(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作業支援端末は、前記供給支障時間に含まれる停電作業時間の開始時間が同一の操作が所定数以上ある場合、前記操作に優先順位を設け、前記優先順位に基づき前記操作の開始時間を決定する、請求項1に記載の操作時間調整システム。
前記作業支援端末は、前記停電作業が実施される領域において単一事故が発生した際、電力供給に支障があるか否かに基づき、前記優先順位を決定する、請求項2に記載の操作時間調整システム。
前記作業支援端末は、前記停電作業が実施される領域において単一事故が発生した際、前期領域内の設備に過負荷が発生するか否かに基づき、前記優先順位を決定する、請求項2又は3に記載の操作時間調整システム。
前記作業支援端末が前記操作の時間を算出する際、前記操作を模擬実行することにより前記操作の時間を算出する、請求項1から4のいずれか1項に記載の操作時間調整システム。
【背景技術】
【0002】
停電作業を行う場合、設備主管箇所において、停電作業計画システムや停電作業計画端末を用いて停電作業要求書を作成し、制御所において、その内容を確認・調整後、停電作業要求書の決定を行っている。
【0003】
更に、制御所においては、決定された停電作業要求書に基づき、停電の開始と停電からの復旧に必要な操作の内容が記載された操作票を作成する。停電作業当日、停電作業の作業員が作業現場で停電作業を実施する前後に、制御所の操作員は、この操作票に基づいて上記の操作を行う。操作票の作成時には、停電作業の作業開始時間に間に合うようにスケジュールを組んで、各操作の開始時間を決定している。
【0004】
図1にも示すように、停電作業の実作業の前後には、停電の開始と停電からの復旧に必要な操作を実施する必要があるが、実作業時間とその前後の操作時間とを、まとめて供給支障時間と呼ぶ。上記の操作の開始時間の決定にあたっては、この供給支障時間に加え、発電支障時間、配電線転負荷時間(以下、これらを「供給支障時間等」と呼ぶ)を考慮することにより決定しているが、人の経験に基づいた決定であるため、ヒューマンエラーにより供給支障時間等の厳守時間を逸脱したり、上記の操作の終了が、作業開始時間に間に合わなかったりすることにより、停電作業が計画時間内に実施できない恐れがある。
【0005】
この解決手法として、特許文献1〜6は、以下の技術を開示している。
特許文献1は、分枝限定法を用いて作業停電の日程の探索を行うと共に、各作業の日程の状態を評価し、更に、日程調整の結果に対応した系統断面に基づいて、電力系統の信頼度を評価することにより、信頼度が確保された系統構成を立案する技術を開示している。
【0006】
特許文献2は、調整対象期間における設備の増設及び撤去に関わる作業件名の作業日時を固定して、常時系統を作成する機能、及び作業予定表を表示する機能を持った作業停電調整システムを開示している。
【0007】
特許文献3は、要求者側端末で入力された、停止すべき発電機を特定する情報と希望する停止日時を含む発電機停止データに基づき、調整箇所側サーバが損失コストを計算し、要求者側端末で、この損失コストを閲覧した要求者が停止日時を決定し、調整箇所側サーバが、この停止日時と発電機を特定する情報を記憶して、調整結果を決定する技術を開示している。
【0008】
特許文献4は、作業停電時に点検・修繕・工事等の各種の作業を行う各担当課にそれぞれ設置される作業停電調整システムであって、複数の作業件名を同一設備に関するものごとに集約し、同一設備に関する複数の作業件名にそれぞれ含まれる作業種別のランクに基づいて基準となる作業件名を指定し、この基準作業件名を基準として同一設備に関する他の作業件名の日時を自動調整して作業停電計画を作成する作業停電調整システムを開示している。
【0009】
特許文献5は、作業件名によりそれぞれ識別される停電作業を伴う作業案件につき、設備状況内容を示す設備データベースに基づき、作業案件管理機構により日程調整を実施する作業停電調整装置において、作業案件の調整実行による将来的な設備状況の予測情報に応じて、設備データベースにおける設備状況内容を更新する技術を開示している。
【0010】
特許文献6は、作業停電調整装置が、需要家に停電が発生しないように調整作業日を設定し、この調整作業日を元にして、期間内で作業日が極力同じになるように作業日を調整する技術を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記の特許文献で開示される技術は、いずれも作業開始時間が同一の停電作業が複数あった場合に、操作開始時間及び供給支障時間等を調整するものではなかった。
より具体的には、例えば
図2に示すように、停電作業の作業開始時間が9:00の停電作業が4件あったとする。これら4件の停電作業の準備のため、各々に対応する操作を行う必要があるが、制御所には操作員が2名しかいない場合、2件の操作しか同時実行できない。このため、例えば、4件の停電作業中、2件の停電作業に対応する操作を8:00〜9:00の間に並行して実施し、他の2件の停電作業に対応する操作は、6:00〜7:00、及び7:00〜8:00に実施する等、3件以上の操作が並行して実施されないように、操作開始時間をずらす必要がある。上記の特許文献に係る技術は、このような作業開始時間が同一となる停電作業が複数存在するケースを想定したものではなかった。
【0013】
また、上記の繰り返しとなるが、先行技術においては、人手によりスケジュールを組んで操作開始時間を決定しているため、人為的な調整ミスにより供給支障時間等が厳守時間を逸脱したり、停電作業のための操作が、作業開始時間に間に合わなかったりする恐れがある。操作員が、作業開始時間に間に合わせようとあわてて操作を行った場合、ヒューマンエラーにより顧客先が停電する恐れがある。
【0014】
また、上記のように、停電作業要求書に記載される供給支障時間は、作業開始前の操作時間+停電作業の実作業時間+作業完了後の操作時間の合計であるが、停電及び復旧に伴う操作時間は、停電作業の内容により様々である。先行技術においては、この操作時間を含む供給支障時間を、過去の実績及び経験から人手で算出しているため、ヒューマンエラーが発生したために供給支障時間の算出を誤ると、停電作業が出来ないという問題があった。
【0015】
また、顧客先の供給支障時間は絶対であり遵守しなければならないが、停電作業開始前・完了後の操作時間を適切に考慮せずに停電作業計画を行うと、顧客に通知した供給支障時間と差異が生じ、信頼を損なうという恐れがある。
【0016】
そこで、本発明は、停電作業に伴う操作の開始時間を自動で調整することにより、停電作業時間を確保できる操作時間調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0018】
(1) 操作時間調整システムであって、過去の停電作業における供給支障時間と、前記過去の停電作業に伴う操作の時間とを記憶する作業支援データベースと、前記作業支援データベースが記憶する前記供給支障時間を参照し、計画対象の停電作業における供給支障時間を決定する停電作業計画端末と、前記計画対象の停電作業に伴う操作の手順を決定する制御所端末と、前記手順に従う前記操作の時間を算出し、算出された前記操作の時間を、前記作業支援データベースが記憶する前記操作の時間と比較する作業支援端末とを備え、前記制御所端末は、前記比較の結果を用いて前記計画対象の停電作業に伴う操作の時間を決定し、前記停電作業計画端末は、前記制御所端末により決定された前記操作の時間を用いて、自身が決定した前記供給支障時間を更新する操作時間調整システム。
【0019】
(1)によれば、計画対象の停電作業に伴う操作の時間を算出し、この操作の時間と、過去の停電作業に伴う操作の時間との比較結果を用いて、計画対象の停電作業に伴う操作の時間を決定することにより、供給支障時間並びに操作の開始時間を自動で調整することができる。
【0020】
(2) 前記作業支援端末は、前記供給支障時間に含まれる停電作業時間の開始時間が同一の操作が所定数以上ある場合、前記操作に優先順位を設け、前記優先順位に基づき前記操作の開始時間を決定することが好ましい。
【0021】
(2)によれば、操作の優先順位に基づいて、複数の操作の開始時間を互いにずらすことにより、同時に実施できる操作の数に制限がある場合でも、制限を超えることなく操作を実施することができる。
【0022】
(3) 前記作業支援端末は、前記停電作業が実施される領域において単一事故が発生した際、電力供給に支障があるか否かに基づき、前記優先順位を決定することが好ましい。
【0023】
(3)によれば、障害が発生した場合、深刻な影響を与えるために、停電時間を短くしたい停電作業に伴う操作をピックアップして、その開始時間を自動的に定めることができる。
【0024】
(4) 前記作業支援端末は、前記停電作業が実施される領域において単一事故が発生した際、前期領域内の設備に過負荷が発生するか否かに基づき、前記優先順位を決定することが好ましい。
【0025】
(4)によれば、障害が発生した場合、深刻な影響を与えるために、停電時間を短くしたい停電作業に伴う操作をピックアップして、その開始時間を自動的に定めることができる。
【0026】
(5) 前記作業支援端末が前記操作の時間を算出する際、前記操作を模擬実行することにより前記操作の時間を算出することが好ましい。
【0027】
(5)によれば、制御所端末が決定した操作の時間を算出する際、とりわけ人手によって算出する場合に比較して、より正確に操作の時間を算出することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、停電作業に伴う操作の開始時間を自動で調整することにより、停電作業時間を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、
図3〜
図18を参照しながら詳述する。
【0031】
図3は、本発明の実施形態に係る操作時間調整システムの構成と、その停電作業計画時の動作の概略を示す図である。操作時間調整システム10は、停電作業計画端末11と作業支援データベース12と制御所端末13と作業支援端末14とプリンタ15とを備える。停電作業計画端末11は、設備主管箇所に設置され、停電作業を計画すると共に、停電作業要求書を発行し、自身に接続されたプリンタ15を用いて停電作業要求書を印刷する端末である。作業支援データベース12は、過去の停電作業の内容、とりわけ停電範囲と供給支障時間に係るデータと、停電作業に伴う停電開始のための操作、及び停電からの復旧のための操作の内容と時間に係るデータを記憶する。制御所端末13は各制御所に設置され、停電開始のための操作、及び停電からの復旧のための操作の手順とその時間を決定する端末である。作業支援端末14は、制御所端末13が決定した操作の時間を算出すると共に、算出された操作の時間を、作業支援データベース12に記憶された操作の時間のデータを用いて比較検証する端末である。なお、制御所端末13と作業支援端末14とは、別体として実現されてもよいが、同一の端末内で実現されてもよい。
【0032】
操作時間調整システム10の停電作業計画時における動作の概略は以下の通りである。すなわち、まずP1において、ユーザは、停電作業計画端末11から作業支援データベース12に接続し、停電作業要求書に記載された所線名を用いて、作業支援データベース12に格納される電気所と送電線の配置図を検索する。更に、ユーザは、停電作業計画端末11上で検索結果として表示された配置図において、停電範囲を選択する。
【0033】
上記の停電範囲の選択に伴い、P2において、作業支援データベース12から停電作業計画端末11に対し、停電範囲のデータと、この停電範囲において過去に停電作業をした際の供給支障時間のデータとが送信される。
【0034】
P3において、停電作業計画端末11は、上記の停電範囲のデータと、供給支障時間のデータに含まれる操作時間のデータとを制御所端末13に送信する。制御所端末13は、停電範囲のデータに基づき、操作の手順を決定すると共に、この操作時間のデータを用いて操作票を発行する。
【0035】
P4において、制御所端末13は、上記の操作の手順と、元々は作業支援データベース12から送信されてきた操作時間とを、作業支援端末14に送信する。作業支援端末14において、上記の操作の手順に従って操作を模擬実行することにより、操作時間を算出する。更に、作業支援端末14は、操作の模擬実行により算出された操作時間と、作業支援データベース12から制御所端末13を経由して送信されてきた操作時間とを比較検証する。双方の操作時間が異なる場合は、作業支援端末14は、作業支援データベース12に格納される操作時間のデータを、操作の模擬実行により算出された操作時間に変更する。
更に、作業支援端末14は、操作時間を算出した各操作の操作開始時刻を用いて供給支障時間を算出し、この算出した供給支障時間のデータと、制御所端末13から受信した供給支障時間データとを比較検証する。
【0036】
P5において、作業支援端末14は、上記の2つの比較検証の結果を、制御所端末13に送信する。
作業支援端末14によって算出された操作時間と、作業支援データベース12から送信されてきた操作時間との間に差異がある場合、すなわち双方の操作時間が異なる場合は、制御所端末13は、作業支援端末14によって算出された操作時間を、操作票に反映する。双方の操作時間が同一である場合、操作票の記載内容の変更は、特に実施しない。
【0037】
P6において、制御所端末13は、上記のP5において自身が決定した操作時間を、停電作業計画端末11に送信する。更に、制御所端末13は、上記の供給支障時間のデータの比較検証結果を、停電作業計画端末11に送信する。停電作業計画端末11は、制御所端末が決定した操作時間と、P2において作業支援データベース12から受信した供給支障時間に含まれる操作時間とが異なる場合は、制御所端末が決定した操作時間を反映させることにより、供給支障時間を更新する。双方の操作時間が同一の場合は、作業支援データベース12から受信した供給支障時間を特に変更しない。
あるいは、元々は作業支援データベース12から受信した供給支障時間のデータと、作業支援端末14が算出し、制御所端末13を介して受信した供給支障時間のデータとが異なる場合、作業支援端末14が算出した供給支障時間のデータで、供給支障時間のデータを上書きしてもよい。
【0038】
P7において、停電作業計画端末11は、P6において決定した供給支障時間を用いて停電作業要求書を発行し、プリンタ15で印刷したり、停電作業計画端末11から関係個所に伝送したりする。
【0039】
図4は、本発明の実施形態に係る操作時間調整システムの停電作業実施後の動作の概略を示す図である。まずQ1において、制御所端末13から作業支援端末14に対し、実際に操作した時間、すなわち、お客様受電CB(遮断器)を「切」にしてから停電作業を開始するまでの時間、及び、停電作業が完了してからお客様受電CB(遮断器)を「入」にするまでの時間のデータを送信する。
【0040】
Q2において、作業支援端末14は、作業支援データベース12から、停電作業計画時に利用した供給支障時間のデータを読み込み、この供給支障時間データに含まれる操作時間のデータを取得する。
【0041】
Q3において、作業支援端末14は、制御所端末13から受信した実際の操作時間のデータと、作業支援データベース12から取得した操作時間のデータとを比較する。これらの操作時間のデータに差異がある場合は、作業支援データベース12に格納されている操作時間のデータを、実際の操作時間のデータに変更する。
【0042】
上記において、
図3を用い、本発明の実施形態に係る操作時間調整システムの停電作業計画時の動作の概略について説明したが、その詳細を、
図5を用いて説明する。
【0043】
ステップS1において、停電作業計画端末11で所線名を選択し、作業支援データベース12に格納される電気所と送電線の配置図を検索する。例えば、停電作業計画端末11で「A変電所」を選択した場合、
図6に示す配置図が検索され、停電作業計画端末11の画面に表示される。一方で、例えば、停電作業計画端末11で「AB線」を選択した場合、
図7に示す配置図が検索され、停電作業計画端末11の画面に表示される。
【0044】
ステップS2において、ユーザは、停電作業計画端末11の画面に表示された配置図上で、停電範囲を選択する。具体的には、配置図上に示された遮断器、断路器、甲種アース等のシンボルを、該当電気所または送電線に応じて選択することにより、停電範囲を選択する。
【0045】
ステップS3において、作業支援データベース12から停電作業計画端末11に対し、停電作業計画端末11の画面上で選択された停電範囲のデータと、この停電範囲で過去に停電作業をした際の供給支障時間のデータを送信する。停電作業計画端末11は、これらの停電範囲データと供給支障時間データを、作業支援データベース12から取り込む。
【0046】
ステップS4において、停電作業計画端末11は、作業支援データベース12から取り込んだ停電範囲データと供給支障時間データを制御所端末13に送信する。
【0047】
ステップS5において、制御所端末13は、停電範囲データに基づき操作手順を作成すると共に、供給支障時間データに含まれる操作時間データを用いて操作票を発行する。更に、制御所端末13は、操作手順データと供給支障時間データを、作業支援端末14に送信する。
【0048】
ステップS6において、作業支援端末14は、制御所端末13から受信した操作手順と操作時間とを、作業支援データベース12のデータを用いて検証する。具体的には、作業支援端末14は、例えば、制御所端末13から受信した操作の手順数が、作業支援データベース12に格納された操作の手順数に比べて増減していないかを比較する。また、作業支援端末14は、制御所端末13から受信した操作手順を元に操作を模擬実行することにより、操作時間を算出する。更に、作業支援端末14は、操作時間を算出した各操作の操作開始時刻を用いて供給支障時間を算出し、この算出した供給支障時間のデータと、制御所端末13から受信した供給支障時間データとを比較する。
【0049】
ステップS7において、算出した供給支障時間と、制御所端末13から受信した供給支障時間とで差がある場合(S7:YES)は、ステップS8に移行する。双方の供給支障時間に差がない場合(S7:NO)は、ステップS11に移行する。
【0050】
ステップS8において、作業支援端末14は、自身が算出した供給支障時間のデータを用いて、作業支援データベース12の供給支障時間データを更新する。更に、作業支援端末14は、比較検証の結果を制御所端末13に送信する。
【0051】
ステップS9において、制御所端末13は、比較検証の結果を自身の操作時間に反映する。具体的には、作業支援端末14が算出した操作時間のデータを用いて操作票に記載の操作時間を上書きする。その後、制御所端末13は、検証結果、とりわけ最新の供給支障時間のデータを、停電作業計画端末11に送信する。
【0052】
ステップS10において、停電作業計画端末11は、制御所端末13から受信した検証結果を、自身の供給支障時間に反映する。具体的には、作業支援端末14が算出した供給支障時間のデータを用いて、元々は作業支援データベース12から取り込んだ供給支障時間を更新する。
【0053】
ステップS11において、停電作業計画端末11は、最新の供給支障時間のデータを用いて、停電作業要求書を発行する。
【0054】
上記のように、ステップS5において、制御所端末13は、停電範囲データに基づき操作手順を作成するが、その具体的な動作、及び作成される操作手順の例を、
図8〜
図14を用いて詳述する。
【0055】
図8のステップS21において、制御所端末13は、停電作業計画端末11から、停電範囲のデータを受信する。
【0056】
ステップS22において、制御所端末13は、停電範囲が送電線か変電所かを判断する。停電範囲が送電線である場合、制御所端末13は、
図9に示すAのフローを操作手順とする。停電範囲が変電所である場合、ステップS23に移行する。
【0057】
ステップS23において、制御所端末13は、停電範囲が変圧器か母線かを判断する。停電範囲が変圧器である場合、制御所端末13は、
図10に示すBのフローを操作手順とする。停電範囲が母線である場合、ステップS24に移行する。
【0058】
ステップS24において、制御所端末13は、停電範囲が2重母線か単母線かを判断する。停電範囲が2重母線である場合、ステップS25に移行する。停電範囲が単母線である場合、ステップS26に移行する。
【0059】
ステップS25において、制御所端末13は、停電範囲が、例えば
図6に示す甲母線か乙母線かを判断する。停電範囲が甲母線である場合、制御所端末13は、
図11に示すCのフローを操作手順とする。停電範囲が乙母線である場合、制御所端末13は、
図12に示すDのフローを操作手順とする。
【0060】
ステップS26において、制御所端末13は、停電母線変圧器が2次か3次かを判断する。停電母線変圧器が2次である場合、制御所端末13は、
図13に示すEのフローを操作手順とする。停電母線変圧器が3次である場合、制御所端末13は、
図14に示すFのフローを操作手順とする。
【0061】
図9に、操作手順の例としてAのフローを示す。具体的には後述するが、停電範囲の送電線が1回線の場合は、A1〜A8を操作手順とする。一方で、停電範囲の送電線が並行2回線の場合は、A1〜A10を操作手順とする。
【0062】
ステップA1において、受電側の遮断器を「切」にする。ステップA2において、送電側の遮断器を「切」にする。ステップA3において、送電側のARE(自動復旧装置)を「不使用」にする。ステップA4において、送電側の断路器を「切」にする。ステップA5において、受電側のARE(自動復旧装置)を「不使用」にする。ステップA6において、受電側断路器を「切」にする。ステップA7において、送電側の甲種アースを「入」にする。ステップA8において、受電側の甲種アースを「入」にする。
【0063】
ステップS27において、送電線が1回線の場合は、以上で操作手順を終了する。ステップS27において、送電線が並行2回線の場合は、更に、以下のステップA9とA10を操作手順とする。
【0064】
ステップA9において、運用回線の受電側のARE(自動復旧装置)を「不使用」とする。ステップA10において、運用回線の送電側のARE(自動復旧装置)を「不使用」とする。
【0065】
図10に、操作手順の例としてBのフローを示す。具体的には後述するが、停電範囲の変圧器が1台の場合は、B1〜B4を操作手順とする。一方で、停電範囲の変圧器が2台の場合は、B1〜B5を操作手順とする。
【0066】
ステップB1において、2次側の遮断器を「切」にする。ステップB2において、1次側の遮断器を「切」にする。ステップB3において、1次側のLS(断路器)を「切」にする。ステップB4において2次側のLS(断路器)を「切」にする。
【0067】
ステップS28において、変圧器が1台の場合は、以上で操作手順を終了する。ステップS28において変圧器が2台の場合は、ステップB5において、LR(変圧器)を並列から単独にする。なお、制御所端末13で操作時間を決定する際は、このステップB5の操作時間として、作業支援端末14で検証した操作時間に対して、現地での操作時間として5分を加算する。
【0068】
図11に、操作手順の例としてCのフローを示す。ステップC1において、制御所システムの配列で左側から乙のLS(断路器)を「入」にする。ステップC2において、制御所システムの配列で左側から甲のLS(断路器)を「切」にする。ステップC3において、母連の遮断器を「切」にする。ステップC4において、母連の甲のLS(断路器)を「切」にする。ステップC5において、母連の乙のLS(断路器)を「切」にする。
【0069】
図12に、操作手順の例としてDのフローを示す。ステップD1において、制御所システムの配列で左側から甲LS(断路器)を「入」にする。ステップD2において、制御所システムの配列で左側から乙LS(断路器)を「切」にする。ステップD3において、母連の遮断器を「切」にする。ステップD4において、母連の甲LS(断路器)を「切」にする。ステップD5において、母連の乙LS(断路器)を「切」にする。
【0070】
図13に、操作手順の例としてEのフローを示す。ステップE1において、変圧器の2次遮断器を「切」にする。ステップE2において、変圧器の1次遮断器を「切」にする。ステップE3において、変圧器の2次遮断器を「引出し」にし、配電線の遮断器を「引出し」にする。
【0071】
図14に、操作手順の例としてFのフローを示す。ステップF1において、変圧器の3次遮断器を「切」にする。ステップF2において、変圧器の3次LS(断路器)を「切」にする。ステップF3において、変圧器の3次遮断器を「引出し」にし、配電線の遮断器を「引出し」にする。
【0072】
上記のように、
図5に記載のフローのステップS6において、作業支援端末14は、制御所端末13から受信した操作手順と操作時間とを、作業支援データベース12のデータを用いて検証するが、その具体的な動作、及び作成される操作手順を、
図15及び
図16を用いて詳述する。
【0073】
図15は、各操作を開始する際の優先順を算出するフローチャートを示す。まず、ステップS31において、作業支援端末14で、停電作業の準備となる操作の内、供給支障時間等の制約がない作業をピックアップする。
【0074】
ステップS32において、作業支援端末14が、ピックアップされた操作を模擬実行することにより操作時間を算出し、作業支援データベースの操作時間のデータと比較検証する。
【0075】
ステップS33において、作業支援端末14が算出した操作時間と、作業支援データベース12に格納された操作時間とに差がある場合(S33:YES)は、ステップS34に移行する。双方の操作時間に差がない場合(S33:NO)は、ステップS35に移行する。
【0076】
ステップS34において、作業支援端末14が、検証結果を作業支援データベース12に格納された操作時間に反映する。具体的には、作業支援データベース12に格納された操作時間を、作業支援端末14が算出した操作時間で更新する。
【0077】
ステップS35において、作業支援端末14が、優先順位算出の対象となっている操作が付随する停電作業において、単一事故が発生した場合、電力の供給に支障があるか否かを判断する。具体的には、例えば、
図6及び7に記載の「AB線」の内、左側の送電線で停電作業をしている最中に右側の送電線で単一事故が発生した場合、供給支障があるか否かを判断する。電力供給に支障がある場合(S35:YES)は、ステップS36に移行する。電力供給に支障がない場合(S35:NO)は、操作開始時間の優先順位をCとする。
【0078】
ステップS36において、作業支援端末14が、優先順位算出の対象となっている操作が付随する停電作業において、単一事故が発生した場合、設備に過負荷が発生するか否かを判断する。具体的には、例えば、
図6及び7に記載の「AB線」の内、左側の送電線で停電作業をしている最中に他の箇所で発生した単一事故により、右側の送電線が過負荷になるか否かを判断する。設備に過負荷が発生する場合(S36:YES)は、操作開始時間の優先順位をAとする。設備に過負荷が発生しない場合(S36:NO)は、操作開始時間の優先順位をBとする。
【0079】
図16は、各操作の開始時間を決定するフローチャートを示す。具体的には、作業支援端末14が、
図15のフローにより決定された優先順位を用いて、各操作の開始時間を決定する。
【0080】
ステップS41において、作業支援端末14が、対象となる操作の操作開始時間優先順位がCか否かを判断する。操作開始時間優先順位がCの場合(S41:YES)は、ステップS42に移行する。操作開始時間優先順位がCではない場合(S41:NO)は、ステップS44に移行する。
【0081】
ステップS42において、制御所に滞在中の操作員の数をn人とした場合、現時点で、供給支障時間等の制約がある作業のうち、作業開始時間が同一のものが、n+1件以上あるか否かを、作業支援端末14が判断する。n+1件以上の場合(S42:YES)は、ステップS43に移行する。n+1件未満の場合は、動作を終了する。
【0082】
ステップS43において、作業支援端末14が、現時点で確定している供給支障時間のうち最も早い供給支障時間から、対象となる操作の操作時間+マージン分だけ前の時間を、対象となる操作の操作開始時間とする。この決定方法を、
図17に示す例を用いて説明する。
【0083】
図17において、作業α、作業β、作業γは、全て供給支障時間に制約がある作業であり、作業αの供給支障時間は7時40分に開始し、作業βの供給支障時間は7時10分に開始し、作業γの供給支障時間は7時20分に開始することが確定しているとする。作業δに含まれる操作の操作時間が20分、マージンが10分とした場合、作業δに含まれる操作の開始時間は、作業α、作業β、作業γの供給支障時間の内、最も供給支障時間の開始が早い7時10分から、操作時間20分+マージン10分前の、6時40分と決定される。
【0084】
図16のフローチャートに戻ると、ステップS44において、作業支援端末14が、対象となる操作の操作開始時間優先順位がBか否かを判断する。操作開始時間優先順位がBの場合(S44:YES)は、ステップS45に移行する。操作開始時間優先順位がBではない場合(S44:NO)は、ステップS47に移行する。
【0085】
ステップS45において、作業支援端末14が、現時点で、優先順位がCの操作のうち、作業開始時間が同一のものが、n+1件以上あるか否かを判断する。n+1件以上の場合(S45:YES)は、ステップS46に移行する。n+1件未満の場合は、ステップS43に移行する。
【0086】
ステップS46において、作業支援端末14が、現時点で確定している優先順位Cの操作の操作開始時間のうち、最も早い操作開始時間から、対象となる操作の操作時間+マージン分だけ前の時間を、対象となる操作の操作開始時間とする。この決定方法は、
図17に示す例と同様であるため、その説明を省略する。
【0087】
ステップS47、すなわち対象となる操作の優先順位がAである場合において、現時点で、優先順位がBの操作のうち、作業開始時間が同一のものがn+1件以上あるか否かを、作業支援端末14が判断する。n+1件以上の場合(S47:YES)は、ステップS48に移行する。n+1件未満の場合は、ステップS43に移行する。
【0088】
ステップS48において、作業支援端末14が、現時点で確定している優先順位Bの操作の操作開始時間のうち、最も早い操作開始時間から、対象となる操作の操作時間+マージン分だけ前の時間を、対象となる操作の操作開始時間とする。この決定方法は、
図17に示す例と同様であるため、その説明を省略する。
【0089】
上記において、
図4を用い、本発明の実施形態に係る操作時間調整システムの停電作業実施後の動作の概略について説明したが、その詳細を、
図18を用いて説明する。
【0090】
ステップS51において、制御所端末13が、作業支援端末14に、実際に操作した際の操作時間のデータを送信する。
【0091】
ステップS52において、作業支援端末14が、作業支援データベース12から、今回の停電作業に対応する供給支障時間のデータを取得し、この供給支障時間データに含まれる操作時間データと、制御所端末13から受信した実際の操作時間のデータとを比較検証する。なお、作業支援データベース12から取得した供給支障時間に含まれる操作時間データは、場合により、
図5に示すフローのステップS6、より具体的には
図15に示すフローのステップS34において更新されたデータである。
【0092】
ステップS53において、作業支援データベース12から取得した操作時間データと、実際の操作時間データとに差がある場合(S53:YES)は、ステップS54に移行する。双方の操作時間データに差がない場合(S53:NO)は、動作を終了する。
【0093】
ステップS54において、作業支援端末14が、作業支援データベース12に格納されている操作時間データを、実際の操作時間のデータで更新する。
【0094】
上記の説明に従い構成された本実施形態によれば、計画対象の停電作業に伴う操作の時間を算出し、この操作の時間と、過去の停電作業に伴う操作の時間との比較結果を用いて、計画対象の停電作業に伴う操作の時間を決定することにより、供給支障時間並びに操作の開始時間を自動で調整することができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、操作の優先順位に基づいて、複数の操作の開始時間を互いにずらすことにより、同時に実施できる操作の数に制限がある場合でも、制限を超えることなく操作を実施することができる。
【0096】
また、本実施形態によれば、障害が発生した場合、深刻な影響を与えるために、停電時間を短くしたい停電作業に伴う操作をピックアップして、その開始時間を自動的に定めることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、制御所端末が決定した操作の時間を算出する際、とりわけ人手によって算出する場合に比較して、より正確に操作の時間を算出することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、
図5で示すフローのステップS6において、作業支援端末14は、制御所端末13から供給支障時間データを取得するとしたが、作業支援データベース12から、直接、供給支障時間データを取得してもよい。