【実施例】
【0039】
例1−(TMEDA)ZnS
6錯体の調製
テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、(408グラム)およびメタノール(72グラム)を、機械的攪拌機(容器の壁の近くに届く)、熱電対、N
2バブラー、水冷却器、および電気加熱マントルを備えた3Lの3つ口ガラスフラスコに加えた。系を窒素でパージし、および混合物の温度を35℃に調整した。新たに粉砕したシクロオクタ硫黄(粉末)を、425〜450回転/分で撹拌しながら、5分間かけて加えた。温度を45℃まで上げ、n40グラムの金属性亜鉛粉末(<10μm粒径、>98%純度)を、425〜450回転/分で撹拌しながら、5分間かけて加えた。次に灰緑色がかった黄色反応器内容物を86℃までゆっくり加熱し、および4時間、または黄色になるまでかき混ぜた。いったん黄色になると、混合物を撹拌しながらその温度でさらに2時間維持した。反応時間の終わりに、フラスコを室温まで冷まし、攪拌器を止め、および真空抽出により自由液体を除去した。メタノール(600ml)をフラスコに加えてスラリーを作り、および1時間かき混ぜた。次に生じたスラリーを真空ブフナーフィルター(1μm紙)でろ過し、および2回のそれぞれ200mlのメタノールで洗浄した。固体をフィルターから除去し、および50℃および0.1MPaに設定した真空オーブン内で一晩乾燥した。収率は、定量的に近く、上記の手順当たり、233グラムの(TMEDA)ZnS
6錯体、NMR分析によって97.5%の純度であった。
【0040】
例2−(TMEDA)ZnS
6錯体からの本発明のシクロドデカ硫黄(S
12)の調製
塩化メチレン(750mL)を、機械的攪拌機、熱電対、N
2バブラーおよびストッパーを備えた2Lの4つ口ガラスフラスコに加えた。臭素(16.7g、104.5mmol、1.0当量)を50mLのCH
2Cl
2を含む瓶中に計量して入れ、およびこの混合物を、フラスコに加えた。溶液を4℃に冷却した。例1からの亜鉛錯体(TMEDA)ZnS
6(97.5%純度)(40g、104.3mmol、1.0当量)を、一度に加え、および50mLのCH
2Cl
2で洗浄した。11℃まで直ちに発熱した。溶液を15分間攪拌し、ろ過し、冷CH
2Cl
2で洗浄し、および吸引乾燥した。固体をTHF(250mL)中でスラリーにし、ろ過しおよび吸引乾燥した。得られた固体を冷CS
2(155mL)中でスラリーにし、ろ過しおよび吸引乾燥して10.2gの黄白色固体を与えた。(亜鉛錯体中の硫黄に基づいて、収率50.8%)。上記のUQ元素分析法を使用した評価は、材料が96.6%の硫黄(ラマン分光法によってすべてシクロドデカ硫黄(S
12)および硫黄ポリマー)、2.67%の亜鉛および0.7%の臭素であることを示した。
【0041】
シクロドデカ硫黄を、機械的攪拌機、微細ガラスフリットフィルタープレート、熱電対、N
2バブラー、ドライアイストラップ、および底弁を備えた上部の2Lのジャケット付き3つ口ガラスフラスコ、および機械的攪拌機、水冷冷却器および1Lのガラス受けポット、熱電対、N
2バブラー、ドライアイストラップ、および底弁を備えた、下部の2Lのジャケット付き3つ口ガラスフラスコを含む2容器系中でさらに精製した。精製手順を開始するために、二硫化炭素(1200グラム)を、上記の反応ステップ(10.2g)からのシクロドデカ硫黄と伴に上部容器に加えた。フラスコの内容物を、40〜42℃に攪拌しながら加熱した。30分間の混合物の攪拌後に、容器の底弁を開け、および自由液体を、フリットガラスフィルターを通して下部のフラスコに移した。初期の固体のほぼ半分がフィルター上に残った。第2の容器中の溶液を、20分以下の時間を掛けて−6℃に冷却した。相を冷却する間、微細な淡黄色結晶のシクロドデカ硫黄が生成した。溶液を、−6℃の最終温度において約15分間撹拌し、容器の底弁を開けおよびS
12−CS
2のスラリーを、2μmのフィルター紙を取り付けたブフナー漏斗上に落とした。淡黄色結晶のシクロドデカ硫黄を吸引乾燥し、およびフィルター紙から掻き取った。最終ろ過からの母液を、補うCSと伴に(残留固体を含む)上部容器に戻し、1200グラムの液体を与えた。上部容器をかき混ぜ、および再度40〜42℃に加熱し、およびろ過−冷却手順を繰り返して、精製されたシクロドデカ硫黄(S
12)結晶の第2の収穫を回収した。最終の加熱−溶解ステップ後に、約0.26グラムの緑色がかった黄色固体が、上部フリットフィルター上に残っていた。合わせた湿ったS
12結晶を、30℃および約0.01MPaの真空オーブン中に一晩置いて残留するCS
2を除去して、9.3グラムの乾燥し、精製されたシクロドデカ硫黄を与えた。上記のUQ元素状法による評価は、この材料が、少なくとも99.9%の硫黄(ラマンですべてS
12)、および100ppm未満の亜鉛および臭素であることを示した。融点を最初DSCにより決定し、そして次に熱抵抗融点装置を使用して、それぞれ162℃および157℃と決定した。硫黄のS
12への全体的な収率は46%であった。
【0042】
例3−シクロドデカ硫黄材料の融点の比較
数バッチの本発明の精製されたシクロドデカ硫黄を、例1および2に例示された手順に従って調製した。それぞれの最終の精製された材料をラマン、Uniquat(商標)またはICPによって測定し、およびDSCを使用して上記の様に溶融開始点を測定した。Steudel,R.;Eckert,B.“Solid Sulfur Allotropes”、Topics in Current Chemistry(2003)中の10℃/分、5℃/分および2.5℃/分のDSC加熱速度で測定された報告されたデータから外挿した「対照の」シクロドデカ硫黄溶融点と伴に、結果を下記表1に記載した。
【表1】
【0043】
上記に示したように、本発明のシクロドデカ硫黄化合物は、従来技術のシクロドデカ硫黄化合物より大いにおよび予想外に高い溶融開始点を示した。本発明のための溶融点における観察された変化は、ラマンによって検出されたように試料中の不純物の度合いにより予期された。
【0044】
上で述べたように、熱安定性(または熱的劣化への耐性または可溶性硫黄への戻り)は、適した加硫剤を選択する上で重要なパラメーターである。混合における本発明の熱安定性能は、下記表2に記載されている予め生成した組成物を下記のものと混合することにより、この例3中に示されている。
【表2】
【0045】
対照の加硫可能エラストマー調合物を生成する(Eastman Chemical Companyから入手可能な6.25gのCrystex(商標)HD OT20としての)5.0phrの市販されている高分子硫黄または本発明の加硫可能エラストマー調合物を生成する5.00phrの本発明のシクロドデカ硫黄のいずれかを上記のものと混合している。1(1.0)phrの従来の加硫加速剤、N,N‘−ジシクロヘキシル−2−メルカプトベンゾチアゾールスルフェンアミド(DCBS)を、それぞれの加硫可能エラストマー調合物にまた加えた。4羽根のHローターを備えたKobelco 1.6L実験室混合機を使用して混合した。上記の手順当たり作った6つの試料項目での調合物および放出温度を下記表3中に説明する。
【表3】
【0046】
それぞれの試料項目では、試料を混合機から放出し、および70℃で平衡にした2ロールミル上でシートにした。次にそれぞれの試料のゴム内容物をジオキサンで抽出しおよびそれぞれの項目の可溶性硫黄内容物をHPLC(Agilent 1260 高性能液体クロマトグラフィー)によって決定した。放出後のターゲット温度、実際のゴム温度および初期の硫黄材料の割合として報告したシクロオクタ硫黄含有量を、下記の表4中に示す。
【表4】
【0047】
上記に示すように、本発明のシクロドデカ硫黄は、現在市販されている高分子硫黄加硫剤に比較すると、シクロオクタ硫黄への著しく減少した戻り(したがってゴム混合プロセス中で改善された熱安定性)を示した。下記のさらなる例はまた、本発明の加硫可能エラストマー調合物の形成を記載し、これらは、その後に熱安定性/ブルーム抵抗で試験され、および加硫剤として本発明の化合物の有効性を示すことがまた評価される。
【0048】
例4−本発明のシクロドデカ硫黄化合物を含む加硫可能エラストマー調合物の生成
第一ステップとして、エラストマー物品の製造において使用される従来の材料の前駆体組成物P−1を、以下の成分を組み合わせることによって調製した。
【表5】
【0049】
次に、本発明の加硫可能エラストマー調合物(試料A−1)を以下のように調製した。
【表6】
【0050】
比較のために、対照の加硫可能エラストマー調合物C−1およびC−2をまた、上記組成物中の本発明のシクロドデカ硫黄を、以下の(C−1)高分子硫黄および(C−2)シクロオクタ硫黄(斜方晶形(rhombic)または可溶性)硫黄で置換することによって、調製した。
【表7】
【表8】
【0051】
A−1、C−1およびC−2のそれぞれの生成において、ブラベンダーミキサーを予め80℃に加熱し、次にP−1を混合機に入れ、および50回転/分で30分間混合した。次に混合速度を35回転/分に減速させて、硫黄成分および加速剤を加え、および生じた組成物を35回転/分でさらに90分間混合した。次に材料を、混合機から放出し、その温度を記録し、および80℃の粉砕機上でシートにした。
【0052】
例5−熱安定性試験
上記の加硫可能エラストマー調合物A−1およびC−1を、ローター速度を35回転/分に最初に設定した、約88℃に予め加熱したBrabender内部混合機に入れた。ゴムを混合しおよびローター速度を、より早くまたはより遅く調整し、混合機中のゴム混合物が125℃に長時間維持されて、可能性のある商業的プラントの加工条件、例えば押し出しまたはカレンダー加工作業をシミュレートするようになっている。下記の表9に示されるように、種々の時間で試料を混合機から抽出し、および試料の(本発明の高分子硫黄とシクロドデカ硫黄との両方の劣化/戻りの生成物としての)シクロオクタ硫黄の質量%を、上記例3に記載されたシクロオクタ硫黄測定のための方法を使用して測定した。シクロオクタ硫黄の質量%での結果を以下の表9に示す:
【表9】
【0053】
上記表9の125℃の加工温度において、高分子硫黄は、既に第1の試料が2分で採取されたブルーム閾値レベルをほとんど3倍で超えていたが、一方本発明のシクロドデカ硫黄は、そのブルーム閾値レベルに到達する前に125℃で約5分間加工できる。多くの商業的工場の方法のステップが、スループット、効率および生産数量を最大化するために、より高い温度で2分未満および多くの場合1分未満で完了するので、この予期しない利点は、特に重要である。
【0054】
例6−加硫有効性
加硫プロセスの間に、加硫速度および効率に関連した4つのパラメーター(最大トルク、スコーチ時間(Scorch Time)、t
90および加硫の最大速度)を測定しながら、加硫可能エラストマー調合物A−1、C−1およびC−2の複数の試料を、130、140、155、160、167、および180℃で別々にΑlpha Technologiesの移動ダイ(Moving Die)レオメーターを使用して加硫した。最大トルク(MH)は、架橋密度における増加に直接関連した弾性の増加とともに、形成されたネットワーク密度の尺度である。スコーチ時間(ts
2)は、また硬化の開始として知られ、最小の測定されたトルクより2dNm上のトルク増加を示すのに系に必要な時間として規定される。T
90は、90%の硬化状態に到達するのに必要な時間である。加硫(Rh)の最大速度は、硬化サイクルの間に観察される加硫の最も速い速度の尺度である。これらの4つのパラメーターを試験した結果は、下記の表10〜13に記載されている。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0055】
表10〜13中のデータは、本発明のシクロドデカ硫黄化合物が効果的および効率的な硫黄加硫剤であることを示す。
【0056】
本発明の様々な態様の前述の記載は例示および説明を目的として提示されている。これは全てを網羅している訳ではなく、開示される正確な態様に本発明を限定するものでもない。上記教示を踏まえて、多数の改変または変化形が可能である。考察された態様は、本発明の原理およびその実際的な用途の最良の具体例を提供し、それにより当業者が本発明を様々な態様で、かつ、企図される特定の使用に適するように様々な修正を行って利用できるように選択され説明された。全てのこのような改変および変化形は、それらが公平で合法的、かつ、公正に権利を得る広さに従って解釈される場合、添付の請求の範囲により決定される本発明の範囲内である。
(態様)
(態様1)
加硫した物品を形成する使用のための加硫組成物であって、前記加硫組成物は加硫剤を含み、前記加硫剤はシクロドデカ硫黄化合物を含む、加硫組成物。
(態様2)
キャリアーをさらに含む、態様1に記載の加硫組成物。
(態様3)
前記加硫剤は、高分子硫黄およびシクロオクタ硫黄からなる群から選択される1種または2種以上の硫黄含有硬化剤をさらに含む、態様1に記載の加硫組成物。
(態様4)
前記シクロドデカ硫黄化合物は、20℃/分のDSC加熱速度で測定した場合に、155℃〜167℃のDSC溶融開始点によって特徴付けられる、態様1に記載の加硫組成物。
(態様5)
前記シクロドデカ硫黄化合物の量は、加硫組成物の全質量に基づいて、約20〜約100質量である、態様1に記載の加硫組成物。
(態様6)
前記シクロドデカ硫黄化合物の量は、加硫組成物の全質量に基づいて、約40〜約100質量である、態様1に記載の加硫組成物。
(態様7)
20℃/分のDSC加熱速度で測定した場合に、155℃〜167℃のDSC溶融開始点によって特徴付けられる、シクロドデカ硫黄化合物。
(態様8)
20℃/分のDSC加熱速度で測定した場合に、前記DSC溶融開始点は、157℃〜167℃である、態様7に記載のシクロドデカ硫黄化合物。
(態様9)
0.1〜1200μmのメジアン粒径を有する、粒子形態のシクロドデカ硫黄化合物。
(態様10)
0.5〜300μmのメジアン粒径を有する、態様9に記載のシクロドデカ硫黄化合物。
(態様11)
15以下の多分散性比を有する、粒子形態のシクロドデカ硫黄化合物。
(態様12)
10以下の多分散性比を有する、態様11に記載のシクロドデカ硫黄化合物。
(態様13)
8以下の多分散性比を有する、態様12に記載のシクロドデカ硫黄化合物。
(態様14)
BET法により測定して50m2/g以下の比表面積を有する粒子形態である、態様12に記載のシクロドデカ硫黄化合物。
(態様15)
少なくとも1種のエラストマーおよび加硫剤を含む、加硫可能エラストマー調合物であって、前記加硫剤は、シクロドデカ硫黄化合物を含む、加硫可能エラストマー調合物。
(態様16)
前記シクロドデカ硫黄化合物は、20℃/分のDSC加熱速度で測定した場合に、155℃〜167℃のDSC溶融開始点によって特徴付けられる、態様15に記載の加硫可能エラストマー調合物。
(態様17)
前記調合物中の前記シクロドデカ硫黄の量は、調合物の全質量に基づいて、0.25〜10質量%のシクロドデカ硫黄である、態様15に記載の加硫可能エラストマー調合物。
(態様18)
(i)マスターバッチの全質量に基づいて、40〜90質量%の量の加硫剤と、(ii)エラストマーキャリアーとを含む、加硫剤マスターバッチであって、前記加硫剤は、シクロドデカ硫黄化合物を含む、加硫剤マスターバッチ。
(態様19)
態様15に記載の加硫可能エラストマー調合物で形成された、加硫したエラストマー物品。