特許第6836181号(P6836181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836181
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20210215BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20210215BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20210215BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20210215BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   B60R21/231
   B60R21/203
   B60R21/2338
   B60R21/235
   B60R21/237
【請求項の数】11
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2017-123178(P2017-123178)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2018-122844(P2018-122844A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年7月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-190159(P2016-190159)
(32)【優先日】2016年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-17990(P2017-17990)
(32)【優先日】2017年2月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】中西 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】石田 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】石黒 直彦
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−156740(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0121889(US,A1)
【文献】 特開2006−298119(JP,A)
【文献】 特開2016−043840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵用のハンドルの中央部に収納保持されて、膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備えて構成されるエアバッグであって、
前記ハンドル側部が、中央付近に、膨張用ガスを流入させる流入用開口と、該流入用開口の周縁に配置されて、前記ハンドルの中央部に取り付けられる取付座と、を配設させて構成され、
膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の前方側から前記ハンドルの前側に突出する支持膨張部、が配設され、
前記支持膨張部の元部から先端部までの後面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の前方向の傾動時に、前記ハンドルの前面側に当接支持される支持面部が、配設され、また、
膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の後方側から前記ハンドルの後側に突出する後支持膨張部、が配設され、
前記後支持膨張部の元部から先端部までの前面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の後方向の傾動時に、前記ハンドルの後面側に当接支持される後支持面部が、配設され、さらに、
膨張完了時の前記ハンドル側部が、
前後の前記支持膨張部間の左右両側に配置されて、前記ハンドルの上面側で支持される一般部と、
該一般部から延びて、前後の前記支持膨張部の上方側に延設させた延設部と、
を備えて構成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
膨張完了時の前記ハンドル側部の前記延設部に、前後の前記支持膨張部の対応する前記ハンドルの前面側若しくは後面側への当接時における前記延設部側への相対的な接近時、前後の前記支持膨張部をそれぞれ支持可能な第2支持膨張部、を配設させていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記ハンドル側部が、可撓性を有したバッグ用素材から形成され、
前記バッグ用素材が、
前記取付座を形成する取付座用部位と、
該取付座用部位から左右に延びて、前記一般部を形成可能な一般部用部位と、
前記取付座用部位から前後に延びて、それぞれ、前後の前記支持膨張部を形成可能な突出部用部位と、
を備えて構成され、
前後の前記支持膨張部が、それぞれ、先端部に左右方向に沿う折返し部を有し、かつ、該折返し部から延びる左右の縁の各々重なる相互を結合させたシート状部位から形成される構成として、
前後の前記突出部用部位が、それぞれ、前記取付座側に配置される前記シート状部位と、先端側に配置される先端用部位と、を備えて構成され、
前後の前記先端用部位の先端縁と左右の前記一般部用部位の先端縁とが、前記運転者側部の外周縁と結合される運転者側結合部を構成し、
前後の前記先端用部位の外周縁における前記先端縁の両端から内側の前記シート状部位まで延びる左右の側縁と前記一般部用部位の前後の側縁との前後で対向する部位が、相互に結合されるハンドル側部形成用の結合部を構成していることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前後の前記シート状部位が、それぞれ、二つの前記支持膨張部を形成可能に、前記折返し部を二つ配設させる構成としていることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前後の前記先端用部位の先端縁が、それぞれ、左右方向の中央に、左右方向で対向する縁相互を結合させる凹溝を配設させるとともに、
前記凹溝から左右に延びる前記先端縁の部位が、前記運転者側結合部を構成していることを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記ハンドル側部を形成する可撓性を有した前記バッグ用素材が、前記取付座用部位、左右の前記一般部用部位、及び、前後の前記突出部用部位、を備えた一枚から形成されていることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載のエアバッグ。
【請求項7】
車両の操舵用のハンドルの中央部に収納保持されて、膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備えて構成されるエアバッグであって、
前記ハンドル側部が、中央付近に、膨張用ガスを流入させる流入用開口と、該流入用開口の周縁に配置されて、前記ハンドルの中央部に取り付けられる取付座と、を配設させて構成され、
膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の前方側から前記ハンドルの前側に突出する支持膨張部、が配設され、
前記支持膨張部の元部から先端部までの後面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の前方向の傾動時に、前記ハンドルの前面側に当接支持される支持面部が、配設されるとともに、
膨張用ガスを先に流入させて膨張する一次膨張部と、該一次膨張部の供給口から膨張用ガスを流入させて膨張を完了させる二次膨張部と、を備えて構成され、
前記一次膨張部が、
前記流入用開口からの膨張用ガスを流入させて膨張可能として、前記供給口を配設させて構成される元部と、
該元部から延びて前記支持膨張部を形成する先端部と、
を備えて構成され、
前記二次膨張部が、前記支持膨張部の外周壁を除いた前記エアバッグの外周壁を形成するように構成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項8】
車両の操舵用のハンドルの中央部に収納保持されて、膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備えて構成されるエアバッグであって、
前記ハンドル側部が、中央付近に、膨張用ガスを流入させる流入用開口と、該流入用開口の周縁に配置されて、前記ハンドルの中央部に取り付けられる取付座と、を配設させて構成され、
膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の前方側から前記ハンドルの前側に突出する支持膨張部、が配設され、
前記支持膨張部の元部から先端部までの後面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の前方向の傾動時に、前記ハンドルの前面側に当接支持される支持面部が、配設されるとともに、
可撓性を有したストラップが、膨張完了時の前記支持膨張部における前記支持面部を前記ハンドルの前面側に押し付ける方向に引張可能として、前記支持膨張部と前記支持膨張部の後方側の前記エアバッグの外周壁の部位とを連結するように、配設されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項9】
車両の操舵用のハンドルの中央部に収納保持されて、膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備えて構成されるエアバッグであって、
前記ハンドル側部が、中央付近に、膨張用ガスを流入させる流入用開口と、該流入用開口の周縁に配置されて、前記ハンドルの中央部に取り付けられる取付座と、を配設させて構成され、
膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の前方側から前記ハンドルの前側に突出する支持膨張部、が配設され、
前記支持膨張部の元部から先端部までの後面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の前方向の傾動時に、前記ハンドルの前面側に当接支持される支持面部が、配設され、
膨張完了時の前記支持膨張部が、前記ハンドル側部の前縁から下方に突設させるように構成されるとともに、
膨張完了時の前記支持膨張部の前記支持面部が、前記取付座の前側で左右方向に沿う折曲部を有して、前記取付座の前部側から下方に延びる略平面状として構成され、
膨張完了時の前記折曲部が、前記ハンドルの前部側の前面と上面との交差部位付近に配設される構成としていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項10】
車両の操舵用のハンドルの中央部に収納保持されて、膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備えて構成されるエアバッグであって、
前記ハンドル側部が、中央付近に、膨張用ガスを流入させる流入用開口と、該流入用開口の周縁に配置されて、前記ハンドルの中央部に取り付けられる取付座と、を配設させて構成され、
膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の前方側から前記ハンドルの前側に突出する支持膨張部、が配設され、
前記支持膨張部の元部から先端部までの後面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の前方向の傾動時に、前記ハンドルの前面側に当接支持される支持面部が、配設されるとともに、
膨張完了時の前記ハンドル側部が、
前記取付座の左右両側と後方側とに配置されて、前記ハンドルの上面側で支持される一般部と、
前記支持膨張部と、
を備え、
前記支持膨張部が、前面側を前記ハンドル側部の前縁側に接続させるように構成されるとともに、
前記ハンドル側部が、可撓性を有したバッグ用素材から形成され、
前記バッグ用素材が、
前記取付座を形成する取付座用部位と、
該取付座用部位から左右両側と後側とに延びて、前記一般部を形成可能な一般部用部位と、
前記取付座用部位から前側に延びて、前記支持膨張部を形成可能な突出部用部位と、
を備えて構成され、
前記支持膨張部が、先端部に左右方向に沿う折返し部を有し、かつ、該折返し部から延びる左右の縁の各々重なる相互を結合させたシート状部位から形成される構成として、
前記突出部用部位が、前記取付座側に配置される前記シート状部位と、先端側に配置される先端用部位と、を備えて構成され、
前記先端用部位の先端縁と左右の前記一般部用部位の先端縁とが、前記運転者側部の外周縁と結合される運転者側結合部を構成し、
前記先端用部位の外周縁における前記先端縁の両端から内側の前記シート状部位まで延びる左右の側縁と前記一般部用部位の前側の側縁との前後で対向する部位が、相互に結合されるハンドル側部形成用の結合部を構成し、
前記先端用部位の先端縁が、左右方向の中央に、左右方向で対向する縁相互を結合させる凹溝を配設させるとともに、前記凹溝から左右に延びる前記先端縁の部位が、前記運転者側結合部を構成し、さらに、
前記ハンドル側部形成用の前記結合部における前記運転者側部との結合部位が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、前記ハンドルの前面側における前記ハンドルの操舵軸に沿った方向の上方付近に、配設されるように、構成されていることを特徴とするエアバッグ。
【請求項11】
前記ハンドル側部形成用の前記結合部の前記運転者側部との結合部位が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、前記ハンドルの前面側における前記ハンドルの操舵軸に沿った方向の基準線を中心として、前後に50mmずつずれた範囲内に、配設されるように、構成されていることを特徴とする請求項10に記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵用のハンドルに搭載するための運転席用のエアバッグ装置に使用されるエアバッグに関し、特に、ハンドルの中央部からの長さ寸法として、左右両側に向かう長さ寸法より、前後両側の少なくとも前部側に向かう長さ寸法を短くした形状のハンドル(異形ハンドル)に対応可能なエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の運転席用エアバッグ装置としては、操舵時に把持するリング部の前部側の無い非円形としたハンドル、換言すれば、ハンドルの中央部からの長さ寸法として、左右両側に向かう長さ寸法より、前部側に向かう長さ寸法を短くした形状のハンドル、に搭載されるものが知られていた。使用するエアバッグは、運転者を受け止めるための内側バッグの前部側下面に、切り離されたリング部の前部側を架橋するための外側バッグを配設させる構成としていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−245759号公報(図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグでは、外側バッグが、リング部の切り離された距離を超える左右方向の長さ寸法を必要としており、ハンドルの前部側の空間スペース(切り離された部位)が大きくなれば、外側バッグの下面側がハンドルの上面側に支持されず、エアバッグ(内側バッグ)は、運転者の受け止め時、前部側が落ち込むように折れて、ハンドルに向かってくる運転者を安定して受け止め難くなってしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、中央部から前部側に向かう長さ寸法を短くしたハンドルに搭載しても、膨張完了時に安定して運転者を受け止めて保護することができるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグは、車両の操舵用のハンドルの中央部に収納保持されて、膨張完了時の外周壁が、運転者を受け止め可能な運転者側部と、該運転者側部の外周縁に対して外周縁を接続させて、前記ハンドルに支持されるハンドル側部と、を備えて構成されるエアバッグであって、
前記ハンドル側部が、中央付近に、膨張用ガスを流入させる流入用開口と、該流入用開口の周縁に配置されて、前記ハンドルの中央部に取り付けられる取付座と、を配設させて構成され、
膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の前方側から前記ハンドルの前側に突出する支持膨張部、が配設され、
前記支持膨張部の元部から先端部までの後面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の前方向の傾動時に、前記ハンドルの前面側に当接支持される支持面部が、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグでは、ハンドルへの搭載状態で膨張を完了させて運転者を受け止める際、ハンドルの中央部の前側に、前支持膨張部が配置されることから、運転者側部の前縁側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、前支持膨張部が、支持面部をハンドル中央部の前面側に当接させて、エアバッグの前縁側の下方への落ち込みを防止する。そのため、エアバッグは、傾かずに運転者に正対するように配置される運転者側部により、的確に、ハンドルに向かってくる運転者を受け止めることができる。
【0008】
したがって、本発明に係るエアバッグは、中央部から前部側に向かう長さ寸法を短くしたハンドルに搭載しても、膨張完了時に安定して運転者を受け止めて保護することができる。
【0009】
また、本発明に係るエアバッグでは、膨張完了時の前記ハンドル側部に、前記取付座の後方側から前記ハンドルの後側に突出する後支持膨張部、が配設され、
前記後支持膨張部の元部から先端部までの前面側の領域に、前記エアバッグの運転者の受け止め時における前記運転者側部の後方向の傾動時に、前記ハンドルの後面側に当接支持される後支持面部が、配設されていてもよい。
【0010】
このような構成では、ハンドルへの搭載状態で膨張を完了させて運転者を受け止める際、ハンドルの中央部の後側に、後支持膨張部が配置されることから、運転者側部の後縁側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、後支持膨張部が、後支持面部をハンドル中央部の後面側に当接させて、エアバッグの後縁側の下方への落ち込みを防止する。そのため、エアバッグは、傾かずに運転者に正対するように配置される運転者側部により、的確に、ハンドルに向かってくる運転者を受け止めることができる。すなわち、このような構成のエアバッグでは、搭載するハンドルが中央部から前部側と後部側との両側に向かう長さ寸法を中央部から左右に向かう長さ寸法より短くしていても、膨張完了時に安定して、ハンドルに向かってくる運転者を受け止めて保護することができる。
【0011】
この場合、本発明に係るエアバッグでは、膨張完了時の前記ハンドル側部が、
前後の前記支持膨張部間の左右両側に配置されて、前記ハンドルの上面側で支持される一般部と、
該一般部から延びて、前後の前記支持膨張部の上方側に延設させた延設部と、
を備えて構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、前後の支持膨張部が、それぞれ、延設部と取付座との間から部分的に突出するように形成されて、エアバッグの容積を小さく構成でき、エアバッグを迅速に膨張させることができる。
【0013】
上記のような構成の場合、膨張完了時の前記ハンドル側部の前記延設部に、前後の前記支持膨張部の対応する前記ハンドルの前面側若しくは後面側への当接時における前記延設部側への相対的な接近時、前後の前記支持膨張部をそれぞれ支持可能な第2支持膨張部、を配設させてもよい。
【0014】
このような構成では、前後の各支持膨張部を支持する第2支持膨張部が、それぞれ、延設部と支持膨張部との間から部分的に突出するように形成され、エアバッグの容積の増大を抑えて、前後の支持膨張部の支持力を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係るエアバッグでは、前記ハンドル側部が、可撓性を有したバッグ用素材から形成され、
前記バッグ用素材が、
前記取付座を形成する取付座用部位と、
該取付座用部位から左右に延びて、前記一般部を形成可能な一般部用部位と、
前記取付座用部位から前後に延びて、それぞれ、前後の前記支持膨張部を形成可能な突出部用部位と、
を備えて構成され、
前後の前記支持膨張部が、それぞれ、先端部に左右方向に沿う折返し部を有し、かつ、該折返し部から延びる左右の縁の各々重なる相互を結合させたシート状部位から形成される構成として、
前後の前記突出部用部位が、それぞれ、前記取付座側に配置される前記シート状部位と、先端側に配置される先端用部位と、を備えて構成され、
前後の前記先端用部位の先端縁と左右の前記一般部用部位の先端縁とが、前記運転者側部の外周縁と結合される運転者側結合部を構成し、
前後の前記先端用部位の外周縁における前記先端縁の両端から内側の前記シート状部位まで延びる左右の側縁と前記一般部用部位の前後の側縁との前後で対向する部位が、相互に結合されるハンドル側部形成用の結合部を構成していることが望ましい。
【0016】
このような構成では、ハンドル側部を構成するバッグ用素材の前後の突出部用部位におけるシート状部位において、それぞれ、折返し部を折り返して、重ねた左右の縁相互を結合して、支持膨張部を形成し、ついで、前後の突出部用部位の先端用部位の外周縁における先端縁から左右に延びてシート状部位まで延びる左右の側縁と一般部用部位の前後の側縁との前後で対向する結合部相互を、結合させれば、ハンドル側部を形成できる。その後、ハンドル側部における前後の先端用部位の先端縁と左右の一般部用部位の先端縁との運転者側結合部を、運転者側部の外周縁と結合させ、結合代が露出しないように、流入用開口を利用して、表裏を反転させれば、エアバッグを製造することができる。
【0017】
したがって、上記のような構成では、所定の結合部位を重ねた平面縫製により、前後の支持膨張部を有したエアバッグを形成できて、容易に、前後の支持膨張部を有したエアバッグを製造することができる。
【0018】
そして、上記のような構成では、前後の前記シート状部位が、それぞれ、二つの前記支持膨張部を形成可能に、前記折返し部を二つ配設させる構成としていれば、既述の前後の支持膨張部と第2支持膨張部とを備えたエアバッグを形成することができる。
【0019】
また、上記のような構成では、前後の前記先端用部位の先端縁が、それぞれ、左右方向の中央に、左右方向で対向する縁相互を結合させる凹溝を配設させるとともに、
前記凹溝から左右に延びる前記先端縁の部位が、前記運転者側結合部を構成していてもよい。
【0020】
このような構成では、凹溝を閉じるように結合させれば、ハンドル側部の前後の縁から支持膨張部を突出させることができて、大きな容積の支持膨張部を形成することができ、ハンドルに当接支持される大きな容積の支持膨張部により、大きな反力を確保可能となって、運動エネルギーの大きな運転者がエアバッグの前縁側や後縁側に移動してきても、エアバッグの運転者側部が、傾かずに正対して、的確に運転者を受け止めることができる。
【0021】
そしてさらに、前記ハンドル側部を形成する可撓性を有した前記バッグ用素材が、前記取付座用部位、左右の前記一般部用部位、及び、前後の前記突出部用部位、を備えた一枚から形成されていれば、運転者側部を形成するバッグ用素材と合わせて、二枚の所定形状のバッグ用素材により、前後の支持膨張部を有したエアバッグの外周壁を形成できて、エアバッグの構成部品点数を低減できて、部品管理が容易となるとともに、結合作業を行う部位を低減できて、エアバッグを容易に製造することができる。
【0022】
さらに、本発明に係るエアバッグでは、膨張用ガスを先に流入させて膨張する一次膨張部と、該一次膨張部の供給口から膨張用ガスを流入させて膨張を完了させる二次膨張部と、を備えて構成され、
前記一次膨張部が、
前記流入用開口からの膨張用ガスを流入させて膨張可能として、前記供給口を配設させて構成される元部と、
該元部から延びて前記支持膨張部を形成する先端部と、
を備えて構成され、
前記二次膨張部が、前記支持膨張部の外周壁を除いた前記エアバッグの外周壁を形成するように構成されていてもよい。
【0023】
このような構成では、エアバッグに膨張用ガスが流入されれば、一次膨張部が膨張し、一次膨張部の供給口を経て供給される膨張用ガスにより、二次膨張部が膨張する。そして、一次膨張部の膨張完了時には、支持膨張部も膨張を完了させることから、二次膨張部の膨張完了前に、支持膨張部の支持面部が、迅速に、ハンドルの前面側や後面側に対向する所定位置に、配置される。そのため、二次膨張部が膨張を完了させて、運転者を受け止めることとなっても、支持膨張部の支持面部が既に適切な位置に配置されており、支持膨張部が迅速にハンドルの前面側や後面側に当接支持されて、運転者側部の前縁側や後縁側の落ち込みを的確かつ安定して防止でき、その結果、エアバッグは、ハンドルに向かってくる運転者を、より安定した状態で、受け止めて保護することができる。
【0024】
さらに、本発明に係るエアバッグでは、前側の支持膨張部を備える場合、可撓性を有したストラップが、膨張完了時の前記支持膨張部における前記支持面部を前記ハンドルの前面側に押し付ける方向に引張可能として、前記支持膨張部と前記支持膨張部の後方側の前記エアバッグの外周壁の部位とを連結するように、配設されていてもよい。
【0025】
このような構成では、ハンドルへの搭載状態で膨張を完了させて運転者を受け止める際、既に、ストラップにより、支持膨張部の支持面部がハンドルの前面側に押し付けられて、エアバッグがハンドルの前面側からの反力を受け易く構成されている。そのため、前縁側の落ち込みを発生させることなく、エアバッグは、前部側を短くしたハンドルに向かってくる運転者を、迅速に、安定した状態で受け止めて保護することができる。勿論、ストラップは、可撓性を有して構成されていることから、エアバッグの折畳収納時、支障なく、エアバッグとともに、折り畳まれて収納部位に収納されることとなる。
【0026】
また、本発明に係るエアバッグでは、前側の支持膨張部を備える場合、膨張完了時の前記支持膨張部が、前記支持面部の少なくとも上下方向の略中央付近を前記ハンドルの前面側に当接支持されるように、構成されていることが望ましい。
【0027】
このような構成では、膨張完了時の支持膨張部が、元部側付近だけでなく、上下方向の略中央付近をハンドルの前面側に当接支持されることから、ハンドルの前面側から安定した反力を迅速に受け易く、エアバッグの前縁側の落ち込みを発生させずに、安定して運転者に対して正対した運転者側部により、ハンドルに向かってくる運転者を、的確に受け止めて保護することができる。
【0028】
さらに、本発明に係るエアバッグでは、前側の支持膨張部を備える場合、膨張完了時の前記支持膨張部が、前記ハンドル側部の前縁から下方に突設させるように構成されるとともに、
膨張完了時の前記支持膨張部の前記支持面部が、前記取付座の前側で左右方向に沿う折曲部を有して、前記取付座の前部側から下方に延びる略平面状として構成され、
膨張完了時の前記折曲部が、前記ハンドルの前部側の前面と上面との交差部位付近に配設される構成としていることが望ましい。
【0029】
このような構成では、膨張完了時の支持膨張部が、取付座の前側との間の折曲部から下方に延びるように膨張し、その際、折曲部がハンドルの前部側の前面と上面との交差部位付近に配設されていることから、折曲部から下方に延びる略平面状の支持面部は、折曲部側の上縁側(元部側)だけでなく、上下方向の中間部位や、さらに、先端側までも、ハンドルの前面側に当接可能に配設され易い。そのため、エアバッグの前縁側が落ち込むように運転者を受け止めることとなっても、直ちに、支持膨張部の支持面部が、広い面積で当接したハンドルの前面側からの反力を受けて、エアバッグの前縁側の落ち込みを防止し、エアバッグは、運転者に対して正対した運転者側部によって、前部側を短くしたハンドルに向かってくる運転者を、的確に受け止めて保護することができる。勿論、支持膨張部が、ハンドル側部の前縁から下方に突設させるように構成されて、大きな容積を備えて構成できることから、支持膨張部が大きな反力を確保可能となって、運動エネルギーの大きな運転者がエアバッグの前縁側に傾いて移動してきても、エアバッグの運転者側部が、傾かずに正対して、的確に運転者を受け止めることができる。
【0030】
さらに、本発明に係るエアバッグでは、前側の支持膨張部を備える場合、膨張完了時の前記ハンドル側部が、
前記取付座の左右両側と後方側とに配置されて、前記ハンドルの上面側で支持される一般部と、
前記支持膨張部と、
を備え、
前記支持膨張部が、前面側を前記ハンドル側部の前縁側に接続させるように構成されるとともに、
前記ハンドル側部が、可撓性を有したバッグ用素材から形成され、
前記バッグ用素材が、
前記取付座を形成する取付座用部位と、
該取付座用部位から左右両側と後側とに延びて、前記一般部を形成可能な一般部用部位と、
前記取付座用部位から前側に延びて、前記支持膨張部を形成可能な突出部用部位と、
を備えて構成され、
前記支持膨張部が、先端部に左右方向に沿う折返し部を有し、かつ、該折返し部から延びる左右の縁の各々重なる相互を結合させたシート状部位から形成される構成として、
前記突出部用部位が、前記取付座側に配置される前記シート状部位と、先端側に配置される先端用部位と、を備えて構成され、
前記先端用部位の先端縁と左右の前記一般部用部位の先端縁とが、前記運転者側部の外周縁と結合される運転者側結合部を構成し、
前記先端用部位の外周縁における前記先端縁の両端から内側の前記シート状部位まで延びる左右の側縁と前記一般部用部位の前側の側縁との前後で対向する部位が、相互に結合されるハンドル側部形成用の結合部を構成し、
前記先端用部位の先端縁が、左右方向の中央に、左右方向で対向する縁相互を結合させる凹溝を配設させるとともに、前記凹溝から左右に延びる前記先端縁の部位が、前記運転者側結合部を構成し、さらに、
前記ハンドル側部形成用の前記結合部における前記運転者側部との結合部位が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、前記ハンドルの前面側における前記ハンドルの操舵軸に沿った方向での上方付近に、配設されるように、構成されていることが望ましい。
【0031】
このような構成では、膨張完了時のエアバッグのハンドル側部が、ハンドルの操舵軸に沿った方向で、ハンドルの前面側に沿うように、支持膨張部の支持面部とハンドル側部形成用結合部とを配設させることができる。すなわち、ハンドル側部の支持膨張部の支持面部をハンドルの前面側に当接支持させることができるため、ハンドルへの搭載状態で膨張を完了させて運転者を受け止める際、運転者側部の前縁側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、支持膨張部が支持面部をハンドルの前面側に当接させて、エアバッグが直ちに反力を確保できる。そのため、エアバッグは、傾くこと無く運転者に正対するように配置される運転者側部により、迅速かつ的確に、前部側を短くしたハンドルに向かってくる運転者を受け止めることができる。
【0032】
さらに、このような構成では、ハンドル側部を構成するバッグ用素材の突出部用部位における先端用部位の凹溝を閉じるように結合させて、先端用部位の先端縁を運転者側部の前縁に対応させた円弧状とし、さらに、突出部用部位のシート状部位において、折返し部を折り返して、重ねた左右の縁相互を結合して、容積の大きな前側の支持膨張部を形成し、ついで、突出部用部位の先端用部位の外周縁における先端縁から左右に延びてシート状部位まで延びる左右の側縁と一般部用部位の側縁との前後で対向する結合部相互を、結合させれば、ハンドル側部を形成できる。その後、ハンドル側部における前側の先端用部位の先端縁と左右の一般部用部位の先端縁との運転者側結合部を、運転者側部の外周縁と結合させ、結合代が露出しないように、流入用開口を利用して、表裏を反転させれば、エアバッグを製造することができる。そのため、このような構成では、ハンドル側部の前縁から突出させて容積を大きくした支持膨張部をハンドル側部の前縁側に配設させたエアバッグを、平面縫製により、容易に、製造することができる。
【0033】
この場合、前記ハンドル側部形成用の前記結合部の前記運転者側部との結合部位が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、前記ハンドルの前面側における前記ハンドルの操舵軸に沿った方向の基準線を中心として、前後に50mmずつずれた範囲内に、配設されるように、構成されていることが望ましい。
【0034】
すなわち、ハンドル側部形成用結合部の運転者側部との結合部位が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、ハンドルの前面側におけるハンドルの操舵軸に沿った方向の基準線を中心として、50mmを越えた前方側に配置されれば、取付座の前縁側の支持膨張部との境界部位(折曲部)が、ハンドルの前部側の上面側から離れた前面側に当接支持される状態となって、支持膨張部の支持面部が、元部付近をハンドルの前面に当接させることができるものの、取付座の前縁側の部位もハンドルの前面側に当接して支持膨張部の元部側を前方側に押し出す力を発生させて、先端側を、ハンドルの前面から離隔させ易くなって、支持膨張部のハンドル前面からの反力を迅速に確保し難く、好ましくない。
【0035】
また、ハンドル側部形成用結合部の運転者側部との結合部位が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、ハンドルの前面側におけるハンドルの操舵軸に沿った方向の基準線を中心として、50mmを越えた後方側に配置されれば、取付座の前縁側の支持膨張部との境界部位(折曲部)が、ハンドルの前部の前面側から後方側にずれた上面側に当接支持される状態となって、支持膨張部の支持面部のハンドルの前面側から受ける反力が、後方へずれた境界部位付近を回転中心として、運転者側部の後縁を下方に向けるモーメントを発生させてしまい、その結果、運転者側部の後縁側を下方にずらすように、運転者側部を傾かせる事態を招き、運転者側部が運転者と正対し難くなることから、好ましくない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第1実施形態の運転席用のエアバッグが使用される運転席用エアバッグ装置の使用状態を示す概略平面図である。
図2】第1実施形態の運転席用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、図1のII−II部位に対応する。
図3】第1実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図4】第1実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図5】第1実施形態のエアバッグのハンドル側部を製造した状態を示す平面図である。
図6図5のVI−VI部位の概略端面図である。
図7図5のVII−VII部位の概略端面図である。
図8】第1実施形態のエアバッグにおけるハンドル側部の製造工程を説明する図である。
図9】第1実施形態のハンドル側部の製造工程における図8のCの後と、エアバッグを製造する工程とを説明する図である。
図10】第1実施形態のエアバッグの膨張完了後の運転者受け止め時を説明する概略縦断面図である。
図11】第2実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図12】第2実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図13】第2実施形態のエアバッグのハンドル側部を製造した状態を示す平面図である。
図14図13のXIV−XIV部位の概略端面図である。
図15図13のXV−XV部位の概略端面図である。
図16】第2実施形態のエアバッグにおけるハンドル側部の製造工程を説明する図である。
図17】第2実施形態のエアバッグにおけるハンドル側部の製造工程を説明する図であり、図16のBの後の工程を示す。
図18】第2実施形態のハンドル側部の製造工程の図17のBの後の工程と、エアバッグを製造する工程とを説明する図である。
図19】第2実施形態のエアバッグの膨張完了後の運転者受け止め時を説明する概略縦断面図である。
図20】第3実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図21】第3実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図22】第3実施形態のエアバッグのハンドル側部を製造した状態を示す平面図である。
図23図22のXXIII−XXIII部位の概略端面図である。
図24図22のXXIV−XXIV部位の概略端面図である。
図25】第3実施形態のエアバッグにおけるハンドル側部の製造工程を説明する図である。
図26】第3実施形態のハンドル側部の製造工程における図25のBの後の工程を説明する図である。
図27】第3実施形態のハンドル側部の製造工程の図26のBの後と、エアバッグを製造する工程とを説明する図である。
図28】第3実施形態のエアバッグの膨張完了後の運転者受け止め時を説明する概略縦断面図である。
図29】実施形態と異なった形状のハンドルを示す平面図である。
図30図29に示すハンドルの中央縦断面図である。
図31】さらに異なった形状のハンドルを示す平面図である。
図32】第4実施形態の運転席用のエアバッグが使用される運転席用エアバッグ装置の使用状態を示す概略平面図である。
図33】第4実施形態の運転席用エアバッグ装置の概略縦断面図であり、図32のXXXIII−XXXIII部位に対応する。
図34】第4実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図35】第4実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図36】第4実施形態のエアバッグのハンドル側部を製造した状態を示す平面図である。
図37図36のXXXVIIA−XXXVIIA部位とXXXVIIB−XXXVIIB部位との概略端面図である。
図38】第4実施形態のエアバッグを製造する工程を説明する図である。
図39】第4実施形態のエアバッグの膨張完了後の運転者受け止め時を説明する概略縦断面図である。
図40】第4実施形態の変形例のエアバッグの膨張完了時の概略縦断面図である。
図41図40に示すエアバッグを形成するバッグ用素材を示す平面図である。
図42】第4実施形態の変形例のエアバッグの膨張完了時の概略縦断面図である。
図43図42に示すエアバッグを形成するバッグ用素材を示す平面図である。
図44】第5実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図45】第5実施形態のエアバッグの膨張時の概略中央縦断面図である。
図46】第5実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図47】第5実施形態のエアバッグの膨張する状態を説明する概略縦断面図である。
図48】第5実施形態のエアバッグの膨張完了時と運転者受け止め時とを説明する概略縦断面図である。
図49】第6実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図50】第6実施形態のエアバッグの膨張時の概略中央縦断面図である。
図51】第6実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図52】第6実施形態のエアバッグの膨張する状態を説明する概略縦断面図である。
図53】第6実施形態のエアバッグの膨張完了時と運転者受け止め時を説明する概略縦断面図である。
図54】第7実施形態の運転席用エアバッグ装置の概略縦断面図である。
図55】第7実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図56】第7実施形態のエアバッグのハンドル側部のバッグ用素材と、そのバッグ用素材から製造されたハンドル側部と、を示す平面図である。
図57】第7実施形態のエアバッグの製造時を説明する図である。
図58】第7実施形態のエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張時の概略中央縦断面図と概略側面図である。
図59】第7実施形態のエアバッグの変形例を示すもので、ハンドル側部の折曲部(境界位置)を前方側と後方側とにそれぞれずらしたエアバッグの膨張時の概略側面図である。
図60】第8実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図61】第8実施形態のエアバッグのハンドル側部を示す平面図である。
図62】第8実施形態のエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張時の概略縦断面図である。
図63】第9実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図64】第9実施形態のエアバッグを製造するバッグ用素材の平面図である。
図65】第9実施形態のエアバッグの底面図である。
図66】第9実施形態のエアバッグの製造時を説明する図である。
図67】第9実施形態のエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張時の概略側面図である。
図68】第10実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図69】第10実施形態のエアバッグの膨張時の概略側面図である。
図70】第11実施形態のエアバッグの膨張時の概略斜視図である。
図71】第11実施形態のエアバッグ装置におけるエアバッグの膨張時の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態のエアバッグは、図1,2に示すように、運転席用のエアバッグ20であり、この運転席用エアバッグ20が使用されるエアバッグ装置Mは、ハンドルWに搭載される運転席用エアバッグ装置としている。ハンドルWは、ハンドル本体1と、ハンドル本体1の中央の中央部Bの上部に配置されるエアバッグ装置Mと、を備えて構成される。
【0038】
また、ハンドルWは、中央部Bからの長さ寸法として、左右両側に向かう長さ寸法XL,XRより、前後両側の少なくとも前部BF側に向かう長さ寸法YFを短くした異形ハンドルとしている。さらに詳しくは、このハンドルWは、左右両側に向かう長さ寸法XL,XRより、中央部Bから後部BB側に向かう長さ寸法YBも短くしている。換言すれば、ハンドルWは、左右両側に操作把持部H(HL,HR)を有して、中央部Bからの左右の幅寸法XWより前後の幅寸法YWを小さくした形状の異形ハンドルとしている。左右の操作把持部HL,HRは、前後方向に沿う棒状部位から構成され、前後両端が、ハンドルWの中央部Bの前後の縁側から左右方向に沿って延びる軸状の連結部S(SFL,SFR,SBL,SBR)に支持されている。中央部Bの下部には、操作時の回転中心となる操舵軸SSに連結されるボス3が配設されている。ハンドル本体1は、中央部B、連結部S、及び、操作把持部Hにおける剛性を確保するために、鋼材等の金属材からなる芯材2を配設させて構成され、ボス3は、芯材2の中央の下部側に配設されている。芯材2の周囲には、適宜、合成樹脂製の被覆層4が配設されている。中央部Bの下面側は、合成樹脂製のロアカバー5に覆われている。
【0039】
なお、本発明の説明では、特に断らない限り、上下方向は、操舵軸SSの軸方向に沿った上下方向が対応し、前後方向は、車両の直進操舵時の操舵軸SSの軸方向と直交した前後方向が対応し、左右方向は、車両の直進操舵時の操舵軸SSの軸方向と直交した左右方向が対応するものである。
【0040】
運転席用エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ20、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター9、折り畳んだエアバッグ20の上方を覆うエアバッグカバー15、エアバッグ20とインフレーター9とを収納保持するとともにエアバッグカバー15を保持するケース11、及び、インフレーター9とともにエアバッグ20をケース11に取り付けるためのリテーナ7、を備えて構成される。
【0041】
リテーナ7は、四角環状の板金製として、エアバッグ20の流入用開口23の周縁を押えて、エアバッグ20をケース11に取り付けるとともに、インフレーター9をケース11に取り付けるように、四隅に、ケース11にナット止めされる図示しないボルトを備えて、構成されている。
【0042】
インフレーター9は、上部に複数のガス吐出口9bを備えた円柱状の本体部9aと、本体部9aの外周面から突出するフランジ部9cと、を備えて構成される。フランジ部9cには、リテーナ7の図示しない各ボルトを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。
【0043】
ケース11は、略直方体形状の板金製とし、ハンドルWの中央部Bの上部側に配置されて、折り畳まれたエアバッグ20を収納する収納部位を構成し、長方形状の底壁部11aと、底壁部11aの外周縁から上方に延びる四角筒形状の側壁部11dと、を備えて構成されている。底壁部11aには、インフレーター9の本体部9aを下方から挿入可能な円形に開口した挿通孔11bが形成されるとともに、その周囲に、リテーナ7の図示しないボルトを貫通させる4つの貫通孔11c(図1参照)が形成されている。側壁部11dには、エアバッグカバー15の側壁部17を係止して連結させる複数の係止爪11fが取り付けられている。また、ケース11には、エアバッグ装置Mを中央部Bの上部に配設固定するために、芯材2に対し、ボルト止め等して、連結固定されるブラケット部11eが配設されている。
【0044】
エアバッグカバー15は、合成樹脂製として、収納したエアバッグ20の上方を覆う天井壁部16と、天井壁部16の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部17と、を備えて構成されている。天井壁部16には、膨張するエアバッグ20に押されて前後両側に開く2枚の扉部16a,16aが形成されている。側壁部17には、ケース11の係止爪11fを挿入させる係止孔17aが形成されている。
【0045】
エアバッグ20は、ポリアミドやポリエステル等の織糸を織った布材からなる可撓性を有したバッグ用素材から形成され、図1〜3に示すように、膨張完了形状を、上方から見て円形とし、側方から見て、後述する支持膨張部28(28F,28B)を除くと、球状に近い略楕円球状とするように構成されて、膨張完了時の周壁(外周壁)21が、運転者Dを受け止め可能な運転者側部32と、運転者側部32の外周縁32aに対して外周縁22aを接続(結合あるいは連結)させて、ハンドルW(ハンドル本体1)に支持されるハンドル側部22と、を備えて構成されている。
【0046】
ハンドル側部22は、平らに展開させた状態で、略円板状に形成されて、ハンドル側部22の中央には、膨張用ガスを流入させるために円形に開口する流入用開口23が配設されている。流入用開口23の周縁には、エアバッグ20をケース11の底壁部11aに取り付けるためのリテーナ7の図示しない各ボルトを貫通させる取付孔24aが、形成されている。流入用開口23の周縁の取付孔24aの配設部位は、リテーナ7に押えられてケース11の底壁部11aに取り付けられる取付座24を構成している。
【0047】
また、膨張完了時のハンドル側部22には、取付座24の前後両側からハンドルWの中央部Bの前面Bf側と後面Bb側とに突出する前後の支持膨張部28(28F,28B)が配設されている。これらの前支持膨張部28Fと後支持膨張部28Bとは、膨張完了時のエアバッグ20が運転者側部32により運転者Dを受け止める際に、運転者側部32が前後方向に傾動(揺動)しようしても、それぞれ、先端部28aと元部28bとの間の中央部B側の面28cb,28cf(前支持膨張部28Fでは後面28cbであり、後支持膨張部28Bでは前面28cf)を、それぞれ、ハンドルWの中央部Bの前面Bf側若しくは後面Bb側に当接させて(若しくは、圧接させて)、エアバッグ20を支持し、運転者側部32の傾動を抑制できるように、配設されている。
【0048】
すなわち、前支持膨張部28Fの後面28cbは、ハンドルWの中央部Bの前面Bf側に当接支持される支持面部29Fを構成し、後支持膨張部28Bの前面28cfは、ハンドルWの中央部Bの後面Bb側に当接支持される支持面部29Bを構成している。
【0049】
なお、実施形態の場合、支持面部29F,29Bは、共に、支持膨張部28の元部28b側近傍を、特に、ハンドルWの前面Bfや後面Bbに当接支持される構成としている。
【0050】
さらに、膨張完了時のハンドル側部22における前後の支持膨張部28F,28B間の左右両側に、ハンドルWの上面Wu側(実施形態の場合、操作把持部HL,HR付近の連結部SFL,SFR,SBL,SBRの上面Wu側や操作把持部HL,HR自体の上面Wu側)で支持される一般部26(26L,26R)、が配設されている。詳しくは、一般部26L,26Rは、膨張完了時のハンドル側部22の左右の縁22d,22e側に至るまでの取付座24の左右両側の部位であり、さらに、図5〜7に示すように、取付座24の左右両側における支持膨張部28F,28Bの間で露出している部位であって、実施形態の場合、後述する一般部用部位43L,43Rと、先端用部位61F,61Bの左右両縁側の部位と、から構成される。
【0051】
さらに、実施形態の場合には、一般部26L,26Rは、それぞれ、膨張完了時のハンドル側部22における前後の支持膨張部28F,28Bの上方に配置される延設部27(F,B)を延設させている。これらの延設部27F,27Bは、取付座24の前後両側で、それぞれ、支持膨張部28F,28Bからハンドル側部22の前後の縁22b,縁22cに至るまでの部位となり、詳しくは、図5,6に示すように、支持膨張部28F,28Bにより隠れる位置とした先端用部位61F,61Bの左右方向の中央部位である。
【0052】
そのため、実施形態の場合、取付座24の左右の一般部26L,26Rと延設部27F,27Bとを合わせた外形が、運転者側部32の外形と等しい略円形状として、支持膨張部28F,28Bが、略円形状のハンドル側部22における取付座24の前後付近から、先端部28a,28a相互を拡開させて、下方に突出するように配設されている。実施形態の場合、支持膨張部28F,28Bは、それぞれ、先端部28aを前後方向の厚さを狭める先細りとした略長方形板状としている。
【0053】
第1実施形態のエアバッグ20では、外周壁21が、図4に示すように、ハンドル側部22用のバッグ用素材(バッグ用基材)40と、運転者側部32用のバッグ用素材70と、の二枚から形成されている。バッグ用素材70は、円板状としている。なお、これらのバッグ用素材40,70は、既述したように、ポリアミドやポリエステル等の織糸を織った可撓性を有した布材から構成されている。
【0054】
バッグ用素材40は、平らに展開すると、前後方向の中央に取付座24を形成する取付座用部位41から前後左右に延びる部位を設けて構成されている。すなわち、バッグ用素材40は、取付座用部位41から左右に延びて、一般部26L,26Rを形成可能な略長方形板状の一般部用部位43(43L,43R)と、取付座用部位41から、一般部用部位43より長い寸法として前後に延びて、支持膨張部28F,28Bと延設部27F,27Bとを形成可能な突出部用部位45(45F,45B)と、を備えて構成されている。
【0055】
一般部用部位43L,43Rは、取付座用部位41から左右両側に略長方形板状に延びて、円弧状の先端縁43aと前後の側縁43b,43cとを備えて構成されている。先端縁43aは、運転者側部32を形成するバッグ用素材70の外周縁70aに対し、縫合により結合される運転者側結合部を構成する。前後の側縁43b,43cは、左右方向に沿って相互に平行とした直線状に配設され、それぞれ、後述する突出部用部位45F,45Bの縁61b,61cの前後方向で対向する部位と、縫合により結合されて、ハンドル側部22を形成する結合部を構成している。
【0056】
一般部用部位43L,43Rは、前後方向の幅寸法を、取付座24に縫合する略円形の補強布72の外径寸法と略等しくしている。なお、補強布72は、バッグ用素材40と同様に、ポリアミドやポリエステル等の織糸を織った可撓性を有した布材から形成され、エアバッグ20の内周面側の取付座24に縫合されるとともに、取付座24と同様に、流入用開口23と取付孔24aとが形成されている。
【0057】
前後の突出部用部位45F,45Bは、それぞれ、取付座用部位41側のシート状部位47(47F,47B)と、シート状部位47F,47Bから延びるように配設される先端側の先端用部位61(61F,61B)と、を備えて構成されている。
【0058】
シート状部位47F,47Bは、取付座用部位41側の幅寸法を、補強布42の外径寸法より、若干、大きな寸法として、取付座用部位41から前後に延びる略長方形板状としている。これらのシート状部位47F,47Bは、それぞれ、前後の支持膨張部28F,28Bの外周壁を形成する部位である。シート状部位47F,47Bは、それぞれ、前後方向の中間に、左右方向に沿う折目を付ける折返し部48を設けて、二つ折りし、左右の重ねた縁相互、すなわち、左先側の縁49と左元側の縁50との相互と、右先側の縁52と右元側の縁53との相互と、をそれぞれ縫合により結合させれば、折返し部48を先端部28aとした支持膨張部28(28F,28R)を形成することができる。
【0059】
先端用部位61F,61Bは、シート状部位47F,47Bの先端から、左右方向の幅寸法を広げた弓形状に延びるように形成されて、それぞれ、円弧状の先端縁61aと、シート状部位47F,47Bから拡開するように左右方向に沿っ延びて、先端縁61aに連なる左右の側縁61b,61cと、を備えて構成されている。先端縁61aは、一般部用部位43L,43Rの先端縁43aとともに、運転者側部32を形成するバッグ用素材70の外周縁70aに対し、縫合により結合される運転者側結合部を構成する。
【0060】
すなわち、先端用部位61F,61Bの先端縁61a,61aと、一般部用部位43L,43Rの先端縁43a,43aと、が、ハンドル側部22の外周縁22aを形成して、運転者側部32の外周縁32aに結合されることとなる。
【0061】
また、先端用部位61F,61Bの外周縁における先端縁61aの両端から内側のシート状部位47F,47Bまで延びる左右の側縁61b,61cは、それぞれ、前後方向で対向する一般部用部位43L,43Rの前後の側縁43b,43cと、相互に結合されて、ハンドル側部22を形成するための結合部を構成している。
【0062】
これらのバッグ用素材40,70を使用したエアバッグ20の製造工程を説明すると、それぞれ、バッグ用素材用の所定の布材から裁断して、所定形状のバッグ用素材40,70を形成する。裁断時のバッグ用素材70は、図4に示す状態であるが、裁断直後のバッグ用素材40は、補強布72、流入用開口23、及び、取付孔24aが設けられていない状態であり、縫合糸74を利用して、補強布72を取付座24に縫合した後、孔開け加工して、補強布72とともに、取付座24に流入用開口23と取付孔24aとを形成する。
【0063】
流入用開口23と取付孔24aとを形成したバッグ用素材40を使用して、ハンドル側部22を製造する工程の概略を簡単に説明すると、まず、シート状部位47F,47Bの折返し部48に折目を付けて、重ねた縁49,50相互と、重ねた縁52,53相互とを、それぞれ、縫合糸74を利用して、縫合して、支持膨張部28F,28Bの外周壁を形成する。なお、折返し部48は、エアバッグ20の外周面側(補強布72が縫合されていない側)に、山折りの折目を付けて、折り返す。
【0064】
支持膨張部28F,28Bの形成により、重ね可能に接近した一般部用部位43L,43Rと先端用部位61F,61Bとの縁相互、すなわち、一般部用部位43Lの側縁43bと先端用部位61Fの側縁61bとの相互、一般部用部位43Lの側縁43cと先端用部位61Bの側縁61bとの相互、一般部用部位43Rの側縁43bと先端用部位61Fの側縁61cとの相互、及び、一般部用部位43Rの側縁43cと先端用部位61Bの側縁61cとの相互、を、それぞれ、縫合糸74を利用して、縫合すれば、図5,6,7に示すように、ハンドル側部22が形成される。
【0065】
但し、第1実施形態の場合、ハンドル側部22の形成時、例えば、図8のA,Bに示すように、突出部用部位45Fの先端用部位61Fを取付座24に重ねるようにして、バッグ用素材40における支持膨張部28Fの折返し部48を折り返せば、先端用部位61Fと一般部用部位43Lとの縁61b,43b相互、シート状部位47Fの縁49,50相互、先端用部位61Fと一般部用部位43Rとの縁61c,43b相互、及び、シート状部位47Fの縁52,53相互、を同時に重ねることができることから、これらの相互の部位を、所定の工業用ミシンの作業台にセットして、平面縫製により、容易に縫合することができる。その後、図8のC,図9のAに示すように、突出部用部位45Bの先端用部位61Bを取付座24に重ねるようにして、バッグ用素材40における支持膨張部28Bの折返し部48を折り返せば、先端用部位61Bと一般部用部位43Lとの縁61b,43c相互、シート状部位47Bの縁49,50相互、先端用部位61Bと一般部用部位43Rとの縁61c,43c相互、及び、シート状部位47Bの縁52,53相互、を同時に重ねることができることから、これらの相互の部位を、所定の工業用ミシンの作業台にセットして、平面縫製すれば、ハンドル側部22を、容易に形成することができる。
【0066】
その後、図9のBに示すバッグ用素材40からなるハンドル側部22の上方側から、バッグ用素材70からなる運転者側部32におけるエアバッグ20の外表面側を重ね、バッグ用素材40の円弧状に繋がった先端縁43a,43a,61a,61a(ハンドル側部22の外周縁22a)と、バッグ用素材70の外周縁70a(運転者側部32の外周縁32a)との相互を、縫合糸74を利用して、縫合し、外周縁22a,32aの結合代(縫代)が、エアバッグ20の外周面側に露出しないように、流入用開口23を利用して、反転させれば、図9のCに示すように、エアバッグ20を製造することができる。
【0067】
エアバッグ装置Mを組み立てて車両に搭載する場合には、リテーナ7の図示しない各ボルトを取付孔24aから突出させるようにエアバッグ20内にリテーナ7を入れ、ついで、エアバッグ20を折り畳んで、折り崩れしないように、エアバッグ20を所定の折り崩れ防止材によって包む。ついで、リテーナ7の図示しない各ボルトを貫通孔11cから突出させるように、ケース11内の底壁部11a上にエアバッグ20を収納し、さらに、インフレーター9の本体部9aを下方から底壁部11aの挿通孔11bに挿入させて、フランジ部9cにリテーナ7の図示しない各ボルトを貫通させて、各ボルトに図示しないナットを締結すれば、収納部位としてのケース11に、エアバッグ20とインフレーター9とを収納し、かつ、リテーナ7を利用して、エアバッグ20とインフレーター9とを取り付けることができる。さらに、ケース11にエアバッグカバー15を被せて、各係止爪11fを係止孔17aに挿入させて、側壁部11d,17相互を連結して、ケース11にエアバッグカバー15を取り付ければ、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。そして、エアバッグ装置Mの車両への搭載は、予め、操舵軸SSに締結したハンドル本体1に対して、ロアカバー5の図示しない作業穴を利用して、ケース11のブラケット部11eを、芯材2に対し、ボルト止め等して、取付固定すれば、エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
【0068】
第1実施形態の運転席用エアバッグ装置Mでは、作動時、膨張用ガスGが流入用開口23を経てエアバッグ20に流入するように作動すると、膨張用ガスGにより、エアバッグ20が膨張し、エアバッグカバー15の扉部16a,16aを押し開いて、エアバッグ20が、図1,2の二点鎖線や図10のAに示すように、収納部位としてのケース11から突出して、ハンドルWの上面Wu側を覆い、それらの上面Wu側に支持されるように、膨張を完了させる。
【0069】
そして、第1実施形態の運転席用エアバッグ20では、膨張を完了させて運転者Dを受け止める際、ハンドルWの中央部Bの前側(前面Bf側)に、前支持膨張部28Fが配置されることから、図10のBに示すように、運転者側部32の前縁32b側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、前支持膨張部28Fが、支持面部29Fをハンドル中央部Bの前面Bf側に当接させて(詳しくは、後面28cb側の支持面部29Fの元部28b側を、開いた扉部16aや前面Bfに圧接させて、中央部Bに支持されることから)、エアバッグ20の前縁32b側の下方への落ち込みを防止する。そのため、エアバッグ20は、傾かずに運転者Dに正対するように配置される運転者側部32により、的確に、ハンドルWに向かってくる運転者Dを受け止めることができる。
【0070】
したがって、第1実施形態のエアバッグ20は、中央部Bから前部BF側に向かう長さ寸法YFを短くしたハンドルWに搭載しても、膨張完了時に安定して運転者Dを受け止めて保護することができる。
【0071】
さらに、第1実施形態のエアバッグ20では、膨張完了時のハンドル側部22に、取付座24の後方側からハンドルWの後側に突出する後支持膨張部28Bが配設され、後支持膨張部28Bの元部28bから先端部28aまでの前面28cf側の領域に、エアバッグ20の運転者Dの受け止め時における運転者側部32の後方向の傾動時に、ハンドルWの後面Bb側に当接支持される後支持面部29Bが、配設されている。
【0072】
そのため、第1実施形態では、ハンドルWへの搭載状態で膨張を完了させて運転者Dを受け止める際、図10のCに示すように、ハンドルWの中央部Bの後側に、後支持膨張部28Bが配置されることから、運転者側部32の後縁32c側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、後支持膨張部28Bが、後支持面部29Bをハンドル中央部Bの後面Bb側に当接させて(詳しくは、前面28cf側の支持面部29Fの元部28b側を、開いた扉部16aや後面Bbに圧接させて、中央部Bに支持されることから)、エアバッグ20の後縁32c側の下方への落ち込みを防止する。その結果、エアバッグ20は、傾かずに運転者Dに正対するように配置される運転者側部32により、的確に、ハンドルWに向かってくる運転者Dを受け止めることができる。
【0073】
すなわち、このような構成のエアバッグ20では、搭載するハンドルWが中央部Bから前部BF側と後部BB側との両側に向かう長さ寸法YF,YBを中央部Bから左右に向かう長さ寸法XL,XRより短くしていても、膨張完了時に安定して、ハンドルWに向かってくる運転者Dを受け止めて保護することができる。
【0074】
換言すれば、第1実施形態のエアバッグ20では、少なくとも左右両側に操作把持部HL,HRを有して、中央部Bからの左右の幅寸法XWより前後の幅寸法YWを小さくしたハンドルWに搭載しても、好適に、運転者Dを受け止めることができる。
【0075】
勿論、運転者側部32の左右の縁32d,32e(図1参照)側が下方に落ち込もうとしても、ハンドルWが、左右方向の幅寸法XWを前後方向の幅寸法YWより広くしていることから、支持膨張部28によることなく、ハンドル側部22の取付座24から左右に延びる一般部26L,26Rが、ハンドルWの操作把持部HL,HR付近の連結部SFL,SFR,SBL,SBRの上面Wuや操作把持部HL,HR自体の上面Wuに当接支持され、運転者側部32の傾きが防止されて、エアバッグ20が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者を受け止めることができる。
【0076】
なお、前後の支持膨張部28F,28Bは、エアバッグ20の膨張完了時に、中央部Bの上面Bu(図1,2参照)の前縁から下方に延びる前面Bf側と、上面Buの後縁から下方に延びる後面Bb側と、に対して(適宜、開いた扉部16aを介在させて)、予め、どちらか一方、あるいは、両方が、当接するように配設されていたり、あるいは、両方が当接して、中央部Bを前後で挟持するように、配設される構成でもよい。勿論、少なくとも、運転者側部32が運転者Dを受け止めて前後に大きく傾動(揺動)することを抑制できれば、支持膨張部28F,28Bは、エアバッグ20の膨張完了時に、中央部Bの上面Buの前縁から下方に延びる前面Bf側と、上面Buの後縁から下方に延びる後面Bb側と、に対して、予め、離れて配置されてもよい。
【0077】
さらに、第1実施形態のエアバッグ20では、膨張完了時のハンドル側部22における前後の支持膨張部28F,28B間の左右両側に、ハンドルWの上面Wu側で支持される一般部26L,26Rと、一般部26L,26Rから延びて、前後の支持膨張部28F,28Bの上方側に延設させた延設部27F,27Bと、を備えて構成されている。
【0078】
そのため、実施形態では、前後の支持膨張部28F,28Bが、それぞれ、延設部27F,27Bと取付座24との間から部分的に突出するように形成されて、容積を小さく構成できて、エアバッグ20を迅速に膨張させることができる。
【0079】
また、第1実施形態では、ハンドル側部22が、可撓性を有したバッグ用素材40から形成され、バッグ用素材40が、取付座24を形成する取付座用部位41から左右に延びて、一般部26L,26Rを形成可能な一般部用部位43L,43Rと、取付座用部位41から前後に延びて、それぞれ、前後の支持膨張部28F,28Bを形成可能な突出部用部位45と、を備えて構成されている。前後の支持膨張部28F,28Bは、それぞれ、先端部28aに左右方向に沿う折返し部48を有し、かつ、折返し部48から延びる左右の縁の各々重なる相互、すなわち、縁49,50相互と、縁52,53相互と、を結合させたシート状部位47F,47Bから形成される構成としている。そして、前後の突出部用部位45F,45Bが、それぞれ、取付座24側に配置されるシート状部位47F,47Bと、先端側に配置される先端用部位61F,61Bと、を備えて構成されている。さらに、前後の先端用部位61F,61Bの先端縁61aと左右の一般部用部位43L,43Rの先端縁43aとが、運転者側部32の外周縁32aと結合される運転者側結合部を構成し、前後の先端用部位61F,61Bの外周縁における先端縁61aの両端から内側のシート状部位47F,47Bまで延びる左右の側縁61b,61cと一般部用部位43L,43Rの前後の側縁43b,43cとの前後で対向する部位が、相互に結合されるハンドル側部形成用の結合部を構成している。
【0080】
このような構成では、ハンドル側部22を構成するバッグ用素材40の前後の突出部用部位45F,45Bにおけるシート状部位47F,47Bにおいて、それぞれ、折返し部48を折り返して、重ねた左右の縁相互、すなわち、縁49,50相互と縁52,53相互とをそれぞれ結合して、支持膨張部28F,28Bを形成し、ついで、前後の突出部用部位45F,45Bの先端用部位61F,61Bの外周縁における先端縁61aから左右に延びてシート状部位47F,47Bまで延びる左右の側縁61b,61cと一般部用部位43L,43Rの前後の側縁43b,43cとの前後で対向する結合部相互、すなわち、一般部用部位43Lの側縁43bと先端用部位61Fの側縁61bとの相互、一般部用部位43Lの側縁43cと先端用部位61Bの側縁61bとの相互、一般部用部位43Rの側縁43bと先端用部位61Fの側縁61cとの相互、及び、一般部用部位43Rの側縁43cと先端用部位61Bの側縁61cとの相互、を、結合させれば、ハンドル側部22を形成できる。その後、ハンドル側部22における前後の先端用部位61F,61Bの先端縁61a,61aと左右の一般部用部位43L,43Rの先端縁43a,43aとの運転者側結合部を、運転者側部32の外周縁32aと結合させ、結合代が露出しないように、流入用開口23を利用して、表裏を反転させれば、エアバッグ20を製造することができる。
【0081】
したがって、上記のような構成では、所定の結合部位を重ねた平面縫製により、エアバッグ20を形成できて、容易に、エアバッグ20を製造することができる。
【0082】
さらに、第1実施形態では、ハンドル側部22を形成する可撓性を有したバッグ用素材40が、取付座用部位41、左右の一般部用部位43L,43R、及び、前後の突出部用部位45F,45B、を備えた一枚から形成されている。そのため、第1実施形態では、運転者側部32を形成するバッグ用素材70と合わせて、二枚の所定形状のバッグ用素材40,70により、エアバッグ20の外周壁21を形成できて、エアバッグ20の構成部品点数を低減できて、部品管理が容易となるとともに、結合作業を行う部位を低減できて、エアバッグ20を容易に製造することができる。
【0083】
特に、第1実施形態では、図8のA,B,C、図9のA,Bに示すように、平面縫製だけで、ハンドル側部22を形成できることから、支持膨張部28が部分的に突出する構成としていても、容易に、ハンドル側部22を形成することができる。
【0084】
なお、上記の点を考慮しなけば、ハンドル側部22を形成する可撓性を有したバッグ用素材40として、取付座用部位41、左右の一般部用部位43L,43R、及び、前後の突出部用部位45F,45Bが、それぞれ分断して構成されていたり、二枚に分断して構成されたり、あるいは、三枚に分断して構成されて、相互に結合させて、バッグ用素材40を形成してもよい。また、取付座を設けたハンドル側部に、支持膨張部を突出させる開口を設け、その開口周縁に、支持膨張部を結合させて、エアバッグを形成してもよい。
【0085】
また、図11,19に示す第2実施形態のエアバッグ200のように、膨張完了時のハンドル側部220の延設部27F,27Bに、支持膨張部28F,28BのハンドルWの中央部Bの前側(前面Bf側)若しくは後側(後面Bb側)への当接時(圧接時)における延設部27F,27B側への相対的な接近時、支持膨張部28F,28Bを支持可能な第2支持膨張部30F,30B、を配設させてもよい。第2支持膨張部30F,30Bは、先端部30aを先細りとした略長方形板状としている。
【0086】
この第2実施形態のエアバッグ200では、支持膨張部28F,28Bを支持する第2支持膨張部30F,30Bが、それぞれ、延設部27F,27Bと支持膨張部28F,28Bとの間から部分的に突出するように形成され、エアバッグ200の容積の増大を抑えて、前後の支持膨張部28F,28Bの支持力を向上させることができる。
【0087】
すなわち、図19のAに示すように、エアバッグ200が膨張を完了させた後、図19のBに示すように、運転者Dを受け止めて、運転者側部32の前縁32b側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、まず、前側の支持膨張部28Fが、後面28cb側の支持面部29FをハンドルWの中央部Bにおける開いた扉部16aを含めた前面Bfに圧接させて、中央部Bに支持され、運転者側部32の傾きが防止され、さらに、運転者側部32が傾こうとしても、第2支持膨張部30Fが、支持面部29Fを前面Bf側に当接させている前支持膨張部28Fの反対面(前面)28dに、支持面30bを当接させて、運転者側部32の傾きを防止できて、エアバッグ200が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者Dを受け止めることができる。
【0088】
同様に、図19のCに示すように、運転者側部32の後縁32c側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、まず、後側の支持膨張部28Bが、前面28cf側の支持面部29BをハンドルWの中央部Bの開いた扉部16aを含めた後面Bb側に圧接させて、中央部Bに支持され、運転者側部32の傾きが防止され、さらに、運転者側部32が傾こうとしても、第2支持膨張部30Bが、支持面部29Bを後面Bb側に当接させている支持膨張部28Bの反対面(後面)28dに、支持面30bを当接させて、運転者側部32の傾きを防止できて、エアバッグ200が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者を受け止めることができる。
【0089】
勿論、運転者側部32の左右の縁32d,32e(図11,19参照)側が下方に落ち込もうとしても、第1実施形態と同様に、支持膨張部28や第2支持膨張部30によることなく、ハンドル側部220の取付座24から左右に延びる一般部26L,26Rが、ハンドルWの操作把持部HL,HR付近の連結部SFL,SFR,SBL,SBRの上面Wuや操作把持部HL,HR自体の上面Wuに当接支持され、運転者側部32の傾きが防止されて、エアバッグ200が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者を受け止めることができる。
【0090】
このエアバッグ200は、図12に示すように、第1実施形態と同じバッグ用素材70からなる運転者側部32と、第1実施形態のバッグ用素材40と若干異なる形状のバッグ用素材400からなるハンドル側部220と、を使用して形成される。
【0091】
バッグ用素材400は、第2支持膨張部30F,30Bを形成する第2用部位54(54F,54B)を、第1実施形態のバッグ用素材40の突出部用部位45のシート状部位47(47F,47B)と先端用部位61(61F,61B)との間に配置させた点が、バッグ用素材40と異なっている。すなわち、バッグ用素材400は、バッグ用素材40と同様に、取付座用部位41、一般部用部位43(43L,43R)、及び、先端用部位61(61F,61B)、を備えて構成されている。但し、突出部用部位450(450F,450B)のシート状部位470(470F,470B)が、折返し部48の相互に縫合する左側の縁49,50と右側の縁52,53を有したバッグ用素材40のシート状部位47(47F,47B)と同様な部位に加えて、第2支持膨張部30(30F,30B)の先端部30aを形成する折返し部55と、折返し部55の左側の相互に重ねて縫合する縁56,57と、右側の相互に重ねて縫合する縁58,59と、を有した第2用部位54(54F,54B)、を備えた構成としている。
【0092】
このバッグ用素材400を使用してハンドル側部220を製造する工程は、図16のA,Bに示すように、補強布72を縫合して流入用開口23と取付孔24aを形成した後、例えば、第2用部位54Fにおける補強布72を縫合した面と逆側(外表面側)に山折りとなる折目を付けて、折返し部55を折り返し、折返し部55の左側の重ねた縁56,57相互と、右側の縁58,59相互と、を縫合して、先に、第2支持膨張部30Fの外周壁を形成するだけで、その後の作業は、図8のA,Bと同様である。すなわち、図16のB、図17のAに示すように、突出部用部位450Fの先端用部位61Fを取付座24に重ねるようにして、バッグ用素材400における支持膨張部28Fの折返し部48を折り返せば、先端用部位61Fと一般部用部位43Lとの縁61b,43b相互、シート状部位470Fの縁49,50相互、先端用部位61Fと一般部用部位43Rとの縁61c,43b相互、及び、シート状部位470Fの縁52,53相互、を同時に重ねることができることから、これらの相互の部位を、所定の工業用ミシンの作業台にセットして、平面縫製により、縫合する。ついで、図17のA,Bに示すように、第2用部位54Bにおける補強布72を縫合した側と逆側の面に山折りとなる折目を付けて、折返し部55を折り返し、折返し部55の左側の重ねた縁56,57相互と、右側の縁58,59相互と、を縫合して、第2支持膨張部30Bの外周壁を形成する。ついで、図17のB、図18のAに示すように、突出部用部位450Bの先端用部位61Bを取付座24に重ねるようにして、バッグ用素材400における支持膨張部28Bの折返し部48を折り返せば、先端用部位61Bと一般部用部位43Lとの縁61b,43c相互、シート状部位470Bの縁49,50相互、先端用部位61Bと一般部用部位43Rとの縁61c,43c相互、及び、シート状部位470Bの縁52,53相互、を同時に重ねることができることから、これらの相互の部位を、所定の工業用ミシンの作業台にセットして、平面縫製すれば、図13〜15に示すハンドル側部220を、容易に形成することができる。その後、図18のB,Cに示すように、第1実施形態と同様に、ハンドル側部220と運転者側部32とを重ねて、外周縁22a,32a相互を縫合し、反転させれば、エアバッグ200を製造することができる。
【0093】
ついで、第1実施形態のエアバッグ20と同様に、エアバッグ装置Mに組み付けて、ハンドルWに搭載すればよい。
【0094】
以上のように、前後の支持膨張部28F,28Bと第2支持膨張部30F,30Bとを備えたエアバッグ200は、エアバッグ20のバッグ用素材40と比較して、単に、シート状部位470F,470Bに、それぞれ、二つの支持膨張部28F,30F、あるいは、支持膨張部28B,30Bを形成可能に、二つの折返し部48,55を配設させる構成のバッグ用素材400を使用するだけで、容易に、形成することができる。
【0095】
なお、第2実施形態のエアバッグ200では、ハンドル側部220の前後の支持膨張部28F,28Bをそれぞれ支持可能な第2支持膨張部30F,30Bを設けた場合を示したが、適宜、前後の支持膨張部28F,28Bの一方側だけを支持するように、第2支持膨張部30を設けてもよい。
【0096】
また、第1,2実施形態のエアバッグ20,200では、ハンドル側部22,220の延設部27(27F,27B)から部分的に支持膨張部28(28F,28B),30(30F,30B)を突出させたものを示したが、図20,28に示す第3実施形態のエアバッグ201のように、ハンドル側部221の前後の縁22b,22cから下方に突出するように、支持膨張部28(28F,28B)を突出させてもよい。
【0097】
このエアバッグ201は、第1,2実施形態と同様な運転者側部32と、第1実施形態のバッグ用素材40と若干異なる形状のバッグ用素材401からなるハンドル側部221と、を備えて構成される。バッグ用素材401は、図21に示すように、バッグ用素材40の先端用部位61(61F,61B)からシート状部位47(47F,47B)にかけて、先端中央に凹溝61dを設けて左右両側に拡開させたような形状として、構成されている。このバッグ用素材401は、バッグ用素材40と同様に、取付座用部位41と一般部用部位43(43L,43R)とを備えて構成されている。但し、突出部用部位451が、すなわち、前後の先端用部位611(611F,611B)の先端縁61aが、それぞれ、左右方向の中央61acに、左右方向で対向する縁61e,61f相互を結合させる凹溝61dを配設させている。そのため、突出部用部位451は、凹溝61dによる拡開により、シート状部位471(471F,471B)の左右の元部側の縁50,53を、バッグ用素材40と同様としていても、シート状部位471(471F,471B)の左右の先端側の縁49,50を、バッグ用素材40の縁49,50より、左右に拡開させ、さらに、その部位に連なる先端用部位611(611F,611B)の左右の側縁61b,61cも、バッグ用素材40の側縁61b,61cより、左右に拡開させた形状としており、これらの部位が、バッグ用素材40と形状を異ならせている。
【0098】
このバッグ用素材401では、先端用部位611(611F,611B)の凹溝61dの左右方向で対向する対向縁61e,61fを相互に縫合すれば、図25のA,Bに示すように、縫合前の先端用部位611(611F,611B)の凹溝61dから左右に延びる先端縁61aの部位が、バッグ用素材40の先端用部位61の先端縁61aと同じ形状の円弧状となって、一般部用部位43(43L,43R)の先端縁43aとともに、運転者側部32(バッグ用素材70)の外周縁32a(70a)と縫合される運転者側結合部を構成することとなる。
【0099】
すなわち、このようなバッグ用素材401では、先端用部位611(611F,611B)の凹溝61dの左右方向で対向する対向縁61e,61fを相互に縫合して、平らに展開させれば、バッグ用素材40と同じ平面形状となる。そのため、その後には、図8のA,Bに示すと同様に、図25のB、図26のAに示すように、突出部用部位451Fの先端用部位611Fを取付座24に重ねるようにして、バッグ用素材401における支持膨張部28Fの折返し部48を折り返せば、先端用部位611Fと一般部用部位43Lとの縁61b,43b相互、シート状部位471Fの縁49,50相互、先端用部位611Fと一般部用部位43Rとの縁61c,43b相互、及び、シート状部位471Fの縁52,53相互、を同時に重ねることができることから、これらの相互の部位を、所定の工業用ミシンの作業台にセットして、平面縫製により、縫合する。ついで、図26のB、図27のAに示すように、突出部用部位451Bの先端用部位611Bを取付座24に重ねるようにして、バッグ用素材401における支持膨張部28Bの折返し部48を折り返せば、先端用部位611Bと一般部用部位43Lとの縁61b,43c相互、シート状部位471Bの縁49,50相互、先端用部位611Bと一般部用部位43Rとの縁61c,43c相互、及び、シート状部位471Bの縁52,53相互、を同時に重ねることができることから、これらの相互の部位を、所定の工業用ミシンの作業台にセットして、平面縫製すれば、図22〜24に示すハンドル側部221を、容易に形成することができる。その後、第1実施形態と同様に、図27のB,Cに示すように、ハンドル側部221と運転者側部32とを重ねて、外周縁22a,32a相互を縫合し、反転させれば、エアバッグ201を製造することができる。
【0100】
ついで、第1実施形態のエアバッグ20と同様に、エアバッグ装置Mに組み付けて、ハンドルWに搭載すればよい。
【0101】
この第3実施形態のエアバッグ201では、車両搭載状態で、図28のAに示すように、膨張を完了させた後、図28のBに示すように、運転者Dを受け止めて、運転者側部32が前方に傾こうとしても(前縁32bが下方に落ち込むように傾斜しようとしても)、前側の支持膨張部28Fが、後面28cb側の支持面部29Fを、特に、元部28b側を、開いた扉部16aを含めた前面Bfに圧接させて、中央部Bに支持されることから、運転者側部32の傾きが防止されて、エアバッグ201が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者Dを受け止めることができる。あるいは、図28のCに示すように、運転者Dを受け止めて、運転者側部32が後方に傾こうとしても(後縁32cが下方に落ち込むように傾斜しようとしても)、後側の支持膨張部28Bが、前面28cf側の支持面部29Bを、特に、元部28b側を、開いた扉部16aを含めた後面Bbに圧接させて、中央部Bに支持されることから、運転者側部32の傾きが防止されて、エアバッグ201が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者を受け止めることができる。
【0102】
そして特に、この第3実施形態のエアバッグ201では、膨張完了時に、ハンドル側部221の前後の縁22b,22cから支持膨張部28F,28Bを突出させることができて、大きな容積の支持膨張部28F,28Bを形成することができ、ハンドルWの前面Bfや後面Bbに当接支持される大きな容積の支持膨張部28F,28Bにより、大きな反力を確保可能となって、運動エネルギーの大きな運転者がエアバッグ201の前縁32b側や後縁32c側に移動してきても、エアバッグ201の運転者側部32が、傾かずに正対して、的確に運転者を受け止めることができる。
【0103】
勿論、このエアバッグ201でも、膨張完了後の運転者Dの受け止め時に、運転者側部32の左右の縁32d,32e(図20,28参照)側が下方に落ち込もうとしても、支持膨張部28(28B,28F)によることなく、ハンドル側部221の取付座24から左右に延びる一般部26L,26Rが、ハンドルWの操作把持部HL,HR付近の連結部SFL,SFR,SBL,SBRの上面Wuや操作把持部HL,HR自体の上面Wuに当接支持され、運転者側部32の傾きが防止されて、エアバッグ201が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者を受け止めることができる。
【0104】
なお、第3実施形態のエアバッグ201では、前後の支持膨張部28F,28Bを共に容積を大きくするように構成したが、前後の支持膨張部28F,28の一方だけを、容積を大きくするように、構成して、他方を、第1実施形態のエアバッグ20の支持膨張部28や、第2実施形態のエアバッグ200ように、第2支持膨張部30とともに設けた支持膨張部28、としてもよい。
【0105】
また、エアバッグの搭載される異形ハンドルとしては、図1,2に示すハンドルWの他、中央部Bからの長さ寸法として、左右両側に向かう長さ寸法XL,XRより、前後両側の少なくとも前部BF側に向かう長さ寸法YBを短くした形状、すなわち、左右両側に操作把持部H(L,R)を有して、長さ寸法YBを短くして、中央部Bからの左右の幅寸法XWより前後の幅寸法YWを小さくした形状であれば、図29,30に示す異形ハンドルW0や図31に示す異形ハンドルW1のように、操作把持部Hの前後方向の一方、例えば、前端Hfを自由端としていたり、異形ハンドルW0のように、中央部Bが、操作把持部Hより、下方に大きくずれて、配置されていてもよい。
【0106】
さらに、第1〜3実施形態のエアバッグ20,200,201では、前後両側に支持膨張部28F,28Bを設けた場合を示したが、図32〜34に示す第4実施形態のエアバッグ202のように、前側の支持膨張部28Fだけを形成してもよい。
【0107】
このエアバッグ202を使用するエアバッグ装置MAが搭載されるハンドルWAは、左右両側に操作把持部HL,HRを有して、中央部Bからの左右両側へ向かう長さ寸法XL,XRより、中央部Bから前部BF側へ向かう長さ寸法YFを短くした形状の異形ハンドルとしている。換言すれば、ハンドルWAの中央部Bの前部BF側に、リング部Rの部位を配設させずに、左右の把持部HL,HRとともに、中央部Bの後部BB側に、リング部Rの後部RBを配設させた形状としている。そして、中央部Bとリング部Rとが4つのスポーク部(連結部)S(SFL,SFR,SBL,SBR)により連結されている。中央部Bの下部には、操作時の回転中心となる操舵軸SSに連結されるボス3が配設されている。ハンドルWAは、ハンドル本体101とエアバッグ装置MAとから構成されている。
【0108】
ハンドル本体101は、中央部B、スポーク部S、及び、リング部Rの剛性を確保するために、鋼材等の金属材からなる芯材102を配設させて構成され、ボス103は、芯材102の中央の下部側に配設されている。また、芯材102の周囲には、適宜、合成樹脂製の被覆層104が配設されている。中央部Bの下面側は、合成樹脂製のロアカバー105に覆われている。
【0109】
運転席用エアバッグ装置MAは、図32〜34に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ202、エアバッグ202に膨張用ガスを供給するインフレーター9、折り畳んだエアバッグ202の上方を覆うエアバッグカバー115、エアバッグ202とインフレーター9とを収納保持するとともにエアバッグカバー115を保持するケース111、及び、インフレーター9とともにエアバッグ202をケース111に取り付けるためのリテーナ7、を備えて構成される。
【0110】
インフレーター9とリテーナ7とは、第1実施形態と同様な構成である。すなわち、リテーナ7は、四角環状の板金製として、エアバッグ202の流入用開口23の周縁を押えて、エアバッグ202をケース111に取り付けるとともに、インフレーター9をケース111に取り付けるように、四隅に、ケース111にナット止めされる図示しないボルトを備えて、構成されている。インフレーター9は、上部に複数のガス吐出口9bを備えた円柱状の本体部9aと、本体部9aの外周面から突出するフランジ部9cと、を備え、フランジ部9cには、リテーナ7の図示しない各ボルトを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。
【0111】
ケース111は、略直方体形状の板金製とし、ハンドルWAの中央部Bの上部側に配置されて、折り畳まれたエアバッグ202を収納する収納部位を構成し、長方形状の底壁部111aと、底壁部111aの外周縁から上方に延びる四角筒形状の側壁部111dと、を備えて構成されている。底壁部111aには、インフレーター9の本体部9aを下方から挿入可能な円形に開口した挿通孔111bが形成されるとともに、その周囲に、リテーナ7の図示しないボルトを貫通させる4つの貫通孔111c(図32参照)が形成されている。側壁部111dの前後の対向部位には、下方へ延びる舌片部111gが形成され、舌片部111gには、側壁部111dにエアバッグカバー115の側壁部117を止めるためのリベット12を貫通させる複数の貫通孔111hが設けられている。また、ケース111の側壁部111dの上端には、エアバッグ装置MAを中央部Bの上部に配設固定するために、芯材102に対し、ボルト止め等して、連結固定されるブラケット部111iが配設されている。
【0112】
エアバッグカバー115は、合成樹脂製として、収納したエアバッグ202の上方を覆う天井壁部116と、天井壁部116の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部117と、を備えて構成されている。天井壁部116には、膨張するエアバッグ202に押されて前後両側に開く2枚の扉部116a,116aが形成されている。側壁部117には、リベット12を挿通させる貫通孔117bが形成されている。
【0113】
第4実施形態のエアバッグ202は、第1,3実施形態のエアバッグ20,201と同様に、ハンドルWAの中央部Bの前側に突出して、中央部Bの前面Bf側に当接支持される前支持膨張部28Fを備えているものの、後支持膨張部28Bを備えていない点が、第1,3実施形態のエアバッグ20,201と相違しているだけであり、他の構成は同じである。特に、この第4実施形態のエアバッグ202は、前支持膨張部28Fは、第3実施形態のエアバッグ201の前支持膨張部28Fと同様に、容積を大きくするように構成されている。
【0114】
すなわち、図35〜37に示すように、エアバッグ202を構成するバッグ用素材としては、運転者側部32を形成するバッグ用素材70を第1,3実施形態と同一とし、ハンドル側部222を形成するバッグ用素材402が、第3実施形態のバッグ用素材401における後部側の突出部用部位451Bを備えていない構成として、前部側の突出部用部位451Fだけを備えている構成としている。詳しくは、バッグ用素材402は、取付座用部位41の左右両側に、一般部用部位43(43L,43R)を配設させ、取付座用部位41の前側に、突出部用部位451Fを配設させ、取付座用部位41の後側に、第3実施形態の左右の一般部用部位43L,43Rと先端用部位611Bとを結合させた略半円板状の後側部62を配設させて構成されている。さらに、第4実施形態のバッグ用素材402は、先端用部位611Fの先端縁61aの中央61acにおける凹溝61dの対向縁61e,61fが、前方に膨らむように形成されている点が、第3実施形態のバッグ用素材401の対向縁61e,61fと若干異なっており、他の第3実施形態のバッグ用素材40と同様な部位には、同じ符号を付してある。
【0115】
このエアバッグ202の製造は、図38のA,Bに示すように、先端用部位611Fの凹溝61dの左右方向で対向する対向縁61e,61fを相互に縫合して、平らに展開させ、その後、図38のCに示すように、突出部用部位451Fの先端用部位611Fを取付座24に重ねるようにして、バッグ用素材402における支持膨張部28Fの折返し部48を折り返せば、先端用部位611Fと一般部用部位43Lとの縁61b,43b相互、シート状部位471Fの縁49,50相互、先端用部位611Fと一般部用部位43Rとの縁61c,43b相互、及び、シート状部位471Fの縁52,53相互、を同時に重ねることができることから、これらの相互の部位を、所定の工業用ミシンの作業台にセットして、平面縫製すれば、ハンドル側部222を、容易に形成することができる。その後、ハンドル側部222と運転者側部32とを重ねて、外周縁22a(運転者側結合部61a,43a,後側部62の外周縁62a),32a相互を縫合し、反転させれば、エアバッグ202を製造することができる。
【0116】
このように製造したエアバッグ202は、第1実施形態のエアバッグ20と同様に、エアバッグ装置MAに組み付けて、ハンドルWAに搭載すればよい。
【0117】
第4実施形態の運転席用エアバッグ装置MAでも、作動時、膨張用ガスGが流入用開口23を経てエアバッグ202内に流入して、エアバッグ202が膨張すれば、エアバッグカバー115の扉部116a,116aを押し開いて、エアバッグ202が、図32,33の二点鎖線や図39のAに示すように、収納部位としてのケース111から突出して、ハンドルWAの上面Wu側を覆い、それらの上面Wu側に支持されるように、膨張を完了させる。
【0118】
そして、第4実施形態の運転席用エアバッグ202では、膨張を完了させて運転者Dを受け止める際、ハンドルWAの中央部Bの前側(前面Bf側)に、前支持膨張部28Fが配置されることから、図39のBに示すように、運転者側部32の前縁32b側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、前支持膨張部28Fが、支持面部29Fをハンドル中央部Bの前面Bf側に当接させて(詳しくは、後面28cb側の支持面部29Fの元部28b側を、開いた扉部116aや前面Bfに圧接させて、中央部Bに支持されることから)、エアバッグ202の前縁32b側の下方への落ち込みを防止する。そのため、エアバッグ202は、傾かずに運転者Dに正対するように配置される運転者側部32により、的確に、ハンドルWAに向かってくる運転者Dを受け止めることができる。なお、エアバッグ202の前縁32b側以外の部位では、ハンドル側部222の取付座24から左右に延びる一般部26L,26Rが、ハンドルWAの操作把持部HL,HR付近の上面Wuに当接支持され、後縁32c側では、取付座24の後方側の一般部26Bがリング部Rの後部RBの上面Wuに当接支持され、運転者側部32の傾きが防止されて、エアバッグ202が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者を受け止めることができる。
【0119】
したがって、第4実施形態のエアバッグ202は、中央部Bから前部BF側に向かう長さ寸法YFを短くしたハンドルWAに搭載しても、膨張完了時に安定して運転者Dを受け止めて保護することができる。
【0120】
なお、第4実施形態のエアバッグ202の前支持膨張部28Fは、凹溝61dの対向縁61e,61fが膨らむ形状として、バッグ用素材402の対応部位の面積を、バッグ用素材401の対応部位の面積より、広くしており、エアバッグ201の前支持膨張部28Fより、若干、容積を広くしている。
【0121】
また、前支持膨張部28Fだけを形成する場合、図40に示すエアバッグ202Aのように、第1実施形態のエアバッグ20の後支持膨張部28Bを省いて、前支持膨張部28Fだけを配設するように、構成してもよい。このエアバッグ202Aは、ハンドル側部222Aを形成するバッグ用素材402Aとして、図41に示すように、第1実施形態のバッグ用素材40の取付座用部位41の後部側において、突出部用部位45Bを無くして、半円板状の後側部62を設けたものを使用すればよい。
【0122】
さらに、図42に示すように、第4実施形態の容積を大きくした支持膨張部を後側に配設するように構成してもよい。このような容積の大きな前後の支持膨張部28F,28Bを有したエアバッグ202Bは、ハンドル側部222Bの構成として、図43に示すバッグ用素材402Bのように、前部側の突出部用部位451Fを、流入用開口23を中心として、前後方向で対称的に、後方側に配設させて、突出部用部位451Bを設ければ、製造することができる。
【0123】
また、支持膨張部を形成する際、図44〜48に示す第5実施形態のエアバッグ203のように、膨張用ガスを先に流入させて膨張する一次膨張部80と、一次膨張部80の供給口83から膨張用ガスGを流入させて膨張を完了させる二次膨張部90と、から構成して、ハンドルWAの前面Bf側に当接支持される前支持膨張部28Fを、一次膨張部80の部位から構成するようにしてもよい。
【0124】
エアバッグ203の一次膨張部80は、流入用開口23からの膨張用ガスを流入させて膨張可能として、供給口83を配設させて構成される元部81と、元部81から延びて前支持膨張部28Fを形成する先端部82と、を備えて構成されている。エアバッグ203の二次膨張部90は、支持膨張部28Fの外周壁を除いたエアバッグ203の外周壁213を形成するように構成されている。換言すれば、二次膨張部90は、アウタバッグ91を構成し、一次膨張部80は、前支持膨張部28Fを有して、元部81をアウタバッグ91内に収納させたインナバッグ84として構成されている。
【0125】
インナバッグ84は、図44〜46に示すように、前支持膨張部28Fを形成する略長方形状の支持用部材87,88の他、共に略円板状とした開口側部85と蓋側部86とを備えて構成されている。開口側部85には、流入用開口23や取付孔24aを有した取付座24が配設され、さらに、前支持膨張部28Fに膨張用ガスGを流入させる挿通孔85aが形成され、蓋側部86には、アウタバッグ91(二次膨張部90)側に膨張用ガスGを供給する供給口83が開口されている。アウタバッグ91は、共に略円板状としてハンドル側部223と運転者側部323とを備え、ハンドル側部223には、流入用開口23や取付孔24aを有した取付座24が配設され、さらに、前支持膨張部28Fに膨張用ガスGを流入させる挿通孔91aが形成されている。一次膨張部80を構成する前支持膨張部28Fは、略長方形状の支持用部材87,88の外周縁相互を縫合するとともに、元部28b側を挿通孔85a,91aの周縁に縫合して、形成されている。
【0126】
このエアバッグ203は、孔開け加工前の状態で、アウタバッグ91のハンドル側部223を構成するバッグ用素材403の内周面側に、流入用開口23の周縁の部位相互を一致させて、インナバッグ84の供給口83を設けた開口側部85を重ね、流入用開口23の周縁の部位相互を縫合し、ついで、流入用開口23、取付孔24a、及び、挿通孔85a,91aを孔開け加工して形成する。ついで、開口側部85と反対側のバッグ用素材403の外周面側における挿通孔91a,85a周縁に、開口側部85を共縫いしつつ、支持用部材87,88の元部28b側を、縫合し、ついで、支持用部材87,88の外周縁相互を、先端部28a側を含めて、縫合して、前支持膨張部28Fを形成する。
【0127】
ついで、開口側部85に蓋側部86を重ねて、外周縁相互を縫合し、インナバッグ84を形成する。その後、ハンドル側部223を構成するバッグ用素材403におけるインナバッグ84の元部81の反対側に、運転者側部323を構成するバッグ用素材70を重ねて外周縁40a,70a相互を縫合し、流入用開口23を利用して、裏返せば、エアバッグ203を製造することができる。製造したエアバッグ203は、第1実施形態等と同様に、エアバッグ装置MAに組み付けて、ハンドルWAに搭載すればよい。
【0128】
第5実施形態のエアバッグ203を使用した運転席用エアバッグ装置MAでも、作動時、膨張用ガスGが流入用開口23を経てエアバッグ203内に流入して、エアバッグ203が膨張すれば、エアバッグカバー115の扉部116a,116aを押し開いて、エアバッグ203が、図47のA,B、図48のAに示すように、収納部位としてのケース111から突出して、ハンドルWAの上面Wu側を覆い、それらの上面Wu側に支持されるように、膨張を完了させる。
【0129】
そして、第5実施形態の運転席用エアバッグ203では、膨張を完了させて運転者Dを受け止める際、ハンドルWAの中央部Bの前側(前面Bf側)に、前支持膨張部28Fが配置されることから、図48のBに示すように、運転者側部323の前縁32b側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、前支持膨張部28Fが、支持面部29Fをハンドル中央部Bの前面Bf側に当接させて(詳しくは、後面28cb側の支持面部29Fの元部28b側を、開いた扉部116aや前面Bfに圧接させて、中央部Bに支持されることから)、エアバッグ203の前縁32b側の下方への落ち込みを防止する。そのため、エアバッグ203は、傾かずに運転者Dに正対するように配置される運転者側部32により、的確に、ハンドルWAに向かってくる運転者Dを受け止めることができる。なお、エアバッグ203の前縁32b側以外の部位では、ハンドル側部223の取付座24から左右に延びる一般部26L,26Rが、ハンドルWAの操作把持部HL,HR付近の上面Wuに当接支持され、後縁32c側では、取付座24の後方側の一般部26Bがリング部Rの後部RBの上面Wuに当接支持され、運転者側部32の傾きが防止されて、エアバッグ203が、運転者Dに正対するように配置された運転者側部32により、的確に、運転者を受け止めることができる。
【0130】
また特に、この第5実施形態のエアバッグ203では、エアバッグ203に膨張用ガスGが流入されれば、図47のA,Bに示すように、一次膨張部80が膨張し、図48のAに示すように、一次膨張部80の供給口83を経て供給される膨張用ガスGにより、二次膨張部90が膨張する。そして、一次膨張部80の膨張完了時には、前支持膨張部28Fも膨張を完了させることから、二次膨張部90の膨張完了前に、前支持膨張部28Fの支持面部29Fが、迅速に、ハンドルWAの前面Bf側に対向する所定位置に、配置される。そのため、二次膨張部90が膨張を完了させて、運転者Dを受け止めることとなっても、前支持膨張部28Fの支持面部29Fが既に適切な位置に配置されており、前支持膨張部28Fが迅速にハンドルWAの前面Bf側に当接支持されて、運転者側部323の前縁32b側の落ち込みを的確かつ安定して防止でき、その結果、エアバッグ203は、ハンドルWAに向かってくる運転者Dを、より安定した状態で、受け止めて保護することができる。
【0131】
なお、一次膨張部により支持膨張部を構成する場合、図49〜53に示す第6実施形態のエアバッグ204に示すように、前後の支持膨張部28F,28Bを、一次膨張部80Aの前後の先端部82F,82Bから形成してもよい。
【0132】
このエアバッグ204は、一次膨張部80Aの元部81の前後両側において、エアバッグ204の外周壁214を構成するアウタバッグ91Aの挿通孔91a,91aから支持膨張部28F,28Bを突出させるように構成されている。なお、このエアバッグ204は、第5実施形態の支持膨張部28Fを、流入用開口23を中心として、前後方向で対称的に配置させて、後支持膨張部28Bを設ければ、形成できる。アウタバッグ91を構成する二次膨張部90Aには、一次膨張部80Aの元部81から延びる前後の先端部82F,82Bを挿通させる挿通孔91aが、流入用開口23の前後両側に配設されている(図51参照)。
【0133】
このエアバッグ204は、孔開け加工前の状態で、アウタバッグ91Aのハンドル側部224を構成するバッグ用素材404(図51参照)の内周面側に、流入用開口23の周縁の部位相互を一致させて、インナバッグ84Aの供給口83を設けた開口側部85Aを重ね、流入用開口23の周縁の部位相互を縫合し、ついで、流入用開口23、取付孔24a、及び、挿通孔85a,91aを孔開け加工して形成する。ついで、開口側部85と反対側のバッグ用素材404の外周面側における前後2箇所の挿通孔91a周縁に、それぞれ、開口側部85を共縫いしつつ、支持用部材87,88の元部28b側を、縫合し、ついで、支持用部材87,88の外周縁相互を、先端部28a側を含めて、縫合して、前後の前支持膨張部28F,28Bを形成する。
【0134】
ついで、開口側部85Aに蓋側部86Aを重ねて、外周縁相互を縫合し、インナバッグ84Aを形成する。その後、ハンドル側部224を構成するバッグ用素材404におけるインナバッグ84Aの反対側に、運転者側部324を構成するバッグ用素材70を重ねて外周縁40a,70a相互を縫合し、流入用開口23を利用して、裏返せば、エアバッグ204を製造することができる。製造したエアバッグ204は、第1実施形態等と同様に、エアバッグ装置Mに組み付けて、ハンドルWに搭載すればよい。
【0135】
第6実施形態のエアバッグ204を使用した運転席用エアバッグ装置Mでも、作動時、膨張用ガスGが流入用開口23を経てエアバッグ204内に流入して、エアバッグ204が膨張すれば、エアバッグカバー15の扉部16a,16aを押し開いて、エアバッグ204が、図52のA,B、図53のAに示すように、収納部位としてのケース11から突出して、ハンドルWの上面Wu側を覆い、それらの上面Wu側に支持されるように、膨張を完了させる。
【0136】
そして、エアバッグ204に膨張用ガスが流入されれば、一次膨張部80Aが膨張し、一次膨張部80Aの供給口83を経て供給される膨張用ガスGにより、二次膨張部90Aが膨張する。そして、一次膨張部80Aの膨張完了時には、支持膨張部28F,28Bも膨張を完了させることから、二次膨張部90Aの膨張完了前に、各支持膨張部28F,28Bの支持面部29F,29Bが、迅速に、ハンドルWの前面Bf側や後面Bb側に対向する所定位置に、配置される。そのため、図53のBに示すように、二次膨張部90Aが膨張を完了させて、運転者Dを受け止めることとなっても、支持膨張部28F,28Bの支持面部29F,29Bが既に適切な位置に配置されており、支持膨張部28F,28Bが迅速にハンドルWの前面Bf側や後面Bb側に当接支持されて、運転者側部324の前縁32b側や後縁32c側の落ち込みを的確かつ安定して防止でき、その結果、エアバッグ204は、ハンドルWに向かってくる運転者Dを、より安定した状態で、受け止めて保護することができる。なお、エアバッグ204の左右の落ち込みは、ハンドル側部224の取付座24から左右に延びる一般部26L,26R付近が、ハンドルWの操作把持部HL,HR付近の上面Wuに当接支持されて、防止される。
【0137】
また、支持膨張部の支持面部を、積極的に、ハンドルの前面に当接支持させるように構成してもよい。例えば、図54〜58に示す第7実施形態のエアバッグ205のように、前側の支持膨張部28Fにおける取付座24との間の境界部位、すなわち、膨張完了時のエアバッグ205における取付座24の前縁側から膨らむ支持膨張部28Fとの間の折曲部25を、ハンドルWAの前部BF側の前面Bfと上面Buとの交差部位(角部)Bc付近(詳しくは、交差部位Bc近傍の前面Bf側)に配設させて、支持膨張部28Fにおける折曲部25から下方に延びる略長方形の平面状の板状の支持面部29Fが、元部28b側だけでなく、上下方向の中央部29a付近や先端29c付近も、ハンドルWAの前面Bfに当接支持させるように構成してもよい。なお、エアバッグ装置MAとして使用されるエアバッグ205の膨張完了状態の平面視は、図32の二点鎖線で示すエアバッグ202と同様な形状となる。
【0138】
この第7実施形態のエアバッグ205では、図55に示すように、第4実施形態のエアバッグ202(図32〜39参照)に近似して、支持膨張部28Fがハンドル側部225の前縁22bから下方に突出するように構成されている。また、ハンドル側部225を形成するバッグ用素材405も、図56,57に示すように、第4実施形態のエアバッグ202のバッグ用素材402(図35,38参照)と近似している。
【0139】
すなわち、第7実施形態のエアバッグ205のハンドル側部225は、第4実施形態のハンドル側部222と同様に、流入用開口23を有した取付座24の左右両側と後方側とに配置されて、ハンドルWAの上面Bu側で支持される一般部26L,26R,26Bと、前側の支持膨張部28Fと、を備えて構成され、支持膨張部28Fは、前面28h側をハンドル側部222の前縁22b側に接続させるように、すなわち、前縁22bから下方に突出するように、構成されている。
【0140】
ハンドル側部224を形成するバッグ用素材405は、第4実施形態のバッグ用素材402と同様に、図56,57に示すように、ポリアミド等の織糸を織った布材からなって、可撓性を有するとともに、取付座24を形成する取付座用部位41と、取付座用部位41から左右両側と後側とに延びて、一般部26L,26R,26B(後側部62)を形成可能な一般部用部位43(L,R,B)と、取付座用部位41から前側に延びて、支持膨張部28Fを形成可能な突出部用部位455Fと、を備えて構成されている。また、支持膨張部28Fは、先端部28aに左右方向に沿う折返し部48を有し、かつ、折返し部48から延びる左右の縁49,50と縁52,53の各々重なる相互を結合させたシート状部位475Fから形成される構成としている。
【0141】
そして、突出部用部位455Fが、取付座24側に配置されるシート状部位475Fと、先端側に配置される先端用部位615Fと、を備えて構成されている。先端用部位615Fの先端縁61aと左右の一般部用部位43L,43Rの先端縁43aとが、運転者側部32の外周縁32aと結合される運転者側結合部を構成し、先端用部位615Fの外周縁における先端縁61aの両端から内側のシート状部位475Fまで延びる左右の側縁61b,61cと一般部用部位43L,43Rの前側の側縁43bとの前後で対向する部位が、相互に結合されるハンドル側部形成用の結合部を構成している。
【0142】
さらに、支持膨張部28Fがハンドル側部225の前縁22bから突出して容積を大きくできるように、第4実施形態のバッグ用素材402と同様に、先端用部位615Fの先端縁61aが、左右方向の中央61acに、左右方向で対向する縁61e,61f相互を結合させる凹溝61dを配設させるとともに、凹溝61dから左右に延びる先端縁61aの部位が、運転者側結合部61aを構成している。左右方向で対向する縁61e,61fは、第4実施形態のバッグ用素材402と同様に、相互に接近するように前方側に膨らむ形状としている。
【0143】
そして特に、このハンドル側部225(バッグ用素材405)では、ハンドル側部形成用の結合部43b,61b,61cにおける運転者側部32との結合部位44が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、ハンドルWAの前面Bf側におけるハンドルWAの操舵軸SSに沿った方向での上方付近に、配設されるように、すなわち、ハンドルWAの前面Bf側における操舵軸SSに沿った直線UPc付近に、配設されるように、構成されている(図58参照)。なお、直線UPcの通るハンドルWAの前面Bf側は、中央部Bの前部BFにおける最も前方に突出した部位を基準としている。
【0144】
上記の構成を説明すれば、バッグ用素材405における支持膨張部28Fの支持面部29Fを構成する部位は、突出部用部位455Fのシート状部位475Fにおける取付座用部位41(取付座24)との境界部位25の前方側の略長方形の平面状のエリアとなる。また、境界部位25は、エアバッグ205の膨張時、取付座24の前側で支持膨張部28Fが下方へ突出することから、ハンドル側部225での左右方向に沿って略直線状に延びた折曲部25、を構成することとなる。そして、この第7実施形態では、折曲部25が、ハンドルWAの中央部Bにおける前部BF側の前面Bfと上面Buとの交差部位(角部)付近の前面Bf側に、配設されている。
【0145】
すなわち、バッグ用素材405の寸法形状から見れば、突出部用部位455Fのシート状部位475Fと取付座用部位41との境界部位25は、左右方向に沿って直線状に延び、そして、取付座用部位41の左右の一般部用部位43L,43Rにおける左右方向に沿って直線状に延びる側縁43bと連なる部位となる。これらの側縁43bは、先端用部位615Fの側縁61b,61cと結合されて、ハンドル側部形成用の結合部を形成し、そして、左右の先端側は、運転者側結合部43a,61aとともに、運転者側部32の外周縁32a(運転者側部32のバッグ用素材70の外周縁70a)と結合される結合部位44となる。この結合部位44は、第7実施形態の場合、エアバッグ205の膨張完了時、図58に示すように、ハンドルWAの前面Bf側における操舵軸SSに沿った直線(基準線)UPc付近に、配設されることとなり、そのため、第7実施形態では、流入用開口23の中心Oからハンドル側部形成用の結合部43b,61b,61cまでの距離L0(図56参照)が、エアバッグ装置MAとしてハンドルWAに搭載された状態で膨張を完了させた際、折曲部25をハンドルWAの中央部Bにおける前部BF側の前面Bfと上面Buとの交差部位(角部)Bc近傍の前面Bf側に配設させる長さ寸法、となるように、設定されている。
【0146】
第7実施形態のエアバッグ205の製造は、第4実施形態のエアバッグ202と同様に、図57のA,Bに示すように、ハンドル側部225を構成するバッグ用素材405の突出部用部位455Fにおける先端用部位615Fの凹溝61dを閉じるように結合させて、先端用部位615Fの先端縁61aを運転者側部32の前縁32bに対応させた円弧状とし、さらに、図57のCに示すように、突出部用部位455Fのシート状部位475Fにおいて、折返し部48を折り返して、重ねた左右の縁49,50相互と縁52,53相互と縫合(結合)して、容積の大きな前側の支持膨張部28Fを形成し、ついで、突出部用部位455Fの先端用部位615Fの外周縁における先端縁61aの両端から内側のシート状部位475Fまで延びる左右の側縁61b,61cと一般部用部位43L,43Rの側縁43b,43bとの前後で対向する結合部相互を、結合させれば、ハンドル側部225を形成できる。その後、ハンドル側部225における前側の先端用部位615Fの先端縁61aと左右の一般部用部位43L,43Rの先端縁43aとの運転者側結合部を、運転者側部32の外周縁32aと結合させ、結合代が露出しないように、流入用開口23を利用して、表裏を反転させれば、エアバッグ205を製造することができる。
【0147】
この第7実施形態のでエアバッグ205でも、第4実施形態と同様に、ハンドル側部225の前縁22bから突出させて容積を大きくした支持膨張部28Fを有していても、平面縫製により、容易に、製造することができる。
【0148】
そして、このように製造したエアバッグ205は、第4実施形態のエアバッグ202と同様に、エアバッグ装置MAに組み付けて、ハンドルWAに搭載すればよい。
【0149】
この第7実施形態の運転席用エアバッグ装置MAでも、作動時、インフレーター9からの膨張用ガスGが流入用開口23を経てエアバッグ205内に流入して、エアバッグ205が膨張すれば、エアバッグカバー115の扉部116a,116aを押し開いて、エアバッグ205が、図54の二点鎖線や図58のAに示すように、収納部位としてのケース111から突出して、ハンドルWAの上面Wu側を覆い、それらの上面Wu側に支持されるように、膨張を完了させる。特に、第7実施形態では、膨張完了時のエアバッグ205のハンドル側部225が、ハンドルWAの操舵軸SSに沿った方向で、ハンドルWAの前面Bf側に沿うように、支持膨張部28Fの支持面部29とハンドル側部形成用結合部43b,61b,61cとを配設させている。そのため、ハンドル側部225の支持膨張部28Fの支持面部29Fを広い面積でハンドルWAの前面Bf側に当接支持させることができることから、ハンドルWAへの搭載状態で膨張を完了させて運転者を受け止める際、運転者側部32の前縁32b側が下方に落ち込むように傾斜しようとしても、支持膨張部28Fが支持面部29を広い面積でハンドルWAの前面Bf側に当接させて、エアバッグ205が直ちに反力を確保できる。その結果、エアバッグ205は、傾くこと無く運転者に正対するように配置される運転者側部32により、迅速かつ的確に、前部側の短いハンドルWAに向かってくる運転者を受け止めることができる。
【0150】
なお、第7実施形態の場合、膨張を完了させたエアバッグ205では、支持膨張部28Fの支持面部29Fは、上下方向の中央部29a付近だけでなく、折曲部25近傍の元部29b付近から先端29c付近までの広い面積で、ハンドルWAの前面Bf側における開いた扉部116aの裏面側を含めたエアバッグカバー115の前側115aやロアカバー105の前面105aに当接支持されている。
【0151】
また、膨張完了時のエアバッグ205として、支持面部29Fの少なくとも上下方向の中央部29a付近を含めた面を、ハンドルWAの前面Bfに当接支持させる場合には、ハンドル側部形成用の結合部43b,61b,61cの運転者側部32との結合部位44が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、ハンドルWAの前面Bf側におけるハンドルWAの操舵軸SSに沿った方向の基準線UPcに一致させる場合だけで無く、若干、前後にずれるように、構成されていてもよい。
【0152】
すなわち、図59のA,Bに示すエアバッグ205A,205Bに示すように、構成してもよい。
【0153】
エアバッグ205Aは、ハンドル側部形成用の結合部43b,61b,61cの運転者側部32との結合部位44が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、ハンドルWAの前面Bf側におけるハンドルWAの操舵軸SSに沿った方向の基準線UPcより後方側に配設されるものである。換言すれば、ハンドル側部225の流入用開口23の中心Oから結合部43b,61b,61cや境界部位25までの距離LOが、図56の二点鎖線に示す距離LObとなっているものである。
【0154】
エアバッグ205Bは、ハンドル側部形成用の結合部43b,61b,61cの運転者側部32との結合部位44が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、ハンドルWAの前面Bf側におけるハンドルWAの操舵軸SSに沿った方向の基準線UPcより前方側に配設されるものである。換言すれば、ハンドル側部225の流入用開口23の中心Oから結合部43b,61b,61cや境界部位25までの距離LOが、図56の二点鎖線に示す距離LOfとなっているものである。
【0155】
但し、結合部位44が基準線UPcより後方側のエアバッグ205Aでは、膨張完了時、取付座24の前縁側の支持膨張部28Fとの境界部位(折曲部)25が、ハンドルWAの前部BFの前面Bf側から後方側にずれた上面Bu側に当接支持される状態となって、支持膨張部28Fの支持面部29FのハンドルWAの前面Bf側から受ける反力が、後方にずれた境界部位25付近を回転中心として、運転者側部32の後縁32cを下方に向けるモーメントを発生させてしまい、その結果、図59のAに示すように、運転者側部32の後縁32c側を下方にずらすように、運転者側部32を傾かせる事態を招くことから、後方側へのずれbsは50mmを越えないことが望ましい。
【0156】
また、結合部位44が基準線UPcより前方側のエアバッグ205Bでは、取付座24の前縁側の支持膨張部28Fとの境界部位(折曲部)25が、ハンドルWAの前部BF側の上面Bu側から離れた前面Bf側に当接支持される状態となって、支持膨張部28Fの支持面部29Fが、元部29b付近をハンドルWAの前面Bfに当接させることができるものの、取付座24の前縁側の部位もハンドルWAの前面Bf側に当接して支持膨張部28Fの元部28b側を前方側に押し出す力を発生させて、先端29c側を、ハンドルWAの前面Bfから離隔させ易くなって、支持膨張部28Fのハンドル前面Bfからの反力を迅速に確保し難くなることから、前方側へのずれfsは50mmを越えないことが望ましい。
【0157】
すなわち、前側の支持膨張部28Fを備えたエアバッグ205としては、ハンドル側部形成用の結合部43b,61b,61cの運転者側部32との結合部位44が、膨張完了時の左右方向から見た側面視として、ハンドルWAの前面Wf側の基準線UPcを中心として、前後に50mmずつずれた範囲内に、配設されるように、構成されていることが望ましい。
【0158】
換言すれば、膨張完了時のエアバッグ205では、折曲部25が、ハンドルWAの前部BF側の前面Bfと上面Buとの交差部位Bc付近に、好ましくは、交差部位Bc近傍の前面Bf側に、配設される構成とすることが望ましい、ともいえる。
【0159】
なお、各実施形態の運転者側部32の平らに展開させた外径寸法D0は約700mm、流入用開口23の開口径d0は約65mmとしている。
【0160】
さらに、エアバッグ205,205A,205Bのように、支持膨張部28Fと取付座24との境界部位25をハンドルWAの中央部Bの前部BF側における前面Bfと上面Buとの交差部位Bc付近に配置させて、支持膨張部28Fの支持面部29Fを広く前面Bfに当接支持させる構成は、図60〜62に示す第8実施形態のエアバッグ206のように、後側の支持膨張部28Bを設ける場合にも適用できる。
【0161】
すなわち、この第8実施形態のエアバッグ206では、図20に示す第3実施形態のエアバッグ201と近似しているものの、前側の支持膨張部28Fと取付座24との境界部位25FをハンドルWの中央部Bの前部BF側における前面Bfと上面Buとの交差部位BcF付近の前面Bf側(前面Bf側の基準線UPc付近)に配置させて、後側の支持膨張部28Bと取付座24との境界部位25BをハンドルWの中央部Bの後部BB側における後面Bbと上面Buとの交差部位BcB付近の後面Bb側(後面Bb側の基準線UPc付近)に配置させる構成としている。
【0162】
そのため、このエアバッグ206では、支持膨張部28Fの支持面部29Fを広く前面Bfに当接支持させることができるとともに、支持膨張部28Bの支持面部29Bも広く後面Bbに当接支持させることができることとなる。
【0163】
なお、このエアバッグ206では、第3実施形態のエアバッグ201と同様に、単に、後支持膨張部28Bを、前支持膨張部28Fと前後対称的に、ハンドル側部226(バッグ用素材406)に配設させて、構成したものであり、エアバッグ201と同様な部位には同じ符号を付してある。
【0164】
また、支持面部29FをハンドルWAの前面Bfに広い面積で当接支持させる場合、図63〜67に示す第9実施形態のエアバッグ207のように構成してもよい。
【0165】
このエアバッグ207は、可撓性を有したストラップ35(L,R)が、膨張完了時の支持膨張部28Fにおける支持面部29FをハンドルWAの前面Bf側に押し付ける方向に引張可能として、支持膨張部28Fと支持膨張部28Fの後方側のエアバッグ207の外周壁21の部位とを連結するように、配設されている。
【0166】
具体的には、左右のストラップ35は、それぞれ、元部35b側が、エアバッグ207の左右両側における前後方向の中央付近の運転者側部32とハンドル側部227との間に結合(縫合)され、先端部35a側が、支持膨張部28Fの上下方向の中間部位に結合されている。詳しくは、先端部35a側は、ハンドル側部227を形成するバッグ用素材407の突出部用部位457Fにおけるシート状部位477Fの折返し部48から折り返して重ねた縁49,50や縁52,53の上下方向の中間位置付近に縫合させて形成されている。
【0167】
すなわち、このエアバッグ207は、図66のA,B,Cに示すように、ハンドル側部227を構成するバッグ用素材407の突出部用部位457Fにおける先端用部位617Fの凹溝61dを閉じるように結合させて、先端用部位617Fの先端縁61aを運転者側部32の前縁32bに対応させた円弧状とし、さらに、突出部用部位457Fのシート状部位477Fにおいて、折返し部48を折り返して、重ねた左右の縁49,50相互と縁52,53相互と縫合(結合)して、容積の大きな前側の支持膨張部28Fを形成し、ついで、突出部用部位455Fの先端用部位617Fの外周縁における先端縁61aの両端から内側のシート状部位477Fまで延びる左右の側縁61b,61cと一般部用部位43L,43Rの側縁43b,43bとの前後で対向する結合部相互を、結合させれば、ハンドル側部227を形成できる。その後、図66のDに示すように、ハンドル側部227の左右の一般部用部位43L,43Rの先端縁43aの所定位置にストラップ35L,35Rの元部35b側を配置させるとともに、ハンドル側部227における前側の先端用部位617Fの先端縁61aと左右の一般部用部位43L,43Rの先端縁43aとの運転者側結合部を、ストラップ35の元部35bとともに、運転者側部32の外周縁32aと結合させ、ついで、結合代が露出しないように、流入用開口23を利用して、表裏を反転させ、さらに、ストラップ35L,35Rの先端部35aを、支持膨張部28Fの左右の縁49,50や縁52,53の部位に結合させれば、エアバッグ207を製造することができる。製造したエアバッグ207は、第4実施形態のエアバッグ202等と同様に、エアバッグ装置MAに組み付けて、ハンドルWAに搭載すればよい。
【0168】
この第9実施形態の運転席用エアバッグ装置MAでも、作動時、膨張用ガスが流入用開口23を経てエアバッグ207内に流入して、エアバッグ207が膨張すれば、エアバッグカバー115の扉部116aを押し開いて、エアバッグ207が、図67に示すように、収納部位としての図示しないケース111から突出して、ハンドルWAの上面Wu側を覆い、それらの上面Wu側に支持されるように、膨張を完了させる。
【0169】
そして、この第9実施形態では、ハンドルWAへの搭載状態で膨張を完了させて運転者を受け止める際、既に、ストラップ35L,35Rにより、支持膨張部28Fの支持面部29FがハンドルWAの前面Bf側に押し付けられて、エアバッグ207がハンドルWAの前面Bf側からの反力を受け易く構成されている。なお、ストラップ35L,35Rが配設されていない状態で膨張するエアバッグでは、図67の二点鎖線に示すように、支持膨張部28Fの先端部28a付近が、ハンドルWAの前面Bfの下部、すなわち、ロアカバー105の前面105a付近から前方側に浮いた状態としている。そのため、膨張を完了させた第9実施形態のエアバッグ207では、支持膨張部28Fの支持面部29Fの中央部29a付近だけでなく、元部29bから先端29c付近までの略全域を、ロアカバー105の前面105a側を含めたハンドルWAの前面Bfに、当接支持させることができて、前縁32b側の落ち込みを発生させることなく、ハンドルWAに向かってくる運転者を、迅速に、安定した状態で受け止めて保護することができる。勿論、ストラップ35L,35Rは、可撓性を有して構成されていることから、エアバッグ207の折畳収納時、支障なく、エアバッグ207とともに、折り畳まれて収納部位に収納されることとなる。
【0170】
なお、ストラップを利用して支持膨張部の支持面部をハンドルWAの前面Bf側に押し付ける場合、支持面部を前面Bf側に押し付けることができれば、ストラップは、支持膨張部の左右両縁の先端部側に先端部を結合させて、支持膨張部の後方側のエアバッグの外周壁に元部側を結合させたもよい。さらに、エアバッグが後支持膨張部を備えていれば、後支持膨張部の支持面部をハンドルの後側に押し付けることができるように、後支持膨張部側にも、ストラップを設けてもよい。
【0171】
また、ハンドルの中央部の前面側に広い面積で当接支持させる前側の支持膨張部を備える場合、第7〜9実施形態のエアバッグ205,206,207のバッグ用素材405,406,407の形状に限定されることなく、例えば、図68、69に示す第10実施形態のエアバッグ208のように、支持膨張部28Fを、ハンドル側部225に、別途、結合させて配設させる構成としてもよい。このエアバッグ208では、第7実施形態のエアバッグ205の特徴部分の構成のように、膨張完了時の支持膨張部28Fが、ハンドル側部225の前縁22bから下方に突設させるように構成されるとともに、膨張完了時の支持膨張部28Fの支持面部29Fが、取付座24の前側で左右方向に沿う折曲部25を有して、取付座24の前部側から下方に延びる略長方形の平面状として構成され、膨張完了時の折曲部25が、ハンドルWAの前部BF側の前面Bfと上面Buとの交差部位Bc付近の前面Bf側に配設される構成としている。
【0172】
このような構成では、図69に示すように、膨張完了時の支持膨張部28Fが、取付座24の前側との間の折曲部25から下方に延びるように膨張し、その際、折曲部25がハンドルWAの前部BF側の前面Bfと上面Buとの交差部位Bc付近に配設されていることから、折曲部25から下方に延びる略長方形の平面状の支持面部29Fは、折曲部25側の上縁(元部)29b側だけでなく、上下方向の中間部位(中央部)29a付近や、先端29c側までも、ハンドルWAの前面Bf側に当接可能に配設され易い。そのため、エアバッグ208の前縁32b側が落ち込むように運転者を受け止めることとなっても、直ちに、支持膨張部28Fの支持面部29Fが、広い面積で当接したハンドルWAの前面Bf側からの反力を受けて、エアバッグ208の前縁32b側の落ち込みを防止し、エアバッグ205は、運転者に対して正対した運転者側部32によって、ハンドルWAに向かってくる運転者を、的確に受け止めて保護することができる。勿論、支持膨張部28Fが、ハンドル側部225の前縁22bから下方に突設させるように構成されて、大きな容積を備えて構成できることから、支持膨張部28Fが大きな反力を確保可能となって、運動エネルギーの大きな運転者がエアバッグ205の前縁32b側に傾いて移動してきても、エアバッグ208の運転者側部32が、傾かずに正対して、的確に運転者を受け止めることができる。
【0173】
さらに、図70,71に示す第11実施形態のエアバッグ209のように、膨張完了時の支持膨張部28Fが、支持面部29Fの少なくとも上下方向の略中央部29a付近をハンドルWAの前面Bf側に当接支持されるように、構成されていてもよい。このエアバッグ209は、第5実施形態のエアバッグ203の外形形状と近似しているものの、一次膨張部80を備えることなく、支持膨張部28F自体がハンドル側部223から突設される構成としている。
【0174】
このようなエアバッグ209では、膨張完了時の支持膨張部28Fが、元部28b側付近だけでなく、上下方向の略中央部29a付近をハンドルWAの前面Bf側に当接支持されることから、ハンドルWAの前面Bf側から安定した反力を迅速に受け易く、エアバッグ209の前縁32b側の落ち込みを発生させずに、安定して運転者に対して正対した運転者側部32により、ハンドルWAに向かってくる運転者を、的確に受け止めて保護することができる。
【0175】
なお、支持膨張部28Fの支持面部29FをハンドルWAの前面Bf側に当接支持させる場合、図71の二点鎖線に示すように、元部28bや中央部29a付近より先端部28a付近を、ロアカバー105等の前面105a側の前面Bf側の下部側に当接支持させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0176】
20,200,201,202,202A,202B,203,204,205,205A,205B,206,207,208,209…エアバッグ、21,213,214…外周壁、22,220,221,222,222A,222B,223,224,225,226,227…ハンドル側部、22a…(ハンドル側部の)外周縁、22b…(ハンドル側部の)前縁、22c…(ハンドル側部の)後縁、22d…(ハンドル側部の)左縁、22e…右縁、23…流入用開口、24…取付座、26(L,R)…一般部、27(F,B)…延設部、28(F,B)…支持膨張部、28a…先端部、28b…元部、28cf,28h…前面、28cb…後面、28d…反対側面、29F,29B…支持面部、29a…(支持面部の)中央部、30(F,B)…第2支持膨張部、32,323,324…運転者側部、32a…(運転者側部の)外周縁、32b…(運転者側部の)前縁、32c…(運転者側部の)後縁、32d…(運転者側部の)左縁、32e…(運転者側部の)右縁、35…ストラップ、
40,400,401,402,402A,402B,403,404,405,406,407…(ハンドル側部)バッグ用素材、41…取付座用部位、43(L,R,B)…一般部用部位、43a…先端縁・運転者側結合部、43b…(前)側縁・(ハンドル側部形成用)結合部、43c…(後)側縁・(ハンドル側部形成用)結合部、44…結合部位、45,450,451(F,B),455F,457F…突出部用部位、47,470,471(F,B),475F,477F…シート状部位、48…折返し部、49…(左先側)縁、50…(左元側)縁、52…(右先側)縁、53…(右元側)縁、54(F,B)…第2用部位、55…折返し部、56…(左先側)縁、57…(左元側)縁、58…(右先側)縁、59…(右元側)縁、61,611(F,B),615F,617F…先端用部位、61a…先端縁・運転者側結合部、61b…(左)側縁・(ハンドル側部形成用)結合部、61c…(右)側縁・(ハンドル側部形成用)結合部、61ac…(先端縁の)中央、61d…凹溝、61e,61f…対向縁、70…(運転者側部)バッグ用素材、70a…外周縁、
80,80A…一次膨張部、81…元部、82,82F,82B…先端部、
83…供給口、90,90A…2次膨張部、
W,W0,W1,WA…ハンドル、B…中央部、Bu…(中央部の)上面、BF…(中央部の)前部、Bf…(中央部の)前面、Bc(B,F)…交差部位、BB…(中央部の)後部、Bb…(中央部の)後面、Wu…(ハンドルの)上面、UPc…基準線、XL…(左側の)長さ寸法、XR…(右側の)長さ寸法、YF…(前側の)長さ寸法、YB…(後側の)長さ寸法、G…膨張用ガス、D…運転者、M,MA…運転席用エアバッグ装置。
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