特許第6836144号(P6836144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836144キャビネットにおける引出しのオールロック装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836144
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】キャビネットにおける引出しのオールロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/462 20170101AFI20210215BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20210215BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20210215BHJP
   E05C 9/08 20060101ALI20210215BHJP
   E05C 9/12 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   E05B65/462
   E05B49/00 B
   E05B47/00 L
   E05C9/08
   E05C9/12
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-254624(P2016-254624)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-105060(P2018-105060A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】大石 祐
(72)【発明者】
【氏名】横田 一寿
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆太
(72)【発明者】
【氏名】荒井 克洋
(72)【発明者】
【氏名】植村 浩孝
【審査官】 鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−035669(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−0765191(KR,B1)
【文献】 特開2012−040133(JP,A)
【文献】 独国実用新案第202004001998(DE,U1)
【文献】 特開2010−270590(JP,A)
【文献】 特開2005−144006(JP,A)
【文献】 米国特許第05358322(US,A)
【文献】 特開2003−219925(JP,A)
【文献】 特開2008−174906(JP,A)
【文献】 米国特許第05385039(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05C 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え、
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記アクチュエータが、前記操作体を往復直線運動させるものであり、
前記操作体から前記連動部材への動力伝達、又は前記連動部材の一部における動力伝達をラックアンドピニオンにより行う
キャビネットにおける引出しのオールロック装置。
【請求項2】
上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え、
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠のうち、前記認証部は前記引出しに備え、前記アクチュエータは前記キャビネット本体に備え、前記引出しを閉止することにより、前記認証部と前記アクチュエータとが電気的に接続される、
キャビネットにおける引出しのオールロック装置。
【請求項3】
上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え、
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠のうち、前記認証部は前記引出しに備え、前記アクチュエータは前記キャビネット本体に備え、前記認証部と前記アクチュエータは、前記キャビネット本体と前記引出しとの間でケーブルにより電気的に接続される、
キャビネットにおける引出しのオールロック装置。
【請求項4】
上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え、
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠は電池式であり、その電池を前記引出しに備える、
キャビネットにおける引出しのオールロック装置。
【請求項5】
上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え、
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠は電池式であり、その前記認証部、前記アクチュエータ、及び電池は前記引出しに備え、前記引出しを閉止することにより、前記アクチュエータの前記操作体が前記連動部材を駆動可能なように、前記操作体と前記連動部材とが配置される、
キャビネットにおける引出しのオールロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置に関わり、さらに詳しくは、引出しの一つに電子錠を備えた省電力の前記オールロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
また、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、上下複数段の引出しに個別の電子錠を備えたものがある(例えば、特許文献3の図3参照)。
【0003】
特許文献1のキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、キャビネット本体(1)の天板の前面、又は最上段の引出し(2)の鏡板に取り付けた錠前(31)の施錠操作に連動する連動機構により、キャビネット本体(1)の左右の側板(4,4)の内側で昇降可能に支持された左右の昇降体(左右のロッド54c,54b,54a,…)の中の最上位置の昇降体(左右のロッド54c,54c)の上昇動作を阻止し、複数段の引出しを一括してロックするものである。
そして、キーによる錠前(31)の施解錠操作によるデッドボルト(32)の上下動に連動する、第1連動部(35)及び左右の第2連動部(36,36)、並びに第1連動部(35)及び左右の第2連動部(36,36)を連結する左右の連結杆(46,46)等を備える。
【0004】
特許文献2のキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、各引出し(22)の把手(31)を操作することにより解除される左右のラッチ機構(3,3)、左右のラッチ機構(3,3)を操作する左右方向の回転軸(34)、回転軸(34)と把手(31)との間に介在させたクラッチ(11)、各引出し(22)の鏡板(22a)に設けられた、クラッチ(11)のオフ/オンを操作して施錠状態/解錠状態を切替える作動部(12)、上下に隣接する引出し(22,22)の鏡板(22a,22a)間に亘って構成された、上下の作動部(12,12)の動きを連動させる連動機構(B)、及び、何れかの引出し(22)の鏡板(22a)に設けられた、当該鏡板(22a)に存する作動部(12)又は連動機構(B)の一部に施錠状態/解錠状態を切り替えるための動作を与える入力部であるダイヤル錠(13)等を備える。
ここで、連動機構(B)は、各引出し(22)の鏡板(22a)に連動杆(14)を昇降可能に配置したものであり、上下の連動杆(14,…)が連動して上下動することにより、上下の作動部(12,…)が連動する。それにより、上下複数段の引出し(22,…)のクラッチ(11,…)のオフ/オン操作を、一つの作動部(12)の操作により行うことができる。
【0005】
特許文献3のキャビネットは、電池式の電子錠(8)を使用しており、電子錠(8)のソレノイド等のアクチュエータを駆動した際における消費電力を少なくして電池の消耗をなるべく少なくする必要があることから、前記アクチュエータの作動力(例えば、ソレノイドの吸引力)は弱いので、前記のとおり上下複数段の引出しに個別の電子錠を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−167006号公報
【特許文献2】特開2009−052298号公報
【特許文献3】特開2015−187345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3のような電子錠を備えたキャビネットは、電子錠によりセキュリティを向上できるが、引出しの個数分の電子錠が必要になることから製造コストが嵩んでしまう。
その解決策として、電池式の電子錠を備える引出しを一つとし、複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置と組み合わせることが考えられる。
【0008】
しかしながら、電池式の電子錠を備える引出しを一つとして特許文献1のような前記オールロック装置と組み合わせた場合、前記連動機構の質量が大きく、第1ブロック体(38)から第2ブロック体(40)、第2ブロック体(40)から左右の第3ブロック体(42,42)へ動力を伝達する際の機械損失もあるので、前記連動機構の駆動に必要な作動力が大きくなる。
よって、電池式の電子錠を備える引出しを一つとして特許文献1のような前記オールロック装置と組み合わせた構成において、電池式の電子錠のアクチュエータの消費電力を小さくするように省電力化を図るという観点で見ると改良の余地がある。
【0009】
また、電池式の電子錠を備える引出しを一つとして特許文献2のような前記オールロック装置と組み合わせた場合、上下に隣接する引出し(22,22)の鏡板(22a,22a)間に亘って構成された連動機構(B)により上下の作動部(12,12)の動きを連動させる構成であり、可動側の各引出し(22)に連動機構(B)が組み込まれているので、引出し(22)とキャビネット本体(筐体21)の遊び部分のガタツキや寸法誤差等によって上下の引出し(22,22,…)に前後方向の位置ずれが発生することがある。このような位置ずれがあると、前記連動機構(B)により上下の作動部(12,12)の動きを連動させる動作が不確実になる場合がある。
よって、複数段の引出しを一括してロックしたオールロック状態にするための動作、及び/又は何れの引出しも引き出せるロック解除状態にするための動作の信頼性を向上するという観点で見ると改良の余地がある。
【0010】
そこで、本発明は、電子錠を備える引出しを一つにした、上下複数段の引出しを備えたキャビネットに用いる、上下複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置において、電子錠のアクチュエータの消費電力を小さくするように省電力化を図るとともに動作の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、前記課題解決のために、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え、
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記アクチュエータが、前記操作体を往復直線運動させるものであり、
前記操作体から前記連動部材への動力伝達、又は前記連動部材の一部における動力伝達をラックアンドピニオンにより行う(請求項1)。
【0012】
このような構成によれば、キャビネット本体の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作をロック体により阻止することにより、引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、前記昇降体の上昇動作を阻止しないようにロック体が移動することにより引出しを引出すことができる。
よって、前記ロック解除状態にするための動作、及び前記オールロック状態にするための動作が確実であり、前記動作の信頼性が高くなる。
その上、上下複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置を利用し、かつ付勢手段により前記オールロック状態とし、電子錠の認証成功時のみアクチュエータを作動させる。
よって、電子錠によりセキュリティを向上させながら製造コストの上昇を抑制できるとともに、省電力化を図ることができる。
【0015】
さらに、前記アクチュエータが、前記操作体を往復直線運動させるものであり、
前記操作体から前記連動部材への動力伝達、又は前記連動部材の一部における動力伝達をラックアンドピニオンにより行うので、ラックアンドピニオンにより、軽い力で確実に動力伝達を行うことができる。
【0016】
また、本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、前記課題解決のために、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠のうち、前記認証部は前記引出しに備え、前記アクチュエータは前記キャビネット本体に備え、前記引出しを閉止することにより、前記認証部と前記アクチュエータとが電気的に接続される請求項
さらに、本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、前記課題解決のために、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠のうち、前記認証部は前記引出しに備え、前記アクチュエータは前記キャビネット本体に備え、前記認証部と前記アクチュエータは、前記キャビネット本体と前記引出しとの間でケーブルにより電気的に接続される請求項
また、本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、前記課題解決のために、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠は電池式であり、その電池を前記引出しに備える請求項)。
これらのような構成によれば、キャビネット本体の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作をロック体により阻止することにより、引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、前記昇降体の上昇動作を阻止しないようにロック体が移動することにより引出しを引出すことができる。
よって、前記ロック解除状態にするための動作、及び前記オールロック状態にするための動作が確実であり、前記動作の信頼性が高くなる
その上、上下複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置を利用し、かつ付勢手段により前記オールロック状態とし、電子錠の認証成功時のみアクチュエータを作動させる。
よって、電子錠によりセキュリティを向上させながら製造コストの上昇を抑制できるとともに、省電力化を図ることができる。
請求項4の構成によれば、電池式の電子錠の電池を前記引出しに備えるので電池交換が容易になる。
【0017】
さらにまた、本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、前記課題解決のために、上下複数段の引出しを備えたキャビネットにおいて、
キャビネット本体の左右のいずれか又は両方の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作を阻止することにより、前記引出しを一括してロックできるオールロック装置であって、
前記引出しの一つは、電子錠の認証部を備えたものであり、
前記キャビネット本体は、前記昇降体の上昇動作を阻止するロック体と、前記電子錠の認証により作動するアクチュエータの操作体の動作を前記ロック体に伝達する連動部材を備え
前記電子錠の認証が成功した解錠時には、前記操作体により前記連動部材が駆動され、前記ロック体が作動して前記昇降体が上昇可能なロック解除状態となり、
前記電子錠の認証が成功した解錠時以外には、前記ロック体が前記昇降体の上昇を阻止する方向に前記操作体を付勢手段により付勢することにより、前記引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、
前記電子錠は電池式であり、その前記認証部、前記アクチュエータ、及び電池は前記引出しに備え、前記引出しを閉止することにより、前記アクチュエータの前記操作体が前記連動部材を駆動可能なように、前記操作体と前記連動部材とが配置される請求項
このような構成によれば、キャビネット本体の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作をロック体により阻止することにより、引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、前記昇降体の上昇動作を阻止しないようにロック体が移動することにより引出しを引出すことができる。
よって、前記ロック解除状態にするための動作、及び前記オールロック状態にするための動作が確実であり、前記動作の信頼性が高くなる
その上、上下複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置を利用し、かつ付勢手段により前記オールロック状態とし、電子錠の認証成功時のみアクチュエータを作動させる。
よって、電子錠によりセキュリティを向上させながら製造コストの上昇を抑制できるとともに、省電力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置によれば、主に以下に示すような効果を奏する。
(1)キャビネット本体の側板の内側で昇降可能に支持された昇降体の上昇動作をロック体により阻止することにより、引出しを一括してロックしたオールロック状態となり、前記昇降体の上昇動作を阻止しないようにロック体が移動することにより引出しを引出すことができるので、前記ロック解除状態にするための動作、及び前記オールロック状態にするための動作の信頼性が高くなる。
(2)上下複数段の引出しを一括してロックできるオールロック装置を利用し、かつ付勢手段により前記オールロック状態とし、電子錠の認証成功時のみアクチュエータを作動させるので、電子錠によりセキュリティを向上させながら製造コストの上昇を抑制できるとともに、省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置を備えたキャビネットにおいて、引出しを閉止した電子錠の施錠状態を示している。
図2】連動部材を示す要部拡大斜視図であり、(a)は電子錠の施錠状態を、(b)は電子錠の解錠状態を示している。
図3】引出しを閉止した電子錠の施錠状態を示す縦断面右側面概略図である。
図4】引出しを閉止した電子錠の解錠状態を示す縦断面右側面概略図である。
図5】電子錠の解錠状態で引出しを少し引き出した状態を示す縦断面右側面概略図である。
図6図5の位置から引出しをさらに引き出した状態を示す縦断面右側面概略図である。
図7】本発明の実施の形態2に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置を備えたキャビネットにおいて、引出しを閉止した電子錠の施錠状態を示している。
図8】連動部材を示す要部拡大斜視図であり、(a)は電子錠の施錠状態を、(b)は電子錠の解錠状態を示している。
図9】引出しを閉止した電子錠の施錠状態を示す縦断面右側面概略図である。
図10】引出しを閉止した電子錠の解錠状態を示す縦断面右側面概略図である。
図11】電子錠の解錠状態で引出しを少し引き出した状態を示す縦断面右側面概略図である。
図12図11の位置から引出しをさらに引き出した状態を示す縦断面右側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置は、キャビネットの引出しの一つの鏡板に電池式の電子錠の認証部を備える。よって、前記鏡板内に電池を内蔵している。電池式の電子錠は、認証部、アクチュエータ、及び電池を備える。
なお「電池」は、例えばマンガン乾電池やアルカリ乾電池等のような再充電できない一次電池であってもよいし、例えば鉛蓄電池やリチウムイオン電池のような再充電できる二次電池であってもよい。
また、前記アクチュエータである、電子錠の施解錠に対応して連動部材を駆動するアクチュエータを、実施の形態1ではキャビネット本体に、実施の形態2では引出しに備えている。
以下の実施の形態に示す電池式の電子錠は、引手に隣接して認証部を備えたものである。認証部は、暗証番号をテンキー若しくはタッチパネルで入力する方式だけでなく、指紋認証方式、又は、磁気カード、LSIカード若しくはスマートフォン等から電磁的に入力する方式等であってもよい。
本明細書においては、キャビネットの引出しを引出す方向を前、引出しをキャビネット本体に収容するように押し込む方向を後とし、後方へ向かった状態で左右を定義する。
【0023】
<実施の形態1>
図1の斜視図に示すキャビネットCは、本発明の実施の形態1に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置A1を備え、左右の側板12,13、天板14及び背板15を含むキャビネット本体10と、キャビネット本体10内に収容される上下3段の引出し11A,11B,11Cを有する。
引出し11A,11B,11Cは、鏡板F,…に引手9,…を備え、最上段の引出し11Aは、引手9に隣接した認証部Pを有する、電池式の電子錠Bを備える。
キャビネット本体10は、左右の側板12,13の内側で昇降可能に支持された左右の昇降体E1,E2,E3,E4を備え、図1のように左右のロック体5,5が最上位置の左右の昇降体E1,E1の上昇動作を阻止している状態では、引出し11A,11B,11Cは一括してロックされるので、引出し11A,11B,11Cを引き出すことができない。
なお、昇降体E1〜E4を左右の側板12,13の内側の一方にみに設け、その昇降体E1〜E4に対応させて、一つのロック体5のみを設けた構成であってもよい。
【0024】
図1の斜視図、並びに図2(a)及び図2(b)の要部拡大斜視図に示すように、キャビネット本体10は、左右の昇降体E1,E1の上方で左右方向軸まわりに回動する左右のロック体5,5、左右のロック体5,5を連結する、前記左右方向軸となる連結杆4、連結杆4の左右方向中央に固定された歯車3からなる連動部材D1を備える。
また、キャビネット本体10は、電子錠Bの認証が成功した解錠時ULに作動して連動部材D1を駆動するアクチュエータM1を備える。
アクチュエータM1は、例えば付勢手段である戻しばねを備えて前後方向に往復直線運動するプランジャ型ソレノイドであり、プランジャと一体に動作する操作体1Aの歯部2が歯車3に噛合する。
このような歯部2及び歯車3からなるラックアンドピニオンにより、軽い力で確実に動力伝達を行うことができる。
【0025】
オールロック装置A1の連動部材D1は、電子錠Bの施錠時Lには、図2(a)の状態になる。すなわち、連結杆4に固定された歯車3がアクチュエータM1の操作体1Aの歯部2に噛合した状態で、連結杆4の左右端部に固定されたロック体5,5は下方に垂下して、左右の昇降体E1,E1の上昇動作を阻止する。
それにより、オールロック装置A1は、引出し11A,11B,11Cを一括してロックしたオールロック状態となる。
【0026】
オールロック装置A1の連動部材D1は、電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、図2(b)の状態になる。すなわち、アクチュエータM1が駆動され、そのプランジャが前方へ吸引されるので、操作体1Aが図2(a)の位置から図2(a)中の矢印のように前方へ図2(b)の位置まで引き込まれる。操作体1Aの歯部2に噛合した歯車3が回動することから連結杆4も回動し、連結杆4を回動軸とする左右のロック体5,5が後方へ回動する。
それにより、オールロック装置A1は、左右の昇降体E1,E1が上昇可能なロック解除状態となる。
【0027】
次に、主に図3ないし図6の縦断面右側面概略図を参照して、本発明の実施の形態1に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置A1の動作の詳細について説明する。
図2(a)及び図3に示す引出しを閉止した電子錠Bの施錠状態Lでは、ロック体5が下方に垂下して昇降体E1の上昇動作を阻止するため前記オールロック状態となる。
この状態では、引出し11A側の通電端子16Aが、圧縮コイルばね18により、キャビネット本体10側の通電端子16Bに圧接されているので、電子錠Bの電池からケーブル17A、通電端子16A、通電端子16B及びケーブル17Bを通して、アクチュエータM1へ電力を供給可能な状態となっている。
具体的には、複数の引出しのうち最上段の引出し11Aの鏡板Fの上部後方に通電端子16Aを備え、キャビネット本体10の上部(天板14の前面)に、引出し11Aの通電端子16Aに対向する通電端子16Bを設けている。それにより、最上段の引出し11Aを閉止した際には、引出し11Aの通電端子16Aがキャビネット本体10の通電端子16Bに当接する。
【0028】
図2(b)及び図4に示す電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、図中矢印のように電池から、ケーブル17A、通電端子16A、通電端子16B及びケーブル17Bを通してアクチュエータM1へ電力が供給され、アクチュエータM1が駆動される。それにより、前記のとおりロック体5が後方へ回動するので、昇降体E1が上昇可能なロック解除状態となる。
【0029】
電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、アクチュエータM1への電力供給が所定時間のみ行われ、その所定時間内は前記ロック解除状態であるので、図5に示すように、引出し11Aを引き出すことができる。すなわち、引出し11Aの移動に伴い、操作片L1により図中矢印H1のように昇降体E1が上方へ移動するとともに図中矢印H2のように昇降体E2が下方へ移動する。それにより、引出し11Aの胴板GのストライカS1が昇降体E1,E2の間を通過できるので、引出し11Aを引き出すことができる。
【0030】
なお、図1に示す中段及び下段の引出し11B,11Cも、前記ロック解除状態において同様に引き出すことができる。
すなわち、中段の引出し11Bを引き出す際には、引出し11Bの移動に伴い、操作片L2により昇降体E2が上方へ移動するとともに昇降体E3が下方へ移動する。それにより、引出し11Bの胴板GのストライカS2が昇降体E2,E3の間を通過できるので、引出し11Bを引き出すことができる。
また、下段の引出し11Cを引き出す際には、引出し11Cの移動に伴い、操作片L3により昇降体E3が上方へ移動するとともに昇降体E4が下方へ移動する。それにより、引出し11Cの胴板GのストライカS3が昇降体E3,E4の間を通過できるので、引出し11Cを引き出すことができる。
そして、キャビネットCの転倒を防止するため、一つの段の引出しを引き出した際には、他の全ての段の引出しの引出しが不能になる二重引出し防止機能を有する。
【0031】
引出し11Aを引き出した図6に示す状態では、通電端子16Aと通電端子16Bとが離間しているのでアクチュエータM1への電力供給は遮断されており、アクチュエータM1の操作体1Aは、図示しない付勢手段である戻しばねにより図2(a)及び図3に示す状態まで戻ろうとする。よって、ロック体5も図2(a)及び図3に示す状態まで戻ろうとするが、図6に示すようにロック体5はその前面が昇降体E1の上端部に当接して静止した状態になる。
このように引出し11Aを引き出した状態から、引出し11Aを閉止すると、操作片L1が昇降体E1,E2の間から抜けて、昇降体E1が下降し昇降体E2が上昇した図3に示す状態になる。すなわち、引出し11Aを閉止することにより、ロック体5が下方に垂下して昇降体E1の上昇動作を阻止した前記オールロック状態に自動的に復帰する。
【0032】
以上のような実施の形態1の構成によれば、キャビネット本体10の側板12,13の内側で昇降可能に支持された昇降体E1〜E4の上昇動作をロック体5により阻止することにより、引出し11A,11B,11Cを一括してロックしたオールロック状態となり、昇降体E1〜E4の上昇動作を阻止しないようにロック体5が移動することにより引出し11A,11B,11Cを引出すことができる。
よって、昇降体E1〜E4が上昇可能なロック解除状態にするための動作、及び前記オールロック状態にするための動作が確実であり、前記動作の信頼性が高くなる。
その上、上下複数段の引出し11A,11B,11Cを一括してロックできるオールロック装置A1を利用し、かつ付勢手段により前記オールロック状態とし、電子錠Bの認証成功時のみアクチュエータM1を作動させる。
よって、電子錠Bによりセキュリティを向上させながら製造コストの上昇を抑制できるとともに、省電力化を図ることができる。
【0033】
以上の説明においては、引出し11A側の電池からキャビネット本体10側のアクチュエータM1への給電を引出し11A側の通電端子16Aをキャビネット本体10側の通電端子16Bに圧接することにより行う例を示したが、このような接触給電ではなく、前記給電を電磁誘導方式や電波方式等による非接触給電で行ってもよい。あるいは、キャビネット本体10側のアクチュエータM1と引出し11A側の電池とをケーブルにより常時接続した状態とし、ケーブルベア等で保護しながら弛ませることにより引出し11Aを開閉可能に構成してもよい。
【0034】
また、以上の実施の形態1のように、付勢手段である戻しばねを備えて往復直線運動するプランジャ型ソレノイドであるアクチュエータM1をキャビネット本体10に備える構成において、連動部材D1及びロック体5を備えないようにしてもよい。
すわわち、アクチュエータM1を昇降体E1〜E4が上昇する動作に対し直交する方向(水平方向)に作動するように、操作体1Aを昇降体E1の上方で進退するように配置し、電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、アクチュエータM1への通電に基づくプランジャの吸引による操作体1Aの退出により前記ロック解除状態にし、解錠時UL以外には、アクチュエータM1へ非通電であるので、戻しばねによる操作体1Aの進入により昇降体E1〜E4の上昇を阻止するようにする。
ここで、昇降体E1〜E4を左右の側板12,13の内側の一方にみに設け、一つの認証部Pと電池に対し、1つのアクチュエータM1で左右一方に設けた昇降体E1〜E4を規制してもよく、昇降体E1〜E4を左右の側板12,13の内側の両方に設け、一つの認証部Pと電池に対し、2つのアクチュエータM1,M1を同時に作動することで左右の昇降体E1〜E4の両方を規制するようにしてもよい。
このような構成によれば、連動部材D1及びロック体5を備えないので、製造コストを低減できるとともに、アクチュエータM1の作動力を非常に弱くできるので、より一層省電力化を図ることができる。
【0035】
<実施の形態2>
図7の斜視図に示すキャビネットCは、本発明の実施の形態2に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置A2を備えたものである。
実施の形態2の図7ないし図12において、実施の形態1の図1ないし図6と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0036】
図7の斜視図、並びに図8(a)及び図8(b)の要部拡大斜視図に示すように、キャビネット本体10は、左右の昇降体E1,E1の上方で左右方向軸まわりに回動する左右のロック体5,5、左右のロック体5,5を連結する、前記左右方向軸となる連結杆4、連結杆4の左右方向中央に固定された歯車3、歯車3に噛合する歯車8、歯車8に噛合する歯部7Cを有する上下方向へスライド可能な直動体7からなる連動部材D2を備える。
また、図9の縦断面右側面概略図に示すように、引出し11Aは、電子錠Bの認証が成功した解錠時ULに作動して連動部材D2を駆動するアクチュエータM2を備える。
アクチュエータM2は、例えば付勢手段である戻しばねを備えて上下方向に往復直線運動するプランジャ型ソレノイドであり、プランジャと一体に動作する操作体1Bの鉤状部6(例えば図8(a)参照)が直動体7の係合部7A,7Bに係合する。
連動部材D2において、直動体7の歯部7Cと歯車8からなるラックアンドピニオンにより、軽い力で確実に動力伝達を行うことができる。
【0037】
オールロック装置A2の連動部材D2は、電子錠Bの施錠時Lには、図8(a)の状態になる。すなわち、連結杆4に固定された歯車3が回動軸8Aまわりに回動する歯車8に噛合し、歯車8が直動体7の歯部7Cに噛合し、直動体7の上下の係合部7A,7Bの間に、アクチュエータM2の操作体1Bの鉤状部6が位置した状態で、連結杆4の左右端部に固定されたロック体5,5は下方に垂下して、左右の昇降体E1,E1の上昇動作を阻止する。
それにより、オールロック装置A2は、引出し11A,11B,11Cを一括してロックしたオールロック状態となる。
【0038】
オールロック装置A2の連動部材D2は、電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、図8(b)の状態になる。すなわち、アクチュエータM2が駆動され、そのプランジャが下方へ吸引されるので、操作体1Bが図8(a)の位置から図8(a)中の矢印のように下方へ図8(b)の位置まで引き込まれる。直動体7の係合部7Aが操作体1Bの鉤状部6で下方へ引かれるので直動体7が下方へ移動し、歯部7Cに噛合した歯車8、及び歯車8に噛合した歯車3が回動することから連結杆4も回動し、連結杆4を回動軸とする左右のロック体5,5が前方へ回動する。
それにより、オールロック装置A2は、左右の昇降体E1,E1が上昇可能なロック解除状態となる。
【0039】
次に、主に図9ないし図12の縦断面右側面概略図を参照して、本発明の実施の形態2に係るキャビネットにおける引出しのオールロック装置A2の動作の詳細について説明する。
図8(a)及び図9に示す引出しを閉止した電子錠Bの施錠状態Lでは、ロック体5が下方に垂下して昇降体E1の上昇動作を阻止するため前記オールロック状態となる。
この状態では、アクチュエータM2の操作体1Bの鉤状部6が直動体7の係合部7Aに係合している。
【0040】
図8(b)及び図10に示す電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、図中矢印のように電池から、ケーブル19を通してアクチュエータM2へ電力が供給され、アクチュエータM2が駆動される。それにより、前記のとおりロック体5が前方へ回動するので、昇降体E1が上昇可能なロック解除状態となる。
【0041】
電子錠Bの認証が成功した解錠時ULには、アクチュエータM2への電力供給が所定時間のみ行われ、その所定時間内は前記ロック解除状態であるので、図11に示すように、引出し11Aを引き出すことができる。すなわち、引出し11Aの移動に伴い、操作片L1により図中矢印H1のように昇降体E1が上方へ移動するとともに図中矢印H2のように昇降体E2が下方へ移動する。それにより、引出し11Aの胴板GのストライカS1が昇降体E1,E2の間を通過できるので、引出し11Aを引き出すことができる。
なお、図7に示す中段及び下段の引出し11B,11Cも、前記ロック解除状態において同様に引き出すことができる。
【0042】
図11のように引出し11Aを引出した状態、及び図12のように引出し11Aをさらに引き出した状態等、引出し11Aを引き出してアクチュエータM2の操作体1Bの鉤状部6が直動体7の係合部7A,7Bから離間した状態で、前記所定時間が経過すると、引出し11A側に位置するアクチュエータM2の操作体1Bは、図示しない付勢手段である戻しばねにより図9に示す状態まで戻ろうとする。
しかし、引出し11AのアクチュエータM2の上方に備えた、例えば略直立した状態から後方へ倒れた状態との間を回動可能な、後方へ付勢された操作体押圧片20が、操作体1Bを上方から押圧して下方へ押し下げるので、操作体1Bは、上方へ移動した図9の位置にはならず、図10のようにプランジャを吸引して操作体1Bが下方へ移動したのと同じ位置である図11及び図12の位置に保持される。
よって、引出し11Aを引き出した状態から閉止する際に、アクチュエータM2の操作体1Bが直動体7の係合部7Bに衝突することがない。
なお、電池式の電子錠BのアクチュエータM2の作動力が弱いことから、戻しばねのばね定数は小さいので、図10及び図11の位置に操作体1Bを保持するための操作体押圧片20の押圧力は小さくて済む。
【0043】
図12のように引出し11Aを引き出した状態から、引出し11Aを閉止すると、操作片L1が昇降体E1,E2の間から抜けて、昇降体E1が下降し昇降体E2が上昇した図9に示す状態になる。
すなわち、操作体押圧片20は、キャビネット本体10の天板14の前面に当接して前方へ押されるので、図9のように略直立した状態になり、操作体1Bから外れる。
よって、アクチュエータM2の操作体1Bは戻しばねにより図9のように上方へ伸びた位置に復帰し、それに伴い、操作体1Bにより係合部7Bが押し上げられた直動体7は図9の位置に復帰する。そして、アクチュエータM2の操作体1Bの鉤状部6は、直動体7の係合部7Aの上側に位置するように、係合部7Aに係合する(図8(a)も参照)。
そして、直動体7が図12の位置から図9の位置まで上昇することから、直動体7の歯部7Cに噛合する歯車8、及び歯車8に噛合する歯車3が回動する。それにより、連結杆4も回動し、連結杆4を回動軸とするロック体5が回動して下方へ垂下するので、昇降体E1の上昇動作を阻止した前記オールロック状態に自動的に復帰する。
【0044】
以上のような実施の形態2の構成によっても、実施の形態1の構成と同様の作用効果を奏する。
その上、アクチュエータM2を電池とともに引出し11Aに備えているので、電池からアクチュエータM2への給電の信頼性が高くなる。
【0045】
以上の説明においては、キャビネットの引出しの一つに備えた電子錠の電源が電池である例を示した。
本発明により省電力化を図ることができるので、電子錠の電源は、電池に限定されるものではなく、例えば商用電源や自家発電設備等の電源であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B 操作体
2 歯部
3 歯車
4 連結杆
5 ロック体
6 鉤状部
7 直動体
7A,7B 係合部
7C 歯部
8 歯車
8A 回動軸
9 引手
10 キャビネット本体
11A,11B,11C 引出し
12,13 側板
14 天板
15 背板
16A,16B 通電端子
17A,17B ケーブル
18 圧縮コイルばね
19 ケーブル
20 操作体押圧片
A1,A2 オールロック装置
B 電池式の電子錠
C キャビネット
D1,D2 連動部材
E1,E2,E3,E4 昇降体
F 鏡板
G 胴板
L 電子錠の施錠状態
L1,L2,L3 操作片
M1,M2 アクチュエータ
P 認証部
S1,S2,S3 ストライカ
UL 電子錠の解錠状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12