特許第6836045号(P6836045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836045
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】手術室の空調システム
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/00 20060101AFI20210215BHJP
   F24F 3/044 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   A61G10/00 C
   F24F3/044
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-226560(P2015-226560)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-93608(P2017-93608A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年6月15日
【審判番号】不服2019-15511(P2019-15511/J1)
【審判請求日】2019年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】今井田 尚文
(72)【発明者】
【氏名】山田 容子
(72)【発明者】
【氏名】白谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】山口 一
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩司
(72)【発明者】
【氏名】熊野 直人
(72)【発明者】
【氏名】村上 宏次
(72)【発明者】
【氏名】野村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
【合議体】
【審判長】 藤井 昇
【審判官】 氏原 康宏
【審判官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/135517(WO,A1)
【文献】 特開2013−148241(JP,A)
【文献】 特開平6−281238(JP,A)
【文献】 特表2012−507321(JP,A)
【文献】 特開2015−164700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療施設における手術台を有する手術室に適用される空調システムであって、
前記手術室の天井における中央部分で前記手術台及び該手術台周りの上方に設けられる第1吹出口と、前記手術室における前記手術台周りよりも外側の外周部に位置する外周エリアの上方の天井に設けられる第2吹出口と、を有し、
前記手術室からの還気を吸引する第1空調機を備え、該第1空調機によって吸引した前記還気を温度調整した給気を前記第1吹出口から前記手術台に向けて吹き出す第1系統と、
前記手術室からの還気を吸引する第2空調機を備え、該第2空調機によって吸引した前記還気を温度調整した給気を前記第2吹出口から前記外周エリアに向けて吹き出す第2系統と、
を有し、
前記手術室のうち前記第1空調機及び前記第2空調機に設けられる第1吸込口よりも上方で、少なくとも前記外周エリアに面する天井に、前記手術室の還気を吸引する第2吸込口が設けられていることを特徴とする手術室の空調システム。
【請求項2】
前記第2吸込口は、循環ファンを介して前記第1吹出口に接続されていることを特徴とする請求項に記載の手術室の空調システム。
【請求項3】
前記手術台の周囲又は前記第1吹出口の周囲に吹き出し温度を検出するための第1温度センサーが設けられ、
前記外周エリアに還気の温度を検出するための第2温度センサーが設けられ、
前記第1空調機において、前記第1温度センサーの検出値に基づいて執刀医の要求する温度に調整され、
前記第2空調機において、前記第2温度センサーの検出値に基づいて医療スタッフの要求する温度に調整されることを特徴とする請求項1又は2に記載の手術室の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設における手術室の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療施設における治療室として、必要に応じてその場で患者の手術(オぺ)を行える機能を備えた手術室が知られている。この種の手術室の空調設備としては、手術中の感染を防ぐ必要があることからクリーンルームとなっており、吹出口は清浄空気を手術台周りに吹き出すようにして配置されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、一般的なクリーンルームでは、吹出口に高性能フィルタを設け、吹出口から清浄空気を低速で真下に向けて落とすようにして吹き出すことで、手術台周りを中心とした清浄化が行われている。そのため、吹出口は、手術台の真上に設けられている。さらに、このような従来の病院におけるクリーンルームの空調設備では、手術台上部の吹出口より空調空気の全風量を吹き出して外周部の壁面下部に設けられた還気口より還気を吸い込むことで循環させる空調システムが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手術室における空調設備では、下記のような問題があった。
すなわち、手術室では、手術台上部に設けられた吹出口からの送風温度を変化させることにより手術室内温度を設定範囲内に保っているため、手術台周りの温度は変動し、快適性が不十分になる欠点があった。
また、手術台周りの執刀医や患者を優先した温度設定により空調運転が行われている。そのため、手術室の外周部で作業する医療スタッフのエリアでは、さらに快適性が不十分となる欠点があった。
加えて、吹出口から吹き出される冷風の風速は0.3m/s程度であり、床面まで下降した後、還気口へ向かうショートサーキット流れとなるため、手術室における外周部の空気が淀み易く、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、手術室における手術台周り及びその外周部に位置する外周エリアにおける快適性を向上させることができる手術室の空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る手術室の空調システムは、医療施設における手術台を有する手術室に適用される空調システムであって、前記手術室の天井における中央部分で前記手術台及び該手術台周りの上方に設けられる第1吹出口と、前記手術室における前記手術台周りよりも外側の外周部に位置する外周エリアの上方の天井に設けられる第2吹出口と、を有し、前記手術室からの還気を吸引する第1空調機を備え、該第1空調機によって吸引した前記還気を温度調整した給気を前記第1吹出口から前記手術台に向けて吹き出す第1系統と、前記手術室からの還気を吸引する第2空調機を備え、該第2空調機によって吸引した前記還気を温度調整した給気を前記第2吹出口から前記外周エリアに向けて吹き出す第2系統と、を有し、前記手術室のうち前記第1空調機及び前記第2空調機に設けられる第1吸込口よりも上方で、少なくとも前記外周エリアに面する天井に、前記手術室の還気を吸引する第2吸込口が設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明では、第1系統において第1吸込口で吸引した手術室の還気を第1空調機で適温に温度調整し、その温度調整された給気を第1吹出口から手術台に向けて吹き出すことができる。これにより、手術台及び手術台周りの執刀医などは快適な温度で作業を行うことができる。一方、第1系統とは別で設けられる第2系統により第1吸込口で吸引した手術室の還気を第2空調機で適温に温度調整し、その温度調整された給気を、第2吹出口から手術台の外側に位置する外周エリアに向けて吹き出すことができる。このように手術台への吹き出しをメインとする第1系統とは別系統となる第2系統を設けることで、手術台周りと外周エリアの両エリアの空調を対象とした温度制御を行うことができ、執刀医及び外周エリアで作業する医療スタッフの温度環境を向上させることができる。
しかも、第2吹出口から給気が吹き出されることで、外周エリアにおいて空気が滞留する淀みを抑えることができる。つまり、外周エリアの空気に流れを生じさせることができることから、外周エリアの清浄度環境を改善することができる。
【0009】
この場合には、外周エリアに面する天井に設けられる第2吸込口から外周エリアの還気が吸引されるので、この外周エリアにおける空気の淀みを防ぐことができ、外周エリアの清浄度環境をより向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る手術室の空調システムは、前記第2吸込口は、循環ファンを介して前記第1吹出口に接続されていてもよい。
【0011】
この場合には、第2吸込口によって吸引された還気を、循環ファンを介して第1吹出口から手術台に向けて吹き出すことによる循環を効率よく行うことができる。そして、循環ファンにより第1吹出口からの風量を増加することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る手術室の空調システムは、前記手術台の周囲又は前記第1吹出口の周囲に吹き出し温度を検出するための第1温度センサーが設けられ、前記外周エリアに還気の温度を検出するための第2温度センサーが設けられ、前記第1空調機において、前記第1温度センサーの検出値に基づいて執刀医の要求する温度に調整され、前記第2空調機において、前記第2温度センサーの検出値に基づいて医療スタッフの要求する温度に調整されることを特徴としている。
【0013】
本発明では、手術台周りの手術台エリアの執刀医の要求する温度を第1温度センサーの検出値に基づいて調整することができ、外周エリアの医療スタッフの要求する温度を第2温度センサーの検出値に基づいて調整することができ、第1空調機と第2空調機のそれぞれを別々に制御することが可能となる。つまり、手術台エリアの温度を第1空調機でほぼ一定に維持するように調整しつつ、外周エリアの温度も第2空調機で適宜な温度となるように調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の手術室の空調システムによれば、手術室における手術台周り及びその外周部に位置する外周エリアにおける快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態による手術室の空調システムの概略構成を示す側面図である。
図2図1に示す空調システムの系統図である。
図3図1に示す空調システムを備えた手術室の配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による手術室の空調システムについて、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態による手術室の空調システムは、病院等の医療施設における手術室、例えば平面形状が略矩形状をなす手術室1を対象として適用されるものであって、1台の第1空調機2(2A)と、複数台の第2空調機2(2B)を手術室1に面して配置することにより、これら空調機2A、2Bによって手術室1に対する空調を行うことを基本とするものである。手術室1の中央には、手術台10が設置されている。
特に、この手術室1においてはその運用状況に応じて厳密な温湿度制御を刻々と行う必要があり、本実施形態の空調システムでは、そのような高度の温湿度制御を比較的簡易な構成で確実に実施し得るものとして構成されている。
【0020】
本実施の形態の空調システムは、手術室1の天井11における中央部分で手術台10の上方に設けられる第1吹出口32及び外周部壁面に設けられる下部吸込口23(第1吸込口)と、手術室1における手術台10の外周部に位置する外周エリアNの上方の天井11に設けられる上部吸込口4と、を有している。さらに空調システムは、手術室1からの還気RAを吸引する第1空調機2Aを備え、第1空調機2Aによって吸引した還気RAを温度調整した給気SAを第1吹出口32から手術台10に向けて吹き出す第1系統P1と、手術室1からの還気RAを吸引する第2空調機2Bを備え、第2空調機2Bによって吸引した還気RAを温度調整した給気SAを第2吹出口34から外周エリアNに向けて吹き出す第2系統P2と、を有する構成となっている。
【0021】
第1吹出口32及び第2吹出口34には、それぞれ高性能フィルタを備えた第1フィルターユニット31、第2フィルターユニット33が設けられている。
【0022】
図2および図3は、図1に示す空調システムを具体化した系統図である。すなわち、本実施の形態による空調システムでは、上述したように、第1空調機2Aから第1吹出口32までの空調系統をなす第1系統P1と、第2空調機2Bから第2吹出口34までの空調系統をなす第2系統P2と、を有している。
【0023】
本実施の形態の空調システムは、図2及び図3に示すように、空調機2A、2Bを手術室1に面する位置に配置して手術室1からの還気RAを空調機2A、2Bのそれぞれに吸引する。
第1系統P1では、第1空調機2Aにより温度調整した給気SAを給気ダクト35により手術室1の天井11の中央部に設置した第1吹出口32に向けて送風し、さらに第1フィルターユニット31を通過させて第1吹出口32から下方の手術台10に向けて吹き出す構成となっている。
また、第2系統P2では、2台の第2空調機2B、2Bのそれぞれにより温度調整した給気SAを給気ダクト36により手術室1の天井11に設置した第1吹出口32の外周部に配置される2箇所の第2吹出口34、34のそれぞれに送風し、さらに第2フィルターユニット33に通過させて第2吹出口34から下方の外周エリアNに向けて吹き出す構成となっている。
【0024】
第1空調機2Aは、冷熱源装置(図示省略)から冷却・減湿用の冷水あるいは冷媒が供給される冷却コイル21と、温熱源装置(図示省略)から加熱・再熱用の温水が供給される加熱コイル(あるいは電気ヒーター)22と、をそれぞれ独立で自立縦型のケーシング20内に組み込んだ構成となっている。さらに、ケーシング20には、底部側面に配設された還気RAの下部吸込口23と、頂部に配設された給気SAの吹出部24と、冷却コイル21及び加熱コイル22の上方に送風機25と、を備えている。なお、後述する外調機5を設けない場合には、加湿器(図示省略)を備えることも可能である。
【0025】
このように構成される第1空調機2Aは、送風機25により下部吸込口23からケーシング20内に吸い込んだ還気RAに対して冷却コイル21による冷却処理と、加熱コイル22による加熱・再熱処理とを、手術室1のその時点での温度に応じて同時にあるいは選択的に行うことにより、所望の温度の給気SAを効率的かつ精度良く調整可能なものである。なお、外調機5を設けない場合には、第1空調機2Aに除湿・加熱機能をもたせることも可能である。
【0026】
そして、このような処理を自動的かつ精度良く迅速に行うために、第1吹出口32の内側で吹き出し温度を検出するための吹出し温度センサーT1(第1温度センサー)が設置されている。本空調システムでは、吹出し温度センサーT1の検出結果に基づいて冷却制御、加熱制御を公知の比例制御(PID制御)によるアルゴリズムによって制御することにより、手術室1の温度を精度良く刻々と制御し、手術台10周りの執刀医の要求する温度で送風できる構成となっている。
なお、吹出し温度センサーT1の取り付け位置は、第1吹出口32内に限定されることはなく、手術台10周りの温度を検出できるようにこの手術台10周りに設置されていてもよい。この場合、吹出し温度センサーT1は、有線であることに限らず、無線で通信可能とすることで、手術台10周りに配線されないようにすることができる。
【0027】
第2空調機2Bは、上述した第1空調機2Aの冷却コイル21と加熱コイル22を一体で設けた冷却・加熱コイル26を用いる構成であり、この冷却・加熱コイル26以外の構成は第1空調機2Aとほぼ同様である。すなわち、第2空調機2Bのケーシング20には、上述した冷却・加熱コイル26と、底部側面に配設された還気RAの下部吸込口23と、頂部に配設された給気SAの吹出部24と、冷却・加熱コイル26の上方に送風機25と、を備えている。
【0028】
そして、手術室1の壁面には、還気RAの温度を検出するための壁面温度センサーT2(第2温度センサー)が設置されている。第2空調機2Bにおいて、壁面温度センサーT2の検出値に対応する温度に調整される。
【0029】
このように構成される第2空調機2Bは、送風機25により下部吸込口23からケーシング20内に吸い込んだ還気RAに対して冷却・加熱コイル26による冷却と加熱を、手術室1のその時点での温度に応じて選択的に行うことにより、所望の室温に効率的かつ精度良く調整可能なものである。
【0030】
図2及び図3に示すように、本実施の形態では、外周エリアNに面する天井11において、手術室1の還気RAを吸引する上部吸込口4(第2吸込口)が設けられている。上部吸込口4は、ダクト42によって第1吹出口32に接続されている。また、このダクト42には循環ファン41が設けられており、上部吸込口4で吸引された還気RAが第1吹出口32から吹き出すように循環させる構成となっている。
なお、上部吸込口4は、第1空調機2A及び第2空調機2Bのそれぞれに設けられる下部吸込口23よりも上方であって、外周エリアNに面する天井11及び側壁12のうち少なくとも一部に設けられていれば良く、本実施の形態のように天井11であることに限定されることはない。
【0031】
また、本実施の形態の空調システムでは、手術室1に供給するべき外気OAを処理するための外調機5を備えており、この外調機5により処理した外気SOAを外気ダクト51により第1フィルターユニット31及び第1吹出口32に供給する構成とされている。すなわち、第1空調機2Aからの給気SAと外調機5からの外気SOAとが第1フィルターユニット31において混合されて手術室1に吹き出されるようになっている。
なお、以上の各要素に加えて、必要であれば手術室1に供給する外気OAの導入量に応じて手術室1から排気を行うための排気設備を設置しても良く、以上の各構成要素の全てを制御盤(図示省略)により相互に関連づけて制御するように構成すると良い。
また、外調機5を設けず、送風機のみで外気OAを第1空調機2Aに供給し、第1空調機2Aで除湿、加湿を行うことも可能である。
【0032】
次に、上述した手術室の空調システムの作用について、詳細に説明する。
本実施の形態では、図2に示すように、第1系統P1において下部吸込口23で吸引した手術室1の還気RAを第1空調機2Aで適温に温度調整し、その温度調整された給気SAを第1吹出口32から手術台10に向けて吹き出すことができる。これにより、手術台10及び手術台10周りの執刀医などは快適な温度で作業を行うことができる。一方、第1系統P1とは別で設けられる第2系統P2により下部吸込口23で吸引した手術室1の還気RAを第2空調機2Bで適温に温度調整し、その温度調整された給気SAを、第2吹出口34から手術台10の外側に位置する外周エリアNに向けて吹き出すことができる。
【0033】
このように手術台10への吹き出しをメインとする第1系統P1とは別系統となる第2系統P2を設けることで、手術台10周りと外周エリアNの両エリアの空調を対象とした温度制御を行うことができ、執刀医及び外周エリアNで作業する医療スタッフの清浄度環境を向上させることができる。
しかも、第2吹出口34から給気SAが吹き出されることで、外周エリアNにおいて空気が滞留する淀みを抑えることができる。つまり、外周エリアNの空気に流れを生じさせることができることから、外周エリアNの清浄度環境を改善することができる。
【0034】
また、本実施の形態では、外周エリアNに面する天井11に設けられる上部吸込口4から外周エリアNの還気RAが吸引されるので、この外周エリアNにおける空気の淀みを防ぐことができ、外周エリアNの清浄度環境をより向上させることができる。
【0035】
さらに、本実施の形態による空調システムでは、上部吸込口4が循環ファン41を介して第1吹出口32に接続されているので、上部吸込口4によって吸引された還気RAを、循環ファン41を介して第1吹出口32から手術台10に向けて吹き出すことによる循環を効率よく行うことができる。そして、循環ファン41により第1吹出口32からの風量を増加することが可能となる。
【0036】
また、本実施の形態では、手術台10周りの手術台エリアの執刀医などの温度制御を吹き出し温度センサーT1の検出値に対応して行うことができ、外周エリアNの医療スタッフの温度制御を壁面温度センサーT2の検出値に対応して行うことができ、第1空調機2Aと第2空調機2Bのそれぞれを別々に制御することが可能となる。つまり、手術台エリアの温度を第1空調機2Aでほぼ一定に維持するように調整しつつ、外周エリアNの温度も第2空調機2Bで適宜な温度となるように調整することができる。
【0037】
以上、本発明による手術室の空調システムの実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0038】
例えば、本実施の形態では、手術室1の天井11に上部吸込口4を設けた構成としているが、この上部吸込口4や循環ファン41を省略することも可能である。
また、第2空調機2Bの第2吹出口34は、外周壁面上部に設けることも可能である。
【0039】
また、本実施の形態では、第1空調機2Aより第1吹出口32に接続される第1系統P1と、第2空調機2Bより第2吹出口34に接続される第2系統P2と、の2系統からなる空調システムとしているが、第2系統P2を省略し、第1系統P1のみにするとともに、手術室1のうち下部吸込口23よりも上方で、手術台10の外周部に位置する外周エリアNに面する手術室1の天井11及び側壁12のうち少なくとも一部において、手術室1の還気RAを吸引する上部吸込口4(第2吸込口)が設けられた構成としてもよい。
この場合、下部吸込口23で吸引した手術室1の還気RAを第1空調機2Aで適温に温度調整し、その温度調整された給気SAを第1吹出口32から手術台10に向けて吹き出すことができる。そして、上部吸込口4から外周エリアNの還気が吸引されるので、この外周エリアNにおける空気の淀みを防ぐことができる。つまり、外周エリアNの空気に流れを生じさせることができることから、外周エリアNの清浄度環境を向上させることができる。
【0040】
また、第1吹出口32及び第2吹出口34の大きさ(面積)、第2空調機2Bの台数、第2吹出口34の設置数、位置などの構成は、手術室1の広さ、面積、手術台10の位置などの条件に応じて適宜設定することができる。
【0041】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 手術室
2 空調機
2A 第1空調機
2B 第2空調機
4 上部吸込口(第2吸込口)
5 外調機
10 手術台
11 天井
12 側壁
20 ケーシング
23 下部吸込口(第1吸込口)
24 吹出部
25 送風機
31 第1フィルターユニット
32 第1吹出口
33 第2フィルターユニット
34 第2吹出口
P1 第1系統
P2 第2系統
N 外周エリア
T1 吹出し温度センサー(第1温度センサー)
T2 壁面温度センサー(第2温度センサー)
RA 還気
SA 給気
図1
図2
図3