(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835959
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】管状構造内の器具の位置を決定するための位置決定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20210215BHJP
【FI】
A61B34/20
【請求項の数】19
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-519994(P2019-519994)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(65)【公表番号】特表2019-533503(P2019-533503A)
(43)【公表日】2019年11月21日
(86)【国際出願番号】EP2017076101
(87)【国際公開番号】WO2018069462
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2019年6月10日
(31)【優先権主張番号】102016119579.0
(32)【優先日】2016年10月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595014653
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツール フエルデルング デア アンゲヴァンテン フォルシュング エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ハーン、ホルシュト
(72)【発明者】
【氏名】ペーツ、トルベン
【審査官】
高松 大
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−502412(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/191262(WO,A2)
【文献】
特表2016−523596(JP,A)
【文献】
特表2017−502728(JP,A)
【文献】
特開2013−150650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状構造内の器具の位置を決定するための位置決定装置であって、位置決定装置(5)は以下の要素:
− 管状構造に沿ったいくつかの第一の位置における管状構造の第一の曲率を示す第一の曲率値を提供するための第一の曲率値提供ユニット(6)、
− 器具(4)に沿ったいくつかの第二の位置における器具(4)の第二の曲率を示す第二の曲率値を提供するための第二の曲率値提供ユニット(7)、
− 第一および第二の曲率値に基づいて管状構造内の器具(4)の位置を決定する、位置決定ユニット(8)、
を有し、
前記位置決定ユニット(8)は以下のように適合されている:
a)第一および第二の曲率値に基づいて、それぞれの器具(4)の管状構造内におけるいくつかの候補位置について、それぞれの候補位置に器具(4)が配置される確からしさを示す位置値を決定し、
b)候補位置のうち位置値が最大である位置をもって、管状構造内の位置として決定する。
【請求項2】
請求項1記載の位置決定装置であって、各候補位置は、どの第一位置がどの第二位置と一致するかを定め、位置決定ユニット(8)は各候補位置について、一致する第一位置と第二位置における相互間の曲率の偏差にもとづいて位置値を決定するように適合されている。
【請求項3】
請求項2に記載の位置決定装置であって、位置決定ユニット(8)は、前記偏差を重み付けし、重み付けされた偏差にもとづいて各候補位置について位置値を決定するよう適合されている。
【請求項4】
請求項3に記載の位置決定装置であって、前記位置決定ユニット(8)は、前記偏差の重み付けは時間的に変化する重みを使用するよう適合されている。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載された位置決定装置であって、前記管状構造は、前記管状構造に沿って異なる経路が存在する分岐構造であり、ここで位置決定ユニット(8)は以下のように適合されている:
− それぞれの可能な経路について、a)第一および第二の曲率値に基づいて、それぞれの可能な経路に沿って管状構造内の器具(4)のいくつかの候補位置について、器具(4)がそれぞれの候補位置に配置される確からしさを示す位置値を求め、b)これらの位置値のうち最大の位置値を求め、
− 可能な経路について決定された最大の位置値のうち、全体で最大である位置値をもつ候補位置をもって、管状構造内の位置として決定する。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかに記載の位置決定装置であって、位置値と対応する候補位置は、候補位置を入力として位置値を出力とする関数を構成し、さらに前記位置決定装置(5)は、管状構造内の器具(4)の位置決定の品質をあらわす品質値を、該関数の最大ピークの幅、および/または該関数のピーク値が閾値を越えた数を用いて決定するための品質評価ユニット(9)を有する。
【請求項7】
請求項6に記載の位置決定装置であって、前記品質評価ユニット(9)は、管状構造内の器具(4)の位置決定の精度を示す第一の品質値を、該関数の最大ピークの幅、に基づいて決定するよう適合されている。
【請求項8】
請求項6または7に記載の位置決定装置であって、前記品質評価ユニット(9)は、管状構造内の器具(4)の位置決定の頑健性を示す第二の品質値を、該関数の閾値を越えたピークの数、に基づいて決定するよう適合されている。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載された位置決定装置であって、以下のとおり適合されている:
− 異なった時間における候補位置の位置値を、各時間について候補位置に対応した位置値の各セット(set)を決めるように決定し、
− 時間と候補位置とから定義される座標空間において、位置値が閾値を超えるもののセットの中から、最大の連結位置値グループを決定し、
− 各時間について、最大の連結位置値グループ内の最大の位置値が決定され、この最大の位置値が決定された候補位置を、各時間における管状構造内の器具(4)の位置として決定する。
【請求項10】
位置決定ユニット(8)は、異なった時間について決定された、管状構造内の器具の位置にもとづき、器具の移動速度を決定するよう適合された、請求項9に記載された位置決定装置。
【請求項11】
第一および第二の曲率の値は一次元値である、請求項1から10のいずれかに記載された位置決定装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれかに記載された位置決定装置であって、第一および第二の曲率値提供ユニット(6、7)は、一次元および二次元の第一の曲率値、および一次元および二次元の第二の曲率値を提供するように適合されており、前記位置決定ユニット(8)は、一次元の第一の曲率値および一次元の第二の曲率値から管状構造内の器具(4)の位置を決定するよう適合されており、さらに前記位置決定ユニット(8)は、二次元の第一の曲率値および第二の曲率値から、前記位置決定ユニット(8)により決定された位置と器具の実際の位置との間の、回転偏差を決定するよう適合されている。
【請求項13】
前記位置決定ユニット(8)はさらに、回転偏差を減少させるように、器具の決定位置を修正するよう適合されている、請求項12に記載された位置決定装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれかに記載の位置決定装置であって、管状構造が分岐点を含む場合に、前記位置決定ユニット(8)は以下のように適合されている:
− 管状構造内に想定される経路を提供し、
− 器具が分岐点を通り過ぎた後における、第一の曲率値と、器具が分岐点を通り過ぎた後における第二の曲率値との間の偏差を求め、
− 前記偏差にもとづき、器具が管状構造内の想定された経路に沿って移動しているかどうかを決定する。
【請求項15】
以下を含む撮像システム:
− 請求項1に記載された、管状構造内の器具(4)の位置を決定するための、位置決定装置(5)、
− 管状構造の画像を提供するための画像提供ユニット(10)、
− 提供された画像と、決定された位置とに基づいて、前記管状構造の視覚化情報を生成する視覚化情報生成ユニット(11)。
【請求項16】
管状構造体内の器具の位置を決定するための位置決定方法であって、以下のステップ:
− 第一の曲率値提供ユニット(6)により、管状構造に沿ったいくつかの第一の位置における曲率を示す第一曲率値を提供するステップと、
− 第二の曲率値提供ユニット(7)により、器具(4)に沿ったいくつかの第二の位置における曲率を示す第二曲率値を提供するステップと、
− 位置決定ユニット(8)により、第一および第二の曲率値に基づいて管状構造内の器具(4)の位置を決定するステップ、
を有し、
前記位置決定ユニット(8)は、
a)第一および第二の曲率値に基づいて、それぞれの器具(4)の管状構造内におけるいくつかの候補位置について、それぞれの候補位置に器具(4)が配置される確からしさを示す位置値を決定し、
b)候補位置のうち位置値が最大である位置をもって、管状構造内の位置として決定する。
【請求項17】
撮像方法であって、以下のステップを有する:
− 画像提供ユニット(10)により、管状構造の画像を提供するステップと、
− 請求項1に記載の位置決定装置によって管状構造内の器具(4)の位置を決定するステップと、
− 視覚情報生成ユニットにより、提供された画像と前記決定された位置とに基づいて管状構造の視覚情報を生成するステップ。
【請求項18】
請求項1に記載の位置決定装置を作動させるプログラムコード手段を有し、位置決定装置を作動させて、請求項16に記載の位置決定方法を実行するための、位置決定コンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項15に記載の撮像システムを作動させるプログラムコード手段を有し、撮像システムを作動させて、請求項17に記載の撮像方法を実行するための、撮像コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状構造内のカテーテルのような器具の位置を決定するための位置決定装置、方法およびコンピュータプログラムに関するものである。本発明はさらに、位置決定装置を含む撮像システム、ならびに撮像方法および撮像コンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用途では、患者の体内への挿入器具の位置を決定するために電磁的(EM)または光学的形状検知(OSS)追跡技術を使用する位置決定装置が知られている。しかしながら、EMおよびOSS追跡技法は、例えば、EM場の不均一性や、曲率情報の補間および統合(integration)における誤差のために、比較的不正確になりやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2014/191262A2
【特許文献2】国際公開WO2005/084571A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、管状構造内の器具の位置のより改善された決定を可能にする、位置決定装置、方法およびコンピュータプログラムを提供することである。本発明の別の目的は、位置決定装置を含む撮像システム、ならびに撮像方法および撮像コンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の視点において、管状構造内の器具の位置を決定するための位置決定装置が提供され、この位置決定装置は以下の要
素:
− 管状構造に沿ったいくつかの第一の位置における、管状構造の第一の曲率を示す第一の曲率値を提供するための第一の曲率値提供ユニットと、
− 器具に沿ったいくつかの第二の位置における、器具の第二の曲率を示す第二の曲率値を提供するための第二の曲率値提供ユニットと、
− 第一および第二の曲率値にもとづき、管状構造内の器具の位置を決定する位置決定ユニット
、
を有し、
位置決定ユニットは以下のように適合されている:
a)第一および第二の曲率値に基づいて、それぞれの器具の管状構造内におけるいくつかの候補位置について、それぞれの候補位置に器具が配置される確からしさを示す位置値を決定し、
b)候補位置のうち位置値が最大である位置をもって、管状構造内の位置として決定する。
本発明の第2の視点において、管状構造体内の器具の位置を決定するための位置決定方法が提供され、この方法は、以下のステップ:
− 第一の曲率値提供ユニットにより、管状構造に沿ったいくつかの第一の位置における曲率を示す第一曲率値を提供するステップと、
− 第二の曲率値提供ユニットにより、器具に沿ったいくつかの第二の位置における曲率を示す第二曲率値を提供するステップと、
− 位置決定ユニットにより、第一および第二の曲率値に基づいて管状構造内の器具(4)の位置を決定するステップ、
を有し、
位置決定ユニットは、
a)第一および第二の曲率値に基づいて、それぞれの器具の管状構造内におけるいくつかの候補位置について、それぞれの候補位置に器具が配置される確からしさを示す位置値を決定し、
b)候補位置のうち位置値が最大である位置をもって、管状構造内の位置として決定する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
管状構造に沿った第一のいくつかの位置における第一の曲率値と、器具に沿った第二のいくつかの位置における第二の曲率値は、局所的(local)な曲率である。大域的(global)な情報に基づいてではなく、局所的な情報に基づいて管状構造内の器具の位置を決定することによって、位置決定の正確さは、測定誤差に対して敏感ではなくなるため、著しく改善することができる。例えば、位置を決定する精度は、ドリフト、場の不均一性などのような大域的な測定誤差に対してより敏感ではなくすることができる。さらに、位置決定ユニットは、例えば、器具の形状を再構成する必要なしに、器具の位置を決定するように適合することができる。したがって、一セット(set)の局所的な第一の曲率値および、一セットの局所的な第二の曲率値、すなわち第一および第二の曲率値を用い、第二の曲率値にもとづいた器具の再構成修正を行う必要なく、管状構造に応じた器具の位置を決定することができる。
【0007】
本発明によれば、位置決定ユニットは、第一および第二の曲率値に基づいて、管状構造内の器具の位置および管状構造に対する器具の回転位置を決定するよう適合できる。特に、位置決定ユニットは、第一および第二の曲率値に基づいて、器具のいくつかの部分(segments)において、管状構造に対するそれぞれの位置および回転位置を決定するように適合できる。このように本発明でいうところの、「位置(position)」という用語は、管状構造に対する器具の場所(location)、回転位置、配向(orientation)を含むものである。
【0008】
第一の曲率値提供ユニットは、第一の曲率値を格納するユニットとして、または格納された曲率値を提供するユニットとして適合できる。あるいは、第一の曲率値提供ユニットは、第一の曲率値を受信するユニットとし、このユニットは第一の曲率値を決定するユニットから提供される第一の曲率を受信するものとすることができる。さらに、第一曲率値提供ユニットは、第一曲率値の決定部自身とすることもできる。同様に、第二曲率値提供ユニットは、第二曲率値の格納ユニット、あるいは受信ユニットとすることができる。さらに、第二曲率値提供ユニットは、第二曲率値の決定部とすることができる。
【0009】
本発明によれば第一の曲率値は予め求められているものである。曲率値は、コンピュータ断層撮影画像または他の診断画像のような管状構造の診断画像に基づいて求められたものである。第一の曲率値は他の方法で求められてもよい。例えば、事前プロセスとして、1つまたは複数の曲率センサを、管状構造内の既定の位置に達するまで管状構造内で移動させて、1つまたは複数のセンサを使用して管状構造の曲率を測定して求めることができる。
【0010】
管状構造は、血液を通す血管系、呼吸器系、非医療用パイプラインシステム、非医療用供給ライン提供システム、非医療用トンネルシステムなどであってもよい。
【0011】
一つの好適な実施形態において、曲率値は一次元である。このとき、管状構造内の器具の位置は、方向に依存する情報を用いずに決定することができる。特に、それぞれの位置においては、ピッチ曲率とヨー曲率のように2つの異なる方向に2つの局所曲率を定義することができるが、これらの2つの局所曲率を組み合わせて1つの一次元曲率値にすることができ、各場所における局所曲率とすることができる。例えば、一次元である平均曲率値や、一次元である全ガウス曲率値を決定できる。しかし、曲率値は二次元とすることもできる。例えば、ピッチ曲率およびヨー曲率のような2つの局所曲率は、それぞれの位置における二次元の曲率値とみなすことができる。
【0012】
本発明による一つの実施形態として、第一および第二の曲率値提供ユニットは、一次元および二次元の第一の曲率値ならびに一次元および二次元の第二の曲率値を提供するように適合できる。この場合位置決定ユニットは、一次元の第一および第二の曲率値から管状構造に沿った器具の位置を決定し、二次元の第一および第二の曲率値から、位置決定ユニットにより前記決定した位置と、実位置との間の回転偏差を決定するよう適合できる。決定された位置は、まず一次元の曲率のみを用いて決定されるため、方向には無関係であり、即ち器具の「ねじれ(torsion)」や「ひねり(twist)」(以下、総合して「回転」という)情報から生じる回転情報は含んでいない。管状構造内に沿った器具の位置は正しく決定しているものの、器具全体の実際の回転位置や、器具の各部分における回転位置などと、決定された回転位置との間には偏差が発生しうる。これは例えば、器具のねじれによって生じうるものであり、回転位置とは器具の長手方向の回りでの回転に関するものである。この回転偏差は、二次元の第一および第二の曲率値を考慮することによって決定することができる。特に、回転偏差を決定するためには、第一および第二の二次元曲率値に対し、偏差の二乗平均平方根のような尺度(measure)をとることで対応できる。回転偏差が偏差の閾値より大きい場合、これは出力ユニットによって出力することが考えられる。例えば、決定された位置を用いて、ユーザまたは他の装置に警告を出力することが考えられる。
【0013】
好ましくは、位置決定ユニットは、さらに、一度決定された回転偏差を減少させるように、器具の位置を修正するよう適合することができる。特に、位置決定ユニットは、回転偏差が減少するように、さらには最小になるように、装置全体および/または装置の一部の決定位置を、仮想的に回転させて修正することができる。
【0014】
器具は、好ましくは、医療処置中に患者の体内で使用される挿入器具とすることができる。あるいは、器具は、管状構造内で使用されるべき他の器具、特に非医療器具であってもよい。好ましくは、器具に沿ったいくつかの第二の位置において、これらの第二の位置における第二の局所的な曲率値を測定するようになっているセンサを備える。これらのセンサは、例えば、OSS曲率センサや、EMまたはRFIDセンサのグループであってもよい。EMまたはRFIDセンサのグループの場合、センサグループ内で他のセンサに対する相対位置を測ることで局所曲率を計算するのに十分である。
【0015】
好ましくは、位置決定ユニットは以下要素から適合される。a)第一および第二の曲率値に基づいて、管状構造体内において、器具が、いくつかの位置候補に配置されている確からしさを示す位置値を決定する。b)候補位置のうち最大の位置値であるものをもって、管状構造内の位置として決定する。特に、各候補位置は、どの第一の位置が、どの第二の位置と一致(以下「一致」はマッチング(matching)の意義で用いる)するかを規定(define)し、位置決定ユニットは各候補位置について、一致する第一および第二位置において、それぞれの第一と第二の曲率値の相互の偏差に依存して、位置値を決定するよう適合されている。例えば、位置決定ユニットは、一致する第一および第二の位置におけるそれぞれの第一および第二の曲率値間の差の平方和に依存して、位置値を各候補位置について決定するように適合されている。これらの位置値に基づいて管状構造内の器具の位置を決定することは、この位置決定のさらなる精度改善をもたらすことができる。
【0016】
位置決定ユニットは、偏差を重み付けし、重み付けされた偏差に依存するように各候補位置について位置値を決定するよう適合できる。特に、位置決定ユニットは、器具の一致する先端位置における偏差が他の一致する位置での偏差よりも位置値に大きく影響するよう、偏差を重み付けするように適合することができる。このようにして、器具の先端位置における第二の曲率値は、器具に沿った他の第二の位置における第二の曲率値よりも高い影響をもたせることができる。あるいは、器具に沿ったある第二の位置における第二の曲率値に対する重みをゼロにすることもできる。これは、一つまたは複数の位置で第二の曲率値が正確ではないかもしれないことがわかっている場合に有用である。このように、重み付けを使用することによって、管状構造内の器具の位置を決定する精度をさらに向上させることができる。
【0017】
別の一実施形態として、位置決定ユニットは、偏差の重み付けを時間的(temporary)に変化させることにより適合させることができる。時間的に変化する重みは、以下のリストの少なくとも1つの要素によるものである: a)それぞれの第二の位置における第二の曲率値、b)隣接する第二の位置における、1つまたはいくつかの第二の曲率値、c)それぞれの第二の位置における第二の曲率値の履歴、d)隣接する第二の位置における、一つまたはいくつかの第二の曲率値の履歴。例えば、はじめには全ての重みを同じ値にできる。もし、この第二の位置での第二の曲率値および、一つまたはいくつかの隣接する第二の位置での一つまたはいくつかの第二の曲率値、が同じである場合、それぞれの第二の位置での重みを減らすことができる。特に、位置決定ユニットは、隣接する第二の位置のグループでの第二の曲率値が同じ場合、隣接する第二の位置のグループの中で、一つまたはいくつかの中央の第二の位置で重みを減らすように適合できる。さらに別の例として、それぞれの第二の位置に対する重みについて、第二の位置における第二の曲率値の履歴が、当初の第一閾値より小さいか、または当初の第一閾値よりも大きい第二の閾値よりも大きい場合、重みを減らすか、さらにはゼロにすることもできる。履歴については、好ましくは、履歴が時間経過により有意に変化するよう、あらかじめ決められた数の以前の第二の曲率値のみを用いることができる。もし例えば、しばらく時間経過して、履歴によって示された変動が第一および第二の閾値内にある場合、それぞれの重みを再び増加させることができる。
【0018】
管状構造は、管状構造を通る異なる経路が存在しうる分岐構造である場合がある。この場合、位置決定ユニットは次のように適合できる。i)それぞれの可能な経路について、a)第一および第二の曲率値に基づいて、それぞれの可能な経路に沿って管状構造内の器具のいくつかの候補位置について、器具がそれぞれの候補位置に配置される確からしさを示す位置値を求め、b)これらの位置値のうち最大である位置値を決める、ii)管状構造内で可能な経路について決定された最大位置値のうち、全体で最大である位置値が決定された候補位置をもって、決定された位置とする。これにより、管状構造がいくつかの分岐を含む場合でも、比較的少ない計算量で管状構造内の器具の位置を正確に決定することが可能になる。
【0019】
一実施形態においては、位置値と対応する候補位置は、候補位置を入力として、位置値を出力する関数を構成する。ここで、位置決定装置は、関数の最大ピークの幅に基づき、または/かつ、閾値を越えたピークの数に基づき、管状構造内の器具の位置決定の品質を示す品質値を決定する品質評価ユニットを有する。品質評価ユニットは、管状構造内の器具位置を決定するための正確性を表す第一の品質値を、関数の最大ピークの幅に基づき決定するよう適合することができる。さらに品質評価ユニットは、管状構造内の器具位置を決定するための頑健性を表す第二の品質値として、関数のピーク値が閾値を越えた数に基づき決定するよう適合することができる。これらにより、例えば外科医のようなユーザが位置決定を評価することを可能にし、例えばユーザが、位置決定が彼/彼女のために十分に正確かつ/または頑健であるかどうかを決定することができる。
【0020】
好ましい一実施形態においては、位置決定ユニットは次のとおり適合することができる。a)異なった時間における候補位置の位置値のそれぞれのセット(set)を、各時間において候補位置についての位置値を、候補位置に対応させて決定し、b)時間と候補位置とから規定される座標空間内において、位置値が閾値を超えるもののセットの中から、最大の連結位置値グループを決定し、c)各時間について、決定された最大の連結位置値グループ内の最大の位置値が決定され、この最大の位置値が決定された候補位置を、各時間における管状構造内の器具の位置として決定する。これにより、管状構造内の器具の位置を決定する精度がさらに向上する。
【0021】
さらに、時間的な連続性を考慮に入れると、後続の時点の探索空間は、現在検出されている器具位置の近傍まで絞り込むことができる。これにより、一致する第一および第二の曲率値を計算するための計算時間を少なくすることができる。例えば、位置決定ユニットは、最大位置値連結グループ内での最大位置値の決定を、その都度、先行する時点について最大位置値が決定された候補位置値を含む候補位置の領域内に制限するように適合することができる。領域の寸法(大きさ)は事前に設定されることもできる。領域は、最大位置値が先行する時点で(前回)決定された候補位置を中心として適合することができる。一実施形態では、位置決定ユニットは、異なる時間について決定された管状構造内の器具の位置に基づいて管状構造内の器具の移動速度を求めるよう適合される。このように、器具の位置だけでなく、管状構造に対する器具位置移動の速度についても正確に決定することができる。
【0022】
一実施形態によれば、位置決定ユニットは、最大位置候補連結グループ内での最大位置値の決定を、その都度(次の時間における候補位置を決定するとき)に、最大位置が決定された先行する候補位置により決定された候補位置の領域内、および先行する運動方向に制限するよう、適合される。例えば、先行する運動方向は、先行の異なった時間について決定された管状構造内の器具の位置および先行する運動方向に基づいて、すなわちそれぞれの過去時点で最大位置値が決定された、過去の時間にわたる、候補位置に基づいて決定することができる。前回時点の位置からの、この運動方向および器具の運動の連続性の仮定により、探索領域は、想定される位置に、特に器具が前の時点で検出された速度で、定速で動かされる場合に、想定される位置に、集中させることができる。
【0023】
管状構造は分岐構造を含むことができるが、この場合位置決定ユニットは管状構造内で可能性のある経路を提供し、分岐点の後ろの経路に沿った第一の曲率値と、分岐点の後ろに位置した時の第二の曲率値との間の偏差を測ることで、器具が管状構造内で予想経路に沿って移動されるかどうかを決定するよう適合される。これにより、ユーザは器具を管状構造内で動かすことによって、フィードバックが与えられることが可能となる。想定される経路は、管状構造の画像に基づいてグラフィカルユーザインターフェースを介してユーザによってあらかじめ定義されるか、または自動的にまたは半自動的に定義されることができる。例えば、ユーザは画像内で、最終先端位置を指定でき、そうすれば、指示された所望の最終先端位置と管状構造の画像に基づき、想定経路が自動的に決定される。
【0024】
本発明の別の視点において、以下を有する撮像システムが提供される:
− 請求項1に記載された管状構造内の器具の位置を決定するための位置決定装置と、
− 管状構造の画像を提供するための画像提供ユニットと、
− 提供された画像と決定された位置とに基づいて管状構造の視覚情報を生成する視覚情報生成ユニット。
【0025】
本発明の別の視点において、管状構造内の器具の位置を決定するための位置決定方法が提供され、この方法は以下のステップを含む:
− 第一の曲率値提供ユニットにより、管状構造に沿ったいくつかの第一の位置における曲率を示す第一曲率値を提供するステップと、
− 第二の曲率値提供ユニットによって、器具に沿ったいくつかの第二の位置における器具の第二の曲率を示す第二の曲率値を提供するステップと、
− 位置決定ユニットによって、第一および第二の曲率値に基づいて管状構造内の器具の位置を決定するステップ。
【0026】
本発明の別の視点において、以下のステップを有する画像化方法が提供される:
− 画像提供ユニットによって管状構造の画像を提供するステップと、
− 請求項1に記載の位置決定装置によって管状構造内の器具の位置を決定するステップと、
− 視覚情報生成ユニットによって、提供された画像と決定された位置とに基づいて管状構造の視覚情報を生成するステップ。
【0027】
本発明の別の視点において、請求項1に記載の位置決定装置を作動させるプログラムコード手段を有し、位置決定装置を作動させて請求項17に記載の位置決定方法を実行するための、位置決定コンピュータプログラムが提供される。
【0028】
本発明の別の視点において、請求項
16に記載の撮像システムを作動させるプログラムコード手段を有し、撮像システムを作動させて請求項18に記載の撮像方法を実行するための、撮像コンピュータプログラムが提供される。
【0029】
請求項1に記載の位置決定装置、請求項16に記載の撮像システム、請求項17に記載の位置決定方法、請求項18に記載の撮像方法、請求項19に記載の位置決定コンピュータプログラム、および請求項20に記載の撮像コンピュータプログラム、以上のものは、特に従属した請求項に定義されているように、それぞれ類似および/または同一の好適な実施形態を有すると理解すべきである。
【0030】
本発明による好適な実施形態は、また、従属した請求項(複数)または上述の実施形態と各独立した請求項との任意の組み合わせともすることができると、理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のこれまでに述べた視点およびその他の視点は、以下に記載される実施例および図により明らかとなる。以下に図面の説明を示す:
【0032】
【
図1】撮像システムの一実施形態を概略的かつ例示的に示す。
【
図2】撮像方法の一実施形態を例示的に示すフローチャートを示す。
【
図4】管状構造に沿ったいくつかの第一の位置についての例示的な一次元の第一の曲率値を示す。
【
図5】ある時点に対応したフィルタ応答の例を示す。
【
図7】管状構造内の器具の決定された位置の時系列例を示す。
【実施例】
【0033】
図1に、管状構造内の器具4の位置を決定するための位置決定装置5と、管状構造の画像を提供するための画像提供ユニット10と、提供された画像と決定された位置に基づいて管状構造の視覚化情報を生成するための視覚情報生成ユニット11、とを備える撮像システム1の実施例の概要を示す。本実施例において、管状構造とは患者テーブル2上に横たわる患者3の血管の構造である。位置決定装置5は、第一の曲率値を提供し、かつ管状構造に沿ったいくつかの第一の位置における曲率値を表す第一の曲率値を提供する第一の曲率値提供ユニットを含む。本実施例において、第一の曲率値提供ユニット6は、画像提供ユニット10によって提供された画像に基づいて第一の曲率値を決定するよう適合される。特に、画像提供ユニット10は、器具4が患者3に挿入される前に、コンピュータ断層撮影画像または磁気共鳴画像などの管状構造を三次元画像として取得するよう適合されている。第一曲率値提供ユニット6は、提供された画像内で血管構造を位置セグメントに分割し、各セグメントにおける曲率値を決定するよう適合されることができる。
【0034】
本実施例では、器具4は、カテーテル4に沿ったいくつかの第二の位置にOSSセンサを配置したカテーテルである。位置決定装置5は、器具4に沿ったいくつかの位置での器具4の曲率を表す第二の曲率値を提供するため、OSSセンサから受信された光信号に基づいて曲率を与える第二の曲率値提供ユニット7を有する。このように、本実施例では、第二の曲率値提供ユニット7は、器具4に沿っていくつか配置されたOSSセンサから受信した光信号にもとづき、第二の曲率値を得るよう適合される。このように、第一および第二の曲率値、はそれぞれ第一と第二の位置における局所的な曲率値である。
【0035】
位置決定装置5はさらに、第一および第二の曲率値に基づいて、管状構造内の器具4の位置を決定するための位置決定ユニット8を含む。本実施例では、第一および第二の曲率値は一次元の曲率値である。特に、それぞれの位置において、2つの局所的曲率を2つの異なる方向から規定することができ、これら2つの局所的曲率を組み合わせてそれぞれの位置における局所的曲率を表す一次元の曲率値とすることができる。例えば、一次元平均曲率値は、以下の式に従って決定することができる。
K
m = 1/2 (k
1 + k
2) (1)
ここでKmは一次元平均曲率値であり、k
1とk
2は、それぞれ2つの異なる方向における局所的曲率である。あるいは、以下の式に従って総(ガウス)曲率値Ktを求めることもできる。
Kt = k
1k
2 (2)
ここで変数k
1とk
2は、例えば管状構造の主曲率とみなすこともできる。すなわちそれぞれの位置における管状構造の形状を規定する(Shape operator)固有値である。
【0036】
位置決定ユニット8は、管状構造内における器具4のいくつかの候補位置について、第一と第二の曲率値にもとづいて、器具4がそれぞれの候補位置に配置されていることの確からしさを示す位置値を決定し、これらの候補位置で最大の位置値が決定されたものをもって管状構造内の位置として決定するよう適合されている。
【0037】
決定されるべき候補位置および最終位置は、相対的位置であり、すなわち、管状構造に対する器具4の相対的な位置か、またはその反対の関係にある。これらの位置は、管状構造内の経路に沿った器具4の先端部および他の部分の位置として定義できる。管状構造が分岐管状構造である場合、管状構造内での器具の位置を決定するために、管状構造内のそれぞれの経路位置も決定する必要がある。かくて、分岐管状構造の場合、いくつかの候補位置および最終的に決定されるべき位置は、それぞれの経路およびそれぞれの経路に沿った器具の先端のような器具の特定の部分の位置によって規定できる。
【0038】
各候補位置は、管状構造に沿ったどの第一の位置が、器具4に沿ったどの第二の位置と一致(match)するかによって定義され、位置決定ユニット8は、一致するそれぞれの第一および第二の位置における第一および第二の曲率値の偏差に基づいて位置値が各候補位置について決定されるよう適合される。好ましくは、位置決定ユニット8は、それぞれの一致する第一と第二の位置における、第一および第二の曲率値の差の平方和に基づいて位置値を各候補位置について決定するよう適合される。
【0039】
位置決定ユニット8は、偏差に重み付けし、重み付けされた偏差に基づいて各候補位置について位置値を決定するようにも適合できる。特に、位置決定ユニット8は、先端における位置での偏差が、他の一致する位置での偏差よりも位置値に大きな影響を及ぼすように重み付けするように適合できる。
【0040】
重み付けされた偏差を用いる候補位置に基づく位置決定は、フィルタリングと見なすことができる。ここでいうフィルタは、それぞれの候補位置に適用され、それぞれの候補位置についてそれぞれの位置値がフィルタ応答として提供されるものである。
【0041】
管状構造が、管状構造を通る異なる可能な経路が存在する分岐構造である場合、位置決定ユニット8は、それぞれの可能な経路については以下のとおり決定するよう適合することができる。即ち、それぞれの可能な経路について、a)第一および第二の曲率値に基づいて、それぞれの可能な経路に沿った管状構造内の器具4のいくつかの候補位置について、器具4がそれぞれの候補位置に配置される確からしさを示す位置値を求め、そしてb)これらの位置値のうち最大となる位置値を決定する。さらに、位置決定ユニット8は、それぞれ可能な経路について決定された位置値のうち最大の位置値となった経路における候補位置を、管状構造内の位置として決定するように適合することができる。かくて、上記のフィルタ応答すなわち(フィルタを通した)位置値は、分岐管状構造を通るすべての可能な経路について計算することができ、すべての可能な経路について、フィルタ応答を決定した後、追加的に行う最大値の計算(max operation)、すなわち最大フィルタ応答を有する経路を選択するものとして、使用することができる。
【0042】
候補位置に対応して位置値を求めるという処理は、候補位置を入力として、位置値を出力とする関数を形成することとみなすことができる。位置決定装置5はさらに、位置値を求める関数を用いて、最大ピークの幅または/および閾値を超えるピーク数に基づいて、管状構造内の器具4の位置決定の品質を測るための、品質評価ユニット9を含むことができる。特に、品質評価ユニット9は、管状構造における関数の最大ピークの幅を、管状構造内の器具4の位置決定の精度または正確さを示す第一の品質値を決定するよう適合されることができる。また、関数が閾値を越えたピークの数に基づいて、当該位置決定の頑健さを示す第二の品質値を決定するよう適合されることができる。もし位置値が候補位置に対するフィルタ応答であると見なされる場合、第一の品質値は最大フィルタ応答ピークの幅に基づいて決定するものであり、第二の品質値はピーク数が閾値を超える数に基づいて決定されるものとみなすことができる。
【0043】
第一の品質値は、関数の最大ピーク幅そのものとするか、あるいは、関数の最大ピークの幅に依存する別の値とすることもできる。さらに第二の品質値は、関数が閾値を超えたピークの数そのものとするか、あるいは閾値を超えたピークの数に依存する別の値とすることもできる。閾値は好ましくは、事前定義されるものであり、キーボード、コンピュータマウス、タッチパッドなどのような入力ユニット12を使用することによってユーザによって変更可能なものとする。
【0044】
位置決定装置5は、管状構造内での器具4の位置を決定するために、以下のように適合される。すなわち、位置決定装置5は、器具4が管状構造内で動かされない、すなわち静止状態である場合でも、あるいは器具4が管状構造内で動かされる、すなわち動的状況においても、適合できる。特に、位置決定装置5の位置決定ユニット8は、異なった時間においての候補位置について、それぞれの時間について、候補位置に対応する位置値のそれぞれのセット(set)が決定され、ここに候補位置と時間で形成される空間において、閾値を越える位置値のうち、最も大きい連結位置値グループが決定されるように適合される。このとき、最大の連結位置値グループが決定された候補位置が、それぞれの時点における管状構造体内の器具4の位置として決定されるよう適合できる。
【0045】
視覚化情報生成ユニット11は、管状構造内での決定された器具の決定位置および、患者内の所望の構造をあらわす撮像ユニットから提供された画像に基づき、提供された画像中に管状構造内の器具の決定位置を視覚化するべく管状構造の視覚情報(視覚化)を生成するよう適合することができる。あるいは、撮像ユニットにより提供される像から取得したさらなる画像であって、患者内に所望の構造を示す画像の中に視覚化することができる。さらに、撮像システム1は、ユーザに視覚情報を提供するためのディスプレイのような出力ユニット13を備える。このように、器具4が患者3の管状構造内に挿入されている間、ユーザは器具4が管状構造内のどこに配置されているかを正確に見ることができ、それによって患者内の器具4を使用するユーザを支援する。例えば、器具4は感知および/または治療能力を有してもよく、このとき視覚情報は、例えば出力ユニット13で適合される管状体に対する器具4の先端の正確な位置を示すことによって感知および/または治療を実行するユーザを支援することができる。
【0046】
以下では、撮像方法の一実施例を、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0047】
ステップ101において、管状構造の画像が画像提供ユニット10によって提供され、ステップ102において、管状構造に沿ったいくつかの第一の位置における管状構造の第一の曲率を示す第一の曲率値が第一の曲率値提供ユニット6によって提供される。これらの第一の曲率値は、器具4を患者の管状構造に挿入する前、またはその間、またはその後に提供することができる。ステップ103において、器具4が患者3の管状構造に導入された後、器具4に沿ったいくつかの第二の位置における器具4の第二の曲率を示す第二の曲率値が、第二の曲率値提供ユニット
7によって提供される。ステップ104において、管状構造内の器具4の位置は、位置決定ユニット8によって第一および第二の曲率値に基づいて決定される。ステップ105において、決定された位置と、視覚化情報生成ユニット11により提供された画像に基づいて管状構造内の視覚化情報が生成され、ステップ106において出力ユニット13に出力される。ステップ102〜104は、管状構造の中で器具の位置を決定するための位置決定方法のステップであるとみなすことができる。
【0048】
病院で使用されている既知の追跡システムにおいては、グローバルな位置情報が提供されている。すなわち、それらはユークリッド空間において追跡される器具、人間の位置を提供するものである。このグローバルな位置情報は、例えば、EM追跡システムの場合にはEM場の不均一性、またはOSS追跡システムの場合には曲率情報の補間および統合(integration)に起因する測定誤差に対し敏感である。さらに、これらの既知の追跡システムは、例えば、3次元の患者画像に対し、現在の患者の向きと、これにともなって、別の向きを有する患者内の器具の現在の位置とを適応させるための、校正が必要となる。この校正処理は、患者の動きに非常に敏感であり、追跡システムには比較的に高いグローバルポジショニング精度が必要となっている。
【0049】
管状構造内の器具の位置を追跡するためには、局所的な曲率、すなわち第一および第二の曲率値を使用することによって、前に述べた問題を克服することができる。例えば、周辺を含む全体の座標系を使用する必要はなく、患者内の管状構造に基づく、患者固有の座標系を使用することができる。この座標系は患者の動き(Movement)に対しては不変であり、対応する校正は必要とされない。さらにグローバルな追跡情報は必要としない。OSSを用いたローカル曲率を直接に測定することで十分である。(測定された)現時点における曲率値情報と、管状構造の曲率値に関する事前情報との間のマッチング(一致)を達成するために、これらの局所的曲率が管状構造の既定の曲率と比較される。それにより、センサおよび器具の管状構造に対する現在の位置を求めることができる。局所的な情報を使用することで、グローバルトラッキング技術を使用する場合と比較して測定の不正確さを小さくし、不正確な運動の補償(心拍動および呼吸運動などの補償)およびグローバルポジショニングの不正確さ(広い測定範囲を必要とする)のような、通常の場合支配的となる誤差源を本質的に排除している。運動した構造に沿った、すなわち器具に沿った比較的少数の測定点で、より高い精度を達成するために十分である。
【0050】
管状構造内の器具の位置が決定される前、特に器具が管状構造内に挿入される前に、好ましくは、管状構造は、バイプレーン血管造影などによるコンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像などの三次元画像に基づいて分析される。この分析により管状構造について、分岐構造でありうること、管状構造の個々の管セグメントの長さ、形状、および局所的な曲率が事前にわかることになる。
図3は、軸「x」および「y」を有する二次元空間座標系における二次元管状構造の形状20の例を示すものである。この形状20に基づいて、局所曲率を計算することができ、このとき本実施例において、局所曲率すなわち、第一の曲率値は一次元である。しかしながら、別の例では、第一の曲率値はまた、ヨー曲率値およびピッチ曲率値を有する二次元であり得るか、さらに三次元において、ねじれ(torsion)に対し不変となる平均曲率でもありうる。
図4は、管状構造に沿った第一の位置「x」に応じた一次元の第一の曲率値「c
1」を示したものである。
【0051】
器具が管状構造に挿入された後、器具に沿った第二の位置(複数)における第二の曲率値(複数)が測定され、これらの局所的第二曲率値は、管状構造内からそれに対する位置(相対位置)を決定するために、局所的な第一の曲率値と比較される。特に器具内かくて局所的曲率センサの、すべての可能な位置について、すなわちいくつかの候補位置について、測定された第二の曲率値が、事前に記録された第一の曲率値と比較され、位置値が生成される。ここで、事前に記録された局所的第一の曲率値との差を尺度(measure)とすることによって、位置値を計算することができる。位置値の生成(決定)は、事前に記録された局所的な第一の曲率値と、検知測定された局所的な第二の曲率値との間の偏差を尺度とする、該位置値はフィルタ応答(出力)と見なすことができる。
図5は、管状構造に対する器具の候補位置「x」に応じた、フィルタ応答値「F」を模式的に示したものである。
【0052】
図5において、最も高いフィルタ応答値は候補位置0.3にある。したがって、この候補位置は管状構造内の器具の位置と決めることができる。
【0053】
器具が管状構造内で動かされている間に管状構造内の器具の位置が決定されると、フィルタ応答は「x − t」図において一種のヒートマップとしてプロットすることができる。ここで、「x」は相対位置、すなわち管状構造に沿ったそれぞれの候補位置であり、「t」は時間である。このように、局所的な曲率情報は時間に対して連続的に検知することができ、これはすなわち、第二の曲率値を管状構造内でセンサを動かしながら時間に対し連続的に決定することができるものである。ここで、時間ステップ毎に計算されたフィルタ応答、すなわち位置値は、「x − t」線図に集約して示すことができる。
図6はその事例であり、この例では器具は関数「1 + sin(t)」によって定義される速度で管状構造内を移動されたものである。単一の時間ステップについて、かついくつかの異なる候補位置について高いフィルタ応答が計算されうる。しかしながら、ただ一つの候補位置について、一つの高いフィルタ応答が経時的に(over time)決められるべきであり、これは(フィルタ応答値により)経時的に決定された「x − t」図における線(曲線でありうる)としてあらわれることになる。したがって、経時的な管状構造内の器具の位置の決定は、「x − t」図内の連続する候補位置の「最長となる線」を識別することとみなすことができる。この「最長となる線」の検出は、例えば、「x − t」線図の所定のフィルタ応答閾値を超える最大コンポーネントを計算することによって実行することができ、これにより所与の時点における、管状構造内の機器の真の位置はコンポーネント内のピーク値をもって決定できる。
図7は、このようにして決定された、経時的な管状構造内の器具の位置を例示するものである。位置決定装置は、各時間における管状構造内の器具の移動速度を、この決定された位置に基づいて決定するよう適合することができる。特に、速度「v」を決定するため、時間に依存する位置の勾配を計算することができる。このようにして決定された管状構造内の器具の速度を、
図8に示す。
【0054】
品質評価ユニット9は、「x − t」線図において検出された「最長である線」の時間的幅をもって、時間に依存する位置の精度または正確性を決定するように適合することができる。また、「x−t」線図内の「長い線」の数に基づいて、時間に依存する位置の信頼性を決定するように適合することができる。
【0055】
器具が管状構造内にあり、かつ管状構造の剛性に対して十分な剛性を有すると考えられる場合、器具によって管状構造の曲率が変化させられることがある。この管状構造内の曲率の変化、すなわち第一の曲率が変化することは、管状構造内の器具の位置の決定の精度を低下させる可能性がある。したがって、位置決定ユニット8は、器具の位置を決定するときにこの曲率変化を考慮するように適合することができる。例えば、位置決定ユニット8は、センサと管状構造との相互作用のモデリングを行うことや、管状構造の曲率変化の数値シミュレーションなどを、管状構造と器具の剛性値が既知であることを前提として行うこととして適合することができる。あるいは、位置決定ユニット8は、いくつかのバリエーションの探索技術のように、曲率変化を考慮した他の技術を使用することもできる。
【0056】
局所曲率に基づいた管内のナビゲーションは、管状構造に沿って動く座標系を使用している。これは、管状構造に対する位置は、呼吸運動または心拍運動のような顕著な運動があった後においても、依然として有効であることを意味する。また、施術前に取得された局所曲率情報の全部または大部分は、移動後も変化しない。この点において、管状構造の追加的追跡を必要とするEMナビゲーション、蛍光透視ナビゲーションなどのような外部基準座標系を使用する別のアプローチに比べて、正確で意味のある結果を得るためには有利である。
【0057】
第一および第二の曲率値提供ユニット6、7は、一次元および二次元の第一の曲率値ならびに一次元および二次元の第二の曲率値を提供するように適合することができる。ここで位置決定ユニット8は、一次元の第一および第二の曲率値を用いて管状構造内の器具の位置を決定し、さらに位置決定ユニット8は、二次元の第一および第二の曲率値を用いて、決定された管状構造内の器具の位置と実際の器具の位置との間の回転偏差を決定するように適合することができる。このように決定された位置は、一次元の曲率値情報のみを考慮されたものであるので、軸に沿わない方向に対しての位置には無関係であり、例えばねじれ、ひねりといった回転情報は含まれていない。管状構造に沿った位置としては正しく決定されているものの、器具全体、または器具の一部分においての回転方向の偏差が発生しうる。この偏差は、例えば器具の軸方向に対して回転方向における、ねじれによるものによって発生することが考えられる。この回転偏差は、二次元の第一および第二の曲率値を考慮することによって解決することができる。特に、二次元の第一および第二の曲率値について、二乗平均平方根を測ることで回転偏差を決定することができる。回転偏差が偏差の閾値より大きい場合、出力ユニット13に出力されるよう適合することができる。例えば、出力ユニット13にユーザに対する警告を出すことが考えられる。特に、位置決定ユニット8は、回転偏差が減少するように補正するよう適合されることができる。さらには最小化されるように、器具全体および/または器具の一部を仮想的に回転させるよう適合されることができる。したがって、管状構造内の器具の位置は、二段階アプローチで決定することができる。第一のステップでは、管状構造内の器具の位置は、一次元の第一および第二の曲率値のみを用いて決定される。第二のステップでは、器具の各セグメントの回転位置は、回転偏差が最小になるように決定される、というものである。
【0058】
位置決定ユニットは、器具に沿った位置において測定された第二の曲率値を用いて、器具が管状構造の外にはみ出していて、管状構造の外部に面する終端の位置と併せて、管状構造の外にある器具の一部の形状を再構成するように使うことができる。このように、管状構造内の位置である場合の第二の曲率値と管状構造内にある第一の曲率値を一致させる手法に加えるものであり、器具が管状構造内である(例えば血管内)ことと、管状構造外である(例えば心臓心室内)ことを、管状構造の終端位置を起点として、形状を再構成することができる。既知の形状再構成システムでは、ねじれおよび器具の回転が一般的な誤差の原因となっている。器具のねじれが検出されない場合、したがって形状再構成の原因でない場合、形状再構成は「誤った方向」を導くこととなってしまう。前述したように、位置決定ユニット8は、前述の回転偏差を決定するために、二次元の第一および第二の曲率値を互いに比較することによってそのような器具のねじれ/ひねり(すなわち回転)を検出することができる。さらに、前に説明したように、回転偏差を最小限に抑えることができ、最小化した上で、高品質の形状再構成を位置決定ユニット8によって実行することができる。
【0059】
管状構造に沿った第一の位置において提供された第一の曲率値は、管状構造の以前の検査から得られたものでありうるが、その結果同じ管状構造に到達した場合、現在の管状構造内検査から得られた位置は、事前の管状構造内検査の間に決定された同じまたは他の器具の位置に関連して、信頼性の高い方法として決定することができる。
【0060】
器具に沿った第二の位置(複数)に配置されるセンサを備えた器具は、起こり得る製造および/または組み立ての不正確さを補償するために、既知の曲率を有する三次元形状(geometry)にセンサを備えた器具を配置して、校正することができる。各信号センサで検出された局所的な第二の曲率を、マッチングのために直接使用することは、器具の実測曲率と期待される曲率と一対一対応(一致)させることを意味する。このことにより、センサにより局所的曲率のための補償(校正)ファクタを導くことができる。これらの補償ファクタは、第二の曲率値を決定するために、例えばそれぞれのセンサに対して生成されたOSS信号と共に、管状構造内で器具の位置を決定する実際の手順中に用いることができる。
【0061】
位置決定ユニットは、第二の位置における第二の曲率値を決定するために使用される個々のセンサに設定される、フィルタ応答を計算する間に使用する重みが、時間とともに変化するように、適合することができる。しかし、この重みは(時間に対し)静的にすることもできる。特に、損傷および/または欠陥のために誤った局所的な第二の曲率値を与える傾向があるセンサは、「不活性化」することもできる。さらに、器具に沿ったそれぞれのセンサに個々の重みを変えることを応用して、器具の先端部分に近い部分のフィルタ応答への影響を強くすることができる。
【0062】
局所的な第二の曲率値を時系列的に記録する場合、より良質に器具の検査箇所の三次元形状を再構成することができる。特に、位置決定ユニットは、1以上のセンサが管状構造の部分を通過するとすぐ、この部分を通過した全センサのセンサ情報を組み合わせることができ、例えば平均値とし、この組み合わせ結果を用いて、三次元形状の再構成を行うように適合できる。
【0063】
位置決定ユニット8は、管状構造内の想定された経路を提供し、その際、管状構造の分岐点を通り過ぎた後の想定経路に沿った第一の曲率値と、分岐点を通り過ぎた後の器具の第二の曲率値との間の偏差を測定することで、この偏差に基づき想定経路に沿っているか否かを判定するよう適合することができる。この場合、器具を管状構造内に挿入する際に、位置判定ユニット8は、器具の先端が分岐点で正しい方向に動かされているかどうかを判定するように適合することができる。例えば、偏差の測定としては、分岐点の後ろの想定経路に沿った第一の曲率値と、分岐点の後ろの器具の第二の曲率値、との間の二乗平均平方根偏差などを計算することが考えられる。この測定値が、予め定められている閾値よりも大きい偏差結果である場合には、器具先端が間違った方向に動かされた可能性があることを、ユーザに示すことができる。この閾値は、分岐点の前の第一および第二の曲率値の偏差にも依存させることができる。例えば、閾値は、分岐点に到達する前後において偏差の間の許容される絶対差または相対差として、定義することができる。
【0064】
視覚情報生成ユニットは、画像提供ユニットによって提供される血管内超音波(IVUS)、CTまたはMR画像のような事前の二次元または三次元画像が、計算された器具先端位置の周囲または一致した第二曲率の位置(複数)に沿って表示されるように、視覚情報を生成するように適合させることができる。これにより仮想的な内視鏡検査またはサラウンドビューをもたらすことができる。事前の二次元または三次元画像スキャンから、複雑な情報が得られ、施術手順のために有益となりうる。
【0065】
位置決定装置は、管状構造内で器具を追跡するための、追跡、ナビゲーション、および(更なる器具(devices)からの)位置情報を使用するよう適合することができる。例えば、器具に沿ったいくつかの第二の位置で第二の曲率値を測定するためにOSSセンサが使用される場合、更なる器具は、EM追跡技術または蛍光透視法を用いて管状構造内の器具の位置を追跡する、追跡装置とすることができる。例えば、「X線Cアーム」を1つまたはいくつかの確認画像を取得するために使用することができるが、位置決定装置の位置決定ユニットにより、管状構造内の位置を特定するための、信頼度を高めるために使用することができる。さらに、器具のロボット操縦ユニットからもたらされる位置情報は、管状構造内の特定の位置が、器具によって到達されたかについて、信頼性のレベルを高めるため、位置決定装置の位置決定ユニットにより使用することができる。
【0066】
このように、位置決定ユニットは、管状構造内の器具の位置を決定するために、第一および第二の曲率値を使用し、そして器具の任意に適合された位置を決定するため他の追跡および/またはナビゲーションおよび/または位置情報を組み合わせるよう、適合することができる。これは、提供された位置情報の信頼性に基づいて、様々の情報源からの影響を重み付けすることによって実現することができる。かくて、情報源ごとに信頼性の程度(すなわち信頼度)が与えられることができ、この信頼度によって重みづけを行い、これらの情報源を器具の決定された位置に適合するため組み合わせることにより、位置決定ユニットはより信頼性の高いものとすることができる。例えば、蛍光透視画像において器具を明確に検出することによって得られる位置情報は、比較的高い信頼度を有する可能性が高い。特に、この信頼度は、ロボット操舵ユニットからの荒いナビゲーション情報の信頼度よりも高いものにできる。
【0067】
位置決定ユニットはまた、管状構造内の器具先端の位置を示すEM追跡情報とOSSとを組み合わせた情報を、器具に沿った第二の位置における第二の曲率値を決定するために、補足情報として、利用するよう適合することができる。例えば、EM追跡情報が、器具先端がEM追跡装置により定義されるEM座標系に対して移動していることを示しているが、しかし、曲率情報は、器具が管状構造に対して移動していないことを示す場合において、位置決定ユニットは、動きが呼吸運動または心拍動のような患者の運動によるものであり、管状構造内の器具の移動によるものではないと判断することができる。このように、位置決定ユニットは、患者の動きが有るが、管状構造に対しての器具の動きではないことの補足的情報を、曲率情報と更なる追跡情報に基づいて、提供するように適合することができる。この場合、位置決定ユニットまたは別のユニットは、更なる追跡情報に基づいて患者の動き、たとえば呼吸運動および/または心拍運動を決定するように適合することができる。
【0068】
器具の実施例として、特に、器具の先端に、血管内超音波(IVUS)ユニットのような撮像ユニットを含むことができる。視覚情報生成ユニットは、器具が管状構造内で動かされている間に、管状構造内の器具のそれぞれの位置(ここでいう位置はさらに、管状構造内での回転位置を含むことができる)と、撮像ユニットによって取得された一次元の回転画像とを組み合わせて二次元画像を構築するよう適合することができる。このように、各時点において、位置決定装置は、管状構造を通る経路に沿った位置と器具の回転位置とを決定し、各時点における管状構造に関する撮像ユニットの空間的配向(spacial orientation)を知ることができる。この情報を用いて、視覚情報生成ユニットは、撮像ユニットによって取得された一次元回転画像を再構成して二次元画像を生成することができる。このように、通常の二次元画像生成では、再構成のごとく、定速後退または回転防止を要することなく、例えば器具の管状構造内での後退(retraction)運動の間に、二次元画像を生成することができる。さらに、本実施例においては、位置決定装置は管状構造内の経路に沿った器具の位置および管状構造に対する器具の回転位置を決定できるので、位置決定装置は器具の現在の配向(orientation)についての情報を提供することもでき、特に管状構造が血管構造であり、隣接する血管構造がある場合には、器具先端の隣接血管に対する現在の配向情報をも提供するものである。この状況において、二次元画像の再構成を行うことは、管状構造の湾曲した中心線に沿う平行方向でない方向の座標に基づくことができることを意味しており、したがってより正確に器具先端の回転方向運動を補償することができる。さらに別の実施例として、視覚化情報生成ユニットは、器具が管状構造内で動かされている間に、撮像ユニットによって取得された二次元画像に基づいて、三次元画像を構築するように適合することもできる。これは、器具の管状構造内の移動と、そして移動に対応する管状構造内の位置の変化とに基づくものであり、このときの位置は管状構造内の回転位置をも含むものである。
【0069】
曲率情報に基づいて、管状構造内での器具の回転位置を含む管状構造内での器具の位置を追跡するということは、再現可能な方法として、必要に応じて管状構造内に器具を位置設定するために使用することができるということである。ここで、位置は管状構造に沿った位置ということだけでなく、管状構造に関する器具の回転位置をも含んで設定できるということであり、この意味で器具を再現可能な仕方で位置設定することができるということである。例えば、管状構造内の器具位置を所望位置としたい場合、これは以前の操作で使用されたのと同じ位置である可能性があるため、まず、その位置が所望の位置に対応するように、器具の現在位置を計算するための一次元曲率値のみを用いて管状構造内に配置する。次に、器具の二次元の第二の曲率値と、所望の回転位置を示す二次元の曲率値との間の偏差が最小になるように器具を仮想的に回転させることができる。所望の回転位置を示す二次元の曲率値は、器具が以前の再現すべき操作(intervention)で存在した器具の二次元の第二の曲率値とすることができる。臨床的に重要な問題である、器具の撮像ユニットによって取得された再現性のある位置画像を実現することは、特に再現性のあるIVUS検査を実施することにより、さらなるナビゲーション補助または外部撮像制御を行わないで、解決することができる。位置決定ユニット、視覚情報生成ユニット、または撮像システムの他のユニットは、頑健性および精度が低い可能性がある場合などで、誤った血管分岐に達した操作を行う臨床医などのユーザに対し、器具の予想経路に沿った第一および第二の曲率値の一致が少なすぎるとの、警告を出すように適合することもできる。
【0070】
局所的な患者特有の座標系を使用することによって、管状構造内の器具位置の決定は、グローバルな追跡装置および/または人に対して、実質的に無関係となりうる。患者の動き、操作中の機器の動き、患者の位置変更や移送などは、かくて、管状構造内の器具の位置の決定に悪影響を及ぼさない。さらに、十分ではないグローバルな精度を提供するが、しかし、局所的には相対的に十分な精度を提供する追跡技術(即ちグローバルなGPSに似た局所追跡技術)が使用でき、局所的な情報、距離や角度、あるいは例えば隣接する位置センサがあれば局所的な曲率を計算することができる限り、問題ではない。特に、ある位置に配置された少なくとも3つの位置センサのグループは、相対位置情報、すなわちそのグループの位置センサの互いに対する相対位置、にのみ基づいて、この位置の曲率値を決定するのに用いることができる。ここでOSSセンサを用いる場合、機器に沿った位置ごとに唯一つのOSSを設置することで、それぞれの位置における曲率値を決定するのに十分となる。
【0071】
位置決定は、器具に沿った局所的な曲率の測定に基づいているので、器具に沿った曲率の測定(値)の統合(integration)による誤差の累積を回避することができる。さらに、曲率が時間的に連続した仕方で測定される場合、位置決定をより安定させることができ、品質測定値(ないし尺度(quality measures)は、位置決定の品質を示すものになる。さらに、第一の曲率値と第二の曲率値との一致(matching)に基づき、管状構造体の測定誤差や変形は、必ずしも位置決めの誤差に至るものではない。なぜなら、これらの方法は「最良適合(Best fit)」アプローチによって補償されることができるためである。
【0072】
開示された実施例以外の他の変形例は、図面、本開示、および添付の特許請求の範囲を学ぶことにより、十分なスキルをもつ当業者は請求項に記載した発明を実施することができると理解されるべきである。
【0073】
以下、請求項において、単語「有するないし含む(comprise)」は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数であること排除するものではない。
【0074】
単一のユニットまたは装置は、特許請求の範囲に記載のいくつかの項目を充足させることができる。あるいくつかの手段が、互いに異なった従属請求項に記載されていること自体は、これらの手段の組み合わせが、有利に使用できないということを示すものではない。
【0075】
管状構造内の器具の位置の決定、品質値の決定など、1つまたはいくつかのユニットまたは装置によって実行される動作(操作ないし処理:Operations)は、他の任意の数のユニットまたは装置によって実行することができる。これらの動作および/または、撮像方法による撮像システムの制御、および/または位置決定方法による位置決定装置の制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として、および/または専用のハードウェアとして実施することができる。
【0076】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に、またはその一部として供給される、光記憶媒体または固体媒体などの適切な媒体に格納/配布されることができ、またインターネット、その他の有線または無線の電気通信システムによって配布することができる。
【0077】
請求項中の如何なる参照符号も範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
2 患者テーブル
3 患者
4 器具
5 位置決定装置
6 第一の曲率値提供ユニット
7 第二の曲率値提供ユニット
8 位置決定ユニット
9 品質評価ユニット
10 画像提供ユニット
11 視覚化情報生成ユニット
12 入力ユニット
13 出力ユニット