特許第6836186号(P6836186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000002
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000003
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000004
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000005
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000006
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000007
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000008
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000009
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000010
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000011
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000012
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000013
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000014
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000015
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000016
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000017
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000018
  • 特許6836186-頭部保護エアバッグの折り完了体 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836186
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグの折り完了体
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/237 20060101AFI20210215BHJP
   B60R 21/2334 20110101ALI20210215BHJP
【FI】
   B60R21/237
   B60R21/2334
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-161666(P2017-161666)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-38366(P2019-38366A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】奥原 正晃
(72)【発明者】
【氏名】林 信二
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/132513(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/029388(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/167087(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/147490(WO,A1)
【文献】 特開2017−065398(JP,A)
【文献】 特開2006−205942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に膨張用ガスを流入させて車両の窓の車内側を覆うように膨張可能な頭部保護エアバッグを、前記窓の上縁側に収納可能に、平らに展開した状態から下縁側を上縁側に接近させるように、前後方向に沿う略棒状に、折り畳んで形成される頭部保護エアバッグの折り完了体であって、
端部側に配設されて、折り畳まれた後に断面形状を小さくするように圧縮されてなる圧縮部と、
前記圧縮部と連なるように配設されて、折り畳まれた後に圧縮されない非圧縮部と、
を備えて構成され、
前記頭部保護エアバッグが、膨張完了時に前記窓の車内側を覆う遮蔽膨張部を備え、
該遮蔽膨張部が、
膨張用ガスの流入当初に展開膨張する一次展開エリアと、
該一次展開エリアに追従して展開膨張可能として前記エアバッグの前後方向の一端側に配設される二次展開エリアと、
の二種類のエリアを備えるように設定されて、
前記二次展開エリアが、前記圧縮部に配設され、前記一次展開エリアが、前記非圧縮部に配設され
前記圧縮部と前記非圧縮部との境界部位付近に、外周面を包むカバー材が、巻き付けられていることを特徴とする頭部保護エアバッグの折り完了体。
【請求項2】
前記遮蔽膨張部が、
前後方向に沿って並設される複数の膨張本体部と、
前記遮蔽膨張部の上縁側における前記膨張本体部の上方に配置されて、前記エアバッグ内に膨張用ガスを流入させる流入口部と連通されるとともに、前記流入口部から流入された膨張用ガスを複数の前記膨張本体部に案内可能なガス案内流路と、
を備え、
前記二次展開エリアが、前記ガス案内流路における前記膨張本体部への膨張用ガスの供給口を越えた前後方向の端部側に、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグの折り完了体。
【請求項3】
前記ガス案内流路における前記膨張本体部への膨張用ガスの供給口を越えた前後方向の端部側に、前記膨張本体部の車内側壁部と車外側壁部とを部分的に結合させるように形成されて、前記膨張本体部の端部側に流れる膨張用ガスの流れを変更させる閉じ部が、配設され、
前記二次展開エリアが、前記閉じ部を前記一次展開エリアと前記二次展開エリアとの境界部位として、前記閉じ部から前記膨張本体部の端部側に、配設されていることを特徴とする請求項2に記載の頭部保護エアバッグの折り完了体。
【請求項4】
前記遮蔽膨張部が、前後方向の一端側に、前記膨張本体部における主要な保護膨張部に隣接し、かつ、上下方向に延びる区画部により、前記保護膨張部と区画される端側膨張部、を配設させ、
前記区画部が、前記保護膨張部からの膨張用ガスを前記端側膨張部に流入可能な流入口を設けて配設され、
前記二次展開エリアが、前記区画部を前記一次展開エリアと前記二次展開エリアとの境界部位として、前記区画部から前記膨張本体部の端部側に、配設されていることを特徴とする請求項2に記載の頭部保護エアバッグの折り完了体。
【請求項5】
前記折り完了体における車両の窓の前縁側のフロントピラー部の内部に収納される前端部に、前記圧縮部が、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグの折り完了体。
【請求項6】
前記圧縮部が、前記折り完了体の前後両端に、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグの折り完了体。
【請求項7】
内部に膨張用ガスを流入させて車両の窓の車内側を覆うように膨張可能な頭部保護エアバッグを、前記窓の上縁側に収納可能に、平らに展開した状態から下縁側を上縁側に接近させるように、前後方向に沿う略棒状に、折り畳んで形成される頭部保護エアバッグの折り完了体であって、
端部側に配設されて、折り畳まれた後に断面形状を小さくするように圧縮されてなる圧縮部と、
前記圧縮部と連なるように配設されて、折り畳まれた後に圧縮されない非圧縮部と、
を備えて構成され、
前記頭部保護エアバッグが、膨張完了時に前記窓の車内側を覆う遮蔽膨張部を備え、
該遮蔽膨張部が、
膨張用ガスの流入当初に展開膨張する一次展開エリアと、
該一次展開エリアに追従して展開膨張可能として前記エアバッグの前後方向の一端側に配設される二次展開エリアと、
の二種類のエリアを備えるように設定されて、
前記二次展開エリアが、前記圧縮部に配設され、前記一次展開エリアが、前記非圧縮部に配設されるとともに、
前記遮蔽膨張部が、
前後方向に沿って並設される複数の膨張本体部と、
前記遮蔽膨張部の上縁側における前記膨張本体部の上方に配置されて、前記エアバッグ内に膨張用ガスを流入させる流入口部と連通されるとともに、前記流入口部から流入された膨張用ガスを複数の前記膨張本体部に案内可能なガス案内流路と、
を備え、
前記二次展開エリアが、前記ガス案内流路における前記膨張本体部への膨張用ガスの供給口を越えた前後方向の端部側に、配設され、
前記遮蔽膨張部が、前後方向の一端側に、前記膨張本体部における主要な保護膨張部に隣接し、かつ、上下方向に延びる区画部により、前記保護膨張部と区画される端側膨張部、を配設させ、
前記区画部が、
前記膨張本体部の車内側壁部と車外側壁部とを結合させる閉じ部から形成されるとともに、前記膨張本体部の周縁における前記車内側壁部と前記車外側壁部とを結合させた周縁部における下縁側から上方に延びて配設され、さらに、
前記保護膨張部からの膨張用ガスを前記端側膨張部に流入可能な流入口を、前記周縁部の上縁と、前記区画部の上端における前記周縁部の上縁に最も接近した部位と、との間に設けて配設され、
前記圧縮部となる前記二次展開エリアが、前記区画部の上端付近における前記流入口のエリアを、前記一次展開エリアと前記二次展開エリアとの境界部位として、前記流入口の部位を含めた前記端側膨張部の全域に、配設されていることを特徴とする頭部保護エアバッグの折り完了体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に膨張用ガスを流入させて車両の窓の車内側を覆うように膨張可能な頭部保護エアバッグを、窓の上縁側に収納可能に、平らに展開した状態から下縁側を上縁側に接近させるように折り畳んで形成される頭部保護エアバッグの折り完了体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部保護エアバッグ装置の頭部保護エアバッグでは、フロントピラー部内の狭いスペースの部位に収納可能なように、渦巻状に折り畳んだ折り完了体の中心に発生する空間部位を、押し潰すように圧縮した圧縮部、を設ける場合があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、頭部保護エアバッグでは、渦巻状に折り畳んだ折り完了体を平らに押し潰す場合もあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/147490号
【特許文献2】特表2013−514233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の折り完了体では、フロントピラー部内に収納される部位に、部分的に圧縮部が配設されていたり、あるいは、全長にわたって圧縮部を配設させているだけで、エアバッグの展開状態と関連して、圧縮部が配設されている訳ではなかった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、展開状態に影響を与えることを抑えて、コンパクトに収納できる圧縮部を配設させることが可能な頭部保護エアバッグの折り完了体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る頭部保護エアバッグの折り完了体は、内部に膨張用ガスを流入させて車両の窓の車内側を覆うように膨張可能な頭部保護エアバッグを、前記窓の上縁側に収納可能に、平らに展開した状態から下縁側を上縁側に接近させるように、前後方向に沿う略棒状に、折り畳んで形成される頭部保護エアバッグの折り完了体であって、
端部側に配設されて、折り畳まれた後に断面形状を小さくするように圧縮されてなる圧縮部と、
前記圧縮部と連なるように配設されて、折り畳まれた後に圧縮されない非圧縮部と、
を備えて構成され、
前記頭部保護エアバッグが、膨張完了時に前記窓の車内側を覆う遮蔽膨張部を備え、
該遮蔽膨張部が、
膨張用ガスの流入当初に展開膨張する一次展開エリアと、
該一次展開エリアに追従して展開膨張可能として前記エアバッグの前後方向の一端側に配設される二次展開エリアと、
の二種類のエリアを備えるように設定されて、
前記二次展開エリアが、前記圧縮部に配設され、前記一次展開エリアが、前記非圧縮部に配設されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る頭部保護エアバッグの折り完了体は、遮蔽膨張部における一次展開エリアが、非圧縮部に配設され、一次展開エリアの展開膨張に追従して展開可能な二次展開エリアが、圧縮部に、配設されている。すなわち、頭部保護エアバッグの膨張時における展開方向等の展開挙動を決定する一次展開エリアは、圧縮部に配設されておらず、非圧縮部に配設されていることから、頭部保護エアバッグの展開膨張に支障が生じない。また、圧縮部は、折り畳んだ後に断面形状を小さくして構成されていることから、コンパクトに収納可能としており、折り完了体のコンパクト化に寄与できる。
【0009】
したがって、本発明に係る頭部保護エアバッグの折り完了体では、展開状態に影響を与えることを抑えて、コンパクトに収納できる圧縮部を配設させることができる。
【0010】
そして、本発明に係る頭部保護エアバッグの折り完了体では、前記遮蔽膨張部が、
前後方向に沿って並設される複数の膨張本体部と、
前記遮蔽膨張部の上縁側における前記膨張本体部の上方に配置されて、前記エアバッグ内に膨張用ガスを流入させる流入口部と連通されるとともに、前記流入口部から流入された膨張用ガスを複数の前記膨張本体部に案内可能なガス案内流路と、
を備え、
前記二次展開エリアが、前記ガス案内流路における前記膨張本体部への膨張用ガスの供給口を越えた前後方向の端部側に、配設されていることが望ましい。
【0011】
このような構成では、ガス案内流路における膨張本体部への膨張用ガスの供給口を越えた前後方向の端部側が、二次展開エリアとなって、その部位が圧縮部となり、その他の部位、すなわち、ガス案内流路とガス案内流路における膨張本体部への膨張用ガスの供給口付近までとは、非圧縮部となる一次展開エリアとすることができる。そのため、膨張用ガスが折り完了体に流入する際には、まず、流入口部を経てガス案内流路に膨張用ガスが流れ、そして、ガス案内流路から供給口を経て各膨張本体部に流入して、エアバッグが展開膨張することとなるが、各膨張本体部の供給口付近には、圧縮部が配設されていないことから、円滑に、各膨張本体部が、供給口から膨張用ガスを流入させて、下縁側まで展開膨張することができ、展開方向を安定させることができて、迅速に、窓の車内側を覆うことができる。また、二次展開エリアでは、圧縮部となって、非圧縮部の一次展開エリアに比べて、圧縮部位を伸ばす際の抵抗分、迅速に展開膨張し難いものの、一次展開エリアの展開膨張に追従して、圧縮された折りを解消させつつ、展開膨張を完了させることができる。そのため、このような構成の折り完了体では、膨張用ガスの流入時、一次展開エリアを、展開方向を安定させて、下縁側まで迅速に展開膨張させることができて、窓の車内側を的確に覆うことができ、そして、前後方向の端部側に、コンパクトに収納可能な圧縮部とした二次展開エリアが配設されることとなっても、一次展開エリアにおける膨張本体部の下縁側までの展開に追従させて、円滑に、二次展開エリアを展開膨張させることができる。
【0012】
この場合、前記ガス案内流路における前記膨張本体部への膨張用ガスの供給口を越えた前後方向の端部側に、前記膨張本体部の車内側壁部と車外側壁部とを部分的に結合させるように形成されて、前記膨張本体部の端部側に流れる膨張用ガスの流れを変更させる閉じ部が、配設され、
前記二次展開エリアが、前記閉じ部を前記一次展開エリアと前記二次展開エリアとの境界部位として、前記閉じ部から前記膨張本体部の端部側に、配設されていることが望ましい。
【0013】
このような構成では、膨張本体部への膨張用ガスの供給口を越えた前後方向の端部側に、膨張用ガスの流れを変更させる閉じ部が配設されていれば、閉じ部が膨張用ガスの流れに干渉することとなって、エアバッグの円滑な展開膨張を阻害する。しかし、供給口から閉じ部までの膨張本体部の部位は、一次展開エリアとして、圧縮部とされずに非圧縮部となることから、膨張用ガスを流入させて、円滑に下縁側まで展開膨張することができ、エアバッグの展開方向を安定させて、迅速に窓の車内側を覆うことができる。また、膨張本体部に部分的に閉じ部が配設されていれば、膨張時の膨張本体部を、厚く膨張させずに、薄く板状に膨張させることが可能となり、乗員頭部と窓との間が狭くとも、その乗員頭部と窓との間に円滑に進入させて、膨張を完了させることができる。そのため、上記のような構成では、閉じ部から膨張本体部の端部側の部位を、二次展開エリアとして、コンパクトに収納可能な圧縮部としても、膨張初期に展開膨張を安定させる部位を、実質的な膨張用ガスの流れの円滑な供給口から閉じ部までの一次展開エリアとして、設定でき、かつ、一次展開エリアが厚く膨張することを抑制できて、円滑に窓の車内側を覆うことができることとなる。
【0014】
また、遮蔽膨張部が複数の膨張本体部とガス案内流路とを備える場合、前記遮蔽膨張部が、前後方向の一端側に、前記膨張本体部における主要な保護膨張部に隣接し、かつ、上下方向に延びる区画部により、前記保護膨張部と区画される端側膨張部、を配設させ、
前記区画部が、前記保護膨張部からの膨張用ガスを前記端側膨張部に流入可能な流入口を設けて配設され、
前記二次展開エリアが、前記区画部を前記一次展開エリアと前記二次展開エリアとの境界部位として、前記区画部から前記膨張本体部の端部側の部位に、配設されている構成としてもよい。
【0015】
このような構成では、流入口の部位を含めた端側膨張部の全域が、圧縮部となる二次展開エリアとなって、非圧縮部となる一次展開エリアが、端側膨張部と区画部により区画された膨張本体部の保護膨張部やガス案内流路となり、エアバッグの膨張用ガスの流入時に、膨張本体部の保護膨張部が、下縁側まで迅速に展開膨張して窓の車内側を覆うことができる。そして、圧縮部となる二次展開エリアの端側膨張部は、一次展開エリアに追従して、展開し、かつ、流入口から膨張用ガスを流入させて、膨張する。すなわち、乗員の頭部の側方に近い部位に、膨張本体部の保護膨張部を配置させておき、乗員の頭部から前後方向に離れた端部側に、圧縮部となり、かつ、区画部によって絞られた狭い開口の流入口から膨張用ガスを流入させて膨張する構成として、迅速に展開膨張し難い端側膨張部を配設させておけば、エアバッグの展開膨張の初期段階に、乗員頭部の側方近傍の膨張本体部の保護膨張部を展開膨張させて、乗員頭部を膨張本体部の保護膨張部により迅速に受け止め可能となり、乗員頭部が斜めの前後方向に移動する場合には、膨張本体部の保護膨張部の展開膨張に遅れて展開膨張する膨張本体部の端側膨張部により、その乗員頭部を受け止めることが可能となる。そして、展開膨張の初期段階では、二次展開エリアの端側膨張部の展開膨張が遅れることから、逆に、二次展開エリアに向かう膨張用ガスを一次展開エリアへ供給させることができ、その結果、膨張本体部の保護膨張部への膨張用ガスの供給量を多く確保できることとなって、膨張本体部の保護膨張部の展開膨張を迅速に完了させることに寄与できる。
【0016】
また、本発明に係る頭部保護エアバッグの折り完了体では、前記圧縮部と前記非圧縮部との境界部位付近に、外周面を包むカバー材が、巻き付けられていることとが望ましい。
【0017】
このような構成では、折り完了体の断面形状が、圧縮部では小さく、非圧縮部では大きく、圧縮部と非圧縮部との境界部位では、圧縮部から非圧縮部にかけてテーパ状に広がる形状となり、カバー材を設けていない場合、折り完了体の運搬時等に、折り完了体を曲げて運搬し、その後、車両搭載時に、曲げていた折り完了体を延ばすようにすると、境界部位付近の曲げていた部位が、折り畳まれて重なった部位相互の摩擦抵抗等により、復元されず、境界部位付近に膨らみが発生し、車両に搭載し難くなる事態を招く。しかし、この境界部位付近に、外周面を包むカバー材が巻き付けられていれば、膨らむ状態を規制できることから、曲げた後に戻しても、曲げる前の状態に円滑に復元させることができて、その後の車両への搭載等に支障が生じない。
【0018】
さらに、本発明に係る頭部保護エアバッグの折り完了体では、前記折り完了体における車両の窓の前縁側のフロントピラー部の内部に収納される前端部に、前記圧縮部が、配設されていることが望ましい。
【0019】
このような構成では、車両のフロントピラー部内のスペースが小さくとも、折り完了体の前端部における断面形状を小さくした圧縮部を、円滑に、フロントピラー部内に配設させることができる。
【0020】
また、本発明に係る頭部保護エアバッグの折り完了体では、前記圧縮部が、前記折り完了体の前後両端に、配設されていてもよく、このような構成では、圧縮部のエリアが増えて、折り完了体を、一層、コンパクトに構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグの折り完了体を使用した頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。
図2】実施形態の折り完了体を構成する頭部保護エアバッグを平らに展開した状態の正面図である。
図3】実施形態のエアバッグの折り畳み工程を説明する概略図である。
図4】実施形態のエアバッグをロール折りして折り畳む際における巻き芯に、エアバッグを巻き付ける状態を説明する概略図である。
図5】ロール折りしたエアバッグから巻き芯を外す状態を説明する概略図である。
図6】実施形態の折り完了体の圧縮部を形成する工程を説明する概略図である。
図7】実施形態のエアバッグを折り畳んで折り完了体を形成した後、カバー材や折り崩れ防止材を巻き付ける状態を示す図である。
図8】実施形態の折り完了体にカバー材を巻き付けた状態の拡大正面図である。
図9】実施形態の折り完了体を曲げて戻した状態を説明する図である。
図10】実施形態の折り完了体を使用した頭部保護エアバッグ装置の作動時を順に説明する車内側から見た概略正面図である。
図11】実施形態の折り完了体を使用した頭部保護エアバッグ装置の作動時を順に説明する概略断面図であり、一次展開エリア(非圧縮部)の部位を示す。
図12】実施形態の折り完了体を使用した頭部保護エアバッグ装置の作動時を順に説明する概略断面図であり、二次展開エリア(圧縮部)の部位を示す。
図13】実施形態の変形例の折り完了体に、カバー材や折り崩れ防止材を巻き付ける状態を示す図である。
図14】実施形態の他の変形例の折り完了体に、カバー材や折り崩れ防止材を巻き付ける状態を示す図である。
図15】実施形態のエアバッグの一次展開エリアと二次展開エリアとの境界部位を説明する図である。
図16】実施形態の変形例のエアバッグの一次展開エリアと二次展開エリアとの境界部位を説明する図である。
図17】実施形態の他の変形例のエアバッグの一次展開エリアと二次展開エリアとの境界部位を説明する図である。
図18】実施形態のさらに他の変形例のエアバッグの一次展開エリアと二次展開エリアとの境界部位を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ20(以下、適宜、エアバッグと略す)の折り完了体70は、図1に示す頭部保護エアバッグ装置Mに使用される。頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、エアバッグ20と、インフレーター14と、取付ブラケット11,16と、エアバッグカバー9と、を備えて構成される。エアバッグ20は、折り完了体70として、図1に示すように、車両Vの車内側における窓W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁4a側から、ルーフサイドレール部RRの下縁5a側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、収納されている。なお、実施形態では、エアバッグ20は、車両Vの側面衝突時、若しくは、ロールオーバー時に、乗員の頭部を保護可能に構成されている。また、車両Vは、前席と後席との側方に、それぞれ、窓W1,W2を配設させて構成されている。
【0023】
エアバッグカバー9は、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5と、のそれぞれの下縁4a,5aから、構成されている。フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、それぞれ、ボディ(車体)1側のインナパネル2における車内側に、取付固定されている。また、エアバッグカバー9は、図11,12に示すように、折り畳まれて収納されるエアバッグ20(折り完了体70)の車内側Iを覆うように配設されて、展開膨張時のエアバッグ20に押されて車内側Iに開き可能に、配設されている。
【0024】
インフレーター14は、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するもので、略円柱状のシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター14は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ20の後述する流入口部23に挿入させ、流入口部23の外周側に配置されるクランプ15を用いて、エアバッグ20に対して接続されている。また、インフレーター14は、インフレーター14を保持する取付ブラケット16と、取付ブラケット16をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト17と、を利用して、インナパネル2における窓W2の上方となる位置に、取り付けられている(図1参照)。インフレーター14は、図示しないリード線を介して、車両Vの図示しない制御装置と電気的に接続されており、制御装置が、車両Vの側面衝突やロールオーバーを検知した際に、制御装置からの作動信号を入力させて、作動するように構成されている。
【0025】
各取付ブラケット11は、2枚の板金製のプレートから構成されるもので、エアバッグ20の後述する各取付部44,56を、表裏から挟むようにして、各取付部44,56に取り付けられ、ボルト12を利用して、各取付部44,56を、ボディ1側のインナパネル2に取付固定している(図1,2,11参照)。
【0026】
エアバッグ20の折り完了体70は、図1図7のB、図10のAに示すように、折り畳まれた後に断面形状を小さくするように圧縮されてなる圧縮部74と、折り畳まれた後に圧縮されない非圧縮部71と、を備えて構成され、圧縮部74が、前端部70a側に配設され、非圧縮部71が、折り完了体70における圧縮部74の後方側の全域に配設されている。実施形態の場合、圧縮部74は、フロントピラー部FP内のフロントピラーガーニッシュ4の下縁4a側に覆われるとともに、フロントピラー部FP近傍のルーフサイドレール部RRにおけるルーフヘッドライニング5の下縁5aに覆われるように、配設されている。圧縮部74と非圧縮部71との境界部位72は、圧縮部74から非圧縮部71側に広がるようなテーパ状に形成されている。
【0027】
なお、実施形態の場合、圧縮部74のエリア(圧縮予定領域68)は、図15に示すように、後述する端側区画部51の上端51aにおける最も周縁部42の上縁42aに接近したエリアから、前端21c側としている。また、境界部位72のテーパ形状は、圧縮部74から非圧縮部71側にかけて、自然発生的に生ずる形状としている。
【0028】
折り完了体70を形成するエアバッグ20は、図1の二点鎖線や図2,10に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスを内部に流入させて、折畳状態から展開して、窓W1,W2や、センターピラー部CP及びリヤピラー部RPのピラーガーニッシュ6,7の車内側を覆うように展開膨張する。具体的には、エアバッグ20は、膨張完了時の外形形状を、窓W1からセンターピラー部CP,窓W2を経て、リヤピラー部RPの前側にかけての車内側を覆い可能に、長手方向を前後方向に略沿わせた略長方形板状とし、実施形態の場合、図1,10に示すように、膨張完了時の下縁21bを、窓W1,W2の下縁から構成されるベルトラインBLより下方に位置させるように、構成されている。エアバッグ20は、実施形態の場合、図2に示すように、バッグ本体21と、バッグ本体21の流入口部23内に配設されるインナチューブ53と、バッグ本体21の前端21c側に配設される連結部材55と、を備えて構成されている。
【0029】
バッグ本体21を構成するエアバッグ用基布58は、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りによって、一体的に製造されている。さらに、バッグ本体21は、膨張完了時に車内側Iに位置する車内側壁部22aと車外側Oに位置する車外側壁部22bとを離隔させるように内部に膨張用ガスGを流入させて膨張するガス流入部22(図11参照)と、膨張用ガスGを流入させない非流入部41と、を備えている。
【0030】
ガス流入部22は、窓W1,W2の車内側を覆うように膨張する遮蔽膨張部24と、遮蔽膨張部24に膨張用ガスを供給するようにインフレーター14と接続される円筒状の流入口部23と、を備えて構成される。流入口部23は、バッグ本体21の上縁21a側における前後方向の中央付近に配設され、内部に、耐熱性を向上させるインナチューブ53を配設させている。流入口部23は、後端側の開口23aからインフレーター14を挿入させた状態で、外周側にクランプ15を嵌めることにより、インフレーター14と接続される。
【0031】
遮蔽膨張部24は、前後方向に沿って並設される複数(実施形態では2個)の膨張本体部31,35と、遮蔽膨張部24の上縁側における膨張本体部31,35の上方に配置されるガス案内流路29と、を備えて構成されている。ガス案内流路29は、流入口部23と連通されるとともに、流入口部23から流入された膨張用ガスGを前後の膨張本体部31,35に案内可能に配設されている。
【0032】
前側の膨張本体部31は、前後方向の中央側に配置されて、前席に着座した乗員の頭部の側方における窓W1の部位の車内側を覆う主要な保護膨張部(前保護膨張部)32と、保護膨張部32の後方側で膨張する補助膨張部33と、膨張本体部31の前端部31b側となる保護膨張部32の前方側で膨張する端側膨張部39と、を備えて構成されている。保護膨張部32は、ガス案内流路29の前端側の供給口31aから膨張用ガスGを流入させて膨張し、補助膨張部33は、前端側の連通口33aにより、保護膨張部32と連通されており、連通口33aを通る保護膨張部32からの膨張用ガスGを流入させて、膨張する。
【0033】
端側膨張部39は、後述する区画部(端側区画部)51により、保護膨張部32と区画されて、前側の膨張本体部31の前端部31b側、すなわち、遮蔽膨張部24の前端21c側、に配設されている。端側膨張部39の上部側には、区画部51の上端51aと後述する周縁部42の上縁42aとの間に配設される流入口39aが、配設されて、端側膨張部39は、膨張本体部31の保護膨張部32からの膨張用ガスGを流入口39aから流入させて、膨張する。この端側膨張部39は、車両Vがオフセット衝突等して、前席の乗員が車外側Oの斜め前方に移動する際に、その乗員の頭部を受け止めて保護できるように、配設されている。
【0034】
後側の膨張本体部35は、後席に着座した乗員の頭部の側方における窓W2の部位の車内側を覆う保護膨張部(後保護膨張部)36と、後保護膨張部36の前下側で膨張する補助膨張部37と、を備えて構成されている。後保護膨張部36は、ガス案内流路29の後端側の供給口35aから膨張用ガスGを流入させて、膨張し、補助膨張部37は、後端側の連通口37aにより、後保護膨張部36と連通されており、連通口37aを通る後保護膨張部36からの膨張用ガスGを流入させて、膨張する。
【0035】
なお、補助膨張部33,37は、前保護膨張部32や後保護膨張部36の調圧室としての役目を果たし、乗員頭部を受け止めた際の前保護膨張部32や後保護膨張部36の急激な内圧上昇時に、前保護膨張部32や後保護膨張部36から膨張用ガスGを流入させて、急激な内圧上昇を抑制できるように配設されている。
【0036】
そして、実施形態の場合には、エアバッグ20内への膨張用ガスGの流入時に、展開方向を安定させて窓W1,W2を迅速に覆えるように、ガス案内流路29と膨張本体部31,35における保護膨張部32,36とそれらの間の補助膨張部33,37とのエリアを、一次展開エリア26として設定し、そして、遅れて移動してくる乗員頭部を受け止めて保護できる端側膨張部39側の膨張本体部31の前端部31b側を、遅れて展開膨張しても支障がないことから、すなわち、膨張開始から遅れたタイミングで乗員を受け止めることから、圧縮部74とする二次展開エリア27として、設定している。詳しくは、圧縮部74となる二次展開エリア27は、実施形態の場合、流入口39aより膨張本体部31の前端部31b側としており、区画部51の上端51aが若干後方へ屈曲しつつ上方へ延びていることから、実際には、その上端51a直下の前保護膨張部32の前縁部32aは、圧縮部74となって、一次展開エリア26でなく、二次展開エリア27の領域としている。
【0037】
非流入部41は、ガス流入部22の外周縁を構成する周縁部42と、取付部44と、ガス流入部22の領域内に配置されて膨張部位を区画する区画部47,48,49,51と、を備えて構成されている。これらの区画部47,48,49,51は、実施形態の場合、ガス流入部22の車内側壁部22aと車外側壁部22bとを部分的に結合させるようにして、配設されている。
【0038】
周縁部42は、実施形態の場合、ガス流入部22の車内側壁部22aと車外側壁部22bとが結合されるように、形成されており、流入口部23の後端側の開口23aを除いて、ガス流入部22の周囲を全周にわたって囲むように、配置されている。取付部44は、バッグ本体21の上縁21a側をボディ1側のインナパネル2に取り付けるための部位であり、バッグ本体21の上縁21a側となる周縁部42の上縁42aから上方に突出するようにして、前後方向に沿って複数配置されている。実施形態の場合、取付部44は、流入口部23の前側に2個と、流入口部23の後側に2個と、の計4個配置されて、周縁部42の上縁42aに別体の布材を縫合して配設されている。各取付部44には、取付ボルト12を挿通可能な取付孔44aが、配設されている。なお、各取付部44は、周縁部42の上縁42a側と一体的に、袋織りにより、形成してもよい。
【0039】
区画部47は、周縁部42の下縁42bにおける前後方向の中央付近から湾曲して上方へ延びるように配設される縦棒部47aと、縦棒部47aの上端で前方に延びる横棒部47bと、を備えた中央区画部47を構成している。縦棒部47aは、前側の膨張本体部31の補助膨張部33と、後側の膨張本体部35(補助膨張部37,後保護膨張部36)とを区画するものであり、横棒部47bは、ガス案内流路29の下縁側を形成するものであり、補助膨張部33とガス案内流路29とを区画している。
【0040】
区画部48は、連通口33aの下縁側を形成するものであり、周縁部42の下縁42bから上方に延びて、前保護膨張部32と補助膨張部33とを区画する前下区画部48を構成している。区画部49は、連通口37aの下縁側を形成するものであり、周縁部42の下縁42bから上方に延びて、補助膨張部37と後保護膨張部36とを区画する後下区画部49を構成している。
【0041】
区画部51は、端側膨張部39と前保護膨張部32とを区画する端側区画部51を構成しており、周縁部42の下縁42bの前部側から上方に延びるように、配設されている。そして、上端51aは、周縁部42の上縁42a側まで到達せずに、周縁部42の上縁42aとの間に、端側膨張部39に膨張用ガスGを流入させる流入口39aを設けるように、配設されている。
【0042】
なお、実施形態の場合、端側区画部51の上端51aが、ガス案内流路29における前側の膨張本体部31への膨張用ガスGの供給口31aを越えた前後方向の端部側に(すなわち、前端部31b側に)、膨張本体部31の前端部31b側に流れる膨張用ガスGの流れを変更させるように(具体的には、膨張本体部31の前端部31b側に流れる膨張用ガスGを、区画部51の上端51aに干渉させて、周縁部42の下縁42b側に向かわせる流れと、流入口39aを経て、端側膨張部39内に流入させる流れとに、分岐(変更)させるように)、配設されている。そのため、端側区画部51の上端51aは、ガス流れ変更用閉じ部52、としての機能も備えている。
【0043】
連結部材55は、バッグ本体21と別体とされて、可撓性を有したシート材から構成されており、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる織布から形成されている。連結部材55は、元部55b側を、バッグ本体21に結合させ、先端55a側を、バッグ本体21の前端21cから離れた窓W1の周縁における車両Vのボディ1側、実施形態の場合、フロントピラー部FPの部位におけるボディ1側のインナパネル2に、固定させている。実施形態では、連結部材55は、バッグ本体21の膨張完了時に、端側膨張部39の車外側に配置されて、元部55b側を、縫合糸を用いて、端側区画部51の車外側の部位に縫着(結合)させている。連結部材55の先端55a側には、取付部56が、配設されている。この取付部56は、バッグ本体21に形成される取付部44と同様に、取付ブラケット11と取付ボルト12とを利用して、インナパネル2に取り付けられる部位であり、取付ボルト12を挿通可能な取付孔56aを、備えている。
【0044】
そして、実施形態の場合、連結部材55とともに、流入口39aの部位を含めたバッグ本体21の前端21c側の膨張本体部31の端側膨張部39のエリア(詳しくは、膨張本体部31の前保護膨張部32の前縁部32aも含む)が、二次展開エリア27として設定されて、圧縮部74に形成され、また、他の部位のガス案内流路29、膨張本体部31,35の保護膨張部32,36や補助膨張部33,37が、圧縮されない一次展開エリア26の非圧縮部71として構成されて、折り完了体70が形成されることとなる。
【0045】
つぎに、エアバッグ20を折り畳み、圧縮部74を形成して折り完了体70を形成する工程を説明する。まず、エアバッグ20の折畳工程では、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを重ねるように平らに展開した状態のバッグ本体21の基布58を、上下方向側の幅寸法を縮めるように(下縁21b側を上縁21a側に接近させるように)折り畳んで、バッグ折畳体60を形成する。具体的には、実施形態では、図3のA,Bに示すように、バッグ本体21の上縁21a側のガス案内流路29の部位を、前後方向に略沿うように配置される2つの折目L1,L2で折り畳んで、蛇腹折りし、ガス案内流路29の下方の領域を、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを重ねた状態から、下縁21bを車外側Oに向かって巻くようなロール折りにより、折り畳んでいる(図3のA〜C参照)。さらに詳細に折畳工程を説明すれば、平らにしたバッグ本体21を、図示しない折り機の載置台にセットし、図示しない折り板を使用して、ガス案内流路29の部位に、前後方向に略沿った2本の折目L1,L2を付けつつ折目L1,L2の部位で折り重ねるようにして、蛇腹折り部位61を形成する。そして、この蛇腹折り部位61の形成と略同時に、ロール折り部位62を形成する。実施形態では、図4に示すように、エアAを吸引可能な吸気孔80aを多数備えた長尺円筒状の巻き芯80を使用して、ロール折り部位62を、形成する。詳細には、車内側壁部22aと車外側壁部22bとを重ねるように平らに展開した状態の基布58におけるバッグ本体21の下縁21b側の車外側壁部22b側の面に、図4のA,Bに示すように、巻き芯80を配置させ、この巻き芯80の外周面にバッグ本体21を吸着させるように、吸気孔80aからエアAを吸引しつつ、巻き芯80を回転させて、巻き芯80の周囲にバッグ本体21の下縁21b側の部位の基布58を巻き取らせる(図5のA参照)。その後、図5のBに示すように、吸気孔80aからエアAを排出させて、巻き芯80とバッグ本体21(基布58)との間に僅かな隙間を形成しつつ、巻き芯80を引き抜けば、蛇腹折り部位61の下側にロール折り部位62を形成することができて、バッグ折畳体60を形成することができる。このロール折り部位62では、図6のAに示すように、中心に、巻き芯80の体積分の空間部位Hが、生じている。
【0046】
このバッグ折畳体60では、既述したように、圧縮部74とする二次展開エリア(端側膨張部39や前縁部32a)27の領域を、連結部材55を含めて、圧縮予定領域68(図7のA参照)としており、圧縮予定領域68には、図6に示すバッグ加熱圧縮機85を使用して、加熱圧縮加工を施す。まず、図6のA,Bに示すように、バッグ折畳体60の圧縮予定領域68を、バッグ加熱圧縮機85の固定型86の凹部87内に押し込む。この時、固定型86の凹部87の両側面89,90間の開口寸法B1は、折目L1,L2を上方に反らせるように蛇腹折り部位61を折り曲げない状態として、バッグ折畳体60の左右方向の外形寸法(幅寸法)D1より小さく設定されており、凹部87に押し込まれるバッグ折畳体60は、空間部位Hが左右方向で若干押し潰されて、固定型86の凹部87内に収納される。また、バッグ折畳体60を凹部87に押し込む際には、凹部87の底面88から離れた側に、すなわち、凹部87の開口87a側に、蛇腹折り部位61を配置させ、ロール折り部位62を底面88や両側面89,90に接触させるようにして、押し込む。
【0047】
ついで、図6のB,Cに示すように、可動型92の押し板93を凹部87に挿入させて、押し板93を、底面88に接近させるように、上方からバッグ折畳体60の蛇腹折り部位61に押し付けて、バッグ折畳体60を圧縮するとともに図示しないヒータを使用して、所定時間加熱して、圧縮部74を、形成する。この時、圧縮予定領域68では、両側面89,90に規制された状態での押し板93の押し付けにより、蛇腹折り部位61と、ロール折り部位62の上下の基布58の積層された部位、すなわち、上側積層部63及び下側積層部64とが、押し板93や底面88に沿う状態となるものの、ロール折り部位62の左右方向(幅方向)の側面側積層部65,66が、空間部位Hを左右から押し潰すように、相互に接近するような屈曲部65a,66aを設けて、折り曲げられて、圧縮部74が形成されることとなる。
【0048】
そのため、圧縮部74は、ロール折り部位62の中心の空間部位Hを潰しつつ、上下の上側積層部63と下側積層部64との間で、左右の側面側積層部65,66が、各々の上下方向の中央付近を屈曲させてなる屈曲部65a,66aを、上側積層部63と下側積層部64とに圧接させた状態を維持しつつ、相互に当接させるように、折り曲げられて、空間部位Hを消失する状態となり、加工前と比較して軸直交方向の断面形状を小さくするように形成される。実施形態の場合、圧縮部74は、断面の外形寸法を、圧縮前の圧縮予定領域68の外形寸法の上下方向と左右方向とで、略7〜8割程度となるように、圧縮されることとなる。また、この加熱圧縮時には、バッグ本体21を構成している基布58(車内側壁部22a,車外側壁部22b)自体も、圧縮されることとなって、圧縮加工を施されていない折り完了体70の非圧縮部71の部位を構成している基布58(車内側壁部22a,車外側壁部22b)よりも、薄くなる。また、バッグ加熱圧縮機85は、バッグ折畳体60の圧縮予定領域68を、100℃程度に昇温させつつ所定の押圧力で圧縮するように、構成されている。
【0049】
そして、バッグ加熱圧縮機85により圧縮部74を形成した後には、基布58の復元が抑制されるように、図示しないバッグ冷却圧縮機を使用して、圧縮部74の圧縮状態を維持しつつ圧縮部74を冷却させれば、折り完了体70を形成することができる。
【0050】
折り完了体70を形成した後には、図7のB,Cに示すように、裏面側に粘着剤を設けられて破断可能なテープ材からなるカバー材78と折り崩れ防止材77とを、折り完了体70の外周面を包むように、所定箇所に巻き付ける。折り崩れ防止材77は、折り完了体70の複数箇所に巻き付け、カバー材78は、圧縮部74と折り完了体70の圧縮されていない非圧縮部71との境界部位72付近に、巻き付ける。境界部位72は、図8のAに示すように、断面形状の小さな圧縮部74から断面形状の大きな非圧縮部71にかけて、テーパ状に拡径されるような部位であり、その部位の全域を覆うように、カバー材78が巻き付けられている。
【0051】
その後、取付ブラケット16を取付済みのインフレーター14を、クランプ15を利用して、エアバッグ20の流入口部23と接続させ、各取付部44,56に、取付ブラケット11を固着させて、エアバッグ組付体を形成する。
【0052】
ついで、取付ブラケット11,16を、ボディ1側のインナパネル2の所定位置に配置させて、ボルト12,17止めし、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター14に結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ6,7をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0053】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、車両Vの側面衝突時、若しくは、ロールオーバー時に、制御装置からの作動信号を受けてインフレーター14が作動されれば、インフレーター14から吐出される膨張用ガスが、エアバッグ20(バッグ本体21)内に流入して、膨張するエアバッグ20(バッグ本体21)が、折り崩れ防止材77とカバー材78とを破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁4a,5aから構成されるエアバッグカバー9を押し開いて、下方へ突出しつつ、折りを解消するように展開して、図1の二点鎖線や図10〜12に示すように、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの一部の車内側Iを覆うように、大きく膨張することとなる。
【0054】
詳しく述べれば、実施形態の頭部保護エアバッグ20の折り完了体70では、インフレーター14からの膨張用ガスGは、流入口部23から遮蔽膨張部24のガス案内流路29に流入し、非圧縮部71とされている一次展開エリア26では、図11のA,B,Cに示すように、蛇腹折り部位61の折目L1,L2の折りを解消しつつ、ガス案内流路29内を前後両側に流れて、供給口31a,35aに流れ、供給口31a,35aから膨張本体部31,35の保護膨張部32,36に流入して、ロール折り部位62のロール折りを解消させて、バッグ本体21の下縁21b側を、窓W1,W2に沿わせる方向の展開方向に安定させて、車内側Iに突出させずに、すなわち、窓W1,W2に接近させつつ、展開膨張させる展開挙動であって、乗員と干渉し難い展開挙動として、遮蔽膨張部24を展開膨張させることができる。一方、圧縮部74とされた二次展開エリア27では、図12のA,B,Cに示すように、蛇腹折り部位61の折目L1,L2を解消し、また、ロール折り部位62の折りを解消して、展開膨張しようとするが、圧縮部74とされていることから、図10のA,B,Cに示すように、一次展開エリア26より遅れて、一次展開エリア26に追従するように、展開膨張する。しかし、二次展開エリア27が遅れて展開膨張しても、既に、窓W1,W2を広く覆う一次展開エリア26が、ロール折りの折りを解消して、所定の展開挙動により展開膨張していることから、窓W1,W2に接近する乗員頭部を、迅速に、受け止めて保護することができる。
【0055】
すなわち、実施形態の折り完了体70では、遮蔽膨張部24における一次展開エリア26が、非圧縮部71に配設され、一次展開エリア26の展開膨張に追従して展開可能な二次展開エリア27が、圧縮部74に配設されており、そのため、頭部保護エアバッグ20の膨張時における展開方向等の展開挙動を決定する一次展開エリア26は、圧縮部74に配設されておらず、非圧縮部71に配設されていることから、頭部保護エアバッグ20の展開膨張に支障が生じない。また、圧縮部74は、折り畳んだ後に断面形状を小さくして構成されていることから、コンパクトに収納可能としており、折り完了体70のコンパクト化に寄与できる。
【0056】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ20の折り完了体70では、展開状態に影響を与えることを抑えて、コンパクトに収納できる圧縮部74を配設させることができる。
【0057】
また、実施形態では、遮蔽膨張部24が、前後方向に沿って並設される複数の膨張本体部31,35と、遮蔽膨張部24の上縁側における膨張本体部31,35の上方に配置されて、エアバッグ20内に膨張用ガスGを流入させる流入口部23と連通されるとともに、流入口部23から流入された膨張用ガスGを複数の膨張本体部31,35に案内可能なガス案内流路29と、を備えている。そして、二次展開エリア27が、ガス案内流路29における膨張本体部31への膨張用ガスGの供給口31aを越えた前後方向の端部側である前端部31b側に、配設されている。
【0058】
そのため、実施形態では、ガス案内流路29における膨張本体部31への膨張用ガスGの供給口31aを越えた前後方向の前端部31b側が、二次展開エリア27となって、その部位が圧縮部74となり、その他の部位、すなわち、ガス案内流路29とガス案内流路29における膨張本体部31への膨張用ガスGの供給口31a付近までとは、非圧縮部71となる一次展開エリア26とすることができる。そのため、膨張用ガスGが折り完了体70に流入する際には、まず、流入口部23を経てガス案内流路29に膨張用ガスGが流れ、そして、ガス案内流路29から供給口31a,35aを経て各膨張本体部31,35に流入して、エアバッグ20が展開膨張することとなるが、各膨張本体部31,35の供給口31a,35a付近には、圧縮部74が配設されていないことから、円滑に、各膨張本体部31,35の保護膨張部32,36が、供給口31a,35aから膨張用ガスGを流入させて、下縁21b側まで展開膨張することができ、窓W1,W2に沿うように展開方向を安定させつつ、迅速に、窓W1,W2の車内側を覆うことができる。また、二次展開エリア27では、圧縮部74となって、非圧縮部71の一次展開エリア26に比べて、圧縮部位を伸ばす際の抵抗分、迅速に展開膨張し難いものの、一次展開エリア26の展開膨張に追従して、圧縮された折りを解消させつつ、展開膨張を完了させることができる(図10参照)。そのため、このような構成の折り完了体70では、膨張用ガスGの流入時、一次展開エリア26を下縁21b側まで展開方向を安定させて迅速に展開膨張させることができて、窓W1,W2の車内側Iを的確に覆うことができ、そして、前後方向の端部側となる前端部70a側に、コンパクトに収納可能な圧縮部74とした二次展開エリア27が配設されることとなっても、一次展開エリア26における膨張本体部31,35の保護膨張部32,36の下縁21b側までの展開に追従させて、円滑に、二次展開エリア27を展開膨張させることができる。
【0059】
特に、実施形態では、ガス案内流路29における膨張本体部31への膨張用ガスGの供給口31aを越えた前後方向の端部側となる前端部31b側に、膨張本体部31の車内側壁部22aと車外側壁部22bとを部分的に結合させるように形成されて、膨張本体部31の前端部31b側に流れる膨張用ガスGの流れを変更させる閉じ部(ガス流れ変更用閉じ部:端側区画部51の上端51a)52が、配設されている。そして、二次展開エリア27が、ガス流れ変更用閉じ部52を一次展開エリア26と二次展開エリア27との境界部位72として、ガス流れ変更用閉じ部52から膨張本体部31の前端部31b側に、配設されている。
【0060】
そのため、実施形態では、膨張本体部31への膨張用ガスGの供給口31aを越えた前端部31b側に、膨張用ガスGの流れを変更させるガス流れ変更用閉じ部52が配設されていれば、閉じ部52が膨張用ガスGの流れに干渉することとなって、エアバッグ20の円滑な展開膨張を阻害する。しかし、供給口31aから閉じ部52までの膨張本体部31の部位(保護膨張部)32は、一次展開エリア26として、圧縮部74とされずに非圧縮部71となることから、膨張用ガスGを流入させて、円滑に下縁21b側まで展開膨張することができ、エアバッグ20の展開方向を安定させて、迅速に窓W1の車内側Iを覆うことができる(図10,11参照)。また、膨張本体部31に部分的に閉じ部52が配設されていれば、膨張時の膨張本体部31を、厚く膨張させずに、薄く板状に膨張させることが可能となり、乗員頭部と窓W1との間が狭くとも、その乗員頭部と窓W1との間に円滑に進入させて、膨張を完了させることができる。そのため、上記のような構成では、閉じ部52から膨張本体部31の前端部31b側の部位を、二次展開エリア27として、コンパクトに収納可能な圧縮部74としても、膨張初期に展開膨張を安定させる部位(保護膨張部)32を、実質的な膨張用ガスGの流れの円滑な供給口31aから閉じ部52までの一次展開エリア26として、設定でき、かつ、一次展開エリア26が厚く膨張することを抑制できて、円滑に窓W1の車内側を覆うことができることとなる。
【0061】
また、実施形態の場合、遮蔽膨張部24が、前後方向の一端側の前端21c側に、膨張本体部31の主要な保護膨張部32に隣接し、かつ、上下方向に延びる区画部51により、保護膨張部32と区画される端側膨張部39、を配設させている。区画部51は、保護膨張部32からの膨張用ガスGを端側膨張部39に流入可能な流入口39aを設けて配設されている。そして、二次展開エリア27が、区画部51を一次展開エリア26と二次展開エリア27との境界部位72として、区画部51から膨張本体部31の端部側である前端部31b側の部位に、配設されている構成としている。
【0062】
そのため、実施形態では、流入口39aの部位を含めた端側膨張部39の全域が、圧縮部74となる二次展開エリア27となって、非圧縮部71となる一次展開エリア26が、端側膨張部39と区画部51により区画された膨張本体部31の保護膨張部32や補助膨張部33と、ガス案内流路29と、さらに、実施形態では、後側の膨張本体部35も含まれることから、エアバッグ20の膨張用ガスGの流入時に、膨張本体部31の保護膨張部32や膨張本体部35が、下縁21b側まで迅速に展開膨張して窓W1,W2の車内側Iを覆うことができる(図10,11参照)。そして、圧縮部74となる二次展開エリア27の端側膨張部39は、一次展開エリア26に追従して、展開し、かつ、流入口39aから膨張用ガスGを流入させて、膨張する。すなわち、乗員の頭部の側方に近い部位に、膨張本体部31の保護膨張部32を配置させておき、乗員の頭部から前後方向に離れた前端部31b側に、圧縮部74となり、かつ、区画部51によって絞られた狭い開口の流入口39aから膨張用ガスGを流入させて膨張する構成として、迅速に展開膨張し難い端側膨張部39を配設させておけば、エアバッグ20の展開膨張の初期段階に、乗員頭部の側方近傍の膨張本体部31の保護膨張部32を展開膨張させて、乗員頭部を保護膨張部32により迅速に受け止め可能となり、乗員頭部が斜めの前後方向に移動する場合には、膨張本体部31の保護膨張部32の展開膨張に遅れて展開膨張する端側膨張部39により、その乗員頭部を受け止めることが可能となる。そして、展開膨張の初期段階では、二次展開エリア27の端側膨張部39の展開膨張が遅れることから、逆に、二次展開エリア27に向かう膨張用ガスGを一次展開エリア26へ供給させることができ、その結果、膨張本体部31の保護膨張部32や膨張本体部35への膨張用ガスGの供給量を多く確保できることとなって、膨張本体部31,35の保護膨張部32,36の展開膨張を迅速に完了させることに寄与できる。
【0063】
また、実施形態では、圧縮部74と折り完了体70の圧縮されていない非圧縮部71との境界部位72付近に、外周面72cを包むカバー材78が、巻き付けられている。
【0064】
そのため、実施形態では、折り完了体70の断面形状が、圧縮部74では小さく、非圧縮部71では大きく、圧縮部74と非圧縮部71との境界部位72では、非圧縮部71にかけてテーパ状に広がる形状となり、折り完了体70の運搬時等に、図9のA〜Cに示すように、折り完了体70を曲げて運搬し、その後、車両搭載時に、曲げていた折り完了体70を延ばすようにすると、カバー材78を設けていないと、図9のDに示すように、境界部位72付近の曲げていた部位の蛇腹折り部位61やロール折り部位62の折られて重なっている基布58の積層部位が摩擦抵抗等により、復元されず、境界部位72付近に膨らみ73が発生し、車両Vに搭載し難くなる事態を招く。しかし、この境界部位72付近に、外周面72cを包むカバー材78が巻き付けられていれば、膨らむ状態を規制できることから、曲げた後に戻しても、図9のA〜Cに示すように、曲げる前の状態に円滑に復元させることができて、その後の車両への搭載等に支障が生じない。
【0065】
なお、カバー材78は、図8のAに示すように、テーパ状の境界部位72における圧縮部74側の小径側端部72aから非圧縮部71側の大径側端部72bまでの全域の外周面72cを覆うように、巻き付けてもよいし、図8のBに示すように、小径側端部72aの側に巻き付けずに、大径側端部72bの側に巻き付けてもよい。さらに、膨らみ73の発生を防止可能であれば、大径側端部72b近傍の非圧縮部71にカバー材78を巻き付けてもよい。
【0066】
さらに、実施形態では、折り完了体70における車両Vの窓W1の前縁側のフロントピラー部FPの内部に収納される前端部70aに、圧縮部74が、配設されている。
【0067】
そのため、実施形態では、車両Vのフロントピラー部FP内のスペースが小さくとも、折り完了体70の前端部70aにおける断面形状を小さくした圧縮部74を、円滑に、フロントピラー部FP内に配設させることができる。
【0068】
なお、実施形態では、折り完了体70の前端部70aに、圧縮部74を設けた場合を示したが、図13に示す折り完了体70Aのように、二次展開エリア27と設定した後端部70bにも、圧縮部74Aを設けてもよい。この圧縮部74Aは、一次展開エリア26における後側の膨張本体部35の展開膨張に支障がないように、膨張本体部35の供給口35aを超えたエアバッグ20の後端21d側に配設されている。このような折り完了体70Aでは、圧縮部74,74Aのエリアが増えて、一層、コンパクトに構成できる。
【0069】
また、実施形態では、バッグ加熱圧縮機85を利用して、エアバッグ20の二次展開エリア27に圧縮部74を形成した場合を示したが、図14に示すように、加熱することにより内径寸法を狭める熱収縮チューブ等の圧縮材95を利用して、圧縮部74Bを形成してもよい。この折り完了体70Bでは、バッグ折畳体60を形成した後、圧縮予定領域68に、圧縮材95を被せ、圧縮材95を加熱して収縮させれば、圧縮部74Bを形成できる。なお、収縮した圧縮材95は、折り完了体70Bに被せたままとしておくが、エアバッグ20の展開膨張時には、カバー材78や折り崩れ防止材77とともに、破断することから、エアバッグ20の展開膨張時には、支障を生じない。
【0070】
さらに、実施形態の圧縮部74は、図6のCに示すように、上面74a側に、折目L1,L2を設けた蛇腹折り部位61を押し潰した蛇腹状圧縮部75を設け、蛇腹状圧縮部75の直下に、ロール折り部位62を押し潰したロール状圧縮部76を設けて構成され、流入する膨張用ガスの上流部位となる蛇腹状圧縮部75が、凹むような部位を設けられずに、蛇腹折り部位61の折目L1,L2を重ねた状態で、単に、上下方向に圧縮されているだけである。そのため、圧縮部74の展開膨張時には、流入する膨張用ガスGの上流側の蛇腹折り部位61からなる蛇腹状圧縮部75が、図12のA,Bに示すように、折目L1,L2を解消するように、膨らんで、ロール状圧縮部76を、円滑に、窓W1に沿うように、展開方向を安定させて、下方側へ押し出すことができる。
【0071】
そしてまた、押し出されたロール折り部位62からなるロール状圧縮部76は、ロール折り部位62の中心の空間部位Hが上下左右、特に、左右から押し潰されて、すなわち、空間部位Hが、上下の上側積層部63と下側積層部64とに上下から押し潰されるとともに、左右の側面側積層部65、66の屈曲部65a,66aが、空間部位Hを無くすように、進入して、空間部位Hを消失させた略四角柱状(略正四角柱状)として、形成されている。そのため、ロール状圧縮部76が折りを解消して膨らむ際には、上側積層部63、屈曲部65aを有した側面側積層部65、下側積層部64、及び、屈曲部66aを有した側面側積層部66における外表面側のガス流入部22(端側膨張部39)の部位に、膨張用ガスGを流入させて、巻きを解くように、ロール折りを解消して、下縁21b側まで展開膨張する。そのため、折りを解消する際のロール状圧縮部76の回転は、断面形状を略四角形状(略正四角形状)として、回転中心からの回転半径を各部位で大きくばらつかせずに略均等とすることができて、円滑に回転して折りを解消する。その結果、蛇腹状圧縮部75の折りの解消時の窓W1に沿う押出方向を基準とし、窓W1に接近しつつロール折りの折りの解消を実行する状態となって、圧縮部74は、車内側Iへの突出を抑えて、下縁21b側まで展開方向を安定させて展開膨張することができる。
【0072】
なお、上側積層部63、下側積層部64、及び、屈曲部65a,66aを有した左右の側面側積層部65,66を有して、空間部位Hが消失していれば、圧縮部74の断面形状は、実施形態のように、略正四角形状でなく、バッグ加熱圧縮機85の固定型86の凹部87や可動型92の押し板93の形状を対応させて、楕円や長円を含んだ円形状、あるいは、半円形状に形成でき、それらの場合にも、折りを解消する際のロール状圧縮部76の回転が、回転中心からの回転半径を各部位で大きくばらつかせずに略均等とすることができて、円滑に回転して折りを解消することが可能となる。
【0073】
勿論、上記の点を考慮しなければ、圧縮部の圧縮態様は、実施形態に限られるものではなく、ロール折り部位62の空間部位Hが潰れて、非圧縮部71より断面形状が小さくなればよい。
【0074】
また、実施形態では、エアバッグ20の下縁21b側を上縁21a側に接近させる折畳工程として、車外側に向かって巻くようなロール折りと蛇腹折りとによって、上下方向の幅寸法を縮めるように折り畳まれているが、下縁21b側を上縁21a側に接近させるように折り畳めれば、実施形態に限られるものではなく、上下の全域にわたって、蛇腹折りによって折り畳む構成としてもよい。
【0075】
さらに、実施形態では、図15に示すように、端側区画部51の上端51a付近における流入口39aのエリアを境界部位72として、その境界部位72から膨張本体部31の端部側としての前端部31b側を、圧縮部74とする二次展開エリア27としているが、図15の二点鎖線に示すように、膨張本体部31の保護膨張部32が窓W1を迅速に覆えれば、端側区画部51の上端51aから離れた後方側で、かつ、供給口31aから前方に離れた位置を、境界部位72Cとして、その境界部位72Cから膨張本体部31の前端部31b側(遮蔽膨張部24の前端21c側)までを、圧縮部74とする二次展開エリア27(圧縮予定領域68)としてもよい。
【0076】
また、図16に示すエアバッグ20Dのように、上記の境界部位72Cの配置位置付近まで、端側区画部51Dの上端51aを、後方側まで延ばして、端側膨張部39Dを設けてもよい。なお、このエアバッグ20Dでは、一次展開エリア26と二次展開エリア27の境界部位72Dとしては、端側区画部51Dの上端51a付近に、境界部位72D1を配置させて、その境界部位72D1より膨張本体部31の端部側である前端部31b側を、圧縮部74とする二次展開エリア27(圧縮予定領域68)としてもよいし、あるいは、端側区画部51Dの上下方向に沿った縦棒部51b付近に、境界部位72D2を配置させて、その境界部位72D2より膨張本体部31の端部側である前端部31b側を、圧縮部74とする二次展開エリア27(圧縮予定領域68)としてもよい。
【0077】
さらに、実施形態では、膨張本体部31の端側膨張部39と保護膨張部32とを区画する端側区画部51が、上端51aに、ガス流れ変更用閉じ部52を設けた構成としたが、図17,18に示すエアバッグ20E,20Fのように、膨張本体部31の端側膨張部39E,39Fと保護膨張部32とを区画する端側区画部51E,51Fの後方に、離れて、膨張本体部31の前端部31b側に流れる膨張用ガスGの流れを変更させるガス流れ変更用閉じ部52E,52Fを設けてもよい。閉じ部52Eは、周縁部42からも離れて配設され、閉じ部52Fは、周縁部42の上縁42aから下方に延びるように配設されている。
【0078】
これらのエアバッグ20E,20Fでは、一次展開エリア26と二次展開エリア27の境界部位72E,72Fとしては、ガス流れ変更用閉じ部52E,52Fに、境界部位72E1,72F1を配置させて、その境界部位72E1,72F1より膨張本体部31の端部側である前端部31b側を、圧縮部74とする二次展開エリア27(圧縮予定領域68)としてもよいし、あるいは、端側区画部51E,51Fに、境界部位72E2,72F2を配置させて、その境界部位72E2,72F2より膨張本体部31の端部側である前端部31b側を、圧縮部74とする二次展開エリア27(圧縮予定領域68)としてもよい。
【0079】
勿論、図例の境界部位72E1,72E2の間の位置や、境界部位72F1,72F2の間の位置を、境界部位として、その部位より、膨張本体部31の端部側である前端部31b側を、圧縮部74とする二次展開エリア27(圧縮予定領域68)としてもよい。
【0080】
なお、端側区画部51,51D,51E,51Fにより保護膨張部32と区画される端側膨張部39,39D,39E,39Fにおいて、保護膨張部32側からの膨張用ガスを流入させる流入口は、実施形態のエアバッグ20や図16に示すエアバッグ20Dのように、端側区画部51,51Dの上端51aの上方側に配設させる流入口39aとしたり、あるいは、図18に示す端側区画部51Fの下端51cの下方側に配設させる流入口39bとしたり、あるいは、図17に示す端側区画部51Fの上下両側の流入口39a,39bとしてもよい。勿論、端側区画部の上下方向の中央に、流入口を配設させてもよい。
【符号の説明】
【0081】
20,20D,20E,20F…(頭部保護)エアバッグ、24…遮蔽膨張部、26…一次展開エリア、27…二次展開エリア、29…ガス案内流路、31…(前)膨張本体部、31a…供給口、35…(後)膨張本体部、35a…供給口、39,39D,39E,39F…端側膨張部、39a,39c…流入口、51,51D,51E,51F…端側区画部、51a…上端、52,52E,52F…(ガス流れ変更用)閉じ部、70,70A,70B…折り完了体、71…非圧縮部、72,72C,72D(1,2),72E(1,2),72F(1,2)…境界部位、74,74A,74B…圧縮部、78…カバー材、
G…膨張用ガス、W1,W2…窓、I…車内側、V…車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18