(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836269
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】観賞魚育成システム
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20210215BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
A01K63/00 A
A01K63/04 C
A01K63/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-54644(P2017-54644)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-153159(P2018-153159A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000159618
【氏名又は名称】吉川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮園 康之
(72)【発明者】
【氏名】大田 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 寿郎
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−152275(JP,A)
【文献】
特開2002−301492(JP,A)
【文献】
特開2006−272307(JP,A)
【文献】
特開2005−246294(JP,A)
【文献】
特開2000−033371(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/111592(WO,A1)
【文献】
特開平05−219860(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2018/0007873(US,A1)
【文献】
特開2007−325558(JP,A)
【文献】
特開2012−105569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00−63/10
B01F 1/00− 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観賞魚を育成するための育成水を貯留する育成水槽と、この育成水槽から排出される育成水を濾過処理して濾過処理後の育成水を貯留する濾過槽と、濾過処理後の育成水を育成水槽に戻すための第1循環ポンプを備える第1循環流路と、濾過処理後の育成水を再び濾過槽に戻すための第2循環ポンプを備える第2循環流路と、第2循環流路の第2循環ポンプの下流側に配置され、酸素ガスをナノレベルの気泡となして育成水に混合させるための気液混合装置と、を有する観賞魚育成システム。
【請求項2】
第2循環流路の下流端は濾過槽内の育成水面の上方に位置する、請求項1に記載の観賞魚育成システム。
【請求項3】
第1循環流路の下流端は育成水槽内の育成水中に位置する、請求項1又は2に記載の観賞魚育成システム。
【請求項4】
第1循環ポンプの出力が第2循環ポンプの出力より小さい、請求項1から3のいずれかに記載の観賞魚育成システム。
【請求項5】
育成水槽から濾過槽へ向けた育成水の排出方式がオーバーフロー方式である、請求項1から4のいずれかに記載の観賞魚育成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育成水槽内で観賞魚を育成する観賞魚育成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、育成水槽内で観賞魚を育成する観賞魚育成システムにおいては、育成水槽内の育成水を観賞魚にとって良好な状態に維持するために、育成水を循環濾過する循環濾過システムが採用されている。このように循環濾過システムを採用した観賞魚育成システムは一般的に、観賞魚を育成するための育成水を貯留する育成水槽と、この育成水槽から排出される育成水を濾過処理して濾過処理後の育成水を貯留する濾過槽と、濾過処理後の育成水を育成水槽に戻すための循環ポンプを備える循環流路とを有し、循環流路内で育成水に空気を混合させるようにしたものも知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
一方、食用魚の養殖場において溶存酸素量(DO値)を増加させると魚の成長が促進されることが知られており、特許文献3には酸素ガスをナノレベルの気泡(ウルトラファインバブル)となして食用魚の飼育水に混合する気液混合装置(気液混合水生成装置)を含む閉鎖循環濾過養殖システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2556410号公報
【特許文献2】特開平7−50953号公報
【特許文献3】国際公開第2015/111592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献3に開示されているような気液混合装置を従来の観賞魚育成システムの循環流路に設置して、ウルトラファインバブルを観賞魚育成システムに活用することを考えた。しかし、ウルトラファインバブルを生成する気液混合装置を循環流路に設置しても観賞魚の育成には効果が得られず、むしろ観賞魚の育成状態が悪化した。すなわち、ウルトラファインバブルを生成するには循環流路に高出力の循環ポンプを配置する必要があり、その結果、育成水槽に戻す育成水の勢いや水音に観賞魚が委縮して、常に育成水槽の底の隅に居るようになり、エサの捕食量も通常状態よりもかなり少ない状態となった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ウルトラファインバブルを観賞魚の育成に有効活用できるようにするための観賞魚育成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、「観賞魚を育成するための育成水を貯留する育成水槽と、この育成水槽から排出される育成水を濾過処理して濾過処理後の育成水を貯留する濾過槽と、濾過処理後の育成水を育成水槽に戻すための第1循環ポンプを備える第1循環流路と、濾過処理後の育成水を再び濾過槽に戻すための第2循環ポンプを備える第2循環流路と、第2循環流路の第2循環ポンプの下流側に配置され、酸素ガスをナノレベルの気泡となして育成水に混合させるための気液混合装置と、を有する観賞魚育成システム」が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の観賞魚育成システムは、濾過槽内の育成水を育成水槽に戻すための循環流路(第1循環流路)とは別途に、濾過槽内の育成水を循環するための循環流路(第2循環流路)を有しており、この第2循環流路に酸素ガスをナノレベルの気泡(ウルトラファインバブル)となして育成水に混合させるための気液混合装置を設置している。これにより、第1循環流路に設置する第1循環ポンプは、濾過槽内の育成水を育成水槽に戻すために必要な出力を有していればよく、ウルトラファインバブルを生成するために第2循環流路に設置する第2循環ポンプに比べ、出力を大幅に小さくできる。その結果、育成水槽に戻す育成水の勢いや水音を低減でき、ウルトラファインバブルの生成能力を落とすことなく観賞魚へのストレス(観賞魚の委縮)を低減できる。
また、本発明の観賞魚育成システムでは、ウルトラファインバブルの生成を濾過槽内の育成水を循環するための第2循環流路で行う。これにより、育成水の溶存酸素量(DO値)を安定的に制御(操作)できる。
以上のように、本発明の観賞魚育成システムによればウルトラファインバブルを観賞魚の育成に有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態である観賞魚育成システムの構成図である。
【
図2】比較例としての観賞魚育成システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である観賞魚育成システムの構成図である。
【0011】
同図に示す観賞魚育成システムは、育成水槽1、濾過槽2、オーバーフロー管3、第1循環流路4、第2循環流路5及び気液混合装置6を有する。
【0012】
育成水槽1は観賞魚を育成するための育成水を貯留し、この育成水槽1内で観賞魚を育成する。濾過槽2は育成水槽1から排出される育成水を濾過処理して濾過処理後の育成水を貯留する。濾過処理のための濾材は図示していないが、本実施形態では観賞魚に悪影響を与える汚染物質を物理的に除去する物理濾過用の濾材と生物学的に除去する生物濾過用の濾材を濾過槽2内に設置している。また、濾過槽2内には、濾過処理後の育成水を観賞魚の育成に適した温度まで昇温するためにヒータ(図示省略)を設置している。
【0013】
本実施形態において育成水槽1から濾過槽2へ向けた育成水の排出方式はオーバーフロー方式としている。すなわち、育成水槽1とその下方に配置された濾過槽2とはオーバーフロー管3を介して接続されており、育成水槽1内の育成水がオーバーフロー管3を通じで自然流下により濾過槽2に排出される。育成水槽1から濾過槽2へ向けた育成水の排出方式はオーバーフロー方式には限定されず、排水ポンプを使用した排出方式とすることもできるが、育成水槽1内の観賞魚になるべくストレスを与えないようにする点からはオーバーフロー方式が好ましい。
【0014】
第1循環流路4は、濾過槽2内の濾過処理後の育成水を育成水槽1に戻すための流路で、そのために第1循環ポンプ4aを備える。第1循環流路4には、育成水を冷却するクーラ(図示省略)を設置している。すなわち本実施形態では、濾過槽2に設置したヒータと第1循環流路4に設置したクーラによって、濾過処理後の育成水を観賞魚の育成に適した温度になるように調節している。なお、ヒータ及びクーラ以外の温度調節手段を濾過槽2又は第1循環流路4に設置してもよい。また、濾過処理後の育成水を殺菌処理するために、殺菌灯などの殺菌手段を濾過槽2又は第1循環流路4に設置してもよい。
【0015】
本実施形態において第1循環流路4の下流端4bは、育成水槽1内の育成水中に位置する。これにより育成水槽1に戻す育成水の水音等を低減でき、観賞魚へのストレスを低減できる。
【0016】
第2循環流路5は、濾過槽2内の濾過処理後の育成水を再び濾過槽2に戻す、すなわち濾過槽2内の育成水を循環させるための流路で、そのために第2循環ポンプ5aを備える。そして、第2循環流路5の第2循環ポンプ5aの下流側に気液混合装置6が配置されており、第2循環ポンプ5aと気液混合装置6との間に酸素ガスが供給されるようになっている。気液混合装置6は、この酸素ガスをナノレベルの気泡(ウルトラファインバブル)となして育成水に混合させる。このような気液混合装置としては、株式会社ナノクス製の「ラモンドナノミキサー」(登録商標)を好適に使用できる。
【0017】
本実施形態において第2循環流路5の下流端5bは、濾過槽2内の育成水面の上方に位置する。これにより、育成水の溶存酸素量(DO値)をより安定的に制御(操作)できる。すなわち本発明者らの試験によると、第2循環流路5の下流端5bを濾過槽2内の育成水中に位置させると育成水の溶存酸素量(DO値)が漸次増加する傾向が見られたのに対し、本実施形態のように第2循環流路5の下流端5bを濾過槽2内の育成水面の上方に位置させると上記の溶存酸素量(DO値)の増加傾向が見られなくなり、育成水の溶存酸素量(DO値)をより安定的に制御(操作)できることがわかった。第2循環流路5の下流端を濾過槽2内の育成水面の上方に位置させると、育成水が空気を巻き込みながら濾過槽2に戻ることから上記の溶存酸素量(DO値)の増加傾向が抑えられると考えられる。なお、育成水の溶存酸素量(DO値)は酸素ガスの供給量を調節することで制御(操作)できる。
【0018】
以上の構成において、育成水槽1内の育成水はオーバーフロー管3を通じて濾過槽2へ排出され、さらに第1循環流路4を通じて育成水槽1に戻る。一方、濾過槽2内の育成水は第2循環流路5を通じて循環され、第2循環流路5の途中でウルトラファインバブルが混合される。このように本実施形態では、育成水槽1内の育成水を循環させるための第1循環流路4とは別途の独立した循環流路である第2循環流路5においてウルトラファインバブルを混合するようにしている。これにより、第1循環流路4に設置する第1循環ポンプ4aは、濾過槽2内の育成水を育成水槽1に戻すために必要な出力を有していればよく、ウルトラファインバブルを生成するために第2循環流路5に設置する第2循環ポンプ5に比べ、出力を大幅に小さくできる。その結果、育成水槽1に戻す育成水の勢いや水音を低減でき、ウルトラファインバブルの生成能力を落とすことなく観賞魚へのストレス(観賞魚の委縮)を低減できる。また、本実施形態では、ウルトラファインバブルの生成を濾過槽2内の育成水を循環するための第2循環流路5で行う。これにより、育成水の溶存酸素量(DO値)を安定的に制御(操作)できる。
【実施例】
【0019】
本発明者らは、まず
図2に示す観賞魚育成システムにてアジアアロワナ(金・赤の2種)の育成を始めた。この
図2の観賞魚育成システムは、
図1に示した第2循環流路5を有しておらず、第1循環流路4に気液混合装置6が配置されている。ウルトラファインバブルを生成するには高出力の循環ポンプが必要であることから、
図2の観賞魚育成システムにおいて第1循環ポンプ4aの出力は400Wとした。また、育成水の条件として、育成水の溶存酸素量(DO値)は11〜13mg/mL、ウルトラファインバブルの平均粒径は約100nm、その密度(ナノ密度)は3〜4億個/mLとした。育成の結果は、育成水槽1に戻す育成水の勢いや水音にアジアアロワナが委縮して、常に育成水槽1の底の隅に居るようになり、エサの捕食量も通常状態よりもかなり少ない状態となった。
【0020】
そこで、本発明者らは
図1に示す観賞魚育成システムにて同じアジアアロワナ(金・赤の2種)の育成を続行した。この
図1の観賞魚育成システムにおいて第2循環ポンプ5aの出力は
図2の第1循環ポンプ4aと同じ400Wとした。一方、
図1の第1循環ポンプ4aの出力は、濾過槽2内の育成水を育成水槽1に戻すために必要な出力として64Wまで小さくした。育成水の条件は
図2の観賞魚育成システムと同じで、育成水の溶存酸素量(DO値)は11〜13mg/mL、ウルトラファインバブルの平均粒径は約100nm、その密度(ナノ密度)は3〜4億個/mLとした。
【0021】
育成の結果は、アジアアロワナが委縮している様子は見られず、常に育成水槽1の底の隅に居るような状態もなくなり、エサの捕食量も多くなって良好な健康状態を維持できている。また専門家に育成中のアジアアロワナを見てもらったところ、同時期の通常状態より発色が非常に良い状態で綺麗であるとのことであった。また、ウルトラファインバブルによる付随効果として、育成水槽1及び濾過槽2の壁面にヌメリが発生しないという効果も得られた。育成水の溶存酸素量(DO値)も11〜13mg/mLの範囲に安定的に維持できた。
【符号の説明】
【0022】
1 育成水槽
2 濾過槽
3 オーバーフロー管
4 第1循環流路
4a 第1循環ポンプ
4b 第1循環流路の下流端
5 第2循環流路
5a 第2循環ポンプ
5b 第2循環流路の下流端
6 気液混合装置