物を拡散することができる天然のゲル化剤を含むゲル組成物を提供する必要がある。
【0008】
本発明は、セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル組成物を使用することにより、上記の問題に対する解決策を提供する。米国特許第7833558号明細書(US7833558)は、繊維含有ペクチン生成物を調製する方法を記載しており、ゲル化および粘性付与特性に言及している。しかしながら、エアフレッシュナーである本発明のゲル組成物は、いずれの先行技術文献にも記載または示唆されていない。
【0009】
本発明の概要
本発明は、中に含まれる揮発性活性成分の経時的な優れた放出を示し、カラギナンをベースとする商業的に関連するゲルと比較して、オフノートが少なく、熱安定性が改善された新規のゲル組成物に関する。特に、ゲル化剤としてセルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含む前記ゲル組成物は、良好な香気成分強度プロファイルおよびより低いオフノートを有する好適なエアフレッシュナーを提供する。
【0010】
したがって、本発明の第1の対象は、
a)組成物の総重量に対して0.1重量%〜10重量%の量の、セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤、
b)組成物の総重量に対して0.1重量%〜5重量%の量の活性揮発性成分含有油、
c)組成物の総重量に対して85重量%〜98.9重量%の量の水、
d)組成物の総重量に対して0.01重量%〜1重量%の量の2価カチオン、
e)ゲル組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量の金属イオン封鎖剤および
f)ゲル組成物の総重量に対して3重量%未満の量のpH調整剤
を含むゲル組成物であって、ここで、前記組成物は、エアフレッシュナーである。
【0011】
本発明の第2の対象は、以下の工程:
a)セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤を水と混合する工程、
b)工程a)で得られた混合物に金属イオン封鎖剤を添加する工程、
c)任意に、工程b)で得られた混合物を加熱する工程、
d)工程c)で得られた混合物に
i)2価カチオン、
ii)pH調整剤および
iii)活性揮発性成分含有油
を添加する工程
を含む、上記で定義したゲル組成物を調製する方法である。
【0012】
本発明の第3の対象は、上記で定義したゲル組成物を提供する工程を含む、活性揮発性成分の蒸発を調節、増強または変更する方法からなる。
【0013】
本発明の最後の対象は、上記で定義したゲル組成物をエアフレッシュナーとして使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による組成物から放出される香料のヘッドスペース分析によって測定された周囲環境における香気成分の異なる時点での存在量を表す図である。
【0015】
本発明の説明
本発明のゲル組成物は、商業的なカラギナンベースのゲルの利点、すなわち、香料および自然に優しいゲルの徐放を、初期に知覚される香料強度を高めながら維持する。さらに、本発明のゲル組成物は、カラギナンベースのゲル組成物に特有のマリン系オフノートを回避する。したがって、本発明は、活性揮発性成分含有油の濃度が低下した効率的なエアフレッシュナーを提供することを可能にし、ひいてはゲル化組成物のコストが有利には低下する。
【0016】
したがって、本発明の第1の対象は、
a)組成物の総重量に対して0.1重量%〜10重量%の量の、セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤、
b)組成物の総重量に対して0.1〜5重量%の量の活性揮発性成分含有油、
c)組成物の総重量に対して85〜98.9重量%の量の水、
d)組成物の総重量に対して0.01〜1重量%の量の2価カチオン、
e)ゲル組成物の総重量に対して0.5重量%未満の量の金属イオン封鎖剤および
f)ゲル組成物の総重量に対して3重量%未満の量のpH調整剤
を含むゲル組成物であって、ここで、前記組成物は、エアフレッシュナーである。
【0017】
本発明のゲル組成物のゲル化剤は、セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含み、例えばFiberGel(登録商標)(Florida Food Products,Incの商標であり、Florida Food Products,Incから市販されている)またはCitri−Fi(登録商標)(Fiberstar(登録商標)の商標であり、Fiberstar(登録商標)から市販されている)の商標名で販売されている。好ましくは、ゲル化剤は、化学修飾セルロースを含まない。より好ましくは、ゲル化剤は、天然に存在する化合物のみを含む。好ましくは、本発明のゲルのゲル化剤は、セルロース、ヘミセルロース、ペクチンを含み、例えばFiberGel(登録商標)の商標名で販売されているものを含む。前記ゲル化剤は、組成物の総重量に対して0.1重量%〜10重量%の量で、好ましくは1重量%〜5重量%の量で、さらにより好ましくは2重量%〜3重量%の量で使用される。好ましくは、ゲル化剤は、該ゲル化剤の総重量に対して5重量%〜25重量%の量のセルロース、ゲル化剤の総重量に対して5重量%〜25重量%の量のヘミセルロース、およびゲル化剤の総重量に対して25重量%〜60重量%の量のペクチンを含む。
【0018】
本発明の組成物は、該組成物の総重量に対して0.1重量%〜5重量%の量の活性揮発性成分含有油をさらに含む。「活性揮発性成分」とは、本明細書では、個々の成分、または成分の混合物であって、知覚可能で所望の利点を、それらが拡散されている空気の品質に付与し得ることを意味する。活性揮発性成分は、好ましくは、香料、香料成分、悪臭中和剤、殺菌剤、昆虫防除剤、殺生物剤活性物質およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、活性揮発性成分は、香料または悪臭中和剤である。さらにより好ましくは、活性揮発性成分は、香料である。
【0019】
「香料」として、任意の賦香成分またはその混合物を使用することができる。賦香成分とは、本明細書では、香料産業において現在使用されている化合物、すなわち、その周囲に快楽効果を付与するために賦香組成物または賦香製品において有効成分として使用される化合物を意味する。言い換えれば、香料を付けるものとみなされる、そのような成分または混合物は、香料の技術分野の当業者によって、好ましくは肯定的または快適な意味で、組成物または製品の匂いを付与または変更することができ、単に匂いを有するものではないと認識されなければならない。さらに、この定義は、匂いを必ずしも有さないが、賦香組成物または賦香製品の匂いを調節することができ、その結果、そのような組成物または製品の匂いのユーザーによる知覚を変更することができる化合物を含むことも意味する。
【0020】
これらの賦香成分の性質および種類は、本明細書では、より詳細な説明を保証するものではなく、それらは、いずれの場合にも網羅的ではないことから、当業者は、その一般知識、目的とされる使用または用途、および所望の官能効果に基づいてそれらを選択することができる。一般的な観点からは、これらの賦香成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、含窒素または含硫黄複素環式化合物および精油などの様々な化学的分類に属している。前記賦香成分は、天然または合成起源のものであってもよい。これらの成分の多くは、いずれの場合にも、参考文献、例えばS.Arctander著、Perfume and Flavor Chemicals,1969,Montclair,New Jersey,USA、またはその最新版、または同様のタイプのその他の著作物、それだけでなく香料の分野における豊富な特許文献にも記載されている。前記成分はまた、制御された様式で様々な種類の賦香化合物を放出することで知られている化合物であってもよいと理解される。特定の実施形態によれば、本発明のゲル組成物に導入された香料は、フローラル/フルーティな感覚刺激ノートを付与する。
【0021】
典型的には、香料は、香料製造業において現在使用されている担体、例えば溶媒を含むこともできる。そのような現在の香料添加物の量および性質は、本発明によるゲルの特性に悪影響を及ぼさないように、当業者によって選択され、その量が調節されることができる。香料成分または成分の混合物はまた、香料製造業において現在使用されているカプセル化担体に封入されたカプセル化形態でも担持させることができる。香気成分マイクロカプセルは、特に脆弱な賦香成分を保護するために、またはある特定の香料成分の放出を遅らせ、ひいては徐放効果を生み出すことができる。いわゆるプロフレグランス(すなわち、高分子量の化学物質であって、一般的に、それ自体は着臭剤ではないものの、使用条件下で化学的または光化学的な反応によって着臭剤を生成することができる)が本発明により使用される場合にも、同じことが当てはまる。
【0022】
「悪臭中和剤」または「悪臭中和成分」という用語は、本明細書では、悪臭、すなわち、人間の鼻にとって不快なまたは異質な臭いの知覚を、悪臭の中和および/または隠蔽によって低下させることができる化合物を意味する。特定の実施形態では、これらの化合物は、悪臭の原因であることが知られているかまたは疑われている主要な化合物と反応することができる。この反応により、悪臭物質の空気中での量が低下し、結果として悪臭の知覚が低下する。
【0023】
活性揮発性成分は、昆虫防除剤であってもよい。適切な昆虫防除剤の非限定的な例には、バーチ、DEET(N,N−ジエチル−m−トルアミド)、レモンユーカリ(Corymbia citriodora)の精油およびその活性化合物p−メンタン−3,8−ジオール(PMD)、ピカリジン(ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート)、ネペラクトン、シトロネラ油、ニーム油、ボグマートル(Myrica Gale)、ジメチルカルベート、トリシクロデセニルアリルエーテル、IR3535(3− [N−ブチル−N−アセチル]−アミノプロピオン酸、エチルエステル、エチルヘキサンジオール、ジメチルフタレート、メトフルトリン、インダロン、SS220、アントラニル酸ベースの防虫剤、およびそれらの混合物が含まれる。
【0024】
活性揮発性成分の性質および種類は、より詳細な説明を保証するものではなく、それらは、いずれの場合にも網羅的ではないことから、当業者は、その一般知識、目的とされる使用または用途に基づいてそれらを選択することができる。
【0025】
活性揮発性成分は、任意の適切な溶媒に溶解することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、溶媒は、VOC化合物を含まない。「VOC」とは、本明細書では、環境保護局によって定義される揮発性有機化合物を意味し、特に、エタノールなどのC〜Cアルカノール、またはエチレングリコールなどのC〜Cアルカンジオールを意味する。
【0026】
特に高く評価されているVOC不含溶媒の例は、メトキシル化シロキサン(例えば、Dow Corning(登録商標)Fluidの商標名で販売されているもの)、鉱油および植物油、例えば、オリーブ油、ヒマシ油およびヒマワリ油などである。
【0027】
本発明のすべての実施形態では、活性揮発性成分または成分の混合物の量は、好ましくは、ゲルの総重量に対して該活性揮発性成分0.1重量%〜5重量%、より好ましくは1.0重量%〜2.0重量%である。
【0028】
本発明の組成物は、該組成物の総重量に対して85重量%〜98.9重量%の量の水
、好ましくは、該組成物の総重量に対して90重量%〜98.9重量%の量の水をさらに含む。
【0029】
本発明の組成物は、該組成物の総重量に対して0.01重量%〜1重量%の量の2価カチオンをさらに含む。2価カチオンは、カルシウム塩である。2価カチオンの非限定的な例は、リン酸カルシウムおよび塩化カルシウムである。好ましい実施形態によれば、2価カチオンは、リン酸カルシウムである。ゲル組成物中の2価カチオンの総量は、該ゲル組成物の総重量に対して0.1重量%〜1重量%で、好ましくは、2価カチオンの総量は、該ゲル組成物の総重量に対して0.1重量%〜0.8重量%で、より好ましくは、該ゲル組成物の総重量に対して0.2重量%〜0.5重量%で含まれるべきである。
【0030】
本発明の組成物は、金属イオン封鎖剤をさらに含む。「金属イオン封鎖剤」という用語は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、剛性で均一なゲルを得るために2価のカチオンを徐々に放出することを可能にする化合物を意味する。ゲル組成物に一般的に使用される金属イオン封鎖剤の性質および種類の詳細な説明は、網羅的とはなり得ない。これらの成分の多くは、当業者に周知であり、R.S.Igoe,Dictionary of Food Ingredients,2011,Springer,USAの書籍などの参考文献に記載されている。しかしながら、非限定的な例として、ヘキサリン酸ナトリウム、アンモニウムもしくはカリウム、テトラリン酸ナトリウム、アンモニウムもしくはカリウム、トリポリリン酸ナトリウム、アンモニウムもしくはカリウム、トリリン酸ナトリウム、アンモニウムもしくはカリウム、またはピロリン酸ナトリウム、アンモニウムもしくはカリウムなどの金属イオン封鎖剤を挙げることができ、これらが最も一般的に使用されている。好ましい実施形態によれば、金属イオン封鎖剤は、トリポリリン酸ナトリウムである。本発明の方法における金属イオン封鎖剤の総量は、ゲル組成物の総重量に対して0.5重量%未満であるべきである。好ましくは、本発明の方法における金属イオン封鎖剤の総量は、ゲル組成物の総重量に対して0.001重量%〜0.5重量%、さらには、ゲル組成物の総重量に対して0.1重量%〜0.3重量%であるべきである。
【0031】
本発明の組成物は、pH調整剤をさらに含む。pH調整剤は、添加されてpHを下げる。適切なpH調整剤の非限定的な例には、グルコノデルタラクトン、乳酸ラクトン、グリコール酸ラクトンおよびL−乳酸塩が含まれる。好ましくは、pH調整剤は、グルコノデルタラクトンおよびL−乳酸塩である。さらにより好ましくは、pH調整剤は、グルコノデルタラクトンである。pH調整剤は、ゲル組成物の総重量に対して3重量%未満、好ましくは、ゲル組成物の総重量に対して0.01重量%〜3重量%の量で添加される。
【0032】
本発明による組成物は、エアフレッシュナーである。「エアフレッシュナー」という用語は、当該技術分野においてその通常の意味を与えるものであり、すなわち、香水などの揮発性活性成分をその周囲環境に拡散することができる組成物である。エアフレッシュナーの例には、プラグイン、ワックス溶融物、キャンドル、便器用ブロックまたはゲルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、エアフレッシュナーは、ヒドロゲルエアフレッシュナーである。
【0033】
本発明のゲルは、1つ以上の追加の成分を任意に含むことで、ゲルの審美的および/または機能的な改善を増強または追加することもできる。特に、ゲルデバイスに含まれることができる追加の材料には、抗菌剤、抗微生物剤、防腐剤、着色剤、装飾材料、安定剤、酸化防止剤、乳化剤、界面活性剤およびUV遮断剤が含まれる。安定剤は、グアールガム、カルボキシメチルセルロースまたはローカストビーンガムなどのシネレシスを制限することができ、または外皮形成を防止することができ、および/またはセチルアルコールもしくはポリエチレングリコールのように可塑性を与えることができる。任意ではあるが有用な別の要素は、活性揮発性成分がもはやゲル中に存在しなくなる(香気成分が排出されて、もはや拡散されなくなる)と、消費者に知らせる指示器、すなわち、終点指示器である。
【0034】
特定の実施形態によれば、本発明のゲルの任意の成分は、ポリエチレングリコール、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ローカストビーンガム、C14−18アルコール、例えばセチルアルコール、グアールガム、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0035】
一般的に、本発明のゲル中でのそのような任意の成分の総量は、ゲル組成物の総重量に対して10重量%を上回るべきではなく、より好ましくは、ゲル組成物の総重量に対して2重量%を下回るべきではない。
【0036】
これらの任意の成分は、本明細書では、より詳細な説明を保証するものではなく、それらは、いずれの場合にも網羅的ではない。当業者は、当該技術分野における一般知識およびゲルデバイスの所望の特性に基づいてそれらを選択することができる。特に、追加の成分の種類および量は、ゲルの剛性およびその他の所望の特性が影響されないような形で選択される。
【0037】
好ましい実施形態によれば、本発明のゲル組成物は、環境的な観点からも有利である。実際、上述のように、本発明で使用される溶媒は、VOC不含であり得る。さらに、ゲル化剤は、植物材料に由来し、環境にとって有害ではない。特に、それは生分解性である。ゲル化剤は、環境および人間に対する安全性の観点からも有利であり、そのため、化粧品にも使用することができる。
【0038】
上記実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物は、アルギン酸塩を本質的に含まない。
【0039】
上記実施形態のいずれか1つによれば、本発明の組成物は、界面活性剤または乳化剤を本質的に含まない。特に、活性揮発性成分含有油は、界面活性剤を含まない。
【0040】
別の態様では、本発明は、以下の工程:
a)セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤を水と混合する工程、
b)工程a)で得られた混合物に金属イオン封鎖剤を添加する工程、
c)任意に、工程b)で得られた混合物を加熱する工程、
d)工程c)で得られた混合物に
i)2価カチオン、
ii)pH調整剤および
iii)活性揮発性成分含有油
を添加する工程
を含む、上記で定義したゲル組成物を調製する方法を提供する。
【0041】
好ましい実施形態によれば、工程b)で得られた混合物は、加熱される。工程b)で得られた混合物は、好ましくは80℃〜100℃、より好ましくは80℃〜85℃の温度に加熱される。
【0042】
好ましい実施形態によれば、2価カチオンは、pH調整剤の前に添加される。
【0043】
本発明の方法の間に金属イオン封鎖剤およびpH調整剤を添加することで、均一で剛性のゲルを得るためにカルシウムカチオンを徐々に放出させることができる。
【0044】
ゲル化剤、活性揮発性成分、2価カチオン、金属イオン封鎖剤およびpH調整剤の量は、この説明の前のセクションで定義されている。
【0045】
この方法の好ましい実施形態によれば、ステップd)で得られた流体ゲルは、室温(典型的には15〜25℃)に冷却させる前に、型または適切な容器に注がれる。そのような実施形態により、決まった形態の固体ゲルを得ることが可能になり、装飾的なエアフレッシュナーおよびその他のゲルデバイスの実現を可能にする。当然のことながら、ゲルは、型または容器を用いずに、上記で得られたように使用することもできる。
【0046】
本発明のゲル組成物に添加されることができる任意のどの成分も、ゲル化剤の水溶液に添加されるか、または工程b)で得られた混合物を加熱した後の任意の時点で添加される。当業者は、それらの性質に応じて、方法の最も適切な段階で任意の成分を効果的に添加することができる。
【0047】
本発明によるゲル組成物のすべての実施形態は、上記方法に従って調製することができ、ここで、上記で定義したような、好ましい成分およびその相対的な割合の使用により、好適な特性を有する多岐にわたったゲルを得ることが可能になる。
【0048】
本発明の別の対象は、下記の実施形態のいずれかの方法によって得ることができるゲル組成物である。
【0049】
本発明者らは、本発明のゲル組成物が、その中に担持されている活性成分の非常に均一で長期の拡散を有利に提供することを見出した。従来から公知のカラギナンゲルとは対照的に、ある特定量の香料の使用につながるマリン系オフノートは、本発明では知覚されない。
【0050】
上述したように、本発明の組成物は、消費者用物品に含ませることができるか、または結び付けることができるため、消費者用物品として意図されているのは、本明細書では、より具体的には、揮発性物質ディスペンサーである。したがって、本発明のゲル組成物を含む揮発性物質ディスペンサーの形態の消費者製品もまた、本発明の対象である。実際には、容器と本発明の適切な組成物とで、前記消費者製品を構成することになる。組成物は、容器に収容され、容器表面の少なくとも一部により、揮発性液体成分の蒸気を、前記消費者用物品を取り巻く空気中に放出させることができる。容器は、この種の消費者用品に使用可能な任意の材料で作製されていてよい。当然、前記材料は、本発明の組成物に対して化学的に不活性でなければならない。これらの種類の物品に使用される標準的なパッケージである、例えばプラスチック−ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、高密度ポリエチレン、PETおよびガラスがよく適している。
【0051】
貯蔵中、容器の外部への蒸気の放出を可能にする容器の少なくとも一部は、揮発性液相を周囲に拡散させないためにシールされている。それから消費者は、シールを取り除くだけで消費者用物品を作動させ、その後に揮発性液相が周囲空気中に拡散し始める。
【0052】
そのような揮発性物質ディスペンサーは、ゲルの調製に使用される活性揮発性物質の性質に応じて、賦香デバイスまたは衛生デバイスとなり得る。特に固体タイプのエアフレッシュナーとしての前記揮発性物質ディスペンサーの非限定的な例は、おむつ容器用フレッシュナー、自動車用フレッシュナー、クローゼット用フレッシュナー、ワードローブ用エアフレッシュナー、引出し用フレッシュナー、動物用リターボックス用フレッシュナー、靴用フレッシュナーまたはゴミ容器用フレッシュナー、殺虫剤または防虫剤デバイス、または虫除け剤である。
【0053】
実際には、容器と本発明の適切なゲル組成物とで、前記消費者用物品を構成することになる。ゲルは、容器またはパッケージ材料に収容されることができる。
【0054】
本発明はまた、本発明のゲルデバイスを空気に曝すことによって活性揮発性成分を周囲空気中に拡散する方法に関する。本発明の好ましい実施形態では、ゲルデバイスは、例えば、部屋、食器棚、ワードローブ、引出し、動物用リターボックスまたはゴミ容器などの密閉空間において空気に曝される。したがって、本発明の別の対象は、上記で定義したゲル組成物を提供する工程を含む、活性揮発性成分の蒸発を調節、増強または変更する方法である。
【0055】
本発明の別の対象は、上記に定義したゲル組成物をエアフレッシュナーとして使用することである。
【0056】
これから、以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、量は、ゲル組成物の重量に対して重量%で示され、温度は、摂氏温度で示される。
【0057】
実施例1
本発明によるゲル組成物(ゲル1)の調製
セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤(FiberGel(登録商標),Florida Food Products,Incの商標であり、Florida Food Products,Incから市販されている)(34.2g、2.9重量%)を、撹拌しながら(10〜15分間)、水(1132.9g、94.4重量%)に添加した。トリポリリン酸ナトリウム(2.4g、0.2重量%)を添加し、混合物を80℃に加熱した。それから、リン酸カルシウム(2.4g、0.2重量%)およびグルコノデルタラクトン(14.9g、1.2重量%)を添加した。それから、香油(表1または表2、12g、1.0重量%)および抗菌/防腐剤(NEOLONE(登録商標),Dow Chemical Companyの商標、1.2g、0.1重量%)を添加し、混合した。得られた混合物を、いくつかの適切な型に注ぎ、冷却した。
【0058】
得られたゲルの熱安定性を、Kofler Benchを用いて評価し、そのようなヒドロゲルは、ゲル構造の融解または実質的な変化なしに100℃まで加熱できることがわかった。
【0059】
【表1-1】
【0060】
【表1-2】
1)7−メチル−2H,4H−1,5−ベンゾジオキセピン−3−オン;出所:Firmenich SA,Geneva,Switzerland
2)ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]フラン;出所:Firmenich SA,Geneva,Switzerland
3)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ−3−エン−8−イルアセテートとトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ−4−エン−8−イルアセテートとの混合物
4)出所:Firmenich SA,Geneva,Switzerland
5)2,6,10−トリメチル−9−ウンデセナール;出所:Symrise AG,Germany
6)3−(4/2−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナール;出所:International Flavors & Fragrances,USA
7)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;出所:International Flavors & Fragrances,USA
8)N−メチルイオノン;出所:International Flavors & Fragrances,USA
9)3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;出所:Givaudan−Roure SA,Vernier,Suisse
10)出所:Givaudan−Roure SA,Vernier,Suisse
11)1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン;出所:Firmenich SA,Geneva,Switzerland
12)(+−)−1−メチル−4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド;出所:International Flavors & Fragrances,USA
13)8(9)−メトキシ−トリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカン−3(4)−カルバルデヒド;出所:Firmenich SA, Geneva,Switzerland
14)2−tert−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート;出所:International Flavors & Fragrances,USA
15)出所:Firmenich SA, Geneva,Switzerland
【0061】
【表2】
1)4−シクロヘキシル−2−メチル−2−ブタノール;出所:Firmenich SA,Geneva,Switzerland
2)テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノ−ル;出所: Firmenich SA, Geneva,Switzerland
3)ジヒドロジャスモン酸メチル;出所:Firmenich SA, Geneva,Switzerland
4)1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン;出所:International Flavors & Fragrances,USA
5)3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール;出所:Givaudan−Roure SA,Vernier,Suisse
6)2−tert−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート;出所:International Flavors & Fragrances,USA
7)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ−3−エン−8−イルアセテートとトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ−4−エン−8−イルアセテートとの混合物
8)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ−3−エン−8−イルプロパノエートとトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカ−4−エン−8−イルプロパノエート(b)との混合物
9)出所:Firmenich SA, Geneva,Switzerland
【0062】
実施例2
本発明によるゲル組成物の調製
セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含むゲル化剤(Citri−Fi(登録商標),Fiberstar(登録商標)の商標であり、Fiberstar(登録商標)から市販されている)(7.5g、3重量%)を、撹拌しながら(10〜15分間)、水(224.7g、89.8重量%)に添加した。トリポリリン酸ナトリウム(1.3g、0.5重量%)を添加し、混合物を80℃に加熱した。それから、第二リン酸カルシウム(1.0g、0.4重量%)を添加した。それから、香油(表2、12.5g、5重量%)およびグルコノデルタラクトン(3.1g、1.2重量%)を添加し、混合した。得られた混合物を、いくつかの適切な型に注ぎ、冷却した。
【0063】
得られたゲルの熱安定性を、Kofler Benchを用いて評価し、そのようなヒドロゲルは、ゲル構造の融解または実質的な変化なしに100℃まで加熱できることがわかった。
【0064】
実施例3
本発明によるゲル組成物(ゲルA〜E)の調製
本発明によるゲル(ゲルA〜E)を、実施例1に記載した手順に従って、以下の成分により調製した。
【0065】
【表3】
1)FiberGel(登録商標),Florida Food Products,Incの商標であり、Florida Food Products,Inc.から市販されている
2)Neolone(商標),Dow Chemical Companyの商標
3)Carbowax(登録商標);Dow Chemical Companyの商標
4)混合物は、96重量%のポリエチレングリコール 1000,2重量%のジブチルラウロイルグルタミドおよび2重量%のジブチルエチルヘキサノイルグルタミドからなる:この混合物は、グルコノデルタラクトンの後に添加した。
【0066】
ローカストビーンガム、グアールガムおよびカルボキシメチルセルロースを、ゲル化剤の水溶液に添加するのに対して、セチルアルコールは、リン酸カルシウムの添加前に添加する。
【0067】
実施例4
カラギナンをベースとする対照ゲル組成物(ゲル2)の調製
主にκ−カラギナン(34.2g、2.85重量%)からなるカラギナン粉末を、80℃で水(1152.6g、96.05重量%)に徐々に添加した。この溶液を、均一な液体が得られるまで撹拌した。約10分間撹拌した後、香油(表1または表2、12g、1重量%)および抗菌剤/防腐剤(NEOLONE(商標)、1.2g、0.1重量%)を添加した。得られた混合物を、いくつかの適切な型に注ぎ、室温まで冷却した。
【0068】
実施例5
対照ゲル組成物と比較した、本発明によるゲル組成物の経時的な香気成分放出
表1の香料で実施例1および4(ゲル1およびゲル2)に報告したように調製したヒドロゲルを、市販用のコーン形状に成形した。得られたサンプルを、一定温度(20℃)、および比較的一定のパーセント相対湿度(約60%の相対湿度)で4週間乾燥させた。一定の間隔(週毎)で、このコーンを、密閉デシケーター中に2時間入れ、SPME繊維(SUPELCO 85μmのポリアクリレートSPME繊維)を使用してヘッドスペースを30分間収集した。SPME繊維を、250℃で2分間GCインジェクターに放出させ、スプリットレス注入を行った。分析は、DB−WAXetrカラム(30m×0.320mm、膜厚0.25μm)を備えたAgilent GCMS(6890GC、5973MSD)を使用して行った。ヘッドスペース内の化合物についてのMS検出器からのピーク面積を合計し、3回測定したサンプルの平均を出した。
【0069】
図1は、時間の関数としての揮発性化合物のGC−MSピーク面積の合計平均(Average Sum)を報告しており、本発明のヒドロゲルコーンが、ゲル2(これは、経時的な香気成分放出プロファイルに関しての基準である)に匹敵する香気成分放出を示すという事実を明らかにしている。
【0070】
実施例6
対照ゲル組成物(ゲル2)と比較した、本発明によるゲル組成物(ゲル1)の嗅覚性能
【0071】
異なる濃度の香料(表2の香料組成)を有する本発明による4つのヒドロゲルコーンおよび同じ濃度の香料(表2の香料組成)を有する4つの対照ヒドロゲルコーンについての官能試験(n>30)を行った。それぞれの4つのコーンは、0%w/w、0.23%w/w(典型的な市販の香気成分濃度の25%;すなわち0.9%w/wに相当)、0.45%w/w(典型的な市販の香気成分濃度の50%;すなわち0.9%w/wに相当)および0.9%w/w(典型的な市販の香気成分濃度の100%に相当)の範囲の香気成分濃度という点で異なっていた。サンプルには、色の違いがはっきりしない色素が含まれていた。パネリストに、専用官能評価ブース内で鼻から約2.5cmの距離をとってゲルの匂いを嗅ぐことにより、開放したエアフレッシュナーの匂いを「湿り」状態(時間=0)で嗅ぐよう求めた。
【0072】
サンプルを、2つまとめて(本発明に対応する1つのゲルおよび対照に対応する1つのゲル)評価し、パネリストは、各香気成分濃度について、
1)最高の香気成分強度を有するゲル、
2)全体的に好ましいゲルおよび
3)最も高いオフノートを有するゲル
を指し示す必要があった。
【0073】
結果を、対応するp値とともに表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
官能評価データは、任意の香気成分レベルを有するエアフレッシュナーからの知覚された香気成分強度について、対照ゲル2で作製された香気成分レベルよりもゲル1で作製された香気成分強度の方が高いことを示している。香気成分レベルが100%であっても、実質的により多くのパネリストは、本発明のゲル1がより強度の高いものとして評価した(35名のうち23名)。
【0076】
他方で、本発明のゲル1の嗜好は、すべての香気成分レベルにおいて非常に有意なものであった。最後に、オフノート強度は、対照ゲル2について同様にすべてのレベルで有意に強かった。知覚されるオフノートの一般的な記述コードは、「魚類」、「海洋性(マリン系)」および「湿地性」であった。
図1