特許第6836019号(P6836019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許68360194、6−ジフェニルスルホンジベンゾフランベースの双極性ホスト材料及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836019
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】4、6−ジフェニルスルホンジベンゾフランベースの双極性ホスト材料及び応用
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20210215BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210215BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20210215BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20210215BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20210215BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H05B33/10
   C07D405/14
   C07D413/14
   C07D417/14
   C07D307/91
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-523421(P2020-523421)
(86)(22)【出願日】2018年9月25日
(65)【公表番号】特表2021-501989(P2021-501989A)
(43)【公表日】2021年1月21日
(86)【国際出願番号】CN2018107240
(87)【国際公開番号】WO2019085688
(87)【国際公開日】20190509
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】201711061783.4
(32)【優先日】2017年11月2日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】彭 嘉歓
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103804332(CN,A)
【文献】 特開平05−109485(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/011531(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H05B 33/00−33/28
H01L 27/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,6−ジフェニルスルホンジベンゾフランベースの双極性ホスト材料であって、式(I)の構造を有することを特徴とする双極性ホスト材料。
(式(I)中、
〜Rは、アルキル基置換若しくは未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン、他の芳香族ジフェニルアミン誘導体、水素、ハロゲン、又はC1−C4アルキル基であり、
〜Rの少なくとも1つは、アルキル基置換若しくは未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である)
【請求項2】
、R及びRのうちの2つは水素、ハロゲン又はC1−C4アルキル基であり、
他の1つはC1−C8アルキル基置換若しくは未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体であり、
、R及びRのうちの2つは水素、ハロゲン又はC1−C4アルキル基であり、
他の1つはC1−C8アルキル基置換若しくは未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の双極性ホスト材料。
【請求項3】
とRは同じであり、
とRは同じであり、
とRは同じである、
ことを特徴とする請求項2に記載の双極性ホスト材料。
【請求項4】
、R、R及びRは水素、ハロゲン又はC1−C4アルキル基であり、
及びRはC1−C4アルキル基置換若しくは未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である、
ことを特徴とする請求項3に記載の双極性ホスト材料。
【請求項5】
、R、R及びRは水素であり、
及びRはC1−C4アルキル基置換若しくは未置換のアクリジニル基、カルバゾール又はインデノカルバゾールである、
ことを特徴とする請求項4に記載の双極性ホスト材料。
【請求項6】
式(I)は以下のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の双極性ホスト材料。
【請求項7】
式(I)は以下のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の双極性ホスト材料。
【請求項8】
式(I)は以下の構造であることを特徴とする請求項7に記載の双極性ホスト材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の双極ホスト材料の製造方法であって、
ジベンゾフラン(a)をn−ブチルリチウムの存在下でリチウム塩とした後、ヨウ素化して4,6−ジヨードジベンゾフラン(b)を生成し、更にハロゲン化チオフェノールとのウルマン反応によってチオエーテル中間体(c)を生成するステップと、
ハロゲン化チオエーテル中間体を酸化し、ハロゲン化スルホン化合物(d)を生成するステップと、
ハロゲン化スルホン化合物(d)と、アルキル基置換又は未置換のアクリジン、カルバゾール、又はジフェニルアミン(e)とのパラジウム触媒ブッフバルト反応又は求核置換反応により、前記双極ホスト材料を生成するステップを含み、
前記ハロゲン化はフッ素化又はブロム化であり、
反応式は次のとおりであることを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の双極ホスト材料を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな双極性ホスト材料に関し、有機発光材料技術の分野に属し、具体的には、4,6−ジフェニルスルホンジベンゾフランベースの双極性ホスト材料及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライトを必要とする液晶ディスプレイの特性と比較して、有機発光ダイオード(OLED)は、アクティブ発光、速い応答速度、低エネルギー消費、高輝度、広視野角、折り曲げなどの特性を有し、フラットパネルディスプレイの分野で大きな応用の見通しがあり、学界や産業界から高く評価されているため、21世紀で最も有望な製品の1つと見なされている。現在、OLEDデバイスは大量生産を達成し、携帯電話、タブレットコンピュータ、カーメーター、ウェアラブルデバイスなどの電子製品で幅広く使用されている。エレクトロルミネッセンス蛍光とエレクトロルミネッセンス燐光は、それぞれ第1世代と第2世代のOLEDと呼ばれる。蛍光材料をベースにしたOLEDは、安定性が高いという特徴があるが、量子統計学の法則によって制限される。電気的活性化の作用下で、一重項励起子と三重項励起子の比率は1:3であるため、蛍光材料のエレクトロルミネセンスの最大内部量子効率はわずか25%である。燐光材料は、重原子のスピン軌道結合作用を有し、一重項励起子と三重項励起子を総合的に利用することによって、100%の理論的な内部量子効率に達することができる。しかしながら、燐光ベースのOLEDは、応用中に明らかな効率ロールオフ効果があり、高輝度応用には一定の障害がある。
【0003】
燐光材料は、一重項励起子と三重項励起子を総合的に利用して、100%の内部量子効率を達成することができる。研究によると、遷移金属錯体の励起状態励起子の寿命が比較的長いため、高電流密度での三重項励起子蓄積の存在により、三重項−三重項消滅(TTA)及び三重項−ポーラロン消滅(TPA)が発生し、それにより、効率ロールオフの現象が発生する。この問題を克服するために、研究者たちはしばしば燐光材料を有機ホスト材料にドープし、例えば、双極性ホスト材料にドープして、キャリアの注入のバランスをよりよくすることができる。最近、熱活性化遅延蛍光特性を持つ材料も燐光デバイスのホストに使用されている。熱活性化遅延蛍光材料の一重項−三重項エネルギー準位差が小さいため、三重項励起子は一重項状態に逆項間交差し、フェルスター(Forster)共鳴エネルギー転移(FRET)を介してゲスト材料に移動することで、三重項励起子濃度が減少し、デバイスの性能が向上する。従って、高効率の有機発光ダイオードにとって、高性能ホスト材料の開発は非常に重要である。
【0004】
現在、燐光デバイスで広く使用されているホスト材料はCBP(4,4’−ビス(9−カルバゾリル)ビフェニル)であるが、CPBはより高い駆動電圧と低いガラス転移温度(T)(T = 62℃)が必要であり、CPBは結晶化しやすい欠陥がある。さらに、CBPはP型の材料であり、正孔移動度は電子移動度よりもはるかに高く、キャリア注入及び輸送不均衡となり、発光効率も低くなる。
【発明の概要】
【0005】
既存のホスト(CBP)材料に必要とされる高い駆動電圧、結晶化しやすいガラス転移温度、キャリア注入及び輸送不均衡などの問題に対して、本発明は双極性ホスト材料を提供する。この材料は、4,6−ジフェニルスルホンジベンゾフランを電子求引基(中心コア)として、電子供与能力のあるジフェニルアミン類、カルバゾール、アクリジンなどの誘導体を結合基として使用するD−A−L−A−D型双極性材料である。
【0006】
4,6−ジフェニルスルホンジベンゾフランベースの双極性ホスト材料は、式(I)の構造を有する。
〜Rは、アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体、水素、ハロゲン、C1−C4アルキル基を表し、R〜Rの少なくとも1つは、アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である。
【0007】
好ましくは、R、R、Rのうちの2つは水素、ハロゲン又はC1−C4アルキル基であり、もう1つはC1−C8アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である。R、R、Rのうちの2つは水素、ハロゲン又はC1−C4アルキル基であり、もう1つはC1−C8アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である。
【0008】
好ましくは、RとRは同じであり、RとRは同じであり、RとRは同じである。
【0009】
好ましくは、R、R、R、Rは水素、ハロゲン又はC1−C4アルキル基であり、R、RはC1−C4アルキル基置換或者未置換のアクリジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニイル基、カルバゾール、インデノカルバゾール、ジフェニルアミン又は他の芳香族ジフェニルアミン誘導体である。
【0010】
好ましくは、R、R、R、Rは水素であり、R、Rは、C1〜C4アルキル基置換又は未置換のアクリジニル基、カルバゾール、インデノカルバゾールである。
【0011】
式(I)の化合物は、以下の構造化合物である。
【0012】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、陰極、陽極及び有機層を含み、上記有機層は、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、発光層の中の1つ又は複数である。上記の有機層は必要に応じて存在してもよく、これらの有機層がすべての層に存在する必要はないことを特に指摘しておくべきである。
【0013】
上記式(I)の上記化合物は発光層の材料である。
【0014】
本発明の電子デバイスの有機層の合計厚さは1〜1000nmであり、好ましくは1〜500nm、より好ましくは5〜300nmである。
【0015】
上記有機層は、蒸着またはスピンコーティングによって薄膜に形成することができる。
【0016】
上記のように、本発明の式(I)の化合物は以下のとおりであるが、列挙された構造に限定されない。
【0017】
上述した双極ホスト材料の製造方法は、
まず、ジベンゾフラン(a)をn−ブチルリチウムの条件下でリチウム塩にした後、ヨウ素化して4,6−ジヨードジベンゾフラン(b)を取得し、ハロゲン化チオフェノール(フッ素化、ブロム化)とのウルマン反応によってチオエーテル中間体(c)を取得するステップと、ハロゲン化チオエーテル中間体を酸化して、ハロゲン化スルホン化合物(d)を取得するステップと、最後に、ハロゲン化スルホン化合物(d)と、置換又は未置換のアクリジン、カルバゾール、ジフェニルアミン(e)などとのパラジウム触媒ブッフバルト反応又は求核置換反応によって、上記の双極ホスト材料を取得するステップとを含む。
【0018】
実験は、本発明の化合物が一般的に使用されるホスト材料CBPより高いガラス転移温度を有し、本発明がホスト材料の熱安定性を大幅に改善することを示している。本発明の双極性ホスト材料で製造される有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、高い安定性を有し、より良好な応用の見通しを有し、有機発光ダイオードのホスト材料に対する要求を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】化合物2のDSC曲線である。
図2】本発明のデバイス構造図であり、10はガラス基板を表し、20は陽極を表し、30は正孔注入層を表し、40は正孔輸送層を表し、50は発光層を表し、60は電子輸送を表し、70は電子注入層を表し、80は陰極を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例を参照しながら、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。
実施例1
【0021】
(1) 4,6−ジヨードジベンゾフランb)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0022】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
ジベンゾフラン(8.41g、50mmol)を量って三つ口フラスコに入れ、窒素で保護し、乾燥ジエチルエーテル(150mL)を添加した。フラスコを−78℃の低温反応器に入れ、n−ブチルリチウム(2.2 M、68mL、150mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応系をゆっくりと室温まで昇温し、10時間撹拌を続けた。その後、−78℃に冷却し、Iのテトラヒドロフラン溶液(38g、150mmol)をゆっくりと滴下し、滴下終了後、室温で4時間撹拌した。反応が完了した後、10% NaHSO溶液(100mL)を添加し、抽出して層を分離した。無機相をジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機相を収集し、無水MgSO4で乾燥させ、溶液をスピン乾燥して粗生成物を取得し、その後、エタノールでスラリー化し、吸引濾過して乾燥させ、14gの白色固体を取得した。収率は67%であった。
【0023】
(2)4,6−ビス[(4−フルオロフェニル)チオ]ジベンゾ[b、d]フランの合成
合成経路は以下のとおりである。
【0024】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ジヨードジベンゾフラン(b) (5.25g、12.5mmol)、4−フルオロチオフェノール (3.27g、25.5mmol)、CuI (0.48g、2.5mmol)、フェナントロリン (0.9g、5mmol)、及び炭酸カリウム(4.8g、35mmol)を量って、100mLの三つ口フラスコに入れ、窒素ガスを3回交換した。乾燥DMSOを添加し、温度を130℃に上げ、16時間反応させた。反応が完了した後、150mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、エタノールでスラリー化し、吸引濾過して乾燥させ、4.43gの白色粉末固体を取得した。収率は、84.6%であった。
【0025】
(3)4,6−ビス[(4−フルオロフェニル)スルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(d1)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0026】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ビス[(4−フルオロフェニル)チオ]ジベンゾ[b,d]フラン(c1) (1g、2.38mmol)をフラスコに入れ、ジクロロメタンで溶解し、反応系を氷浴に入れ、2.2当量のメタクロロ過安息香酸をゆっくりと添加し、室温で24時間反応させた。反応が完了した後、5%のNaHSO溶液50mLを添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、NaCO溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、エタノールでスラリー化し、吸引濾過して乾燥させ、1.02gの白色粉末固体を取得した。収率は、88.7%であった。
【0027】
(4)4,6−ビス[(4−(9,9’−ジメチルアクリジン−10(9H)−イル)フェニルスルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(1)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0028】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
9,9’ジメチルアクリジン(0.89g、4.2mmol)を量って50mLのフラスコに入れ、10mLの乾燥DMFを添加し、0℃の条件下でNaH(60%、0.21g、5.2mmol)をゆっくりと添加し、室温で30分間撹拌し、その後、一度に4,6−ビス[(4−フルオロフェニル)スルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(d1) (1g、2.06mmol)を添加し、反応を60℃で6時間撹拌した。反応が完了した後、20mLの水を添加し、析出した固体を吸引濾過し、水で洗浄し、溶離剤としてジクロロメタン:n-ヘキサン= 2:1を使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、1.4gの黄色固体を取得した。収率は、78.6%であった。
【0029】
生成物の測定データは以下のとおりである。
H NMR (400MHz ,CDCl) δ = 8.73 (d, J = 8.0 Hz, 4 H), 8.27 (d, J = 8.0 Hz, 4 H), 7.65−7.59 (m, 6 H), 7.44−7.42 (m, 4 H), 6.95−6.93 (m, 8 H), 6.34−6.31 (m, 4 H), 1.63 (s, 6 H), 1.57 (s, 6 H) ppm. 13C NMR (100MHz , CDCl) = 147.1, 140.1, 131.7, 131.0, 130.5, 128.0, 126.2, 125.0, 124.0, 121.5, 115.2, 30.7 ppm. Ms(ESI: Mz 863) (M+1)
【0030】
実施例2
(1) 4,6−ビス[(4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニルスルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(2)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0031】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
カルバゾール(1.7g、10mmol)を量って50mLのフラスコに入れ、20mLの乾燥DMFを添加し、0℃の条件下でNaH(60%、0.6g、15mmol)をゆっくりと添加し、室温で30分間撹拌し、その後、一度に4,6−ビス[(4−フルオロフェニル)スルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(d1) (3g、5mmol)を添加し、反応を60℃で6時間撹拌した。反応が完了した後、60mLの水を添加し、析出した固体を吸引濾過し、水で洗浄し、溶離剤としてジクロロメタン:n-ヘキサン= 2:1を使用し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、3.3gの黄色固体を取得した。収率は、85.7%であった。
【0032】
生成物の測定データは以下のとおりである。
H NMR (400MHz ,CDCl) δ = 8.62 (d, J = 8.0 Hz, 4 H), 8.66 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 8.23 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 8.15 (d, J = 8.0 Hz, 4 H), 7.93 (d, J = 8.0 Hz, 4 H), 7.72 (t, J = 8.0 Hz, 2 H), 7.44 (d, J = 8.0 Hz, 4 H), 7.30 (t, J = 8.0 Hz, 4 H), 7.22 (t, J = 8.0 Hz, 4 H) ppm. 13C NMR (100MHz , CDCl) = 141.9, 138.9, 129.8, 128.1, 127.6, 126.7, 126.2, 124.7, 124.5, 123.0, 120.6, 120.3, 110.3, 109.6 ppm.Ms(ESI: Mz 779) (M+1)

実施例3
【0033】
(1)4,6−ビス[(3−ブロモフェニル)チオ]ジベンゾ[b,d]フラン(c2)の合成
合成経路は以下のとおりである。

具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ジヨードジベンゾフランb) (1.05g、2.5mmol)、3−ブロモチオフェノール (0.98g、5.2mmol)、CuI (0.095g、0.5mmol)、フェナントロリン (0.18g、1mmol)、及び炭酸カリウム(0.96g、7mmol)を量って、50mLの三つ口フラスコに入れ、窒素ガスを3回交換した。10mLの乾燥DMSOを添加し、温度を130℃に上げ、16時間反応させた。反応が完了した後、150mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*20mL)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、n-ヘキサン/酢酸エチル = 20/1の溶離剤を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、0.9gの白色固体を取得した。収率は、66%であった。
【0034】
(2)4,6−ビス[(3−ブロモフェニル)スルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(d2)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0035】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ビス[(3−ブロモフェニル)チオ]ジベンゾ[b,d]フラン(c2) (0.9g、1.66mmol)をフラスコに入れ、ジクロロメタンで溶解し、反応系を氷浴に入れ、2.2当量のメタクロロ過安息香酸をゆっくりと添加し、室温で24時間反応させた。反応が完了した後、5%のNaHSO溶液50mLを添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、NaCO溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、エタノールでスラリー化し、吸引濾過して乾燥させ、0.8gの白色粉末固体を取得した。収率は、80%であった。
【0036】
(3)4,6−ビス[(3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニルスルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(3)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0037】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ビス[(3−ブロモフェニル)スルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(d2) (0.136g、0.3mmol)、カルバゾール (0.1g、0.6mmol)、Pd(dba) (28 mg、0.03mmol)、P(tBu)トルエン溶液 (24 mg、0.06mmol)、 ナトリウムtert−ブトキシド (0.115g、1.2mmol)、及びトルエン5mLを量って、10mLのシュレンク管に入れ、窒素で保護し、110℃で10時間反応させた。反応が完了した後、5%のNaHSO溶液20mLを添加し、ジクロロメタン(3*20mL)で抽出し、溶離剤としてn-ヘキサン/酢酸エチル= 2:1を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、0.18gの黄色固体を取得した。収率は、69%であった。
生成物の測定データは以下のとおりである。
Ms(ESI: Mz 779) (M+1)

実施例4
【0038】
(1)4,6−ビス[(2−ブロモフェニル)チオ]ジベンゾ[b,d]フラン(c3)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0039】
具体的な合成ステップは以下の通りである。
4,6−ジヨードジベンゾフランb) (2.1g、5mmol)、2−ブロモチオフェノール (1.96g、10.4mmol)、CuI (0.19g、1mmol)、フェナントロリン (0.36g、2mmol)、及び炭酸カリウム(2g、14mmol)を量って、50mLの三つ口フラスコに入れ、窒素ガスを3回交換した。20mLの乾燥DMSOを添加し、温度を130℃に上げ、15時間反応させた。反応が完了した後、150mLの水を添加し、ジクロロメタン(3*30mL)で抽出し、有機層を合わせ、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、n-ヘキサン/酢酸エチル = 20/1の溶離剤を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、1.5gの白色固体を取得した。収率は、55%であった。
【0040】
(2)4,6−ビス[(2−ブロモフェニル)スルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(d3)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0041】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ビス[(2−ブロモフェニル)チオ]ジベンゾ[b,d]フラン(c3) (1.4g、2.58mmol)をフラスコに入れ、ジクロロメタンで溶解し、反応系を氷浴に入れ、2.2当量のメタクロロ過安息香酸をゆっくりと添加し、室温で24時間反応させた。反応が完了した後、5%のNaHSO溶液50mLを添加し、ジクロロメタン(3*50mL)で抽出し、有機層を合わせ、NaCO溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。砂コア漏斗で濾過し、溶媒をスピン乾燥させ、エタノールでスラリー化し、吸引濾過して乾燥させ、1.4gの白色粉末固体を取得した。収率は、89%であった。
【0042】
(3)4,6−ビス[(2−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニルスルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(4)の合成
合成経路は以下のとおりである。
【0043】
具体的な合成ステップは以下のとおりである。
4,6−ビス[(2−ブロモフェニル)スルホニル]ジベンゾ[b,d]フラン(d3) (1.36g、3mmol)、カルバゾール (1g、6mmol)、Pd(dba) (0.28g、0. 3mmol)、P(tBu)トルエン溶液 (0.24g、0.6mmol)、 ナトリウムtert−ブトキシド (1.15g、12mmol)、及びトルエン10mLを量って、25mのシュレンク管に入れ、窒素で保護し、110℃で10時間反応させた。反応が完了した後、5%のNaHSO溶液30mLを添加し、ジクロロメタン(3*30mL)で抽出し、溶離剤としてn-ヘキサン/酢酸エチル= 2:1を使用して、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離して、1.1gの黄色固体を取得した。収率は、47%であった。
生成物の測定データは以下のとおりである。
Ms(ESI: Mz 779) (M+1)
【0044】
実施例5
ガラス転移温度の測定
窒素の保護下で、20C/分の加熱及び冷却速度で示差走査熱量測定(DSC)によって、化合物2のガラス転移温度を測定した。測定された化合物2のガラス転移温度Tは180Cである(図1)。ただし、文献で報告されているCBPのガラス転移温度は62Cに過ぎない。
【0045】
本発明の化合物は、一般的に使用されるホスト材料CBPより高いガラス転移温度を有し、本発明は、ホスト材料の熱安定性を大幅に改善することがわかる。
【0046】
実施例6
有機エレクトロルミネッセンスデバイスの製造
デバイスの構造は、ITO/HATCN(5nm)/TAPC(50nm)/化合物2:Ir(ppy):(4 wt%、20nm)/TmPyPb(50nm)/ LiF(1nm)/AL(100nm)である。
デバイスの製造方法は次のとおりである。図2を参照されたい。
まず、透明導電ITOガラス基板(10と20を含む)を、予め洗浄剤溶液、脱イオン水、エタノール、アセトン、脱イオン水で洗浄した後、酸素プラズマで30秒間処理した。
次に、ITO上に厚さ5nmのHATCNを正孔注入層30として蒸着した。
次に、正孔注入層上に厚さ50nmのTAPCを正孔輸送層40として蒸着した。
次に、正孔輸送層上に厚さ20nmの化合物2:Ir(ppy):(4wt%)を発光層50として蒸着した。
次に、発光層上に厚さ50nmのTmPyPbを電子輸送層60として蒸着した。
次に、電子輸送層上に厚さ1nmのLiFを電子注入層70として蒸着した。
最後に、電子注入層上に厚さ100nmのアルミニウムをデバイス陰極80として蒸着した。
【0047】
比較例
エレクトロルミネッセンスデバイスの製造
デバイスの構造は、ITO/HATCN(5nm)/TAPC(50nm)/CBP:Ir(ppy):(4 wt%、20nm)/TmPyPb(50nm)/ LiF(1nm)/AL(100nm)である。
製造方法は実施例6と同じであるが、一般的に使用されている市販の化合物CBPをホスト材料として使用して、比較のためのエレクトロルミネッセンス有機半導体ダイオードデバイスを製造した。
【0048】
実験によると、本発明の双極性ホスト材料を使用して製造されたエレクトロルミネッセンスデバイスは、20mA/cmの電流密度で、6.99Vの電圧、7082 cd/mの輝度、35.41cd/Aの電流効率、15.91 lm/Wの電力効率、及び9.98%の外部量子効率EQEを有する。一方、市販されているホストCBPによって製造されたエレクトロルミネッセンスデバイスは、同じ電流密度で、7.71Vの電圧、5845cd/mの輝度、29.23cd/Aの電流効率、11.91lm/Wの電力効率、及び8.5%の外部量子効率EQEを有する。従って、本発明の双極性ホスト材料を使用すると、CBPで製造されたデバイスよりも21%高い電流効率及び17.4%高い外部量子効率を取得でき、より高いデバイス安定性を取得でき、より良好な応用の見通しを有し、有機発光ダイオードのホスト材料に対する要求を満たす。
図1
図2