(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835958
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20210222BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
G01N1/00 101S
G01N1/22 G
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-517231(P2019-517231)
(86)(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公表番号】特表2019-533150(P2019-533150A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】EP2017074500
(87)【国際公開番号】WO2018072977
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年3月29日
(31)【優先権主張番号】102016119713.0
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511236970
【氏名又は名称】エイヴィエル エミッション テスト システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AVL Emission Test Systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アヒム ディコウ
【審査官】
島田 保
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭52−135191(JP,U)
【文献】
特開2005−156306(JP,A)
【文献】
特開平08−226878(JP,A)
【文献】
特開昭62−237341(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0005607(US,A1)
【文献】
中国実用新案第203798572(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット(10)用のガス供給ユニットであって、
試料ガスを分析するための測定装置(18)と、
校正ガス導管(30;32;34)と、パージガス導管(26)と、試料ガス導管(13)とを備えており、前記校正ガス導管(30;32;34)、前記パージガス導管(26)および前記試料ガス導管(13)は、共通の接続導管(20)に開口しており、該接続導管(20)を介して、前記測定装置(18)に対する流体接続を形成することができるようになっており、
前記校正ガス導管(30;32;34)、前記パージガス導管(26)および前記試料ガス導管(13)内には遮断弁(24,28,36,38,40)が設けられており、これらの遮断弁(24,28,36,38,40)を介して、試料ガス流、校正ガス流およびパージガス流を選択的に遮断または解放することができるようになっており、
排ガス源(12)から前記試料ガス流を吐出するためのポンプ(16)が設けられている、ガス供給ユニットにおいて、
前記試料ガス導管(13)の開口部(23)は、前記測定装置(18)と前記校正ガス導管(30;32;34)との間ならびに前記測定装置(18)と前記パージガス導管(26)との間でそれぞれ前記接続導管(20)内に配置されており、該接続導管(20)の、前記測定装置(18)とは反対の側の端部に流出ノズル(42)が配置されており、かつ前記接続導管(20)から、流出ノズル(50)および遮断弁(52)が配置された流出導管(48)が分岐していることを特徴とする、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項2】
前記流出導管(48)は、前記試料ガス導管(13)の開口部(23)と前記測定装置(18)との間で、前記接続導管(20)から分岐している、請求項1記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項3】
前記流出導管(48)内の前記遮断弁(52)は、前記校正ガス導管(30,32,34)の前記遮断弁(36,38,40)のうちの1つが開かれているときには開かれており、前記試料ガス導管(13)の前記遮断弁(24)が開かれているときには閉じられている、請求項1または2記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項4】
前記パージガス導管(26)は、各校正ガス導管(30;32;34)と、前記試料ガス導管(13)の前記開口部(23)との間で、前記接続導管(20)に開口している、請求項1から3までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項5】
当該ガス供給ユニットは、複数の校正ガス導管(30,32,34)を有しており、これらの校正ガス導管(30,32,34)内には、測定されるべきガス成分の濃度がそれぞれ異なる校正ガスを導入することができ、前記校正ガス導管(30,32,34)は、測定されるべきガス成分の濃度が高まるにつれて、前記測定装置(18)からの距離が増大するように前記接続導管(20)に開口している、請求項1から4までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項6】
前記接続導管(20)内で前記校正ガス導管(30;32;34)および前記パージガス導管(26)の下流側には、圧力調整弁(44)が配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項7】
前記接続導管(20)内に、遮断弁(46)が配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項8】
前記接続導管(20)内で前記遮断弁(46)は、圧力調整弁(44)の下流側でありかつ前記試料ガス導管(13)の前記開口部(23)の上流側に配置されている、請求項7記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項9】
前記排ガス分析ユニット(10)は、複数の測定装置(18)を有しており、これらの測定装置(18)はそれぞれ、試料ガス導管(13)と接続導管(20)とを介して主試料ガス導管(14)に流体接続されており、前記試料ガス導管(13)内の圧力は、前記主試料ガス導管(14)の端部に設けられた背圧調整器(54)を介して調整可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項10】
前記試料ガス流を吐出するための前記ポンプ(16)は、前記測定装置(18)の上流側に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項11】
前記ポンプ(16)は、2.5〜3.0l/分の試料ガス流を吐出する、請求項1から10までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【請求項12】
前記試料ガス導管(13)および前記接続導管(20)の内径は、約2〜4mmである、請求項1から11までのいずれか1項記載の、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニットであって、試料ガスを分析するための測定装置と、校正ガス導管と、パージガス導管と、試料ガス導管とを備えており、校正ガス導管、パージガス導管および試料ガス導管は、共通の接続導管に開口しており、接続導管を介して、測定装置に対する流体接続を形成することができるようになっており、校正ガス導管、パージガス導管および試料ガス導管内には遮断弁が設けられており、これらの遮断弁を介して、試料ガス流、校正ガス流およびパージガス流を選択的に遮断または解放することができるようになっており、排ガス源から試料ガス流を吐出するためのポンプが設けられている、ガス供給ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス分析ユニットは、例えば自動車のローラ型シャシダイナモメータに用いられる。この場合に用いられる分析キャビネットには、一方では制御装置と、例えばCVS(constant volume sample)設備として形成されていてよく、また未希釈の排ガスの分析に用いることもできる排ガス測定設備の電子機器とが含まれており、かつ他方では、例えば炭化水素を測定するためまたはガスクロマトグラフィを介してメタン量を測定するための水素炎イオン化検出器型分析装置、排ガス中の窒素酸化物量を測定するための化学ルミネセンス検出器型分析装置、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素または炭化水素化合物等の様々な活性成分を測定するための赤外線検出器型分析装置等の、排ガスの分析に必要な、排ガス中の有害物質量を測定するための複数の測定装置が含まれている。これに対応して、配電盤キャビネットは、対応するカップリングを介して配電盤キャビネットに接続される複数の導管を介して、排ガス採取設備の試料採取プローブに接続されている。
【0003】
各測定装置には、複数のガス供給ユニットを介して供給が行われ、これらのガス供給ユニットにより、分析されるべき試料ガス、校正ガスまたはパージガスが測定装置に供給される。
【0004】
上記のガス供給ユニットにおける流量は、一般に約10〜12l/分である。ただし最新の内燃機関では、改良されたよりクリーンな燃焼に基づき、排ガス量は減り続けている。さらに、実際に放出された排ガスの組成のみが測定されるのではなく、例えば排ガス戻し案内導管を介して戻し案内された排ガスの組成も分析されることが望ましい。しかしながら、まさにこの戻し案内された排ガスは常に後続の燃焼過程にも影響を及ぼすものであり、採取は極めて少量の流量でしか行うことができない。なぜなら、さもなければエンジンに対する影響が大きくなり、これにより燃焼データが最早、通常運転の燃焼データに相当しなくなると考えられるからである。同時に、この排ガスの組成に関する情報が僅かに、例えば約1秒遅れた場合には、分析ユニット用に十分な流量を得るために、極度に大幅に希釈して作業する必要があると考えられる。しかしながら、これは極めて不正確な測定値につながる。なぜなら、このように大幅に希釈した場合には、既存の測定装置の測定精度の限界に達してしまうからである。その結果、その前にガス供給ユニット内に吐出されたガスによって汚染されると、測定結果の歪曲が大幅に強まることにもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、少ない流量を有しているにもかかわらず、測定装置に測定ガスを可能な限り短時間で供給して、測定装置が正確な測定値を得られるようにし、必然的に、内燃機関に対する影響が最小になる、内燃機関の排ガス測定用のガス供給ユニットを提供するという課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項1記載の特徴を有する、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニットによって解決される。
【0007】
試料ガス導管が、測定装置と校正ガス導管との間ならびに測定装置とパージガス導管との間でそれぞれ接続導管に開口しており、接続導管の、測定装置とは反対の側の端部に流出ノズルが配置されており、かつ接続導管から、流出ノズルおよび遮断弁が配置された流出導管が分岐していることにより、測定開始時に、先行測定のパージガス、校正ガスまたは試料ガスで満たされた極少量の体積だけを、測定されるべき試料ガス流が測定装置に到達するまで押し退ければ済む、ということが達成される。また、測定の歪曲も大幅に減少される。なぜなら、試料ガス流がパージガスまたは校正ガスの接続導管を通過して流れる必要が一切ないからである。これは、極めて迅速で正しい測定結果につながると共に、存在する死容積が僅かであることに基づき、流量の減少を可能にする。さらに、試料ガス流がパージガス・校正ガス接続部に向かって接続導管内へ吐出され、そこから測定装置に向かって逆流し、これにより測定結果にネガティブな影響を及ぼすという恐れが、接続導管の、測定装置とは反対の側の端部に配置された流出ノズルによって防止される。パージガスまたは校正ガスで満たされた区間に流入した試料ガスは、代わりに、ノズルを介して外部へ流出し、これにより、校正ガスおよびパージガスを導管区間から除去する。同時に、流出導管内の流出ノズルと遮断弁とにより、その前に導管内に存在しているガスを接続導管から迅速に除去することが達成され、このガスは、異なるガス流間での切替時に弁が開かれると、ノズルを介して流出することができるようになっているので、測定装置内に未だ存在している各残留ガスだけをシステム全体から吐出すれば済む。追加的に、測定装置に設定されたガス流よりも多くのガス流によるパージが行われてもよい。
【0008】
好適には、流出導管は、試料ガス導管の開口部と測定装置との間で、接続導管から分岐している。これに対応して、接続導管内に存在しているパージガスまたは校正ガスは、試料ガスにより導管から押し退けられ、測定装置を通流せずに済む。流量制限器を通って測定装置へ流れることができる量よりも多量の試料ガスが吐出されると、最短時間で導管と測定装置自体とから残留ガスが除去され、その結果、極めて迅速に確実な測定結果が得られることになる。
【0009】
さらに、流出導管内の遮断弁は、各校正ガス導管の遮断弁のうちの1つが開かれているときには開かれており、試料ガス導管の遮断弁が開かれているときには閉じられていると、有利である。これにより、測定装置をパージ後に極めて迅速に使用することができる。
【0010】
1つの有利な実施形態では、パージガス導管は、各校正ガス導管と、試料ガス導管の開口部との間で、接続導管に開口している。これにより、パージガスの導入時に、校正ガス導管から残留ガスが連行される恐れは一切ない。代わりに、校正ガスは。パージガス流により接続導管から完全に除去される。
【0011】
ガス供給ユニットが複数の校正ガス導管を有していることも有利であり、これらの校正ガス導管内には、測定されるべきガス成分の濃度がそれぞれ異なる校正ガスを導入することができる。この場合、各校正ガス導管は、測定されるべきガス成分の濃度が高まるにつれて、測定装置からの距離が増大するように接続導管に開口している。このことも、接続導管から、その前に使用された校正ガスが一度除去された後は、測定装置に、より高濃度の校正ガスによる汚染が生じることは一切ない、ということに役立つ。なぜなら、より少なく調量された校正ガスが、より多く調量された校正ガスの導管の傍らを通過して案内されることがないからである。代わりに、このより多く調量された校正ガスは、反対側の接続導管の端部において、流出ノズルを介して完全に排出することができる。
【0012】
好適には、接続導管内で校正ガス導管およびパージガス導管の下流側には、圧力調整弁が配置されている。これに対応して、この弁により、それぞれ異なる校正ガスの圧力も、パージガスの圧力も、接続導管内で調整することができる。
【0013】
1つの有利な構成では、接続導管内に遮断弁が配置されている。これに対応して、接続導管の望ましくない通流を中断することができる。この場合、例えば遮断弁は、試料ガスの分析時には閉じられており、校正およびパージ時には開かれている。これに対応して、導管からの試料ガスの除去が迅速に行われるので、短時間でパージおよび校正を実施することができる。排ガス分析ユニット内の試料ガス流が少量であることに基づき、測定装置の上流側で試料ガスが追加的に流出することが防がれ、ひいては測定装置に対する分析用試料ガスの十分な供給が保証されるようになっている。
【0014】
1つのさらに進んだ実施形態では、接続導管内で遮断弁は、圧力調整弁の下流側でありかつ試料ガス導管の開口部の上流側に配置されている。これにより、試料ガスの測定中は、接続導管をその他の導管の方向において閉じることができるので、試料ガスが追加的な容積を通流することはない。これに対応して、少量の排ガスでも最短時間で正確な測定結果が得られる。
【0015】
本発明の1つの別の有利な構成では、排ガス分析ユニットは複数の測定装置を有しており、これらの測定装置はそれぞれ、試料ガス導管と接続導管とを介して主試料ガス導管に流体接続されており、この場合、試料ガス導管内の圧力は、主試料ガス導管の端部に設けられた背圧調整器を介して調整可能である。つまり、分析ユニットにおいて複数の測定装置について試料ガスの圧力を測定する際には、ただ1つの圧力調整器のみを介して調整することができるようになっており、これにより、構成部品が節減されることになる。
【0016】
さらに、試料ガス流を吐出するためのポンプが、好適には測定装置の上流側に配置されている。このことは、排ガス分析ユニット内での少量の漏れによる試料ガス流の汚染を防いでいる。なぜなら、ガスは吸い込まれるのではなく、設備により吐出されるからである。これにより、前記のような外部からの流入を確実に防ぎ、ノズルを介したガス流の流出を可能にする過剰圧力が、設備内に生じることになる。
【0017】
有利には、このポンプは2.5〜3.0l/分の試料ガス流を吐出するので、比較的小型のダイヤフラムポンプを使用することができる。ガス採取量がこのように少量である場合には、例えば排ガス戻し案内通路からの排ガスを、試験されるべきエンジンの運転状態に対する影響を懸念すること無く分析することもできる。
【0018】
このように少ない流量を実現し、それにもかかわらず導管内での十分な速度を保証するために、接続導管および試料ガス導管の内径は、約2〜4mmである。
【0019】
つまり、外部からの汚染、またはパージガスまたは校正ガスによる汚染による測定値の歪曲が防止されることにより、極少量の流量でも正確な測定値が極めて短い応答時間で達成される、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用のガス供給ユニットが提供される。追加的に、試料採取による、内燃機関への影響が排除される。
【0020】
以下に、内燃機関の排ガスを測定する排ガス分析ユニット用の、本発明によるガス供給ユニットの1つの実施例を図示して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】排ガス分析ユニットの、本発明によるガス供給ユニットの概略的なフロー回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
排ガス分析ユニット10には、例えば自動車内燃機関等の排ガス源12から排ガスが供給される。この排ガスは、使用される設備に応じて希釈されて、または未希釈で、分析ユニット10に供給される。このために、試料ガスが、採取導管または試料ガスバッグから直接に、本実施例では試料ガスを主試料ガス導管14内へ吐出するポンプ16により主試料ガス導管14内へ吐出され、これにより、主試料ガス導管14および後続の試料ガス導管13での漏れに基づく試料ガスの汚染を排除することができるようになっている。
【0023】
主試料ガス導管14は複数の異なる分岐部15を有しており、これらの分岐部15から試料ガス流は、試料ガス導管13を介して、一般に配電盤キャビネット内に配置された複数の様々な測定装置18に吐出されてよい。これらの測定装置は例えば、炭化水素を測定するための水素炎イオン化検出器型分析装置、排ガス中の窒素酸化物量を測定するための化学ルミネセンス検出器型分析装置、または一酸化炭素、二酸化炭素もしくは炭化水素化合物等の様々な活性成分を測定するための赤外線検出器型分析装置であり、それぞれ専用の接続導管20を介して、試料ガスまたはパージガスまたは1種もしくは複数種の校正ガスが供給される。測定装置18に、それぞれ正しい量の測定ガスを供給するために、測定装置18の上流側には、ガス流を制限する絞りまたは毛細管22が形成されている。
【0024】
分岐部15の下流側に位置する試料ガス導管13の区間には、遮断弁24が配置されており、試料ガス導管13は、遮断弁24を介して、接続導管20に対するその開口部23の上流側で遮断可能である。
【0025】
試料ガス導管13の開口部23の上流側では、パージガス導管26が接続導管20に開口しており、パージガス導管26を介してパージガス、例えば窒素が測定装置18に向かって吐出されてよい。このパージガス導管26内にも、パージガス導管26を開閉するための遮断弁28が位置している。パージガス導管26の上流側では、本実施例では3つの校正ガス導管30,32,34が接続導管20に開口しており、この場合、接続導管20に対する各校正ガス導管30,32,34の開口部の、測定装置18までの距離は、校正ガスの濃度が高くなるにつれて増大している。この場合、濃度は例えば測定装置18からの距離が増大するにつれて、10のべき乗で高くなっている。全ての校正ガス導管30,32,34内にもやはり遮断弁36,38,40が位置しており、これらの遮断弁36,38,40を介して、各校正ガス流を解放または中断することができるようになっている。
【0026】
接続導管20の、測定装置18とは反対の側の端部41には流出ノズル42が配置されており、流出ノズル42を介して、接続導管20内に存在している各ガスが、別のガスの吐出時に接続導管20から吐出され、これにより、測定装置18に向かって逆流しないようになっている。つまり、例えば校正ガス導管32から校正ガスを吐出した後に校正ガス導管30から校正ガスを吐出した場合、校正ガス導管32または上流側の接続導管20の区間から校正ガスが測定装置18に向かって吐出されることは一切ないことが保証される。これは、校正時間の大幅に延長をもたらす。なぜなら、導管20,26,30,32,34から残留ガスが完全に除去された状態が、大幅に長く持続すると考えられるからである。
【0027】
校正ガスおよびパージガスの圧力調整用に、接続導管20内には、試料ガス導管13の、接続導管20に対する開口部23の上流側に、圧力調整弁44と遮断弁46とが配置されており、遮断弁46は試料ガスの分析時には閉じられ、これにより、試料ガス流は校正ガス導管30,32,34に向かって流れることはできず、ひいては試料ガスにより汚染されないようになっている。
【0028】
このような汚染は、遮断弁46の下流側で接続導管20から流出導管48が分岐しており、流出導管48内には流出ノズル50と時間制御式の遮断弁52とが配置されており、パージガスまたは校正ガスが吐出されると、その前に接続導管20内に存在していたガス、特に試料ガスを、流出ノズル50と時間制御式の遮断弁52とを介して接続導管20から吐出できようになっていることによっても、防止される。遮断弁52は、パージ過程中または校正過程中は開かれており、これにより、各ガスをより大量に、接続導管20内へ吐出することができる。この場合、接続導管20は最短時間で、そこに未だ存在している残留ガス量を排出することができ、残留ガス量は、流出ノズル50を介して排出することができるようになっている。排ガス分析モードに切り替えられると直ちに接続導管内の遮断弁46が切り替わることにより、接続導管20の残りの区間と測定装置18とから、そこに存在しているガスを除去するためには、少量の試料ガスで足りる。これに対応して、流出導管48内の遮断弁52は、校正またはパージ終了後に流出導管48の横断面を閉じ、これにより、測定装置18に十分な試料ガスを供給するためには少量の試料ガスで足りるようになっている。
【0029】
この場合、試料ガスの圧力は、主試料ガス導管14の端部において、主試料ガス導管14内の、測定装置18に通じる分岐部15の下流側に配置された、背圧調整器54により調整される。
【0030】
試料ガス導管は約2〜4mmの直径を有しているに過ぎず、試料ガス導管を約2.5〜3l/分の体積流量が通流するに過ぎない。これは、流出ノズル42,50および遮断弁24,46,52の特別な配置に基づき達成され、流出ノズル42,50および遮断弁24,46,52を介して、少量の体積流量であるにもかかわらず極めて短時間で、その前に吐出された既存のガス体積を排気することができるようになっている。この少量の体積流量もやはり、エンジンの燃焼過程に対する影響を懸念すること無しに、排ガス戻し案内領域等の、極めて少量の排ガス量が発生する領域でも排ガス測定を可能にする。通流可能なデッドスペースの回避に基づく完全かつ確実な排気により、少量にもかかわらず、測定結果は高精度である。
【0031】
本発明の独立請求項の保護範囲が、説明した実施例に限定されないことは明白である。本発明は、様々な排ガス測定設備に利用可能である。また、圧力調整は別様に行われてもよいし、または多少、校正ガスが利用されてもよい。