(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]発酵培養方法
本発明の発酵培養方法は、液体培地でプラセンタを担子菌の菌糸体によって発酵培養する方法であって、酸素を含む気体を液体培地中に供給しながら培養する。限定されるものではないが、本発明の発酵培養方法によって、本発明の発酵物を得ることができる。
【0009】
《プラセンタ》
本発明の発酵培養方法で用いられるプラセンタは、特に限定されるものでなく、哺乳動物の胎盤、臍帯、及び羊膜の3つを含んだものでもよく、胎盤、臍帯、又は羊膜を単独で用いてもよく、それらの2つを混合したものでもよい。
発酵培養方法においては、プラセンタを、そのまま発酵培養に用いてもよいが、塩酸又はタンパク質分解酵素を用いて加水分解した分解物(抽出物)、又は臨界抽出などによって得られる抽出物を、発酵培養に用いてもよい。このような分解物又は抽出物を、本明細書では、プラセンタエキスと称することがある。
プラセンタエキスは、哺乳動物のプラセンタを塩酸又はタンパク質分解酵素を用いて加水分解したものでもよく、更に遠心分離もしくは濾過等によって不溶成分を分離除去したものでもよい。また、プラセンタを臨界抽出し、プラセンタエキスを得ることもできる。前記哺乳動物も特に限定されるものではないが、例えばブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、又はヒトなどが挙げられる。プラセンタには、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、酵素並びに成長因子及びその誘導因子などが含まれている。
プラセンタを担子菌の菌糸体で発酵することにより、プラセンタ中の特定の成分から、OHラジカル消去能又は過酸化脂質生成抑制能を有する成分が形成されると考えられる。
【0010】
《担子菌》
担子菌は、キノコのうち担子菌門に属するものを示す。本発明に用いられる担子菌は、特に限定されるものではないが、ハラタケ目、ヒダナシタケ目、ホコリタケ目、ヒメノガステル目、又はキクラゲ目が挙げられ、好ましくはハラタケ目である。
【0011】
ハラタケ目としては、ハラタケ科、キシメジ科、ヒラタケ科、スエヒロタケ科、イグチ科、オウギタケ科、オニイグチ科、オキナタケ科、テングタケ科、ナヨタケ科、フウセンタケ科、カンゾウタケ科、ヌメリガサ科、ベニタケ科、モエギタケ科、又はイッポンシメジ科等が挙げられ、好ましくはハラタケ科、ヒラタケ科、又はスエヒロタケ科である。
ヒダナシタケ目としては、マンネンタケ科、サンゴハリタケ科、カノシタ科、多孔菌科、サルノコシカケ科、ミヤマトンビマイタケ科、シロソウメンタケ科、エゾハリタケ科、又はハナビラタケ科等、ホコリタケ目としては、ホコリタケ科等、ヒメノガステル目としては、ショウロ科等、キクラゲ目としては、ヒメキクラゲ科等が挙げられる。
【0012】
ハラタケ科として、ハラタケ、シロオオハラタケ、ツクリタケ、ザラエノハラタケ、ウスキモリノカサ、又はタヌキノチャブクロ(以上、ハラタケ属)、ササクレヒトヨタケ(ササクレヒトヨタケ属)、カラカサタケ(カラカサタケ属)、又はオニタケ(キツネノカラカサタケ属)が挙げられる。キシメジ科として、ハタケシメジ、又はホンシメジ(シメジ属)、ブナシメジ(シロタモギタケ属)、マツタケ、ミネシメジ、アイシメジ、シロシメジ、ケショウシメジ、又はシモフリシメジ(キシメジ属)、シイタケ(シイタケ属)、エノキタケ(エノキタケ属)、ホテイシメジ、カヤタケ、又はヒメシロタモギタケ(カヤタケ属)、ナラタケ、キツブナラタケ、ナラタケモドキ、オニナラタケ、又はクロゲナラタケ(ナラタケ属)、スギエダタケ(スギエダタケ属)、フチドリツエタケ(ツエタケ属)、モリノカレバタケ、又はアマタケ(モリノカレバタケ属)、カワムラフウセンタケ、又はムラサキアブラシメジモドキ(フウセンタケ属)、オドタケ(ヒメヒロヒダタケ属)、カクミノシメジ(シメジ属)、マツカサシメジ(マツカサキノコ属)、又はヌメリツバタケモドキ(ツエタケ属)が挙げられる。ヒラタケ科として、ヒラタケ、タモギタケ、エリンギ、オオヒラタケ、クロアワビタケ、ヒマラヤヒラタケ、又はタマシロノタケ(ヒラタケ属)が挙げられる。スエヒロタケ科として、スエヒロタケ(スエヒロタケ属)が挙げられる。イグチ科として、オオウラベニイロガワリ、又はムラサキヤマドリタケ(ヤマドリタケ属)が挙げられる。オウギタケ科として、オウギタケ(オウギタケ属)が挙げられる。オニイグチ科として、オオキノボリイグチ(キクバナイグチ属)が挙げられる。オキナタケ科としては、ヤナギマツタケ、ツチナメコ、又はフミヅキタケ(フミヅキタケ属)が挙げられる。テングタケ科としては、ガンタケ、又はカバイロツルタケ(テングタケ属)が挙げられる。ナヨタケ科として、ムササビタケ、又はイタチタケ(以上、ナヨタケ属)、ヒトヨタケ(以上、ヒトヨタケ属)、又はササクレヒトヨタケ(ササクレヒトヨタケ属)が挙げられる。フウセンタケ科として、ショウゲンジ(フウセンタケ属)、ナガエノスギタケ(ワカフサタケ属)が挙げられる。カンゾウタケ科として、カンゾウタケ(カンゾウタケ属)が挙げられる。ヌメリガサ科として、アカヤマタケ(アカヤマタケ属)、サクラシメジ(ヌメリガサ属)、又はオトメノカサ(オトメノカサ属)が挙げられる。ベニタケ科として、アイタケ(ベニタケ属)、又はアカモミタケ(チチタケ属)が挙げられる。モエギタケ科として、サケツバタケ(モエギダケ属)、ナメコ、又はヌメリスギタケモドキ(スギタケ属)、又はクリタケ(クリタケ属)が挙げられる。イッポンシメジ科としてウラベニホテイシメジ(イッポンシメジ属)が挙げられる。好ましくは、スエヒロタケ科(例えば、スエヒロタケ(スエヒロタケ属))、ハラタケ科(例えば、ササクレヒトヨタケ(ササクレヒトヨタケ属))、又はヒラタケ科(例えば、タモギタケ(ヒラタケ属))である。
【0013】
《菌糸体》
担子菌は、通常、糸状の細胞列である菌糸からなる菌糸体と呼ばれる構造を有している。本発明で使用される担子菌は、菌糸体の状態で発酵に用いられる。一方、担子菌は、胞子を作るときに複数の菌糸が寄り集まって複雑な構造を作ることがある。これは、いわゆる「キノコ」と呼ばれるものであり、この複雑な構造となったものは子実体と呼ばれる。本発明の発酵においては、子実体でなく、菌糸体が用いられる。
菌糸体は、直径数μm、長さ数mm〜数cmの繊維状である。自然界では、菌糸体は外力を受けない場所で発育する。また、好気的条件を好み酸素要求性が高い。液体培養する場合には、せん断力がかからないようにしながら、酸素を溶存させる必要がある。
【0014】
《発酵》
本明細書において、「発酵」とは、微生物が嫌気的にエネルギーを得る狭義の発酵ではなく、微生物が発酵食品など人間に有益な有機物を生成する過程全般を意味し、好気的発酵及び嫌気的発酵を含むが、担子菌の菌糸体による発酵は好気的発酵である。
【0015】
《液体培地》
液体培地は、炭素源及び窒素源を含む限りにおいて、特に限定されるものではない。炭素源及び/又は窒素源を含む成分は、培地に完全に溶解している必要はなく、固体の状態で培地に含まれてもよい。
発酵における炭素源(炭水化物源)は、担子菌が炭素源として使用できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、ブドウ糖、黒糖、デンプン、米、麦、芋、トウモロコシ、米麹、胚芽、玉葱、ショ糖、果糖、ラムノース、ラフィノース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、麦芽糖、トレハロース、キシラン、デキストリン、ソルビトール、サリシン、イノシトール、マンニトール、グリセロール、イヌリン、リボース、ソルボース、マルトース、セロビオース、フラクトース、又はマンノースが挙げられる。
発酵における炭素源の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば1〜100g/Lであり、好ましくは5〜60g/Lであり、より好ましくは10〜45g/Lであり、最も好ましくは15〜40g/Lである。前記の濃度であることにより、優れたOHラジカル消去能、又は過酸化脂質生成抑制能を有する発酵物を得ることができる。
【0016】
発酵における窒素源(タンパク質源)としては、プラセンタが使用される。プラセンタの濃度は、限定されるものではないが、窒素濃度として、例えば0.5〜50g/Lであり、好ましくは1〜40g/Lであり、より好ましくは2〜30g/Lであり、更に好ましくは3〜20g/Lであり、最も好ましくは4〜15g/Lである。前記の濃度であることにより、優れたOHラジカル消去能、又は過酸化脂質生成抑制能を有する発酵物を得ることができる。発酵においては、プラセンタに加えて、他の窒素源を添加してもよい。他の窒素源としては、例えばペプトン、イーストエクストラクト、又はアミノ酸が挙げられる。
【0017】
《培養槽》
培養槽は、酸素を供給できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、下方から酸素を供給し、液体培地を穏やかに対流により攪拌できることから、例えば円筒形の縦型タンクが好ましい。
培養槽は、酸素供給手段を有する。酸素供給手段は、下方から酸素を供給し、気泡によって下方から上方への対流を形成することが好ましい。例えば、
図1に示すように、液体培地中に、酸素供給管を挿入し、下方から酸素を液体培地中に供給することができる。酸素供給管は、培養槽の下方又は中央の側壁から液体中に挿入することもできるが、液体培地の漏れ等を防ぐために、
図1のように上方から挿入するのが好ましい。
また、酸素の吹き出し口の向きは、限定されるものではないが下方が好ましい。吹き出し口が、上方又は側方を向いている場合、菌糸体が吹き出し口で増殖し、目詰まりを起こすことがあるからである。
吹き出し口の数は、特に限定されるものではないが、少なすぎると1つの吹き出し口から供給される気体の量が多くなり、対流が強くなるために菌糸体を損傷させることがある。また、吹き出し口が少なすぎると、1つの吹き出し口から供給される気体の量が少なくなり、対流が弱くなる。従って、菌糸体が下方に堆積し、増殖の効率が低下する。従って、例えば100Lの液体培地に対して、10〜20の吹き出し口が好ましい。
吹き出し口の口径は、特に限定されるものではないが、例えば1〜10mmでありが、好ましくは1.5〜8mmである。
更に、
図2に示すように、吹き出し口を縦型タンクの外側に配置することによって、吹き出し口の周囲に液体培地の上昇対流が形成され、縦型タンクの中央部に液体培地の下降対流が形成される。このような対流が形成されることによって、効率的に菌糸体が発酵培養される。
また、縦型タンクの直径に対する高さの比は特に限定されるものではないが、好ましくは1:1〜1:4であり、より好ましく1:2〜1:3である。
【0018】
《酸素供給量》
酸素の供給量は、担子菌の菌糸体が発酵培養できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば液体培地1容量部に対して0.01〜1容量部/分であり、好ましくは0.02〜0.4容量部/分であり、より好ましくは0.03〜0.2容量部であり、更に好ましくは0.04〜0.16容量部/分であり、最も好ましくは0.06〜0.14容量部/分である。
酸素を含む期待としては、空気が挙げられる。気体として空気を使用する場合は、例えば液体培地1容量部に対して0.05〜5容量部/分であり、好ましくは0.1〜2容量部/分であり、より好ましくは0.15〜1容量部であり、更に好ましくは0.2〜0.8容量部/分であり、最も好ましくは0.3〜0.7容量部/分である。前記範囲であることにより、培養により菌糸体が破壊されずに、効率的に発酵物を得ることができる。
酸素を含む気体としては、空気以外に、不活性ガスを用いることができ、例えば窒素、アルゴンなどを用いることができる。
【0019】
本発明の発酵培養方法においては、限定されるものではないが、担子菌の菌糸体が、
図3に示すように、まりも状の菌糸体を形成することが好ましい。まりも状の菌糸体を形成すると、菌糸体の損傷が少ないと考えられる。前記の酸素供給量の範囲であることにより、最適な対流が得られ、まりも状の菌糸体が形成されると考えられる。
【0020】
《抽出》
本発明の発酵培養方法で得られた発酵物は、有効成分を抽出してもよい。抽出方法は、本分野で通常用いられている方法を制限なく使用することができる。例えば、菌糸体を培養液中で、チョッパー、又はミキサーなどの破砕機を用いて破砕し、加温抽出することができる。抽出温度は、特に限定されるものではないが、例えば0〜100℃であり、好ましくは30〜95℃であり、より好ましくは60〜90℃である。抽出時間も特に限定されるものではないが、例えば1分〜24時間であり、より好ましくは2分〜5時間であり、更に好ましくは3分〜1時間であり、更に好ましくは5〜30分である。例えば、菌糸体を培養液中で、チョッパー、又はミキサーなどの破砕機を用いて破砕し、加温抽出することができる。抽出温度は、特に限定されるものではないが、例えば0〜100℃であり、好ましくは30〜95℃であり、より好ましくは60〜90℃である。抽出時間も特に限定されるものではないが、例えば1分〜24時間であり、より好ましくは2分〜5時間であり、更に好ましくは3分〜1時間であり、更に好ましくは5〜30分である。
抽出の溶媒として、水性の培養液をそのまま用いてもよいが、有機溶媒(例えば、アルコール)を用いて、特定の有効成分を抽出してもよい。
【0021】
[2]発酵物
本発明の発酵物は、本発明の発酵培養方法により得られる。
【0022】
《化粧料組成物》
本発明の化粧料組成物は、本発明の発酵物を含む。本発明の発酵物を含むことにより、優れたOHラジカル消去能及び/又は過酸化脂質生成抑制能を示す。前記発酵物は、プラセンタエキスを含んでおり、抗炎症作用、脱顆粒抑制作用、及びチロシナーゼ阻害作用を示す。発酵物は、更にヒドロキシラジカル消去能を示す。従って、効果的な美白作用を示す。
また、本発明の発酵物はプラセンタエキスを含んでおり、繊維芽細胞賦活作用、及びコラーゲン合成促進作用を示す。更にヒドロキシラジカル消去能を示す。従って、効果的なシワの予防効果を示す。
【0023】
本発明の化粧料組成物における発酵物の含有量は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではないが、発酵液として、例えば0.1〜100重量%であり、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは50〜100重量%である。
【0024】
本発明の化粧料組成物は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、保湿剤(例えば、トリメチルグリシン、塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]加水分解コムギたん白液、ヒアルロン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホホバ油、加水分解ケラチン)、着色剤(例えば、顔料、又は色素)、粘度調整剤(例えば、メチルセルロース)、乳化剤(例えば、モノステアリン酸グリセリン)、パール光沢付与剤(例えば、ジステアリン酸グリコール、又はジステアリン酸エチレングリコール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム)、植物エキス類、防腐剤、ビタミン剤、香料、紫外線吸収剤、抗酸化剤、湿潤剤、キレート剤、pH調整剤(例えば、クエン酸、又は酒石酸)水を含むことができる。
【0025】
《食品組成物》
本発明の食品組成物は、本発明の発酵物を含む。本発明の発酵物を含むことにより、優れたOHラジカル消去能及び/又は過酸化脂質生成抑制能を示す。前記発酵物は、プラセンタエキスを含んでおり、抗炎症作用、脱顆粒抑制作用、チロシナーゼ阻害作用、繊維芽細胞賦活作用、及びコラーゲン合成促進作用を示す。本発明の発酵物は、更にヒドロキシラジカル消去能を示す。すなわち、本発明の食品組成物は、多様な作用を示すことができる。
【0026】
食品としては、具体的には、サラダなどの生鮮調理品;ステーキ、ピザ、ハンバーグなどの加熱調理品;野菜炒めなどの炒め調理品;トマト、ピーマン、セロリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガスなどの野菜及びこれら野菜を加工した調理品;クッキー、パン、ビスケット、乾パン、ケーキ、煎餅、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム類、チューインガム、クラッカー、チップス、チョコレート及び飴等の菓子類;うどん、パスタ、及びそば等の麺類;かまぼこ、ハム、及び魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;チーズ、クリーム、及びバターなどの乳製品;みそ、しょう油、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、スープの素、麺つゆ、カレー粉、みりん、ルウ等の調味料類;豆腐などの大豆食品;並びにこんにゃくなどを挙げることができる。食品は、好ましくは、乳製品、大豆食品、プリン、ゼリー、アイスクリーム、レトルト食品、即席ルウ、調味料、シーズニング、カレーパウダー、又はスープである。
【0027】
飲料としては、例えばコーヒー飲料;ココア飲料;前記の野菜から得られる野菜ジュース;グレープフルーツジュース、オレンジジュース、ブドウジュース、及びレモンジュース等の果汁飲料;緑茶、紅茶、煎茶、及びウーロン茶等の茶飲料;ビール、ワイン(赤ワイン、白ワイン、又はスパークリングワインなど)、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、及びリキュール類等のアルコール飲料;乳飲料;豆乳飲料;流動食;並びにスポーツ飲料などを挙げることができる。飲料は、好ましくは、コーヒー飲料、果汁飲料、緑茶飲料、煎茶、ウーロン茶、コーヒー飲料、ココア飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、流動食、又はスポーツ飲料である。
【0028】
本発明の食品組成物は、例えば粉末状、顆粒状、固形状、液状、カプセル状、ペースト状、ゲル状、又は錠剤状であることができる。
【0029】
これらの食品又は飲料には、所望により、酸化防止剤、香料、酸味料、着色料、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、香辛料、pH調整剤、安定剤、酸化防止剤、植物油、動物油、糖及び糖アルコール類、ビタミン、有機酸、果汁エキス類、野菜エキス類、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品添加物及び食品素材を単独で又は2種以上組み合わせて配合することができる。これらの食品素材及び食品添加物の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜決定することができる。
【0030】
食品及び飲料には、機能性食品(飲料)、健康食品(飲料)、又は特定保健用食品が含まれる。本明細書において「健康食品(飲料)」とは、健康に何らかの効果を与えるか、あるいは、効果を期待することができる食品又は飲料を意味し、「機能性食品(飲料)」とは、前記「健康食品(飲料)」の中でも、前記の種々の生体調節機能(すなわち、消化器系、循環器系、内分泌系、免疫系、又は神経系などの生理系統の調節機能)を充分に発現することができるように設計及び加工された食品又は飲料を意味する。「特定保健用食品」とは、生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示できる食品である。本発明の食品組成物は、好ましくは健康食品(飲料)であり、更に好ましくは機能性食品(飲料)又は特定保健用食品である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0032】
《実施例1》
本実施例では、スエヒロタケの菌糸体を用いてプラセンタエキスの発酵物を作製した。
日本産のブタ胎盤2kgを含む水溶液に、蛋白分解酵素を添加し、加水分解により、胎盤酵素分解液(プラセンタエキス)を得た。得られた胎盤酵素分解液の総窒素量はおよそ5.0mg/mLであった。前記胎盤酵素分解液1000mLに、ブドウ糖(林純薬工業)20gを溶解し、乳酸(藤井薬品;食品添加物90%水溶液)を用いてpH4.0に調整した。得られた液体培地をオートクレーブにて滅菌した。
【0033】
スエヒロタケ(commune;独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターより分譲されたNBRC30749株)の菌糸体を、サブロー寒天培地(栄研化学)に播種し、25℃にて静置培養した。シャーレ全面に菌糸体が蔓延したものを、直径5mmのディスクに刳り貫き、プラセンタエキスを含む液体培地1000mLに、10ディスクを植菌した。
発酵タンクは、直径12cm、高さ20cmの高密度ポリエチレン製ボトル(2000mL)に、空気供給口および排気口を有する蓋を取り付けた。空気供給口には、内径8mmのシリコンチューブをつけボトル内に底面から3cmまでたらし、液体培地に空気を送り込めるように調整した。空気はインラインフィルターにて無菌化した。
25℃に調整した室内にて、液体培地1000mLに対し、無菌化した空気を500mL/minで送風し、酸素を供給した。シリコンチューブ先端にはステンレス製の重りをつけ、底面からの距離を一定に保った。
【0034】
発酵培養により、まりも状の菌糸体塊が形成された。7日後に1%相当のブドウ糖を追加し、14日後に、培養液を回収した。
菌糸体に含まれる成分を抽出するために、破砕機(チョッパー)を用いて菌糸体を粉砕した。破砕した菌糸体から60℃、30分間の加温抽出行い、菌糸体等を除去して発酵液を得た。
【0035】
《実施例2》
本実施例では、10,000mLの発酵培養を行った。
空気供給口および排気口を有する、直径30cm高さ30cmのステンレス製タンク(20L)を用いたことを除いては、実施例1の操作をくりかえして、培養液を回収した。プラセンタエキスを含む液体培地10,000mLに50ディスクを植菌し、液体培地10,000mLに対し無菌化した空気1500mL/minを分岐して送風した。
【0036】
《実施例3》
本実施例では、150,000mLの発酵培養を行った。
空気供給口および排気口を有する、直径57cm高さ90cmのステンレス製タンク(200L)を用いたことを除いては、実施例1の操作をくりかえして、培養液を回収した。実施例2の10,000mLの発酵培養方法にてプレ培養を行い、150,000mLの種菌とした。液体培地150,000mLに対し無菌化した空気を8000mL/minを分岐して送風した。
【0037】
《OHラジカル消去能の測定》
実施例1で得られた発酵液のOHラジカル消去能を測定した。コントロールとして、実施例1の胎盤酵素分解液の沈殿物を除去した液(比較例1)を用いた。試験条件を揃えるために、各液を濃縮・凍結乾燥をして総窒素量を測定した。そして、総窒素量が10.0mg/mLになるように精製水で溶解して用いた。
発酵液(実施例1)および胎盤酵素分解液(比較例1)をサンプル希釈液で、10%、1%、0.1%、及び0.01%に希釈した。1.5mLチューブに希釈した発酵液(50μL)または希釈した胎盤酵素分解液(50μL)、及び50μLの1.5mL過酸化水素を加えた。また、ブランクには1.5mM H
2O
2の代替として精製水を用いた。ボルテックスミキサーを用いて溶液を混合し、37℃で20分間インキュベートした。前記溶液(10μL)を、1.49mLの100mmol/LのDA−64及び0.5%TritonX−100含有0.1mol/LPIPES緩衝液を加えた5mLチューブに加え、ボルテックスミキサーを用いて溶液を混合した。37℃で5分間インキュベートした後に、96穴マイクロプレートに溶液200μLを加え、マイクロプレートリーダーを用いて727nmの吸光度を測定した。実施例および比較例の吸光度からOHラジカル消去率を次式により算出した。
消去率(%)={(C−CB)−(S−SB)}/(C−CB)×100
C:対照の吸光度
CB:対照のブランク吸光度
S:試験品の吸光度
SB:試験品のブランク吸光度
【表1】
比較例1の従来のプラセンタエキスと比較し、実施例1の発酵液には有意なOHラジカル消去能が認められた。
【0038】
《過酸化脂質生成抑制の測定》
実施例1で得られた発酵液の過酸化脂質の生成抑制を測定した。コントロールとして、実施例1の胎盤酵素分解液(プラセンタエキス)(以下、比較例1と称します)を用いた。試験条件を揃えるために、各液を濃縮・凍結乾燥をして総窒素量を測定した。そして、総窒素量が10.0mg/mLになるように精製水で溶解して用いた。
発酵液(実施例1)および胎盤酵素分解液(比較例1)をサンプル希釈液で、10%、1%、0.1%、及び0.01%に希釈した。1.5mLチューブに、1.2mLの0.26μリノール酸含有10mMSodium Dodecyl Sulfate溶液、希釈した発酵液(15μL)または希釈した胎盤酵素分解液(15μL)15μLを加え、ソニケーションにより溶液を混合した。また、ブランクにはPBSを用いた。1.5mLチューブに6μLの0.2%2,2−Azobis(2−methylpropionamidine)Dihydrochloride(AAPH)溶液を加え、ソニケーションとボルテックスミキサーにより溶液を混合した。紫外線透過型96ウェルマイクロプレートに、200μL分取し、マイクロプレートリーダーを用いて、233nmの吸光度を測定した。プレートシールによりマイクロプレートを密封し、50℃で90分間インキュベートした。90分後、マイクロプレートを270rpmで30秒間振とうした後、マイクロプレートリーダーを用いて233nmの吸光度を測定した。実施例1および比較例1の吸光度から過酸化脂質生成抑制率を次式により算出した。
過酸化脂質生成抑制率(%)={(C−CB)−(S−SB)}/(C−CB)×100
C:対照の吸光度
CB:対照のブランク吸光度
S:試験品の吸光度
SB:試験品のブランク吸光度
【表2】
比較例1の従来のプラセンタエキスと比較し、実施例1の発酵液には有意な過酸化脂質生成抑制が認められた。