(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電設備では、石炭燃焼に伴い窒素酸化物が発生する。大気汚染防止法等の規制により、このような窒素酸化物の排出量は一定水準以下に抑える必要がある。このため、窒素酸化物を還元分解するための脱硝装置が設置されている。
脱硝装置は、脱硝触媒が充てんされており、アンモニア(ガス)を共存させることで、高温下で還元反応を発現している。
【0003】
脱硝触媒は、使用を続けていくと流れる空気に含まれる石炭灰によって脱硝触媒の貫通孔が閉塞される場合がある。その要因の一つとして、脱硝触媒の各層間に設置されている補強用の梁に石炭灰が堆積し、一定量堆積すると一気に脱硝触媒に落下する現象があげられる。
【0004】
石炭灰が一気に落下すると、石炭灰が塊となって貫通孔を閉塞する。貫通孔が閉塞すると、脱硝装置の入口と出口の差圧が上昇し、最終的には、石炭火力発電設備を停止した清掃が必要となる。また、貫通孔の一部が塞がれると、排ガスと脱硝触媒との接触面積が少なくなり、脱硝装置の性能が低下するとともに脱硝触媒の劣化も促進される。さらに、閉塞していない貫通孔へ排ガスが流れ込むため、流速が増大し、脱硝触媒が部分的に摩耗する。
【0005】
このため、これらの石炭灰の除去が必要であり、このような石炭灰除去としては、石炭火力発電設備の運転中に脱硝触媒へ直接空気(または蒸気)を吹き付けて堆積した石炭灰を取り除く方法がある。しかしこれらは触媒の摩耗や破損の恐れがある。また、石炭火力発電設備を停止し、プロベスタ―で石炭灰を吸引する清掃方法や空気で石炭灰を除去するの清掃方法等もある(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態の脱硝装置160が使用される石炭火力発電設備100の構成図である。
【0018】
石炭火力発電設備100は、
図1に示すように、石炭バンカ120と、給炭機125と、微粉炭機130と、燃焼ボイラ140と、燃焼ボイラ140の下流側に設けられた排気通路150と、この排気通路150に設けられた脱硝装置160、空気予熱器170、電気集塵装置190、ガスヒータ(熱回収用)180、誘引通風機210、脱硫装置220、ガスヒータ(再加熱用)230、脱硫通風機240、及び煙突250と、を備える。
【0019】
石炭バンカ120は、石炭サイロ(図示しない)から運炭設備によって供給された石炭を貯蔵する。給炭機125は、石炭バンカ120から供給された石炭を所定の供給スピードで微粉炭機130に供給する。
微粉炭機130は、給炭機125から供給された石炭を粉砕して微粉炭を製造する。微粉炭機130においては、石炭は、平均粒径60μm〜80μmに粉砕される。また、微粉炭の粒度分布は、150μm以上が10〜15%、75μm〜150μmが30〜40%、75μm未満が45〜60%程度となる。
微粉炭機130としては、ローラミル、チューブミル、ボールミル、ビータミル、インペラーミル等が用いられる。
【0020】
燃焼ボイラ140は、微粉炭機130から供給された微粉炭を、強制的に供給された空気と共に燃焼する。微粉炭を燃焼することによりクリンカアッシュ及びフライアッシュなどの石炭灰が生成されると共に、排ガスが発生する。
尚、クリンカアッシュとは、微粉炭を燃焼させた場合に発生する石炭灰のうち、燃焼ボイラ140の底部に落下した塊状の石炭灰をいう。また、フライアッシュとは、微粉炭を燃焼させた場合に発生する石炭灰のうち、燃焼ガス(排ガス)と共に吹き上げられて排気通路150側に流通する程度の粒径(粒径200μm程度以下)の球状の石炭灰をいう。
【0021】
排気通路150は、燃焼ボイラ140の下流側に配置され、燃焼ボイラ140で発生した排ガス及び生成された石炭灰を流通させる。この排気通路150には、上述のように、脱硝装置160、空気予熱器170、ガスヒータ(熱回収用)180、電気集塵装置190、誘引通風機210、脱硫装置220と、ガスヒータ(再加熱用)230、脱硫通風機240、及び煙突250が配置される。
【0022】
脱硝装置160は、後述するが、排ガス中の窒素酸化物を除去する。本実施形態では、脱硝装置160は、比較的高温(300℃〜400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を無害な窒素と水蒸気に分解する、いわゆる乾式アンモニア接触還元法により排ガス中の窒素酸化物を除去する。
【0023】
空気予熱器170は、排気通路150における脱硝装置160の下流側に配置される。空気予熱器170は、脱硝装置160を通過した排ガスと押込式通風機75から送り込まれる燃焼用空気とを熱交換させ、排ガスを冷却すると共に、燃焼用空気を加熱する。
【0024】
ガスヒータ180は、排気通路150における空気予熱器170の下流側に配置される。ガスヒータ180には、空気予熱器170において熱回収された排ガスが供給される。ガスヒータ180は、排ガスから更に熱回収する。
【0025】
電気集塵装置190は、排気通路150におけるガスヒータ180の下流側に配置される。電気集塵装置190には、ガスヒータ180において熱回収された排ガスが供給される。電気集塵装置190は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)を収集する装置である。電気集塵装置190において捕集されるフライアッシュは、フライアッシュ回収装置126に回収される。
【0026】
誘引通風機210は、排気通路150における電気集塵装置190の下流側に配置される。誘引通風機210は、電気集塵装置190においてフライアッシュが除去された排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0027】
脱硫装置220は、排気通路150における誘引通風機210の下流側に配置される。脱硫装置220には、誘引通風機210から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置220は、排ガスに石灰石と水との混合液を吹き付けることにより、排ガスに含有されている硫黄酸化物を混合液に吸収させて脱硫石膏スラリーを生成させ、この脱硫石膏スラリーを脱水処理することで脱硫石膏を生成する。脱硫装置220において生成された脱硫石膏は、この装置に接続された脱硫石膏回収装置222に回収される。
【0028】
ガスヒータ230は、排気通路150における脱硫装置220の下流側に配置される。ガスヒータ230には、脱硫装置220において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。ガスヒータ230は、排ガスを加熱する。ガスヒータ180及びガスヒータ230は、排気通路150における、空気予熱器170と電気集塵装置190との間を流通する排ガスと、脱硫装置220と脱硫通風機240との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガスヒータとして構成してもよい。
【0029】
脱硫通風機240は、排気通路150におけるガスヒータ230の下流側に配置される。脱硫通風機240は、ガスヒータ230において加熱された排ガスを一次側から取り込んで二次側に送り出す。
煙突250は、排気通路150における脱硫通風機240の下流側に配置される。煙突250には、ガスヒータ230で加熱された排ガスが導入される。煙突250は、排ガスを排出する。
【0030】
図2は、上記の脱硝装置160の構成図を示す。
脱硝装置160は、
図2に示すように、筐体61と、この筐体61の内部に配置される複数段の脱硝触媒層62とを備える。
【0031】
筐体61は、脱硝装置160における脱硝反応の場となり、排ガスの入口側開口部63と出口側開口部64とが設けられている。排ガスは、図中矢印Aで示すように入口側開口部63から出口側開口部64へと流れる。脱硝触媒層62は、図示するように、例として、複数のハニカム型の脱硝触媒622を含む。
【0032】
脱硝触媒622は、長手方向に延びる複数の貫通孔624が形成された長尺状(直方体状)である。複数の脱硝触媒622は、貫通孔624の延びる方向が排ガスの流路Aに沿うように配置される。本実施形態では、複数の脱硝触媒622は、ケーシング621に収容された状態で筐体61の内部に配置されている。
【0033】
そして、これらの脱硝触媒層62の間には、隙間65が設けられ、この隙間65には脱硝装置160の補強用のための梁部材66が設けられている。なお、梁部材66は
図2に示す構造に限るものではなく、
図2に示す形状は一例である。
脱硝装置160は、燃焼ボイラ140の下流側に配置され、燃焼ボイラ140で発生した排ガス及び生成された石炭灰を流通させる。このため、石炭火力発電設備100の稼働時において、脱硝触媒622の梁部材66上に石炭灰(堆積物)が堆積する。
この堆積した石炭灰は、適宜除去しないと塊となって脱硝触媒622の貫通孔624に落下し、貫通孔624を閉塞する可能性がある。貫通孔624が閉塞されると脱硝触媒622の脱硝機能が低下する。そこで、本実施形態では、貫通孔624の閉塞を防止する閉塞防止構造が設けられている。
【0034】
(第1実施形態)
図3は本発明の第1実施形態の閉塞防止構造(堆積物除去構造)10を説明する図である。図示するように、筐体61の側壁部67には、挿通孔68が設けられている。挿通孔68には、筒部材11が摺動可能に貫通している。
筒部材11における、筐体61の内部の部分は、梁部材66の上部(排ガスの流れの上流側)において、梁部材66に沿って延びている。筒部材11の先端には、梁部材66側(下流側)に突出した空気吹き出し部12が設けられている。
また、筒部材11における、筐体61の外部の部分には、筒部材11を、図中矢印で示す梁部材66の長さ方向B(排ガスの流入方向に直交する方向)に伸縮させるエアシリンダ等の伸縮機構13と、筒部材11に空気を送風するエアポンプ等の送風機構14が取り付けられている。
【0035】
石炭火力発電設備100の運転中において、梁部材66の上流側には、石炭灰が堆積してくる。そこで、石炭灰の堆積量が多くならないうちに、筒部材11を駆動する。すなわち、筒部材11の先端に設けられた空気吹き出し部12から空気を吹き出す。そうすると、空気は、梁部材66における、石炭灰が堆積している上流側に吹き出されるので、梁部材66に堆積した石炭灰が吹き飛ばされて、脱硝触媒622の貫通孔624に落下する。
【0036】
そして、筒部材11が伸縮機構13によって、方向Bに伸縮可能されると、空気吹き出し部12が梁部材66に沿って移動する。したがって梁部材66において方向Bに順次、堆積した石炭灰が吹き飛ばされていく。
なお、伸縮機構13による筒部材11の伸縮は、方向Bに沿って一定の速度で行って、梁部材66の全体に均一に空気が噴射されるようにしてもよく、また梁部材66において石炭灰が堆積しやすい箇所に重点的に噴射されるようにしてもよい。石炭灰が堆積しやすい箇所とは梁部材66の形状に対応した、例えば排ガスの流れに対して垂直方向の面積が大きい箇所等である。
【0037】
本実施形態によると、伸縮機構13と送風機構14とを適宜作動させて、石炭火力発電設備100を停止することなく石炭灰を落下させることができる。したがって、石炭火力発電設備100を停止する作業と比べて頻繁に行うことが可能であるので、石炭灰の堆積量があまり多量にならないうちに石炭灰を落下させることができる。
石炭灰の堆積量が少ないと、落下した石炭灰は脱硝触媒622の貫通孔624を通り抜けることが可能であり、貫通孔624が閉塞されることがない。したがって、脱硝触媒622の貫通孔624が閉塞されて脱硝触媒622の脱硝機能が低下することがない。
【0038】
また、貫通孔624の一部が塞がれると、排ガスは閉塞していない貫通孔624に流れ込むため、流速が増大し脱硝触媒622が摩耗する可能性があるが、貫通孔624が閉塞されないのでこのようなことがない。
【0039】
そして、直接、脱硝触媒622に空気(または蒸気)を吹き付けることなく貫通孔624の閉塞を防止できるので、脱硝触媒622を摩耗したり破損したりすることがない。
【0040】
さらに、本実施形態の脱硝装置160は、石炭火力発電設備100の運転中に石炭灰除去が可能であるので、計画外の設備停止や石炭灰清掃作業の可能性が減少し、コスト削減につながる。
【0041】
なお、閉塞防止構造10は、石炭火力発電設備100の運転中に連続して稼働してもよく、また一定の時間ごとに稼働してもよい。
【0042】
(第2実施形態)
図4は本発明の第2実施形態の閉塞防止構造(堆積物除去構造)20を説明する図であり、(a)は概念図、(b)は(a)のC−C線に沿った、空気吹き出し孔266Aを含む部分の断面図である。図中、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態では筒部材21における、筐体61の内部の部分は、梁部材266の下流側において、梁部材266に沿って延びている。筒部材21の先端には、梁部材266側(上流側)に突出した空気吹き出し部22が設けられている。
そして、本実施形態の梁部材266は、複数の空気吹き出し孔266Aが設けられている。空気吹き出し孔266Aは、
図4(b)に示すように梁部材266の内側から空気吹き出し孔266Aを通って外側に流れる空気が下方に向かうように斜めにカットされ、梁部材の淵に沿って空気が流れるようになっている。
【0043】
本実施形態においても石炭火力発電設備100の運転中において、梁部材266の上流側には、石炭灰が堆積してくる。そこで、石炭灰の堆積量が多くならないうちに、筒部材21を駆動する。すなわち、筒部材21の先端に設けられた空気吹き出し部22から空気を吹き出す。そうすると、梁部材266の内側から空気吹き出し孔266Aを通って外側に流れ、その流れ出た空気は、排ガスの流れによって方向Aに方向転換される。
このとき、梁部材266に堆積していた石炭灰も、空気の流れる方向Aに沿って下流方向に落とされて、脱硝触媒622の貫通孔624に落下する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を有する。
【0044】
(第3実施形態)
図5は本発明の第3実施形態の閉塞防止構造(堆積物除去構造)30を説明する図である。
本実施形態では梁部材366は、駆動部31に連結されており、駆動部31によって方向Aと、その方向Aと方向Bとに振動可能である。
【0045】
本実施形態においても石炭火力発電設備100の運転中において、梁部材366の上流側には、石炭灰が堆積してくる。そこで、石炭灰の堆積量が多くならないうちに、駆動部31を起動する。そうすると、梁部材366が方向Aと方向Bとに振動を開始する。この振動によって梁部材366の上流側に堆積していた石炭灰が振り落されて、脱硝触媒622の貫通孔624に落下する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を有する。
【0046】
(第4実施形態)
図6は本発明の第4実施形態の閉塞防止構造(堆積物除去構造)40を説明する図である。
本実施形態では梁部材466が、例えば円筒形状で、梁部材466の外周に、例えば円筒形状の外筒466Bが配置されている。外筒466Bは駆動部41に連結されており、駆動部41によって回転可能である。
【0047】
本実施形態においても石炭火力発電設備100の運転中において外筒466Bの上流側には、石炭灰が堆積してくる。そこで、石炭灰の堆積量が多くならないうちに、駆動部41を起動する。そうすると、外筒466Bが回転する。この回転によって外筒466Bに堆積した石炭灰が振り落されて、脱硝触媒622の貫通孔624に落下する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を有する。
【0048】
(第5実施形態)
図7は本発明の第5実施形態の閉塞防止構造(堆積物除去構造)50を説明する図である。
本実施形態で閉塞防止構造50は、脱硝触媒層62に設けられている。閉塞防止構造50は脱硝触媒層62を方向Aと方向Bとに振動可能な駆動部51である。
【0049】
本実施形態において、石炭火力発電設備100の運転中において、梁部材の上流側には、石炭灰が堆積してくる。そこで、石炭灰の堆積量が多くならないうちに、駆動部51を起動する。そうすると、脱硝触媒層62が方向Aと方向Bとに振動を開始する。この振動によって脱硝触媒の梁部材の上流側に堆積した石炭灰が振り落されて、脱硝触媒の貫通孔に落下する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を有する。
【0050】
(第6実施形態)
図8は本発明の第6実施形態の閉塞防止構造70を説明する図である。
図示するように、筐体61の側壁部67には、挿通孔68が設けられている。挿通孔68には、可動アーム71が摺動可能に貫通している。可動アーム71における、筐体61の内部の部分は、脱硝触媒層62の上部を脱硝触媒層62に沿って延びている。可動アーム71の先端には、脱硝触媒層62側(下流側)に突出した超音波システム72が取り付けられている。
超音波システム72は、超音波センサーと、超音波発生器とを含む。また、可動アーム71における、筐体61の外部の部分には、可動アーム71を、方向Bに移動させる移動部73と、超音波システム72を駆動する駆動部74が取り付けられている。
【0051】
石炭火力発電設備100の運転中において、梁部材に石炭灰が堆積し、一定量堆積した後、一気に脱硝触媒622に落下する場合がある。そうすると、脱硝触媒層62の脱硝触媒の貫通孔が閉塞される可能性がある。
そこで、本実施形態では、移動部73及び駆動部74によって、超音波システム72を駆動する。可動アーム71の先端に設けられた超音波システム72は、脱硝触媒層62に沿って方向B移動しつつ、超音波センサーによって、脱硝触媒層62における貫通孔の閉塞箇所を探し出す。そして、閉塞箇所が発見されると超音波発生器より超音波を発生し、貫通孔を閉塞している石炭灰の塊を分解し、貫通孔の閉塞を解消する。
本実施形態においても石炭火力発電設備100の運転中に石炭灰除去が可能であるので、計画外のシステム停止や石炭灰清掃作業の可能性が減少し、コスト削減につながる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明はこれら限定されず、例えば上記の実施形態の閉塞防止構造を複数組み合わせて触媒装置に設けてもよい。