(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧クランプ部は、前記キャパシタ電圧の内、前記クランプ電圧を越える電圧分を前記直流電源部に回生する回生回路であることを特徴とする請求項1から6の何れか一つに記載の直流パルス電源装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図21(a)に示すパルス部120Aのチョッパ回路では、スイッチング素子122AのドレインDとソースSとの間のDS電圧は、スイッチング素子122Aがオフ時において直流リアクトル121Aに含まれるリーケージインダクタンスにより発生するサージ電圧により上昇する。本出願の発明者は、サージ電圧によるスイッチング素子122Aの損傷を回避するために、直流リアクトル121Bの両端電圧を所定電圧にクランプする電圧クランプ部130clampを設ける構成を提案している。
図21(b)は提案する回路構成の概略を示している。電圧クランプ部130clampBは、直流リアクトル121Bに並列接続したコンデンサCを備える。電圧クランプ部130clampBは、コンデンサCの電圧VCをサージ電圧よりも低い電圧にクランプすることによりDC電圧の過剰な電圧上昇を抑制する。
【0008】
直流パルス電源装置は、プラズマ負荷に電力を供給する際にアークが発生した場合には、通常状態においてパルス出力を発生するパルスモードからアークモードに切り替えることによりプラズマを維持しつつアークの発生を解消する。アークモードでは、スイッチング素子122Bのオン/オフ周期、及び/又はオン期間の時間幅を変更することによりプラズマ負荷に供給する電力を絞ることにより、プラズマを維持すると共にアークの発生を解消する。アークモードにおいて、直流リアクトル121Bに印加される電圧は、スイッチング素子122Bのオン期間とオフ期間で電圧印加の極性が逆方向となる。
【0009】
通常、リアクトルは電流の増加に伴って磁界が増加すると透磁率が低下していき、磁性材料が持つ最大磁束密度に達すると磁気飽和の状態となる。磁気飽和時の低透磁率は過電流の要因となる。リアクトルの磁気飽和は、リアクトルに印加する逆極性の電圧と時間の積である電圧時間積(ET積)が等しくなることによりリセットされる。
【0010】
アークモードにおいて、極性が逆方向となるスイッチング素子122Bのオン期間とオフ期間において印加電圧と印加時間の電圧時間積が等しくなることにより、直流リアクトル121Bの磁気飽和はリセットされる。
【0011】
しかしながら、電圧クランプ部を備えた回路構成では、直流リアクトルの磁気飽和リセットが不十分となるという問題が発生する。
図21(d)は磁気飽和の発生状態を示している。スイッチング素子122Bがオフ期間(T―Tw)の電圧は、電圧クランプ部130clampBのコンデンサCでクランプされた電圧VCにより抑制される。そのため、スイッチング素子122Bがオフ期間の電圧時間積Soffはスイッチング素子122Bがオン期間(Tw)の電圧時間積Sonよりも小さいため、直流リアクトルの偏磁はリセットされることなく磁気飽和に至る。磁気飽和をリセットするにはオフ期間の時間幅を長くする必要があるが、通常、アークモード時のオン期間(Tw)は予め定められた固定時間であり、連続して発生する。したがって、オフ期間(T−Tw)は、非常に短く、磁気飽和をリセットするに十分に長いオフ期間を設けることは困難である。
【0012】
磁気飽和を解消する構成例として、磁気飽和時に直流電源部を停止させる構成が検討される。
図21(c)は直流電源部110Cを停止する構成例を示している。この構成例では、制御回路部140Cは磁気飽和時に停止指令信号を直流電源部110Cに出力して直流電源部110Cの出力動作を停止させる。直流電源部110Cは、停止指令信号を検出し、パルス部120C及び負荷150Cへの電力供給を停止する。パルス部120Cは、直流電源部110Cからの電力供給が停止されるため、直流リアクトル121Cの磁気飽和はリセットされる。制御回路部140Cは、直流リアクトル121Cがリセットされた後、再起動指令を直流電源部110Cに送り、直流電源部110Cを再起動させる。
【0013】
なお、
図21(c)に示す構成例では、直流パルス電源装置100Cのパルスモードにおいてパルス出力を連続出力している間において、アーク検出部160Cが負荷150Cのプラズマ発生装置でのアーク発生を検出すると、制御回路部140Cは割り込み処理により、アークモードで制御を行う。アークモードにおいて、制御回路部140Cはアーク検出に基づいてオン/オフ周期、及び/又はオン期間の時間幅を変更して直流電源部110Cから負荷150Cへの電力供給を抑制する。
【0014】
図22、及び
図23は、
図21(c)の直流パルス電源装置100Cにおいて、直流電源部110Cを停止させて磁気飽和をリセットさせる動作を説明するためのフローチャート、及び波形図である。
【0015】
直流パルス電源装置は、プラズマ負荷に定常電力を供給するパルスモードの動作中にアークの発生を検出した場合には、割り込み処理によりアークモードの制御を行う。アーク検出部160Cによりプラズマ負荷150Cのアーク発生が検出されると(S121)、制御回路部140Cはこのアーク検出を受けて、アークモードでスイッチング素子122Cを動作させる(S122)。
【0016】
アークモードでは、パルス周期の変更、及び/又は、パルス周期の時間幅Tの内のスイッチング素子をオン状態とする時間幅Twを変更する。パルス周期の時間幅Tの内、時間幅Twの間スイッチング素子122Cをオン状態とし、負荷150Cへの電力供給を停止する。次のパルス周期が開始するまでの時間幅(T―Tw)の間はオフ状態とし、負荷150Cへ電力を供給する。ここで、時間幅Twをスイッチング素子のオン/オフ動作のパルス周期の時間幅Tより短い時間幅に設定する。スイッチング素子122Cがオン状態の期間では、直流電源部110Cはスイッチング素子122Cのオン抵抗電圧を負荷150Cに印加するが、オン抵抗電圧はほぼ接地電圧に近い電圧であるため、負荷への電力供給は主にオフ状態の期間の時間幅(T―Tw)となる。これにより、負荷への電力供給を抑制することによりアークの発生を解消する。
【0017】
アークモードにおいて、直流リアクトル121Cには直流リアクトル電流iDCLが流れ、直流リアクトル電流iDCLの電流値は時間幅Twの間に徐々に増加し、時間幅(T―Tw)の間に直流リアクトル電流iDCLは減少する。なお、時間幅(T―Tw)時間幅Twと比較して短時間であるため、減少量は僅かである。
【0018】
アークモードにおいて、サージ電圧による過剰な電圧上昇を回避するために、電圧クランプ部130clampCにより直流リアクトルの電圧を抑制する構成では、オン期間の時間幅Twとオフ期間の時間幅(T―Tw)で逆極性の電圧を印加する。このとき、オフ期間での印加電圧がクランプされるため、オン期間の電圧時間積Sonに対して、オフ期間の電圧時間積Soffが小さくなって偏磁が生じ、オン/オフ動作を複数回繰り返す間に、直流リアクトル121Cが磁気飽和する。
【0019】
アーク発生中において、オン状態のスイッチング素子により直流リアクトルが偏磁状態から磁気飽和に至る間に、直流リアクトル電流iDCLの電流値は徐々に増加していき、直流リアクトル121Cが磁気飽和する飽和電流レベルiSAに達する。直流リアクトル121Cが磁気飽和に至ると、リアクトルのインダクタンス機能が低減し過剰電流が発生してスイッチング素子を損傷させる要因となる。
【0020】
制御回路部140Cは、パルスモードでの動作中に(S111)、アークの発生を検出すると(S121)、割り込みによりアークモード(S122)としてアークの発生を解消すると共に、磁気飽和のリセット処理(S112)を行う。
【0021】
リセット処理(S112)では、磁気飽和が検出されると(S112a)、直流電源部110Cを停止させる(S112b)。直流電源部110Cの停止は、停止時間Tstopが設定時間TSTとなるまで続ける(S113a)。
【0022】
通常、直流リアクトルをオン/オフ動作させるスイッチング素子には、過剰電流による素子損傷を避けるためにスナバ回路が並列接続されている。なお、
図21ではスナバ回路の図示は省略している。
図21(c)において、直流電源部110Cの電力供給が停止されると、スナバ回路のコンデンサの放電電流等により直流リアクトル電流iDCLは徐々に減少し、直流リアクトルの電圧が低下する。これにより、スイッチング素子がオン期間に対応する極性の電圧時間積が減少し、オフ期間に対応する極性の電圧時間積との差分が減少するため、直流リアクトル121Cの磁気飽和はリセットされる。直流リアクトル121Cの磁気飽和のリセットは、直流電源部110Cの停止時間Tstopが予め定めておいた設定時間TSTを経過したか否かにより判定することができる。ここで、設定時間TSTは直流リアクトル121Cの磁気飽和がリセットされるに十分な時間として設定される。
【0023】
制御回路部140Cは、磁気飽和がリセットされたと判定した後、再起動指令を出力して直流電源部110Cを再起動させ、パルス部120Cへの電力供給を再開させ(S113b)、その後パルスモードで制御を行う(S114)。
【0024】
しかしながら、直流電源部を停止させることにより磁気飽和をリセットさせる構成では、直流電源部が停止するため負荷への電力供給が停止される。電力供給が停止されると、負荷側の装置を再起動させる必要があり、再起動時間を要するという課題がある。例えば、プラズマ発生装置等のプラズマ負荷では、プラズマ放電が停止した後にプラズマを再度発生させるために再起動を行う必要がある。再起動時間はプラズマ処理の効率を低下させる要因となる。アークの発生が重なると、その度に再起動時間が必要となるため、プラズマ処理の効率低下は装置稼働率の低下の大きな要因となる。
【0025】
本発明は前記した従来の問題点を解決し、直流パルス電源装置において、直流リアクトルの磁気飽和をリセットすることを目的とする。また、磁気飽和のリセット時において、負荷への電力供給を継続することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、直流リアクトルが磁気飽和状態に至った際に、スイッチング素子のオン/オフ動作を所定時間だけ休止させ、オフ状態とすることにより、直流リアクトルの磁気飽和をリセットすると共に負荷への電力供給を維持する。磁気飽和がリセットされた後に、通常のパルスモードによるパルス出力を再開させる。電圧クランプ部によりクランプされた電圧であっても、オン期間における電圧時間積に見合うに十分な長さの休止時間の間、スイッチング素子をオフ状態とすることにより、逆極性の電圧時間積がキャンセルされ磁気飽和した直流リアクトルはリセットさせる。このとき、直流リアクトルの透磁率は、直流リアクトルの偏磁の解消、及び磁気飽和のリセットに伴って増加し、直流リアクトル電流iDCLの電流値は減少する。
【0027】
一方、この休止時間の間、スイッチング素子はオフ状態にあるためパルス出力の発生は休止しているが、直流電源と負荷とは直流リアクトルを介して接続されるため、負荷には直流電圧が印加され電力供給が維持される。
【0028】
負荷への電力供給停止により磁気飽和をリセットする場合には、負荷側の装置の再起動、及び再起動時間という課題が発生するが、本発明のスイッチング素子の休止による磁気飽和リセットによれば、負荷に対する電力供給は維持されるため、負荷側の装置の再起動、及び再起動時間といった課題は解消される。
【0029】
本発明は、直流パルス電源装置及び直流パルス電源装置の制御方法の形態を備える。
[直流パルス電源装置]
本発明の直流パルス電源装置は、
(a) 直流電源部
(b) 直流リアクトルとスイッチング素子との直列回路を備え、直流電源部の直流電圧からパルス出力を発生するパルス部
(c) パルス部の直流リアクトルに並列接続されたキャパシタを含み、キャパシタのキャパシタ電圧により直流リアクトルの両端電圧をクランプ電圧に制限する電圧クランプ部
(d) パルス部のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御する制御回路部
を備える。
【0030】
制御回路部は、
(d1) スイッチング素子のスイッチング動作の周期を制御するスイッチング周期制御部、
(d2) 前記スイッチング素子のスイッチング動作の休止及び再開を制御する休止/再開制御部
を備える。
【0031】
(d1:スイッチング周期制御部)
スイッチング周期制御部は、アーク状態に応じてパルス周期及び/又はパルス幅を異にするアークモードとパルスモードの2つの動作モードを備える。
【0032】
(1)アークモード:
アークモードは、アーク発生状態において、負荷への電力供給を停止してアークの発生を抑制する第1の周期モードであり、直流リアクトルの偏磁に伴って直流リアクトル電流の電流値は飽和電流レベルに向かって増加する。
【0033】
(2)パルスモード:
パルスモードは、通常のプラズマ駆動状態において、負荷への電力供給を定常的に行う所定周期の第2の周期モードであり、直流リアクトル電流の電流値の変動は飽和電流レベル以下のレベル領域に収まる。
【0034】
パルスモードは、モード中にスイッチング素子のスイッチング動作を休止させる休止時間を挟み、この休止時間の間に、休止/再開制御部により負荷への電力供給を維持しながら直流リアクトルの磁気飽和をリセットする。
【0035】
(d2:休止/再開制御部)
休止/再開制御部は、
(a) 直流リアクトルが磁気飽和に達した時点において、スイッチング素子をオフ状態としてスイッチング動作を休止する休止制御を行う。
休止状態においてスイッチング素子はオフ状態となり、この時の直流リアクトルの電圧時間積はクランプされたキャパシタ電圧と休止時間との積になる。休止状態の電圧時間積は、休止時間を十分にとることにより、スイッチング素子がオン状態の電圧時間積と同等とすることができ、これにより磁気飽和はリセットされる。なお、直流リアクトル電圧は、直流リアクトルに蓄積された蓄積エネルギーにより発生する電圧であり、休止時間の時間幅はクランプ電圧との電圧時間積が、スイッチング素子がオン状態の時の電圧時間積に相当するに十分な長さである。この休止制御では、スイッチング素子はオフ状態にあるため、直流電源から負荷への直流電圧の印加は維持される。
【0036】
(b) 直流リアクトルの磁気飽和がリセットされた時点において、スイッチング素子の駆動動作を再開する再開制御を行う。
【0037】
休止/再開制御部による休止制御及び再開制御は、それぞれ時間に基づく制御態様、又は電流に基づく制御態様を備える。
【0038】
(a)休止制御:
(a1) 時間に基づく制御態様による休止制御は、複数回のパルス動作においてスイッチング動作を休止する累積時間幅と、磁気飽和の飽和レベルに相当する設定時間幅との比較に基づいて、累積時間幅が設定時間幅を越えた場合にスイッチング素子を休止させる。
【0039】
(a2) 電流に基づく制御態様による休止制御は、複数回のパルス動作で増加する直流リアクトル電流の電流値と、磁気飽和の飽和レベルに相当する設定電流値との比較に基づいて、直流リアクトル電流の電流値が設定電流値を越えた場合にスイッチング素子を休止させる。
【0040】
(b)再開制御:
(b1) 時間に基づく制御態様による再開制御は、休止制御による休止時間と、磁気飽和がリセットされる設定時間幅との比較に基づいて、休止時間が設定時間幅に達した時にパルスモードによるスイッチング素子動作を再開する。
【0041】
(b2) 電流に基づく制御態様による再開制御は、休止制御により減少する直流リアクトル電流の電流値と、磁気飽和がリセットされ、パルスモードを行う際の直流リアクトル電流の電流値との比較に基づいて、直流リアクトル電流の電流値がパルスモード時の電流値に低下した時にパルスモードによるスイッチング素子動作を再開する。
【0042】
休止制御及び再開制御は、両制御を時間に基づいて制御する時間制御の第1の態様、両制御を電流に基づいて制御する電流制御の第2の態様、休止制御を時間に基づいて制御し、再開制御を電流に基づいて制御する第3の態様、休止制御を電流に基づいて制御し、再開制御を時間に基づいて制御する第4の態様の各態様を備える。なお、上記の時間制御は、スイッチング素子を経過時間に基づいて制御する制御態様を意味し、時間自体を制御対象とするものではない。また、上記の電流制御は、スイッチング素子を電流値に基づいて制御する制御態様を意味し、電流自体を制御対象とするものではない。
【0043】
(第1の態様)
第1の態様は、休止制御及び再開制御を時間に基づく時間制御により行う態様である。第1の態様において、休止/再開制御部は、アークモードのスイッチング素子のオン/オフ動作において各オン状態の時間幅(Ton)を累積した累積パルス幅(Tpulse)が磁気飽和の許容時間幅(TP)を越えた時点でスイッチング素子の動作を休止する。スイッチング素子の休止時間(Trest)が設定時間(TRE)を越えた時点でスイッチング素子の動作を再開する。
【0044】
(第2の態様)
第2の態様は、休止制御及び再開制御を電流に基づく電流制御により行う態様である。第2の態様において、休止/再開制御部は、アークモードにおいて、スイッチング素子の直流リアクトル電流(iDCL)の増加が直流リアクトル電流の磁気飽和レベル(iSA)を越えた時点でスイッチング素子の動作を休止する。スイッチング素子の直流リアクトル電流(iDCL)が、パルスモードにおける直流リアクトル電流のパルスモードレベル(iPA)を越えた時点でスイッチング素子の動作を再開する。
【0045】
(第3の態様)
第3の態様は、休止制御を時間に基づく時間制御により行い、再開制御を電流に基づく電流制御により行う態様である。第3の態様において、休止/再開制御部は、アークモードのスイッチング素子のオン/オフ動作において各オン状態の時間幅(Ton)を累積した累積パルス幅(Tpulse)が磁気飽和の許容時間幅(TP)を越えた時点でスイッチング素子の動作を休止する。スイッチング素子の直流リアクトル電流(iDCL)が、パルスモードにおける直流リアクトル電流のパルスモードレベル(iPA)を越えた時点でスイッチング素子の動作を再開する。
【0046】
(第4の態様)
第4の態様は、休止制御を電流に基づく電流制御により行い、再開制御を時間に基づく時間制御により行う態様である。休止/再開制御部は、アークモードにおけるスイッチング素子の直流リアクトル電流(iDCL)が直流リアクトル電流の磁気飽和レベル(iSA)を越えた時点で前記スイッチング素子の動作を休止する。スイッチング素子の休止時間(Trest)が設定時間(TRE)を越えた時点で前記スイッチング素子の動作を再開する。
【0047】
休止制御及び再開制御は、時間に基づく時間制御及び電流に基づく電流制御の組み合わせについて第1の態様〜第4の態様の何れの態様を適用してもよい。
【0048】
(電圧クランプ部)
電圧クランプ部は、キャパシタ電圧の内、クランプ電圧を越える電圧分を直流電源部に回生する回生回路を用いて構成する他、他の通常知られるクランプ回路を用いた構成を適用してもよい。電圧クランプ部として回生回路を用いた場合には、回生回路が直流電源部との間に設けた変圧器の変圧比により定まるキャパシタ電圧がクランプ電圧となり、クランプ電圧を越える電圧分は直流電源部に回生される。
【0049】
[直流パルス電源装置の制御方法]
本発明の直流パルス電源装置の制御方法は、直流電源部と、直流電源部の直流電圧からパルス出力を発生する直流リアクトルとスイッチング素子との直列回路を備えたパルス部と、パルス部の直流リアクトルに並列接続されたキャパシタのキャパシタ電圧により直流リアクトルの両端電圧をクランプ電圧に制限する電圧クランプ部と、パルス部のスイッチング素子のオン/オフ動作を制御する制御回路部を備える直流パルス電源装置の制御方法である。
【0050】
制御回路部による制御は、
(d1) スイッチング素子のスイッチング動作の周期を制御するスイッチング周期制御、
(d2) スイッチング素子のスイッチング動作の休止及び再開を制御する休止/再開制御
を備える。
【0051】
(d1:スイッチング周期制御)
スイッチング周期制御は、アーク状態に応じてパルス周期及び/又はパルス幅を異にするアークモードとパルスモードの2つの動作モードを備える。
【0052】
(1)アークモード:
アークモードは、アーク発生状態において、負荷への電力供給を停止してアークの発生を抑制する第1の周期モードであり、直流リアクトルの偏磁に伴って直流リアクトル電流の電流値は飽和電流レベルに向かって増加する。
【0053】
(2)パルスモード:
パルスモードは、通常のプラズマ駆動状態において、負荷への電力供給を定常的に行う所定周期の第2の周期モードであり、直流リアクトル電流の電流値の変動は飽和電流レベル以下のレベル領域に収まる。
【0054】
パルスモードは、モード間に、スイッチング素子のスイッチング動作を休止させる休止時間を挟み、この休止時間の間に、休止/再開制御により負荷への電力供給を維持しながら直流リアクトルの磁気飽和をリセットする。
【0055】
(d2:休止/再開制御)
休止/再開制御は、
(a) 直流リアクトルが磁気飽和に達した時点において、スイッチング素子をオフ状態としてスイッチング動作を休止する休止制御を行う。
休止状態においてスイッチング素子はオフ状態となり、この時の直流リアクトルの電圧時間積はクランプされたキャパシタ電圧と休止時間との積になる。休止状態の電圧時間積は、休止時間を十分にとることにより、スイッチング素子がオン状態の電圧時間積と同等とすることができ、これにより磁気飽和はリセットされる。なお、直流リアクトル電圧は、直流リアクトルに蓄積された蓄積エネルギーにより発生する電圧であり、休止時間の時間幅はクランプ電圧との電圧時間積が、スイッチング素子がオン状態の時の電圧時間積に相当するに十分な長さである。この休止制御では、スイッチング素子はオフ状態にあるため、直流電源から負荷への直流電圧の印加は維持される。
【0056】
(b) 直流リアクトルの磁気飽和がリセットされた時点において、スイッチング素子の駆動動作を再開する再開制御を行う。
【0057】
休止制御及び再開制御は、それぞれ時間に基づく制御、又は電流に基づく制御により行う。
【0058】
(a)休止制御:
(a1) 時間に基づく制御態様による休止制御は、複数回のパルス動作においてスイッチング動作を休止する累積時間幅と、磁気飽和の飽和レベルに相当する設定時間幅との比較に基づいて、累積時間幅が設定時間幅を越えた場合にスイッチング素子を休止させる。
【0059】
(a2) 電流に基づく制御態様による休止制御は、複数回のパルス動作で増加する直流リアクトル電流の電流値と、磁気飽和の飽和レベルに相当する設定電流値との比較に基づいて、直流リアクトル電流の電流値が設定電流値を越えた場合にスイッチング素子を休止させる。
【0060】
(b)再開制御:
(b1) 時間に基づく制御態様による再開制御は、休止制御による休止時間と、磁気飽和がリセットされる設定時間幅との比較に基づいて、休止時間が設定時間幅に達した時にパルスモードによるスイッチング素子動作を再開する。
【0061】
(b2) 電流に基づく制御態様による再開制御は、休止制御により減少する直流リアクトル電流の電流値と、磁気飽和がリセットされ、パルスモードを行う際の直流リアクトル電流の電流値との比較に基づいて、直流リアクトル電流の電流値がパルスモード時の電流値に低下した時にパルスモードによるスイッチング素子動作を再開する。
【0062】
休止/再開制御部による休止制御及び再開制御は、それぞれ時間に基づく制御、又は電流に基づく制御により行う。休止制御及び再開制御の両制御を時間に基づいて制御する時間制御の第1の態様、両制御を電流に基づいて制御する電流制御の第2の態様、休止制御を時間に基づいて制御し、再開制御を電流に基づいて制御する第3の態様、休止制御を電流に基づいて制御し、再開制御を時間に基づいて制御する第4の態様の各態様を備える。
【発明の効果】
【0063】
以上説明したように、本発明によれば、直流パルス電源装置において、直流リアクトルの磁気飽和をリセットし、磁気飽和のリセット時において、負荷への電力供給を継続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の直流パルス電源は、パルス部が備える直流リアクトルが磁気飽和状態に至った際に、パルス部のスイッチング動作を所定時間の間だけ休止させてパルス出力の発生を止め、直流リアクトルの直流電圧を低下させることにより直流リアクトルの磁気飽和をリセットする。磁気飽和リセットが行われる休止時間の間においても、直流リアクトルを介して直流電源部から負荷に直流電流が流れるため負荷への電力供給は維持され、プラズマ負荷におけるプラズマの消失は回避される。
【0066】
本発明の直流電源装置の概略構成及び動作を
図1,
図2を用いて説明し、本発明の直流パルス電源の磁気飽和リセットの動作について
図3〜
図11のフローチャートを用いて説明する。なお、
図4〜
図6は磁気飽和リセットの休止制御及び再開制御の概略動作を説明ためのフローチャートであり、
図7〜
図11は、直流電源装置をプラズマ負荷に電力供給を行う場合において、磁気飽和リセットの休止制御、再開制御、及びアークモードの割り込み処理の概略動作を説明ためのフローチャートである。
図12,13は、プラズマ負荷に適用する直流電源装置の概略構成の休止制御及び再開制御の各態様を説明ためのブロック図であり、
図14は、休止制御及び再開制御の波形図であり、
図14(a)は時間に基づく時間制御の波形図であり、
図14(b)は電流に基づく電流制御の波形図である。
【0067】
図15,
図17〜
図20は、本発明の直流パルス電源の構成例について、電圧クランプ部として回生部を備える第1の構成例〜第5の構成例を説明するための図である。
図16は回生部の概略構成図である。
【0068】
[直流パルス電源装置の概略構成]
図1は本発明の直流パルス電源装置の概略構成例を示している。直流パルス電源装置は直流電源部10、パルス部20、電圧クランプ部30clamp、制御回路部40を備え、パルス部20は直流電源部10の直流電圧からパルス出力を形成し、負荷50に供給する。
【0069】
パルス部20は、昇圧チョッパ回路によりパルス出力を形成する構成である。パルス部20は直流リアクトル21とスイッチング素子22の直流回路を備えた昇圧チョッパ回路により構成され、直流リアクトル21は直流電源部10側と負荷50側との間に直列接続され、スイッチング素子22は負荷50側に対して並列接続される。駆動回路23はスイッチング素子22のオン/オフ動作を駆動し、直流電圧からパルス波形を生成する。直流リアクトル21にはキャパシタCが並列接続される。キャパシタCは電圧クランプ部30clampの一構成要素であり、クランプ電圧の電圧を所定電圧にクランプすることにより、直流リアクトル21の両端電圧がキャパシタ電圧の所定電圧を越えないように電圧抑制する。
【0070】
図示する構成例では、パルス部20の直流電源側は、接地された端子Bと低電圧側として負電圧の端子Aを備える。スイッチング素子22はFETの例を示し、ソースS側を低電圧側にドレインD側を接地電圧側に接続し、ゲートG側には駆動回路23から駆動信号が入力される。
【0071】
制御回路部40は駆動回路23を介して昇圧チョッパ回路を制御し、目標とするパルス出力に対応したスイッチング素子22のオン時間とオフ時間の時間幅ないしデューティー比を定める制御信号を生成する。駆動回路23は、制御回路部40の制御信号に基づいてスイッチング素子22のゲートGに駆動信号を出力し、スイッチング素子22をオン/オフ動作させる。
【0072】
スイッチング素子22のソースS側は直流リアクトル21の負荷側に接続され、スイッチング素子22のドレインD側は接地される。スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21の負荷側は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び直流リアクトル21を介して端子Aに直流リアクトル電流iDCLが流れる。この際、直流リアクトル21には電磁エネルギーが蓄積される。次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21に蓄積された蓄積エネルギーにより直流リアクトル21には直流リアクトル電圧VDCLが発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことによりオン/オフ時間のデューティー比に応じて出力電圧Voを上昇させる。
【0073】
昇圧チョッパ回路の駆動において、直流リアクトル21の直流リアクトル電圧VDCLの上限は、並列接続された電圧クランプ部30clampのキャパシタCのキャパシタ電圧VCにクランプされる。スイッチング素子22のオン/オフ動作に伴い、直流リアクトル21にはオン期間に直流電源の電圧が印加され、オフ期間にキャパシタCのキャパシタ電圧VCが印加され、互いに逆極性の電圧時間積が得られる。キャパシタ電圧はVCは電圧クランプ部30clampによりクランプされるため、両方の電圧時間積の差により偏磁が生じ、複数の周期を繰り返す間に磁気飽和に至る。偏磁の増加及び磁気飽和に伴って、直流リアクトル21のインダクタンスの透磁率が低下し、直流リアクトル電流iDCLが増加する。制御回路部40は、直流リアクトル21が磁気飽和した場合に、駆動回路23のスイッチング動作を制御することにより直流リアクトル21の磁気飽和をリセットする。
【0074】
図2は、制御回路部40による磁気飽和リセット動作を説明するための図であり、
図2(a)は直流リアクトル21が磁気飽和に至る状態を示し、
図2(b)は直流リアクトル21の磁気飽和をリセットする状態を示している。
【0075】
パルス部20の昇圧チョッパ回路の通常動作を行ってパルス出力を形成する際には、
図2(a)に示すように、駆動回路23の制御によりスイッチング素子22はオン/オフ動作を繰り返して直流電圧からパルス出力を形成する。この繰り返し動作において、スイッチング素子22がオン状態のときには、直流リアクトル21には直流リアクトル電流iDCLが流れる。
図2(a)では、直流リアクトル電流iDCLは高電圧側Bから低電圧側Aに向かって流れる。
【0076】
プラズマがアーク状態となる等の負荷50に異常が発生した場合には、制御回路部40は駆動回路23を制御し、スイッチング素子22を駆動する周期を変更してスイッチング素子22のオン状態の時間幅を増し、負荷への電力供給を制限する。スイッチング素子22のオン状態の時間幅が増加し、オフ状態の時間幅が減少すると、オフ状態での直流リセットの電圧は、電圧クランプ部30clampのキャパシタ電圧VCにクランプされる。そのため、オン状態とオフ状態の電圧時間積に差分が生じて、直流リアクトル21は偏磁し複数周期の後に磁気飽和に至り、直流リアクトル電流iDCLが増加する。なお、直流リアクトル21に並列接続されたキャパシタCは、スイッチング素子22のオフ状態において、直流リアクトル21に蓄積されたエネルギーにより充電される。
【0077】
直流リアクトル21が磁気飽和に至った場合には、制御回路部40は駆動回路23を制御して、スイッチング素子22を所定時間だけオフ状態とし、パルス部20の動作を休止状態とする。この休止状態において、直流リアクトル21には、キャパシタCのキャパシタ電圧VCが、スイッチング素子のオン状態での電圧と逆極性に印加される。この逆極性の電圧印加は、休止時間の間行われる。キャパシタ電圧VCは電圧クランプ部30clampにより上限は設定電圧にクランプされているが、休止時間を十分長く設定することにより、オン状態での電圧時間積と同等の電圧時間積が得られ、直流リアクトル21の磁気飽和はリセットされる。磁気飽和のリセットにより、直流リアクトル21の透磁率は増加していき、直流リアクトル電流は減少する。
【0078】
(磁気飽和リセットのフロー)
本発明による磁気飽和リセットのフローの概略を
図3のフローチャートを用いて説明する。直流パルス電源装置は、パルスモード(S1)においてパルス出力を生成し、プラズマ負荷に電力を供給しプラズマを維持する。プラズマ負荷にアーク異常が発生した場合には、割り込みによりアークモードとし、スイッチング素子の周期を制御して負荷への供給電力を抑え、アークの発生を解消する。電圧クランプ部により直流リアクトルに発生する過剰電圧を抑制する構成では、アークモードにおいて、電圧クランプによる電圧抑制により直流リアクトルに磁気飽和が発生する。
【0079】
アークモードにおいて磁気飽和を検出すると(S2)、パルスモード中において休止制御によりスイッチング動作を休止させて磁気飽和をリセットし、磁気飽和をリセットした後、再開制御によりスイッチング動作を再開させ(S3)、パルス出力による電力供給を行う(S4)。
【0080】
図3(b)は磁気飽和リセットの概要を説明するための図である。
図21(d)で示したように、スイッチング素子がオフ期間(T―Tw)の電圧は、電圧クランプ部によりクランプ電圧に抑制される。そのため、スイッチング素子がオフ期間の電圧時間積Soffはスイッチング素子がオン期間(Tw)の電圧時間積Sonよりも小さくなるため、直流リアクトルには偏磁が生じ磁気飽和に至る。
【0081】
磁気飽和状態に至った後、休止制御によりスイッチング動作を休止させ、スイッチング素子をオフ状態とする。休止制御において、直流リアクトルの電圧時間積Srestはクランプ電圧と休止時間Trestとの積である。直流リアクトル電圧はクランプ電圧にクランプされているが、休止時間Trestを十分に長くすることにより、休止状態の電圧時間積Srestはスイッチング素子がオン状態の電圧時間積Sonと同等となり、直流リアクトルの磁気飽和はリセットされる。この休止制御では、スイッチング素子はオフ状態にあるため、負荷には直流電源の直流電圧が印加され、負荷への電力供給は維持される。
【0082】
[直流パルス電源装置の概略構成]
本発明の直流パルス電源装置のスイッチング周期制御部及び休止/再開制御部の構成例及び動作について
図4,5を用いて説明する。
【0083】
図4において、直流パルス電源装置の制御回路部40は、スイッチング素子のスイッチング動作の周期を制御するスイッチング周期制御部40Aと、スイッチング素子のスイッチング動作の休止及び再開を制御する休止/再開制御部40B、40Cを備える。
【0084】
通常動作のパルスモードにおいて、スイッチング周期制御部40Aは、負荷に供給する電力に応じたデューティーのオン/オフ信号を駆動回路23に送ってスイッチング動作を制御し、パルス出力を生成する。
【0085】
アーク発生時では、スイッチング周期制御部40Aは、アークモードにより負荷に供給する電力を絞ることによりアークの発生を解消する。アークモードでは、スイッチング素子のオン/オフ動作の周期、及び/又は時間幅を制御することによりスイッチング素子のオン期間とオフ期間を変更し、直流電源から負荷に供給する電力を制御する。
【0086】
一方、休止/再開制御部40B、40Cは、直流リアクトルが磁気飽和に達した時点で休止制御により駆動回路23を休止させスイッチング素子をオフ状態とする。
スイッチング素子のオフ期間において、オン期間中の直流リアクトル電流で蓄積されたエネルギーにより直流リアクトル電圧が発生する。
この直流リアクトル電圧は電圧クランプ部によりクランプされた状態となるが、スイッチング素子をオフ状態とする休止時間を長くすることによりオン期間の電圧時間積に相当する電圧時間積を確保して直流リアクトルの磁気飽和をリセットすると共に、負荷への電力供給を維持する。その後、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされた時点で駆動回路23に再開信号を送ってスイッチング動作を再開させる。
【0087】
磁気飽和リセットの態様として、スイッチング素子に流れる直流リアクトル電流iDCLに基づいて行う電流制御の態様、及びスイッチング素子を駆動する累積パルス幅Tpulseに基づいて行う時間制御の態様を備える、休止/再開制御部40Bは電流制御の態様による構成例を示し、休止/再開制御部40Cは時間制御の態様による構成例を示している。なお、電流制御は、スイッチング素子を電流値に基づいて制御する制御態様であり、電流自体を制御対象とするものではない。また、時間制御は、スイッチング素子をパルス幅の時間に基づいて制御する制御態様であり、時間自体を制御対象とするものではない。
【0088】
休止制御及び再開制御は、スイッチング素子の制御において、両制御を電流制御又は時間制御で行う態様の他、電流制御と時間制御を組み合わせた態様を含む。以下、両制御を時間に基づいて制御する時間制御の第1の態様、両制御を電流に基づいて制御する電流制御の第2の態様、休止制御を時間に基づいて制御し、再開制御を電流に基づいて制御する第3の態様、休止制御を電流に基づいて制御し、再開制御を時間に基づいて制御する第4の態様の各態様について説明する。
【0089】
(電流制御及び時間制御の概要)
電流制御及び時間制御による休止制御及び再開制御の概要について
図4の概略構成図、及び
図5,
図6のフローチャートを用いて説明する。
図4(a)は休止制御及び再開制御の両制御を時間に基づいて制御する時間制御の第1の態様の概略構成を示し、
図4(b)は休止制御及び再開制御の両制御を電流に基づいて制御する電流制御の第2の態様の概略構成を示している。時間制御と電流制御とを組み合わせた第3の態様及び第4の態様については、
図6を用いてフローのみを示して
図4に対応する構成については省略する。
【0090】
図5,6は本発明による磁気飽和リセットにおける休止制御及び再開制御の概略を説明するためのフローチャートであり、
図5(a),(b)は第1の態様、第2の態様のフローチャートであり、
図6(a),(b)は第3の態様、第4の態様のフローチャートである。なお、
図5,6のフローチャートでは、アークモードの割り込み処理については省略している。
【0091】
第1の態様及び第2の態様の詳細については、
図8,9のフローチャートと共に
図12を用いて後に説明し、第3の態様及び第4の態様については
図10,11のフローチャート、及び
図12を用いて後に説明する。
【0092】
(第1の態様:時間制御の態様)
時間制御の第1の態様を
図4(a)の構成図、及び
図5(a)のフローチャートを用いて説明する。制御回路部40は、スイッチング周期制御部40Aと休止/再開制御部40Bを備える。スイッチング周期制御部40Aは、パルスモードにおいてパルス出力を生成して負荷に電力を供給し、アークモードにおいて周期制御によりアーキング状態を解消する。一方、休止/再開制御部40Bは、パルスモードにおいて時間に基づく時間制御により駆動回路の駆動動作の休止及び再開を制御し、磁気飽和をリセットする。
【0093】
通常、パルスモードの通常動作では、スイッチング周期制御部40Aは所定のデューティーで駆動回路23のスイッチング素子22をオン/オフ駆動させ負荷に対して所定電力を供給する(S1)。パルスモードにおいて、負荷状態検出部60が負荷状態に変動が発生したことを検出すると、アークモードを割り込み処理させて負荷状態を解消する。例えば、プラズマ発生装置にアークが発生した場合には、アークモードによりスイッチング素子22のオン/オフ周期、及び/又はオン期間の時間幅Twを変更してプラズマ負荷に供給する電力を絞ることにより、プラズマを維持すると共にアーキング状態を解消する。アークモードは、例えば、通常5μsの時間幅Twのパルス周期によるパルスモードに対して、オン期間を10μsの時間幅Twとして、負荷への電力供給を抑制する。アークモード中のオン/オフ動作において、オフ期間中に直流リアクトルに印加される電圧がクランプされ、磁気飽和リセットに要する電圧時間積が不足するため、直流リアクトルは偏磁していき磁気飽和に至る。
【0094】
休止/再開制御部40Bは、スイッチング素子22をオフ状態として休止させ、アークモードで生じた磁気飽和を解消する。休止/再開制御部40Bは、直流リアクトルが磁気飽和したことを検出し、休止/再開動作を行う。時間制御の態様では、スイッチング素子のオン期間の時間幅Twに基づいて磁気飽和を検出する。休止/再開制御では、直流電源から負荷への電力供給は停止すること無く維持されるため、負荷側の装置を再起動させることなく再開させることができる。
【0095】
休止/再開制御部40Bの時間制御による休止制御(S2A)では、スイッチング周期制御部40Aにおけるアークモードのオン期間の時間幅Twを受け、各時間幅Twを累積して累積パルス幅Tpulseを求める。累積パルス幅Tpulseは、直流リアクトルの磁気飽和の電圧時間積の時間に相当する。直流リアクトルの電圧はクランプされていることから、求めた累積パルス幅Tpulseを設定パルス幅TPと比較し、累積パルス幅Tpulseが設定パルス幅TPを越えた際に、直流リアクトルが磁気飽和したものと判定する(S2Aa)。ここで、設定パルス幅TPは、直流リアクトルが磁気飽和するまでの累積パルス幅Tpulseを予め求めておくことで設定することができる。
【0096】
休止/再開制御部40Bは、直流リアクトルの磁気飽和を判定すると(S2Aa)、駆動回路23に休止信号を送り、パルス部20のスイッチング素子22をオフ状態として休止状態とし(S2Ab)、直流リアクトル21の磁気飽和をリセットさせる。パルス部20は休止状態において負荷への電力供給を完全に停止することなく、供給電力を所定レベルに制限して続行する。
【0097】
休止/再開制御部40Bの時間制御による再開制御(S3A)では、休止状態中の休止時間Tresetを計時し、休止時間Tresetを設定時間TREと比較し、休止時間Tresetが設定時間TREを越えたときには、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたものと判定する(S3Aa)。ここで、設定時間TREは、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされるまでの休止時間Tresetの時間を予め求めておくことで設定することができる。
【0098】
休止/再開制御部40Bは、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたことを判定すると(S3Aa)、駆動回路23に再開信号を送り、駆動回路23はパルスモードの休止状態からパルスモードの動作を再開する(S3Ab)。
【0099】
(第2の態様:電流制御の態様)
電流制御の第2の態様を
図4(b)の構成図、及び
図5(b)のフローチャートを用いて説明する。制御回路部40は、スイッチング周期制御部40Aと休止/再開制御部40Cを備える。スイッチング周期制御部40Aは、パルスモードにおいてパルス出力を生成して負荷に電力を供給し、アークモードにおいて周期制御によりアーキング状態を解消する。一方、休止/再開制御部40Cは、パルスモードにおいて電流に基づく電流制御により駆動回路の駆動動作の休止及び再開を制御し、磁気飽和をリセットする。
【0100】
通常、パルスモードの通常動作では、スイッチング周期制御部40Aは所定のデューティーで駆動回路23のスイッチング素子22をオン/オフ駆動させ負荷に対して所定電力を供給する(S1)。パルスモードにおいて、負荷状態検出部60が負荷状態に変動が発生したことを検出すると、第1の態様と同様に、割り込み処理によりアークモードに切り替えて負荷異常を解消する。
【0101】
休止/再開制御部40Cは、スイッチング素子22をオフ状態として休止させ、アークモードで生じた磁気飽和を解消する。休止/再開制御部40Cは、直流リアクトルが磁気飽和したことを検出した後、休止/再開動作を行う。電流制御の態様による休止/再開制御では、直流電源から負荷への電力供給は停止すること無く維持されるため、負荷側の装置を再起動させることなく再開させることができる。
【0102】
休止/再開制御部40Cの電流制御による休止制御(S2B)では、直流リアクトル電流iDCLを飽和電流レベルiSAと比較し、直流リアクトル電流iDCLが飽和電流レベルiSAを越えたとき直流リアクトルが磁気飽和したものと判定する(S2Ba)。
【0103】
休止/再開制御部40Cは、直流リアクトルの磁気飽和を判定すると(S2Ba)、駆動回路23に休止信号を送り、パルス部20のスイッチング素子22をオフ状態として休止状態とし(S2Bb)、直流リアクトル21の磁気飽和をリセットさせる。パルス部20は休止状態において負荷への電力供給を完全に停止することなく、供給電力を所定レベルに制限して続行する。
【0104】
休止/再開制御部40Cの電流制御による再開制御(S3B)では、スイッチング素子の直流リアクトル電流(iDCL)を検出し、直流リアクトル電流(iDCL)が、パルスモードにおける直流リアクトル電流のパルスモードレベル(iPA)を越えたとき、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたものと判定する(S3Ba)。
【0105】
休止/再開制御部40Cは、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたことを判定すると(S3Ba)、駆動回路23に再開信号を送り、駆動回路23はパルスモードの休止状態からパルスモードの動作を再開させ(S3Bb)、パルスモードの動作を実行させる(S4)。
【0106】
(第3の態様:時間制御と電流制御とを組み合わせた態様)
時間制御と電流制御とを組み合わせた第3の態様を
図6(a)のフローチャートを用いて説明する。なお、第3の態様の構成例の図は省略している。
【0107】
スイッチング周期制御部は、パルスモードにおいてパルス出力を生成して負荷に電力を供給し、アークモードにおいて周期制御によりアーキング状態を解消する。一方、休止/再開制御部は、パルスモードにおいて時間に基づく時間制御により駆動回路の駆動動作の休止を制御し、電流に基づく電流制御により駆動回路の駆動動作の再開を制御し、磁気飽和をリセットする。
【0108】
パルスモードにおいて、スイッチング周期制御部は所定のデューティーでスイッチング素子を駆動して負荷に対して所定電力を供給する(S1)。パルスモードにおいて、負荷状態検出部60が負荷状態に変動が発生したことを検出すると、第1の態様と同様に、割り込み処理によりアークモードに切り替えて負荷異常を解消する。
【0109】
休止/再開制御部の時間制御による休止制御(S2A)では、スイッチング周期制御部におけるアークモードのオン期間の時間幅Twを受け、各時間幅Twを累積して累積パルス幅Tpulseを求める。累積パルス幅Tpulseは、直流リアクトルの磁気飽和の電圧時間積の時間に相当する。直流リアクトルの電圧はクランプされていることから、求めた累積パルス幅Tpulseを設定パルス幅TPと比較し、累積パルス幅Tpulseが設定パルス幅TPを越えた際に、直流リアクトルが磁気飽和したものと判定する(S2Aa)。ここで、設定パルス幅TPは、直流リアクトルが磁気飽和するまでの累積パルス幅Tpulseを予め求めておくことで設定することができる。
【0110】
休止/再開制御部は、直流リアクトルの磁気飽和を判定すると(S2Aa)、駆動回路23に休止信号を送り、パルス部20のスイッチング素子22をオフ状態として休止状態とし(S2Ab)、直流リアクトル21の磁気飽和をリセットさせる。パルス部20は休止状態において負荷への電力供給を完全に停止することなく、供給電力を所定レベルに制限して続行する。
【0111】
休止/再開制御部の電流制御による再開制御(S3B)では、スイッチング素子の直流リアクトル電流(iDCL)を検出し、直流リアクトル電流(iDCL)が、パルスモードにおける直流リアクトル電流のパルスモードレベル(iPA)を越えたとき、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたものと判定する(S3Ba)。
【0112】
休止/再開制御部は、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたことを判定すると(S3Ba)、駆動回路23に再開信号を送り、駆動回路23はパルスモードの休止状態からパルスモードの動作を再開させ(S3Bb)、パルスモードの動作を実行させる(S4)。
【0113】
(第4の態様:電流制御と時間制御とを組み合わせた態様)
電流制御と時間制御とを組み合わせた第4の態様を
図6(b)のフローチャートを用いて説明する。なお、第4の態様の構成例の図は省略している。
【0114】
スイッチング周期制御部は、パルスモードにおいてパルス出力を生成して負荷に電力を供給し、アークモードにおいて周期制御によりアーキング状態を解消する。一方、休止/再開制御部は、パルスモードにおいて時間に基づく時間制御により駆動回路の駆動動作の休止を制御し、電流に基づく電流制御により駆動回路の駆動動作の再開を制御し、磁気飽和をリセットする。
【0115】
パルスモードにおいて、スイッチング周期制御部は所定のデューティーでスイッチング素子を駆動して負荷に対して所定電力を供給する(S1)。パルスモードにおいて、負荷状態検出部60が負荷状態に変動が発生したことを検出すると、第1の態様と同様に、割り込み処理によりアークモードに切り替えて負荷異常を解消する。
【0116】
休止/再開制御部は、スイッチング素子22をオフ状態として休止させ、アークモードで生じた磁気飽和を解消する。休止/再開制御部は、直流リアクトルが磁気飽和したことを検出した後、休止/再開動作を行う。電流制御の態様による休止/再開制御では、直流電源から負荷への電力供給は停止すること無く維持されるため、負荷側の装置を再起動させることなく再開させることができる。
【0117】
休止/再開制御部の電流制御による休止制御(S2B)では、直流リアクトル電流iDCLを飽和電流レベルiSAと比較し、直流リアクトル電流iDCLが飽和電流レベルiSAを越えたとき直流リアクトルが磁気飽和したものと判定する(S2Ba)。
【0118】
休止/再開制御部は、直流リアクトルの磁気飽和を判定すると(S2Ba)、駆動回路23に休止信号を送り、パルス部20のスイッチング素子22をオフ状態として休止状態とし(S2Bb)、直流リアクトル21の磁気飽和をリセットさせる。パルス部20は休止状態において負荷への電力供給を完全に停止することなく、供給電力を所定レベルに制限して続行する。
【0119】
休止/再開制御部の時間制御による再開制御(S3A)では、休止状態中の休止時間Tresetを計時し、休止時間Tresetを設定時間TREと比較し、休止時間Tresetが設定時間TREを越えたときには、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたものと判定する(S3Aa)。ここで、設定時間TREは、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされるまでの休止時間Tresetの時間を予め求めておくことで設定することができる。
【0120】
休止/再開制御部は、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたことを判定すると(S3Aa)、駆動回路23に再開信号を送り、駆動回路23はパルスモードの休止状態からパルスモードの動作を再開する(S3Ab)。
【0121】
[直流パルス電源装置の構成例]
本発明の直流パルス電源装置の構成例及び動作について
図7〜
図13を用いて説明する。ここでは、パルスモード、及びアークモードの割り込みについて説明する。
【0122】
はじめに、
図7のフローチャートを用いて、直流パルス電源装置による磁気飽和リセットの休止制御及び再開制御の概略動作を説明し、電流制御による第1の態様、時間制御による第2の態様、時間制御及び電流制御による第3の態様、電流制御及び時間制御による第4の態様について、
図8〜
図11のフローチャート、及び
図12,
図13の構成例を用いて説明する。なお、ここでは、負荷としてプラズマ発生装置の場合について説明する。
【0123】
(アークモードの割り込み処理)
直流パルス電源装置は、プラズマが着火した後の通常状態ではパルスモードによりプラズマ負荷にパルス出力を出力し、プラズマ状態を維持する。
【0124】
パルスモード(S11)において、アークが発生してプラズマが消失するアーキング状態が検出された場合には(S21)、アークモードの割り込みを行い、スイッチング素子を駆動する周期を変更することにより負荷に供給する電力を抑制しアーキング状態を解消させる(S22)。アークモードの割り込みはアークが消失するまで継続される。
【0125】
アークモードのスイッチング素子のオン/オフ動作において、オフ状態で直流リアクトルに印加される電圧がクランプされることにより偏磁が生じ磁気飽和状態に至る。直流リアクトルが磁気飽和に至った場合には、休止制御(S12)及び再開制御(S13)において磁気飽和をリセットした後、パルスモードでパルス出力を出力する(S14)。
【0126】
休止/再開制御において、休止制御(S12)では、磁気飽和を検出すると(S12a)駆動回路を休止させてスイッチング素子をオフ状態とし(S12b)、休止時間の間オフ状態を継続することにより、電圧時間積をオン状態の電圧時間積と同等とすることにより直流リアクトルの磁気飽和をリセットする。
【0127】
再開制御(S13)では、磁気飽和がリセットされた後(S13a)、パルスモードによる駆動回路のスイッチング動作を再開させ(S13b)、パルスモードによるパルス出力を行う(S14)。
【0128】
(第1の態様)
時間制御による第1の態様の構成例及び制御フローチャートについて。
図12(a)及び
図8を用いて説明する。
図12(a)の構成例は
図4(a)の概略構成例に対応し、
図8のフローチャートは
図5(a)のフローチャートに対応している。また、
図14(a)は時間に基づく時間制御による波形図を示している。
【0129】
(時間制御の構成例)
図12(a)において、制御回路部40は、スイッチング周期制御部40Aと休止/再開制御部40Bを備える。
【0130】
スイッチング周期制御部40Aは、通常のパルスモード動作(S11)を制御すると共に、アーク検出回路61のアーク検出を受けて(S21)、割り込みによりアークモードとする。アークモードでは、アークの発生回数Nを計数する(S22a)と共に、アーキング状態においてスイッチング素子22のオン時間の時間幅をTwに変更し、スイッチング素子22をパルス幅Twの間だけオン状態とする(S22b)。時間幅Twが経過した後に(S22c)、スイッチング素子22をオフ状態にする(S22d)。なお、Tはパルス部におけるパルス周期の時間幅であり、時間幅Twはパルス周期の時間幅Tより短時間に設定される。S22a〜S22dにより、アークモードの周期によるスイッチング素子22のオン/オフ動作を繰り返すことによりアークを消失させる(S21)。
【0131】
一方、パルスモードでは、アークモードによって生じた磁気飽和を休止/再開制御部40Bの休止/再開制御によりリセットする(S12A,S13A)。
【0132】
休止/再開制御部40Bは、パルス部の休止及び再開を時間制御する構成として、累積パルス幅演算部41,パルス幅比較部42,及び休止時間比較部43を備える。
【0133】
(S12A:休止制御)
累積パルス幅演算部41は、アーク状態の発生回数Nに基づいて、スイッチング素子22をオン状態とする時間幅Twの累積パルス幅Tpulseを求める。累積パルス幅Tpulseは、Tpulse=Tw×N+Tvにより求められる。なお、累積パルス幅Tpulseは直流リアクトル電流iDCLが最初のアークが発生した時点から飽和電流レベルiSAに至るまでの時間幅であり、次回発生するアークの時点で飽和電流レベルiSAを越えるようなアークの発生回数をN回としたとき、N回後にパルスモードに移行した後、スイッチング素子Qがオン状態となってから直流リアクトル電流iDCLが飽和電流レベルiSAに達するまでの時間幅をTvとしている(S12Aa)。
【0134】
パルス幅比較部42は、求めた累積パルス幅Tpulseと設定パルス幅TPとを比較し(S12Ab)、累積パルス幅Tpulseが設定パルス幅TPを越えたときに休止信号を駆動回路23に送り(S12Ac)、スイッチング素子22をオフ状態としてパルス部20の動作を休止させる(S12Ad)。なお、フローチャートではスイッチング素子をQで表記している。
【0135】
(S13A:再開制御)
休止時間比較部43は、パルス部20の動作を休止状態させて磁気飽和をリセットさせる休止時間Tresetを計時し、休止時間Tresetを設定時間TREと比較する。設定時間TREは、直流リアクトルの磁気飽和がキャパシタからのリセット電流iresetによってリセットされるまでの時間を予め求めることで設定することができる(S13Aa)。
【0136】
休止時間Tresetが設定時間TREを経過した後、再開信号を駆動回路23に送り(S13Ab)、スイッチング素子22のオン状態に代えて、通常のパルスモード動作を行うデューティーに変更してパルス部20の動作を再開させる(S13Ac)。
(第2の態様)
【0137】
電流制御による第2の態様の構成例及び制御フローチャートについて。
図12(b)及び
図9を用いて説明する。
図12(b)の構成例は
図4(b)の概略構成例に対応し、
図9のフローチャートは
図5(b)のフローチャートに対応している。また、
図14(a)は時間に基づく時間制御による波形図を示している。
【0138】
(電流制御の構成例)
図12(b)において、制御回路部40は、スイッチング周期制御部40Aと休止/再開制御部40Cを備える。
スイッチング周期制御部40Aは、第1の態様と同様に、通常のパルスモード動作(S11)を制御すると共に、アーク検出回路61のアーク検出を受けて(S21)、割り込みによりアークモードとする。アークモードでは、アークの発生回数Nを計数する(S22a)と共に、アーキング状態においてスイッチング素子22のオン時間の時間幅をTwに変更し、スイッチング素子22を時間幅Twの間だけオン状態とする(S22b)。時間幅Twが経過した後に(S22c)、スイッチング素子22をオフ状態にする(S22d)。なお、Tはパルス部におけるパルス周期の時間幅であり、時間幅Twはパルス周期の時間幅Tより短時間に設定される。S22a〜S22dにより、アークモードの周期によるスイッチング素子22のオン/オフ動作を繰り返すことによりアークを消失させる(S21)。
【0139】
一方、パルスモードでは、アークモードによって生じた磁気飽和を休止/再開制御部40Bの休止/再開制御によりリセットする(S12B,S13B)。
【0140】
休止/再開制御部40Cは、パルス部の休止及び再開を時間制御する構成として、飽和レベル比較部44、及びパルスモードレベル比較部45を備える。
【0141】
(休止制御:S12B)
飽和レベル比較部44は、直流リアクトル電流検出部80から直流リアクトル電流iDCLを入力し(S12Ba)、直流リアクトル電流iDCLを飽和電流レベルiSAと比較し(S12Bb)、直流リアクトル電流iDCLが飽和電流レベルiSAを越えたときに休止信号を駆動回路23に送り(S12Bc)、スイッチング素子22をオフ状態としてパルス部20の動作を休止させる(S12Bd)。なお、フローチャートではスイッチング素子をQで表記している。
【0142】
(再開制御:S13B)
パルスモードレベル比較部45は、休止状態において、直流リアクトル電流iDCLをパルスモードレベルiPAと比較し(S13Ba)、直流リアクトル電流iDCLがパルスモードレベルiPAを越えたときには、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたものと判定する。ここで、パルスモードレベルiPAは、パルス部が通常のパルスモード動作を行っているときの直流リアクトル電流iDCLを予め求めておくことで設定することができる。
【0143】
パルスモードレベル比較部45は、直流リアクトルが磁気飽和リセットされたことを判定すると駆動回路23に再開信号を送り(S13Bb)、パルス部20を休止状態から再開させ、パルスモード動作を実行させる(S13Bc)。
【0144】
(第3の態様)
休止制御を時間制御で行い、再開制御を電流制御で行う第3の態様の構成例及び制御フローチャートについて。
図13(a)及び
図10を用いて説明する。
図13(a)の構成例は
図5(a)の概略構成例に対応し、
図10のフローチャートは
図6(a)のフローチャートに対応している。
【0145】
(時間及び電流制御の構成例)
図13(a)において、制御回路部40は、スイッチング周期制御部40Aと休止/再開制御部40Dを備える。
【0146】
スイッチング周期制御部40A及び制御動作は第1の形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0147】
休止/再開制御部40Dは、パルス部の休止制御を時間制御する構成として累積パルス幅演算部41,パルス幅比較部42を備え、パルス部の再開制御を電流制御する構成としてパルスモードレベル比較部45を備える。
【0148】
(S12A:休止制御)
累積パルス幅演算部41は、アーク状態の発生回数Nに基づいて、スイッチング素子22をオン状態とする時間幅Twの累積パルス幅Tpulseを求める。累積パルス幅Tpulseは、Tpulse=Tw×N+Tvにより求められる。なお、累積パルス幅Tpulseは直流リアクトル電流iDCLが最初のアークが発生した時点から飽和電流レベルiSAに至るまでの時間幅であり、次回発生するアークの時点で飽和電流レベルiSAを越えるようなアークの発生回数をN回としたとき、N回後にパルスモードに移行した後、スイッチング素子Qがオン状態となってから直流リアクトル電流iDCLが飽和電流レベルiSAに達するまでの時間幅をTvとしている(S12Aa)。
【0149】
パルス幅比較部42は、求めた累積パルス幅Tpulseと設定パルス幅TPとを比較し(S112Ab)、累積パルス幅Tpulseが設定パルス幅TPを越えたときに休止信号を駆動回路23に送り(S12Ac)、スイッチング素子22をオフ状態としてパルス部20の動作を休止させる(S12Ad)。なお、フローチャートではスイッチング素子をQで表記している。
【0150】
(S13B:再開制御)
パルスモードレベル比較部45は、休止状態において、直流リアクトル電流iDCLをパルスモードレベルiPAと比較し(S13Ba)、直流リアクトル電流iDCLがパルスモードレベルiPAを越えたときには、直流リアクトルの磁気飽和がリセットされたものと判定する。ここで、パルスモードレベルiPAは、パルス部が通常のパルスモード動作を行っているときの直流リアクトル電流iDCLを予め求めておくことで設定することができる。
【0151】
パルスモードレベル比較部45は、直流リアクトルが磁気飽和リセットされたことを判定すると駆動回路23に再開信号を送り(S13Bb)、パルス部20を休止状態から再開させ、パルスモード動作を実行させる(S13Bc)。
【0152】
(第4の態様)
休止制御を電流制御で行い、再開制御を時間制御で行う第4の態様の構成例及び制御フローチャートについて。
図13(b)及び
図11を用いて説明する。
図13(b)の構成は
図5(b)の概略構成例に対応し、
図11のフローチャートは
図6(b)のフローチャートに対応している。
【0153】
(電流及び時間制御の構成例)
図13(b)において、制御回路部40は、スイッチング周期制御部40Aと休止/再開制御部40Eを備える。
【0154】
スイッチング周期制御部40A及び制御動作は第1の形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0155】
休止/再開制御部40Eは、パルス部の休止制御を電流制御する構成として飽和レベル比較部44を備え、パルス部の再開制御を時間制御する構成として休止時間比較部43を備える。
【0156】
(S12B:休止制御)
(休止制御:S12B)
飽和レベル比較部44は、直流リアクトル電流検出部80から直流リアクトル電流iDCLを入力し(S12Ba)、直流リアクトル電流iDCLを飽和電流レベルiSAと比較し(S12Bb)、直流リアクトル電流iDCLが飽和電流レベルiSAを越えたときに休止信号を駆動回路23に送り(S12Bc)、スイッチング素子22をオフ状態としてパルス部20の動作を休止させる(S12Bd)。なお、フローチャートではスイッチング素子をQで表記している。
【0157】
(S13A:再開制御)
休止時間比較部43は、パルス部20の動作を休止状態させて磁気飽和をリセットさせる休止時間Tresetを計時し、休止時間Tresetを設定時間TREと比較する。設定時間TREは、直流リアクトルの磁気飽和がキャパシタからのリセット電流iresetによってリセットされるまでの時間を予め求めることで設定することができる(S13Aa)。
【0158】
休止時間Tresetが設定時間TREを経過した後、再開信号を駆動回路23に送り(S13Ab)、スイッチング素子22のオン状態に代えて、通常のパルスモード動作を行うデューティーに変更してパルス部20の動作を再開させる(S13Ac)。
【0159】
[直流パルス電源装置の構成例]
以下、直流パルス電源装置の構成例について説明する。構成例の直流パルス電源装置のパルス部は、直流リアクトルの電圧をクランプする電圧クランプ部として直流リアクトルのリセット電圧を回生する回生部を備える。電圧クランプ部は直流リアクトルの電圧をクランプすることにより、直流リアクトルのリーケージインダクタンスによって発生するサージ電圧がスイッチング素子に与える損傷を回避する。
【0160】
回生部による電圧クランプ部を備える直流パルス電源装置において、直流リアクトルの両端電圧がクランプされることにより生じる磁気飽和を、スイッチング素子の駆動回路の休止/再生を制御する制御回路部によりリセットする。
【0161】
回生部は直流リアクトルのリセット電圧を回生する構成として、直流リアクトルの並列接続したキャパシタを備える。以下に示す直流パルス電源装置は、回生部のキャパシタと直流リアクトルの磁気飽和をリセットさせるためのキャパシタとを共用させる構成例である。
【0162】
第1の構成例は昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの両端の直流リアクトル電圧を回生する構成であり、第2〜第5の構成例は昇圧チョッパ回路の磁気結合する二つの直流リアクトルの一方の直流リアクトルの直流リアクトル電圧を回生する構成であり、第2,5の構成例は磁気結合する二つの直流リアクトルをタップ付き単巻きトランスとする構成であり、第3,4の構成例は磁気結合する二つの直流リアクトルを複巻きトランスとする構成である。また、回生する直流リアクトル電圧について、第1〜第5の構成例は直流電源の低電圧側の電圧を基準電圧としている。
【0163】
[直流パルス電源装置の第1の構成例]
本発明の直流パルス電源装置の第1の構成例について
図15を用いて説明する。
【0164】
本発明の直流パルス電源装置は、直流電源部(DC部)10と、直流電源部10に接続された昇圧チョッパ回路により発生したパルス出力を負荷4に供給するパルス部20Aと、パルス部20Aで発生する過剰な電圧上昇分を直流電源部10側に回生する回生部30と、直流電源部10、パルス部20A、及び回生部30を制御する制御回路部40、アーク検出回路61を備え、出力ケーブル3を介して負荷4にパルス出力を供給する。制御回路部40は、パルス部20Aの駆動回路23の制御において、パルス周期制御によるパルスモード及びアークモードの制御、及び休止/再開制御による磁気飽和リセットの制御を行う。
【0165】
図15では、負荷4としてプラズマ発生装置の例を示しているが、負荷4はプラズマ発生装置に限らず、パルスレーザ励起、放電加工機等に適用してもよい。
【0166】
(直流電源部)
直流電源部(DC部)10は、交流電源2の交流電圧を直流電圧に整流する整流器11と、整流時に発生する過渡的に発生するスパイクの高電圧を吸収して抑制するスナバ回路12と、直流電圧を交流電圧に変換する単相インバータ回路13と、単相インバータ回路13の交流電圧を所定の電圧値に電圧変換する単相変圧器14と、単相変圧器14で電圧変換された交流電圧を直流電圧に整流する整流器15と、両端電圧を直流電源部の直流電圧とするキャパシタ16(CF)を備える。キャパシタ16の一端は接地され、他端に負電圧の低電圧が形成される。なお、
図15に示す構成では、負荷4としてプラズマ発生装置の容量負荷の例を示している。ここでは、プラズマ発生装置の一端を接地して負電圧を供給しているため、直流電源部10は負電圧のパルス出力を発生する構成を示している。
【0167】
単相インバータ回路13は、制御回路部40からの制御信号によりスイッチング動作を行って、直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換する。直流電源部10を構成する、整流器11,15、スナバ回路12、単相インバータ回路13、単相変圧器14の各回路要素は通常に知られる任意の回路構成とすることができる。
【0168】
(パルス部)
パルス部20Aは昇圧チョッパ回路により直流電圧からパルス波形を生成する。昇圧チョッパ回路は、直流電源側と負荷側との間に直列接続された直流リアクトル21aと、負荷側に対して並列接続されたスイッチング素子(Q1)22と、スイッチング素子22のオン/オフ動作を駆動する駆動回路23を備える。パルス部20Aの直流電源側は、接地された端子Bと低電圧側として負電圧の端子Aを備える。図示するスイッチング素子22はFETの例を示し、ソースS側を低電圧側にドレインD側を接地電圧側に接続し、ゲートG側には駆動回路23からの駆動信号が入力される。
【0169】
制御回路部40は、昇圧チョッパ回路を動作させるために、目標のパルス出力に対応してスイッチング素子22のオン時間とオフ時間の時間幅ないしデューティー比を定める信号を生成すると共に、直流電源部10の出力端の電圧、及び電流に基づいて制御信号を生成する。
【0170】
駆動回路23は、制御回路部40の制御信号に基づいてスイッチング素子22のゲートGに駆動信号を出力し、スイッチング素子22のオン/オフ動作を行わせる。
【0171】
スイッチング素子22のソースS側は直流リアクトル21aの負荷側に接続され、スイッチング素子22のドレインD側は接地される。スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21aの負荷側は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び直流リアクトル21aを介して端子Aに電流が流れる。この際、直流リアクトル21aには電磁エネルギーが蓄積される。次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21aに蓄積された蓄積エネルギーにより直流リアクトル21aには直流リアクトル電圧VDCLが発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことによりオン/オフ時間のデューティー比に応じて出力電圧Voを上昇させる。
【0172】
(回生部)
回生部30は昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの直流リアクトル電圧の内、設定電圧を超える電圧分を直流電源に回生する。回生部30は、ダイオード31、キャパシタ32(C1)、インバータ回路33,変圧器34,整流器35を備える。
【0173】
キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21aの負荷側端部に接続され、他端はダイオード31を介して直流リアクトル21aの直流電源側端部に接続され、直流リアクトル21aに発生する直流リアクトル電圧が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源の直流電圧VAB及び変圧器の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部20Aから回生部30のキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、直流リアクトル21aの直流リアクトル電圧VDCLがキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、直流リアクトル電圧VDCLがキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30による回生が行われる。したがって、回生部30はキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0174】
キャパシタ電圧VC1を定める方法としては、変圧器34の変圧比を変更する他に、インバータ回路33の出力を制御する方式がある。たとえば、PWM制御や位相シフト制御などがあるが、インバータ回路の出力を制御する方式であれば、この限りではない。
【0175】
また、
図15に示す回路構成では、回生部30は、一端がパルス部20Aの低電圧側入力端に接続された構成であり、低電圧側の電圧(負電圧)を基準として直流リアクトル21aの直流リアクトル電圧VDCLを回生入力電圧Vinとして回生を行う。
【0176】
インバータ回路33はキャパシタ32側の直流電圧と変圧器34側の交流電圧との間で直交変換を行い、キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を直流電源の直流電圧VABに基づいて一定電圧に保持すると共に、直流リアクトル電圧VDCLがキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合にはその越えた電圧分を交流に変換して直流電源側に回生する。キャパシタ電圧VC1は一定電圧に保持されることから、直流リアクトル21aの直流リアクトル電圧VDCLはキャパシタ電圧VC1にクランプされる。インバータ回路33は、例えば、スイッチング素子のブリッジ回路で構成することができる。スイッチング素子の開閉動作は制御回路部40からの制御信号αにより制御される。
【0177】
変圧器34は、直流電源部10の直流電圧VABとキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1との電圧比率を変圧比に基づいて変調する。変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合には、直流電圧VABとキャパシタ電圧VC1との間の電圧関係は、VC1=(n2/n1)×VABで表される。
【0178】
整流器35は変圧器34側の交流電圧を直流電源部10側の直流電圧に整流する。整流器35の直流側端子は直流電源部10の端子A、Bに接続され、キャパシタ電圧VC1が直流電圧VABに基づいた電圧を超える場合のみに、直流電源部10に電力を回生する。
【0179】
なお、回生部30の構成は直流リアクトル21aの両端電圧を所定電圧のクランプする機能、及び所定電圧を越える電力分を直流電源側の回生する機能を備える構成であれば、上記した構成に限られるものではない。
【0180】
(回生部の構成例)
図16を用いて直流パルス電源装置の回生部が備えるインバータ回路の回路構成例を説明する。
【0181】
回生部30は、キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1の直流電圧を直交変換して得られた交流電圧を変圧器34に出力するインバータ回路33を含んでいる。インバータ回路33は、スイッチング素子QR1〜QR4からなるブリッジ回路33aと、制御信号αに基づいてスイッチング素子QR1〜QR4を駆動する駆動信号を生成する駆動回路33bとを備える。なお、ここでは、ブリッジ回路33aとしてフルブリッジ回路の例を示しているが、ハーフブリッジ回路や多相インバータ回路を用いても良い。
【0182】
[直流パルス電源装置の第2の構成]
図17を用いて本発明の直流パルス電源装置の第2の構成例について説明する。第2の構成例は、パルス部20Bの昇圧チョッパ回路の構成において第1の構成例と相違し、その他の構成は第1の構成例と同様である。以下、第1の構成例と相違する構成について説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
【0183】
第1の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21aは単一のコイルで構成される。これに対して、第2の構成例の直流リアクトル21bは、第1の構成例の昇圧チョッパ回路の単一コイルに代えてタップ付き単巻きトランスで構成される。タップ付き単巻きトランスによる直流リアクトル21bは、磁気結合された第1の直流リアクトル21b−1と第2の直流リアクトル21b−2とを直列接続して構成することができ、第1の直流リアクトル21b−1と第2の直流リアクトル21b−2の接続点をタップ点としている。第1の直流リアクトル21b−1の一端は直流電源の低電圧側の端子Aに接続され、第2の直流リアクトル21b−2の一端は負荷側に接続され、第1の直流リアクトル21b−1と第2の直流リアクトル21b−2の接続点のタップ点はスイッチング素子22のソースS端に接続される。
【0184】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21bの接続点のタップ点は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び直流リアクトル21bの第1の直流リアクトル21b−1を介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21b−1に電磁エネルギーが蓄積される。
【0185】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21bの第1の直流リアクトル21b−1に蓄積された蓄積エネルギーにより流れる直流リアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21b−1には直流リアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21b−2には直流リアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0186】
第1の直流リアクトル21b−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21b−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21b−1と第2の直流リアクトル21b−2のインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21bの第1の直流リアクトル21b−1と第2の直流リアクトル21b−2のタップ付き単巻きコイルの巻き数比をn1p:n2pとした場合には、第1の直流リアクトル21b−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21b−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0187】
第2の構成例の回生部30は、第1の構成例の直流リアクトル21aの直流リアクトル電圧VDCLに代えて直流リアクトル21bの第1の直流リアクトル21b−1の直流リアクトル電圧VDCL1を適用することで同様に動作する。
【0188】
回生部30において、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21bの第1の直流リアクトル21b−1と第2の直流リアクトル21b−2の接続点に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21b−1の直流電源側端部に接続され、第1の直流リアクトル21b−1に発生する直流リアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源の直流電圧VAB及び変圧器34の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部20Bから回生部30のキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、第1の直流リアクトル21b−1の直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30による回生が行われる。したがって、回生部30は第1の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0189】
出力電圧Voには、直流電源の直流電圧VABに第1の直流リアクトル21b−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21b−2の直流リアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL1+VDCL2)が出力される。第1の直流リアクトル21b−1の直流リアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧VoはVo=VAB+VC1+VDCL2となる。
【0190】
[直流パルス電源装置の第3の構成]
図18を用いて本発明の直流パルス電源装置の第3の構成例について説明する。第3の構成例は、パルス部20Cの昇圧チョッパ回路の構成において第1,2の構成例と相違し、その他の構成は第1,2の構成例と同様である。以下、第1,2の構成例と相違する構成について説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
【0191】
第2の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21bはタップ付き単巻きトランスで構成される。これに対して、第3の構成例の直流リアクトル21cは、第2の構成例の昇圧チョッパ回路のタップ付き単巻きトランスに代えて複巻きトランスで構成される。直流リアクトル21cの複巻きトランスは加極性の変圧器の例を示している。
【0192】
複巻きトランスによる直流リアクトル21cは、磁気結合された第1の直流リアクトル21c−1と第2の直流リアクトル21c−2とが並列接続された構成である。第1の直流リアクトル21c−1の一端は直流電源の低電圧側の端子Aに接続され、他端はスイッチング素子22のソースS端に接続される。第2の直流リアクトル21c−2の一端はスイッチング素子22のソースS端に接続され、他端は負荷側に接続される。
【0193】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21cの第1の直流リアクトル21c−1のスイッチング素子22側の端部は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び第1の直流リアクトル21cを介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21cに電磁エネルギーが蓄積される。
【0194】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21cの第1の直流リアクトル21c−1に蓄積された蓄積エネルギーにより流れる直流リアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21c−1には直流リアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21c−2には第1の直流リアクトル21c−1との磁気結合により直流リアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1,2の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0195】
第1の直流リアクトル21c−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21c−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21c−1と第2の直流リアクトル21c−2のインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21cの第1の直流リアクトル21c−1と第2の直流リアクトル21c−2の複巻きコイルの巻き数比が(n1p:n2p)とした場合には、第1の直流リアクトル21c−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21c−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0196】
第3の構成例の回生部は、第2の構成例の直流リアクトル21bの第1の直流リアクトル21b−1の直流リアクトル電圧VDCL1と同様に動作する。
【0197】
回生部30において、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21cの第1の直流リアクトル21c−1のスイッチング素子側の端部に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21c−1の直流電源側端部に接続され、第1の直流リアクトル21c−1に発生する直流リアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源の直流電圧VAB及び変圧器の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部から回生部30のキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、第1の直流リアクトル21c−1の直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30による回生が行われる。したがって、回生部30は第1,2の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0198】
出力電圧Voには、直流電源の直流電圧VABに第1の直流リアクトル21c−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21c−2の直流リアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL1+VDCL2)が出力される。第1の直流リアクトル21c−1の直流リアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧VoはVo=VAB+VC1+VDCL2となる。なお、第1の直流リアクトル21c−1と第2の直流リアクトル21c−2との巻き数比が(n1p/n2p)であるときには、直流リアクトル電圧VDCL1及びVDCL2は(VDCL1/VDCL2=n1p/n2p)で表される。
【0199】
[直流パルス電源装置の第4の構成]
図19を用いて本発明の直流パルス電源装置の第4の構成例について説明する。第4の構成例は、パルス部20Dの昇圧チョッパ回路の直流リアクトルを構成するトランスの構成において第3の構成例と相違し、その他の構成は第3の構成例と同様である。
【0200】
第3の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21cは加極性の複巻きトランスで構成される。これに対して、第4の構成例の直流リアクトル21dは、第3の構成例の昇圧チョッパ回路の加極性の複巻きトランスに代えて減極性の複巻きトランスで構成される。
【0201】
複巻きトランスによる直流リアクトル21dは、磁気結合された第1の直流リアクトル21d−1と第2の直流リアクトル21d−2とを並列接続する構成である。第1の直流リアクトル21d−1の一端は直流電源の低電圧側の端子Aに接続され、他端はスイッチング素子22のソースS端に接続される。第2の直流リアクトル21d−2の一端は直流電源の低電圧側の端子Aに接続され、他端は負荷側に接続される。
【0202】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21dの第1の直流リアクトル21d−1のスイッチング素子22側の端部は接地され、端子Bからオン状態にあるスイッチング素子22、及び第1の直流リアクトル21d−1を介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21d−1に電磁エネルギーが蓄積される。
【0203】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21dの第1の直流リアクトル21d−1に蓄積された蓄積エネルギーにより流れる直流リアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21d−1には直流リアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21d−2には第1の直流リアクトル21d−1との磁気結合により直流リアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1,2,3の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0204】
第1の直流リアクトル21d−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21d−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21d−1と第2の直流リアクトル21d−2のインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21dの第1の直流リアクトル21d−1と第2の直流リアクトル21d−2の複巻きコイルの巻き数比が(n1p:n2p)とした場合には、第1の直流リアクトル21d−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21d−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0205】
第4の構成例の回生部の直流リアクトル21dは、第3の構成例の直流リアクトル21cの第1の直流リアクトル21cの直流リアクトル電圧VDCL1と同様に動作する。
【0206】
回生部30において、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21dの第1の直流リアクトル21d−1のスイッチング素子側の端部に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21d−1の直流電源側端部に接続され、第1の直流リアクトル21d−1に発生する直流リアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源の直流電圧VAB及び変圧器の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部から回生部30のキャパシタ32(C1)に向かう方向を順方向として接続され、第1の直流リアクトル21d−1の直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30による回生が行われる。したがって、回生部30は第1,2,3の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0207】
出力電圧Voには、直流電源の直流電圧VABに第2の直流リアクトル21d−2の直流リアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL2)が出力される。なお、第1の直流リアクトル21d−1と第2の直流リアクトル21d−2との巻き数比が(n1p/n2p)であるときには、直流リアクトル電圧VDCL1及びVDCL2は(VDCL1/VDCL2=n1p/n2p)で表される。そのため、VDCL1がVC1によってクランプされる場合、出力電圧VoはVo=VAB+VC1×(n1p/n2p)で表される。
【0208】
[直流パルス電源装置の第5の構成]
図20を用いて本発明の直流パルス電源装置の第5の構成例について説明する。第5の構成例は、昇圧チョッパ回路の直流リアクトルの設置態様において第2の構成例と相違し、その他の構成は第2の構成例と同様である。以下、第2の構成例と相違する構成について説明し、その他の共通する構成の説明は省略する。
【0209】
第5の構成例の昇圧チョッパ回路が備える直流リアクトル21eは第2の構成例の昇圧チョッパ回路の直流リアクトル21bと同様にトラップ付き単巻きトランスで構成されるが、電源ラインに対する設置態様において相違する。第2の構成例の直流リアクトル21bは直流電源の低電圧側の電源ラインに接続されるのに対して、第5の構成例の直流リアクトル21eは直流電源の高電圧側の電源ラインに接続される。
【0210】
タップ付き単巻きトランスによる直流リアクトル21eは、磁気結合された第1の直流リアクトル21e−1と第2の直流リアクトル21e−2とを直列接続して構成され、第1の直流リアクトル21e−1と第2の直流リアクトル21e−2の接続点をタップ点としている。第1の直流リアクトル21e−1の一端は直流電源の高電圧側の端子Bに接続され、第2の直流リアクトル21e−2の一端は負荷側に接続されて接地され、第1の直流リアクトル21eー1と第2の直流リアクトル21e−2の接続点のタップ点はスイッチング素子22のドレインD端に接続される。
【0211】
スイッチング素子22がオン状態のときは、直流リアクトル21eの接続点のタップ点は第2の直流リアクトル21e−2を介して接地され、端子Bから第1の直流リアクトル21eー1、及びオン状態にあるスイッチング素子22を介して端子Aに電流が流れる。この際、第1の直流リアクトル21e−1に電磁エネルギーが蓄積される。
【0212】
次に、スイッチング素子22がオン状態からオフ状態に切り替わると、直流リアクトル21eの第1の直流リアクトル21e−1に蓄積された蓄積エネルギーにより流れる直流リアクトル電流iLによって第1の直流リアクトル21e−1には直流リアクトル電圧VDCL1が発生し、第2の直流リアクトル21e−2には直流リアクトル電圧VDCL2が発生する。昇圧チョッパ回路は、スイッチング素子22のオン動作とオフ動作を繰り返すことにより、第1の構成例と同様に出力電圧Voを上昇させる。
【0213】
第1の直流リアクトル21e−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21e−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比は、第1の直流リアクトル21e−1と第2の直流リアクトル21e−2のインダクタンス比の比率に対応した値となる。直流リアクトル21の第1の直流リアクトル21e−1と第2の直流リアクトル21e−2のタップ付き単巻きコイルの巻き数比をn1p:n2pとした場合には、第1の直流リアクトル21e−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21e−2の直流リアクトル電圧VDCL2との電圧比(VDCL1/VDCL2)は巻き数比(n1p/n2p)となる。
【0214】
第5の構成例の回生部30は、第1の構成例の直流リアクトル21aの直流リアクトル電圧VDCLに代えて直流リアクトル21eの第1の直流リアクトル21e−1の直流リアクトル電圧VDCL1を適用することで同様に動作する。
【0215】
回生部30において、キャパシタ32(C1)の一端は直流リアクトル21eの第1の直流リアクトル21e−1と第2の直流リアクトル21e−2の接続点に接続され、他端はダイオード31を介して第1の直流リアクトル21e−1の直流電源側端部に接続され、第1の直流リアクトル21e−1に発生する直流リアクトル電圧VDCL1が印加される。キャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1は、直流電源の直流電圧VAB及び変圧器の変圧比に基づいて定まり、変圧器34の変圧比が(n2:n1)である場合にはVC1=(n2/n1)×VABの設定電圧となる。ダイオード31はパルス部20Dから回生部30のキャパシタ32(C1)に向かう方向を逆方向として接続され、第1の直流リアクトル21e−1の直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた場合に、直流リアクトル電圧VDCL1がキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1を越えた電圧分について回生部30による回生が行われる。したがって、回生部30は第1の構成例と同様にキャパシタ32(C1)のキャパシタ電圧VC1をしきい値として回生動作を行う。
【0216】
出力電圧Voには、直流電源の直流電圧VABに第1の直流リアクトル21e−1の直流リアクトル電圧VDCL1と第2の直流リアクトル21e−2の直流リアクトル電圧VDCL2が重畳された電圧(Vo=VAB+VDCL1+VDCL2)が出力される。第1の直流リアクトル21e−1の直流リアクトル電圧VDCL1はキャパシタ電圧VC1にクランプされるため、出力電圧VoはVo=VAB+VC1+VDCL2となる。
【0217】
第1の構成例〜第5の構成例に示した直流パルス電源装置において、回生部のキャパシタ32(C1)と磁気飽和リセットのキャパシタCとを共用させることにより、直流リアクトル21a〜21eの磁気飽和をリセットさせることができる。
【0218】
直流パルス電源装置の第1の構成〜第5の構成において、制御回路部は、スイッチング素子のスイッチング動作の周期を制御するスイッチング周期制御部、及びスイッチング素子のスイッチング動作の休止及び再開を制御する休止/再開制御部とを備え、スイッチング周期制御部はパルスモード及びアークモードにおける出力パルスを生成する周期制御を行い、休止/再開制御部は直流リアクトルの磁気飽和をリセットする休止/再開制御を行う。
【0219】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係る直流パルス電源装置の一例であり、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。