特許第6835912号(P6835912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835912マルチマテリアル・アディティブ・マニュファクチャリングを使用して身体部位モデルを作製するシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835912
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】マルチマテリアル・アディティブ・マニュファクチャリングを使用して身体部位モデルを作製するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20210215BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20210215BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20210215BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210215BHJP
【FI】
   B29C64/386
   B33Y50/00
   B29C64/106
   B33Y10/00
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-118655(P2019-118655)
(22)【出願日】2019年6月26日
(62)【分割の表示】特願2017-149200(P2017-149200)の分割
【原出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2019-194028(P2019-194028A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】61/560,822
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ディボースキー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュティラーマン スタニスラフ
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−148578(JP,A)
【文献】 特表平11−503770(JP,A)
【文献】 特開2003−103527(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/057436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
B33Y 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体またはゲルより固い、液体またはゲルとは異なる材料で形成されている区画内でカプセル化された液体またはゲルで形成されたデジタル材料単位セルを含む身体部位の物理的再構築物であって、前記デジタル材料単位セルは、ボクセル単位で前記身体部位の機械的特性を模倣するように構成され、前記ボクセルは、前記身体部位の画像データに基づいて定義され、前記ボクセル単位で模倣される機械的特性は、剛性である、物理的再構築物。
【請求項2】
前記デジタル材料単位セルの剛性は、前記身体部位のビットマップ画像に基づいており、前記ビットマップ画像の各ピクセルは、複数の液滴で表され、前記複数の液滴は、前記デジタル材料単位セルを定義する、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項3】
前記液体またはゲルより固い、液体またはゲルとは異なる材料は、ゴム状特性を有するように構成されている、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項4】
前記デジタル材料単位セルの剛性は、前記液体またはゲルと前記液体またはゲルより固い、液体またはゲルとは異なる材料の比率によって定義される、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項5】
前記デジタル材料単位セルの剛性は、前記液体またはゲルより固い、液体またはゲルとは異なる材料で形成されている区画のサイズに基づいて定義される、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項6】
前記デジタル材料単位セルの剛性は、前記液体またはゲルより固い、液体またはゲルとは異なる材料で形成されている区画の壁厚さに基づいて定義される、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項7】
前記デジタル材料単位セルの剛性は、前記液体またはゲルより固い、液体またはゲルとは異なる材料で形成されている区画の形状に基づいて定義される、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項8】
前記区画は、三角形である、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項9】
前記区画は、四角形である、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項10】
前記デジタル材料単位セルの剛性は、前記液体またはゲルより固い、液体またはゲルとは異なる材料の機械的特性に基づいて定義される、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項11】
前記デジタル材料単位セルは、複数の層の上に定義される、請求項1に記載の物理的再構築物。
【請求項12】
前記液体またはゲルは、ポリエチレングリコール400である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物理的再構築物。
【請求項13】
前記液体またはゲルは、0.1MPa未満の圧縮弾性率を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物理的再構築物。
【請求項14】
前記画像データは、CTスキャナ、MRI、および超音波デバイスを含む群から選択される1つ以上の撮像デバイスから受信される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物理的再構築物。
【請求項15】
デジタル材料単位セルは、1ミリメートルのマクロボクセルまたは1ミリメートル未満のマクロボクセルの単位サイズを有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物理的再構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2011年11月17日に出願した米国仮特許出願第61/560,822号の優先権の利益を、米国特許法第119条(e)項に基づいて、主張するものであり、その内容は、参照により全体を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、マルチマテリアル(multi-material)・アディティブ・マニュファクチャリング(AM:Additive Manufacturing、積層造形)に関し、特に、マルチマテリアルAMによる、身体部位などのオブジェクトの、断層撮影に基づく物理的再構築に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0003】
AM法は、生体器官を含む3次元オブジェクトのモデルの作製に使用されることが知られている。AMまたはソリッド・フリーフォーム作製(SFF:Solid Freeform Fabrication)は、付加形成ステップを介して、コンピュータ・データから任意の形状の構造を直接作製できるようにする技術である。いずれのSFFシステムの基本的操作も、3次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスし、その結果を2次元位置データに変換し、そのデータを、層ごとに3次元構造を作製する制御機器に供給する工程からなる。
【0004】
また、断層撮影データ、例えばコンピュータ断層撮影(CT:Computer Tomography)スキャナまたは核磁気共鳴映像(MRI:Magnetic Resonance Image)マシンによって提供されるデータを使用して、AMにより生体器官を物理的に再構築する方法も知られている。断層撮影データは、通常、スキャンされた生体器官の断面のグレースケール画像データを含む。通常、断層撮影データは、Digital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)ファイル形式で提供される。
【0005】
既知の物理的再構築の方法では、コンピュータ援用設計(CAD:Computer Aided Design)システムを使用し、DICOMファイルを、AMデバイスによって読み取ることができるStereoLithography(STL)ファイルの形態の3次元コンピュータモデルに転換および/または変換する。STLファイルは、3次元オブジェクト体積部の色、質感、および/または機械的特性の起こり得る変化を表現することなく、3次元オブジェクトの表面形状のみを記述する。体積部の変化はSTLファイルでは表されないので、DICOMファイルに含まれている情報の多くは、変換の過程で失われる。
【0006】
参照により全体を本明細書に援用する「Method for making a perfected medical model on the basis of digital image information of a part of the body」と題された特許文献1には、セグメンテーション(segmentation)前に、例えばCT画像内のデジタル画像情報に基づいて身体部位のモデルに人工的な機能要素を追加するための方法が記載されている。本文献に記載されているように、追加される人工的機能要素は、身体部位に関する画像データを画像の残りの部分から分離(segment)する前に、すべての医療データが可視である形態のデジタル画像情報の機能である。穿孔のための位置および方向を示す開口部など機能要素を、身体部位を取り囲む追加要素を示す画像情報の機能として追加することができることが一例として記載されている。また、医療ユーザによってもたらされる外部情報が画像情報に追加されてもよく、人工的機能要素はまた、この追加の外部情報の機能であってもよいことも記載されている。
【0007】
同一譲受人に譲渡され、参照により全体を本明細書に援用する、「Solid freeform fabrication using a plurality of modeling materials」と題された特許文献2には、特に、2つ以上のモデリング材料を様々な所定の組み合わせで使用してオブジェクトを作製するためのシステムおよび方法が記載されており、当該組み合わせは異なる分注ヘッドから異なるモデリング材料を分注することによって生成される。異なるモデリング材料は、複合材料を形成することができるように、層内の異なる位置で分注されても、同じ位置または隣接する位置で分注されてもよい。
【0008】
また、完全3次元構造を設計するために、標準CADソフトウェアを必要とすることなく複合材料構造を定義する方法も記載されている。本方法は、望ましい複合材料構造を表すビットマップと、3次元オブジェクトを表すSTLファイルによって生成されたビットマップとのブール比較を実行するステップを含む。望ましい複合材料構造のビットマップ表現を作成するための標準CADソフトウェアの必要をなくすことにより、設計プロセスに要するであろう時間が節約されるとともに、3次元構造の設計や構築プロセス中にそのような3次元構造を分析するために通常要するであろうコンピュータメモリリソースも節約されることが述べられている。
【0009】
さらに、2つ以上の構築材料および/またはモデリング材料は、液体、ゲル、ペースト、もしくは他の非固体または半固体の状態を保持する非凝固性材料を含むことができることが記載されている。任意で、第2の凝固性材料は、非凝固性材料がオブジェクト内に留まることができるように、またはプロセスが完了すると排出、焼却、もしくはそれ以外の方法で除去されうるように、作製中に非凝固性材料を完全に取り囲むかまたは含むことができる。このようにして、中空または多孔性のモデルを提供することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,768,134号
【特許文献2】米国特許出願公開第20100191360号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主たる一態様は、マルチマテリアル・アディティブ・マニュファクチャリングにより堆積される異なる機械的特性を有する少なくとも2つのモデリング材料の組み合わせで形成されるデジタル材料を有する身体部位の物理的再構築物であって、モデリング材料の前記組み合わせは、ボクセル単位で前記身体部位の機械的特性を模倣するように構成され、前記ボクセルは、前記身体部位の画像データに基づいて定義される、物理的再構築物である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、身体部位の断層撮影データを、マルチマテリアルAMにより身体部位を物理的に再構築するために使用することができるモデリング材料の組み合わせを表す印刷可能なビットマップ画像に変換するためのシステムおよび方法が提供される。本発明のいくつかの実施形態によれば、断層撮影データと、身体部位を構成する組織の機械的特性との間の関係が定義される。いくつかの例示的な実施形態において、身体部位を再構築するためのモデリング材料の組み合わせは、断層撮影データにより表される様々な機械的特性を模倣するように定義される。任意で、モデリング材料の組み合わせは、身体部位の物理的および/または機械的特性の1つまたは複数の表現を増強するように設計された1つまたは複数の事前定義の構造を含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、マルチマテリアル・アディティブ・マニュファクチャリングを使用して身体部位を物理的に再構築する方法であって、身体部位の画像データをボクセルの配列の形態で受信するステップであって、ボクセルの各配列は身体部位の断面に関する画像データを表す、ステップと、ボクセルの配列の画像データを、身体部位を再構築するためのモデリング材料の組み合わせを表す印刷可能なビットマップ画像に変換するステップと、ビットマップ画像に応じてモデリング材料の組み合わせを層ごとに分注するステップと、を含む方法が提供される。
【0014】
任意で、前記方法は、身体部位を再構築するためにボクセルの配列内のボクセル値と目標物理的特性との関係を定義するステップと、モデリング材料の組み合わせと、それらの物理的特性との関係を定義するステップと、ボクセル値と目標物理的特性との間で定義された関係およびモデリング材料の組み合わせとそれらの物理的特性との間で定義された関係に応じて、ボクセル値と材料組み合わせとの間の関係を定義するステップとを含む。
【0015】
任意で、前記関係は、1つまたは複数のルックアップ・テーブルによって定義される。
【0016】
任意で、前記モデリング材料の組み合わせは、ボクセル単位で身体部位の機械的特性を模倣するように選択される。
【0017】
任意で、前記ボクセルの配列の画像データは、デジタル材料の配列に変換され、各デジタル材料は、少なくとも2つのモデリング材料の組み合わせで形成され、組み合わせは、少なくとも2つのモデリング材料間の比率によって定義される。
【0018】
任意で、前記ボクセルの配列の画像データは、デジタル材料の配列に変換され、各デジタル材料は、モデリング材料ボクセルのパターンとして定義され、パターンは、少なくとも2つの異なるモデリング材料で形成される。
【0019】
任意で、前記デジタル材料の配列のデジタル材料の各々が、モデリング材料ボクセルの事前定義の数で定義される。
【0020】
任意で、前記事前定義の数は、10〜1000個のモデリング材料ボクセルの範囲から選択される。
【0021】
任意で、前記デジタル材料の配列の異なるデジタル材料が、異なる機械的特性を有するように定義される。
【0022】
任意で、前記異なるデジタル材料が、異なる弾性特性を有するように定義される。
【0023】
任意で、前記異なるデジタル材料が、0.01MPaから3GPaの範囲の弾性係数を有するように定義される。
【0024】
任意で、前記デジタル材料は、より固い材料に囲まれた液体またはゲルの体積部から形成される。
【0025】
任意で、前記画像データは、CTスキャナ、MRI、および超音波デバイスのうちの1つまたは複数から受信される。
【0026】
任意で、前記画像データは、CTスキャナから受信され、モデリング材料の組み合わせは、CTスキャナから取得されたCT値によって表される密度の配列をシミュレートするように定義される。
【0027】
任意で、前記方法は、配列内のモデリング材料の一部の物理的外観を変更するために、1つまたは複数の付加材料を使用する。
【0028】
任意で、前記付加材料は、色素、金属、イオン、セラミック、および生体分子を含むグループから選択される。
【0029】
任意で、前記付加材料は、ユーザ入力に応答して適用される。
【0030】
任意で、前記方法は、ユーザから入力を受信するステップと、ユーザからの入力に基づいて身体部位を再構築するためのモデリング材料の組み合わせを調整するステップとを含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、マルチマテリアル・アディティブ・マニュファクチャリングを使用して身体部位を物理的に再構築するためのシステムであって、身体部位の画像データをボクセルの配列の形態で受信するように動作可能なコントローラであって、ボクセルの各配列は身体部位の断面に関する画像データを表すコントローラと、ボクセルの配列内の画像データを、身体部位を再構築するためのモデリング材料の組み合わせを表す印刷可能なビットマップ画像に変換するように動作可能な処理ユニットと、ビットマップ画像に応じてモデリング材料の組み合わせを層ごとに分注するためのマルチマテリアル付加材料デバイスと、を備えるシステムが提供される。
【0032】
任意で、前記プロセッサは、身体部位を再構築するためにボクセルの配列内のボクセル値と目標物理的特性との関係を定義し、モデリング材料の組み合わせと、それらの物理的特性との関係を定義し、ボクセル値と目標物理的特性との間で定義された関係およびモデリング材料の組み合わせとそれらの物理的特性との間で定義された関係に応じて、ボクセル値と材料組み合わせとの間の関係を定義するように動作可能である。
【0033】
任意で、前記システムは、ボクセルの配列内のボクセル値と身体部位の機械的特性との関係を定義するように動作可能な、少なくとも1つのルックアップ・テーブル、データベース、または式を格納するためのメモリユニットを備える。
【0034】
任意で、前記システムは、ボクセルの配列のボクセル値と身体部位の機械的特性を模倣するモデリング材料の組み合わせとの関係を定義するように動作可能な、少なくとも1つのルックアップ・テーブル、データベース、または式を格納するためのメモリユニットを備える。
【0035】
任意で、前記処理ユニットは、ボクセル単位で身体部位の機械的特性を模倣するモデリング材料の組み合わせを選択するように動作可能である。
【0036】
任意で、前記処理ユニットは、ボクセルの配列内の画像データをデジタル材料の配列に変換し、各デジタル材料は、少なくとも2つのモデリング材料の組み合わせで形成され、組み合わせは、少なくとも2つのモデリング材料間の比率によって定義される。
【0037】
任意で、前記配列内のデジタル材料の各々が、モデリング材料ボクセルの事前定義の数で定義される。
【0038】
任意で、前記事前定義の数は、10〜1000個のモデリング材料ボクセルの範囲から選択される。
【0039】
任意で、前記配列内の異なるデジタル材料が、異なる機械的特性を有するように定義される。
【0040】
任意で、前記デジタル材料は、より固い材料に囲まれた液体またはゲルの体積部から形成される。
【0041】
任意で、前記デジタル材料は、ミリメートル未満のマクロボクセルの単位サイズを有するように定義される。
【0042】
任意で、前記画像データは、CTスキャナ、MRI、および超音波デバイスを含むグループから選択される1つまたは複数の撮像デバイスから受信される。
【0043】
任意で、前記印刷可能なビットマップ画像は、1つまたは複数の追加材料をモデリング材料の組み合わせに追加するためのデータを含む。
【0044】
任意で、前記追加材料は、色素、金属、イオン、セラミック、および生体分子を含むグループから選択される。
【0045】
特に定義がない限り、本明細書において使用されるすべての技術および/または科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料(materials)と類似または均等の方法および材料は、本発明の実施形態の実施または試験において使用されてもよく、例示的な方法および/または材料は後段において記載されている。矛盾が生じる場合は、定義を含む特許明細書に従うものとする。加えて、材料、方法、および実施例は、例示的なものに過ぎず、必ずしも限定的であることを意図されていない。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、ほんの一例として、本明細書に記載されている。次に、詳細に図面を具体的に参照するが、示される詳細事項は一例であり、本発明の実施形態の例示的な説明を目的とすることを強調しておく。この点について、図面と共に行われる説明は、本発明の実施形態が実施されうる方法を当業者に明らかにするものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明のいくつかの実施形態によるマルチマテリアルAMを使用して身体部位を作製するための例示的なシステムを示す簡易ブロック図
図2】本発明のいくつかの実施形態によるマルチマテリアルAMを使用して身体部位を作製するための例示的な方法を示す簡易流れ図
図3】本発明のいくつかの実施形態によるマルチマテリアルAMで脊椎の身体部位モデルを作製するために使用することができるCTスキャナで得られた画像データの例示的なスライスを示す図
図4A】本発明のいくつかの実施形態による様々なデジタル材料パターンの例示の具体的表現を示す図
図4B】本発明のいくつかの実施形態による様々なデジタル材料パターンの例示の具体的表現を示す図
図4C】本発明のいくつかの実施形態による様々なデジタル材料パターンの例示の具体的表現を示す図
図4D】本発明のいくつかの実施形態による様々なデジタル材料パターンの例示の具体的表現を示す図
図4E】本発明のいくつかの実施形態による様々なデジタル材料パターンの例示の具体的表現を示す図
図5A】液体材料がゴム状材料に囲まれている例示的な区分化デジタル材料構造を示す図
図5B】液体材料がゴム状材料に囲まれている例示的な区分化デジタル材料構造を示す図
図5C】液体材料がゴム状材料に囲まれている例示的な区分化デジタル材料構造を示す図
図6A】本発明のいくつかの実施形態による1つの軟性材料および1つの剛性材料でデジタル材料を生成するための較正曲線を示す例示的なグラフ
図6B】本発明のいくつかの実施形態による1つの軟性材料および1つの剛性材料でデジタル材料を生成するための較正曲線を示す例示的なグラフ
図7A】既知のAM方法を使用した手の例示的な再構築を示す図
図7B】本発明のいくつかの実施形態による方法を使用した手の例示的な再構築を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、マルチマテリアルAMに関し、特に、マルチマテリアルAMによる、身体部位などのオブジェクトの、断層撮影に基づく物理的再構築に関するが、これに限定されることはない。
【0049】
断層撮影および/または画像データに基づいて身体器官の物理的モデルを作製するための既知の方法では、一般に、画像に対して、しきい値手法を使用して様々な組織、例えば撮像される筋肉組織および骨組織を識別および/または区別する。識別されると、各々の識別された組織の輪郭を定義して使用し、ポリゴンベースのファイルおよび/またはSTLファイルを使用してモデル化するべき各々の組織の3次元コンピュータ化モデルを構築する。このプロセス中、組織内の変化および/または組織間の界面部分における段階的な変化を示す画像データは、失われかつ/または破棄される。STLファイルは通常、識別された組織を集めたものとしてモデルを生成するために使用される。この手法に基づいて、様々な組織の各々を異なる材料組成で構築することができるが、例えば単一組織内および/または組織間の界面部分における特性の変化を模倣するために使用可能な情報はない。
【0050】
本発明者らは、さらに多くの断層撮影データを適用し、身体に自然に生じる段階的な推移および変化を追加的に再構築および/または複製することによって、身体部位モデルの機械的な感触および外観をさらに良好に複製または再構築することができることを見出した。本発明者らはまた、断層撮影データ、例えばCT値を身体部位の知られている機械的特性と相関させて、指定した機械的特性を複製することができる様々な材料の組み合わせをボクセル(voxel)・レベルで定義することによって、身体部位の機械的特性をモデルで複製することができることも見出した。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、マルチマテリアルAMで身体部位を物理的に再構築するためのシステムおよび方法が提供され、本システムおよび方法では、材料組成および/または身体部位モデルの物理的な外観が、ボクセル単位で決定され、それを変更することができる。通常、例えばCTスキャナ、核磁気共鳴イメージャ(MRI)、超音波、および光学スキャニングなど医療用撮像デバイスから得られる3次元画像データ、例えば断層撮影データは、ボクセルのマトリクスまたは複数のスライスから構築され、各スライスはボクセルの2次元配列を含む。ボクセル・データによって提供される情報のタイプは、取得元の撮像デバイスによって異なり、例えばCTスキャナは密度情報を提供し、MRIは水素原子濃度に関する情報を提供する。本発明のいくつかの実施形態によれば、1つまたは複数の撮像デバイスから得られたボクセル情報は、組織の機械的特性に関係および/または関連付けられる。いくつかの例示的な実施形態において、ボクセル情報は、組織の剛性および/または柔軟性に関連する。通常、断層撮影ボクセル・データと機械的特性との関係は、実験データおよび/または、例えば骨および靱帯の知られている機械的特性など組織の知られている機械的特性に基づいて決定される。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、断層撮影ボクセル・データは、CADシステムで例えばSTLファイルなど身体部位のコンピュータ化モデルを最初に構築することを必要とすることなく、マルチマテリアルAMによって使用される。いくつかの例示的な実施形態では、画像データの各スライスごとにラスターファイルが作成され、STLファイル(複数可)の代わりにマルチマテリアルAMへの入力として使用される。本発明のいくつかの実施形態によれば、断層撮影データのスライス内の様々なボクセル値は、AMプロセス中に様々な材料組成に変換される。通常、画像データの各ボクセルは、複数の印刷ボクセル、例えば10〜1000個のボクセル、または構築材料の300個のボクセルからなるマクロボクセルに変換される。本発明者らは、断層撮影ボクセル値の変化に基づいて材料組成を変更することによって、異なるタイプの組織間の円滑な推移を含む、様々な組織のより自然な物理的表現を複製することができることを見出した。
【0053】
本発明者らはまた、STLの手法で行われるようにラスターからメッシュに移り、次いでラスターに戻るという必要がないので、ラスター−ラスター変換の方がより高速で、計算上より効率的であり、必要なソフトウェアツールが少なくてすむことをも見出した。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、色情報、器官のタイプ、および/または、例えば医師および/または他のユーザによって提供される他の手動で挿入される情報を含めるように、追加情報を追加し、AMファイルをラスターファイルの形態で生成することができる。任意で、生体器官の外観の正確な光学的シミュレーションを行うために、様々な身体部位領域の色および透明度レベルを独立して制御してもよい。任意で、1つまたは複数の撮像デバイスからの画像データを結合し、マルチマテリアルAMデバイスへの入力として使用されるラスターファイルを作成してもよい。
【0055】
任意で、自動または人の支援によるアルゴリズムを使用し、例えばスキャンの分解能が不十分であったために断層撮影データにない可能性がある1つまたは複数の特徴を再構築するために、データを追加することができる。例えば、上皮および内皮は、寸法が小さいので、通常はCTスキャンでは欠落している。しかし、それらの位置を、器官の外側および/または内側境界として定義してもよく、上皮および内皮を再構築するためのデータを追加してもよい。任意で、自動または人の支援によるアルゴリズムを使用し、モデルの外観および/または機械的な感触および/または安定性を高めうる追加データを追加することができる。任意で、追加データは、特定の組織、器官、または領域の色を定義することができる。別の例において、結合組織は、特に(例えば、骨および軟組織など)異なる組織が結合する領域において、自動的に識別することができる。任意で、そのような領域は、ゲルまたはゲル状材料、例えば手術トレーニングまたは他の教育のためのデバイスとしての役割を果たすとき、例えばより良好な組織間の分離を可能にするためのサポート材料を使用して作製されてもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マルチマテリアルAMデバイスは、少なくとも2つの材料、例えば柔軟な材料と硬直な材料で動作する。任意で、1つまたは複数のルックアップ・テーブルを使用し、画像データを、画像データに基づいて材料構成を定義するラスターファイル内のデータに関連付ける。任意で、画像データと材料組成の関係は、1つまたは複数のルックアップ・テーブルおよび/または1つまたは複数の定義済みの機能を用いて、例えば実験データに基づいて、または文献に基づいて定義される。任意で、画像データと材料組成の関係は、1つまたは複数の画像データ値、例えばCT値を材料特性に実験的に関連付けた後に手動で定義される。
【0057】
任意で、マルチマテリアルAMデバイスは、AMプロセス全体期間中に液体状態のままである材料を含めて、追加材料を使用することができ、前記液体材料は、極めて軟性の組織および/または血液もしくはリンパ液など体液の正確な複製を可能にする。使用される材料は、不透明であっても透明であっても、かつ/または望ましい用途に応じて特定の着色を有してもよい。さらに、AMデバイスは、合成器官の様々な領域の外観を調整するために追加の着色および/または透明材料を使用することができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マルチマテリアルAMプリンタ、例えばイスラエルのObject Ltd.によるConnex(商標)システムを使用し、異なる機械的特性および異なる外観を有する2つの材料、例えば不透明な剛性材料と透明な柔軟材料を使用して身体部位のモデルを作製する。いくつかの例示的な実施形態では、身体部位モデルは、骨に見られるものなど高密度の材料を表すために使用される剛性の不透明な材料、ならびに軟性および/または流体組織を表すための柔軟な透明の材料で作製される。通常、2つ以上のモデリング材料を使用し、例えば剛性の骨から軟性の流体組織にわたる特性の範囲を持つ、様々なデジタル材料を設計することができる。
【0059】
次に、本発明のいくつかの実施形態による、いずれもマルチマテリアルAMデバイスを使用して身体部位を作製するための、例示的なシステムの簡易ブロック図を示す図1、および例示的な方法の簡易流れ図を示す図2を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、システム100は、撮像デバイス110、例えばCTスキャナ、MRI、超音波、または光学スキャナから身体部位の3次元画像データを受信する(図2のブロック210)。通常、画像データは、各画像が身体部位のスライスを表す複数の2次元画像から形成される。通常、画像データの各スライスは、身体組織の構造および/または材料特性に関係する値、例えば組織の密度を有するボクセルの2次元配列である。通常、異なるボクセル値は、身体の異なる組織を撮像するためのコントラストをもたらすが、やはりボクセルを使用し、各3次元ボクセル位置において身体部位の材料および/または物理的特性を決定することができる。
【0060】
任意で、システム100の処理ユニット125は、モデル化するべき身体部位に関する画像データを、取り込まれた画像から分離する(図2のブロック215)。通常、処理ユニット125は、システム100のコントローラ1250に関連付けられており、かつ/またはコントローラ1250の一部である。あるいは、分離(segmentation)は、撮像デバイス110によって実行されてもよい。任意で、処理ユニット125は、画像後処理を実行して、画像の1つまたは複数、例えば3次元画像および/または個々の画像スライスの特徴をさらに増強する。任意で、画像データは、複数の異なる撮像デバイス110から取得され、処理ユニット125は、異なる撮像デバイスからの画像データを結合する。任意で、複数の異なる撮像デバイスからの入力を使用し、身体の様々な軟組織間のコントラストをさらに増強する。任意で、異なる画像スライス間の継ぎ目に沿って画像データの差異を平滑化するために、後処理が実行される。
【0061】
任意で、処理ユニットによって受信された画像データに加えて、ユーザは、ユーザ入力デバイス115を用いて追加情報を提供することができる。任意で、ユーザは、身体部位の識別された組織および/または器官の色ならびに/あるいは透明度レベルを選択する。任意で、ユーザは、類似する画像ボクセル値を有する組織を区別するために識別特徴を追加することができる。任意で、ユーザは、入力を閲覧および/または提供するために、3D対応ソフトウェアを選択的に使用する。任意で、ユーザは、処理ユニットによって表示された画像にマークを付けることにより入力を提供し、処理ユニットによって受信された画像データは、そのユーザ入力を組み入れる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1つまたは複数のルックアップ・テーブルおよび/または式もしくは関数120が、処理ユニット125によって使用され、元のボクセル値、例えば画像データのグレースケール値を、身体部位のモデルを印刷するための材料データに転換する(図2のブロック225)。本発明のいくつかの例示的な実施形態では、画像データの各ボクセルは、構築材料の複数のボクセル、例えば構築材料の10〜1000ボクセル、および/または構築材料の300ボクセルで、身体部位のモデルに作製される。本明細書において、デジタル材料は、AM構築プロセス中に連続的に堆積され、任意で固化され第3の材料(つまり、デジタル材料)を形成する、様々な構築材料の事前定義の数のボクセルから形成された材料である。各材料の様々な特性は、それらの空間的な組み合わせ、およびそれらの組み合わせの比率の結果として、親材料の各々の特性間の特性範囲を有するマルチマテリアル組み合わせを得ることを可能にする。任意で、デジタル材料は、複数の印刷層の上に形成される。任意で、疑似ランダム混合ではなく、事前定義のデジタル材料の組み合わせが使用される。そのような場合、同じ画像ボクセル値を有する各領域は、ルックアップ・テーブル内でそのボクセル値にリンクされている事前定義の組成からのビットマップに置き換えられる。任意で、画像ボクセル・データの分解能が構築材料ボクセルよりも高い場合、異なる手法が使用されてもよく、例えばエラー伝搬ディザリング方法が使用されてもよい。
【0063】
任意で、サポート材料は、デジタル材料組成の一部になることができる。デジタル材料は、例えば図4A図4Eを参照して、本明細書の後段においてさらに詳細に記載されている。任意で、デジタル材料の特性は、撮像される組織の材料および/または物理的特性に酷似するように定義される。通常、モデルの材料特性の変化は、デジタル材料の構成要素および/または構成要素の比率を変更することにより、ボクセル単位で変更することができる。通常、1つまたは複数のルックアップ・テーブルおよび/または式120は、システム100のメモリユニット1200に格納される。任意で、ルックアップ・テーブルは、データベース、例えば構築材料データベースである。任意で、画像データがグレースケールの形態である場合、ルックアップ・テーブルは、グレースケール値と材料組成の関係を提供する。例えば、128のグレーレベルは、任意で、30%の柔軟材料および70%の剛性材料に相当することができる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、デジタル材料データのビットマップを含むラスターファイル(130)は、画像データのスライスごとに作成され、マルチマテリアルAMデバイス140に送信され(図2のブロック230)、そのラスターファイルに基づいてモデルが一層ずつ印刷される(図2のブロック240)。通常、画像データの1つのスライスは、複数の印刷された層、例えば5〜20個の印刷層で複製される。通常、複数、例えば画像データスライスごとに1つのラスターファイルが、身体部位150の完全モデルを印刷するためにマルチマテリアルAMデバイスに送信される。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マルチマテリアルAMデバイス140は、各構築材料が様々な特性を備える少なくとも2つの構築材料、例えば構築材料142および構築材料144を備え、これらの構築材料は、様々な特性および/またはパターンで分注され、身体部位の特性の変化を複製するために使用することができる機械的特性の範囲をシミュレートすることができる。任意で、マルチマテリアルAMデバイス140は、構築材料142および144から独立して使用し、色、例えば身体部位の様々な領域の色素および/または透明度レベルをシミュレートし、または身体部位の他の物理的特徴を強調することができる追加の材料、例えば材料146を備える。任意で、付加材料を使用し、医療画像診断中に使用される造影剤の空間的分布をシミュレートする。追加材料は、例えば、金属、イオン、セラミック、生体分子、および他の活性物質を含むことができる。
【0066】
次に、本発明のいくつかの実施形態によるマルチマテリアルAMで脊椎の身体部位モデルを作製するために使用することができるCTスキャナで得られた画像データの例示的なスライスを示す図3を参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、脊椎(または脊椎の一部の)モデルは、人物から取り込まれた1つまたは複数のCT画像スライス320から得られた画像から形成される。通常、CT画像は、高密度材料から反射されたより明るい領域321、および、例えばCT値の2次元配列により定義される軟組織または液状材料など、低密度構造から反射されたより暗い領域323を含む。
【0067】
任意で、CT値は、スキャンされた組織の対応する領域のヤング率に関連付けられてもよく、撮像された脊椎のモデルは、剛性のおよび/または硬直な構築材料と、柔軟な、例えば可塑性および/または弾性の構築材料を異なる比率で組み合わせることによって作製されてもよい。任意で、より明るい領域321は、高い割合の剛性のおよび/または硬直な構築材料でモデル化され、一方、より暗い領域323は、高い割合の柔軟なかつ/または弾性の構築材料でモデル化される。通常、各ボクセルをモデル化するために使用される2つ以上の構築材料の比率は、ボクセルのCT値によって、ならびに撮像される最も硬直な材料および最も柔軟な材料の知られている機械的特性によって定義される。任意で、剛性材料の剛性は、シミュレートされる最も剛性の組織の剛性と同等以上となるように選択され、柔軟な構築材料の剛性は、最も柔軟な材料の剛性に近いかまたはこれよりも小さくなるように選択される。2つ以上の構築材料の比率を変更することによって、広範囲の機械的特性をシミュレートすることができる。
【0068】
任意で、AMプロセス全体期間中に液体状態のままである追加の材料は、最も暗い領域をシミュレートするために使用されてもよい。任意で、液状の材料は、極めて軟性の組織および/または血液またはリンパ液など体液をシミュレートするために使用される。使用される構築材料は、不透明であっても透明であっても、かつ/または望ましい用途に応じて特定の着色を有してもよい。さらに、AMシステムは、モデルの様々な領域の外観を調整するために追加の着色および/または透明な材料を使用することができる。
【0069】
任意で、ゲル領域は、軟組織の特性、または、内皮表面、例えば器官の表面を覆う上皮組織の特性をシミュレートするためのモード内で形成することができる。任意で、親水性材料を形成するために、親水性UV硬化樹脂が使用することができる。任意で、水溶液に浸したとき、この材料は、水分を吸収して膨張し、身体の自然な軟組織、例えば上皮組織の一部を模倣することのできる滑らかで軟性のゲルを形成することになる。
【0070】
次に、本発明のいくつかの実施形態による様々なデジタル材料パターンの例示の具体的表現を示す図4A図4B図4C図4Dおよび図4Eを参照する。本発明のいくつかの実施形態によれば、デジタル材料は、小体積、例えばAM構築プロセス中に同時に堆積されて、任意で凝固される異なる構築材料410および420の液滴で形成される材料である。デジタル材料は、単位セルまたはマクロボクセルの大きさで形成されてもよい。単位セルおよび/またはマクロボクセルは、本明細書において、デジタル材料の規定の材料特性を有するデジタル材料の最小体積として定義される。任意で、マクロボクセルの単位サイズは、画像データの1つのボクセルによって表される単位サイズに相当する。
【0071】
通常、異なる構築材料は、例えば、剛性、柔軟性、密度、色、透明度、吸水率(%)、溶剤吸収率(%)、非重合液体分率、ナノ粒子分率など、異なる機械的特性を有する。任意で、および/または加えて、デジタル材料は、複数の異なる層の上に様々な構築材料を分注することによって形成される。いくつかの例示的な実施形態において、デジタル材料の機械的特性は、デジタル材料を形成するために使用される様々な構築材料の比率を定義することによって設定される。いくつかの例示的な実施形態において、デジタル材料は、ミリメートルまたはミリメートル未満のマクロボクセルの単位サイズを有するように定義され、各マクロボクセルは、構築材料の数十または数百の分注される液滴、例えば10〜1000個のマイクロボクセルを含む。
【0072】
いくつかの例示的な実施形態において、構成要素が分注される幾何学的および/または空間的パターンは、望ましい機械的特性および/または望ましい物理的特性に応じて異なっていてもよい。通常、そのような堆積の空間的パターンは、ランダムまたは疑似ランダムであってもよいが(図4D)、場合によっては、構造化されたパターンが望ましいこともある(図4Cおよび図4E)。任意で、単一の構築材料、例えば単一の構築材料410(図4A)または単一の構築材料420(図4B)が、高いレベルまたは最高レベルの所与の特性を複製するために単独で使用されてもよい。
【0073】
いくつかの例示的な実施形態において、身体部位モデルは、いずれもイスラエルのObjet Ltd.により入手できる1つの硬直なかつ/または剛性の材料RGD535(商標)、RGD525(商標)、FullCure(登録商標)720、および/またはいずれもイスラエルのObjet Lte.により入手できる柔軟材料Objet TangoPlus(商標)、TangoBlackPlus(商標)、TangoBlack(商標)、TangoGrey(商標)で作成される。任意で、剛性材料の剛性は、シミュレートされる最高の剛性の組織の剛性と同等かまたはこれよりも大きくなるように選択され、柔軟または可撓性材料の剛性は、シミュレートされる最も剛性の低い組織の剛性と同等かまたはこれよりも小さい材料として選択される。通常、身体組織の弾性係数は、約0.01MPaから約3GPaの間で変化する。本発明者らは、約0.01MPaの身体組織の弾性係数を持つ1つの材料、および約3GPaで変化する身体組織の弾性係数を持つ別の材料でモデルを作製したときに、大部分の器官および/または身体部位の機械的な振る舞いまたは特徴をシミュレートすることができることを見出した。
【0074】
任意で、デジタル材料は、モデリング材料の事前定義のパターンを使用して形成される必要はない。むしろ、デジタル材料は、2つ以上のモデリング材料、例えば印刷ボクセル・レベルで疑似ランダムに混合される親材料の比率によって定義されてもよい。この場合は、通常、要求される混合比率に従ってボクセルをランダムに分注することによって印刷ボクセルをオンザフライで割り当てることができるので、必要な計算リソースは著しく少なくなる。疑似ランダム混合の別の利点は、Zバッファが交互するスライス上のパターンを参照する必要なく、分注をスライス単位で行うことができることである。
【0075】
次に、液体材料がゴム状材料に囲まれている例示的な区分化デジタル材料構造を示す図5A図5B、および図5Cを参照する。いくつかの実施形態において、デジタル材料単位セルは、より固い材料に囲まれた液体またはゲルの体積部の区画として定義される。様々な区分化単位セルを定義し、様々な機械的な振る舞いを生成することができる。いくつかの例示的な実施形態において、軟組織、結合組織、血管、および液体含有率の高い他の身体器官をシミュレートするために、例えば0.1MPa未満の圧縮弾性率を有する極めて軟性のゲル、液体、および/または非凝固材料510が使用される。本発明者らは、3Dオブジェクト作製中または作製後に、液体材料の漏出が生じる可能性があることを見出した。いくつかの例示的な実施形態において、漏出は、TangoPlusゴム状材料によって囲まれたポリエチレングリコール400(PEG400)など、液体または軟性ゲル材料の各部分が他の固体材料、ゴム状構築材料またはデジタル材料よって囲まれるかまたはカプセル化された、ミリメートルまたはミリメートル未満の区分化構造を作製することによって回避される。
【0076】
いくつかの例示的な実施形態において、区分化デジタル材料構造の剛性は、全体的なゴム/液体比率、区画サイズ、壁厚さ、ゴム状材料の剛性、液体領域を「補強するための」追加のゴム状フィラメントまたはパーティションの導入を制御することによって制御される。任意で、剛性の増大は、ゴム状構築材料520の厚さを増やすことによって達成される(図5B図5Aと比較)。任意で、剛性の増大は、区画の定義済みサイズを小さくすること、および/または区画の形状を変えることによって達成される(図5C)。任意で、図5Cに示される三角形の区画の方が、図5Aおよび図5Bに示される四角形の区画よりも耐久性が高い。任意で、区画の構造は、生体の体細胞の構造を模倣することができる。
【0077】
次に、本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができる1つの軟性材料(TangoBlackPlus(商標))および1つの剛性材料(RGD525(商標))で構成されたデジタル材料の較正曲線の例示的なグラフを示す図6Aおよび図6Bを参照する。図6Aは、デジタル材料における軟性材料の体積分率の関数としてデジタル材料のショアA値を示す例示的なグラフである。図6Bは、デジタル材料における剛性材料の体積分率の関数としてデジタル材料のヤング率を示す例示的なグラフである。グラフ上の三角形の点は、実験データを表し、曲線は例示的な分析的一致(analytical fit)を表す。任意で、分析的一致を使用し、撮像から決定された定義済みの位置における身体部位の物理的特性、およびその物理的特性を模倣するためのデジタル材料の構成要素に関する1つまたは複数の式を定義することができる。任意で、ユーザ入力を追加的に使用し、身体部位の識別された要素の物理的特性を定義する。
【0078】
次に、手の例示的な再構築を示す図7Aおよび図7Bを参照する。図7Aは、STLファイルを使用する既知のAM技法により、黒色材料および透明な材料という2つのモデリング材料を使用した手の再構築を示すが、黒色材料は骨を表し、透明な材料は骨以外の組織を表す。比較すると、図7Bは、本発明のいくつかの実施形態によるシステムおよび方法を使用した手の例示的な物理的再構築を示す。図7Bからわかるように、手は、黒色材料および透明材料という2つのモデリング材料の可変の組み合わせにより再構築されている。黒色は、最も剛性の領域に使用され、透明は最も柔軟な領域に使用され、2つの材料の異なる比率の可変の空間的組み合わせを使用し、様々な領域中または内部の変化する特性を複製する。したがって、本発明のいくつかの実施形態によるシステムおよび方法を使用することにより、例えば関節領域における骨の特性の変化が再構築され、関節領域が識別された。
【0079】
実施形態の大部分について身体部位のモデルを作製することを参照して説明したが、本発明の実施形態は、その点に関して限定されないこと、ならびに同じシステムおよび方法が複数の様々な材料から形成される他のオブジェクトのモデルを作製するために使用することができることに留意されたい。
【0080】
実施形態の大部分について剛性材料および柔軟材料の組み合わせを使用して身体部位のモデルを作製することを参照して説明したが、本発明の実施形態は、その点に関して限定されないことにさらに留意されたい。本発明の他の実施形態において、身体部位のモデルは、身体部位の特性を模倣するために様々な機械的および/または物理的特性を有する構築材料の組み合わせを使用して作成されてもよい。
【0081】
「comprise(備える、含む)」、「comprising(備える、含む)」、「include(含む)」、「including(含む)」、「having(有する)」という用語およびそれらの活用形は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0082】
「からなる(consisting of)」は「含み、それに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0083】
「実質的にからなる(consisting essentially of)」は、組成、方法、または構造が、追加の構成要素、ステップ、および/または部分を含むことができるが、それは追加の構成要素、ステップ、および/または部分が特許請求に係る組成、方法、または構造の基本および新奇の特徴を実質的に変えることがない場合に限られることを意味する。
【0084】
本明細書において使用される「方法(method)」という用語は、化学、薬理学、生物、生化学、および医学分野の熟練者に知られているか、または当該熟練者により知られた方法、手段、技法、および手順から容易に開発される方法、手段、技法、および手順を含めて、所与のタスクを達成するための方法、手段、技法および手順を指すが、これらに限定されることはない。
【0085】
明確にするために別個の実施形態の文脈で述べられている、本発明の特定の特徴が、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解されよう。逆に、簡略にするために単一の実施形態の文脈で述べられている、本発明の様々な特徴が、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本発明の他の説明されている実施形態において適切に、提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で述べられている特定の特徴は、それらの要素なくしては実施形態が動作不可能である場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴であるとみなされるものではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B