【実施例】
【0019】
図1は面入射型半導体受光素子1の外観斜視図、
図2は面入射型半導体受光素子1の受光部2の中心線Cを含み且つカソード電極4を通る断面図である。
図1、
図2に示すように、面入射型半導体受光素子1(以下、受光素子1と呼ぶ場合がある。)は、半導体基板10の主面10a(第1面)側に光をキャリアに変換する錐台状の受光部2を有する。この受光部2に光を入射させるために、主面10a側に受光部2の中心線Cと同心状に配置されたコニカルファイバ20から光を出射させる。中心線Cは半導体基板10の主面10aと直交する。
【0020】
コニカルファイバ20は、先端部21が円錐状に形成されたシングルモードファイバの光ファイバケーブルである。コニカルファイバ20の先端部21から出射される光は、円錐状に広がる環状の光である。受光部2で変換されたキャリアは電流として、アノード電極3、カソード電極4に夫々接続されたボンディングワイヤ5a,5bを介して外部に取り出される。コニカルファイバ20の先端部21と受光素子1の間を満たす媒質は、例えば空気である。
【0021】
受光素子1の半導体基板10として例えばn−InP基板の主面10a側に、第1半導体層11(n−InP層)、光吸収層12(InGaAs層)、第2半導体層13(p−InP層)がこの順に積層されている。そして、主面10a側に、錐台状の受光部2の側面を囲む中心線Cと同心状の傾斜面15aを有する反射部15を備えている。反射部15の深さは、第1半導体層11の途中部に達する深さであるが、半導体基板10には到達しない。
【0022】
反射部15は、傾斜面15aと、傾斜面15aに形成された反射膜15bと、反射膜15bによって形成された反射面15cを有する。傾斜面15aは、第2半導体層13側から半導体基板10の主面10aに対向する裏面10b(第2面)側に進む程、内径が縮径するように形成されている。傾斜面15aと、傾斜面15aに鈍角に連なる第2半導体層13表面における傾斜面15aの近傍部には、例えばSiO2膜、Cr膜、Au膜をこの順に選択的に堆積した環状の反射膜15bが形成されている。この反射膜15bに形成された環状の反射面15cは、傾斜面15aと同じ傾斜角度で形成されている。
【0023】
錐台状の受光部2は、反射部15の内側に形成されている。この受光部2は、半導体基板10の主面10aに平行に積層されたn型の第1半導体層11と光吸収層12とp型の第2半導体層13によって形成されたフォトダイオードである。受光部2の第2半導体層13にはアノード電極3が接続され、反射部15の外側領域においてカソード電極4が第1半導体層11に接続されている。
【0024】
反射部15は、コニカルファイバ20から出射された光を受光部2に集光できる円錐台状が好適であるが、例えば正八角形等の正角錐台状でもよく、角が多い程(円錐台に近い程)好ましい。また、受光部2は、円錐台状が好適であるが、例えば正八角形等の正角錐台状でもよい。以下では、円錐台状の反射部15と円錐台状の受光部2を備えた受光素子1として説明する。
【0025】
受光素子1には、反射部15及び受光部2の共通する中心線C上であって、主面10a側に主面10aから所定距離Dだけ離隔した位置に配置されたコニカルファイバ20の先端部21から出射された光が、円錐状に広がって入射する。この円錐状の先端部21から出射された光Iは、先端部21の近傍で交差して、円錐状に広がって反射部15に入射する。
【0026】
出射された光Iが反射部15の反射面15cによって反射された光Rは、受光部2の側面に入射する。反射部15は、受光部2の光吸収層12の外周面12aに向けて半導体基板10の主面10aに平行な方向に反射させるように、傾斜面15aの傾斜角度が設定されている。例えば
図3に示すように、コニカルファイバ20の先端部21の頂角(全角)がθの場合に、先端部21の円錐面の法線をN1、光の入射角をα、出射角をβとし、反射部15の反射面15cの法線をN2、光の入射角及び反射角をγとする。また、コニカルファイバ20の先端部21と反射部15の間を満たす媒質に対するコニカルファイバ20の光が通るコアの屈折率をnとする。このときθ、α、β、γ、nの関係は、次の(1)〜(3)式で表される。
(1)α=(π−θ)/2
(2)β=sin
-1(n×sin(α))=sin
-1(n×cos(θ/2))
(3)γ=(π−(θ/2)−β)/2=(π−(θ/2)−sin
-1(n×cos(θ/2)))/2
【0027】
反射面15cの光Iの入射点における中心線Cに平行な直線をC’とすると、反射角γは直線C’に対する傾斜面15aの傾斜角γでもある。それ故、上記(3)式に基づいて、コニカルファイバ20の先端部21の頂角θに応じて傾斜面15aの傾斜角γを一意に決めることができる。
図4は、屈折率n=1.45としたときの頂角θと傾斜角γの関係を曲線Jで示しており、例えば頂角θ=140°のときに傾斜角γ=40.1°になる。
【0028】
図3のように、傾斜角γの傾斜面15aに形成された反射面15cは、反射された光Rで示すように、コニカルファイバ20から出射された光Iを受光部2に向けて半導体基板10の主面10aと平行な方向に反射させる。コニカルファイバ20の先端部21の位置を中心線C上で調整して主面10aから所定距離Dだけ離隔させることによって、入射光を反射部15で反射させて光吸収層12の外周面12a(端面)に入射させることができる(
図2参照)。
【0029】
光吸収層12に入射した光は、導波路型半導体受光素子と同様に、光吸収層12を挟む第1、第2半導体層11,13との界面で夫々反射されながら進行する。このとき、光は完全に光吸収層12に閉じ込められるわけではなく、第1、第2半導体層11,13中にもある程度広がっている。入射した光の全光強度P
Oのうちの光吸収層12における光強度の割合が光閉じ込め係数Γで表される。
【0030】
光閉じ込め係数Γは、光吸収層12の厚さdと、光吸収層12の屈折率n1と、第1、第2半導体層11,13の屈折率n2の関数である。ここで、光吸収層12として厚さdのInGaAs層の屈折率n1=3.4、第1、第2半導体層としてInP層の屈折率n2=3.1とすると、
図5に曲線Kで示すように光閉じ込め係数Γは厚さdが大きい程1に近づく厚さdの関数なので、以下では光閉じ込め係数ΓをΓ(d)とする。
【0031】
次に、光をキャリアに変換する量子効率について
図6に基づいて説明する。
従来の面入射型半導体受光素子では、光強度P
Oの光が、例えば半径a、厚さdの円盤状の光吸収層32に到達し(
図6(a)参照)、光吸収層32を厚さ方向に距離dだけ進行する間に電流に変換される。このときの量子効率η0は、光吸収層32の吸収係数をαとすると、下記(4)式のように(1−exp(−αd))に比例する。
(4)η0∝(1−exp(−αd))
【0032】
一方、上記説明した受光素子1の場合は、光強度P
Oの光が半径a、厚さdの円盤状の光吸収層12の外周面12aに到達する。それ故、円盤状の光吸収層12を複数の扇形に分割して並べ替えた短辺a、長辺πa、厚さdの矩形板状の光吸収層12Aの長辺を含む側面に光強度P
Oの光が到達するのと等価である(
図6(b)参照)。そして、光吸収層12A内を進行する光の光強度は、光閉じ込め係数Γ(d)を用いてΓ(d)P
Oとなる。このときの量子効率η1は、光吸収層12Aの吸収係数をαとすると、下記(5)式で示すようにΓ(d)×(1−exp(−αa))に比例する。
(5)η1∝Γ(d)×(1−exp(−αa))
【0033】
例えば40GHz程度の周波数帯域で使用できるように光吸収層12の半径aが5μm、厚さdが1μm以下に設定された場合には半径aが厚さdより5倍以上大きい。このとき上記(4)式と(5)式を比べると、(1−exp(−αd))<<(1−exp(−αa))なので、光閉じ込め係数Γ(d)が1未満であっても量子効率はη0<η1になる。従って、光吸収層12の厚さdを薄くする場合には、光吸収層12の外周面12aから入射させて光吸収層12内を径方向に進行させることにより、量子効率の低下を抑制できる。
【0034】
図7は、光吸収層32,12の厚さdに対する量子効率を示し、上記(4)式の場合を曲線L0、上記(5)式の場合を曲線L1,L2で示している。曲線L0,L2は光吸収層32,12の半径aが5μmの場合であり、曲線L1は光吸収層12の半径aが2.5μmの場合である。光吸収層32,12の厚さdが同じであれば曲線L1,L2は曲線L0よりも大きい値になるので、従来よりも量子効率が高いことが分かる。また、厚さdを1000nmから薄くしていった場合に、400nm程度まで量子効率の低下が従来よりも緩やかであることが分かる。
【0035】
図8は、
図7における曲線L0に対する曲線L1,L2の比率(量子効率の比率)を曲線L1’,L2’で示している。例えば光吸収層12の厚さdが400nmのときに、光吸収層12の半径aが5μmの場合の曲線L1’と、光吸収層12の半径aが2.5μmの場合の曲線L2’のどちらも従来の2倍以上の量子効率になる。
【0036】
以上のように、光吸収層12の厚さdが従来と同じであれば従来よりも量子効率が高いので、受光感度を向上させることができる。また、光吸収層12の半径が小さくても従来よりも量子効率が高いので、受光感度の低下を抑制しながら光吸収層12の半径(面積)を小さくすることにより素子容量を小さくして、高速動作を可能にすることができる。
【0037】
本実施例の面入射型半導体受光素子1の形成工程について説明する。
図9に示すように、半導体基板10(n−InP基板)の主面10a側に第1半導体層11(n−InP層)、光吸収層12(InGaAs層)、第2半導体層13(p−InP層)をこの順に、例えばエピタキシャル成長法やMOCVD法によって形成する(成膜工程)。そして、第2半導体層13上に受光部2及び反射部15を形成するためのエッチングマスク層16(例えばフォトレジスト)を形成する(エッチングマスク形成工程)。このとき、例えば公知のグレースケールマスクを用いて、エッチングマスク層16に円錐台状に窪んだ反射部15とその内側の受光部2に対応する形状を形成する。
【0038】
次に
図10に示すように、公知のドライエッチングによって、第2半導体層13、光吸収層12、第1半導体層11をエッチングし、半導体基板10の主面10a側を円錐台状に窪ませて反射部15の傾斜面15aを形成すると同時に、反射部15の内側の円錐台状の受光部2を形成する(エッチング工程)。
【0039】
エッチング中には、エッチングマスク層16全体が薄くなってゆくので、エッチングマスク層16の薄い部分からエッチングマスク層16が除去されて、第2半導体層13、光吸収層12、第1半導体層11がエッチングされる。従って、エッチングマスク層16の厚さが薄い部分程深くエッチングされ、傾斜面15aが形成される。一方、受光部2と、反射部15の外側領域はエッチングしない。こうして受光部2は、反射部15の内側に円錐台状に形成される。エッチングマスク層16の形状、エッチング条件等によって、傾斜面15aの傾斜角γが調整される。
【0040】
残ったエッチングマスク層16を除去後、
図11に示すように、反射部15の内側の受光部2を囲む環状の反射面15cを有する反射膜15bを形成する(反射膜形成工程)。反射膜15bは、例えばSiO2膜、Cr膜、Au膜の順に200nm、50nm、500nmの厚さで夫々選択的に堆積させた積層反射膜である。傾斜面15aにおいて、反射面15cが第1半導体層11から光吸収層12と第2半導体層13にわたって形成されている。
【0041】
次に
図12に示すように、受光部2の側面に反射防止膜17を選択的に堆積させる(反射防止膜形成工程)。反射防止膜17としては、受光部2の光吸収層12の外周面12aに入射する光の反射を軽減するために、例えば入射する光の波長の1/4の光学膜厚のSiN膜が好適である。
【0042】
次に
図13に示すように、受光部2の第2半導体層13に例えばAuを含む金属電極材料を選択的に堆積して、受光部2の第2半導体層13に接続するアノード電極3を形成する(アノード電極形成工程)。受光部2の第2半導体層の表面の略全域にアノード電極3が接続され、低抵抗化されている。
【0043】
次に
図14に示すように、反射部15の外側領域の一部を例えば溝状にエッチングして第1半導体層11を露出させ、この露出した第1半導体層11に例えばAuを含む金属電極材料を選択的に堆積して、第1半導体層11に接続するカソード電極4を形成する(カソード電極形成工程)。こうして面入射型半導体受光素子1が形成される。尚、
図10のエッチング工程で、カソード電極4のために第1半導体層11を露出させておき、アノード電極3とカソード電極4を同時に形成してもよい。
【0044】
以上説明した面入射型半導体受光素子1は、反射部15が錐台状(円錐台状又は正角錐台状)であるため、その母線が直線である。それ故、反射部15には受光部2の光吸収層12の厚さ方向の集光作用がない。光はある程度広がりながら光吸収層12の外周面12aに入射するので、光の広がりの程度によっては光吸収層12に入射しない光がある。
【0045】
そこで、
図15の面入射型半導体受光素子1Aの反射部25のように、受光部2の光吸収層12の厚さ方向に集光作用を付与するために、傾斜面25aの母線を曲線(円弧又は放物線の一部)としてもよい。この傾斜面25aに反射膜25bを形成することにより、凹曲面の反射面25cを有する反射部25を形成して、受光部2の光吸収層12の厚さ方向に集光させることができる。このとき、コニカルファイバ20の中心線C近傍の光強度が強い光を、反射面25cによって半導体基板10の主面10aと平行に反射させるように傾斜面25aの傾斜角を設定する。
【0046】
上記実施例に係る面入射型半導体受光素子1,1Aの作用、効果について説明する。
面入射型半導体受光素子1(1A)には、その半導体基板10の主面10a(第1面)側に配置されたコニカルファイバ20から出射されて円錐状に広がった光Iが入射する。この光Iは、受光部2と同心状に形成された受光部2の側面を囲む傾斜面15a(25a)を有する反射部15(25)によって、受光部2に向けて受光部2の光吸収層12と平行な方向に反射される。
【0047】
反射部15(25)によって反射された光Rは、受光部2の光吸収層12の外周面12aに入射する。従って、主面10a側から入射させる面入射型半導体受光素子において、受光部2の光吸収層12に平行に入射した光がこの光吸収層12を進行するので、薄い光吸収層12でも量子効率の低下が抑制され、受光感度の低下を抑制することができる。
【0048】
また、面入射型半導体受光素子1の反射部15の傾斜面15aが円錐台の側面に相当する部分円錐面に形成されているので、反射部15によって反射された光Rは、反射部15と共通する受光部2の中心線Cに向かって集光される。従って、コニカルファイバ20の先端部21から出射された光が集光されて、光吸収層12の外周面12aに入射するので、受光量の減少を抑制し、受光感度の低下を抑制することができる。
【0049】
面入射型半導体受光素子1Aは、反射部25の傾斜面25aが光吸収層の厚さ方向に集光する凹曲面に形成されているので、反射部25によって反射された光Rは、受光部2の光吸収層12の厚さ方向に集光されて光吸収層12の外周面12aに入射する。従って、コニカルファイバ20の先端部21から出射された光Iが光吸収層12の厚さ方向に広がる場合でも、光吸収層12の厚さ方向に集光して受光量を増加させることができるので、受光感度の低下を抑制することができる。
【0050】
面入射型半導体受光素子1は、コニカルファイバ20の先端部21と反射部15の間を満たす媒質(例えば空気)に対するコニカルファイバ20の屈折率をn、先端部21の頂角をθ、中心線Cに対する反射部15の傾斜面15aの傾斜角をγとしたときに、上記(3)式のγ=(π−(θ/2)−sin
-1(n×cos(θ/2)))/2を満たすように反射部15が形成されている。これにより、組み合わせるコニカルファイバ20の先端部21の頂角θに応じた反射部15を容易に形成することができる。
【0051】
半導体基板10や第1、第2半導体層11,13、光吸収層12の材質や厚さ等は、上記に限られるものではなく、受光する光の波長に適した公知の材質を使用して適切なサイズの受光部を備えた面入射型半導体受光素子1を形成することができる。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態も包含するものである。