特許第6836268号(P6836268)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836268
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】運搬車
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20210215BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   A61G12/00 C
   A61L9/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-19274(P2017-19274)
(22)【出願日】2017年2月6日
(65)【公開番号】特開2018-126177(P2018-126177A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】593012310
【氏名又は名称】菱熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】女屋 哲意
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−209576(JP,A)
【文献】 特開2001−341648(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3119096(JP,U)
【文献】 特開2004−121468(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0117449(KR,A)
【文献】 特開2008−194626(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105640651(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A61L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体状の筐体であって、直進可能に下方側底面に複数の車輪が設けられ、被収容物を上方の開口から収容する収容容器を格納可能な格納空間が内部に画成された筐体と、
前記格納空間に対し直進方向前方から前記収容容器を搬入または搬出可能に前記筐体の前方側面に形成された前方開口に対して設けられた前方扉部と、
前記格納空間に対し上方から前記収容容器に被収容物を収容可能に前記筐体の上方底面に形成された上方開口に設けられた上方扉部と、
前記格納空間内に配置され、直進方向後方から前方に向けて空気を噴出し、該噴出により形成された空気流により前記上方開口を遮蔽する噴出部と、
前記前方扉部に設けられ、前記格納空間内の空気を清浄化する空気清浄部とを備え
前記空気清浄部は、略直方体状に形成されて内部に空間が画成されたケーシングと、前記空間を3つに分割するように配置され、空気を清浄する2つの板状のフィルタと、該2つのフィルタの両方と面する空間と前記ケーシングの外部とを連通するように該ケーシングの下方底面に形成された排気孔から空気を排出するファンとを有することを特徴とする運搬車。
【請求項2】
前記2つのフィルタのいずれか一方のみと面する2つの空間のそれぞれと前記ケーシングの外部とを連通するように該ケーシングの上方底面に形成された吸気孔から前記ファンにより前記格納空間の空気が吸気されることを特徴とする請求項に記載の運搬車。
【請求項3】
前記2つのフィルタのそれぞれは、前記ケーシングにおいて互いに対向する2組の側面のうち一方の組の側面に対して傾斜して配置されていることを特徴とする請求項に記載の運搬車。
【請求項4】
前記前方扉部の下方には前記空気清浄部により清浄された空気を外部へ流出する流出孔が形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みおむつを収容する収容容器が格納される格納空間の空気を洗浄する運搬車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、介護施設において、一部の要介護者は使い捨ておむつを使用しており、使用済みおむつは、運搬車を移動させて介護施設内を巡回する介護者によって、運搬車の格納空間に格納される収容容器内に収容され、収容されたおむつは廃棄物処理施設まで運搬される。
【0003】
収容容器は上方が開口した容器であり、運搬車には内部の格納空間と外部とを上方に連通する上方開口が形成されており、運搬車は上方開口を閉鎖及び開放可能な上方扉部を備えている。
【0004】
介護者は、上方扉部により上方開口を閉鎖させた状態で運搬車を収容位置まで移動させ、収容位置において、使用済みおむつを、開放させた上方開口から格納空間内の収容容器に投げ入れることによって運搬車に収容する。この際、介護者は、すでに収容された使用済みおむつから発せられる臭気に晒されることとなる。
【0005】
このような使用済みおむつから発生する臭気を清浄化する装置として、おむつ取替用移動車に設けられた光触媒担持体と紫外線光源による空気清浄装置であって、おむつ取替用移動車の移動時にバッテリーの電源で稼働させるようにした、おむつ取替用移動車の空気清浄装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3119096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の空気清浄装置は、使用済みおむつを入れるバケットの近傍に取付けられているために、バケットからは常に外部に向けて臭気が発せられており、空気洗浄装置近傍以外の空気が臭気により汚染されてしまう、という問題がある。また、収容容器を格納空間に格納した場合であっても、使用済みおむつを収容する際は上方扉部を開放する必要があり、この際に運搬車周辺の空気が臭気に汚染されてしまう、という問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、使用済みおむつから発せられる臭気による空気の汚染を低減することができる運搬車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、略直方体状の筐体であって、直進可能に下方側底面に複数の車輪が設けられ、被収容物を上方の開口から収容する収容容器を格納可能な格納空間が内部に画成された筐体と、前記格納空間に対し直進方向前方から前記収容容器を搬入または搬出可能に前記筐体の前方側面に形成された前方開口に対して設けられた前方扉部と、前記格納空間に対し上方から前記収容容器に被収容物を収容可能に前記筐体の上方底面に形成された上方開口に設けられた上方扉部と、前記格納空間内に配置され、直進方向後方から前方に向けて空気を噴出し、該噴出により形成された空気流により前記上方開口を遮蔽する噴出部と、前記前方扉部に設けられ、前記格納空間内の空気を清浄化する空気清浄部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用済みおむつから発せられる臭気による空気の汚染を低減することができる運搬車を実現できる。本発明のその他の効果については、以下の発明を実施するための形態の項でも説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る運搬車の構成を示す概略斜視図である。
図2】運搬車の構成を示す概略側面図である。
図3】運搬車の構成を示す概略平面図である。
図4】噴出部の構成を示す概略斜視図である。
図5】空気清浄部の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
まず、図1図3を参照して、本実施形態に係る運搬車の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る運搬車の構成を示す概略斜視図である。図2は、運搬車の構成を示す概略側面図である。図3は、運搬車の構成を示す概略平面図である。なお、図1図3において、x軸は運搬車の幅方向を示し、y軸は運搬車の奥行方向即ち直進方向を示し、また、図1において、z軸は運搬車の高さ方向を示す。なお、以降の説明において、y軸において後述する把手部が設けられた側を後方とし、この逆方を前方とする。また、図2及び図3における矢印は、空気の流れを示している。
【0014】
図1図3に示す運搬車1は、介護者が介護施設内を巡回して、被収容物としての要介護者の使用済みおむつを収容しつつ、介護施設における廃棄物処理施設まで運搬するための手押し車である。この運搬車1は、略直方体の形状に形成された筐体10、筐体内部に画成された格納空間11、筐体10の底部の四方の角隅に設けられた車輪101a〜101d、筐体10の後方に設けられた把手部10a、前方扉部12、上方扉部13、噴出部14、空気清浄部15、バッテリー16、電源接続部17、操作部18を備える。運搬車1の筐体10は、車輪101a〜101dにより直進可能となっている。
【0015】
前方扉部12は、格納空間11と筐体10外部とを前方に連通する前方開口を閉鎖及び開放可能であり、閉鎖時に後方側の側面において筐体10の前方側の側面と重なる領域の一部が開口した略直方体として形成され、その側方片側一辺が蝶番12aによって筐体10と接続される。前方扉部12の内部には収容空間が画成されており、前方扉部12により前方開口が閉鎖された際には、この収容空間と格納空間11とが連通するようになっている。また、前方扉部12の上端部は筐体10の上端から突出しており、この突出部分の後方側の側面には収容空間に外部からの空気を流入させる流入孔121が形成されている。更に、前方扉部12の底面には収容空間の空気を外部へ流出させる流出孔122が形成されている。
【0016】
上方扉部13は、格納空間11と筐体10外部とを上方に連通する上方開口を閉鎖及び開放可能に形成され、その後方側一辺が蝶番13aによって筐体10と接続される。また、上方扉部13には、使用済みおむつを回収する介護者が上方扉部13を上方開口から離間させて上方開口を開放するための把持部13bが設けられている。なお、上方扉部13の後方端部近傍の幅方向両端には、それぞれ、格納空間11に外部からの空気を流入させる流入孔131a、131bが形成されており、これら流入孔131a、131bは、本実施形態において、蝶番13aにおいて筐体10に接続されている部分を筐体10から上方に所定距離だけ離間させることによって筐体10と前方扉部12との間に生じる隙間として形成されるものとするが、例えば、上方扉部13の側方両端部に切欠きを設けるなどの他の方法により形成しても良い。
【0017】
噴出部14は、格納空間11内において、上方扉部13の後方端部近傍、即ち、蝶番13aの近傍に設けられ、前方に向けて空気を噴出して、格納空間11の上方開口を覆う空気流によって格納空間11からの臭気が運搬車1の外部に流出しないように上方開口を遮断する。空気清浄部15は、前方扉部12の収容空間における下方に配置され、収容空間及びこれに連通する格納空間11の空気を吸気し、吸気した空気を清浄し、清浄した空気を前方扉部12の流出孔122を介して運搬車1の外部へ排出する。バッテリー16は、噴出部14及び空気清浄部15に駆動電力を供給する。電源接続部17は、バッテリー16を家庭用電源に接続して充電するための電源ケーブルを接続するためのコネクタである。操作部18は、介護者が噴出部14及び空気清浄部15の動作のON/OFFを切り換えるためのスイッチである。
【0018】
格納空間11内には、収容容器20が格納されており、この収容容器20は上方の底面が開口された略直方体状に形成され、その内部には使用済みおむつが収容されるようになっている。介護者は、不使用時には運搬車1に電源ケーブルを接続してバッテリー16を充電し、使用時には噴出部14及び空気清浄部15を駆動させ、運搬車1を収容位置まで移動させて上方扉部13を開いた状態で、上方開口を介して収容容器20に使用済みおむつを収容する。
【0019】
この際、格納空間11が噴出部14から噴出される空気流により外気と遮断された状態で格納空間11内の空気が空気清浄部15により清浄される。これによって、上方開口が開放された状態であっても、使用済みおむつによる介護者の周囲の空気汚染は低減され、また、同時に、空気清浄部15によって格納空間11内の空気が清浄されるとともに流入孔121から外気が格納空間11内に流入するため、格納空間11内の臭気も緩和される。更に清浄された空気は、運搬車1の使用時に介護者の鼻が位置する場所、即ち把手部10a近傍の上方から最も離間した流出孔122から排出させることにより、介護者の心理的負担を低減させるとともに、介護者周辺の空気汚染を可能な限り低減することができる。
【0020】
また、介護者は、介護施設内を循環して使用済みおむつを運搬車1に格納し終えると、廃棄物処理施設へ運搬車1を移動させ、前方扉部12を開いて前方開口から収容容器20を取り出し、収容容器20内の使用済みおむつを廃棄物処理施設に廃棄する。
【0021】
次に、噴出部の構成について説明する。図4は、噴出部の構成を示す概略斜視図である。
【0022】
図4に示すように、噴出部14は、内部に空間が画成され、運搬車1の幅方向に長尺となった略直方体状のケーシング140と、このケーシング140内に収容され、図示しないモータにより回転駆動されるランナ143とを備える。ケーシング140の幅方向(x方向)の両端面のそれぞれには吸気孔141a,141bが形成され、前方側側面には噴出孔142が形成される。ランナ143は、回転駆動されることによって吸気孔141a,141bからケーシング140外部の空気を吸入し、吸入した空気を噴出孔142から噴出する。吸気孔141a,141bの位置は、両端面でなくとも良く、流入孔131a、131bの近傍となるような位置であれば良い。これによって、上方開口を遮蔽する空気流を外部の空気を多く含んで形成することができる。噴出孔142の長手方向の長さは、少なくとも上方開口における幅方向の長さ以上とすることが望ましく、これによって、噴出孔142から噴出される空気流により上方開口は外部と遮断される。
【0023】
次に、空気清浄部の構成について説明する。図5は、空気清浄部の構成を示す概略斜視図である。
【0024】
図5に示すように、空気清浄部15は、同様の構成を有して幅方向に並置された3つの空気清浄部15a〜15cを含む。空気清浄部15a〜15cのそれぞれは、内部に空間が画成された略直方体状のケーシング150と、このケーシング150内の空気を外部に排出するファン153と、ケーシング150内に収容される2つのフィルタ154a,154bとを備える。また、ケーシング150の上方側底面には2つの吸気孔151a,151bが形成され、ケーシング150の下方側底面には排気孔152が形成される。このような空気清浄部15は、2つの吸気孔151a,151bが前方扉部12において格納空間11と連通する場所に位置し、且つ、排気孔152が前方扉部12において格納空間11と連通しない場所に位置する必要があるため、前方扉部12は、その収容空間が上方において格納空間11と連通し、下方において格納空間11と連通しないように形成される。
【0025】
2つのフィルタ154a,154bのそれぞれは、平板状に形成された活性炭フィルタであり、その平面は奥行方向(y方向)に平行であり、且つ、奥行方向及び高さ方向(y方向及びz方向)に平行な面に対して下方端部が上方端部より幅方向(x方向)外側に位置するように傾斜してケーシング150内部に配置されている。更に、2つのフィルタ154a,154bはケーシング150内の空間を3つに分割する。このように2つのフィルタ154a,154bのそれぞれを傾斜させることによって、傾斜させない場合と比較して、2つのフィルタ154a,154bの表面積を増大させることができ、延いては、空気の洗浄能力を高めることができる。なお、2つのフィルタ154a,154bは、ケーシング150において互いに対向する2組の側面のうち、いずれか一方の組の側面に対して傾斜するように配置されれば良いが、短手である組の側面に対して傾斜させることが望ましい。
【0026】
2つの吸気孔151a,151bのそれぞれは、2つのフィルタ154a,154bの一方のみに面する空間と連通するようにケーシング150の上方側底面に設けられる。更に、2つの吸気孔151a,151bのそれぞれは、埃などを除去するプレフィルタによって覆われる。また、排気孔152は、2つのフィルタ154a,154bの両方と面する空間と連通するようにケーシング150下方側底面に設けられる。ファン153は、この排気孔152からケーシング150内の空気を外部に排出するように設けられる。このように、2つの吸気孔151a,151bに対して1つの排気孔152を対応させることによって、1つの排気孔152により2つのフィルタ154a,154bによる空気の洗浄を行うことができる。
【0027】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0028】
1 運搬車
10 筐体
11 格納空間
12 前方扉部
13 上方扉部
14 噴出部
15 空気清浄部
20 収納容器
101a〜101d 車輪
図1
図2
図3
図4
図5