(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835945
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】バイオニック構造を有するサボ
(51)【国際特許分類】
F42B 14/06 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
F42B14/06
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-500872(P2019-500872)
(86)(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公表番号】特表2019-520545(P2019-520545A)
(43)【公表日】2019年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2017064074
(87)【国際公開番号】WO2018010900
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年1月10日
(31)【優先権主張番号】102016112666.7
(32)【優先日】2016年7月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505190046
【氏名又は名称】ラインメタル バッフェ ムニツィオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブラッヘ
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ ベルンゲン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゴビン
(72)【発明者】
【氏名】カトリン リンケ
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03430572(US,A)
【文献】
西独国特許出願公開第03034471(DE,A)
【文献】
独国特許出願公開第102009049440(DE,A1)
【文献】
特開平07−159098(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0000390(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第04034062(DE,A1)
【文献】
国際公開第2016/057707(WO,A2)
【文献】
独国特許出願公開第102012022894(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブキャリバー砲弾(3)用のサボ(2)の製造方法において、
バイオニック構造(5、6)がサボ(2)内に設けられており、前記バイオニック構造が、前記サボ(2)の製造中に定められた方法及び特別に管理された方法での3D製造方法によって作られており、
前記3D製造方法は3Dプリント方法又はSLS方式3Dプリント方法であることを特徴とするサボ(2)の製造方法。
【請求項2】
前記バイオニック構造(5、6)が、ハニカム、ステイ、ボイド、球状の中空室及びそれらの組合せであることを特徴とする請求項1に記載のサボ(2)の製造方法。
【請求項3】
前記サボ(2)が、少なくとも2つのサボセグメント(2.1、2.2)からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のサボ(2)の製造方法。
【請求項4】
前記バイオニック構造(5、6)の大きさ、形状及び/又は体積があらかじめ定められることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のサボ(2)の製造方法。
【請求項5】
前記バイオニック構造(5、6)の数があらかじめ定められることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のサボ(2)の製造方法。
【請求項6】
前記サボ(2)の材料が、軽金属、金属及び/又はプラスチックであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のサボ(2)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小口径領域、中口径領域及び大口径領域を有するサブキャリバー(sub-caliber)運動エネルギー弾のサボ(sabot)の製造に関する。本発明は、たとえばサボ内の球形の中空室によって、重量を削減されたバイオニックサボを考慮するものである。
【背景技術】
【0002】
高い貫通出力を得るために、いわゆるKE(運動エネルギー)弾薬が使用される。弾薬は、通常、好ましくは高い強度と剛性とを有する重金属からなる、金属のペネトレータ(運動エネルギー弾薬)からなる。ペネトレータは、釘又は矢の形に似た形状を有している。そのペネトレータの口径は、それを発射する砲身よりも小さい(サブキャリバー)。砲身から発射することができるようにするために、サボが必要とされ、それがペネトレータを包囲し、かつ砲身に対して口径を保持できるようにする。サボは、砲身へ向かって射出する間粉末ガスに対して密閉する課題を引き受ける。サボの投影された面にわたって、粉末の燃焼によって生じるガス圧を用いて力がもたらされ、その力がサボを共通に加速する。
【0003】
サボの課題は、砲身を通過する間ペネトレータを連動させ、加速をもたらし、砲身に対して密閉し、ペネトレータを案内し、かつ砲口を出た後にペネトレータを障害なしに解放することである。
【0004】
キャリバーに応じて、サボは、プラスチック、金属又は両者を組み合わせて製造される。それぞれサボが重くなるほど、それだけ加速及びそれに伴って得られる砲口速度が減少する。したがってサボが軽くなるほど、それだけ砲口速度が高くなり、かつそれだけ達成可能な戦闘距離が長くなる。戦闘距離が等しければ、ペネトレータのより大きい進入深さ/貫通出力を得ることができる。
【0005】
実際においては、戦車砲弾のためにサボ用の材料として高強度アルミニウム又は充填プラスチック(packed plastic)が使用される。さらに重量削減するために、孔、スリットなどが製造される。
【0006】
特許文献1からは、サブキャリバー運動エネルギー砲弾が知られており、そのサボは繊維強化されたプラスチックからなる。サボ底には開口部が設けられている。繊維強化された材料は、炭素繊維強化されたプラスチック又は炭素繊維強化された炭素である。プラスチック用の他の強化繊維は、アラミド繊維又はポリエチレン繊維とすることができる。アルミニウム、マグネシウム又はチタンのような金属のための強化繊維は、特にAl
2O
3繊維又はSiC繊維である。
【0007】
サブキャリバー運動エネルギー砲弾用のサボは、特許文献2に開示されている。サボの材料は、プレストレス(prestress)を有するセラミック又はガラスでる。プレストレスを有するガラス又は、しかるべき挙動を有する他のセラミック物質は、きわめて高い機械的強度を有している。サボの分解は、サボの内壁に対して投げつけられる質量によって導入される。質量自体は中空室内に収容されている。
【0008】
分解可能な砲弾ガイドを有するサブキャリバー運動エネルギー砲弾は、特許文献3に開示されている。圧縮強度と引張強度を維持しながらより少ない死重量(low dead weight)を得るために、砲弾ガイドはプラスチック結合材料又はガラス結合材料を有する中空ガラス球からなるプレス部品として製造される。代替的にガラス発砲体又は統語的な発砲体も挙げられる。
【0009】
特許文献4に示すサボは、材料発砲体からなる完全な、しかし少なくとも部分的な構造を特徴としている。材料発砲体は、アルミニウム発砲体、亜鉛発砲体、フォーミナルのような、金属発砲体とすることができ、その場合に材料発砲体は同一又は他の材料、強化された繊維材料及び/又は他の材料からなるコアの層を有するサンドイッチ構成部品として使用することができる。
【0010】
プラスチック/繊維複合体の場合には、時効、粉末との化学的融和性、UV照射に対する抵抗力のなさなどが、製造における高いコストと結びつく欠点としてあげられる。弾の取り扱い(落下、弾薬容器内への移動の間の振動)において要請される鈍感性が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第19625273(A1)号明細書
【特許文献2】独国特許第2924041(C2)号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第3034471(A1)号明細書
【特許文献4】特国特許出願公開第102009049440(A1)号明細書
【発明の概要】
【0012】
本発明の課題は、最大砲口速度を維持しながら充分な環境抵抗力を有する、低コストで製造可能な、導入されるシステムに対して軽減された重量のサボ部分を保証できることである。
【0013】
この課題は請求項1の特徴によって解決される。
【0014】
本発明は、サボもしくはサボ部分をバイオニック構造を用いて重量を削減して製造するという考えに基づいており、この構造がサボもしくはサボ部分の充分な安定性などを保証する。その場合にこの構造は、製造方法において初めて調節される。すなわち製造方法によって、バイオニック構造(たとえばハニカム、ステイ、ボイド、球状の中空室及びそれらの組合せ)は、それらが製造の際に放置されることによって製造される。
【0015】
この種の方法はたとえば、たとえばプラスチックからなる3Dプリント方法あるいはレーザー焼結方法とすることができる。プラスチック−レーザー焼結を用いて、プラスチックからなるバイオニック構造を有するサボ又はサボ部分もしくはサボセグメントを製造することができる。金属レーザー焼結は、たとえばアルミニウムのような、金属からなるバイオニック構造を有するサボ又はサボ部分もしくはサボセグメントの製造を可能にする。その場合に範囲は、軽金属から超合金までにいたる。この考えからは3Dコクーナー(3D cocooners)による製造も、同様に排除されないが、この方法はかなり煩雑に思われる。その場合にハンドリングスピンノズルからバイオニック構造が製造される。実際にそのためにグラス繊維が、同時にUV硬化樹脂でラミネートしながら複雑な構造になるように接着される。
【0016】
サボもしくはサボセグメントは、バイオニック構造によって、重量を最大に削減しながらパイプ通過のために必要な強度と剛性を得る。
【0017】
この種の方法の利点は、中空室などを定めることができるように製造することにある。中空室の大きさと形状(容積)に直接影響を与えることができる(3Dにおけるプログラミング)。サボもしくはサボセグメント(サボ部分)内部の数もしくは量と分配にも、直接影響を与えることが可能である。
【0018】
提案されるサボ内にバイオニック構造が設けられており、その構造はサボを製造する際に3D製造方法によってサボの内部に定められた大きさ、形状及び/又は容積で、かつ目的に合わせて製造もしくは初めて提供される。その場合にサボ内部の場所的な埋め込み及びバイオニック構造の数、すなわちサボ内部の場所的及び数的な埋め込みが、目的に合わせられる。
【0019】
図面を有する実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】サボ2とペネトレータ3を有する弾薬1を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
サボ2は、ペネトレータ3を包囲し、かつ少なくとも形状結合領域4内でペネトレータ3と結合可能である。形状結合領域4は、ねじを有することができる(詳細に図示せず)。サボ2は、複数のセグメント2.1、2.2からなることができ、それらはシールバンド及び/又はガイドバンド(詳しく図示せず)を介してまとめることができる。
【0022】
重量を削減するために、セグメント化されたサボ2.1、2.2はバイオニック構造5を有している。バイオニック構造5として、ハニカム、ステイ、ボイド、中空室及びそれらの組合せが定められる。その場合に中空室6は、球状であっても、角張ったりしていてもよい。
【0023】
サボ2もしくはサボセグメント2.1、2.2は、3Dプリントで、又はSLS方法(レーザー焼結)で製造することができる。そのためにサボセグメント2.1、2.2の幾何学的データが3次元で存在し、かつ層データとして格納される。
【0024】
さらに、金属レーザー焼結する場合に、幾何学的データから鋳造モデル(詳しく図示せず)が製造される。サボセグメント2.1、2.2の存在するCADデータ(たとえばSTLフォーマット)から、その後サボセグメント2.1、2.2が層から層へ層構造で構築される。これらの層内に領域が切り欠かれるので、その後サボセグメント2.1、2.2内にバイオニック構造5、たとえば球状の中空室6が、形状、大きさ及び容積において定められたように、製造される。
【0025】
3Dプリントにおいては、鋳造型なしでサボセグメント2.1、2.2の層構築が層状に行われる。そのためにサボセグメント2.1、2.2のバイオニック構造5、6が3次元のデータで存在し、かつそれが層から層へ構築される。