(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2ボディは、前記連結部と前記第2支持部とを繋ぐように延び、前記軸方向に直交する第1壁と、当該第1壁から延出し、前記軸方向に沿って前記軸部材の前記一端側へ向けて延びる第2壁とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用ラッチ装置。
前記第2壁は、前記軸方向から見た前記連結部と前記軸部材の中心とを通る直線に直交し前記軸部材の中心を通る第1平面と、前記直線に直交し前記連結部を通る第2平面との間の全範囲に渡って前記第1壁から延出していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の乗物用ラッチ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、燃費向上等の目的から車両の軽量化が求められ、車両に用いられるラッチ装置についても軽量化が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、軽量化した乗物用ラッチ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、乗物用ラッチ装置の剛性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する本発明は、ストライカに係合可能な係合溝を有する係合部材と、係合部材を軸支する軸部材と、軸部材の一端を支持する第1支持部を有する第1ボディと、第1ボディに連結された連結部と、軸部材の他端を支持する第2支持部とを有する第2ボディとを備え、係合部材がストライカに係合可能な第1位置とストライカから離脱可能な第2位置との間で軸部材周りに回動可能に構成された乗物用ラッチ装置である。
第1ボディは、係合部材が第1位置にある状態において、係合溝のストライカが進入する進入口を軸部材の軸方向における一方から覆う。
第2ボディは、係合部材が第1位置にある状態において、軸方向の他方から係合溝を覆わずに、係合溝の全体を露出させるように構成される。
【0007】
このような構成によると、第2ボディが係合溝の全体を露出させるように構成され、小さくなるので、乗物用ラッチ装置の軽量化を図ることができる。また、車両に組み付ける前においては、係合部材等の組付状態を目視で確認し易い。
【0008】
前記した乗物用ラッチ装置において、第2ボディは、係合部材が第2位置にある状態において、軸方向の他方から係合溝を覆わずに、係合溝の全体を露出させることができる。
【0009】
このような構成によれば、乗物用ラッチ装置をさらに軽量化することができる。また、車両に組み付ける前においては、係合部材の動作を目視で確認し易い。
【0010】
前記した乗物用ラッチ装置において、第1ボディは、ストライカが進入可能な受入溝と、軸方向から見た受入溝の一方側に設けられた、乗物用ラッチ装置を取り付けるための固定部材が係合する第1取付部と、受入溝の他方側に設けられた、乗物用ラッチ装置を取り付けるための固定部材が係合する第2取付部とを有することができる。この場合において、第2ボディは、受入溝の少なくとも一方側には、乗物用ラッチ装置を取り付けるための固定部材が係合する取付部を有さない構成としてもよい。
【0011】
このような構成によると、第2ボディが、受入溝の少なくとも一方側に取付部が無くても、第1ボディに設けられた、受入溝の両側の取付部が車体やシートフレーム等に固定されることで、車体やシートフレームなどによって取付部の位置が固定される。つまり、車体やシートフレームが、第1ボディとともに乗物用ラッチ装置の筐体を構成するような構造となるので、剛性および強度を確保しつつ、乗物用ラッチ装置の軽量化を図ることができる。
【0012】
前記した乗物用ラッチ装置において、第2ボディは、連結部と第2支持部とを繋ぐように延び、軸方向に直交する第1壁と、当該第1壁から延出し、軸方向に沿って軸部材の一端側へ向けて延びる第2壁とを有することができる。
【0013】
この構成によれば、第2ボディを小さく構成しても、第2ボディが第1壁と第2壁とによってL字断面を構成するので、乗物用ラッチ装置の剛性を確保することができる。
【0014】
前記した乗物用ラッチ装置において、第2壁は、軸方向から見た連結部と軸部材の中心とを通る直線に直交し軸部材の中心を通る第1平面と、前記直線に直交し連結部を通る第2平面との間の全範囲に渡って第1壁から延出していることが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、第2ボディが第1ボディと繋がる軸部材の中心から連結部の全範囲に渡ってL字断面が形成されるので、乗物用ラッチ装置の剛性を確保することができる。
【0016】
前記した乗物用ラッチ装置において、第2ボディは、第1壁および第2壁により形成される稜線上に複数の凹部を有することができる。
【0017】
このような構成によれば、複数の凹部が第1壁と第2壁を繋ぐので、第2ボディの剛性を高くすることができる。
【0018】
前記した乗物用ラッチ装置において、第1壁は、前記連結部として嵌合穴を有し、第1ボディは、嵌合穴に嵌合する第1突部を有することができる。
【0019】
このような構成によれば、嵌合穴と第1突部の嵌合により、第1ボディと第2ボディの互いの位置規制をすることができる。
【0020】
前記した乗物用ラッチ装置において、係合部材と係合して係合部材を回動させるためのレバー部材をさらに備えることができる。
レバー部材は、インナーケーブルおよび当該インナーケーブルが通るアウターケーブルを有するケーブルのインナーケーブルが係合するケーブル係合部を有する。
第2ボディは、アウターケーブルの端部が係止されるケーブル係止部を有する。
ケーブル係止部は、第1壁から軸方向に沿って軸部材の一端側へ向けて延びる。
そして、第1壁は、嵌合穴が形成された第1部分と、第1部分とケーブル係止部の間に設けられ、当該第1部分に対して軸部材の一端側に向けて凹んだ第2部分とを有することができる。
【0021】
このような構成によれば、凹んだ第2部分によって、アウターケーブルから力が掛かるケーブル係止部の剛性を高くすることができる。
【0022】
前記した乗物用ラッチ装置において、第2ボディは、第1部分と第2部分の間に開口を有し、第1ボディは、開口に入り込んだ第2突部を有し、第1部分と第2部分に挟まれている構成とすることができる。
【0023】
このような構成によれば、第2突部が開口に入り込んで第1部分と第2部分に挟まれることで、第2ボディが、第1壁の厚み方向に第1ボディに対して規制され、第1ボディと第2ボディとで構成される筐体の剛性を高くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第2ボディが係合溝の全体を露出させるように構成され、小さくなるので、乗物用ラッチ装置の軽量化を図ることができる。
【0025】
また、本発明によれば、第2ボディが、係合部材が解除位置にある状態でも係合溝の全体を露出させるので、乗物用ラッチ装置をさらに軽量化することができる。
【0026】
また、本発明によれば、第1ボディが、車体やシートフレーム等に固定されることで、乗物用ラッチ装置の軽量化を図りつつ、剛性および強度を確保することができる。
【0027】
また、本発明によれば、第2ボディを小さく構成しても、第2ボディが第1壁と第2壁とによってL字断面を構成するので、乗物用ラッチ装置の剛性を確保することができる。
【0028】
また、本発明によれば、第2ボディが第1ボディと繋がる軸部材の中心から連結部の全範囲に渡ってL字断面が形成されることで、乗物用ラッチ装置の剛性を確保することができる。
【0029】
また、本発明によれば、第2ボディが、第1壁および第2壁により形成される稜線上に複数の凹部を有することで、第2ボディの剛性を高くすることができる。
【0030】
また、本発明によれば、嵌合穴と第1突部の嵌合により、第1ボディと第2ボディの互いの位置規制をすることができる。
【0031】
また、本発明によれば、第1壁に凹んだ第2部分を設けることで、アウターケーブルから力が掛かるケーブル係止部の剛性を高くすることができる。
【0032】
また、本発明によれば、第2突部が開口に入り込んで第1部分と第2部分に挟まれることで、第2ボディが、第1壁の厚み方向に第1ボディに対して規制され、第1ボディと第2ボディとで構成される筐体の剛性を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る乗物用ラッチ装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、一実施形態の乗物用ラッチ装置1は、例えば、自動車の後部座席などの車両用シートのシートフレームSのうち、シートバックSBのサイドフレームSF1にボルト2により固定されている。乗物用ラッチ装置1は、車体3に固定されたストライカ4に対して係合することで、シートバックSBを車体3に対して固定し、ストライカ4から離脱することでシートバックSBを車体3に対して移動可能にする。
図4に示すように、乗物用ラッチ装置1には、インナーケーブル8Aと、当該インナーケーブル8Aが通るアウターケーブル8Bを有するケーブル8の一端が接続され、インナーケーブル8Aを引くことで操作される。なお、ケーブル8の他端は、シートバックSBや車体3に設けられたレバーや、シートバックSB以外の可動部などに接続されている。
【0035】
図2に示すように、乗物用ラッチ装置1は、第1ボディ10および第2ボディ20からなる筐体5と、筐体5に回動可能に支持された係合部材の一例としてのフック30と、筐体5に回動可能に支持されたレバー部材40と、トーションスプリング51,52とを備えてなる。
【0036】
第1ボディ10は、金属板をプレス成形してなり、フック30の回動の軸方向(以下、単に「軸方向」とする。)の一方側にフック30と対面するカバー部11を有する。カバー部11は、
図2における後側に向けて開放し、前後に延びる受入溝11Aを有する。受入溝11Aは、車体3に設けられたストライカ4が進入可能な溝である。なお、以下の説明において、上下、左右および前後は、便宜上、
図2に表示した方向を基準とする。この方向は、車両用シートに座った乗員を基準とする上下、左右および前後と同じである。もっとも、乗物用ラッチ装置1をどのような向きで使用するかは任意である。
【0037】
軸方向から見た受入溝11Aの一方側、本実施形態では下側には、カバー部11の下端から軸方向の他方(左)に延出する第1側壁部12と、第1側壁部12の左端部から下に延びるフランジ13が設けられている。フランジ13には、前後に離れた2つの取付穴13A,13Bが第1取付部として設けられている。取付穴13A,13Bは、乗物用ラッチ装置1をシートフレームSに取り付けるための固定部材の一例としてのボルト2が係合する部分である。
【0038】
軸方向から見た受入溝11Aの他方側、本実施形態では上側には、カバー部11から左に延出し、略上下方向に沿った第2側壁部14と、第2側壁部14の左端部から後へ延出したフランジ15が設けられている。第2側壁部14とフランジ15は、上下方向の中央部が一部切り欠かれている。
【0039】
また、受入溝11Aの上側には、カバー部11およびフランジ15から左に延出し、略前後方向に沿った第3側壁部16と、第3側壁部16の左端から上に延出した係合フランジ17が設けられている。係合フランジ17には、左へ突出する第1突部17Aと、上へ突出する第2突部17Bとを有する。第1突部17Aは、軸方向から見て円形であり、後述する第2ボディ20の嵌合穴25に入り込んで嵌合する部分である。第2突部17Bは、後述する第2ボディ20の開口21Fに嵌合する部分である。
【0040】
また、係合フランジ17には、上下に少し長い長穴からなる、取付穴17Cが第2取付部として設けられている。取付穴17Cは、乗物用ラッチ装置1をシートフレームSに取り付けるためのボルト2が係合する部分である。
【0041】
カバー部11は、第1支持孔11B、レバー支持孔11C、第1バネ係止部11Dおよび第2バネ係止部11Eを有している。第1支持孔11Bは、フック30を軸支する軸部材53の一端を支持する第1支持部であり、受入溝11Aの前側に設けられている。レバー支持孔11Cは、レバー部材40を軸支するピン54を支持する部分であり、受入溝11Aの上側に設けられている。第1バネ係止部11Dは、トーションスプリング51の第1アーム51Bを係止する部分であり、カバー部11の前端から左に延出している。第2バネ係止部11Eは、トーションスプリング52の第1アーム52Bを係止する部分であり、カバー部11の後端のうち第2側壁部14の切り欠かれた部分に設けられ、カバー部11から左に延出している。
【0042】
また、第1側壁部12には、ゴムからなる緩衝部材18が、第1側壁部12の図示しない孔に嵌合して固定されている。緩衝部材18は、フック30が下に回動する際に当接して、フック30と第1ボディ10がぶつかることによる衝撃および騒音を緩和するものである。
【0043】
図3に示すように、第2ボディ20は、第1ボディ10に連結された連結部としての嵌合穴25と、軸部材53の他端を支持する第2支持部としての第2支持孔24とを有する。第2ボディ20は、嵌合穴25と第2支持孔24とを繋ぐように延び、軸方向に直交する第1壁21と、当該第1壁21から延出し、軸方向に沿って軸部材53の一端側、つまり、右へ向けて延びる第2壁22とを有してなる。なお、軸部材53は、他端、つまり、左端がカシメられることで第1ボディ10と第2ボディ20とを互いに固定している。
【0044】
第1壁21の上端からは、アウターケーブル8Bの端部が係止されるケーブル係止部23が軸方向に沿って軸部材53の一端側、つまり、右へ向けて延出している。ケーブル係止部23は、第1壁21から延出した延出部23Aと、延出部23Aからさらに軸方向に右へT字形状に延出した第2延出部23Bとを備える。延出部23Aと第2延出部23Bとの間には、アウターケーブル8Bの端部が係止され、インナーケーブル8Aが通過する溝23Cが2つ設けられている。
【0045】
第1壁21は、嵌合穴25が形成された第1部分21Aと、当該第1部分21Aとケーブル係止部23の間に設けられ、第1部分21Aに対して軸部材53の一端側、つまり、右に向けて凹んだ第2部分21Bとを有する。また、第1壁21は、第2支持孔24が形成された第3部分21Cと、第1部分21Aと第3部分21Cとを繋ぎ、第1部分21Aおよび第3部分21Cに対して左に膨らんだ膨出部21Dとを有する。
【0046】
第1部分21Aと第2部分21Bの間には、開口21Fが形成されている。第1部分21Aの右側の面と、第2部分21Bの左側の面とは、第1ボディ10の板厚分だけ離間しており、これにより、開口21Fは上下方向に貫通しており、第1ボディ10の第2突部17Bが嵌合すると、第2突部17Bが第1部分21Aと第2部分21Bとで挟まれるようになっている。
【0047】
嵌合穴25は、第2支持孔24と嵌合穴25とを結ぶ方向に長い長穴であり、その幅は、第1ボディ10の第1突部17Aの直径と合致している。これにより、嵌合穴25が第1突部17Aに嵌合すると、第1ボディ10が軸部材53(第2支持孔24)周りに回転することが規制されるようになっている。
【0048】
嵌合穴25の後側には、第2取付部としての取付穴21Eが設けられている。取付穴21Eは、第1ボディ10の取付穴17Cと略合致した形状および位置に形成されている。なお、第2ボディ20は、受入溝11Aの一方側、本実施形態では下側には、乗物用ラッチ装置1をシートフレームSに取り付けるためのボルト2が係合する取付部を有していない。
【0049】
第1壁21には、軽量化のための肉抜き穴28A,28Bが設けられている。肉抜き穴28Aは、第3部分21Cにおける第2支持孔24の上側に配置され、肉抜き穴28Bは、第1部分21Aにおける嵌合穴25の前側に配置されている。
【0050】
第2壁22は、第1壁21の第3部分21Cの下端から、第1部分21Aの略上端の範囲に渡って第1壁21から延出している。別の言い方をすると、
図4に示すように、第2壁22は、軸方向から見た嵌合穴25と軸部材53の中心とを通る直線L1に直交し軸部材53の中心を通る第1平面P1と、直線L1に直交し嵌合穴25の中心を通る第2平面P2との間の全範囲に渡って第1壁21から延出している。これにより、第2ボディ20は、第1ボディ10と連結される第2支持孔24と嵌合穴25を繋ぐ範囲で、第1壁21と第2壁22によってL字形状断面を形成し、高い剛性を確保している。
【0051】
図3に戻り、第2壁22は、第1壁21の第3部分21Cから延出した部分である第1側壁部22Aと、第1壁21の膨出部21Dおよび第1部分21Aの下部から延出した部分である第2側壁部22Bと、第2側壁部22Bよりも上の部分で、第1壁21の第1部分21Aから延出した第3側壁部22Cとを有する。第2側壁部22Bに比較して、第1側壁部22Aと第3側壁部22Cは幅広に形成されている。第2壁22は、第2側壁部22Bから第3側壁部22Cにかけて、後側へ向けて凹むように屈曲している(
図4も参照)。
【0052】
第1壁21および第2壁22により形成される稜線29上には、複数、ここでは一例として2つの凹部27が形成されている。凹部27の谷部27Aは、第1壁21と第2壁22を繋ぐように延びており、これにより第1壁21に対し第2壁22が倒れないように補強されている。
【0053】
図2に示すように、フック30は、厚い金属板を打ち抜いてなる本体部31と、本体部31を被覆した樹脂からなる被覆部32と、ピン37とからなる。
フック30は、軸部材53が通る貫通穴33が形成され、軸部材53を介して第1ボディ10および第2ボディ20により回動可能に支持されている。また、フック30は、ストライカ4が係合可能な係合溝として、第1係合溝34Aと第2係合溝34Bを有する。第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bは、ともに下方に開口しており、下端にストライカ4の進入口38A,38Bがそれぞれ配置されている。第1係合溝34Aは貫通穴33から離れて配置され、第2係合溝34Bは、第1係合溝34Aよりも貫通穴33の近くに配置されている。
【0054】
フック30は、貫通穴33の下に、トーションスプリング51の第2アーム51Cが係合するバネ掛け部35が形成されている。また、フック30の貫通穴33から後側に遠い端面36は、下に行くほど貫通穴33に近くなる傾斜面となっている。ピン37は、レバー部材40と係合する部分であり、フック30の上部において右側に突出して設けられている。また、フック30には、軽量化のための貫通した肉抜き穴39が3つ形成されている。
【0055】
レバー部材40は、フック30と係合してフック30を回動させるための部材であり、フック30の右側に隣接して配置されている。レバー部材40は、金属からなるケーブル係合部41と、インサート成形によりケーブル係合部41と一体に成形された樹脂からなるレバー部42とからなる。ケーブル係合部41は、ケーブル8のインナーケーブル8Aが通って係合する穴41Aを有している。レバー部42は、軸支穴43を有し、軸支穴43にピン54が圧入されている。前記したように、ピン54は、第1ボディ10に支持されているので、レバー部材40は、ピン54を介して第1ボディ10に回動可能に支持されている。
【0056】
レバー部42は、軸支穴43から遠ざかるように延びる第1係合面42Aと、第1係合面42Aと繋がった、軸支穴43を略中心とする円筒面からなる第2係合面42Bとを有する。第2係合面42Bは、第1係合面42Aから遠ざかるほど軸支穴43からの距離が僅かに大きくなる曲面となっている。また、レバー部42の右側の面にはトーションスプリング52の第2アーム52Cが係合する突出したバネ掛け部44が形成されている。
【0057】
トーションスプリング51は、コイル部51Aと、コイル部51Aから延出する第1アーム51Bおよび第2アーム51Cを有している。第1アーム51Bは、第1ボディ10の第1バネ係止部11Dに係止され、第2アーム51Cは、フック30のバネ掛け部35に係合している。これによりトーションスプリング51は、フック30を常時下へ向けて付勢している。
【0058】
トーションスプリング52は、コイル部52Aと、コイル部52Aから延出する第1アーム52Bおよび第2アーム52Cを有している。第1アーム52Bは、第1ボディ10の第2バネ係止部11Eに係止され、第2アーム52Cは、レバー部材40のバネ掛け部44に係合している。これによりトーションスプリング52は、レバー部材40を
図2の反時計回りに付勢している。レバー部材40は、非動作時には、トーションスプリング52の付勢力により第2バネ係止部11Eに当接して、位置が規定されている。
【0059】
このような乗物用ラッチ装置1は、
図4に示す、フック30がストライカ4に係合可能な第1位置と、
図6(b)に示す、ストライカ4から離脱可能な第2位置との間で軸部材53の周りで回動可能である。また、このように回動可能であることで、乗物用ラッチ装置1は、
図4、
図6(a)または
図7に示すような、ストライカ4がフック30に係合したロック状態と、
図5(a),(b)または
図6(b)に示すような、ストライカ4がフック30から離脱したアンロック状態とに遷移可能である。
【0060】
そして、
図4に示すように、フック30が第1位置にある状態において、第1ボディ10は、第1係合溝34Aの進入口38Aと第2係合溝34Bの進入口38Bを軸方向における一方、つまり、右から覆っている。これにより、フック30が第1位置にある状態において、ストライカ4が第1係合溝34Aまたは第2係合溝34Bから外れるのが抑制される。
【0061】
一方、第2ボディ20は、フック30が第1位置にある状態において、軸方向の他方、つまり、左から、第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bを覆わずに、第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bの全体を露出させている。
また、第2ボディ20は、
図6(b)に示す、フック30が第2位置にある状態において、軸方向の他方、つまり、左から、第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bを覆わずに、第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bの全体を露出させている。
このように、第2ボディ20が、フック30の他方側をほとんど覆わない形状であることで、第2ボディ20が小型化され、軽量化が図られている。
【0062】
以上のように構成された乗物用ラッチ装置1の動作について説明する。
図5(a)に示すように、シートバックSBが前に倒されて乗物用ラッチ装置1がストライカ4から外れている状態からケーブル8を操作せずにシートバックSBを後ろに倒していくと、ストライカ4の前側の棒状部4Aが第1位置にあるフック30の端面36に当接する。なお、公知のように、ストライカ4はU字形状に曲がった金属ワイヤを含み、車体3の側壁に固定されている場合には、前側の棒状部4Aと後側の棒状部4Bとがある。
【0063】
棒状部4Aがフック30の端面36を押すと、
図5(b)に示すように、端面36の傾斜によってフック30が上に回動する。そして、第1係合溝34Aの後側のフック30の下端36Aを棒状部4Aが通過すると、
図6(a)に示すように、棒状部4Aが第1係合溝34Aに係合する。これにより、乗物用ラッチ装置1はロック状態になる。このとき、フック30は、第1位置に位置する。
【0064】
この後、シートバックSBを、さらに後ろに傾けたい場合には、例えば、シートバックSBに設けられたレバー等によってケーブル8を引いて、レバー部材40を上に引き上げて回動させる。すると、レバー部材40がフック30のピン37に当たってピン37を押し上げるので、
図6(b)に示すように、フック30が上に回動する。棒状部4Aが受入溝11A内を移動できる程度にフック30が上がると、フック30は、第2位置に位置する。
【0065】
フック30が第2位置に位置すると、シートバックSBを後ろに倒すことでストライカ4の棒状部4Aが受入溝11Aの奥に入る。そして、ケーブル8を戻せば、
図7に示すように、フック30は第1位置に位置し、棒状部4Aが第2係合溝34Bに係合する。また、ストライカ4の後側の棒状部4Bは、第1係合溝34Aに係合する。これにより、乗物用ラッチ装置1は、再びロック状態になる。
【0066】
図6(a)または
図7のロック状態から、シートバックSBを前に倒したい場合、レバー等によってケーブル8を引いて、
図6(b)に示すように、フック30を第2位置まで引き上げる。これにより、ストライカ4の棒状部4A,4Bが受入溝11A内を自由に移動できるので、シートバックSBを前に倒すことができる。
【0067】
以上説明した本実施形態に係る乗物用ラッチ装置1によれば、以下のような効果を得ることができる。
乗物用ラッチ装置1は、フック30が第1位置にある状態において、第2ボディ20は、第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bを覆わずにこれらの全体を露出させるように構成されていて小さいので、乗物用ラッチ装置1を軽量化することができる。また、車体3に乗物用ラッチ装置1を組み付ける前においては、フック30等の組み付け状態を目視で確認し易い。
【0068】
また、第2ボディ20は、フック30が第2位置にある状態においても第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bを覆わずにこれらの全体を露出させているので、軽量化することに加えて、車体3に乗物用ラッチ装置1を組み付ける前においては、フック30の動作を目視で確認し易い。
【0069】
第2ボディ20は、受入溝11Aの下側にボルト2が係合する取付部が設けられていないので、小さく、乗物用ラッチ装置1を軽量化することができる。そして、第2ボディ20が、受入溝11Aの下側に取付部が無くても、第1ボディ10に設けられた、受入溝11Aの取付穴13A,13Bおよび取付穴17CがシートフレームSに固定されることで、これらの取付穴13A,13B,17Cの位置が固定される。つまり、シートフレームSが第1ボディ10とともに乗物用ラッチ装置1の筐体を構成するような構造となるので、剛性および強度を確保しつつ、乗物用ラッチ装置1の軽量化を図ることができる。
【0070】
そして、第2ボディ20は、第1壁21と第2壁22とによってL字断面を構成するので、第2ボディ20を小さくしても、乗物用ラッチ装置1の剛性を確保することができる。
【0071】
さらに、第2ボディ20は、第1ボディ10と繋がる軸部材53の中心から嵌合穴25の全範囲に渡ってL字断面を有するので、筐体5の剛性を確保することができる。
【0072】
また、第1壁21と第2壁22の稜線29上に設けられた複数の凹部27が第1壁21と第2壁22を繋ぐので、第2ボディ20の剛性を高くすることができる。
【0073】
また、嵌合穴25と第1突部17Aとが嵌合することにより、第1ボディ10と第2ボディ20の互いの位置規制をすることができる。
【0074】
また、第2ボディ20は、第1部分21Aとケーブル係止部23との間に、第1部分21Aに対して凹んだ第2部分21Bを有するので、アウターケーブル8Bから力が掛かるケーブル係止部23の剛性を高くすることができる。また、第2ボディ20は、第2壁22が、中央部分の第2側壁部22Bで幅が狭くなっているが、第1壁21が、第2側壁部22Bと対応した位置に膨出部21Dを有することで、剛性を確保することができる。
【0075】
また、車両が後ろから衝突された場合など、乗員からの荷重が、
図4の矢印Fのように第2ボディ20の中央部に入力されることがある。このような大きな荷重が入力されても、第2ボディ20は、下側の第2支持孔24と上側の取付穴21EにおいてサイドフレームSF1に固定されているので第2ボディ20の中央から2つの固定点へ効率良く荷重が伝達され、筐体5の変形や部材の脱落を抑制することができる。
【0076】
また、第2突部17Bが開口21Fに入り込んで第2ボディ20が第1部分21Aと第2部分21Bに挟まれることで、第2ボディ20が、第1壁21の厚み方向に第1ボディ10に対して規制されているので、第1ボディ10と第2ボディ20とで構成される筐体5の剛性を高くすることができる。
【0077】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、前記実施形態においては第2ボディ20は、受入溝11Aの上側に取付穴21Eを有していたが、取付穴21Eを有していなくてもよい。また、第2ボディ20は、フック30が第2位置にある状態においても第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bを覆わずにこれらを露出させていたが、フック30が第2位置にある状態においては、第1係合溝34Aおよび第2係合溝34Bの一部または全部を覆っていてもよい。
【0078】
また、係合部材の具体的構成は、上述したものに限られず、例えば、フック30は、係合溝を2つ有していたが、係合溝を1つのみ有する構成であってもよい。また、フック30は、被覆部32を有していなくても構わない。
【0079】
前記実施形態において、固定部材の一例としてボルト2を例示したが、固定部材は、リベット等の他の部材であってもよい。
【0080】
前記実施形態においては、乗物用ラッチ装置1をシートフレームSに固定し、ストライカ4を車体3に固定したが、これを逆にして、乗物用ラッチ装置1を車体3に固定し、ストライカ4をシートフレームSに固定してもよい。また、乗物用ラッチ装置1は、シートクッションの固定に使用してもよいし、車両の他の部分の固定に使用してもよい。さらに、自動車に限らず、電車などの他の車両や、船舶または航空機などに用いることもできる。
【0081】
また、前記した実施形態および各変形例の各要素は、任意に組み合わせて実施することが可能である。