(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相対関係値取得部は、複数の前記衛星それぞれのうち、前記観測開始位置に最も近い前記衛星に関し、当該観測開始位置からの離間距離を前記相対関係値として取得する、
請求項1に記載の位置誤差予測装置。
複数の前記衛星それぞれの前記観測開始位置からの距離のうち、残差のばらつきが最も小さくなる前記相関関数が得られる距離を前記距離閾値として設定する閾値設定部を更に備える、
請求項5に記載の予測モデル生成装置。
前記基準地点と前記衛星との疑似距離を計測し、当該衛星の前記観測開始位置から、前記疑似距離が所定量以上変化したときの当該衛星の位置までの距離を、前記衛星別の前記距離閾値として設定する閾値設定部を更に備える、
請求項5に記載の予測モデル生成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
位置誤差に大きな影響を与える要因の一つとして、受信機が高層ビル等の遮蔽物により反射された信号(反射波)受信してしまう「マルチパス」が挙げられる。
しかしながら、従来の技術では、受信機が衛星からの信号を直接受信することが前提となっており、マルチパスに起因する位置誤差を予測する手段は考えられていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
本発明の第1の態様によれば、位置誤差予測装置(1)は、位置誤差の予測を行う対象地点の対象日時において受信可能な衛星の位置を取得する衛星位置取得部(154)と、前記衛星の位置と、前記対象地点における当該衛星の観測開始位置との相対関係値を取得する相対関係値取得部(151)と、前記相対関係値と、予め生成された位置誤差の予測モデルとに基づいて、前記対象地点の前記対象日時における位置誤差を予測する誤差予測部(155)と、を備える。
例えば対象地点の周囲に建物等の遮蔽物がある場合、位置誤差予測装置は、衛星が遮蔽物により完全に遮蔽されない位置(即ち、観測開始位置)に達すると、当該衛星からの信号を受信することができるようになる。しかしながら、観測開始位置付近においては、衛星からの信号が遮蔽物に反射された反射波を受信してしまうマルチパスが発生する可能性がある。このため、上述の態様に係る位置誤差予測装置は、衛星の位置と、当該衛星の観測開始位置との相対関係値に基づいて位置誤差を予測する。これにより、位置誤差予測装置は、マルチパスによる影響を加味した位置誤差の予測を行うことができる。ここで、観測開始位置として、同一日時または複数の日時において衛星の観測を行った際に、一定以上の割合(頻度)で当該衛星が観測不可状態から可能状態に切り替わった位置が設定されてもよい。また、観測開始位置として、位置誤差を予測する地点において、上方を撮影した画像中の遮蔽物の境界から所定距離離れた位置が設定されてもよい。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る位置誤差予測装置(1)において、前記相対関係値取得部(151)は、複数の前記衛星それぞれの前記観測開始位置から所定の距離閾値以内に位置する前記衛星の数を前記相対関係値として取得する。
このようにすることで、位置誤差予測装置は、観測開始位置から所定の距離閾値以内に位置する衛星の数に基づいて、観測開始位置付近におけるマルチパスの影響を加味した位置誤差を予測することができる。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に係る位置誤差予測装置(1)において、前記相対関係値取得部(151)は、複数の前記衛星それぞれのうち、前記観測開始位置に最も近い前記衛星に関し、当該観測開始位置からの離間距離を前記相対関係値として取得する。
このようにすることで、位置誤差予測装置は、観測開始位置からの離間距離に基づいて、観測開始位置付近におけるマルチパスの影響を加味した位置誤差を予測することができる。
【0010】
本発明の第4の態様によれば、予測モデル生成装置(10)は、基準地点において受信可能な衛星の観測開始位置を特定する観測開始位置特定部(150)と、前記衛星の位置と、当該衛星の前記観測開始位置との相対関係値を取得する相対関係値取得部(151)と、前記基準地点における位置誤差を計測する誤差計測部(152)と、前記相対関係値と前記位置誤差とに基づいて、任意の地点における位置誤差の予測に用いる予測モデルを生成する予測モデル生成部(153)と、を備える。
このようにすることで、予測モデル生成装置は、観測開始位置付近におけるマルチパスによる影響を加味した位置誤差の予測モデルを生成することができる。
【0011】
本発明の第5の態様によれば、第4の態様に係る予測モデル生成装置(10)において、前記相対関係値取得部(151)は、複数の前記衛星それぞれの前記観測開始位置から所定の距離閾値以内に位置する前記衛星の数を前記相対関係値として取得し、前記予測モデル生成部は、前記衛星の数と前記位置誤差との相関関数を前記予測モデルとして生成する。
このようにすることで、予測モデル生成装置は、観測開始位置から所定の距離閾値以内に位置する衛星の数に基づいて、観測開始位置付近におけるマルチパスの影響を加味した位置誤差の予測モデルを生成することができる。これにより、予測モデル生成装置は、位置誤差の予測精度を向上させることができる。
【0012】
本発明の第6の態様によれば、第5の態様に係る予測モデル生成装置(10)は、複数の前記衛星それぞれの前記観測開始位置からの距離のうち、残差のばらつきが最も小さくなる前記相関関数が得られる距離を前記距離閾値として設定する閾値設定部(156)を更に備える。
このようにすることで、予測モデル生成装置(10)は、位置誤差と衛星数との相関が強くなる距離閾値を設定して予測モデルを生成するので、位置誤差の予測精度を更に向上させることができる。
【0013】
本発明の第7の態様によれば、第5の態様に係る予測モデル生成装置(10)は、前記基準地点と前記衛星との疑似距離を計測し、当該衛星の前記観測開始位置から、前記疑似距離が所定量以上変化したときの当該衛星の位置までの距離を、前記衛星別の前記距離閾値として設定する閾値設定部(156)を更に備える。
このようにすることで、予測モデル生成装置は、疑似距離の変化に基づいて、観測開始位置からどの距離までマルチパスの影響が生じるか衛星別に判断して、距離閾値を設定することができる。これにより、予測モデル生成装置は、位置誤差の予測精度を更に向上させることができる。
【0014】
本発明の第8の態様によれば、第4の態様に係る予測モデル生成装置(10)において、前記相対関係値取得部(151)は、複数の前記衛星それぞれの前記観測開始位置に最も近い前記衛星の当該観測開始位置からの離間距離を前記相対関係値として取得し、前記予測モデル生成部(153)は、前記離間距離と前記位置誤差との相関を示す前記予測モデルを生成する。
このようにすることで、予測モデル生成装置は、観測開始位置からの離間距離に基づいて、観測開始位置付近におけるマルチパスの影響を加味した位置誤差の予測モデルを生成することができる。これにより、予測モデル生成装置は、位置誤差の予測精度を向上させることができる。
【0015】
本発明の第9の態様によれば、第8の態様に係る予測モデル生成装置(10)は、前記位置誤差が所定の誤差閾値以下となる前記離間距離のうち最も小さい離間距離を距離閾値として設定する閾値設定部(156)を更に備え、前記予測モデル生成部(153)は、前記距離閾値以下となる前記離間距離と、前記距離閾値以下のときに計測された前記位置誤差の最大値との相関関数を前記予測モデルとして生成する。
このようにすることで、予測モデル生成装置は、位置誤差と離間距離との相関に基づいて、観測開始位置からどの距離までマルチパスの影響が生じるかを導き出して距離閾値を設定することができる。また、当該距離閾値以下のときに計測された位置誤差の最大値との相関関数を予測モデルとして生成することにより、マルチパスの影響が生じる可能性のある領域において、位置誤差が最大どのくらい発生するかを精度よく予測することができる。
【0016】
本発明の第10の態様によれば、位置誤差予測方法は、位置誤差の予測を行う対象地点の対象日時において受信可能な衛星の位置を取得する衛星位置取得ステップと、前記衛星の位置と、前記対象地点における当該衛星の観測開始位置との相対関係値を取得する相対関係値取得ステップと、前記相対関係値と、予め生成された位置誤差の予測モデルとに基づいて、前記対象地点の前記対象日時における位置誤差を予測する誤差予測ステップと、を有する。
【0017】
本発明の第11の態様によれば、予測モデル生成方法は、基準地点において受信可能な衛星の観測開始位置を特定する観測開始位置特定ステップと、前記衛星の位置と、当該衛星の前記観測開始位置との相対関係値を取得する相対関係値取得ステップと、前記基準地点における位置誤差を計測する誤差計測ステップと、前記相対関係値と前記位置誤差とに基づいて、任意の地点における位置誤差の予測に用いる予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、を有する。
【0018】
本発明の第12の態様によれば、位置誤差予測装置(1)のコンピュータを機能させるプログラムは、前記コンピュータに、位置誤差の予測を行う対象地点の対象日時において受信可能な衛星の位置を取得する衛星位置取得ステップと、前記衛星の位置と、前記対象地点における当該衛星の観測開始位置との相対関係値を取得する相対関係値取得ステップと、前記相対関係値と、予め生成された位置誤差の予測モデルとに基づいて、前記対象地点の前記対象日時における位置誤差を予測する誤差予測ステップと、を実行させる。
【0019】
本発明の第13の態様によれば、予測モデル生成装置(10)のコンピュータを機能させるプログラムは、前記コンピュータに、基準地点において受信可能な衛星の観測開始位置を特定する観測開始位置特定ステップと、前記衛星の位置と、当該衛星の前記観測開始位置との相対関係値を取得する相対関係値取得ステップと、前記基準地点における位置誤差を計測する誤差計測ステップと、前記相対関係値と前記位置誤差とに基づいて、任意の地点における位置誤差の予測に用いる予測モデルを生成する予測モデル生成ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0020】
上述の位置誤差予測装置、予測モデル生成装置、位置誤差予測方法、予測モデル生成方法、及びプログラムによれば、マルチパスによる影響を加味した位置誤差の予測を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態に係る位置誤差予測装置及び予測モデル生成装置について、
図1〜
図8を参照しながら説明する。
【0023】
(機能構成)
図1は、第1の実施形態に係る位置誤差予測装置及び予測モデル生成装置の機能構成を示す図である。
本実施形態に係る位置誤差予測装置1は、衛星測位システムにおける位置誤差を予測するための装置である。位置誤差予測装置1は、不図示の車両に搭載され、車両が位置する地点の位置誤差を予測する。
なお、以下の説明において、位置誤差予測装置1が位置誤差の予測を行う対象とする地点及び日時を、それぞれ「対象地点」及び「対象日時」とも記載する。
【0024】
また、本実施形態に係る位置誤差予測装置1は、予測モデル生成装置10としても機能する。予測モデル生成装置10は、予め選択された複数の地点(以下、「基準地点」とも記載する)それぞれに設置され、基準地点において長期間(少なくとも24時間以上)にわたって計測されたデータを収集して、位置誤差の予測に用いる予測モデルを生成する。なお、予測モデル生成装置10は、不図示の車両に搭載され、基準地点周辺を複数回走行することによりデータを計測、収集するようにしてもよい。
【0025】
図1に示すように、位置誤差予測装置1(予測モデル生成装置10)は、受信機11と、操作部12と、表示部13と、記憶媒体14と、CPU15とを備えている。
【0026】
受信機11は、衛星からの信号を所定周期ごとに受信する。
操作部12は、使用者の操作を受け付けるボタン、タッチパネル、キーボード等の入力装置である。
表示部13は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置であり、位置誤差予測装置1(予測モデル生成装置10)が扱う各種データを表示する。
記憶媒体14には、位置誤差予測装置1(予測モデル生成装置10)が収集、生成した各種データが記憶される。
CPU15は、位置誤差予測装置1(予測モデル生成装置10)全体の動作を司るプロセッサであり、所定のプログラムに従って動作することにより、観測開始位置特定部150、相対関係値取得部151、誤差計測部152、予測モデル生成部153、衛星位置取得部154、誤差予測部155としての機能を発揮する。
【0027】
観測開始位置特定部150は、ある地点(対象地点又は基準地点)において受信可能な衛星(以下、「観測可能衛星」とも記載する)の観測開始位置を特定する。観測開始位置の詳細については後述する。
【0028】
相対関係値取得部151は、観測可能衛星の位置と、ある地点(対象地点又は基準地点)における当該観測可能衛星の観測開始位置との相対関係値を取得する。
本実施形態において、相対関係値取得部151は、複数の観測可能衛星それぞれの観測開始位置から所定の距離閾値以内に位置する観測可能衛星の数を、相対関係値として取得する。
【0029】
誤差計測部152は、基準地点における位置誤差を計測する。
【0030】
予測モデル生成部153は、相対関係値と位置誤差とに基づいて、任意の地点における位置誤差の予測に用いる予測モデルを生成する。
本実施形態において、予測モデル生成部153は、複数の観測可能衛星それぞれの観測開始位置から所定の距離閾値以内に位置する観測可能衛星の数と、位置誤差との相関関数を予測モデルとして生成する。
【0031】
衛星位置取得部154は、位置誤差の予測を行う対象地点の対象日時において受信可能な観測可能衛星の位置を取得する。
また、衛星位置取得部154は、基準地点において受信可能な観測可能衛星の、日時別の位置を取得する。
【0032】
誤差予測部155は、相対関係値と、予め生成された位置誤差の予測モデルとに基づいて、対象地点の対象日時における位置誤差を予測する。
【0033】
なお、本実施形態に係る予測モデル生成装置10は、
図1に示すように、少なくとも受信機11、操作部12、表示部13、記憶媒体14、CPU15が実行する一部の機能部(観測開始位置特定部150、相対関係値取得部151、誤差計測部152、予測モデル生成部153、衛星位置取得部154)を有していればよい。したがって、他の実施形態において位置誤差予測装置1と予測モデル生成装置10とを異なるハードウェア上に実装する場合は、予測モデル生成装置10のCPU15は、誤差予測部155を省略してもよい。
【0034】
(予測モデル生成装置の処理フロー)
図2は、第1の実施形態に係る予測モデル生成装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図3は、第1の実施形態に係る観測開始位置を説明するための第1の図である。
図4は、第1の実施形態に係る観測開始位置を説明するための第2の図である。
図5は、第1の実施形態に係る基準地点情報の一例を示す図である。
図6は、第1の実施形態に係る相対関係値の一例を示す図である。
図7は、第1の実施形態に係る予測モデルの一例を示す図である。
以下、
図2〜
図7を参照して、本実施形態に係る予測モデル生成装置10が予測モデルを生成する処理の一例について説明する。
【0035】
まず、
図2に示すように、予測モデル生成装置10の衛星位置取得部154は、観測可能衛星から受信した信号に基づいて、観測可能衛星それぞれの位置を取得し、記憶媒体14に記憶して蓄積する(ステップS10)。
例えば、
図3に示すように、予測モデル生成装置10は、基準地点P1に設置されているとする。衛星位置取得部154は、基準地点P1において信号を受信可能な全ての観測可能衛星について、所定の計測時間(例えば5分)ごとに位置を取得して収集する。
なお、衛星位置取得部154は、複数の基準地点が設定されている場合、全ての基準地点について同様の処理を行う。
【0036】
次に、誤差計測部152は、基準地点P1における位置誤差を所定の計測時間ごとに計測し、記憶媒体14に記憶して蓄積する(ステップS11)。なお、誤差計測部152は、衛星位置取得部154が観測可能衛星それぞれの位置を計測するタイミングと同期して、位置誤差の計測を行う。
具体的には、誤差計測部152は、所定の計測時間ごとに受信した複数の観測可能衛星からの信号に基づいて、基準地点P1の位置を計算する。そして、誤差計測部152は、予め記憶媒体14に記憶されている基準地点P1の正確な位置と、計算された位置とを比較して、位置誤差を計測する。
なお、誤差計測部152は、複数の基準地点が設定されている場合、全ての基準地点について同様の処理を行う。
【0037】
次に、観測開始位置特定部150は、基準地点における観測可能衛星の観測開始位置を、衛星別に特定する(ステップS12)。
図3に示すように、予測モデル生成装置10の受信機11の位置(基準地点P1)を中心とした天球上を、軌道O1に沿って移動する衛星G1があるとする。
図3の例では、衛星G1が軌道O1上の低い位置G1a(地平線付近)にいるときは、衛星G1からの信号は基準地点P1周辺の遮蔽物(建物等)に遮断されてしまい、受信機11はこの信号を受信することができない。また、衛星G1が天球上のある位置G1bに到達すると、遮蔽物を回避した信号が受信機11により受信できるようになる。このとき、衛星G1は、観測可能衛星として受信機11により観測されるようになる。また、
図4には、基準地点P1を中心とした天球上における衛星G1の軌道O1を平面上に表した模式
図Mが示されている。
図4に示すように、衛星G1が位置G1bに到達するまでは、受信機11が信号を受信できないので、衛星G1は観測不可である。この後、衛星G1が位置G1bに到達して受信機11により信号の受信が開始されると、予測モデル生成装置10は、当該衛星G1を「観測可能衛星」として観測を開始する。
観測開始位置特定部150は、このように、受信機11が衛星G1の信号を受信開始した時点における衛星G1の天球上の位置G1bを、衛星G1の観測開始位置L1として特定する。観測開始位置特定部150は、全ての観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1を特定する。
なお、観測開始位置特定部150は、複数の基準地点が設定されている場合、全ての基準地点について同様の処理を行う。
【0038】
また、
図2に戻り、観測開始位置特定部150は、観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1を記録した「基準地点情報N1(
図5)」を作成して、記憶媒体14に記憶する(ステップS13)。
図5に示すように、基準地点情報N1には、基準地点P1における「観測可能衛星」と、ステップS12において特定された観測可能衛星それぞれの「観測開始位置L1」が関連付けられて記録される。
なお、観測開始位置特定部150は、複数の基準地点が設定されている場合、基準地点それぞれの基準地点情報N1を作成して記憶する。
【0039】
次に、
図2に戻り、相対関係値取得部151は、観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1から所定の距離閾値A(
図6)以内の領域に位置する観測可能衛星の数を計数し、相対関係値として取得する(ステップS14)。
例えば、
図6に示すように、基準地点P1を中心とした天球上には、衛星G1〜G4の軌道O1〜O4があるとする。地平線(模式
図Mの外縁)から衛星G1〜G4それぞれの観測開始位置L1(G1b、G2a、G3c、G4b)までの領域は、遮蔽物に遮断されて衛星からの信号が受信できない観測不可領域R1である。また、観測開始位置L1付近の領域は、衛星からの信号が遮蔽物に反射されるマルチパスが発生する可能性がある。このため、本実施形態では、相対関係値取得部151は、観測開始位置L1付近の領域、即ち、衛星それぞれの観測開始位置L1から距離閾値Aまでの間の領域をマルチパス発生領域R2として設定する。
また、
図6には、ステップS10において衛星位置取得部154が取得した、ある時刻Tnにおける観測可能衛星G1〜G2の位置G1n〜G4nの例が示されている。
図6の例では、時刻Tnにおいてマルチパス発生領域R2内には観測可能衛星G1及びG3の二つの衛星が存在するので、相対関係値取得部151は、時刻Tnにおける相対関係値として、「マルチパス発生領域R2内の観測可能衛星数=2」を取得する。
相対関係値取得部151は、その他の時刻におけるマルチパス発生領域R2内の観測可能衛星数(相対関係値)も同様に計数して取得する。相対関係値取得部151は、このようにして、所定の計測時間別の相対関係値を取得する。
なお、相対関係値取得部151は、複数の基準地点が設定されている場合、全ての基準地点について同様の処理を行う。
【0040】
次に、予測モデル生成部153は、ステップS14において取得した所定の計測時間別の「マルチパス発生領域R2内の観測可能衛星数(相対関係値)」と、ステップS11において計測した位置誤差との相関関数を予測モデルとして生成する(ステップS15)。
例えば
図6に示すように、予測モデル生成部153は、「マルチパス発生領域R2内の観測可能衛星数」を横軸とし、「位置誤差」を縦軸として、時刻Tnにおける「衛星数=2」と、「位置誤差=et」とを対応させてプロットする。
予測モデル生成部153は、全ての時刻における「衛星数」及び「位置誤差」を同様にプロットして、
図7に示すような相関図(散布図)を作成する。なお、予測モデル生成部153は、複数の基準地点が設定されている場合、全ての基準地点における「衛星数」及び「位置誤差」を、一つの相関図内に集約してプロットする。
そして、予測モデル生成部153は、
図7に示すように、相関図内にプロットされたデータに基づいて、「マルチパス発生領域R2内の観測可能衛星数」から「位置誤差」を算出するための近似関数F1(相関関数)を、予測モデルとして生成する。また、生成された予測モデルは、記憶媒体14に記憶される。
【0041】
(位置誤差予測装置の処理フロー)
図8は、第1の実施形態に係る位置誤差予測装置の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、
図8を参照して、位置誤差予測装置1が位置誤差を予測する処理の一例について説明する。
【0042】
まず、
図8に示すように、位置誤差予測装置1の観測開始位置特定部150は、位置誤差を予測する対象となる対象地点における観測可能衛星の観測開始位置を、衛星別に特定する(ステップS20)。
このとき、位置誤差予測装置1の記憶媒体14には、過去に対象地点付近を複数回走行した際に受信した観測可能衛星の信号のログが記憶されているものとする。なお、このログは、予測モデル生成装置10のように長期間にわたって記録されたものでなくてもよい。観測開始位置特定部150は、これらのログを用いて予測モデル生成装置10と同様の処理(
図2のステップS12)を行うことにより、対象地点における観測可能衛星それぞれの観測開始位置を特定する。
【0043】
次に、衛星位置取得部154は、位置誤差の予測を行う対象地点の対象日時における観測可能衛星の位置を取得する(ステップS21)。
具体的には、衛星位置取得部154は、対象地点として、位置誤差予測装置1が搭載された車両の現在位置を設定し、対象日時として現在日時を設定する。この場合、衛星位置取得部154は、車両の現在位置の現在時刻において受信機11が受信した信号に基づいて、観測可能衛星それぞれの位置を取得する。
【0044】
次に、相対関係値取得部151は、対象地点の観測可能衛星のうち、それぞれの観測開始位置L1から所定の距離閾値A以内(マルチパス発生領域R2内)に位置する観測可能衛星の数を、相対関係値として取得する(ステップS22)。
【0045】
次に、誤差予測部155は、記憶媒体14に記憶されている予測モデル(
図7の近似関数F1)を用いて、ステップS21で取得したマルチパス発生領域R2内に位置する観測可能衛星の数から位置誤差を予測する(ステップS23)。
【0046】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る位置誤差予測装置1は、位置誤差の予測を行う対象地点の対象日時において受信可能な観測可能衛星の位置を取得する衛星位置取得部154と、観測可能衛星の位置と、対象地点における当該観測可能衛星の観測開始位置L1との相対関係値を取得する相対関係値取得部151と、相対関係値と、予め生成された位置誤差の予測モデルとに基づいて、対象地点の対象日時における位置誤差を予測する誤差予測部155と、を備える。
例えば対象地点の周囲に建物等の遮蔽物がある場合、位置誤差予測装置1は、観測可能衛星が遮蔽物により完全に遮蔽されない位置(即ち、観測開始位置L1)に達すると、当該観測可能衛星からの信号を受信することができるようになる。しかしながら、観測開始位置L1付近においては、観測可能衛星からの信号が遮蔽物に反射された反射波を受信してしまうマルチパスが発生する可能性がある。このため、本実施形態に係る位置誤差予測装置1は、観測可能衛星の位置と、当該観測可能衛星の観測開始位置L1との相対関係値に基づいて位置誤差を予測する。これにより、位置誤差予測装置1は、マルチパスによる影響を加味した位置誤差の予測を行うことができる。
【0047】
また、相対関係値取得部151は、複数の観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1から所定の距離閾値A以内(マルチパス発生領域R2内)に位置する観測可能衛星の数を相対関係値として取得する。
このようにすることで、位置誤差予測装置1は、観測開始位置L1から所定の距離閾値A以内に位置する観測可能衛星の数に基づいて、観測開始位置L1付近におけるマルチパスの影響を加味した位置誤差を予測することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る予測モデル生成装置10は、基準地点において受信可能な観測可能衛星の観測開始位置L1を特定する観測開始位置特定部150と、観測可能衛星の位置と、当該観測可能衛星の観測開始位置L1との相対関係値を取得する相対関係値取得部151と、基準地点における位置誤差を計測する誤差計測部152と、相対関係値と位置誤差とに基づいて、任意の地点における位置誤差の予測に用いる予測モデルを生成する予測モデル生成部153と、を備える。
このようにすることで、予測モデル生成装置10は、観測開始位置L1付近におけるマルチパスによる影響を加味した位置誤差の予測モデルを生成することができる。
【0049】
また、相対関係値取得部151は、複数の観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1から所定の距離閾値A以内(マルチパス発生領域R2内)に位置する観測可能衛星の数を相対関係値として取得し、予測モデル生成部153は、マルチパス発生領域R2内の観測可能衛星の数と位置誤差との相関関数(近似関数F1)を予測モデルとして生成する。
このようにすることで、予測モデル生成装置10は、観測開始位置L1から所定の距離閾値A以内に位置する観測可能衛星の数に基づいて、観測開始位置L1付近におけるマルチパスの影響を加味した位置誤差の予測モデルを生成することができる。これにより、予測モデル生成装置10は、位置誤差の予測精度を向上させることができる。
【0050】
なお、本実施形態において、相対関係値取得部151が、マルチパス発生領域R2内に位置する観測可能衛星の数(値A)を相対関係値として取得する態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、相対関係値取得部151は、観測可能衛星の総数から、マルチパス発生領域R2内に位置する観測可能衛星の数を減じた値(値B)を取得するようにしてもよい。
また、更に他の実施形態では、相対関係値取得部151は、値A及び値Bに加え、更に基準位置及び対象位置におけるDOP等の特徴量を相対関係値として取得してもよい。このとき、予測モデル生成部153は、値A、値B、DOP等の特徴量を入力とし、位置誤差を出力とする予測器を予測モデルとして生成してもよい。ここで、予測器としては、一般的に使用される多変量回帰器、ランダムフォレスト、ニュートラルネットワーク等が用いられる。
また、位置誤差は、誤差円半径の時間差分で表されてもよい。
【0051】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る位置誤差予測装置1及び予測モデル生成装置10について、
図9〜
図11を参照しながら説明する。
第1の実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0052】
(機能構成)
図9は、第2の実施形態に係る位置誤差予測装置及び予測モデル生成装置の機能構成を示す図である。
図9に示すように、本実施形態に係る予測モデル生成装置10は、閾値設定部156を更に備えている。
閾値設定部156は、複数の観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1からの距離のうち、残差のばらつきが最も小さくなる相関関数が得られる距離を距離閾値Aとして設定する。
【0053】
(予測モデル生成装置の処理フロー)
図10は、第2の実施形態に係る予測モデル生成装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図11は、第2の実施形態に係る相対関係値の一例を示す図である。
以下、
図10〜
図11を参照して、本実施形態に係る予測モデル生成装置10が予測モデルを生成する処理の一例について説明する。
本実施形態に係る予測モデル生成装置10は、第1の実施形態において説明した
図2のステップS10〜S13と同様の処理を実行し、
図2のステップS14〜S15に代えて
図10に示す各処理を実行する。ここでは、第1の実施形態と異なる処理についてのみ説明する。
【0054】
まず、閾値設定部156は、距離閾値Aの候補として、複数の異なる仮閾値を設定する(ステップS30)。
仮閾値は、観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1からの距離を示す。
なお、ここでは、閾値設定部156が仮閾値A1、A2、A3を設定する例について説明するが、仮閾値の数は特に限定されない。
【0055】
次に、相対関係値取得部151は、仮閾値別の相対関係値を取得する(ステップS31)。
具体的には、相対関係値取得部151は、観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1から仮閾値A1で示される距離以内の領域(マルチパス発生領域R2)に位置する観測可能衛星の数を計測時間別に計数し、仮閾値A1における計測時間別の相対関係値として取得する。同様に、相対関係値取得部151は、仮閾値A2及びA3における計測時間別の相対関係値を取得する。
【0056】
次に、予測モデル生成部153は、予め計測しておいた位置誤差と、ステップS31において取得した相対関係値との相関関数を、仮閾値別に生成する(ステップS32)。
具体的には、予測モデル生成部153は、
図11に示すように、「マルチパス発生領域R2内の観測可能衛星数」を横軸とし、「位置誤差」を縦軸としてデータをプロットした相関図を仮閾値別に求める。
また、予測モデル生成部153は、相関図内にプロットされた点に基づいて、「マルチパス発生領域R2内の観測可能衛星数」から「位置誤差」を算出するための近似関数F1(相関関数)を仮閾値別に求める。
【0057】
次に、閾値設定部156は、予測モデル生成部153が生成した複数の近似関数F1のうち、残差のばらつきが最も小さい近似関数F1が得られる仮閾値を、距離閾値Aとして設定する(ステップS33)。
図11の例では、仮閾値A2のとき、近似関数F1の残差のばらつき(例えば、残差平方和)が最小となる。したがって、
図11の例では、閾値設定部156は、仮閾値A2を距離閾値Aとして設定する。
【0058】
なお、閾値設定部156が設定した距離閾値A(
図11の例では仮閾値A2)は、位置誤差予測装置1が位置誤差を予測する際にも用いられる。具体的には、位置誤差予測装置1の相対関係値取得部151は、
図2のステップS22において、対象地点の観測可能衛星のうち、それぞれの観測開始位置L1から距離閾値A(仮閾値A2)以内に位置する観測可能衛星の数を、相対関係値として取得する。
【0059】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る予測モデル生成装置10は、複数の観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1からの距離(仮閾値A1〜A3)のうち、残差のばらつきが最も小さくなる近似関数F1が得られる距離(閾値)を距離閾値Aとして設定する閾値設定部156を更に備える。
このようにすることで、予測モデル生成装置10は、位置誤差とマルチパス発生領域R2内に位置する衛星数との相関が強くなる距離閾値を設定して予測モデルを生成するので、位置誤差の予測精度を更に向上させることができる。
【0060】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係る位置誤差予測装置1及び予測モデル生成装置10について、
図12を参照しながら説明する。
上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0061】
本実施形態では、予測モデル生成装置10の閾値設定部156の機能が、第2の実施形態とは異なっている。
本実施形態に係る閾値設定部156は、基準地点と観測可能衛星との疑似距離を計測し、当該観測可能衛星の観測開始位置L1から、疑似距離が所定量以上変化したときの当該観測可能衛星の位置までの距離を、衛星別の距離閾値として設定する。
【0062】
図12は、第3の実施形態に係る距離閾値の一例を示す図である。
例えば、
図12に示すように、閾値設定部156は、基準地点P1と観測可能衛星G1との疑似距離、観測可能衛星G1が観測開始位置L1に到達した以降、逐次計測する。
図12の例では、観測可能衛星G1が観測開始位置L1から距離A4離れた位置に移動したときに、疑似距離が急峻に低下している。これは、距離A4の位置までは、マルチパスの影響で受信機11が観測可能衛星G1の信号の反射波を受信し、距離A4以上の位置ではマルチパスが解消されて直接波を受信できるようになったと考えられるためである。
このため、本実施形態に係る閾値設定部156は、この距離A4を、観測可能衛星G1のマルチパス発生領域R2の最大値を示す距離閾値として設定する。
また、基準地点P1において他の観測可能衛星がある場合は、閾値設定部156は同様の処理を行い、衛星別に距離閾値を設定する。
【0063】
なお、閾値設定部156が設定した衛星別の距離閾値は、位置誤差予測装置1が位置誤差を予測する際にも用いられる。
具体的には、位置誤差予測装置1の相対関係値取得部151は、
図2のステップS22において相対関係値を取得する際、閾値設定部156が設定した衛星別の距離閾値のうち、最大の値を所定の距離閾値Aとして用いる。例えば、衛星別の距離閾値のうち、観測可能衛星G1の距離A4が最大の値である場合、相対関係値取得部151は、観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1から距離閾値A(距離A4)以内に位置する観測可能衛星の数を、相対関係値として取得する。このように距離閾値Aを設定することにより、位置誤差予測装置1は、対象地点における位置誤差の上限を予測することができる。
また、位置誤差の予測精度を向上させたい場合、相対関係値取得部151は、閾値設定部156が設定した衛星別の距離閾値の平均値を所定の距離閾値Aとして用いてもよい。
【0064】
本実施形態に係る予測モデル生成装置10は、上述のような構成を有することにより、疑似距離の変化に基づいて、観測開始位置からどの距離までマルチパスの影響が生じるか衛星別に判断して、距離閾値Aを設定することができる。これにより、予測モデル生成装置は、位置誤差の予測精度を更に向上させることができる。
【0065】
なお、本実施形態において、閾値設定部156は、疑似距離が急峻に低下した(所定量以上変化した)ときの衛星の位置を、距離閾値Aとして設定する例について説明したが、これに限られることはない。
他の実施形態では、閾値設定部156は、疑似距離に代えて信号強度を逐次計測し、衛星それぞれの信号強度が急峻に変化(増加)したときの衛星の位置を、衛星別の距離閾値として設定してもよい。
【0066】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係る位置誤差予測装置1及び予測モデル生成装置10について、
図13〜
図14を参照しながら説明する。
上述の各実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0067】
本実施形態では、位置誤差予測装置1(予測モデル生成装置10)の相対関係値取得部151、予測モデル生成部153、及び閾値設定部156の機能が、上述の各実施形態とは異なっている。
【0068】
本実施形態に係る相対関係値取得部151は、複数の観測可能衛星それぞれのうち、観測開始位置L1に最も近い観測可能衛星に関し、当該観測開始位置L1からの離間距離を相対関係値として取得する。
図13は、第4の実施形態に係る相対関係値の一例を示す図である。
例えば、
図13に示すように、基準地点P1を中心とした天球上には、衛星G1〜G4の軌道O1〜O4があるとする。また、ある時刻Tnにおける衛星G1〜G4の位置は、それぞれG1n〜G4nであるとする。
相対関係値取得部151は、時刻Tnにおける相対関係値を取得する際、観測可能衛星G1の観測開始位置L1(G1b)からの離間距離D1、観測可能衛星G2の観測開始位置L1(G2a)からの離間距離D2、観測可能衛星G3の観測開始位置L1(G3c)からの離間距離D3、観測可能衛星G4の観測開始位置L1(G4b)からの離間距離D4をそれぞれを計算する。そして、相対関係値取得部151は、離間距離D1〜D4のうち、最も距離が短いもの(最少離間距離)を相対関係値として取得する。
図13の例では、観測可能衛星G1の離間距離D1が最も短いので、相対関係値取得部151は、離間距離D1を相対関係値として取得する。
相対関係値取得部151は、その他の時刻における相対関係値も同様に取得する。相対関係値取得部151は、このようにして、所定の計測時間別の最小離間距離(相対関係値)を取得する。
【0069】
また、本実施形態に係る予測モデル生成部153は、相対関係値として取得された離間距離と、位置誤差との相関を示す予測モデルを生成する。
図14は、第4の実施形態に係る予測モデルの一例を示す図である。
具体的には、予測モデル生成部153は、
図13に示すように、「観測開始位置L1からの離間距離」を横軸とし、「位置誤差」を縦軸として、時刻Tnにおける「離間距離=D1」と、「位置誤差=et」とを対応させてプロットする。
予測モデル生成部153は、全ての時刻における「離間距離」及び「位置誤差」を同様にプロットして、
図14に示すような相関図(散布図)を作成する。なお、予測モデル生成部153は、複数の基準地点が設定されている場合、全ての基準地点における「離間距離」及び「位置誤差」を、一つの相関図内に集約してプロットする。
【0070】
また、本実施形態に係る閾値設定部156は、
図14に示すように、相関図内にプロットされたデータに基づいて、位置誤差が所定の誤差閾値E以下となるデータのうち、「観測開始位置L1からの離間距離」が最も小さい距離A5を距離閾値として設定する。
【0071】
そして、予測モデル生成部153は、閾値設定部156が設定した距離閾値A5以下の離間距離と、位置誤差との相関関数を予測モデルとして生成する。
例えば、予測モデル生成部153は、「観測開始位置L1からの離間距離」が距離閾値A5以下のときに計測された位置誤差の平均値Eaveと、最大値Emaxとをそれぞれ求める。そして、予測モデル生成部153は、予測対象となる対象地点において、観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1から最も近い観測可能衛星の観測開始位置からの離間距離が距離閾値A5以下の場合、最大値Emaxを出力する相関関数を予測モデルとして生成する。なお、予測モデル生成部153は、最大値Emaxに代えて平均値Eaveを出力する相関関数を予測モデルとして生成してもよい。
また、生成された予測モデルは、記憶媒体14に記憶される。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る予測モデル生成装置10において、相対関係値取得部151は、複数の観測可能衛星それぞれの観測開始位置L1に最も近い観測可能衛星の当該観測開始位置L1からの離間距離を相対関係値として取得し、予測モデル生成部153は、観測開始位置L1からの離間距離と、位置誤差との相関を示す予測モデルを生成する。
このようにすることで、予測モデル生成装置10は、観測開始位置L1から最も近い観測可能衛星の当該観測開始位置L1からの離間距離に基づいて、観測開始位置L1付近におけるマルチパスの影響を加味した位置誤差の予測モデルを生成することができる。これにより、予測モデル生成装置10は、位置誤差の予測精度を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る閾値設定部156は、位置誤差が所定の誤差閾値E以下となる離間距離のうち最も小さい離間距離を距離閾値として設定し、予測モデル生成部153は、距離閾値以下となる離間距離と、距離閾値以下のときに計測された位置誤差の最大値Emaxとの相関関数を予測モデルとして生成する。
このようにすることで、予測モデル生成装置10は、位置誤差と離間距離との相関に基づいて、観測開始位置L1からどの距離(離間距離)までマルチパスの影響が生じるかを導き出して距離閾値を設定することができる。また、当該距離閾値以下のときに計測された位置誤差の最大値Emaxとの相関関数を予測モデルとして生成することにより、マルチパス発生領域R2において、位置誤差が最大どのくらい発生するかを精度よく予測することができる。
【0074】
(ハードウェア構成)
図15は、少なくとも一つの実施形態に係る位置誤差予測装置及び予測モデル生成装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、
図15を参照して、上述の少なくとも一つの実施形態に係る位置誤差予測装置1及び予測モデル生成装置10のハードウェア構成の一例について説明する。
図15に示すように、コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
上述の位置誤差予測装置1及び予測モデル生成装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、位置誤差予測装置1及び予測モデル生成装置10が各種処理に用いる記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域(記憶媒体14)を補助記憶装置903に確保する。
【0075】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904又は通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0076】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
更に、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、上述の各実施形態において、位置誤差予測装置1と予測モデル生成装置10とが一つのコンピュータ上に実装される態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、位置誤差予測装置1と、予測モデル生成装置10とは、それぞれ異なるコンピュータ上に実装されてもよい。