(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836237
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】力触覚提示システム
(51)【国際特許分類】
B25J 3/00 20060101AFI20210215BHJP
A61B 34/37 20160101ALI20210215BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
B25J3/00 A
A61B34/37
G06F3/01 560
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-173600(P2016-173600)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-39065(P2018-39065A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月31日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代ロボット中核技術開発/(革新的ロボット要素技術分野)次世代機能性材料/安全・小型・軽量なマン・マシン・インターフェースの開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】304028726
【氏名又は名称】国立大学法人 大分大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武士
(72)【発明者】
【氏名】阿部 功
(72)【発明者】
【氏名】野間 淳一
【審査官】
貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0018958(US,A1)
【文献】
特開2015−31976(JP,A)
【文献】
特開2000−322131(JP,A)
【文献】
特開平8−69449(JP,A)
【文献】
特開2012−35022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
A61B 34/37
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトレオロジー流体を用いたMRデバイスを備えた力触覚提示システムにおいて、
ハンド用MRデバイスが開閉軸に連結された開閉機構を有するハンド制御ユニットと、
上記開閉機構が連結された駆動機構及び該駆動機構の回転軸に連結されたアーム用MRデバイスを有するアーム制御ユニットと、
上記ハンド用MRデバイス及び上記アーム用MRデバイスにそれぞれ制御電流を供給する電源制御装置とを備え、
上記駆動機構の回転軸と反対側の先端に上記開閉軸が連結されている
ことを特徴とする力触覚提示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の力触覚提示システムにおいて、
上記駆動機構は、平行リンク機構であり、該平行リンク機構を構成する一対のリンク部材の回転軸にアーム用MRデバイスが連結されており、
他の一対のリンク部材の一方のリンク部材の先端に上記開閉軸が連結されている
ことを特徴とする力触覚提示システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の力触覚提示システムにおいて、
二組の上記ハンド制御ユニット及び上記アーム制御ユニットが1つの作業台の上に配置され、上記アーム用MRデバイスが上記作業台に固定されており、該作業台に両手を置きながらマスタスレーブ式の遠隔操作を行うマスタアームを構成する
ことを特徴とする力触覚提示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面の触覚と筋肉感覚よりなる力触覚を再現する力触覚提示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外部から磁場が印加されると、その磁場の大きさに応じて粘性が変化するマグネトレオロジー流体(Magnetorheological fluid、以下、MR流体)が知られている。その粘性変化は可逆的であり、応答速度は数ミリ秒といわれている。MR流体は、強磁性粒子をオイル等の溶媒に分散させたものであり、強磁性粒子が外部磁場に応じて配列してクラスターを形成し、そのクラスターが流動抵抗となって見かけ上の粘性が変化する。磁場を印加して流体をせん断すれば、クラスターは崩壊と再生を繰り返し、安定なせん断抵抗を示す。これまで、その特性を利用したブレーキ、クラッチ、ダンパなど様々な応用が検討されてきた。中でも、MRダンパは欧米を中心として既に実用化されている。
【0003】
従来のMR流体では、強磁性粒子としてカルボニル鉄粉といわれる直径数ミクロンの鉄粒子が用いられている。ミクロンサイズであるが故に、時間が経てば鉄粒子は沈降し、場合によっては粒子沈降層は強固なケーキ層を形成して容易に再分散させることができないことがある。ダンパなど、強力な力で流体が撹拌される用途を除いて、MR流体が実用化されない要因の1つと推察される。この課題解決の一案として、直径が100nm程度の鉄ナノ粒子を用いた鉄ナノ粒子分散MR流体(以下、ナノMR流体)が開発されている。
【0004】
ところで、物を持ったときに感じる重さや掴んだときの力加減は、皮膚で感じられる触覚の一部であるという捉え方がある。一方で、これは、皮膚ではなく筋力への反力によるものであり、これを「力覚」という独立した感覚とする考えもある。そこで、皮膚表面の触覚と筋肉感覚の両方を以下、力触覚とする。
【0005】
近年、胸腔や腹腔の内視鏡下手術用ロボットが開発され、広く利用されている。しかし、この医療ロボットは、視覚情報及び聴覚情報によって操作されており、触覚や力覚情報は得られない。このため、縫合糸の操作などの手加減が難しく縫合糸を引きちぎってしまったり、縫合が不完全になってしまったりする場合がある。また、アームが臓器や腹壁に接触しても操作者は手応えとして感知することができない。
【0006】
そこで、歪みゲージなどの変位センサから情報を得て、その情報を用いて触覚や力覚を再現するためにモータを用いると、応答速度が速いが、電動機で生ずるトルク変動及び速度の周期的変動(コギング)が発生する。これは、回転子の磁極が固定子の磁極を通過する際に磁束が変動することによって発生する。しかも、モータは減速機と組み合わせればトルクが増大し、小さなデバイスができるものの、減速機を逆回転させると大きな抵抗が発生する。このため、必要以上に押し戻す力が発生し、安全面で問題が生じるおそれがある。一方、空圧や油圧を用いれば、応答速度が遅いという問題がある。さらに、電磁クラッチでは、動摩擦及び静摩擦のギャップが問題となる。
【0007】
そこで、上記ナノMR流体を用いた力触覚提示システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この力触覚提示システムは、操作者の操作によって変位する変位部を有する操作部と、変位部の変位動作に連動して回転する回転部を有し、供給される電流値の変化により内部に封入された磁気粘性流体に付与する磁場の強さを変化させて、回転部の回転抵抗を変化させるように構成された回転抵抗発生装置と、変位部の変位量を検出する変位量検出部とを含む操作ユニット及び変位量検出部で検出された変位量に応じて変位する従動部と、従動部が対象物体に触れることにより発生する従動部への反力を検出する反力検出部とを含む従動ユニットを備え、反力検出部が検出する反力に応じて回転抵抗発生装置に供給する電流値を制御するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−31976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1のものでは、掴む感覚をナノMR流体を用いて再現できるようにしているが、さらなる改善の余地がある。すなわち、1つの回転軸の回転抵抗だけでなく、さらに多くの変位量に係る力触覚を提示できるようにしたいというニーズがある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ナノMR流体を用いて複数の動作に係る力触覚を受動的に発現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、把持力だけでなく、スライド移動時の力触覚も発現できるようにした。
【0012】
具体的には、第1の発明では、マグネトレオロジー流体を用いたMRデバイスを備えた力触覚提示システムを前提とし、
上記力触覚提示システムは、
開閉軸にハンド用MRデバイスが連結された開閉機構を有するハンド制御ユニットと、
上記開閉機構が連結された駆動機構及び該駆動機構の駆動部に連結されたアーム用MRデバイスを有するアーム制御ユニットと、
上記ハンド用MRデバイス及び上記アーム用MRデバイスにそれぞれ制御電流を供給する電源制御装置とを備えている。
【0013】
上記の構成によると、電源制御装置により、ハンド用MRデバイス及びアーム用MRデバイスに電流を送ってMR流体の粘性を変化させることで、開閉機構や駆動機構を操作するときの力加減に変化を与えたり、振動を加えたりすることで、力触覚を再現できる。ここで、「駆動機構」は、リンク機構、回転機構など特に限定されず、移動、回転などの動きを生じさせる機構をいう。
【0014】
第2の発明では、第1の発明において、
上記駆動機構は、平行リンク機構であり、該平行リンク機構を構成する一対のリンク部材にアーム用MRデバイスがそれぞれ連結されている。
【0015】
上記の構成によると、駆動機構として平行リンク機構を用いた場合には、一対のリンク部材にそれぞれアーム用MRデバイスを連結することで、XY座標における移動の力触覚の再現が可能となる。
【0016】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
二組の上記ハンド制御ユニット及び上記アーム制御ユニットが作業台の上に配置されており、マスタスレーブ式の遠隔操作を行うマスタアームを構成する。
【0017】
上記の構成によると、作業台に両手を置いてマスタアームを操作し、スレーブアームを制御する場合に利用でき、その際に力触覚を再現できるので、例えば手術支援ロボットのマスタアームとして利用すれば、縫合糸の操作などにおいて手加減がしやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、ハンド制御ユニットの開閉機構の開閉軸にハンド用MRデバイスを連結し、この開閉機構が連結されたアーム制御ユニットの駆動機構の回転軸にアーム用MRデバイスを連結し、これらに電源制御装置によって制御電流を供給するようにしたことにより、ナノMR流体を用いて複数の動作に係る力触覚を受動的に発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る力触覚提示システムの概要を示す斜視図である。
【
図2】アーム制御ユニットを拡大して示す側面図である。
【
図3】ハンド制御ユニットを拡大して示す斜視図である。
【
図4】MRデバイスの一例を拡大して示す断面図である。
【
図5】前腕と手部の2リンクモデルでの上肢動作をモデル化した座標系を示す図である。
【
図6】アーム制御ユニットの可動域をモデル化した座標系を示す図である。
【
図7】力触覚提示システムを含むシステム全体を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜
図3は本発明の実施形態に係る力触覚提示システム1の基本構造を示す。力触覚提示システム1は、医師などの操作者が操作を行うコンソール2を備え、このコンソール2は、板状の作業台3と、この作業台3を支持する脚部4とを備え、その手前側に一対のクッション製のアームレスト5が設けられている。
【0022】
作業台3上には、左右一対のマスタアーム6が設けられている。各マスタアーム6は、それぞれ操作者の右手及び左手に対応している。各マスタアーム6は、アーム制御ユニット10とハンド制御ユニット20を備えている。
【0023】
図2に拡大して示すように、アーム制御ユニット10は、平行リンク機構11を備え、この平行リンク機構11は、4本のリンク部材11a,11b,11c,11dを備えている。第1及び第2リンク部材11a,11bが第1リンク軸11eで回動可能に連結され、第3及び第4リンク部材11c,11dが第2リンク軸11fで回動可能に連結されている。また、第2リンク部材11bと第4リンク部材11dとが第3リンク軸11gで連結されている。これにより、平行リンク機構11が構成されている。そして、第2リンク部材11bの先端がハンド制御ユニット20に連結されている。この平行リンク機構11によって手先の位置が決められる。第1リンク部材11a及び第3リンク部材11cは、それぞれアーム用MRデバイス12の回転軸12aに連結され、そのトルクがアーム用MRデバイス12で調整されるようになっている。アーム用MRデバイス12自体は、は、作業台3に固定されている。回転軸12aが平行リンク機構11の駆動軸を構成している。
【0024】
この手先の力ベクトルとアーム用MRデバイス12のトルクは平行リンク機構11の運動学に基づき計算される。
【0025】
操作者は、両前腕をアームレスト5においてハンド制御ユニット20を操作する。本実施形態では、ハンド制御ユニット20の平行移動に伴うX−Y方向の力触覚をアーム制御ユニット10が制御し、親指と人差し指の開閉に伴う力触覚をハンド制御ユニット20が制御するように構成されている。
【0026】
図3に、ハンド制御ユニット20の構造の概略を示し、このハンド制御ユニット20は、ハサミ状の開閉機構21を有する。この開閉機構21は、例えば、ケース側パーツ21aと軸側パーツ21bとを有する。ケース側パーツ21aはハンド用MRデバイス23のケース23bに連結され、軸側パーツ21bは、ハンド用MRデバイス23の開閉軸23aに連結されている。ケース側パーツ21a及び軸側パーツ21bに親指又は人差し指をそれぞれ差し込んで開閉機構21の開閉操作が行われる。そして、ハンド用MRデバイス23により、ケース側パーツ21aと軸側パーツ21bとの相対角の変化に伴う回転トルクが返されるようになっている。
【0027】
ハンド用MRデバイス23とアーム用MRデバイス12はそれぞれ異なる性能が要求される。アーム用MRデバイス12はハンド用MRデバイス23に比べて大きなトルクが必要になるため、サイズも大きくなる。
【0028】
例えば、作業台3の裏側には、電源制御装置30が設けられている。この電源制御装置30は、例えば
図7に示すように、各MRデバイス12,23に電流を送り込む、リニアサーボアンプ等よりなる電源31と、この電源31から送り込む電流量を制御する制御部32とを備えている。そして、左右一対のアーム制御ユニット10とハンド制御ユニット20は、作業台3の表側に配置することで、見映えと操作性を向上させている。
【0029】
スレーブ側は、例えば手術支援ロボットのスレーブアーム40が想定される。スレーブアーム40は、各種センサ類を備えたセンサユニット41と、スレーブアーム40の動作を実現する、モータ等のアクチュエータ42とを備えている。
【0030】
図4にアーム用MRデバイス12の具体的な構成例を示す。同図に示すアーム用MRデバイス12は、回転軸12a、ロータ12b、ステータ12c及びコイル12dを含む。一部拡大して示すように、ロータ12b側の内側多層ディスク12gとステータ側の外側多層ディスク12fとの間には、マグネトレオロジー流体としてのMR流体12hが封入されている。ロータ12bのコイル12dには、電源制御装置30により任意の電流が供給されるようになっている。
【0031】
MR流体12hは、磁性粒子を分散媒に分散させて形成した液体であり、特にその磁性粒子がナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)からなるものが使用できる。磁性粒子は磁化可能な金属材料からなり、金属材料に特に制限はないが軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金が挙げられる。分散媒は、特に限定されるものではないが、一例として疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。磁気粘性流体における磁性粒子の配合量は、例えば3〜40vol%とすればよい。磁気粘性流体にはまた、所望の各種特性を得るために、各種の添加剤を添加してもよい。
【0032】
上記構成を備えるアーム用MRデバイス12において、コイル12dに電流が印加されると、矢印Pa、Pbに示す方向に沿って電磁回路12eが形成される。この磁路は、MR流体12hを貫通し、これにより、MR流体12hには、磁場の強さに応じた粘度(ずり応力)が発現する。内側多層ディスク12gと外側多層ディスク12fとの間での伝達トルクが磁場の強さに応じて大きくなる。その結果、回転軸12aの回転抵抗もコイル12dに給電される電流値に応じて大きくなるようになっている。
【0033】
ハンド用MRデバイス23についても同様の構成であり、開閉軸23aの回転抵抗が内部のコイルに給電される電流値に応じて大きくなるようになっている。
【0034】
このように、電源制御装置30により、ハンド用MRデバイス23及びアーム用MRデバイス12に電流を送ってMR流体の粘性を変化させることで、開閉機構21や平行リンク機構11を操作するときの力加減に変化を与えたり、振動を加えたりすることで、力触覚を再現できる。
【0035】
本実施形態では、作業台3に両手を置いてマスタアーム6を操作し、スレーブアームを制御する場合に利用でき、その際に力触覚を再現できるので、例えば手術支援ロボットのマスタアーム6として利用すれば、縫合糸の操作などにおいて手加減がしやすくなる。
【0036】
したがって、本実施形態に係る力触覚提示システム1によると、ナノMR流体を用いて複数の動作に係る力触覚を受動的に発現できる。
【0037】
−力触覚提示システムの実施例−
次に、本実施形態に係る力触覚提示システム1の実施例について説明する。
【0038】
片腕分のデバイス設計を行うために、例えば
図5の座標系を設定した。操作中は前腕の一部をアームレスト5に置き、この点を中心として前腕が回転運動のみを行うものと仮定した。また、前腕と手部の2リンクモデルで人の上肢動作をモデル化した。前腕の回転中心を原点Oとして2次元平面上の座標系を設定した。Xは横方向、Yは前方向である。手関節位置を点A、グリップ中心を点Bとする。OAをL
A=20センチメートル、ABをL
B=10センチメートルと仮定する。前腕のY軸に対する角度をθ
Aとし、0〜45度の変化を想定する。前腕に対する手部の角度をθ
Bとして0〜90度の変化を想定した。点Bの位置(X
B,Y
B)は次式で求めることができる。
【0039】
X
B=L
A×sin(θ
A)+L
B×sin(θ
A+θ
B) (1)
Y
B=L
A×cos(θ
A)+L
B×cos(θ
A+θ
B) (2)
アーム制御ユニットの可動域を
図5よりも大きくすることによって操作者の可動域内のすべての運動を可能とした。ただし、アーム制御ユニット10の目的は抵抗力の制御であり、可動域の境界に近い領域(特異点近傍)では適度な力触覚提示ができなくなる。そこで、可操作性楕円体を考慮してアーム制御ユニット10の配置とリンク長さを設計した。
【0040】
まず、
図5と同じ座標系の上にアーム制御ユニット10の各関節位置と角度変数を
図6のように定義する。アーム制御ユニット10の原点Odは2次元平面(作業台3)上の任意の位置(X
O,Y
O)に配置可能であるとする。第1リンク部材11aの長さOdCをL1、第2リンク部材11bの長さCDをL2とする。リンク機構として平行リンク機構11を用いるものとし、第1リンク部材11a、第2リンク部材11bのそれぞれの絶対角を制御可能とする。そこで、第1リンク部材11aの角度をθ1、第2リンク部材11bの角度をθ2とする。点Dの位置(X
D, Y
D)は次式で求めることができる。
【0041】
X
D=L1×sin(θ1)+L2×sin(θ2)+X
O (3)
Y
D=L1×cos(θ1)+L2×cos(θ2)+Y
O (4)
左右のマスタアーム6が干渉しないように左右のアーム制御ユニット10の間隔を調整する。又は動作範囲を仕切り板や長穴等で限定するとよい。
【0042】
このような設計により、例えば、手術支援ロボットとして使用でき、左右のアーム制御ユニット10は、例えば、その回転中心が、左右の肘の固定位置からそれぞれ内側に0.075m、前方に0.125mになるように作業台3上に固定される。各リンク部材11a〜11dのリンク軸間の距離を100mmとし、手先の提示力は、例えば1N(100gf)以上とする。また、手先の運動方向と逆方向に力を提示する場合に少なくとも半分以上の角度範囲でそれを正確に行う(それ以外の方向でも多少の方向のずれはあるが、反力を返すことができる)。また、アーム用MRデバイス12のブレーキ最大トルクは0.2Nmとする。
【0043】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0044】
すなわち、上記実施形態では、力触覚提示システム1は、駆動機構としてXY座標内で移動可能な平行リンク機構11を有しているが、さらにZ座標や回転方向についてもアクチュエータ42を駆動可能に構成してもよい。その方向に駆動した際に対応するMRデバイスの回転軸が回転されるようにすれば、その回転抵抗を制御することで、力触覚を受動的に発現できるようになる。
【0045】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 力触覚提示システム
2 コンソール
3 作業台
4 脚部
5 アームレスト
6 マスタアーム
10 アーム制御ユニット
11 平行リンク機構
11a 第1リンク部材
11b 第2リンク部材
11c 第3リンク部材
11d 第4リンク部材
11e 第1リンク軸
11f 第2リンク軸
11g 第3リンク軸
12 アーム用MRデバイス
12a 回転軸
12b ロータ
12c ステータ
12d コイル
12e 電磁回路
12f 外側多層ディスク
12g 内側多層ディスク
12h MR流体
20 ハンド制御ユニット
21 開閉機構
21a ケース側パーツ
21b 軸側パーツ
23 ハンド用MRデバイス
23a 開閉軸
23b ケース
30 電源制御装置
31 電源
32 制御部
40 スレーブアーム
41 センサユニット
42 アクチュエータ