【実施例1】
【0027】
次に、せん断剛性値、曲げ剛性値、引っ張り歪みの三つの特性について全て好適な数値範囲となる車両内装用表皮材料10の実施例1〜3と一部又は全部の特性について好適な数値範囲外となる車両内装用表皮材料の比較例1〜8とより比較試験を行った結果を
図5の図表に示す。
この比較試験では、車両用シートの表面を各実施例及び各比較例の車両内装用表皮材料により被覆した場合の外観評価を行った。外観評価は、車両用シートの前面又は後面と側面との境界部分における皺の発生数に応じて三段階での評価を行った。即ち、皺の発生数が少ないほど車両内装用表皮材料として優良であり、
図5では、皺がない場合を「○」、皺が発生した場合を「×」とした。
また、
図5に記載された各特性値が、前述した好適な数値範囲内である場合には数値の隣にカッコ書きで「〇」を併記し、前述した好適な数値範囲外である場合には数値の隣にカッコ書きで「×」を併記した。
【0028】
実施例1は、前述した基布1とPVCの発泡層2とPVCのトップ層3からなる三層構造の合成皮革であり、せん断剛性値:40[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:2.4[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:8.4[%]でいずれも好適な数値範囲内となる特性の車両内装用表皮材料10である。
【0029】
実施例2は、天然皮革であり、せん断剛性値:37.6[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:1.6[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:8.8[%]でいずれも好適な数値範囲内となる特性の車両内装用表皮材料10である。
なお、天然皮革を使用した各実施例及び各比較例では、いずれも天然皮革として牛革を使用している。
【0030】
実施例3は、天然皮革であり、せん断剛性値:41.8[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:2.12[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:8.08[%]でいずれも好適な数値範囲内となる特性の車両内装用表皮材料10である。
【0031】
比較例1は、基布とPVCの発泡層とPVCのトップ層からなる三層構造であって、基布の諸条件と発泡層の発泡倍率とが実施例1と異なる合成皮革であり、せん断剛性値:36[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:4[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:6.2[%]で、曲げ剛性値と引っ張り歪みとが好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0032】
比較例2は、天然皮革であり、せん断剛性値:38.9[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:3.5[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:5.3[%]で、曲げ剛性値と引っ張り歪みとが好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0033】
比較例3は、天然皮革であり、せん断剛性値:35.7[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:1.15[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:11.3[%]で、曲げ剛性値と引っ張り歪みとが好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0034】
比較例4は、基布と熱可塑性ウレタン樹脂とこれらの間の接着層からなる三層構造の合成皮革であり、せん断剛性値:26[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:1.3[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:9.3[%]で、曲げ剛性値のみが好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0035】
比較例5は、基布と熱硬化性ウレタン樹脂とこれらの間の接着層からなる三層構造の人造皮革であり、せん断剛性値:17.5[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:0.6[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:7.6[%]で、せん断剛性値と曲げ剛性値とが好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0036】
比較例6は、天然皮革であり、せん断剛性値:62.5[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:4.9[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:4[%]で、全ての特性値が好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0037】
比較例7は、天然皮革であり、せん断剛性値:55.8[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:4[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:5[%]で、曲げ剛性値と引っ張り歪みとが好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0038】
比較例8は、天然皮革であり、せん断剛性値:32.5[gf/(cm・degree)]、曲げ剛性値:2.5[gf・cm
2/cm]、引っ張り歪み:7[%]で、引っ張り歪みのみが好適な数値範囲外となる特性の車両内装用表皮材料である。
【0039】
せん断剛性値、曲げ剛性値、引っ張り歪みの三つの特性について全て好適な数値範囲となる車両内装用表皮材料10の実施例1〜3については、合成皮革、天然皮革である場合を問わず、いずれも皺が生じることなく対象物となる車両用シートを被覆することができた。
一方、せん断剛性値、曲げ剛性値、引っ張り歪みの三つの特性の一部又は全部について好適な数値範囲となる条件が整わない各比較例1〜8の場合には、合成皮革、天然皮革である場合を問わず、いずれも対象物となる車両用シートを被覆したときに皺が発生した。
特に、比較例4及び比較例8は、三つの特性の内の二つが好適な数値範囲となっていたが皺の発生を抑えることができず、三つの特性が全て好適な数値範囲となることが必須であることが確認された。
【0040】
以上のように、せん断剛性値、曲げ剛性値、引っ張り歪みの三つの特性について全てが前述した好適な数値範囲内となる車両内装用表皮材料10は、合成皮革、天然皮革いずれの場合も、皺の発生を抑え、外観に優れた状態で立体的な対象物の表面を被覆することが可能である。
【0041】
また、合成皮革からなる車両内装用表皮材料10は、PVCの発泡層2を有するので、発泡倍率を適宜調節することにより、せん断剛性値や曲げ剛性値を適正な範囲内に調整することが可能となる。
さらに、合成皮革からなる車両内装用表皮材料10は、表面側にPVCのトップ層3を有するので、表面の保護を図ると共に、外観に対する装飾等の加工が容易となり、耐久性及び装飾性を向上させることが可能となる。
また、合成皮革からなる車両内装用表皮材料10は、裏面側に基布1を有するので、基布1の特性に応じて引っ張り歪みを適正な範囲内に調整することが可能となる。
【0042】
[その他]
前述した実施例では、車両用シートの被覆を例示したが、これにかぎらず、車内のシート以外の部位に用いる場合でも好適に被覆することができる。