(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルキルアクリレートが、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種と、炭素数4〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種とを含む、請求項1に記載のアクリルゴム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート及びエチレンをモノマー単位として含むアクリルゴムである。
【0014】
アルキルアクリレートは、アクリルゴムの骨格となるものである。アルキルアクリレートは、例えば、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレートの1種又は2種以上を含む。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0015】
アルキルアクリレートの含有量は、アクリルゴムに含まれるモノマー単位全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよく、95質量%以下、92質量%以下、又は90質量%以下であってよく、60〜95質量%、60〜92質量%、60〜90質量%、70〜95質量%、70〜92質量%、70〜90質量%、80〜95質量%、80〜92質量%、又は80〜90質量%であってもよい。
【0016】
アルキルアクリレートは、例えば、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルアクリレート(以下「C1−C3アルキルアクリレート」ともいう)を含んでよく、炭素数4〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート(以下「C4−C8アルキルアクリレート」ともいう)を含んでもよい。
【0017】
C1−C3アルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びn−プロピルアクリレートが挙げられる。C1−C3アルキルアクリレートは、アクリルゴムの引張強度を向上させる観点から、好ましくは、メチルアクリレート及びエチルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくはエチルアクリレートを含む。
【0018】
C1−C3アルキルアクリレートの含有量は、アクリルゴムに含まれるモノマー単位全量を基準として、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であってよく、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下であってよく、30〜80質量%、30〜70質量%、30〜60質量%、40〜80質量%、40〜70質量%、40〜60質量%、50〜80質量%、50〜70質量%、又は50〜60質量%であってもよい。
【0019】
C4−C8アルキルアクリレートとしては、例えば、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。C4−C8アルキルアクリレートは、アクリルゴムの耐寒性を向上させる観点から、好ましくはブチルアクリレート、更に好ましくはn−ブチルアクリレートを含む。
【0020】
C4−C8アルキルアクリレートの含有量は、アクリルゴムに含まれるモノマー単位全量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上であってよく、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下であってよく、10〜60質量%、10〜50質量%、10〜40質量%、20〜60質量%、20〜50質量%、20〜40質量%、30〜60質量%、30〜50質量%、又は30〜40質量%であってもよい。
【0021】
アルキルアクリレートは、好ましくは、C1−C3アルキルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種と、C4−C8アルキルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種とを含み、より好ましくは、エチルアクリレート及びブチルアクリレートを含み、更に好ましくは、エチルアクリレート及びn−ブチルアクリレートを含む。
【0022】
アルキルメタクリレートは、例えば、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキルアクリレートの1種又は2種以上を含む。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。アルキルメタクリレートは、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを含む。
【0023】
アルキルメタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、及びn−ドデシルメタクリレートが挙げられる。
【0024】
アルキルメタクリレートは、好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、及びn−ドデシルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、より好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びn−ブチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、更に好ましくはメチルメタクリレートを含む。
【0025】
アルキルメタクリレートの含有量は、アクリルゴムに含まれるモノマー単位全量を基準として、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよく、3〜30質量%、3〜20質量%、3〜10質量%、5〜30質量%、5〜20質量%、5〜10質量%、7〜30質量%、7〜20質量%、又は7〜10質量%であってもよい。
【0026】
エチレンの含有量は、アクリルゴムに含まれるモノマー単位全量を基準として、0.5質量%以上、0.8質量%以上、又は1質量%以上であってよく、4質量%以下、3質量%以下、又は2質量%以下であってよく、0.5〜4質量%、0.5〜3質量%、0.5〜2質量%、0.8〜4質量%、0.8〜3質量%、0.8〜2質量%、1〜4質量%、1〜3質量%、又は1〜2質量%であってもよい。
【0027】
アクリルゴムは、モノマー単位として、架橋席モノマーを更に含んでもよい。架橋席モノマーは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート及びエチレンと共重合可能であり、かつ架橋席(架橋点ともいう)を形成する官能基を有するモノマーである。架橋席モノマーは、重合性の炭素−炭素二重結合を有しており、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、メタアリル基、ビニル基、又はアルケニレン基を有している。上記官能基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基及び活性塩素基が挙げられる。架橋席モノマーは、これらの官能基の1種又は2種以上を有していてよい。
【0028】
一実施形態において、架橋席モノマーは、上記官能基として、好ましくはエポキシ基を有しており、より好ましくはグリシジル基を有している。エポキシ基を有する架橋席モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及びメタアリルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0029】
他の一実施形態において、架橋席モノマーは、上記官能基として、好ましくはカルボキシル基を有している。架橋席モノマー中のカルボキシル基の数は、1つであってよく、2つであってよく、3つ以上であってもよい。カルボキシル基を有する架橋席モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びマレイン酸モノアルキルエステルが挙げられる。
【0030】
活性塩素基を有する架橋席モノマーとしては、例えば、2−クロロエチルビニルエーテル、2−クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、クロロ酢酸ビニル、及びクロロ酢酸アリルが挙げられる。
【0031】
架橋席モノマーの含有量は、アクリルゴムに含まれるモノマー単位全量を基準として、0.5質量%以上、0.8質量%以上、又は1質量%以上であってよく、10質量%以下、5質量%以下、又は3質量%以下であってよく、0.5〜10質量%、0.5〜5質量%、0.5〜3質量%、0.8〜10質量%、0.8〜5質量%、0.8〜3質量%、1〜10質量%、1〜5質量%、又は1〜3質量%であってもよい。
【0032】
アクリルゴムは、モノマー単位として、上述した各モノマーと共重合可能なその他のモノマーを更に含んでもよい。その他のモノマーとしては、例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フッ素含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、アルキルビニルケトン、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルニトリル、ハロゲン化ビニル、及びハロゲン化ビニリデンが挙げられる。
【0033】
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(n−ブトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(n−プロポキシ)プロピル(メタ)アクリレート、及び2−(n−ブトキシ)プロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
フッ素含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,1−ジヒドロペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,5−トリヒドロペルフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,7−トリヒドロペルフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル(メタ)アクリレート、及び1,1−ジヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。第3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
アルキルビニルケトンとしては、例えばメチルビニルケトンが挙げられる。ビニルエーテルとしては、例えばビニルエチルエーテルが挙げられる。ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニルが挙げられる。アリルエーテルとしては、例えばアリルメチルエーテルが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、及びビニルトルエンが挙げられる。ビニルニトリルとしては、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが挙げられる。ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニル及びフッ化ビニルが挙げられる。ハロゲン化ビニリデンとしては、例えば、塩化ビニリデン及びフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0037】
その他のモノマーの含有量は、アクリルゴムに含まれるモノマー単位全量を基準として、1質量%以上であってよく、10質量%以下であってよい。
【0038】
アクリルゴムは、上記のモノマーを乳化重合、懸濁重合などの公知の方法により共重合することにより得られ、より具体的には、例えば以下の方法により得られる。
まず、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートを含むモノマー混合液と、ポリビニルアルコール水溶液とを反応容器内で混合して懸濁液を作製する。続いて、反応容器中を窒素ガスで置換した後、エチレンを例えば0.5〜5MPaの圧力で圧入する。その後、懸濁液を撹拌しながら、重合開始剤を懸濁液に加えて重合を開始させ、例えば40〜100℃で1〜24時間で重合を進行させる。得られた共重合体にホウ酸ナトリウム水溶液(凝固剤)を添加し、共重合体を固化させた後、水による共重合体の洗浄、脱水及び乾燥の工程をこの順で実施し、アクリルゴムを得る。
【0039】
モノマー混合液は、必要に応じて、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートに加えて、アクリルゴムを構成する上述のモノマー(ただし、エチレン等の気体状のモノマーを除く)を更に含んでもよい。
【0040】
ポリビニルアルコールの添加量は、アクリルゴムを構成するモノマー全量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。ポリビニルアルコールは、完全けん化ポリビニルアルコールであってよく、部分けん化ポリビニルアルコールであってもよく、アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量を後述するような範囲に調整しやすい観点から、好ましくは部分けん化ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールにおけるけん化度は、アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量を後述するような範囲に調整しやすい観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99モル%以下、更に好ましくは90モル%以下である。ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K6726「3.5 けん化度」に従って測定される値を意味する。
【0041】
懸濁液には、pH調整剤を更に添加してもよい。pH調整剤は、例えば、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩であってよく、好ましくは酢酸ナトリウムである。pH調整剤の添加量は、アクリルゴムを構成するモノマー全量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、5質量部以下であってよい。
【0042】
重合開始剤は、例えば、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、又は、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物であってよく、好ましくはtert−ブチルヒドロペルオキシドである。重合開始剤の添加量は、アクリルゴムを構成するモノマー全量100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であってよく、2質量部以下であってよい。
【0043】
固化させた共重合体は、最終的に得られるアクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量を調整するために、水で洗浄される。具体的には、例えば、共重合体に水を添加し、共重合体及び水を所定の時間混合することによって洗浄する。アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量は、洗浄に用いられる水の温度によって調整できる。水の温度が高いほど、アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量が少なくなる。
【0044】
アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量を後述するような範囲に調整するためには、水の温度は、好ましくは10℃を超え、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。洗浄する時間は、例えば、5分間以上、10分間以上、又は20分間以上であってよく、1時間以下、50分間以下、又は40分間以下であってよい。
【0045】
以上のようにして得られるアクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量は、アクリルゴムの全量を基準として、耐銅害性に優れる観点から0.5質量%以上であり、耐銅害性に更に優れる観点から、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.1質量%以上である。アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量は、アクリルゴムの全量を基準として、耐水性に優れる観点から2質量%以下であり、耐水性に更に優れる観点から、好ましくは1.8質量%以下、より好ましくは1.6質量%以下、更に好ましくは1.4質量%以下、特に好ましくは1.3質量%以下である。
【0046】
アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量は、アクリルゴムの全量を基準として、耐水性及び耐銅害性を両立できる観点から0.5〜2質量%であり、耐水性及び耐銅害性を更に両立しやすい観点から、好ましくは、0.5〜1.8質量%、0.5〜1.6質量%、0.5〜1.4質量%、0.5〜1.3質量%、0.6〜2質量%、0.6〜1.8質量%、0.6〜1.6質量%、0.6〜1.4質量%、0.6〜1.3質量%、0.8〜2質量%、0.8〜1.8質量%、0.8〜1.6質量%、0.8〜1.4質量%、0.8〜1.3質量%、1〜2質量%、1〜1.8質量%、1〜1.6質量%、1〜1.4質量%、1〜1.3質量%、1.1〜2質量%、1.1〜1.8質量%、1.1〜1.6質量%、1.1〜1.4質量%、又は1.1〜1.3質量%である。
【0047】
アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量は、熱分解GC−MSにより測定される。より具体的には、ダブルショット・パイロライザー(フロンティアラボ社製PY−2020D)によって、550℃でアクリルゴムの熱分解を行い、ガスクロマトグラフ質量分析(日本電子社製JMS−DX303、アジレントキャピラリカラムDB−5、キャリアガス:ヘリウム、注入口温度:280℃、昇温条件:70℃で2分間保持した後、12℃/分で280℃まで昇温)によって、ポリビニルアルコールの分解物であるクロトンアルデヒドを絶対検量線法にて定量を行うことにより、アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量を測定する。
【0048】
アクリルゴム中には、凝固剤として用いられるホウ酸ナトリウムに由来するホウ素元素が残留し得る。アクリルゴム中のホウ素の含有量は、少ないほど好ましくは、アクリルゴムの全量を基準として、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは90質量ppm以下、更に好ましくは80質量ppm以下、特に好ましくは70質量ppm以下である。ホウ素の含有量は、ICP発光分光分析により測定される。
【0049】
アクリルゴムのムーニー粘度は、例えば、10以上、20以上、又は30以上であってよく、70以下、60以下、又は50以下であってよい。アクリルゴムのムーニー粘度は、JIS K6300に規定される方法に従って測定された値であり、具体的には、L型ローターを用いて、100℃において、予備加熱1分間の後、回転開始後4分間経過した時点で測定された値を意味する。
【0050】
以上説明したアクリルゴムは、必要に応じてその他の成分と組み合わせてゴム組成物として用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上記のアクリルゴム(及び必要に応じて用いられるその他の成分)を含有するゴム組成物である。アクリルゴムの含有量は、ゴム組成物の全量を基準として、例えば、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、90質量%以下であってよい。
【0051】
ゴム組成物に含まれ得るその他の成分としては、例えば、充填剤、滑剤、老化防止剤、界面活性剤、架橋剤、及び架橋促進剤が挙げられる。
【0052】
充填剤としては、例えばカーボンブラック、シリカ、タルク及び炭酸カルシウムが挙げられる。充填剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、30質量部以上であってよく、100質量部以下であってよい。
【0053】
滑剤としては、例えば、流動パラフィン、ステアリン酸、ステアリルアミン、脂肪酸亜鉛、脂肪酸エステル、及びオルガノシリコーンが挙げられる。滑剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0054】
老化防止剤としては、例えば芳香族アミン化合物及びフェノール化合物が挙げられる。老化防止剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0055】
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。界面活性剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0056】
架橋剤としては、アクリルゴムがモノマー単位として架橋席モノマーを含む場合、例えば、イミダゾール化合物及びジアミン化合物が挙げられる。架橋剤としては、アクリルゴムがモノマー単位として架橋席モノマーを含まない場合、例えば多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。架橋剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0057】
架橋促進剤は、ゴム組成物が架橋剤を含有する場合に、好ましく用いられる。架橋促進剤としては、例えば、トリメチルチオ尿素化合物、フェノチアジン化合物、及びグアニジン化合物が挙げられる。架橋促進剤の含有量は、アクリルゴム100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0058】
ゴム組成物は、架橋された状態で(架橋物として)好適に用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上記のゴム組成物の架橋物である。架橋物は、ゴム組成物を架橋させることにより得られる。アクリルゴムがモノマー単位として架橋席モノマーを含む場合、架橋席モノマーの架橋席(架橋点)により、アクリルゴム同士の架橋が形成される。この場合、ゴム組成物が架橋剤を含有していると、架橋剤によりアクリルゴム同士の架橋が更に形成される。あるいは、アクリルゴムがモノマー単位として架橋席モノマーを含まず、ゴム組成物が架橋剤を含有する場合、架橋剤によりアクリルゴム同士の架橋が形成される。
【0059】
ゴム組成物を架橋する方法は、公知の方法であってよく、例えば、ゴム組成物を加熱及び加圧する第一の架橋工程と、第一の架橋工程後のゴム組成物を更に加熱する第二の架橋工程とを備えていてよい。
【0060】
第一の架橋工程において、加熱温度は、例えば、150℃以上であってよく、220℃以下であってよい。加圧時の圧力は、例えば、0.4MPa以上であってよく、20MPa以下であってよい。加熱及び加圧を行う時間は、例えば、5分間以上であってよく、2時間以下であってよい。
【0061】
第二の架橋工程において、加熱温度は、例えば、150℃以上であってよく、220℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、30分間以上であってよく、24時間以下であってよい。
【0062】
ゴム組成物の架橋物は、特に、ゴムホースや、ガスケット、パッキング等のシール部品として好適に用いられる。すなわち、本発明の他の一実施形態は、上記の架橋物を含むゴムホース又はシール部品である。当該ゴムホース及びシール部品は、ゴム組成物の架橋物のみからなってもよく、当該架橋物と他の部品とを備えていてもよい。
【0063】
ゴムホースとしては、例えば、自動車、建設機械、油圧機器等のトランスミッションオイルクーラーホース、エンジンオイルクーラーホース、エアダクトホース、ターボインタークーラーホース、ホットエアーホース、ラジエターホース、パワーステアリングホース、燃料系統用ホース、及びドレイン系統用ホース等が挙げられる。
【0064】
シール部品としては、例えば、エンジンヘッドカバーガスケット、オイルパンガスケット、オイルシール、リップシールパッキン、O−リング、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフト、カムシャフトシールガスケット、バルブステム、パワーステアリングシールベルトカバーシール、等速ジョイント用ブーツ材及びラックアンドピニオンブーツ材が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例をよって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
内容積40リットルの耐圧反応容器に、表1,2に示したモノマー(ただしエチレンを除く)を含むモノマー混合液11kgと、部分けん化ポリビニルアルコールの4質量%水溶液(ポリビニルアルコールのけん化度:88モル%)17kgと、酢酸ナトリウム22gとを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。容器内上部の空気を窒素で置換後、容器上部にエチレンを3MPaの圧力で圧入した。攪拌を続行し、容器内を55℃に保持した後、t−ブチルヒドロペルオキシド水溶液(0.25質量%)2リットルを加えて、重合を開始させた。容器内温度を55℃に保ち、6時間後に反応を終了させた。得られた共重合体にホウ酸ナトリウム水溶液(3.5質量%)7リットルを添加して共重合体を固化させた。次いで、固化させた共重合体100質量部に対し、表1,2に示す温度の純水450質量部を添加して、容器内で5分間撹拌した後、容器から水分を排出する工程を4回繰り返すことにより、水洗を行った。その後、脱水及び乾燥を行ってアクリルゴムを得た。
【0067】
得られたアクリルゴムに含まれるモノマー単位の組成を表1,2に示す。なお、マレイン酸モノブチルモノマー単位の含有量は、アクリルゴムをトルエンに溶解し、水酸化カリウムを用いた中和滴定により測定した。その他のモノマー単位の含有量は、核磁気共鳴スペクトルにより測定した。
【0068】
また、得られたアクリルゴム中のポリビニルアルコール及びホウ素の含有量、並びに、ムーニー粘度ML(1+4)100℃をそれぞれ測定した。結果を表1,2に示す。
【0069】
ポリビニルアルコールの含有量は、熱分解GC−MSにより測定した。より具体的には、ダブルショット・パイロライザー(フロンティアラボ社製PY−2020D)によって、550℃でアクリルゴムの熱分解を行い、ガスクロマトグラフ質量分析(日本電子社製JMS−DX303、アジレントキャピラリカラムDB−5、キャリアガス:ヘリウム、注入口温度:280℃、昇温条件:70℃で2分間保持した後、12℃/分で280℃まで昇温)によって、ポリビニルアルコールの分解物であるクロトンアルデヒドを絶対検量線法にて定量を行った。ホウ素の含有量は、ICP発光分光分析により測定した。ムーニー粘度ML(1+4)100℃は、JIS K6300に規定される方法に従って測定した。
【0070】
続いて、得られた各アクリルゴムと以下に示す各成分とを表1,2に示す組成で用い、8インチオープンロールで混練を行ってゴム組成物を得た。
充填剤:カーボンブラック(東海カーボン社製 シーストSO)
滑剤a:ステアリン酸(花王社製 ルナックS−90)
滑剤b:ステアリルアミン(花王社製 ファーミン80)
老化防止剤:4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(アディバント社製 Naugard#445)
界面活性剤:ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製 エマール0)
架橋剤a:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(和歌山精化工業社製 BAPP)
架橋剤b:1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール(四国化成工業社製 CN−25)
架橋促進剤a:1,3−ジ−o−トリルグアニジン(大内新興社製 ノクセラーDT)
架橋促進剤b:安息香酸アンモニウム(大内新興社製 バルノックAB)
【0071】
得られたゴム組成物を厚さ2.4mmのシートに分出しした後、プレス加硫機を用いて、170℃、10MPaの圧力で20分間加熱及び加圧を行った。続いて、ギヤーオーブン内で170℃4時間の加熱を行い、ゴム組成物の架橋物を得た。
【0072】
(架橋物の物性の評価)
JIS K6251−2010に従って、架橋物の引張強度及び伸びを測定した。また、JIS K6253−2006に従って、タイプAデュロメータを用いて架橋物の硬度を測定した。
【0073】
(耐水性の評価)
JIS K6258−2010の「浸せき試験」に従って、架橋物を純水による浸せき試験に供し、試験前後の架橋物の体積変化率を以下の式に基づいて算出した。
体積変化率(%)=(試験後の体積−試験前の体積)/試験前の体積×100
【0074】
(耐銅害性の評価)
3号ダンベル状に成形した架橋物を試験片として用いた。エンジンオイル(EMGルブリカンツ合同会社製 モービル1 5W−30)と、銅紛(福田金属箔粉工業製 CE−1110)とを、エンジンオイル/銅粉=3/1(質量比)の割合で混合したスラリー5gを、試験片の標線間を完全に覆い隠すように刷毛を用いて塗り、室温で12時間乾燥させた。続いて、150℃のギヤーオーブンで試験片を500時間加熱することにより、耐銅害性試験を行った。その後、ヘラを用いて試験片から銅ペーストを剥がし、JIS K6251−2010に従って試験片の伸びを測定した。試験前後の伸び変化率(%)を以下の式に基づいて算出した。
伸び変化率(%)=(試験後の伸び−試験前の伸び)/試験前の伸び×100
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1から分かるとおり、架橋席モノマーとしてエポキシ基を有する架橋席モノマーが用いられたアクリルゴムにおいて、アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量が所定の範囲内であることにより、耐水性及び耐銅害性を両立できる(いずれか一方を過度に悪化させない)。同様に、表2から分かるとおり、架橋席モノマーとしてカルボキシル基を有する架橋席モノマーが用いられたアクリルゴムにおいて、アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量が所定の範囲内であることにより、耐水性及び耐銅害性を両立できる(いずれか一方を過度に悪化させない)。
本発明の一側面は、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート及びエチレンをモノマー単位として含むアクリルゴムであって、アクリルゴム中のポリビニルアルコールの含有量が0.5〜2質量%である、アクリルゴムである。