(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835913
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】MEMS慣性センサを自己試験する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01P 21/00 20060101AFI20210215BHJP
G01C 19/5726 20120101ALI20210215BHJP
G01C 19/5776 20120101ALI20210215BHJP
【FI】
G01P21/00
G01C19/5726
G01C19/5776
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-126276(P2019-126276)
(22)【出願日】2019年7月5日
(65)【公開番号】特開2020-8583(P2020-8583A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】16/029,841
(32)【優先日】2018年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503062253
【氏名又は名称】アナログ ディヴァイスィズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エー・クラーク
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2017/0199035(US,A1)
【文献】
特表2016−529520(JP,A)
【文献】
特開2014−174175(JP,A)
【文献】
特開2014−174167(JP,A)
【文献】
特開2014−16350(JP,A)
【文献】
特表2012−528306(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0145660(US,A1)
【文献】
特表2008−501981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00−21/02
G01C19/00−19/72
G01C25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電気機械システム(MEMS)慣性センサを試験するためのシステムであって、
試験回路であって、
信号発生器によって生成された試験信号に対する前記MEMS慣性センサの応答を表す応答信号を受信し、
前記試験信号に対して同相である同相基準信号を前記応答信号と混合することによって同相応答信号を生成し、
前記応答信号を前記試験信号に対して直交である直交基準信号と混合することによって直交応答信号を生成し、
前記直交応答信号に基づいて、前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定し、
前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの前記特性を評価するために使用されるべきであると判定された場合、前記同相応答信号を使用して前記MEMS慣性センサの前記特性を評価するように構成された、試験回路、を備えた、システム。
【請求項2】
前記同相基準信号および前記試験信号が互いに対して実質的に同相である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記直交基準信号および前記試験信号を互いに対して実質的に直交させるように構成された移相器をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記試験回路が比較器を含み、前記試験回路が、少なくとも部分的に第1の比較器で前記直交応答信号の振幅を閾値振幅と比較することによって、前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記直交応答信号に基づいて、前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの前記特性を評価するために使用されるべきではないと判定された場合、前記試験回路が、自己試験の結果は無視されるべきであると示す通知信号を出力するようにさらに構成され得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記試験信号を使用して前記MEMS慣性センサを刺激するように構成された信号発生器をさらに備えた、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
微小電気機械システム(MEMS)慣性センサを試験するための方法であって、
試験信号を使用して前記MEMS慣性センサを刺激することと、
前記刺激に応答して前記MEMS慣性センサから応答信号を受信することと、
前記応答信号および前記試験信号に対して同相である同相基準信号を使用して同相応答信号を生成することと、
前記応答信号および前記試験信号に対して直交である直交基準信号を使用して直交応答信号を生成することと、
前記直交応答信号に基づいて、前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定することと、
前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの前記特性を評価するために使用されるべきであると判定された場合、前記同相応答信号を使用して前記MEMS慣性センサの前記特性を評価することと、を含む、方法。
【請求項8】
前記同相基準信号および前記試験信号を互いに対して実質的に同相にすることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記直交基準信号および前記試験信号を互いに対して実質的に直交させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記直交応答信号に基づいて、前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定することが、前記直交応答信号の振幅が第1の閾値振幅より低いか判定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記同相応答信号を使用して前記MEMS慣性センサの特性を評価することが、同相応答信号の振幅が第2の閾値振幅より高いか判定することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記同相応答信号の前記振幅が前記第2の閾値振幅より高くない場合、前記方法は、前記MEMS慣性センサが誤動作していることを示す通知信号を出力することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記MEMS慣性センサの前記特性が、MEMS加速度計の加速度に対する感度またはMEMSジャイロスコープの角運動に対する感度を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
微小電気機械システム(MEMS)慣性センサを試験するためのシステムであって、
前記MEMS慣性センサと、
試験回路であって、
試験信号に応答して前記MEMS慣性信号から応答信号を受信し、
前記応答信号および前記試験信号に対して同相である同相基準信号を使用して同相応答信号を生成し、前記応答信号および前記試験信号に対して直交である直交基準信号を使用して直交応答信号を生成し、
前記直交応答信号に基づいて、前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定し、
前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの前記特性を評価するために使用されるべきであると判定された場合、前記同相応答信号を使用して前記MEMS慣性センサの前記特性を評価するように構成された、試験回路と、を備えた、システム。
【請求項15】
前記試験回路が、前記同相基準信号および前記試験信号を互いに対して実質的に同相にするようにさらに構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記試験回路が、前記直交基準信号および前記試験信号を互いに対して実質的に直交させるようにさらに構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記試験回路が、前記直交応答信号に基づいて、少なくとも部分的に前記直交応答信号の振幅が第1の閾値振幅より低いか判定することによって、前記同相応答信号が前記MEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定するように構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記試験回路が、少なくとも部分的に前記同相応答信号の振幅が第2の閾値振幅より高いか判定することによって、前記同相応答信号を使用して前記MEMS慣性センサの前記特性を評価するように構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
試験回路が、前記同相応答信号の前記振幅が前記第2の閾値振幅より高くないと前記試験回路が判定した場合、前記MEMS慣性センサが誤動作していることを示す通知信号を出力するようにさらに構成された、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記MEMS慣性センサの前記特性が、MEMS加速度計の加速度に対する感度またはMEMSジャイロスコープの角運動に対する感度を含む、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願に記載される技術は、微小電気機械システム(microelectromechanical system、MEMS)慣性センサに関する。
【背景技術】
【0002】
慣性センサは、1つ以上の加速度計および/またはジャイロスコープを使用して運動、力、角速度、および/または他の量を測定および報告する電子デバイスである。MEMSジャイロスコープは、彼らジャイロスコープの共振質量が角運動を経るときに生じるコリオリ力によって引き起こされる加速度を感知することによって角運動を検出するように構成され得る。MEMS加速度計は、直線および/または角加速度を感知するように構成され得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、微小電気機械システム(MEMS)慣性センサの自己試験のための技法に関する。いくつかのこのような技法は、加速度計の加速度に対する感度およびジャイロスコープの角運動に対する感度などの慣性センサの特性を試験することを伴う。試験は、加速度または角速度などの刺激を模擬する試験信号をMEMS慣性センサに提供すること、およびセンサの出力を吟味することによって遂行され得る。このような自己試験の有効性は、センサの環境内に存在し得、センサの出力に影響を与え得るスプリアス信号によって損なわれ得る。それゆえに、本明細書に記載の自己試験技法は、このようなスプリアス信号の存在を検出すること、およびそれらの存在が検出されたとき自己試験結果を破棄することを伴う。いくつかの実施形態では、スプリアス信号の存在は、MEMS慣性センサの応答を、試験信号と実質的に直交する基準信号と混合することによって得られた信号を使用することによって検出され得る。
【0004】
本開示の別の態様は、微小電気機械システム(MEMS)慣性センサを試験するためのシステムに関する。システムは、試験信号を使用してMEMS慣性センサを刺激するように構成された信号発生器と、試験回路であって、試験信号に応答して同相基準信号をMEMS慣性センサから得られた応答信号と混合することによって同相応答信号を生成し、応答信号を直交基準信号と混合することによって直交応答信号を生成し、直交応答信号に基づいて同相応答信号がMEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定し、同相応答信号がMEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきであると判定された場合、同相応答信号を使用してMEMS慣性センサの特性を評価するように構成された、試験回路と、を備え得る。
【0005】
本開示の別の態様は、微小電気機械システム(MEMS)慣性センサを試験するための方法に関する。方法は、試験信号を使用してMEMS慣性センサを刺激することと、刺激に応答してMEMS慣性センサから応答信号を受信することと、応答信号および同相基準信号を使用して同相応答信号を生成することと、応答信号および直交基準信号を使用して直交応答信号を生成することと、直交応答信号に基づいて同相応答信号がMEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定することと、同相応答信号がMEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきであると判定された場合、同相応答信号を使用してMEMS慣性センサの特性を評価することと、を含み得る。
【0006】
本開示の別の態様は、微小電気機械システム(MEMS)慣性センサを試験するためのシステムに関する。システムは、MEMS慣性センサと、試験回路であって、試験信号を使用してMEMS慣性センサを刺激し、刺激に応答してMEMS慣性信号から応答信号を受信し、応答信号および同相基準信号を使用して同相応答信号を生成し、応答信号および直交基準信号を使用して直交応答信号を生成し、直交応答信号に基づいて同相応答信号がMEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきか判定し、同相応答信号がMEMS慣性センサの特性を評価するために使用されるべきであると判定された場合、同相応答信号を使用してMEMS慣性センサの特性を評価するように構成された、試験回路と、を備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本出願の様々な態様および実施形態を、以下の図を参照して説明する。図は必ずしも縮尺一定で描かれていないことが理解されるべきである。複数の図に登場する品目は、それが登場する全ての図において同じ参照番号で示されている。
【
図1】本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、MEMS慣性センサを試験するための例示的なシステムを示すブロック図である。
【
図2A】本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、
図1の例示的なシステムを使用して試験され得る例示的なMEMS加速度計の概略図である。
【
図2B】本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、
図1の例示的なシステムを使用して試験され得る例示的なMEMSジャイロスコープの概略図である。
【
図3】本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、MEMS慣性センサを試験するための例示的な方法の流れ図である。
【
図4】本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、
図1の例示的なシステム内で共に使用され得る例示的な応答分析器のブロック図である。
【
図5】本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、
図4の例示的な応答分析器が、試験信号の印加に応答してMEMS慣性センサの出力をどのように処理し得るかを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
自己試験は、電子機器がその仕様に従って動作しているか、またはその動作が予想される動作から逸脱しているかを評価するためにエレクトロニクスで使用される技法であり、逸脱は、機器を修理または交換することによって対処される必要があり得る機器の問題を示すことがある。自己試験の重要な利点は、電子機器が設置および/または配備された後で、製造後にかつ製造業者の非制御下で、ならびにことによるとその通常動作を途絶させる必要すらなしに、遂行することができることである。
【0009】
MEMS慣性センサは、設置および/または配備された後に自己試験され得る電子機器の一例である。加速度計およびジャイロスコープなどのMEMS慣性センサは、微細加工技法を使用して製作されたデバイスである。こうしたデバイスは、その機械的性質のため、大きな温度変動、圧力変化、および/または大きな機械的振動などの外的環境条件に敏感であり、これらは、性能の低下をもたらし得、部分的または全体的な交換を含む定期保守を必要とし得る。自己試験は、MEMS部品の保守および交換が遂行されるべきか、ならびにいつ遂行されるべきか判定するための効果的な技法である。
【0010】
本発明者は、MEMS慣性センサは環境雑音および/または他のスプリアス信号の存在による影響を被りやすいため、MEMS慣性センサの自己試験を行うための従来の技法は改善の余地があることを認識した。特に、本発明者は、MEMS慣性センサの自己試験に従来使用される回路では、システム内の雑音の存在(この場合、修理は必要ではない)から、MEMS慣性センサの貧弱な性能(これは、修理または交換が必要であることを示すことがある)を見分ける能力が限定されていることを認識した。結果として、従来の自己試験技法は偽の警告をもたらし、それにより、MEMS慣性センサは、現実には問題が存在しなくても不満足な性能であるとしてフラグ付けされ得る。例えば、自動車に装着されたMEMS加速度計の試験は、運転者が試験中に警音器を鳴らすと、偽の警告を発し得る。運転者が警音器を鳴らすと、MEMS加速度計によって測定されるべき加速度として不用意に解釈され得る音響振動が引き起こされる。結果として、自動車内のMEMS加速度計の出力は警音器の振動を反映し得、これが自己試験サイクル中に発生すると、MEMS加速度計の出力は、予想される挙動からの逸脱のため、MEMSデバイスの問題を示すとして誤って解釈され得る。
【0011】
本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態は、従来の自己試験技法の上述の問題を低減または排除する、MEMS慣性センサの自己試験を行うための技法およびシステムに関する。具体的には、いくつかの実施形態は、試験の結果が雑音または他のスプリアス信号の存在によって歪曲されているか判定するための技法に関する。試験の結果を歪曲し得る著しいスプリアス信号が存在すると判定されると、その試験の結果は破棄され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、試験の正確性に著しい影響を与え得るスプリアス信号の存在は、試験信号で励起されたとき、MEMS慣性センサが、予想される試験信号応答と直交する(またはそれと無相関な)非軽微な信号で応答するか判定することによって、検出され得る。静寂条件下では、例えば、スプリアス信号が存在しない理想的なシナリオでは、MEMS慣性センサは、予想される試験信号応答と直交する応答信号を発するべきではない。したがって、以下でさらに詳細に説明するように、慣性センサの出力が当該の直交または無相関信号を検出するために復調されると、その結果は、実質的にゼロに等しい応答をもたらし得る。したがって、非軽微な直交応答信号の存在は、著しいスプリアス信号が存在するしるしとして解釈され得る。この場合、試験回路は、試験の結果は破棄されるべきであるとユーザに通知してもよく、または直交応答信号が消失もしくは所定閾値より低く低下するまで単純に待機してもよい。本明細書に記載の種類の試験信号は、試験対象のMEMS慣性センサがそれらを機械的刺激として、例えば加速度および/または角運動として知覚するように構成されてもよい。
【0013】
著しいスプリアス信号が存在しないと判定された場合、試験の結果は正確と考えることができる。例えば、試験の結果が、加速度計の加速度に対する感度が不満足なものであることを示す場合、ユーザは、加速度計の感度が実際に不満足なものであると相対的に確信し得る。いくつかの実施形態では、MEMS慣性センサの特性が申し分ないものであるか、したがってMEMS慣性センサがその特性に関して適切に機能しているか判定することは、試験信号で励起されたとき、MEMS慣性センサが、予想される値に十分に近い試験信号と同相の信号で応答するか判定することを含んでもよい。本明細書に記載の技法を使用して評価され得る特性の例としては、MEMS慣性センサの加速度または角運動に対する感度が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
図1は、本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、MEMS慣性センサの自己試験を行うための例示的なシステムのブロック図である。
図1のシステムは、MEMS慣性センサ100、ノッチフィルタ121、および試験回路104を含む。MEMS慣性センサが人間の介入なしに、または単純にユーザからの要求なしに試験され得るように、試験回路104は、MEMS慣性センサ100の自己試験を行うように構成されてもよい。自己試験システムであるので、いくつかの実施形態では、MEMS慣性センサ100は、システム全体がMEMS慣性センサの動作性能を試験し得るように、試験回路104と共に配備されてもよい。いくつかの実施形態では、試験回路104は、ユーザからの入力なしに1回以上の所定時に試験を自動的に遂行するように構成されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、試験回路104は、定期的に、かつ/またはステジュールに従ってMEMS慣性センサ100を試験するように構成されてもよい。他の実施形態では、試験回路104は、ユーザの要求に応答してMEMS慣性センサ100を試験するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、試験回路104は、MEMS慣性センサ100を、その通常動作を中断させずに試験するように構成されてもよい(例えば、MEMSジャイロスコープが角運動を検出している間、またはMEMS加速度計が加速度を検出しているときに)。追加的または代替的に、試験回路104は、MEMS慣性センサの通常動作が停止された1回以上の期間中にMEMS慣性センサ100を試験するように構成されてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、MEMS慣性センサ100は、1つ以上の加速度計および/または1つ以上のジャイロスコープを含むがこれらに限定されない任意の好適な種類の微細加工センサを含んでもよい。MEMS慣性センサ100が1つ以上の加速度計を含む実施形態のいくつかでは、加速度計(複数可)は、1、2、もしくは3方向の直線加速度および/または1、2、もしくは3軸を中心とする角加速度を検出するように設計されてもよい。加速度計は、加速度に応答して運動する(例えば、移動、旋回、および/または回転)ように構成された1つ以上のプルーフマス、ならびにプルーフマス(複数可)の運動を感知するためのセンサ(例えば、静電容量センサ)を含んでもよい。
【0016】
本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、MEMS慣性センサ100に含め得る加速度計の一例を
図2Aに示す。例示的な加速度計240は面外直線加速度を感知するように構成されているが、全ての実施形態がこの点で限定されているわけではない。加速度計240は、アンカ252を介して基礎をなす基板242に接続されたプルーフマス250を含む。加速度計は、基礎をなす基板の上面上に形成された電極254をさらに含む。プルーフマス250(これは、少なくとも部分的に導電性材料から作製され得る)と共に、電極254は、静電容量センサを形成する。加速度計が、基板242の上面に向かう方向の加速度(ラベル「A」)に供されると、プルーフマス250は、応答して、アンカを中心として旋回する。結果として、プルーフマス250と電極254との間の距離が変化し、静電容量センサの静電容量を変化させる。加速度Aの大きさは、静電容量の変化に基づいて判定され得る。
【0017】
1つ以上のジャイロスコープがMEMS慣性センサ100に含まれる実施形態のいくつかでは、ジャイロスコープ(複数可)はと、1、2、または3軸を中心とする角運動速度を検出するように構成されてもよい。これらの実施形態では、駆動回路が、ジャイロスコープ(複数可)の動作を制御するために使用されてもよい。例えば、駆動回路は、ジャイロスコープの共振器を駆動するように配備された駆動信号をジャイロスコープに提供してもよい。いくつかの実施形態では、駆動信号は、ジャイロスコープのプルーフマスの1方向(例えば、x軸)への揺動を駆動してもよい。ジャイロスコープがある軸(例えば、x軸)を中心とする角運動を経るとき、プルーフマスは、別の方向(例えば、y軸)に運動してもよい。角運動は、この運動に基づいて検出されてもよい(例えば、プルーフマスが運動した範囲に基づいて)。
【0018】
MEMS慣性センサ100に含め得る例示的なジャイロスコープを
図2Bに示す。この例では、ジャイロスコープ200は、x軸に平行な方向に共振し、y軸に平行な方向のコリオリ力を検出するように構成されている。本明細書に記載の種類のジャイロスコープはいかなる特定の共振または検出の方向にも限定されないことが理解されるべきである。
【0019】
いくつかの実施形態では、ジャイロスコープ200は、固定フレーム210(アンカ214を介して基礎をなす基板に定着されている)、プルーフマス202、および固定電極220を含む。プルーフマス202は、カプラ212を介して固定フレーム210に弾性連結されている。カプラ212は従順であってもよく、したがってプルーフマス202の固定フレーム210に対する運動を可能にする。この例では、プルーフマス202は、ジャイロスコープの共振器として機能している。それゆえに、駆動信号(駆動回路によって提供される)が、プルーフマス202に連結された1つ以上の電極(
図2Bに示さず)に印加されると、プルーフマス202は、x軸方向に揺動する。
【0020】
いくつかの実施形態では、プルーフマス202は、それぞれの固定電極220を有する複数の感知キャパシタを形成する、複数の自由端ビーム222を含む。感知キャパシタの静電容量は、プルーフマスのy軸方向への加速度によって変動する。ジャイロスコープ200がx軸を中心とする角運動に供され、プルーフマス202が(駆動回路によって生成された駆動信号によって)x軸に沿って揺動するように駆動されると、y軸に沿ったコリオリ力が生じ、プルーフマスはy軸に沿って運動する。角運動速度は、y軸に沿ったプルーフマス202の加速度を検出することによって判定することができる。
【0021】
図1を再び参照すると、エンドユーザは、加速度および/または角運動に応答してMEMS慣性センサ100によって生成された信号を受信してもよい。例えば、応答信号は、電極254とプルーフマス250との間に形成されたキャパシタの静電容量変動に応答して生成されてもよく(
図2A)、または応答信号は、センサ204によって経験されたコリオリ力に応答して生成されてもよい(
図2B)。以下でさらに説明するように、MEMS慣性センサ100の出力は、ノッチフィルタ121を使用してフィルタ処理されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、試験回路104は、MEMS慣性センサ100の動作特性を試験するように配備されてもよい。例えば、試験回路104は、MEMS慣性センサ100に印加されるべき試験信号を生成し、MEMS慣性センサ100がどのように応答するかを判定するように構成されてもよく、その応答に基づいてMEMS慣性センサ100が適切に動作しているか判定する。試験信号は、加速度および/または角運動の存在を擬態してもよい。例えば、
図2Aの加速度計に関連して、試験回路104は、静電力トランスデューサ101を使用して静電引力または斥力によってプルーフマス250を運動させてもよい。
図2Bに関連して、試験回路104は、y軸に沿ってプルーフマス202を運動させるように試験信号を印加し、コリオリ力の存在を模擬してもよい。
【0023】
図1に示すように、試験回路104は、信号発生器110、加算器111、同相信号発生器112、直交信号発生器114、混合器116および118、ならびに応答分析器122を含む。信号発生器110は、試験信号を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、信号発生器110は、試験信号として、周期的方形波もしくは正弦波などの周期波形、または疑似乱数列を出力するように構成されてもよい。周期波形の基本周波数をf
1と呼ぶ。いくつかの実施形態では、f
1は500Hzまたは1KHzであってもよいが、応用はいかなる特定の周波数にも限定されない。例えば、f
1は、250Hz〜2KHz、250Hz〜1.5KHz、500HzHz〜1KHz、250Hz〜750Hz、またはこのような範囲内の任意の範囲であってもよい
【0024】
試験信号は、静電力トランスデューサ101を介して機械的刺激に変換されてもよく、これは、例えば加速度計プルーフマス250および作動電極254の両端に電圧を印加することによって、実装され得る。静電力トランスデューサ101の出力は、例えば加算器111を使用して、(加速度および/または角運動などの)測定されるべき慣性力と組み合わせてもよい。組み合わせた力は、入力として慣性センサ100に提供されてもよい。
【0025】
いくつかの状況では、試験回路104は、MEMS慣性センサ100がいかなる外的慣性力にも供されていないときに、MEMS慣性センサ100の動作を試験してもよい。他の状況では、試験回路104は、MEMS慣性センサ100が慣性力に供されているときに、MEMS慣性センサ100の動作を試験してもよい。いずれにせよ、応答信号は、試験信号、慣性力、雑音もしくは他のスプリアス信号、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかにかかわらず、受信した入力に対するMEMS慣性センサの応答を表す。
【0026】
試験信号に対する応答の検出を防止するために、いくつかの実施形態では、応答信号は、エンドユーザに提供される前にノッチフィルタ121でフィルタ処理されてもよい。ノッチフィルタ121は、試験信号の基本周波数をほぼ中心とする阻止帯域を呈してもよい。それゆえ、ノッチフィルタ121は、試験信号を受信するための入力、および試験信号の基本周波数に基づいて阻止帯域の周波数を設定する回路を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、混合器116は、応答信号および同相基準信号を受信および混合(例えば、乗算)する。同相基準信号は、試験信号に対して実質的に同相である(または、試験信号が疑似乱数列を含む場合、それと相関する)。例えば、同相基準信号は、試験信号に対して−π/30〜π/30、−π/20〜π/20、−π/10〜π/10、またはこのような範囲内の任意の範囲の位相差を有してもよい。同相信号発生器112を使用して、同相基準信号を、試験信号と実質的に同相にしてもよい。同相信号発生器112は、例えば位相同期ループを含んでもよい。いくつかの実施形態では、しかしながら、f
1の値は十分に低くてもよく、使用位相同期器ではなく単純な導電線で十分であり得る。これらの実施形態のいくつかでは、試験回路104は、試験回路の内側を伝播する信号が軽微な相変化を呈するように、集中定数回路として振る舞ってもよい。試験回路104が必ず集中定数回路として振る舞うように、少なくともいくつかの実施形態では、f
1の値は、5KHzより低くなるように選択されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、1/f雑音などの低周波雑音との干渉を防止するために、試験回路104をより高い周波数で動作させることが望ましい場合がある。欠点は、信号が試験回路104の内側を伝播するにつれて、信号の位相が変化し得ることである。これらの実施形態では、同相信号発生器112は、試験信号と同相応答信号との間の望ましい位相関係を確立してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、混合器118は、応答信号および直交基準信号を受信および混合する。直交基準信号は、試験信号に対して実質的に直交するように(または、試験信号が疑似乱数列である場合、それに対して無相関になるように)構成される。例えば、直交基準信号は、絶対値で、試験信号に対してπ/2−π/30〜π/2+π/30、π/2−π/20〜π/2+π/20、π/2−π/10〜π/2+π/10、またはこのような範囲内の任意の範囲の位相差を有してもよい。直交信号発生器114は、例えば移相器を使用して、試験信号の位相を、他の可能な値のなかでも、π/2−π/30〜π/2+π/30、−(π/2−π/30)〜−(π/2+π/30)、π/2−π/20〜π/2+π/20、−(π/2−π/20)〜−(π/2+π/20)、π/2−π/10〜π/2+π/10、または−(π/2−π/10)〜−(π/2+π/10)だけシフトさせるように構成されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、応答信号および同相基準信号を混合して得られた信号(同相応答信号と呼ぶ)、ならびに応答信号および直交基準信号を混合して得られた信号(直交応答信号と呼ぶ)が、入力として応答分析器122に提供される。応答分析器122は、受信した信号がMEMS慣性センサ100の特性の確かなしるしとして使用されるべきか判定する。例えば、応答分析器122は、MEMS慣性センサ100の試験信号に対する応答が、周波数f
1におけるスプリアス信号または機械的刺激(例えば、雑音または他の種類の信号)の存在によって損なわれているか判定してもよい。MEMS慣性センサ100の試験信号に対する応答が損なわれていないと判定された場合、応答分析器122は、MEMS慣性センサ100の特性(複数可)を評価してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、直交応答信号は、応答信号が試験信号以外のスプリアス信号によって影響されているか判定するために使用されてもよい。試験信号と実質的に直交するので、直交応答信号の振幅は、試験信号が印加されたがシステム内にスプリアス信号が存在しない場合、軽微である。したがって、直交応答信号の振幅が著しい(例えば、特定の閾値より高い)場合、そのシステム内にスプリアス信号が存在する可能性が高い。同時に、試験信号と同相であるので、同相応答信号は、MEMS慣性センサの試験信号に対する応答を直接反映する。同相応答信号は、スプリアス信号の存在によっても影響され得る。したがって、直交応答信号を使用して、システムが実質的にスプリアス信号を不含であると判定された場合、同相応答信号は、MEMS慣性センサの特性(複数可)の尺度として使用されてもよい。例えば、同相応答信号は、MEMS慣性センサ100の加速度もしくは角運動に対する感度が許容可能な範囲内であるか評価するために、かつ/または試験の結果が使用されるべきか破棄されるべきか評価するために使用されてもよい。
【0031】
図1に示されていないが、試験回路104は、複数の信号発生器110を含んでもよく、各信号発生器によって生成される試験信号の基本周波数は、他の試験信号の基本周波数とは異なる。このようにして、MEMS慣性センサ100は、異なる周波数を有する複数の試験信号によって試験されてもよい。利点は、たとえ1つの試験信号が同じ周波数におけるスプリアス信号の存在によって損なわれていても、全ての試験信号の複数の周波数の全てにおいて環境内にスプリアス信号が存在する可能性は相当に低いことである。これらの実施形態のいくつかでは、試験回路104は、生成される試験信号のそれぞれについて混合器116および混合器118を含んでもよい。様々な周波数における同相および直交応答信号が、応答分析器122に提供されてもよい。応答分析器122は、それぞれの受信した周波数において、スプリアス信号の存在または不在を検出してもよい。著しいスプリアス信号が存在しないと応答分析器122が判定した周波数(複数可)は、対応する同相応答信号を使用してMEMS慣性センサを試験するために使用されてもよい。
【0032】
本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、MEMS慣性センサの動作を試験するための例示的なプロセス300を
図3に示す。いくつかの実施形態では、プロセス300は、
図1に関連して説明した例示的なシステム100によって遂行されてもよい。プロセス300は、MEMS慣性センサが配備された環境内で遂行されてもよい。例えば、プロセス300は、車両内または工業機械内に配備されたシステムによって遂行されてもよい。プロセス300は、行為302で開始され、MEMS慣性センサが、試験信号を使用して刺激される。試験信号は、(例えば、加速度および/または角速度によって)MEMS慣性センサを模擬するように、試験回路によって生成されてもよい。いくつかの実施形態では、
図1の信号発生器110が、行為302の試験信号を生成してもよい。
【0033】
行為304において、刺激に応答してMEMS慣性センサから応答信号が受信される。行為306において、同相応答信号が、応答信号および同相基準信号を使用して生成される。例えば、同相応答信号は、応答信号および同相基準信号を混合することによって生成されてもよい。同相基準信号は、試験信号と実質的に同相であってもよい。いくつかの実施形態では、
図1の混合器116が、行為306の同相応答信号を生成してもよい。
【0034】
行為308において、直交応答信号が、応答信号および直交基準信号を使用して生成される。例えば、直交応答信号は、応答信号および直交基準信号を混合することによって生成されてもよい。直交基準信号は、試験信号と実質的に直交してもよい。いくつかの実施形態では、
図1の混合器118が、行為306の直交応答信号を生成してもよい。
【0035】
行為310において、MEMS慣性センサの刺激に対する応答が、MEMS慣性センサの特性(複数可)の確かな尺度として使用されるべきか判定されてもよい。例えば、直交応答信号に基づいて、同相応答信号が、MEMS慣性センサの特性(複数可)を評価するための尺度として使用されるべきか判定されてもよい。事実上、行為310は、自己試験システム内にスプリアス刺激が存在するか示してもよい。以下でさらに論じるように、少なくともいくつかの実施形態では、この判定は、直交応答信号の振幅が閾値より高いか閾値より低いか評価することによって遂行されてもよい。いくつかの実施形態では、
図1の応答分析器122が、同相応答信号がMEMS慣性センサの特性(複数可)を評価するための尺度として使用されるべきか判定してもよい。
【0036】
同相応答信号がMEMS慣性センサの特性の尺度として使用されるべきではないと判定されると、プロセス300は、行為302〜310のサイクルを繰り返し続けてもよい。サイクルは、例えば、同相応答信号がMEMS慣性センサの特性(複数可)の尺度として使用されるべきであると判定されるまで、続いてもよい。任意選択で、行為311において、自己試験の結果が信じ難いことを示す出力信号が出力されてもよい。出力信号は、自己試験の結果が無視されるべきであることを示してもよい。
【0037】
同相応答信号がMEMS慣性センサの特性の尺度として使用されるべきであると判定されると、プロセス300は行為312に進み、MEMS慣性センサの特性(複数可)が評価される。評価され得るMEMS慣性センサの特性としては、加速度計の特定の方向もしくは特定の軸を中心とする加速度に対する感度、ジャイロスコープの特定の軸を中心とする角運動速度に対する感度、および/またはMEMS慣性センサの帯域もしくはダイナミックレンジが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、MEMS慣性センサの特性が、その特性の許容可能な最小値を表す閾値より大きいかが判定されてもよく、許容可能な最小値は、ユーザによって設定されてもよく、または文脈に応じてシステムによって自動的に設定されてもよい。他の実施形態では、MEMS慣性センサの特性を一組の閾値に比較してもよい。特性の値が閾値に対してどこに位置するかに応じて、システムは、MEMS慣性センサが所望の挙動から逸脱している程度をユーザに通知してもよい。
【0038】
MEMS慣性センサの特性が申し分ないものである、例えば閾値より高いと判定されると、プロセス300は、行為313に移行してもよく、または完了してもよい。行為313において、少なくとも行為312において評価された特性に関してMEMS慣性センサが適切に機能していることを示す信号が出力される。しかしながら、MEMS慣性センサの特性が不満足なものである、例えば閾値より低いと判定されると、プロセス300は行為314に移行してもよく、MEMS慣性センサが誤動作していることを示す通知信号が出力されてもよい(例えば、表示されてもよく、または他の方法でユーザに伝達されてもよい)。いくつかの実施形態では、プロセス300は、例えば0〜10の物差し(または他の任意の好適な物差し)で、MEMS慣性センサがその特性に関してどの程度誤動作しているかユーザに通知してもよい。これは、例えば、同相応答信号を一組の閾値に比較することによって遂行されてもよい。次いで、プロセス300は終了してもよく、または別のサイクルを遂行してもよい。
【0039】
プロセス300は、任意の好適な種類の試験信号を使用して遂行してもよい。いくつかの実施形態では、プロセス300は、異なる周波数の複数の試験信号を使用して遂行してもよい。全ての周波数が同時にスプリアス信号によって妨害される可能性は単一周波数スキームよりも低いので、このようにして、方法の信頼性は向上され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、応答分析器122は、直交応答信号の振幅を閾値に比較することによって、同相応答信号がMEMS慣性センサの特性(複数可)を評価するための確かな尺度として使用されるべきか判定してもよい。例えば、直交応答信号の振幅が閾値より小さい場合、応答分析器122は、試験信号(複数可)の周波数(複数可)に著しく妨害するスプリアス信号が存在しないと判定してもよい。ゆえに、この同相応答信号は、MEMS慣性センサの特性(複数可)を評価するための確かな尺度として使用されるべきである。他方において、直交信号の振幅が閾値より大きい場合、応答分析器122は、スプリアス信号が試験回路104の動作を妨害していると、かつこの同相応答信号はMEMS慣性センサの特性(複数可)を確実に評価するために使用されるべきではないと判定してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、MEMS慣性センサの特性(複数可)を評価するために同相応答を信頼して使用することができると判定されるとき、この評価は、同相応答信号の振幅を閾値に比較することによって遂行されてもよい。この閾値は、評価されているMEMS慣性センサの特性の許容可能な最小値を表してもよい。したがって、同相慣性センサの振幅が閾値より小さい場合、応答分析器122は、MEMS慣性センサが誤動作していると判定してもよく、かつ少なくともいくつかの実施形態では、ユーザに通知してもよい。他方において、同相慣性センサの振幅が閾値より大きいとき、応答分析器122は、MEMS慣性センサがその特性に関して適切に機能していると判定してもよい。いくつかの実施形態では、同相応答信号の振幅を複数の閾値と比較してもよい。結果は、MEMS慣性センサが誤動作している程度を示してもよい。
【0042】
図4は、本明細書に記載の技術のいくつかの実施形態による、応答分析器122の例示的な実装を示す。この例では、応答分析器122は、比較器402および404、ならびに論理ユニット410を含む。比較器404は入力として直交応答信号および閾値t1を受信し、直交応答信号の振幅と閾値との比較に基づいて出力を生成してもよい。比較器404の出力は、例えば、直交応答信号の振幅が閾値t1より大きいか小さいかに依存してもよい。いくつかの実施形態では、比較器404の出力が、直交応答信号の振幅が閾値t1より大きいことを示すと、論理ユニット410は、試験回路104によって生成された結果が試験信号の周波数において損なわれていると判定してもよい。
【0043】
比較器402は入力として同相応答信号および閾値t2を受信し、同相応答信号の振幅と閾値t2との比較に基づいて出力を生成してもよい。比較器402の出力は、例えば、同相応答信号の振幅が閾値t2より大きいか小さいかに依存してもよい。いくつかの実施形態では、比較器402の出力が、同相応答信号の振幅が閾値t2より小さいことを示すと、論理ユニット410は、MEMS慣性センサが誤動作していると判定してもよい。
【0044】
論理ユニット410が比較器402および404の出力を処理し得る様式を
図5の表に描く。示すように、直交応答信号の振幅が閾値t1より大きいとき(同相応答信号の振幅が閾値t2より大きいか小さいかにかかわらず)、論理ユニット410は、対応する試験信号の周波数において、試験がスプリアス信号の存在によって損なわれていると判定するようにプログラムされてもよい。
【0045】
論理ユニット410は、直交応答信号の振幅が閾値t1より小さく、かつ同相応答信号の振幅が閾値t2より大きい場合、MEMS慣性センサは適切に機能していると判定するようにさらにプログラムされてもよい。他方において、論理ユニット410は、直交応答信号の振幅が閾値t1より小さく、かつ同相応答信号の振幅が閾値t2より小さい場合、MEMS慣性センサは誤動作していると判定するようにプログラムされてもよい。
【0046】
本明細書に記載の技術の態様は1つ以上の利点を提供し得、そのいくつかはすでに上で説明されている。このような利点のいくつかの例をこれより説明する。全ての態様および実施形態が、これより説明する利点の全てを必ずしも提供するわけではないことが理解されるべきである。さらに、本明細書に記載の技術の態様は、これより説明する利点のほか、追加的な利点を提供し得ることが理解されるべきである。
【0047】
本明細書に記載の技術の態様は、MEMS慣性センサの自己試験を行う方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態は、MEMS慣性センサが適切に機能しているか誤動作しているかを、またはいくつかの実施形態ではMEMS慣性センサが誤動作している程度を、評価するように構成される。本明細書に記載の技術の他の態様は、自己試験の結果が例えばスプリアス信号の存在のため無視されるべきか、または信頼されるべきかのしるしを提供する。
【符号の説明】
【0048】
100 慣性センサ
101 静電力トランスデューサ
104 試験回路
110 信号発生器
111 加算器
112 同相信号発生器
114 直交信号発生器
116 混合器
118 混合器
121 ノッチフィルタ
122 応答分析器
200 ジャイロスコープ
202 プルーフマス
204 センサ
210 固定フレーム
212 カプラ
214 アンカ
220 固定電極
222 自由端ビーム
240 加速度計
242 基板
250 プルーフマス
252 アンカ
254 電極
402 比較器
404 比較器
410 論理ユニット