(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
供給水に酸化系殺菌剤を添加する殺菌剤添加装置を更に備え、前記制御部は、前記逆浸透膜モジュールの逆浸透膜が劣化していると判断した場合には、前記酸化系殺菌剤の添加量を変更するように、前記殺菌剤添加装置を制御する、請求項4に記載の水処理システム。
供給水にバイオフィルム除去剤を添加する除去剤添加装置を更に備え、前記制御部は、前記バイオフィルムが発生していると判断した場合には、前記バイオフィルム除去剤を供給水に添加するように、前記除去剤添加装置を制御する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の水処理システム。
供給水に分散剤を添加する分散剤添加装置を更に備え、前記制御部は、前記カルシウムスケールが発生していると判断した場合には、前記分散剤を添加するように、前記分散剤添加装置を制御する、請求項1に記載の水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。
【0022】
〔水処理システムの構成〕
図1に示すように、水処理システム1は、殺菌剤添加装置3と、除去剤添加装置4と、分散剤添加装置5と、圧力損失検出部6A、6B、及び6Cと、溶質濃度検出部7A、7B、及び7Cと、加圧ポンプ8と、インバータ9と、逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)10と、電気伝導度除去率算出部11と、吸光度検出装置12と、蛍光光度計13と、定流量弁14と、比例制御排水弁15と、流量センサFMと、制御部30と、を備える。なお、圧力損失検出部6A、6B、及び6Cに共通する説明を行う場合には、「圧力損失検出部6」と呼ぶことがある。同様に、溶質濃度検出部7A、7B、及び7Cに共通する説明を行う場合には、「溶質濃度検出部7」と呼ぶことがある。また、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0023】
水処理システム1は、ラインとして、供給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、濃縮排水ラインL5と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、その由来(出所)やその水質によらず、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4を流通する水を、「供給水」ともいい、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5を流通する水を、「濃縮水」ともいう。
【0024】
供給水ラインL1は、供給水W11〜W15を逆浸透膜モジュール10に向けて供給するラインである。供給水ラインL1は、上流側から下流側に向けて、第1供給水ラインL11と、第2供給水ラインL12とを有する。
【0025】
第1供給水ラインL11の上流側の端部は、原水W11の水源2に接続されている。第1供給水ラインL11の下流側の端部は、接続部J1において、第2供給水ラインL12及び循環水ラインL4に接続されている。
【0026】
第2供給水ラインL12の上流側の端部は、接続部J1に接続されている。第2供給水ラインL12の下流側の端部は、逆浸透膜モジュール10の一次側入口ポートに接続されている。第2供給水ラインL12には、殺菌剤添加装置3、除去剤添加装置4、分散剤添加装置5、圧力損失検出部6A、溶質濃度検出部7A、及び、加圧ポンプ8が、上流側から下流側に向けてこの順で設けられる。
【0027】
殺菌剤添加装置3は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの1つ以上の供給水が流通するラインに、殺菌剤、とりわけ酸化系殺菌剤を添加する装置である。本実施形態においては、殺菌剤添加装置3は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W12に殺菌剤を添加することにより、供給水W13を得る装置である。殺菌剤添加装置3は、制御部30と電気的に接続されている。なお、供給水W12に対する殺菌剤の添加量や供給水W12の水質によらず、殺菌剤添加装置3の殺菌剤添加位置よりも下流側で、除去剤添加装置4の除去剤添加位置よりも上流側の供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する水を「供給水W13」ともいう。本実施形態においては、殺菌剤添加装置3は、逆浸透膜モジュール10におけるバイオフィルムの析出を抑制するために、供給水W12に殺菌剤を添加する。
【0028】
除去剤添加装置4は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの1つ以上の供給水が流通するラインに、バイオフィルム除去剤を添加する装置である。本実施形態においては、除去剤添加装置4は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W13に除去剤を添加することにより、供給水W14を得る装置である。除去剤添加装置4は、制御部30と電気的に接続されている。なお、供給水W13に対するバイオフィルム除去剤の添加量や供給水W13の水質によらず、除去剤添加装置4の除去剤添加位置よりも下流側で、分散剤添加装置5の分散剤添加位置よりも上流側の供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する水を「供給水W14」ともいう。本実施形態においては、除去剤添加装置4は、逆浸透膜モジュール10におけるバイオフィルムを除去するために、供給水W13に除去剤を添加する。
【0029】
分散剤添加装置5は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの1つ以上の供給水が流通するラインに、分散剤を添加する装置である。本実施形態においては、分散剤添加装置5は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W14に分散剤を添加することにより、供給水W15を得る装置である。分散剤添加装置5は、制御部30と電気的に接続されている。なお、供給水W14に対する分散剤の添加量や供給水W14の水質によらず、分散剤添加装置5の分散剤添加位置よりも下流側の供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する水を「供給水W15」ともいう。本実施形態においては、分散剤添加装置5は、逆浸透膜モジュール10における硬度系スケール、シリカ系スケール、シルトを分散するために、分散剤を添加する。
【0030】
圧力損失検出部6Aは、後述の圧力損失検出部6B及び6Cと共に用いられることにより、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と一次側出口の間、及び、一次側入口と二次側の間の圧力損失を検出する。具体的には、圧力損失検出部6Aで検出される逆浸透膜モジュール10の一次側入口における水圧と、圧力損失検出部6Bで検出される逆浸透膜モジュール10の二次側での水圧との差分を算出することにより、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と二次側の間での圧力損失(これを、以下では「第2差圧」とも呼称する)を検出する。同様に、圧力損失検出部6Aで検出される逆浸透膜モジュール10の一次側入口における水圧と、圧力損失検出部6Cで検出される逆浸透膜モジュール10の一次側出口における水圧との差分を算出することにより、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と一次側出口との間での圧力損失(これを、以下では「第1差圧」とも呼称する)を検出する。圧力損失検出部6Aは、制御部30と電気的に接続されている。
【0031】
溶質濃度検出部7Aは、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W15中に含まれる溶質の濃度を検出する。この溶質としては、例えば、シリカが挙げられる。また、溶質濃度検出部7Aは、比色式の検出方法を用いることが可能である。溶質濃度検出部7Aは、制御部30と電気的に接続されている。
【0032】
加圧ポンプ8は、供給水W15を吸入し、逆浸透膜モジュール10に向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ8には、インバータ9から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ8は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0033】
インバータ9は、加圧ポンプ8に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ9は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ9には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ9は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ8に出力する。
【0034】
供給水W15は、加圧ポンプ8を介して逆浸透膜モジュール10に供給される。また、供給水W15(及びW12、W13、W14)は、供給水W11及び循環水W40(後述)からなる。
【0035】
逆浸透膜モジュール10は、供給水W15を透過水W20と濃縮水W30とに分離する設備である。詳細には、逆浸透膜モジュール10は、加圧ポンプ8から吐出された供給水W15を、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理する設備である。逆浸透膜モジュール10は、単一又は複数の逆浸透膜エレメント(図示せず)を備える。逆浸透膜モジュール10は、これら逆浸透膜エレメントにより供給水W15を膜分離処理し、透過水W20と濃縮水W30とを製造する。
【0036】
透過水ラインL2は、逆浸透膜モジュール10で分離された透過水W20を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール10の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、貯留タンク(図示せず)に接続されている。透過水ラインL2には、圧力損失検出部6B、溶質濃度検出部7B、電気伝導度除去率算出部11と、流量センサFMとが設けられる。
【0037】
圧力損失検出部6Bは、上記のように、逆浸透膜モジュール10の二次側における水圧を検出し、この水圧の値は、圧力損失検出部6Aを用いて第2差圧を検出する際に用いられる。圧力損失検出部6Bは、制御部30と電気的に接続されている。
【0038】
溶質濃度検出部7Bは、透過水ラインL2を流通する透過水W20中に含まれる溶質の濃度を検出する。この溶質としては、例えば、シリカが挙げられる。また、溶質濃度検出部7Bは、比色式の検出方法を用いることが可能である。溶質濃度検出部7Bは、制御部30と電気的に接続されている。
【0039】
電気伝導度除去率算出部11は、透過水ラインL2を流通する透過水W20の電気伝導度を検出し、この検出値と供給水の電気伝導度とを用いて、供給水に対する透過水の電気伝導度除去率を算出する。なお、供給水の電気伝導度としては、事前に求めた値を使用してもよく、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4のいずれかに設置された電気伝導度検出部(図示せず)で検出した供給水の電気伝導度を使用してもよい。
【0040】
流量センサFMは、透過水ラインL2を流通する透過水W20の流量を検出する機器である。流量センサFMは、制御部30と電気的に接続されている。流量センサFMで検出された透過水W20の流量(以下、「検出流量値」ともいう)は、制御部30にパルス信号として送信される。
【0041】
濃縮水ラインL3は、逆浸透膜モジュール10で分離された濃縮水W30が流通するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール10の一次側出口ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、接続部J2において、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5に分岐している。また、濃縮水ラインL3には、圧力損失検出部6Cと、溶質濃度検出部7Cと、吸光度検出装置12と、蛍光光度計13とが設けられる。
【0042】
圧力損失検出部6Cは、上記のように、逆浸透膜モジュール10の一次側出口における水圧を検出し、この水圧の値は、圧力損失検出部6Aが第1差圧を検出する際に用いられる。圧力損失検出部6Cは、制御部30と電気的に接続されている。
【0043】
溶質濃度検出部7Cは、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30中に含まれる溶質の濃度を検出する。この溶質としては、例えば、シリカが挙げられる。溶質濃度検出部7Cは、制御部30と電気的に接続されている。また、溶質濃度検出部7Cは、比色式の検出方法を用いることが可能である。
【0044】
吸光度検出装置12は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの1つ以上のラインの供給水の吸光度を検出する装置である。本実施形態においては、吸光度検出装置12は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30の吸光度を検出する。吸光度検出装置12が検出する吸光度としては、例えば、E260、すなわち260nmの波長の光の吸光度が挙げられ、濃縮水W30に含まれる有機物の含有量が多いほど、260nmの波長の光の吸光度が高くなる。
【0045】
蛍光光度計13は、供給水ラインL1、濃縮水ラインL3及び循環水ラインL4のうちの1つ以上のラインの供給水に含まれる蛍光物質に励起光を照射して生成される蛍光のスペクトル及び強度を計測する装置である。本実施形態においては、蛍光光度計13は、濃縮水ラインL3を流通する供給水W30に含まれる蛍光物質に励起光を照射して生成される蛍光のスペクトル及び強度を計測する。なお、蛍光光度計13は、計測した蛍光のスペクトル及び強度に基づいて、蛍光物質の濃度を算出してもよい。
【0046】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3に接続され、供給水としての濃縮水(循環水W40)を供給水ラインL1に返送するラインである。本実施形態においては、循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30を循環水W40として、供給水ラインL1における加圧ポンプ8よりも上流側(詳細には、殺菌剤添加装置3よりも上流側)に返送(循環)させるラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、接続部J1において、供給水ラインL1に接続されている。循環水ラインL4には、定流量弁14が設けられる。
【0047】
定流量弁14は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する機器である。定流量弁14において保持される「一定流量値」とは、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を有するものを含む。定流量弁14は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。
【0048】
濃縮排水ラインL5は、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮排水W50としての濃縮水を系外へ排出するラインである。本実施形態においては、濃縮排水ラインL5は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続され、逆浸透膜モジュール10で分離された濃縮水W30を、濃縮排水W50として装置外(系外)に排出するラインである。濃縮排水ラインL5には、比例制御排水弁15が設けられる。
【0049】
比例制御排水弁15は、濃縮排水ラインL5から装置外に排出される濃縮排水W50の流量を調節する弁である。比例制御排水弁15は、制御部30と電気的に接続されている。比例制御排水弁15の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御排水弁15に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮排水W50の排水流量を調節することができる。
【0050】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0051】
制御部30は、透過水W20の流量が予め設定された目標流量値となるように、透過水W20の検出流量値(系内の物理量)をフィードバック値として、加圧ポンプ8を駆動するための駆動周波数を演算し、駆動周波数の演算値に対応する指令信号(電流値信号又は電圧値信号)をインバータ9に出力する(以下、「流量フィードバック水量制御」ともいう)流量制御部として機能する。なお、流量フィードバック水量制御における駆動周波数の演算には、例えば、速度形デジタルPIDアルゴリズムを用いることができる。
【0052】
また、制御部30は、後述の方法により判定される、逆浸透膜モジュール10における不具合に基づいて、供給水が流通するライン(供給水ラインL1)に添加される殺菌剤、除去剤、分散剤の添加量を調整するように殺菌剤添加装置3、除去剤添加装置4、分散剤添加装置5を制御する制御部として機能する。なお、制御部30が、後述の方法により判定される逆浸透膜モジュール10における不具合に基づいて、供給水が流通するラインに添加される殺菌剤の添加量を調整するように殺菌剤添加装置3を制御することを「殺菌剤添加制御」ともいう。同様に、制御部30が、上記の不具合に基づいて、供給水が流通するラインに添加される除去剤の添加量を調整するように除去剤添加装置4を制御することを「除去剤添加制御」ともいう。同様に、制御部30が、上記の不具合に基づいて、供給水が流通するラインに添加される分散剤の添加量を調整するように分散剤添加装置5を制御することを「分散剤添加制御」ともいう。
【0053】
なお、上記の水処理システム1の構成はあくまで一例であって、水処理システム1は、上記の構成要素のほかに、例えば、供給水及び濃縮水のpHを検出するpH検出器(図示せず)、供給水及び濃縮水の温度を測定する水温計(図示せず)、供給水及び濃縮水の濁度を検出する濁度検出器(図示せず)、供給水及び濃縮水の硬度を検出する硬度検出器(図示せず)、逆浸透膜モジュール10や各ラインの腐食を検出する腐食センサ(図示せず)を備えることが可能である。一方で、水処理システム1は、上記の構成要素の一部、例えば、溶質濃度検出部7Aを省略することが可能である。
【0054】
以下、逆浸透膜モジュール10におけるトラブルの原因の判定方法について詳述する。
逆浸透膜モジュール10において、逆浸透膜モジュール10が備える逆浸透膜が酸化により劣化した場合には、シリカ除去率が下降する。逆に言えば、シリカ除去率が第1閾値以下である場合には、逆浸透膜が劣化したと判定することができる。
ここで、「シリカ除去率」とは、例えば、溶質濃度検出部7Aで検出される供給水W15におけるシリカ濃度と、溶質濃度検出部7Bで検出される透過水W20におけるシリカ濃度とを用いて算出されるシリカ除去率であってもよく、あるいは、溶質濃度検出部7Cで検出される供給水W30におけるシリカ濃度と、溶質濃度検出部7Bで検出される透過水W20におけるシリカ濃度とを用いて算出されるシリカ除去率であってもよい。なお、シリカ除去率は、これらには限定されず、予め別途、水分析結果により得られたシリカ濃度を用いて算出してもよい。
【0055】
逆浸透膜モジュール10において、バイオフィルムが発生した場合には、シリカ除去率の低下はなく、圧力損失検出部6によって検出されるモジュール差圧が上昇する。逆に言えば、シリカ除去率が第1閾値を上回り、モジュール差圧が第2閾値を上回る場合には、逆浸透膜モジュール10において、バイオフィルムが発生したと判定することができる。
ここで、「モジュール差圧」とは、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と一次側出口との間の第1差圧のことである。
【0056】
更に、濃縮水中のバイオファウリングポテンシャルやバイオフィルムを吸光度や蛍光光度で検出することにより、バイオフィルムの発生をより確実に判定することができる。具体的には、吸光度検出装置12が検出する吸光度が第3閾値を超えた場合や、蛍光光度計13が検出した蛍光物質の濃度が第4閾値を超えた場合には、逆浸透膜モジュール10においてバイオフィルムが発生したことを、より確実に判定することができる。
【0057】
逆浸透膜モジュール10において、硬度系スケール、とりわけカルシウムスケールが発生した場合には、シリカ除去率の低下はなく、モジュール差圧の低下もなく、透過流束は低下し、電気伝導度除去率は低くなる。逆に言えば、シリカ除去率が第1閾値を超え、モジュール差圧が第2閾値以下となり、透過流束が第5閾値を下回り、電気伝導度除去率が第6閾値を下回る場合には、逆浸透膜モジュール10において、硬度系スケール、とりわけカルシウムスケールが発生したと判定できる。
ここで、「透過流束」とは、逆浸透膜モジュール10の逆浸透膜を透過する液体の透過速度を、逆浸透膜の面積で除した値であり、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と二次側との間での第2差圧と、流量センサFMで検出される流量とを用いて算出することが可能である。
【0058】
逆浸透膜モジュール10において、その他の膜詰まり、すなわち、非カルシウム系の膜面への付着詰まりが発生した場合には、シリカ除去率の低下はなく、モジュール差圧の低下もなく、透過流束は低下し、電気伝導度除去率に異常はない。逆に言えば、シリカ除去率が第1閾値を超え、モジュール差圧が第2閾値以下となり、透過流束が第5閾値を下回り、電気伝導度除去率が第6閾値以上となる場合には、逆浸透膜モジュール10において、非カルシウム系の膜面への付着詰まりが発生したと判定できる。ここで、非カルシウム系の膜面への付着詰まりとは、具体的には、シリカ系スケール、シルト、鉄やアルミニウム等の金属、界面活性剤や有機物等が膜面に付着したことにより、逆浸透膜に目詰まりが発生することである。
【0059】
〔逆浸透膜モジュールにおけるトラブルへの対処方法〕
上記の手段により判定された逆浸透膜モジュール10のトラブルに対しては、以下の表1に記載の方法により対処することが可能である。
【0061】
表1に記載のように、逆浸透膜モジュール10に、硬度系スケール、シリカ系スケール、又はシルトが発生したり、透過水W20中の鉄・アルミニウムの含有量が許容値を超えたりした場合には、制御部30からの指令信号により、分散剤添加装置5は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W14に分散剤を添加する。又は、水処理システム1の管理者は、第2供給水ラインL12に、ろ過装置や活性炭装置等の前処理装置を設置したり、導入済みの前処理装置を変更したり、再生したりする。これらの対処方法は、単独で実行してもよく、複数の対処方法を組み合わせて実行してもよい。
【0062】
逆浸透膜モジュール10にバイオフィルムが発生した場合には、制御部30からの指令信号により、殺菌剤添加装置3は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W12に、殺菌剤を添加する。又は、制御部30からの指令信号により、除去剤添加装置4は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W13に、バイオフィルム除去剤を添加する。これらの対処方法は、単独で実行してもよく、複数の対処方法を組み合わせて実行してもよい。
【0063】
逆浸透膜モジュール10からの透過水W20及び濃縮水W30において、界面活性剤及び有機物の含有量が許容値を超えた場合には、水処理システム1の管理者は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)に、ろ過装置、除鉄・除マンガン装置や活性炭ろ過装置等の前処理装置を導入したり、導入済みの前処理装置を変更したり、再生したりする。これらの対処方法は、単独で実行してもよく、複数の対処方法を組み合わせて実行してもよい。
【0064】
逆浸透膜モジュール10が備える逆浸透膜が酸化により劣化した場合には、制御部30からの制御により、殺菌剤添加装置3は、添加する酸化系殺菌剤の添加量を変更する。又は、水処理システム1の管理者は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)に、殺菌剤の除去装置として活性炭ろ過装置を導入したり、導入済みの除去装置のろ材交換によりこの除去装置を再生したりする。
【0065】
〔水処理システムの動作フローの例〕
上記の逆浸透膜モジュール10における不具合の原因の判定方法及び対処方法を組み合わせることにより、水処理システム1が実行する処理を、複数の枝に分かれる一連の流れとして構築することが可能である。
図2は、水処理システム1が実行する処理の一連の流れの一例を示す。
【0066】
図2に示すように、水処理システム1が実行する処理のフローは、検出部A1における検出値と閾値との比較、検出装置A2における検出値と閾値との比較、電気伝導度除去率算出部A3における電気伝導度除去率と閾値との比較、制御部A4における不具合の原因の判定、及び添加装置A5における薬剤の制御を含む。なお、「検出部A1」とは、圧力損失検出部6と溶質濃度検出部7の総称である。また、「検出装置A2」とは、吸光度検出装置12と蛍光光度計13の総称である。「電気伝導度除去率算出部A3」とは、電気伝導度除去率算出部11の別称である。また、「制御部A4」とは、制御部30の別称である。また、「添加装置A5」とは、殺菌剤添加装置3、除去剤添加装置4、及び分散剤添加装置5の総称である。
【0067】
また、検出部A1における検出値と閾値との比較は、溶質濃度検出部7におけるシリカ除去率と閾値との比較(ステップS1)と、圧力損失検出部6における、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と一次側出口との間の差圧である第1差圧と閾値との比較(ステップS2A)、及び、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と二次側との差圧である第2差圧を用いて算出した透過流束と閾値との比較(ステップS2B)とを含む。なお、ステップS2A及びステップS2Bをまとめて、本明細書では「ステップS2」と呼称する。
また、検出装置A2における検出値と閾値との比較は、吸光度検出装置12における吸光度と閾値との比較(ステップS3)と、蛍光光度計13における、蛍光光度に基づいて算出される蛍光物質の濃度と閾値との比較(ステップS4)とを含む。
また、電気伝導度除去率算出部A3における電気伝導度除去率と閾値との比較を、ステップS5において実行する。
また、制御部A4におけるトラブルの原因の判定を、ステップS6において実行する。
また、添加装置A5における薬剤の制御を、ステップS7において実行する。
【0068】
ステップS1において、制御部30は、溶質濃度検出部7が検出したシリカ除去率を第1閾値と比較する。シリカ除去率が第1閾値以下である場合には、処理は、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部30は、逆浸透膜モジュール10の逆浸透膜が劣化していると判定し、処理はステップS7に移行する。ステップS7において、制御部30は、殺菌剤添加装置3から添加する酸化系殺菌剤の添加量を変更する。
ステップS1においてシリカ除去率が第1閾値を超えた場合には、処理はステップS2Aに移行する。
【0069】
ステップS2Aにおいて、第1差圧が第2閾値を超えた場合には、処理は、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部30は、逆浸透膜モジュール10において、バイオフィルムが発生していると判定し、処理はステップS7に移行する。ステップS7において、制御部30からの指令信号により、殺菌剤添加装置3は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W14に殺菌剤を添加する。又は、制御部30からの指令信号により、除去剤添加装置4は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W14に、バイオフィルム除去剤を添加する。
【0070】
あるいは、ステップS2Aにおいて、第1差圧が第2閾値を超えた場合には、処理は、ステップS3に移行してもよい。ステップS3において、吸光度検出装置12が検出する吸光度が第3閾値を超えた場合には、処理は、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部30は、逆浸透膜モジュール10において、バイオフィルムが発生していると判定し、処理はステップS7に移行する。ステップS7において、制御部30からの指令信号により、殺菌剤添加装置3は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W12に、殺菌剤を添加する。又は、制御部30からの指令信号により、除去剤添加装置4は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W13に、バイオフィルム除去剤を添加する。
【0071】
あるいは、ステップS2Aにおいて、第1差圧が第2閾値を超えた場合には、処理は、ステップS4に移行してもよい。ステップS4において、蛍光光度計13が検出する蛍光光度に基づいて算出される蛍光物質の濃度が、第4閾値を超えた場合には、処理は、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部30は、逆浸透膜モジュール10において、バイオフィルムが発生していると判断し、処理はステップS7に移行する。ステップS7において、制御部30からの指令信号により、殺菌剤添加装置3は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W12に殺菌剤を添加する。又は、制御部30からの指令信号により、除去剤添加装置4は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W13に、バイオフィルム除去剤を添加する。
【0072】
ステップS2Aにおいて、第1差圧が第2閾値未満である場合には、処理はステップS2Bに移行する。ステップS2Bにおいて、第2差圧に基づいて算出される透過流束が第5閾値未満である場合には、ステップS5に移行する。ステップS5において、電気伝導度除去率算出部11が算出する電気伝導度除去率が第6閾値未満である場合には、処理は、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部30は、逆浸透膜モジュール10において、カルシウムスケールが発生していると判定し、処理はステップS7に移行する。ステップS7において、制御部30からの指令信号により、分散剤添加装置5は、供給水ラインL1(第2供給水ラインL12)を流通する供給水W14に分散剤を添加する。
【0073】
一方、上記のステップS5において、電気伝導度除去率算出部11が算出する電気伝導度除去率が第6閾値以上である場合には、処理は、ステップS6に移行する。ステップS6において、制御部30は、逆浸透膜モジュール10において非カルシウム系の膜面への付着詰まりが発生していると判定する。
【0074】
また、上記のステップS2Bにおいて、第2差圧に基づいて算出される透過流束が第5閾値以上である場合には、制御部30は、逆浸透膜モジュール10に不具合が発生していないと判定する。
【0075】
なお、上記のフローはあくまで一例であって、処理の順序の変更及び/又は一部の処理の省略を実行することが可能である。例えば、ステップS1とステップS2Aとの順序を入れ替えてもよい。
【0076】
〔本実施形態の効果〕
上述した実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下の効果が奏される。
本発明の水処理システム1は、供給水から処理水を製造する水処理システム1であって、供給水W11を透過水W20と濃縮水W30とに分離する逆浸透膜モジュール10と、逆浸透膜モジュール10における圧力損失を検出する圧力損失検出部6と、供給水W15に含まれる溶質の溶質濃度を検出する溶質濃度検出部7と、圧力損失及び溶質濃度に基づいて、逆浸透膜モジュール10に発生した不具合の原因を判定する制御部30と、を備え、溶質濃度検出部7は、溶質濃度としてシリカの溶質濃度を検出し、これらの溶質濃度に基づいてシリカ除去率を算出し、制御部30は、シリカ除去率に基づいて原因を判定する。
【0077】
また、溶質濃度検出部7は比色法を用いてシリカの溶質濃度を検出する。
【0078】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因を容易に判定することができる。
【0079】
また、制御部30は、シリカ除去率が、上記の第1閾値以下である場合には、逆浸透膜モジュール10の逆浸透膜が劣化していると判断する。
【0080】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因が膜劣化である場合には、この原因を容易に判定することができる。
【0081】
また、水処理システム1は、供給水W12に酸化系殺菌剤を添加する殺菌剤添加装置3を更に備え、制御部30は、逆浸透膜モジュール10の逆浸透膜が劣化していると判断した場合には、酸化系殺菌剤の添加量を変更するように、殺菌剤添加装置3を制御する。
【0082】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因が膜劣化である場合には、この不具合に対し、容易に対処することができる。
【0083】
また、圧力損失検出部6は、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と一次側出口との間の第1差圧と、逆浸透膜モジュール10の一次側入口と二次側との間の第2差圧とを検出し、制御部30は、第1差圧及び第2差圧に基づいて、原因を判定する。
【0084】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因を容易に判定することができる。
【0085】
また、制御部30は、第1差圧が、上記の第2閾値を超えた場合には、逆浸透膜モジュール10にバイオフィルムが発生していると判断する。
【0086】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因がバイオフィルムである場合には、この原因を容易に判定することができる。
【0087】
また、水処理システム1は、濃縮水W30の吸光度を検出する吸光度検出装置12を更に備え、制御部30は、吸光度が、上記の第3閾値を超えた場合には、逆浸透膜モジュール10にバイオフィルムが発生していると判断する。
【0088】
また、水処理システム1は、蛍光物質の濃度を検出する蛍光光度計13を更に備え、制御部30は、この濃度が、上記の第4閾値を超えた場合には、この濃度に基づいて、逆浸透膜モジュール10にバイオフィルムが発生していると判断する。
【0089】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因がバイオフィルムである場合には、この原因をより確実に判定することができる。
【0090】
また、水処理システム1は、供給水W13にバイオフィルム除去剤を添加する除去剤添加装置4を更に備え、制御部30は、バイオフィルムが発生していると判断した場合には、バイオフィルム除去剤を供給水W13に添加するように、除去剤添加装置4を制御する。
【0091】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因がバイオフィルムである場合には、この不具合に対し、容易に対処することができる。
【0092】
また、供給水W12〜W15又は濃縮水W30又は循環水W40に対する透過水W20の電気伝導度除去率を算出する電気伝導度除去率算出部11を更に備え、制御部30は、上記の第2差圧を用いて透過流束を算出し、透過流束が上記の第5閾値未満であり、電気伝導度除去率が上記の第6閾値未満である場合には、逆浸透膜モジュール10において、カルシウムスケールが発生していると判断する。
【0093】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因がカルシウムスケールである場合には、この原因を容易に判定することができる。
【0094】
また、供給水W14に分散剤を添加する分散剤添加装置5を更に備え、制御部30は、カルシウムスケールが発生していると判断した場合には、分散剤を添加するように、前記分散剤添加装置5を制御する。
【0095】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因がカルシウムスケールである場合には、この不具合に対し、容易に対処することができる。
【0096】
また、供給水W12〜W15又は濃縮水W30又は循環水W40に対する透過水W20の電気伝導度除去率を算出する電気伝導度除去率算出部11を更に備え、制御部30は、上記の第2差圧を用いて透過流束を算出し、透過流束が上記の第5閾値未満であり、電気伝導度除去率が上記の第6閾値以上である場合には、逆浸透膜モジュール10において、非カルシウム系の膜面への付着詰まりが発生していると判断する。
【0097】
そのため、逆浸透膜モジュール10における不具合の原因が非カルシウム系の膜面への付着詰まりである場合には、この原因を容易に判定することができる。
【0098】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0099】
例えば、上記の実施形態においては、供給水に対する透過水W20の電気伝導度除去率と閾値との比較により、逆浸透膜モジュール10におけるカルシウムスケールの発生を判定するとしたが、これには限られない。例えば、ランゲリア指数の測定履歴データを用いて、カルシウムスケールの発生を判定してもよい。あるいは、腐食センサを用い、この腐食センサによって検知される腐食性が低い値を推移している場合には、スケール傾向が強く、硬度系又はシリカ系のスケールが原因で膜詰まりが発生していると判定してもよい。
【0100】
また、圧力損失検出部6Aのみが、自身と他の圧力損失検出部が検出する水圧を用いて、圧力損失を検出するとしたが、これには限られない。例えば、圧力損失検出部6B又は6Cが、自身と他の圧力損失検出部が検出する水圧を用いて、圧力損失を検出するとしてもよい。あるいは、これらの圧力損失検出部のうち複数が、自身と他の圧力損失検出部が検出する水圧を用いて、圧力損失を検出するとしてもよい。