(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836245
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】電柱元穴建替用工具装備車両
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20210215BHJP
E04H 12/20 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
H02G1/02
E04H12/20 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-205049(P2017-205049)
(22)【出願日】2017年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-183032(P2018-183032A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-84542(P2017-84542)
(32)【優先日】2017年4月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222015
【氏名又は名称】株式会社ユアテック
(73)【特許権者】
【識別番号】592237507
【氏名又は名称】北日本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 英男
(72)【発明者】
【氏名】田澤 秀徳
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】谷米 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】森崎 祐太
(72)【発明者】
【氏名】板垣 栄悦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 祐喜
(72)【発明者】
【氏名】野川 隆
(72)【発明者】
【氏名】内海 和也
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平3−27708(JP,A)
【文献】
実開平3−29531(JP,U)
【文献】
実開昭64−57364(JP,U)
【文献】
特開2014−204642(JP,A)
【文献】
特開2011−172330(JP,A)
【文献】
特開昭63−184686(JP,A)
【文献】
実開平3−121045(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
E04H 12/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の電柱を撤去して新しい電柱を建てるときに前記既設の電柱から取り外した架線を一時的に支持するために使用される仮柱を支持するための電柱元穴建替用工具装備車両であって、
車両本体と架台フレームとベース部材とを有し、
前記車両本体は荷台を有し、
前記架台フレームは前記荷台に固定され、
前記ベース部材は、前記仮柱の支持部を有し、前記架台フレームに対して前記支持部を前記荷台の外側または内側に位置付け可能に設けられていることを、
特徴とする電柱元穴建替用工具装備車両。
【請求項2】
前記ベース部材は前記架台フレームにスライド可能に設けられ、
ベース用脚部を前記荷台の高さ以上の高さから車両設置面より下方まで伸縮可能なベース用ジャッキ装置が前記ベース部材に設けられていることを、
特徴とする請求項1記載の電柱元穴建替用工具装備車両。
【請求項3】
4つのジャッキ装置を有し、各ジャッキ装置はジャッキ基部とアームと脚部とを有し、
各ジャッキ基部は前記架台フレームに取り付けられ、
各アームは先端を前記荷台の前部および後部で前記荷台の左右方向外側または内側に位置付けるよう伸縮可能に各ジャッキ基部に取り付けられ、
各脚部は車両設置面より下方までそれぞれ独立して伸縮可能に各アームの前記先端に取り付けられていることを、
特徴とする請求項2記載の電柱元穴建替用工具装備車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱元穴建替用工具装備車両に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の電柱を建て替える際、新しい電柱を建てる土地を確保できない場合などには、既存の電柱の位置に新しい電柱を建てることが行われている。このような既存の電柱の位置に新しい電柱を建てる方法として、従来、支持アームを他端で既設の電柱に水平に取り付け、既設の電柱から架線を取り外して支持アームに移設した後、既設の電柱に並べて支持台に仮柱本体を建て、支持台に支持用錘を載せ、その後、支持アームの一端を仮柱本体に固定し、支持アームの他端を既設の電柱から取り外した後、既設の電柱を撤去してその同じ場所に新しい電柱を建て、その後、支持アームから架線を取り外して新しい電柱に移設した後、支持アーム、支持用錘、仮柱本体および支持台を撤去する電柱元穴建替方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5527864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電柱元穴建替方法によれば、大型重機が入れない比較的狭い場所でも、撤去する電柱と同じ位置に新しい電柱を建てることができ、電柱元穴での建て替えに要する作業時間を短縮することができる。しかし、特許文献1に記載の電柱元穴建替方法では、既存の電柱または新しい電柱に並べて建てられた仮柱本体を支持するために、仮柱本体の支持台に支持用錘を載せる必要があり、その支持用錘の運搬や支持台への積載、支持台からの撤去などのための作業車両が必要となるうえ、その作業に時間を要するという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、電柱の建替え作業に必要な作業車両の台数を減らすとともに、電柱の建替えに要する作業時間を短縮することができる電柱元穴建替用工具装備車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電柱元穴建替用工具装備車両は、既設の電柱を撤去して新しい電柱を建てるときに前記既設の電柱から取り外した架線を一時的に支持するために使用される仮柱を支持するための電柱元穴建替用工具装備車両であって、車両本体と架台フレームとベース部材とを有し、前記車両本体は荷台を有し、前記架台フレームは前記荷台に固定され、前記ベース部材は、前記仮柱の支持部を有し、前記架台フレームに対して前記支持部を前記荷台の外側または内側に位置付け可能に設けられていることを、特徴とする。
【0007】
本発明に係る電柱元穴建替用工具装備車両で仮柱を支持するとき、電柱建替え場所まで移動したならば、ベース部材の支持部を荷台の外側に位置付ける。支持部に仮柱を取り付け、電柱建替え工事を行う。このように、車両本体が錘になるため、仮柱支持用の錘の運搬や積載、撤去などのために必要な作業車両の台数を減らすとともに、作業時間を短縮することができる。また、ベース部材を利用して仮柱を支持するため、地面に仮柱の基礎用の穴を開ける必要がなく、容易かつ迅速に仮柱本体を建てることができる。さらに、支持部を荷台の外側に位置付けることにより、仮柱の支持が可能となり、車両本体が錘となって耐転倒性を高めることができる。
【0008】
本発明に係る電柱元穴建替用工具装備車両で、前記ベース部材は前記架台フレームにスライド可能に設けられ、ベース用脚部を前記荷台の高さ以上の高さから車両設置面より下方まで伸縮可能なベース用ジャッキ装置が前記ベース部材に設けられていることが好ましい。
【0009】
この場合、ベース部材を架台フレームに対してスライドさせ、支持部を荷台の外側に位置付けたならば、ベース用ジャッキ装置のベース用脚部を伸ばしてベース部材を支持する。次に、ベース部材の支持部に仮柱を取り付け、電柱建替え工事を行う。このように、ベース部材を荷台の外側に伸ばすことにより、耐転倒性を高めることができる。また、ベース用ジャッキ装置により、ベース部材の安定性を高めることができる。
【0010】
本発明に係る電柱元穴建替用工具装備車両は、4つのジャッキ装置を有し、各ジャッキ装置はジャッキ基部とアームと脚部とを有し、各ジャッキ基部は前記架台フレームに取り付けられ、各アームは先端を前記荷台の前部および後部で前記荷台の左右方向外側または内側に位置付けるよう伸縮可能に各ジャッキ基部に取り付けられ、各脚部は車両設置面より下方までそれぞれ独立して伸縮可能に各アームの前記先端に取り付けられていることが好ましい。
【0011】
この場合、電柱建替え場所まで移動したならば、4つのジャッキ装置の各アームを各ジャッキ基部から伸ばし、それぞれの先端を荷台の左右方向外側に位置付ける。次に、各脚部を下方向に伸ばし、車両本体を浮上させる。各脚部は、それぞれ独立して伸縮可能なため、容易に水平調整が可能である。ベース部材を架台フレームに対してスライドさせ、支持部を荷台の外側に位置付けたならば、ベース用ジャッキ装置のベース用脚部を伸ばしてベース部材を支持する。次に、ベース部材の支持部に仮柱を取り付け、電柱建替え工事を行う。
【0012】
工事完了後は、荷台に使用後の工具を積載する。ベース用ジャッキ装置の各ベース用脚部を縮め、ベース部材をスライドさせて支持部を荷台の内側に位置付ける。4つのジャッキ装置の各脚部を縮め、各アームを各ジャッキ基部に対して縮める。そして、車両本体で移動することができる。
【0013】
本発明に係る電柱元穴建替用工具装備車両で、前記仮柱は複数の仮柱部材から構成され、前記架台フレームは前記仮柱部材の支持台を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電柱の建替え作業に必要な作業車両の台数を減らすとともに、電柱の建替えに要する作業時間を短縮することができる電柱元穴建替用工具装備車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態の電柱元穴建替用工具装備車両の使用状態を示す背面図である。
【
図2】
図1の電柱元穴建替用工具装備車両に装備される電柱元穴建替用工具を示す平面図である。
【
図3】
図2に示す電柱元穴建替用工具の架台フレームおよびベース部材を示す斜視図である。
【
図4】
図2の電柱元穴建替用工具を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の電柱元穴建替用工具装備車両を示している。
電柱元穴建替用工具装備車両は、車両本体1と電柱元穴建替用工具10とを有している。
車両本体1は、荷台2を有するトラックである。電柱元穴建替用工具10は、仮柱11を支持するための工具である。仮柱11は、既設の電柱を撤去して新しい電柱を建てるときに既設の電柱から取り外した架線を一時的に支持するために使用される。
【0017】
図2に示すように、電柱元穴建替用工具10は、架台フレーム20と4本のジャッキ装置30とベース部材40とを有している。
図3に示すように、架台フレーム20は、長方形の一方の長辺の中間部を切り欠いた形状の枠21を有している。枠21の内側には、長さ方向に沿って伸びる2本の補強材22が固定されている。架台フレーム20は、車両本体1の荷台2より小さく、荷台2に固定されている。架台フレーム20は2本の角筒材23を有し、各角筒材23は互いに平行をなして、2本の補強材22に架け渡されている。架台フレーム20は、枠21の下部に、荷台2に固定される4つの固定部21aを有している(
図1参照)。架台フレーム20の上部には、発電機13が設けられている。
【0018】
架台フレーム20は、仮柱部材の支持台24を有している。
図3に示すように、支持台24は、2対の柱部材25と1対の梁部材26と1本の横架材27とを有している。2対の柱部材25は、架台フレーム20の前部20aおよび後部20bにそれぞれ垂直に固定されている。1対の梁部材26は、それぞれ各対の柱部材25の上端に垂直に固定され、架台フレーム20の前部20aおよび後部20bに平行に伸びている。各梁部材26は、両端付近の上部にそれぞれ仮柱部材のストッパ28を有している。横架材27は、両端が各梁部材26に垂直に固定されている。仮柱11は、複数の仮柱部材を直列に連結して構成される。仮柱部材には、ベース柱と連結柱とがある。最下部の仮柱部材は、自在継手を有し、設置面に対して下面を沿わせるよう下面の角度を調整可能となっている。
【0019】
図1に示すように、各ジャッキ装置30は、ジャッキ基部31とアーム32と脚部33とを有している。各ジャッキ基部31は、角柱状をなし、架台フレーム20の前部20aおよび後部20bにそれらの長さ方向に沿って左右1対ずつ固定されている。架台フレーム20の後部20bのジャッキ基部31の上部には、各ジャッキ装置30の制御盤14が設けられている。また、架台フレーム20の上部には、工具収納架台15が設けられている。
【0020】
各アーム32は、各ジャッキ基部31の長さ方向に沿って伸縮可能に各ジャッキ基部31に取り付けられている。各アーム32は、伸縮することにより、先端を荷台2の左右方向外側または内側に位置付けることが可能である。
【0021】
各脚部33は、発電機13の動力で駆動されるユニバーサルジャッキから成っている。各脚部33は、各アーム32の先端に取り付けられ、車両設置面より下方までそれぞれ独立して上下方向に伸縮可能となっている。各脚部33は、自在継手を有し、設置面に対して下面を沿わせるよう下面の角度を調整可能である。
【0022】
図2および
図3に示すように、ベース部材40は、2本のスライド材41と横材42と補強部材43とを有している。各スライド材41は、角柱状であって、それぞれ角筒材23の内部にスライド可能に設けられている。各スライド材41は、中央部から後部側にかけて上部に複数の止め穴41aを有している。角筒材23は、上部中央付近に位置決め穴23aを有している。位置決め穴23aおよび止め穴41aのいずれかに位置決めピンを挿入することにより、角筒材23に対し各スライド材41を位置決めすることができる。
【0023】
図2〜
図4に示すように、ベース部材40は、仮柱11の支持部45を有している。支持部45は、2本の柱46とL字形状部材47とを有している。各柱46は、横材42および補強部材43に垂直に固定されている。L字形状部材47は、各柱46の上端に架け渡すように固定されている。仮柱11は、2つの電柱取付バンド48によりL字形状部材47に取り付けられる。また、仮柱11は、2本の支持材49の上端で支持される。各支持材49は、下端が横材42の両端の取付部42aにそれぞれ取り付けられる。
【0024】
横材42は、各スライド材41の同じ側の一端に垂直に固定されている。補強部材43は、横材42を架台フレーム20の一方の側部に沿って配置したとき各角筒材23に当接する位置で、両端が各スライド材41に垂直に固定されている。これにより、ベース部材40は、各アーム32と同一方向にスライドして支持部45を架台フレーム20および荷台2の外側または内側に位置付け可能となっている。
【0025】
横材42の両端には、それぞれベース用ジャッキ装置50が固定されている。ベース用ジャッキ装置50は、手動により上下方向にベース用脚部51を伸縮可能なネジ式のジャッキ装置である。ベース用脚部51は、荷台2の高さ以上の高さから車両設置面より下方まで伸縮可能である。
支持台24の上部には、ベース柱用押さえ部材61、連結柱用押さえ部材62およびサヤ管用押さえ部材63が取り付けられている。
【0026】
図1に示すように、電柱元穴建替用工具装備車両を使用する際、架台フレーム20の上に必要工具を積載する。必要工具は、例えば油圧式電柱切断工具などである。支持台24の上に仮柱部材を積載する。支持台24の上の仮柱部材は一端が押さえ部材62により押さえられ、ロック部材により押さえ部材62に固定されるので、運搬中に仮柱部材の一端が飛び出すのを防ぎ、安全を図ることができる。
【0027】
車両を運転して電柱建替え場所まで移動したならば、
図1に示すように、4つのジャッキ装置30の各アーム32を各ジャッキ基部31から伸ばし、それぞれの先端を荷台2の左右方向外側に位置付ける。次に、発電機13を稼働させて各脚部33を動力により下方向に伸ばし、車両本体1を浮上させる。各脚部33は、それぞれ独立して伸縮可能なため、容易に水平調整が可能である。各脚部33は下面の角度を調整可能な自在継手を有するので、傾斜地であっても、鉛直方向に伸ばした状態で、下面を設置面に沿わせて安定させることができる。
【0028】
ベース部材40を手動で架台フレーム20および荷台2の外側に伸ばす。次に、ベース用ジャッキ装置50のベース用脚部51を手動で伸ばし、ベース部材40を支持する。ベース部材40を架台フレーム20の外側に伸ばし、支持部45を荷台2の外側に位置付けることにより、仮柱11の支持が可能となり、耐転倒モーメントを確保し、耐転倒性を高めることができる。また、ベース用ジャッキ装置50により、ベース部材40の安定性を高めることができる。
【0029】
架台フレーム20の上に積載した工具や支持台24の上に積載した仮柱部材などの工具を降ろす。仮柱部材は、クレーンなどにより前部側の端部を吊り上げられる。ベース部材40の支持部45に仮柱11を取り付け、電柱建替え工事を行う。仮柱11は、複数の仮柱部材のベース柱および連結柱を直列に連結して組み立てる。ベース部材40の支持部45を利用して仮柱11を支持するため、地面に仮柱11の基礎用の穴を開ける必要がなく、容易かつ迅速に仮柱11を建てることができる。ベース部材40を架台フレーム20の外側に伸ばし、ベース部材40の支持部45に仮柱11を取り付けたときには、車両本体1が錘になってバランスがとれるため、全体の安定化が図られる。
【0030】
工事完了後は、逆の作業手順により荷台2に使用後の工具を積載し、支持台24の上に仮柱部材を積載する。ベース用ジャッキ装置50の各ベース用脚部51を縮め、ベース部材40をスライドさせて支持部45を荷台2の内側に位置付ける。4つのジャッキ装置30の各脚部33を縮め、各アーム32を各ジャッキ基部31に対して縮める。そして、車両本体で移動することができる。
【0031】
このように、車両本体1が錘になるため、仮柱支持用の錘の運搬や積載、撤去などのために必要な作業車両の台数を減らすとともに、作業時間を短縮することができる。また、ベース部材40を利用して仮柱11を支持するため、地面に仮柱11の基礎用の穴を開ける必要がなく、容易かつ迅速に仮柱本体を建てることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 車両本体
2 荷台
10 電柱元穴建替用工具
11 仮柱
13 発電機
20 架台フレーム
23 角筒材
24 支持台
30 ジャッキ装置
31 ジャッキ基部
32 アーム
33 脚部
40 ベース部材
41 スライド材
45 支持部
50 ベース用ジャッキ装置
51 ベース用脚部