(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835983
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】AIMP1を含む全身性紅斑性狼瘡診断用バイオマーカー組成物及びそれを用いた全身性紅斑性狼瘡診断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20210215BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20210215BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20210215BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20210215BHJP
【FI】
G01N33/53 P
G01N33/53 D
!C12N15/115 Z
!C07K14/52
!C07K16/24
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-558482(P2019-558482)
(86)(22)【出願日】2018年4月30日
(65)【公表番号】特表2020-519861(P2020-519861A)
(43)【公表日】2020年7月2日
(86)【国際出願番号】KR2018005001
(87)【国際公開番号】WO2018199709
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年11月18日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0055247
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】514163907
【氏名又は名称】インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション ヨンセイ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY−ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION, YONSEI UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217124
【弁理士】
【氏名又は名称】作山 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】パク サンギュ
(72)【発明者】
【氏名】リー サンウォン
【審査官】
小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−525362(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/133359(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0078472(KR,A)
【文献】
特開平08−233822(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0233752(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)SLE患者から分離された試料からAIMP1レベルを測定する段階と、
(2)前記測定されたAIMP1レベルが10〜20ng/mLである場合、活性SLEと判断する段階と、
を含むSLE予後予測に必要な情報を提供する方法。
【請求項2】
前記試料は、血液であることを特徴とする請求項1に記載のSLE予後予測に必要な情報を提供する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノアシルtRNA合成酵素複合体相互作用多機能性タンパク質−1(aminoacyl−tRNA synthetase complex interacting multifunctional protein−1;AIMP1)を含む全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematosus;SLE)診断用バイオマーカー組成物及びそれを用いた全身性紅斑性狼瘡診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全身性紅斑性狼瘡(SLE)は、原型的な全身性免疫疾患であって、病理生理学的に過度な自己抗体の生産及び免疫複合体の形成によって発病する。現在のところ、SLEの進行及び悪化に寄与する多様な自己反応性兔疫細胞が明かになった。そのうち、樹状細胞及びB細胞がSLEの発病において、依然として先頭にあり、これらは、自己抗体だけではなく、インターフェロン−αの生産を促進することもできる。また、自己反応性兔疫細胞は、細胞外シグナル調節キナーゼ(extracellular signal−regulated kinase;ERK)/分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(mitogen activated protein kinase;MAPK)機作を通じて核内因子κB(nuclear factor kappa B;NF−κB)を活性化させることができる。次いで、活性化されたNF−κBは、インターフェロン−γ、IL−1、IL−2、IL−6、IL−12、IL−17及び腫瘍壊死因子(tumour necrosis factor;TNF)−αのような下流遺伝子の発現を促進させる。また、SLEは、Treg細胞の減少及びTh17細胞及び濾胞補助T細胞の増加のようなT細胞群の変化にも影響を受けることができる。すなわち、SLE患者の血液で自己反応性免疫細胞の調節障害及びサイトカインの不均衡を示すことができる分子があれば、これは、SLE疾患の活性の予測に良いバイオマーカーになる。
【0003】
運搬リボ核酸(Transfer Ribonucleic acids;tRNAs)は、一般的に75〜95個のヌクレオチドで構成されており、伝令RNAの個別化されたコドンを基盤として、リボソームで特定アミノ酸を伝達するタンパク質翻訳過程において、tRNAsは重要な役割を行う。現在のところ、他の形態の20個tRNAsがヒトで明かになり、それぞれのアミノ酸は、アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl−tRNA synthetases;ARSs)によって同族tRNAと結合する。原核細胞ARSsに比べて、哺乳類のARSは、11個の他のARSs及びアミノアシルtRNA合成酵素−相互作用多機能性タンパク質(aminoacyl−tRNA synthetases−interacting multifunctional protein;AIMP)1/p43、AIMP2/p38及びAIMP3/p18のような3個の非酵素的因子を含む多重−tRNA合成酵素複合体を形成する。AIMPsは、複合体−形成酵素の組み立てに関与すると表われたが、その根拠は、次の通りである。1)AIMPsは、互いに強く結合するが、これは、各AIMPの細胞内安定性に影響を及ぼす。2)各AIMPは、好む相互作用酵素を有する。3)特に、AIMP1は、多重−tRNA合成酵素複合体で中央に位置して、重要な補助因子になると見えるが、これは、結合されたARSsの触媒サイトにtRNAの伝達を促進することもできると見られる。
【0004】
多重−tRNA合成酵素複合体と結合するAIMP1の機能とは別途に、AIMP1は、低酸素条件の循環過程及び細胞死/壊死細胞死過程から分泌され、これは、多様な免疫−促進効果を有する。第1に、分泌AIMP1は、ERKs活性化を通じて血管形成を促進することができる。第2に、AIMP1は、p38MAPK及びNF−κBを通じてTNF−α、インターロイキン(interleukin;IL)−6、IL−8及び大食細胞走化性タンパク質(macrophage chemotactic protein;MCP)−1のような前炎症性サイトカインを生産するために、単核球及び大食細胞を促進することができる。第3に、AIMP1は、樹状細胞の成熟を誘導し、IL−6及びIL−12生産を増加させることができる。さらに、本発明者らは、以前にコラーゲン誘導された関節炎を有したマウスでリウマチ関節炎患者から測定された血清AIMP1が元気な対照群に比べて高いということを確認し、AIMP1を標的とする単一クローン抗体が深刻な関節炎を改善させ、血清IL−1β、IL−8、MCP−1及びTNF−αを減少させるということを確認した。しかし、現在のところ、AIMP1とSLEとの関連性に対しては明らかになっていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、AIMP1を有効成分として含むSLE診断用または予後予測用バイオマーカー組成物及びそれを用いたSLE診断方法またはSLE予後予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、AIMP1を有効成分として含むSLE診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、AIMP1のレベルを測定することができる製剤を有効成分として含むSLE診断用組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記SLE診断用組成物を含むSLE診断用キットを提供する。
【0009】
また、本発明は、(1)SLE患者から分離された試料からAIMP1レベルを測定する段階;(2)前記測定されたAIMP1レベルを対照群試料と比較する段階;及び(3)前記測定されたAIMP1レベルが対照群試料よりも高い場合、SLEと判断する段階;を含むSLE診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、(1)SLE患者から分離された試料からAIMP1レベルを測定する段階;及び(2)前記測定されたAIMP1レベルが5〜20ng/mLである場合、SLEと判断する段階;を含むSLE診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、AIMP1を有効成分として含むSLE予後予測用バイオマーカー組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、AIMP1のレベルを測定することができる製剤を有効成分として含むSLE予後予測用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記SLE予後予測用組成物を含むSLE予後予測用キットを提供する。
【0014】
また、本発明は、(1)SLE患者から分離された試料からAIMP1レベルを測定する段階;及び(2)前記測定されたAIMP1レベルが10〜20ng/mLである場合、活性SLEと判断する段階;を含むSLE予後予測に必要な情報を提供する方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、AIMP1を有効成分として含むSLE診断用バイオマーカー組成物及びそれを用いたSLE診断方法に関するものであって、詳細には、AIMP1を含むSLE診断用バイオマーカー組成物、それを用いたSLE診断キット及びSLE診断方法を提供する。また、本発明は、AIMP1を有効成分として含むSLE予後予測用バイオマーカー組成物及びそれを用いたSLE予後予測キット及びSLE予後予測方法を提供する。したがって、本発明のAIMP1は、SLE診断及び予後予測に有用に活用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】SLEを有した患者及び元気な対照群間の血清AIMP1の比較結果を示す。活性及び安定SLEを有した患者のいずれも元気な対照群に比べて、平均血清AIMP1がさらに高く表われた。データは、平均と表示し、エラーバーは、四分位範囲(interquartile ranges;IQR)と表示した。
*p<0.001。
【
図2】SLEを有した患者で疾患活性または炎症因子と関連した実験変数と血清AIMP1の関連性を示す。血清AIMP1は、SLEDAI−2Kと非常に関連しており、血清AIMP1は、疾患活性または炎症因子と関連した実験変数とも関連している。
【
図3】活性SLEを予測するための血清AIMP1の最適カットオフ結果を示す。血清AIMP1-10.09ng/mLである患者が、血清AIMP1<10.09ng/mLである患者よりも活性SLEがさらによく観測された[80.5%(29/36患者)vs.49.1%(61/124患者)]。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これにより、本発明者らは、SLEの発病と分泌AIMP1とが互いに関連しているという仮定下に、血清AIMP1とSLE疾患活性との関連性を確認し、SLE疾患活性インデックス(SLE disease activity index;SLEDAI)−2Kに基づいて活性SLEを予測し、本発明を完成した。
【0018】
本発明は、アミノアシルtRNA合成酵素複合体相互作用多機能性タンパク質−1(AIMP1)を有効成分として含む全身性紅斑性狼瘡(SLE)診断用バイオマーカー組成物を提供する。
【0019】
本明細書において、用語「診断」は、特定疾病または疾患に対する一客体の感受性(susceptibility)を判定すること、一客体が特定疾病または疾患を現在有しているか否かを判定すること、特定疾病または疾患にかかった一客体の予後(prognosis)を判定すること、またはセラメトリックス(therametrics)(例えば、治療効能についての情報を提供するために、客体の状態をモニタリングすること)を含む。
【0020】
また、本発明は、AIMP1のレベルを測定することができる製剤を有効成分として含むSLE診断用組成物を提供する。
【0021】
前記AIMP1のレベルを測定する製剤は、当業者に知られている方法で行われるものであれば、制限なしに含まれ、例えば、前記AIMP1に特異的に結合する抗体、ペプチド、アプタマーまたは化合物を含むものであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0022】
また、本発明は、前記SLE診断用組成物を含むSLE診断用キットを提供する。
【0023】
また、本発明は、(1)SLE患者から分離された試料からAIMP1レベルを測定する段階;(2)前記測定されたAIMP1レベルを対照群試料と比較する段階;及び(3)前記測定されたAIMP1レベルが対照群試料よりも高い場合、SLEと判断する段階;を含むSLE診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、(1)SLE患者から分離された試料からAIMP1レベルを測定する段階;及び(2)前記測定されたAIMP1レベルが5〜20ng/mLである場合、SLEと判断する段階;を含むSLE診断に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0025】
本明細書において、用語「試料」とは、AIMP1レベルにおいて、対照群と差が出る組織、細胞、血液、血清、血しょう、唾液、喀痰、脳脊髄液、または尿のような試料を含むが、これに限定されるものではない。望ましくは、血液であり、さらに望ましくは、血清であり得る。
【0026】
また、本発明は、AIMP1を有効成分として含むSLE予後予測用バイオマーカー組成物を提供する。
【0027】
本明細書において、用語、「マーカー」、「生物学的マーカー」、「バイオマーカー」は、互いに交換的に使われる。前記マーカーは、一般的に生物学的試料から検出可能な分子または化合物であって、生体の特定変化を把握することができる指標を言う。本発明において、前記マーカーは、AIMP1であり、これらの代謝産物も、本発明の範疇に含まれる。これらのレベルを測定することにより、SLEを診断するか、予後を予測することができる。
【0028】
また、本発明は、AIMP1のレベルを測定することができる製剤を有効成分として含むSLE予後予測用組成物を提供する。
【0029】
前記AIMP1のレベルを測定する製剤は、当業者に知られている方法で行われるものであれば、制限なしに含まれ、例えば、前記AIMP1に特異的に結合する抗体、ペプチド、アプタマーまたは化合物を含むものであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0030】
また、本発明は、前記SLE予後予測用組成物を含むSLE予後予測用キットを提供する。
【0031】
本明細書において、用語「抗体」とは、当該技術分野に公知の用語であって、抗原性部位に対して指示される特異的な免疫グロブリンを意味する。前述した1つ以上のタンパク質注入を通じて製造されたもの、または販売されて購入したものがいずれも使用可能である。また、前記抗体は、多クローン抗体、単クローン抗体及びエピトープと結合することができる断片などを含む。前記抗体の形態は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を含み、あらゆる兔疫グロブリン抗体が含まれる。前記抗体は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の重鎖を有する完全な形態を意味する。また、前記抗体は、ヒト化抗体などの特殊抗体も含まれる。
【0032】
また、本発明のキットは、マーカー成分に特異的に結合する抗体、基質との反応によって発色する標識体が接合された2次抗体接合体(conjugate)、前記標識体と発色反応する発色基質溶液、洗浄液及び酵素反応停止液などを含み、使われる試薬成分を含む多数の別途パッケージングまたはコンパートメントで製作することができる。
【0033】
本明細書において、用語「ペプチド」は、標的物質に対する結合力が高い長所があり、熱/化学処理時にも変性が起こらない。また、分子サイズが小さいために、他のタンパク質に結合させて融合タンパク質への利用が可能である。具体的に、高分子タンパク質鎖に結合させて利用可能なので、診断キット及び薬物伝達物質として用いられうる。
【0034】
本明細書において、用語「アプタマー(aptamer)」とは、それ自体で安定した三次構造を有しながら標的分子に高い親和性と特異性で結合することができる特徴を有した特別な種類の一本鎖核酸(DNA、RNAまたは変形核酸)で構成されたポリヌクレオチドの一種を意味する。前述したように、アプタマーは、抗体と同様に抗原性物質に特異的に結合することができながらも、タンパク質よりも安定性が高く、構造が簡単であり、合成が容易なポリヌクレオチドで構成されているので、抗体を代替して使われる。
【0035】
一方、前記SLE診断用または予後予測用キットは、分析方法に適した一種またはそれ以上の他の構成成分組成物、溶液または装置をさらに含んで構成することができる。
【0036】
また、本発明は、(1)SLE患者から分離された試料からAIMP1レベルを測定する段階;及び(2)前記測定されたAIMP1レベルが10〜20ng/mLである場合、活性SLEと判断する段階;を含むSLE予後予測に必要な情報を提供する方法を提供する。
【0037】
本明細書において、用語「試料」とは、AIMP1レベルにおいて、対照群と差が出る組織、細胞、血液、血清、血しょう、唾液、喀痰、脳脊髄液、または尿のような試料を含むが、これに限定されるものではない。望ましくは、血液であり、さらに望ましくは、血清であり得る。
【0038】
詳細には、前記AIMP1レベルを測定する方法は、具体的に、前記AIMP1に特異的に結合する抗体を利用するものであり、さらに具体的に、免疫測定法、リガンドバインディングアッセイ、MALDI−TOF(Matrix Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、SELDI−TOF(Sulface Enhanced Laser Desorption/Ionization Time of Flight Mass Spectrometry)分析、放射線免疫分析、放射免疫拡散法、オクタロニー免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動、補体固定分析法、2次元電気泳動分析、液体クロマトグラフィー質量分析(liquid chromatography−Mass Spectrometry、LC−MS)、LC−MS/MS(liquid chromatography−Mass Spectrometry/Mass Spectrometry)、またはELISA(enzyme linked immunosorbent assay)で行うものであり得るが、これらに制限されるものではない。
【0039】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0041】
下記の実験例は、本発明によるそれぞれの実施例に共通して適用される実験例を提供するためのものである。
【0043】
本発明者らは、SLEを有した患者160人の医療記録を検討したが、これらは、大韓民国の延世大学校医科大学セブランス病院リウマチ内科で初めてSLEと診断され、2015年3月から2016年9月まで血清検査のために血液を提供した。選定基準は、次の通りである。
【0044】
1)1997年改定されたSLEに対する米国リウマチ学会分類基準を満たす患者;2)SLE以外の腫瘍、炎症性疾患及び自己免疫疾患のように血清AIMP1、赤血球沈降速度(erythrocyte sedimentation rate;ESR)及びC反応性タンパク質(C−reactive protein;CRP)に影響を及ぼす医学的要因がいない患者、3)臨床記録及び血清保管日が同じである血清で評価され、測定されたSLEDAI−2Kの実験項目によってよく整理された医療記録を有した患者、4)血清保管日が同じである血清から測定されたSLEDA1−2K以外に他の炎症因子関連実験結果を有した患者。元気な対照群(n=43)の血清サンプルは、セブランス病院健康検診センターで提供した同意書に同意した元気な志願者から得た。本研究は、セブランス病院の医学研究倫理審査委員会によって承認され、ヘルシンキ宣言に規定された原則によって行われた。
【0046】
人口統計学的結果は、年齢、性別及び有病期間を含む。SLEDAI−2Kは、SLE疾患活性に対する指標として使用し、臨床特性及び血清保管日が同じである血清から測定された抗ds DNA、補体(complement;C)3、C4、白血球(white blood cells;WBCs)、リンパ球及び血小板の数及びヘモグロビンのようにSLEDAI−2Kに属する収集された実験結果を使用して計算した。また、本発明者らは、SLEDAI−2K実験項目以外のESR及びCRPのようにSLEの炎症因子を示す実験データも検討した。本発明者らは、活性化または安定化されたSLEを分類するために、SLEDAI−2K点数を5でカットオフ(cut−off)させ、SLEDAI−2K点数の合計が5以上である患者を活性化されたSLEと定義した。あらゆる実験データは、血清保管日が同じである血清を測定して得た。薬物は、大韓民国医薬品処方調剤支援システムを使用して確認し、最近投薬された薬物は計数した。
【0048】
本発明者らは、SLE患者及び元気な対照群の保管血清サンプルを使用して血清AIMP1レベルを測定した。ヒトAIMP1 ELISAキットは、Cloud−Clone Corp.(Houston、TX 77084、USA)から購入し、AIMP1レベルは、製造社の指示によって測定した。簡単に説明すれば、サンプルは、PBSで1:5の比率で希釈し、100mlサンプルを各ウェルに添加し、プレートを密封して37℃で1時間反応させた。次いで、100mlの検出試薬A作用溶液を各ウェルに添加し、プレートを密封して37℃で1時間反応させた。各ウェルは、350mlの洗浄溶液で3回洗浄した。100mlの検出試薬B作用溶液を各ウェルに添加し、プレートを密封して37℃で30分間反応させた。プレートは、洗浄緩衝液で5回洗浄した。基質溶液として100mlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(3,3’,5,5’−Tetramethylbenzidine;TMB)を添加し、常温で光なしに15分間反応させた。次いで、50mlの中断溶液(0.1N 硫酸)を添加し、450nmで各ウェルのO.D数値を測定した。
【0050】
連続型変数は、四分位範囲(IQR)の中央値(median)を示し、範疇型変数は、頻度及び百分率で表示した。連続型変数は、Student´s t−testを使用して比較し、範疇型データは、chi−square testまたはFisher´s exact testを使用して比較した。SLEDAI−2Kによる血清AIMP1と、疾患活性または炎症因子と関連した実験変数の間の訂正は、Pearson´s correlation analysisを使用して評価した。単変量分析において、オッズ比(odds ratio;OR)は、多変量ロジスティック回帰分析を使用してあらゆる変数に対してp−数値<0.05で測定した。活性SLEを予測するための血清AIMP1の適正カットオフ数値は、収容者反応特性曲線(receiver operator characteristic curve;AUROC)下の領域を計算して評価し、活性及び安定SLEに対する血清AIMP1の相対危険度(relative risk;RR)は、分割表(contingency tables)及びchi−square testを使用して分析した。あらゆる統計学的分析は、GraphPad Prism version 5.0(GraphPad Software、San Diego、California、USA)及びSPSS package for Windows version 21(SPSS Inc.,Chicago、Illinois、USA)を使用して行い、両側検定(two−tailed)p−数値<0.05が統計学的有意性があると判断された。
【0051】
<実施例1>活性及び安定SLEを有した患者特性
【0052】
SLE患者の特性は、表1に示した。平均年齢は、41.0であり、患者の90.0%が女子であった。患者の平均有病基間は、79.0月であった。平均SLEDAI−2K及び血清AIMP1レベルは、それぞれ4.5及び6.8ng/mLであった。グルココルチコイド(Glucocorticoid)が最も多く投薬され(76.8%)、次いで、ヒドロキシクロロキン(hydroxychloroquine)(42.5%)及びモフェチル(mofetil)(22.5%)が投薬された。
【0053】
あらゆるSLE患者をSLEDAI点数5でカットオフして、活性及び安定SLEグループに均一に再分類した(各グループ当たり80人の患者)。2つのグループ間の年齢及び性別において、有意的差異点はなかったが、安定SLEを有した患者が活性SLEを有した患者に比べてさらに長い有病基間を有した。活性SLEを有した患者は、安定SLEを有した患者に比べて平均SLEDAI−2Kがさらに高かった(7.0vs.2.0、p<0.001)。また、活性SLEを有した患者は、白血球数を除いてはSLE疾患活性増加及び炎症要因拡張を反映する因子と大きく関連しているという実験結果を示した。活性SLEを有した患者は、安定SLEを有した患者に比べて平均血清AIMP1がさらに高かった(8.0vs.6.4ng/mL、p<0.001)。活性及び安定SLEを有した患者の間において、共に投薬された薬物による差異点は、統計的に明白ではなかった(表1)。
【0055】
<実施例2>SLEを有した患者及び元気な対照群間の血清AIMP1の比較
【0056】
SLEを有した患者及び元気な対照群間の血清AIMP1を比較すれば、活性及び安定SLEを有した患者いずれも元気な対照群に比べて、平均血清AIMP1がさらに高く表われることを確認した(活性SLEの平均血清AIMP1 vs 元気な対照群の平均、p<0.001及び安定SLEの平均血清AIMP1 vs 元気な対照群の平均、p<0.001)(
図1)。
【0057】
<実施例3>SLEを有した患者で疾患活性または炎症因子と関連した実験変数と血清AIMP1の関連性
【0058】
本発明者らは、SLEを有した患者でSLEDAI−2K及び疾患活性または炎症因子と関連した実験変数と血清AIMP1の関連性を確認した.血清AIMP1は、SLEDAI−2Kと非常に関連している(r=−0.347、p<0.001)。また、血清AIMP1は、疾患活性または炎症因子と関連した実験変数とも関連している。実験変数のうち、血清AIMP1は、C3と最も強く関連しており(r=−0.340、p<0.001)、ヘモグロビン(r=−0.302、p<0.001)及び抗ds DNA(r=0.278、p<0.001)とも非常に関連している(
図2)。
【0059】
<実施例4>活性SLEに対する有用な予測マーカーとしての血清AIMP1
【0060】
本発明者らは、ROC分析を使用して、活性SLEを予測するために血清AIMP1の最適カットオフを計算した。活性SLE予測のための最適血清AIMP1のカットオフは、10.09ng/mLであると表われた[AUROC 0.634、95%信頼区間(confidence interval;CI)0.554−0.708、p=0.002]。最適カットオフによって2個のグループに患者を分類すれば、血清AIMP1-10.09ng/mLである患者が、そうではない患者よりも活性SLEがさらによく観測された(80.5% vs.49.1%、p<0.001)。その上に、血清AIMP1-10.09ng/mLである患者で活性SLEの危険度が、そうではない患者よりもはるかに高かった(RR 1.638、95% CI 1.287−2.082、p<0.001)(
図3)。
【0061】
最終的に、SLEDAI−2Kに基づいた活性SLE予測のための血清AIMP1の可能性を明確にするために、単変量及び多変量ロジスティック回帰分析を行った。単変量分析において、白血球数を除いては疾患活性または炎症因子関連実験変数が活性及び安定SLEの区別に有用であるということを表わした。しかし、多変量分析においては、血清AIMP1-10.09ng/mL(OR 3.919、95% CI 1.222−12.564、p=0.021)、C3(OR 0.957、95% CI 0.938−0.976、p<0.001)、リンパ球数(OR 0.998、95% CI 0.997−0.999、p<0.001)、ESR(OR 1.029、95% CI 1.007−1.051、p=0.008)が活性及び安定SLEの差の区別に有用であると表われた(表2)。
【0063】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい具現例であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物とによって定義される。