特許第6836098号(P6836098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836098
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】眼科用レーザ治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   A61F9/008 120D
   A61F9/008 120E
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-257577(P2015-257577)
(22)【出願日】2015年12月29日
(65)【公開番号】特開2017-119029(P2017-119029A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】阿部 均
(72)【発明者】
【氏名】冨田 誠喜
(72)【発明者】
【氏名】河合 真人
【審査官】 白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−084965(JP,A)
【文献】 特表2013−516294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0319428(US,A1)
【文献】 特開2015−104470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療レーザ光を集光させることによりプラズマを発生させ、該プラズマにより患者眼の治療対象部位の治療を行う眼科用レーザ治療装置において、
前記患者眼に前記治療レーザ光を照射する照射光学系と、
前記患者眼の治療対象部位に照準光を照射する照準光光学系と、
前記治療レーザ光の集光位置を前記照準光の集光位置である集光基準位置に対して光軸方向に調整する位置調整手段と、
前記治療レーザ光の照射エネルギーを調整するエネルギー調整手段と、
前記位置調整手段で調整する前記治療レーザ光の集光位置と前記エネルギー調整手段で調整する前記治療レーザ光の照射エネルギーの値とを決定するために術者が操作する操作手段と、
治療レーザ光の集光位置と該集光位置に対する照射エネルギーの値との許容される組み合わせを評価するための評価情報を記憶する記憶手段と、
前記操作手段を用いて決定された治療レーザ光の集光位置と照射エネルギーの値との組合せを前記評価情報に基づいて評価する評価手段と、
を備え、
前記記憶手段には、非治療対象部位に対して影響を及ぼさないとされる前記治療レーザ光の集光位置と前記照射エネルギーの値との組合せの範囲を示した調整許容領域が記憶されており、前記評価手段は、前記治療レーザ光の集光位置と前記照射エネルギーの値との組合せが前記調整許容領域内か否かを評価する、
ことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の眼科用レーザ治療装置は、
前記評価手段は、前記治療レーザ光の集光位置と前記照射エネルギーの値との組合せが前記調整許容領域内か否かを評価した結果に基づいて前記治療レーザ光の集光位置と前記照射エネルギーの少なくともいずれかを補正する、
ことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の眼科用レーザ治療装置は、
前記評価手段による前記治療レーザ光の集光位置と前記照射エネルギーの値との組合せが前記調整許容領域内か否かを評価した結果を報知するための報知手段を備える
ことを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者眼にレーザ光を照射して治療を行う眼科用レーザ治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者眼にレーザ光を照射して、照射したレーザ光にてプラズマを発生させて治療を行う眼科用レーザ治療装置が知られている。例えば、特許文献1の眼科用レーザ治療装置は、不透明体表面から所望の距離だけ内部にある位置に治療用レーザ光の収束点位置を設定する収束点位置調整光学系を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−118060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラズマを発生させて治療対象部位を治療する眼科用レーザ治療装置において、治療対象部位の近傍に非治療対象部位が位置する場合がある。また、治療対象部位の強度自体にも個人差等がある。したがって、治療レーザ光の照射エネルギーまたはプラズマの発生位置の変更と治療レーザ光の照射を何度か繰返しつつ治療対象部位の治療を行う場合があった。このように治療対象部位の強度等、個人差がある部位に対して治療条件の設定を行った後、条件設定を変更せずに別の患者に対して同じ条件設定にて治療を行った場合、非治療対象部位に対して影響を及ぼす可能性があった。
【0005】
本開示は、上記従来技術の問題点に鑑み、意図せぬ照射条件での治療レーザ光の照射を抑制した眼科用レーザ治療装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 治療レーザ光を集光させることによりプラズマを発生させ、該プラズマにより患者眼の治療対象部位の治療を行う眼科用レーザ治療装置において、前記患者眼に前記治療レーザ光を照射する照射光学系と、前記患者眼の治療対象部位に照準光を照射する照準光光学系と、前記治療レーザ光の集光位置を前記照準光の集光位置である集光基準位置に対して光軸方向に調整する位置調整手段と、前記治療レーザ光の照射エネルギーを調整するエネルギー調整手段と、前記位置調整手段で調整する前記治療レーザ光の集光位置と前記エネルギー調整手段で調整する前記治療レーザ光の照射エネルギーの値とを決定するために術者が操作する操作手段と、治療レーザ光の集光位置と該集光位置に対する照射エネルギーの値との許容される組み合わせを評価するための評価情報を記憶する記憶手段と、前記操作手段を用いて決定された治療レーザ光の集光位置と照射エネルギーの値との組合せを前記評価情報に基づいて評価する評価手段と、を備え、前記記憶手段には、非治療対象部位に対して影響を及ぼさないとされる前記治療レーザ光の集光位置と前記照射エネルギーの値との組合せの範囲を示した調整許容領域が記憶されており、前記評価手段は、前記治療レーザ光の集光位置と前記照射エネルギーの値との組合せが前記調整許容領域内か否かを評価する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、意図せぬ照射条件での治療レーザ光の照射を抑制した眼科用レーザ治療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の眼科用レーザ治療装置の光学系および制御系の概略図である。
図2】フォーカスシフトに係わる図である。
図3】眼科用レーザ治療装置の制御に係わるフローチャートである。
図4】眼科用レーザ治療装置の制御に係わるフローチャートである。
図5】眼科用レーザ治療装置の制御に係わるフローチャートである。
図6】眼科用レーザ治療装置の制御に係わる図である。
図7】治療部位の治療に係わる図である。
図8】照射エネルギーとプラズマの関係に係わる図である。
図9】眼科用レーザ治療装置の制御に係わる図である。
図10】眼科用レーザ治療装置の制御に係わるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の光学系および制御系の概略図である。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、例えば後発白内障の治療等に用いることができる。
【0010】
本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、レーザ照射光学系10と制御部80を備える。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は更に、観察光学系20、照明光学系30、およびエイミング光学系40を備える。
【0011】
<レーザ照射光学系>
本実施形態のレーザ照射光学系10(照射光学系)は、治療用のレーザ光(以降では治療レーザ光と称する)を患者眼Epに照射するために用いられる。詳細には、本実施形態のレーザ照射光学系10は、患者眼Epに治療レーザ光を照射して、患者眼Epの眼内においてレーザ光の焦点(集光)位置付近でプラズマを発生させる。この発生させたプラズマの衝撃により、例えば患者眼Epの治療対象部位(組織等)を破壊する。
【0012】
本実施形態のレーザ照射光学系10は、レーザ光源11、エネルギー調整部12、シフト調整部15、エキスパンダレンズ部16、および対物レンズ17を備える。本実施形態のレーザ照射光学系10は更に、ビームスプリッター13、光検出器62、安全シャッター14、ダイクロイックミラー44、ダイクロイックミラー21を備える。安全シャッター14にはシャッター駆動部63が接続されている。
【0013】
本実施形態のレーザ光源11は、患者眼Epの治療対象部位を治療するためのレーザ光を出射する。本実施形態のレーザ光源11のレーザロッドには、ネオジウムをドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶(Nd:YAG)を用いている。本実施形態のレーザ光源11はQスイッチを含み、ジャイアントパルスを出射できる。本実施形態のレーザ光源11は赤外レーザ光(波長:1064nm)を出射する。なお、例えば、レーザ照射光学系10の光路に波長変換手段(波長変換素子等)を配置して、レーザ光源11が出射する赤外レーザ光(波長:1064nm)を可視レーザ光(波長:532nm)に変換してもよい。
【0014】
本実施形態のエネルギー調整部12(エネルギー調整手段)は、患者眼Epの組織に照射する治療レーザ光のエネルギーを調整する。本実施形態のエネルギー調整部12は、レーザ光源11から出射されたレーザ光のエネルギーを減衰する。本実施形態のエネルギー調整部12は、1/2波長板12aと偏光板12bを備える。偏光板12bはブリュースタ角で配置されている。1/2波長板12aには駆動部61が接続されている。本実施形態の駆動部61にはモーターが含まれる。本実施形態の1/2波長板12aは、治療レーザ光の光軸L1を中心として回転できる。なお、本実施形態のエネルギー調整部12は、治療レーザ光の照射エネルギーを0.3〜10mJの範囲内で調整できる。
【0015】
本実施形態のシフト調整部15(位置調整手段)は、治療レーザ光の集光位置(換言するなら焦点位置,収束位置)を光軸方向に変位するために用いられる。本実施形態のシフト調整部15は、凹レンズ15aと凸レンズ15bを備える。本実施形態の凸レンズ15bには駆動部64が接続されている。本実施形態の駆動部64にはモーターが含まれる。本実施形態の凸レンズ15bは、治療レーザ光の光軸L1に沿って移動できる。なお、シフト調整部15の作用は後ほど詳細に説明する。
【0016】
レーザ光源11から出射された治療レーザ光は、エネルギー調整部12、ビームスプリッター13、安全シャッター14、シフト調整部15の順で介してダイクロイックミラー44で反射する。ダイクロイックミラー44で反射した治療レーザ光は、エキスパンダレンズ部16を介してダイクロイックミラー21で反射する。ダイクロイックミラー21で反射した治療レーザ光は、対物レンズ17、コンタクトレンズ51の順で介して光軸L1上に集光する。なお、コンタクトレンズ51は術者が把持する。
【0017】
レーザ光源11から出射された治療レーザ光は、シフト調整部15とエキスパンダレンズ部16により光束径が広められ、対物レンズ17に略平行光で入射する。本実施形態では、対物レンズ17を透過した治療レーザ光は、コーンアングル略16°で光軸L1上に集光する。
【0018】
<エイミング光学系>
次いで、本実施形態のエイミング光学系40を説明する。本実施形態のエイミング光学系40は、患者眼Epの治療対象部位に治療レーザ光を照準(誘導)するために用いられる。本実施形態のエイミング光学系40は、ダイクロイックミラー44から対物レンズ17までの光路をレーザ照射光学系10と共用する。
【0019】
本実施形態のエイミング光学系40は、エイミング光源41、コリメータレンズ42、およびアパーチャ43を含む。本実施形態のエイミング光源41は、波長が635nmの可視レーザ光を出射する。例えばエイミング光源41に、LED、SLD等の光源を用いてもよい。本実施形態のアパーチャ43には2つの開口部が形成されている。本実施形態では、ダイクロイックミラー44により、治療レーザ光の光軸L1とエイミング光の光軸とが同軸となっている。
【0020】
エイミング光源41を発したエイミング光は、コリメータレンズ42を介してアパーチャ43に当たる。アパーチャ43の開口部を通過したエイミング光は、ダイクロイックミラー44、エキスパンダレンズ部16を介してダイクロイックミラー21で反射する。ダイクロイックミラー21で反射したエイミング光は、対物レンズ17、コンタクトレンズ51の順で介して光軸L1上の集光位置(焦点位置)に集光する。本実施形態では、観察光学系20の観察面と光軸L1とが交わる位置にエイミング光が集光する。なお、本実施形態のエイミング光はアパーチャ43により2つの光束に分離するが、対物レンズ17の先の集光位置では1つの光束に収束される。なお、本実施形態ではエイミング光が集光する位置を、治療レーザ光の集光基準位置としている。
【0021】
<フォーカスシフト>
図2を併用して、エイミング光の集光位置(焦点位置)と治療レーザ光の集光位置(焦点位置)との関係を説明する。エイミング光は光軸L1上の所定位置に集光する。図2では、エイミング光は光軸L1上の位置F0に集光している。一方で、本実施形態の治療レーザ光は、凸レンズ15bを光軸L1に沿って移動させることで、この集光基準位置となる位置F0に対して集光位置を光軸L1上で前後に変位(シフト)できる。
【0022】
図2では、位置F0に集光する治療レーザ光の光束を実線で示している。また、図2では一例として、位置F0よりも遠方となる位置FPに集光する場合の治療レーザ光の光束、および位置F0よりも近方となる位置FAに集光する場合の治療レーザ光の光束を点線で示している。なお、本実施形態では、遠方とは対物レンズ17から遠ざかる方向であり、近方とは対物レンズ17に近づく方向である。
【0023】
以降の説明では、エイミング光の集光位置(焦点位置)に対して治療レーザ光の集光位置(焦点位置)をシフトさせることを、フォーカスシフト(フォーカスシフト手段)と呼ぶ場合がある。また、フォーカスシフトによりシフトさせる治療レーザ光の集光位置をフォーカスシフト位置と呼ぶ場合がある。また、エイミング光の集光位置に対して治療レーザ光の集光位置(焦点位置)をシフトさせた量(距離)をフォーカスシフト量と呼ぶ場合がある。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、エイミング光の焦点位置(位置F0)に対して治療レーザ光の焦点位置を±500μmの範囲内でシフトできる。
【0024】
<照明光学系>
図1に戻り、本実施形態の照明光学系30を説明する。本実施形態の照明光学系30は、患者眼Epを照明するために用いられる。本実施形態の照明光学系30は、ランプ31、レンズ32、絞り33、レンズ群34、およびプリズム35を備える。本実施形態のランプ31は可視光を発する。例えば、ランプ31に白色発光素子等を用いてもよい。ランプ31を発した照明光は、レンズ32、絞り33、レンズ群34の順で介してプリズム35で反射する。プリズム35で反射した照明光は患者眼Epに向かう。なお、絞り33を用いて患者眼Epにスリット光を投光してもよい。
【0025】
<観察光学系>
次いで、本実施形態の観察光学系20を説明する。本実施形態の観察光学系20は、患者眼Epを観察するために用いられる。本実施形態の観察光学系20は、対物レンズ17とダイクロイックミラー21をレーザ照射光学系10等と共用する。本実施形態の観察光学系20は、変倍光学系22、術者保護フィルター23、結像レンズ24、正立プリズム群25、視野絞り26、および接眼レンズ群27を含む。本実施形態の視野絞り26は、基準位置である位置F0(図2参照)と光学的に共役な位置に配置されている。
【0026】
観察部位を発する観察光(例えば、患者眼Epで反射した照明光、または患者眼Epで反射したエイミング光)は、対物レンズ17、ダイクロイックミラー21、変倍光学系22、術者保護フィルター23、結像レンズ24、正立プリズム群25の順で介して、視野絞り26の位置に中間像を形成する。視野絞り26の開口部を通過した観察光は、接眼レンズ群27を介して術者眼Eoに入射する。なお、カメラを用いて患者眼Epの観察像を撮像してもよい。
【0027】
<制御部>
次いで、本実施形態の制御部80を説明する。本実施形態の制御部80は、眼科用レーザ治療装置1の動作を制御する制御手段である。本実施形態の制御部80は、CPU81(プロセッサ)、RAM82、ROM83、および不揮発性メモリ84を備える。本実施形態のCPU81は、眼科用レーザ治療装置1における各部の制御を司る。RAM82は、例えば、各種情報を一時的に記憶する。ROM83には、例えば、各種プログラム、初期値等が記憶される。不揮発性メモリ84は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、制御部80に着脱可能に装着されるUSBメモリ、制御部80に内蔵されたフラッシュROM等を、不揮発性メモリ84として使用してもよい。
【0028】
本実施形態の制御部80には、レーザ光源11、駆動部61(第1駆動手段)、光検出器62、シャッター駆動部63、駆動部64(第2駆動手段)、エイミング光源41、ランプ31、モニタ66(表示手段)、フットスイッチ67、および操作スイッチ部68が接続されている。なお、フットスイッチ67の代わりにハンドスイッチを用いてもよい。本実施形態の制御部80は駆動制御手段であり、駆動部61、シャッター駆動部63、駆動部64等を駆動できる。本実施形態の操作スイッチ部68は操作入力手段であり、照射エネルギーの調整、フォーカスシフト位置の調整等に用いられる。
【0029】
本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、1/2波長板12aの駆動(回転)が電動で行われる。しかし、1/2波長板12aの駆動が手動(術者の手)で行われてもよい。例えば、1/2波長板12aにセンサーを接続して、1/2波長板12aの回転位置(換言するならエネルギー調整部12での治療レーザ光の減衰量)を制御部80が検出できてもよい。
【0030】
本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、凸レンズ15bの移動が電動で行われる。しかし、凸レンズ15bの移動が手動(術者の手)で行われてもよい。例えば、凸レンズ15bにセンサーを接続して、凸レンズ15bの移動位置(換言するならフォーカスシフト位置)を制御部80が検出できてもよい。
【0031】
本実施形態の制御部80は表示制御手段であり、モニタ66の表示内容を制御できる。本実施形態のモニタ66には、照射エネルギーの調整値、フォーカスシフトの調整値(方向およびシフト量)等が表示される。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、操作スイッチ部68の操作により、照射エネルギーとフォーカスシフト位置の少なくともいずれかを調整できる。例えば、術者はモニタ66に表示される照射エネルギーの調整値またはフォーカスシフト位置の調整値を確認しながら、操作スイッチ部68を操作して調整値を変更できる。
【0032】
本実施形態のフットスイッチ67(照射トリガ手段)は、患者眼Epに治療レーザ光の照射を開始する際に使用される。本実施形態の制御部80は、フットスイッチ67の出力信号(照射開始信号)を検出して、患者眼Epへの治療レーザ光の照射を開始する。フットスイッチ67を用いずに、制御部80が治療レーザ光を自動照射してもよい。本実施形態の制御部80は、安全シャッター14と光検出器62を用いて、治療レーザ光の照射前に、患者眼Epに照射する治療レーザ光の照射エネルギーを検出できる。
【0033】
なお、本実施形態のモニタ66は報知手段として、警告表示(報知)を行う場合がある。つまり、本実施形態の制御部80は、報知手段による報知を制御する報知制御手段としての機能を有する。なお、表示手段となるモニタに警告表示を行う/行わないにかかわらず、例えば、眼科用レーザ治療装置1がブザーを備え、制御部80が警告音を鳴らしてもよい。
【0034】
<装置動作>
図3を用いて、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の動作の一例を説明する。なお、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射モードを複数有している。詳細には、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、第1照射モードと第2照射モードを備える。本実施形態の第1照射モードと第2照射モードとは制御部80の制御が異なる。また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、第1照射モードと第2照射モードを切り換えるモード切換手段を備えている。
【0035】
以降の説明では、眼科用レーザ治療装置1の初期化(ステップS101)の際に第1照射モードが自動設定されたものとして説明する。なお、本実施形態の第1照射モードは、治療対象部位よりも手前側(近方)に非治療対象部位が存在する治療の際に用いると好適である。また、第2照射モードは、治療対象部位よりも奥側(遠方)に非治療対象部位が存在する治療の際に用いると好適である。
【0036】
眼科用レーザ治療装置1の電源が投入されると、ステップS101にて制御部80は、眼科用レーザ治療装置1の初期化を行う。ステップS101では、照射エネルギー(1/2波長板12aの回転位置)とフォーカスシフト位置(凸レンズ15bの軸L1上の位置)の初期化が行われる。なお、制御部80がステップS101で実行する処理の内容は、後ほど詳細に説明する。
【0037】
ステップS101が完了すると、制御部80はステップS102に進む。なお、ステップS102の時点でエイミング光源41が点灯されていてもよい。ステップS102にて制御部80は、術者による照射エネルギー(またはフォーカスシフト位置)の変更操作の有無を検出する。本実施形態の制御部80は、操作スイッチ部68の出力信号を用いて変更操作の有無を検出する。
【0038】
制御部80は、照射エネルギー(またはフォーカスシフト位置)の変更操作を検出した場合にはステップS103に進む。なお、制御部80は、ステップS103の処理を実行後、ステップS104に進む。
【0039】
図4のフローチャートを併用して、本実施形態の制御部80がステップS103で実行する制御の詳細を説明する。ステップS201にて制御部80は、操作スイッチ部68の出力信号等を用いて調整値(変更予定値)を取得する。次いでステップS202にて制御部80は、ステップ201で取得した調整値となるように1/2波長板12aを駆動する。制御部80は、フォーカスシフト位置を変更する場合は凸レンズ15bを駆動する。
【0040】
次いで、ステップS202にて制御部80は、ステップS201で取得した調整値(データ)を不揮発性メモリ84に書き込む。なお、本実施形態の制御部80は、照射エネルギーまたはフォーカスシフト位置が変更される度に、不揮発性メモリ84に記憶されている調整値(データ)を更新してゆく。なお、本実施形態の制御部80は、ステップS203で不揮発性メモリ84に記憶した調整値を、次回の電源投入時の初期化(ステップS101)の際に使用する。
【0041】
図3を用いたステップS102の説明に戻る。制御部80は、ステップS102で照射エネルギー(フォーカスシフト位置)の変更操作を検出しなかった場合にはステップS104に進む。つまり、術者による変更操作が無い場合には、制御部80は照射エネルギーとフォーカスシフト位置を変更しない(維持する)。
【0042】
ステップS104にて制御部80は、治療レーザ光の照射開始信号の有無を検出する。本実施形態の制御部80は、フットスイッチ67の出力信号を用いて照射開始信号の有無を検出する。制御部80は、ステップS104で照射開始信号を検出した場合にはステップS105の処理を実行する。また、制御部80は、ステップS104で照射開始信号を検出しなかった場合にはステップS102に戻る。
【0043】
ステップS105にて制御部80は、安全シャッタ―14を光軸L1上から退避させた後に、レーザ光源11からレーザ光(治療レーザ光)を出射させる。なお、操作スイッチ部68の操作(READY状態とSTANDBY状態のモード切り替え)で安全シャッタ―14を挿脱可能として、安全シャッタ―14が退避された状態(READY状態)でなければ、フットスイッチ67が操作されてもレーザ光の出射が行なわれない態様としてもよい。眼科用レーザ治療装置1から照射される治療レーザ光は、ステップS104以前に調整された照射エネルギーおよびフォーカスシフト位置の条件で照射される。
【0044】
<組合せ評価>
次いで、図4のフローチャートおよび図5のグラフを用いて、照射エネルギーとフォーカスシフト位置の連携について説明する。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照射エネルギーとフォーカスシフト位置の組合せを評価する評価手段を備えている。本実施形態の制御部80は評価制御手段であり、照射エネルギーとフォーカスシフト位置の組合せが所定条件に当てはまるか否かを評価する。
【0045】
本実施形態では、評価の一例として、照射エネルギー(フォーカスシフト位置)を決定する際に、フォーカスシフト位置(照射エネルギー)を考慮する。詳細には、本実施形態の制御部80は、治療レーザ光を用いて発生させるプラズマの特性(発生位置,衝撃範囲等)を考慮して、照射エネルギーとフォーカスシフト位置の組合せを評価する。また、本実施形態の制御部80は、治療対象部位と非治療対象部位との位置関係(遠近方向)を考慮して、照射エネルギーとフォーカスシフト位置の組合せを評価する。また、本実施形態の制御部80は、治療レーザ光の照射を開始する前に照射エネルギーとフォーカスシフト位置の組合せを評価する。
【0046】
本実施形態の制御部80は、装置本体の電源投入時において行われる眼科用レーザ治療装置1の初期化(図3のステップS101)の際に、前回の電源オフ直前まで設定されていた照射エネルギーとフォーカスシフト位置の組合せを呼び出して評価する。図4のフローチャートを用いて、制御部80がステップS101で実行する制御の詳細を説明する。
【0047】
ステップS301にて制御部80は、不揮発性メモリ84から前回設定されていた照射エネルギーの調整値(調整予定値と称す)を読み出す。次いでステップS302にて制御部80は、不揮発性メモリ84から前回設定されていたフォーカスシフト位置の調整値(調整予定値と称す)を読み出す。次いでステップS303にて制御部80は、ステップS301で読み出した照射エネルギーの調整予定値とステップS302で読み出したフォーカスシフト位置の調整予定値とが所定条件に当てはまるか否かを評価(判定)する。
【0048】
本実施形態では、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値とが図6に示すグラフの領域Aa内に位置するか否かを評価(判定)する。なお、図6に示す領域Aaは、一般的(或いは平均的)な強度を持つ治療対象部位に対してプラズマによる治療を行う場合に、非治療対象部位に対して影響を及ぼさないとされる照射エネルギーの値とフォーカスシフト位置の組み合わせの範囲(治療条件として許容される組み合わせの範囲)を示したものである。なお、領域Ba,Caは領域Aaとは逆に治療条件の組み合わせとしては注意若しくは許容不可とされる範囲を示したものである。
【0049】
領域Aa内に位置する場合にはステップS304に進み、領域Aa外(領域Ba内又は領域Ca内)に位置する場合にはステップS305に進む。なお、本実施形態では、図6で示す特性を、不揮発性メモリ84にテーブルデータとして記憶している。なお、本実施形態では組み合わせ評価に使用するための評価情報をテーブルデータとして記憶するものとしているが、これに限るものではなく、テーブルデータではなく所定の計算式等を用いた評価情報をメモリに記憶させておき評価に利用することも考えられる。また、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値とが所定の組み合わせ(換言するなら特定の1つの組み合わせ)か否かを評価してもよい。また、操作スイッチ部68の操作等により、評価情報を変更できてもよい。なお、本実施形態ではテーブルデータを記憶する記憶手段として不揮発性メモリ84を用いている。もちろん、他の記憶部材(例えばROM83)を用いてテーブルデータを記憶してもよい。
【0050】
ここで、本実施形態の制御部80が実行する評価の背景を説明する。先ず、図7を用いて治療対象部位と非治療対象部位の関係を説明し、次いで、図8を用いて照射エネルギーとプラズマの関係を説明する。図7は、第1照射モードを用いた患者眼Epの治療対象部位の治療の一例であり、治療レーザ光を照射して患者眼Epの後嚢(治療対象部位)に孔を開けた状態を示している。なお、後嚢(治療対象部位)の手前には眼内レンズ(非治療対象部位)が位置している。他の図面と同じ符号箇所の説明は省略する。
【0051】
図7では、位置F0にエイミング光を集光させて、位置F0よりも遠方である位置FP1に治療レーザ光を集光させている。つまり、フォーカスシフトを用いて、治療レーザ光の集光位置をエイミング光の集光位置に対してシフトさせている。これにより、プラズマの衝撃で後嚢(治療対象部位)に孔を開けつつ、眼内レンズ(非治療対象部位)へのプラズマの衝撃を抑制している。なお、眼内レンズに伝わるプラズマの衝撃が大きい場合には、眼内レンズにピット(点状の傷)を生じさせてしまう可能性がある。
【0052】
次に図8を説明する。図8は、本実施形態の治療レーザ光の、照射エネルギーとプラズマの関係を説明する図である。図8では、位置FP1に治療レーザ光が集光してゆく。図8にて符号PLZ1〜PLZ3で示す箇所はプラズマである。符号PLZ1〜PLZ3は、治療レーザ光の照射エネルギーを変化させて照射した場合に、各々の照射エネルギーで発生するプラズマを示している。詳細には、符号PLZ1は「照射エネルギー:小」の場合に対応し、符号PLZ2は「照射エネルギー:中」の場合に対応し、符号PLZ3は「照射エネルギー:大」の場合に対応する。位置S1〜S3は各プラズマの発生中心位置を示している。
【0053】
本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射エネルギーを変化させると、治療レーザ光により発生されるプラズマの特性が変化する。詳細には、本実施形態では、照射エネルギーを増加させるほどプラズマの発生中心位置が近方に近づいてくる。プラズマの発生中心位置の変化は、例えば、治療レーザ光のエネルギー密度の変化が寄与する。また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、照射エネルギーを増加させるほどプラズマの衝撃範囲が大きくなってゆく。つまり、フォーカスシフトを用いて、治療レーザ光の集光位置をエイミング光の集光位置に対して遠方にシフトさせたとしても、治療レーザ光の照射エネルギーを増加させるほどプラズマの衝撃範囲が近方に近づいてくる。
【0054】
ステップS303(図5参照)の説明に戻る。制御部80が実行するステップS303の判定は、図7図8を用いて説明した事象等を考慮したものである。詳細には、ステップS303にて制御部80は、非治療対象部位へのプラズマの影響を考慮した評価を行う。本実施形態の制御部80は、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値との組み合わせが領域Aa(図6参照)内に位置する場合には、非治療対象部位へのプラズマの影響が少ないと評価し、領域Aa外の組合せでは非治療対象部位へのプラズマの影響が大きいと評価する。
【0055】
ステップS304にて制御部80は、ステップ302で読み出した照射エネルギーの調整値となるように1/2波長板12aの駆動を行う。次いでステップS304にて制御部80は、ステップ302で読み出したフォーカスシフト位置の調整値となるように凸レンズ15bを駆動する。つまり、本実施形態の制御部80は、ステップS301で読み出した照射エネルギーの調整値(調整予定値)とステップS302で読み出したフォーカスシフト位置の調整値(調整予定値)との組み合わせが領域Aa(図6参照)内に位置する場合には、不揮発性メモリ84に記憶されていた調整値のままで1/2波長板12aまたは凸レンズ15bを駆動する。
【0056】
次いでステップ303で分岐した他方の制御を説明する。ステップS305にて制御部80は、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値との組み合わせが領域Aa内に位置するように照射エネルギーの調整予定値またはフォーカスシフト位置の調整予定値を変更する。本実施形態の制御部80は、照射エネルギーの調整予定値を維持してフォーカスシフト位置の調整予定値のみを変更する。詳細には、本実施形態の制御部80は、照射エネルギーの調整予定値を維持し、且つ、領域Baに最も近い領域Ba内の調整値へとフォーカスシフト位置の調整予定値を変更する。なお、制御部80は、変更した調整値(調整予定値)を不揮発性メモリ84に記憶する。本実施形態では照射エネルギーの調整予定値を維持してフォーカスシフト位置の調整予定値のみを変更する。しかし、フォーカスシフト位置の調整予定値を維持して照射エネルギーの調整予定値のみを変更してもよい。フォーカスシフト位置の調整予定値と照射エネルギーの調整予定値とを共に変更してもよい。
【0057】
次いでステップS307にて制御部80は、ステップS301で読み出した照射エネルギーの調整予定値となるように1/2波長板12aを駆動する。ついでステップS308にて制御部80は、ステップS305で変更したフォーカスシフト位置の調整予定値となるように凸レンズ15bを駆動する。
【0058】
つまり、本実施形態の制御部80は、ステップS301で読み出した照射エネルギーの調整予定値とステップS302で読み出したフォーカスシフト位置の調整予定値とが領域Aa外(領域Ba内又は領域Ca内)に位置する場合には、不揮発性メモリ84に記憶されていた調整値(調整予定値)に対して変更を行う。詳細には、制御部80は、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値との組合せが領域Aa内に位置するように、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値との少なくともいずれかを変更する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の制御部80は、照射エネルギーとフォーカスシフト位置の組合せを評価する。そして、評価結果に基づいて照射エネルギーまたはフォーカスシフト位置を変更する。これにより、例えば、意図せぬ治療レーザ光の照射を抑制できる。詳細には、非治療部位へのプラズマの衝撃の負担を低減できる。また、例えば、患者眼Epの治療部位の治療を速やかに行える。
【0060】
<第1変容例>
以上では、第1照射モードを用いた眼科用レーザ治療装置1の動作を説明した。制御部80が実行する制御の第1変容例として、第2照射モードを用いた眼科用レーザ治療装置1の動作を説明する。なお、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、第1照射モードと第2照射モードとを操作スイッチ部68の操作で切り換え可能である。
【0061】
本実施形態の第2照射モードは、治療対象部位よりも遠方に非治療対象部位が存在する治療の際に用いると好適である。例えば、第2照射モードを用いて、網膜(非治療対象部位)を牽引している硝子体の牽引箇所(治療対象部位)を、眼科用レーザ治療装置1が発生させたプラズマで切断すると好適である。
【0062】
以降では、第1照射モードと第2照射モードとで、制御部80の制御が主に異なる箇所を説明する。本実施形態の第1照射モードと第2照射モードとでは、眼科用レーザ治療装置1の初期化(図3のステップS101参照)の際に行う制御が異なる。詳細には、第1照射モードと第2照射モードとでは、ステップS303(図5参照)等で用いるテーブルデータ(第1照射モードでは図6)が異なる。
【0063】
第2照射モードのステップS303とステップS305とでは、図9に示す特性のテーブルデータを用いる。第2照射モードのステップS303では、制御部80は、ステップS301で読み出した照射エネルギーの調整値(調整予定値)とステップS302で読み出したフォーカスシフト位置の調整値(調整予定値)とが領域Ab外(領域Bb内又は領域Cb内)に位置する場合には、不揮発性メモリ84に記憶されていた調整値に対して変更を行う。
【0064】
詳細には、第2照射モードも第1照射モードと同様に、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値との組合せが領域Ab内に位置するように、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフトの調整予定値との少なくともいずれかを変更する。なお、照射エネルギーの調整予定値とフォーカスシフト位置の調整予定値との組合せが領域Ab内に位置する場合には、調整予定値を変更しないまま1/2波長板12aと凸レンズ15bを駆動する。
【0065】
なお、第1照射モードのテーブルデータ(図6)と第2照射モードのテーブルデータ(図9)とを対比すると、領域Aa(領域Ab)と領域Ba(領域Bb)との境界線の傾斜角度(詳細には境界線と照射エネルギーの軸と平行な直線線とのなす角度)は、第1照射モードのテーブルデータの方が大きい。また、第1照射モードのテーブルデータの境界線の傾斜角度は、照射エネルギーが大きくなるほど大きくなってゆく。
【0066】
第2照射モードの制御部80は、治療対象部位よりも遠方(奥側)に位置する非治療対象部位へのダメージを抑制するために、治療レーザ光の集光位置をエイミング光の集光位置よりも手前にシフトする。もちろん、治療レーザ光の照射エネルギーを減衰させてもよい。このような制御により、例えば、網膜(非治療対象部位)を牽引する硝子体索状物(治療対象部位)をプラズマの衝撃で切除しつつ、プラズマの衝撃による網膜(非治療対象部位)のダメージを抑制できる。
【0067】
<第2変容例>
制御部80がステップS103で実行する制御の変容例(第2変容例)を説明する。変容例のステップS103では、制御部80は、図4で示した制御フローの代わりに図10で示す制御フローを実行する。図10で示す制御フローは、調整値(照射エネルギー又はフォーカスシフト位置)の過大な変更を抑制するものである。制御部80は、現在の調整値と変更予定の調整値とを比較して、変更予定量(調整変化量)が所定の閾値を超えるか否かを判定する(ステップS402)。変更予定量が閾値を超える場合には、制御部80は、変更予定の調整値に対して補正を行う(ステップS404,ステップS406)。
【0068】
例えば、照射エネルギーの調整可能範囲が0.3〜10mJであり、照射エネルギーの変更予定量が5mJ(閾値)を超える場合には、制御部80は、照射エネルギーの変更に連携してフォーカスシフト位置も自動で変更する。第1照射モードの場合には、図6で示したテーブルデータを用いてフォーカスシフト位置の自動変更を行ってもよい。もちろん、フォーカスシフト位置の変更量が過大な場合に調整値(照射エネルギー又はフォーカスシフト位置)の補正を行ってもよい。また、照射エネルギーとフォーカスシフト位置とが同時に変更される際に補正を行ってもよい。
【0069】
なお、眼科用レーザ治療装置1が、図10で示す制御のみを行ってもよい(つまり、眼科用レーザ治療装置1が図5の制御を行わない)。また、例えば、眼科用レーザ治療装置の照射エネルギーの調整のみに適用してもよい。つまり、眼科用レーザ治療装置がシフト調整部15(位置調整手段)を備えない場合に、変更予定の過大な照射エネルギーに対して補正(または報知)を行ってもよい。なお、プラズマを発生させずに治療レーザ光で治療対象部位の治療を行う眼科用レーザ治療装置に適用してもよい。
【0070】
<その他>
本実施形態では評価結果に基づいて照射エネルギーまたはフォーカスシフト位置を補正した。しかし、補正を行わずに術者に報知してもよい。例えば、制御部80がモニタ66に警告表示をさせてもよい。又は、眼科用レーザ治療装置がブザーを備える場合には、制御部80がブザーを鳴らして報知してもよい。
【0071】
なお、本実施形態では治療レーザ光の照準手段としてエイミング光学系40を用いた。しかし、観察光学系20のみで治療レーザ光の照準を合わせてもよい。例えば、観察光学系がカメラを備え、カメラの出力映像を用いて治療レーザ光の照準を合わせる態様であっても。照準手段で基準位置(位置F0)への位置合わせを行え、位置調整手段(シフト調整部15)で治療レーザ光の集光位置を基準位置に対して変位できればよい。
【0072】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びこれと均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 :眼科用レーザ治療装置
10:レーザ照射光学系
12:エネルギー調整部
15: シフト調整部
80:制御部
Ep:患者眼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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