(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836301
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ケーブル等のための中継器のウェッジ
(51)【国際特許分類】
F16L 5/08 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
F16L5/08
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-195641(P2016-195641)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2017-72250(P2017-72250A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】1551281-7
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】506259461
【氏名又は名称】ロックステック アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ペッテション ヨアキム
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0073872(US,A1)
【文献】
特開昭60−223413(JP,A)
【文献】
特表平10−507619(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101068073(CN,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01484541(EP,A1)
【文献】
特表2008−533748(JP,A)
【文献】
特表2009−545285(JP,A)
【文献】
中国実用新案第202188235(CN,U)
【文献】
特表2007−519872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル、パイプ又はワイヤ用の中継器のウェッジ(2、7、20)であって、前記中継器はフレーム(1)及びモジュール(3)を更に含み、前記ウェッジ(2、7、20)及び前記モジュール(3)は前記フレーム(1)内に配置され、それぞれの前記モジュール(3)は、ケーブル、パイプ又はワイヤを受け取るように形成され、それぞれの前記ウェッジ(2、7、20)は多数のウェッジ要素(8〜11、21〜24)を含み、前記ウェッジ要素(8〜11、21〜24)は、第1及び第2ウェッジ要素(8、9、21、22)がそれぞれ互いに接近又は離隔移動することによって、非活線化位置から活線化位置へ及び活線化位置から非活線化位置へ移動させられ、前記第1及び第2ウェッジ要素(8、9、21、22)の前記移動は、スリーブ(14、27)の中に収容されているネジ(13、26)を用いて行い、そのために前記ネジ(13、26)の雄ねじが前記スリーブ(14、27)の雌ねじと螺合し、前記ネジ(13、26)は、前記第1ウェッジ要素(8、21)の貫通開口(12、25)の中に受け取られ、前記スリーブ(14、27)は、前記第2ウェッジ要素(9、21)の開口の中に受け取られ、前記フレーム(1)は導電性材料製であって、前記ウェッジ(7、20)が、前記ウェッジ(7、20)内に配置される少なくとも1つの導電性材料製のクリップ(16、29)を含み、前記クリップ(16、29)が前記ネジ(13、26)と前記フレーム(1)とを接続することにより、前記ネジ(13、26)をアース接続する、ウェッジ(2、7、20)。
【請求項2】
前記クリップ(16、29)の少なくとも1つが前記第1ウェッジ要素(8、21)の上に設置され、前記クリップ(16、29)の少なくとも1つはネジ(13、26)を収容している前記スリーブ(14、27)に接触している、請求項1に記載のウェッジ。
【請求項3】
それぞれの前記クリップ(16、29)は1つの片から製作される、請求項1又は2に記載のウェッジ。
【請求項4】
前記クリップ(16)を1つ有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェッジ。
【請求項5】
前記クリップ(16)は、中央貫通開口(17)を有する中央延長部(18)及び前記中央部(18)の両端に2つの屈曲端部(19)を有し、前記屈曲端部(19)は同一方向に屈曲している、請求項4に記載のウェッジ。
【請求項6】
2つの前記屈曲端部(19)は、前記クリップ(16)の前記中央部(18)に関して直角に屈曲している、請求項5に記載のウェッジ。
【請求項7】
前記クリップ(16)は、前記中央貫通開口(17)を用いて前記第1ウェッジ要素(8)に設置されることにより前記スリーブ(14)と接触し、前記屈曲端部(19)は、前記ウェッジ(7)が活線状態にある場合に前記フレーム(1)の両面に接触する、請求項5又は6に記載のウェッジ。
【請求項8】
同一の前記クリップ(29)を2つ有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェッジ。
【請求項9】
それぞれの前記クリップ(29)は、中央延長部(30)及び前記中央部(30)の両端に2つの屈曲部(31、32)を有し、前記屈曲部(31、32)は同一方向に屈曲している、請求項8に記載のウェッジ。
【請求項10】
前記屈曲部(31、32)は前記中央部(30)に関し直角に屈曲している、請求項9に記載のウェッジ。
【請求項11】
前記屈曲端(31)の1つが、もう1つの屈曲端(32)よりも前記中央部(30)からより短い距離で突出している、請求項9又は10に記載のウェッジ。
【請求項12】
それぞれの前記クリップ(29)は、1つの前記屈曲端(31)が前記第1ウェッジ要素(21)の前記貫通開口の中に配置されることで設置されて、前記ネジ(26)を収容している前記スリーブ(27)と接触し、もう1つの前記屈曲端(32)は、前記ウェッジ(20)が活線状態にあるときに前記フレーム(1)の内面に接触する、請求項9〜11のいずれか一項に記載のウェッジ。
【請求項13】
2つの前記クリップ(29)は、前記フレーム(1)の両側に接触する、請求項12に記載のウェッジ。
【請求項14】
それぞれの前記クリップ(29)の前記屈曲端(31)は、前記中央部(30)からより短い距離で突出し、前記第1ウェッジ要素(21)の前記貫通開口(25)に配置される、請求項12又は13に記載のウェッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル、パイプ又はワイヤのための中継器の中の圧縮ユニットにおける静電放電に対する保護に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、その中に別々のケーブル、パイプやワイヤを受け取るための数多くのモジュール及び少なくとも1つの圧縮ユニットが配置されているフレームを有する中継器を鑑みて開発されたものである。通常、前記圧縮ユニットは、いわゆるウェッジ型であって、相互作用する数多くのウェッジ要素を含む。そのようなウェッジは、一般的に、前記圧縮ユニットを活線化するための1又は2以上のネジを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
導電性材料は静電荷を形成する危険がある。そのような静電荷は異なった電位と接触することで放電する可能性がある。危険性のガスが存在していると、これは発火を招く可能性がある。
【0004】
好ましくない静電放電の危険を避けるために、前記圧縮ユニットの1又は2以上のネジはアース接続されるべきである。この課題を解決するために1又は2以上のネジを外部の導電体に接続することは、従来から公知である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、異なる電位の部分に接触することで放電する可能性のある、導電性材料の静電荷の形成を避けることにある。
【0006】
本発明のもう1つの目的は、取扱いを容易にする方法でこの課題を解決することであり、取付け者がこの課題を解決するために何ら特別な手段を用いる必要性をなくすべきであるということである。この解決策は、取付けに際して直接機能する前記圧縮ユニットの結合部分である。
【0007】
本発明によれば、1又は2以上のクリップを用いて、前記圧縮ユニットの1又は2以上のネジが前記中継器のフレームに接続される。これにより、前記圧縮ユニットの部分である前記クリップを用いることによって、1又は2以上のネジがアース接続される。
【0008】
本発明の更なる目的と利点は、当業者が以下の明細書を読めば明らかになるであろう。
【0009】
以下に実施形態により、添付された図面を参照して、本発明を更に詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ケーブル、パイプ又はワイヤ用の中継器の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明のウェッジの第1実施形態の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3において線A−Aに沿って取った断面図である。
【
図6】
図6は、本発明のウェッジの第2実施形態の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7において線A−Aに沿って取った断面図である。
【
図9】
図9は、
図6〜
図8のウェッジの一部を形成する2つのクリップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、圧縮ユニットが用いられる取付けの一例を示す。表示された例は、壁などに通されているケーブル、パイプやワイヤの密封された中継のための中継器である。この種の中継器を使用することは周知である。それは、通常は壁の中に設置される鉄鋼製のフレーム1を含む。フレーム1の中に、通常はウェッジ2と呼ばれる圧縮ユニットが、数多くのモジュール3及び支え板4と共に配置される。それぞれのモジュール3は2つの半割で形成され、受け取ろうとするケーブル、パイプやワイヤの外径に合わせるための数多くの剥離可能層5を有する。それぞれのモジュール3は、中央プラグ6を有しているが、これはケーブル、パイプやワイヤを受け取る際には取り除かれる。特定のモジュール3がケーブル、パイプやワイヤを受け取らない場合、中央プラグ6がフレーム1内に挿入されているときはそのままモジュール内に残しておかれる。支え板4は、モジュール3をフレーム1内に確実に保持するために用いられる。ウェッジ2はモジュール3を圧縮することで活線化される。ウェッジ2を拡張することによってモジュール3は1つの方向に圧縮されるであろう、これは、もう一方の方向に拡張させることになるので、モジュール3の中に収容されているすべてのケーブル、パイプやワイヤの周りに密封効果を与えるであろう。フレーム1を鑑みれば、やはり密封効果があるであろう。この種の密封効果は当業者には周知である。
【0012】
上述のように、中継器内で使用することができる圧縮ユニット、又は、ウェッジ7の第1実施形態において、ウェッジ7は4つのウェッジ要素、8、9、10、11を含む。4つのウェッジ要素8、9、10、11は、例えば国際公開WO96/11353号公報に示されるように、1つの単一のユニットとして製作することができるであろう。前記4つのウェッジ要素の内の第1ウェッジ要素8は第2ウェッジ要素9とは共通の平面内で向かい合って配置される。第1及び第2ウェッジ要素8、9は上部傾斜面及び下部傾斜面を有し、前記傾斜面は前記第1及び第2ウェッジ要素8、9の内の他方に向って下降傾斜している。4つのウェッジ要素の内の第3ウェッジ要素10及び第4ウェッジ要素11は、第1及び第2ウェッジ要素8、9の両側に配置される。第3及び第4ウェッジ要素10、11は各々2つの傾斜面を有しており、その傾斜面は、それぞれ第1ウェッジ要素8及び第2ウェッジ要素9の1つの傾斜面に隣接して配置される。第1及び第2ウェッジ要素8、9は、ネジ13及びスリーブ14を配置することによって、互いに接近及び離隔移動可能なように配置される。ネジ13は、第1ウェッジ要素8の貫通開口12を通して入る。外部端15を有するスリーブ14は、実施形態で表示されている第2ウェッジ要素9の貫通開口の中に受け取られ、緊結される。スリーブ14の外部端15は、第2ウェッジ要素9の貫通開口よりも大きな外径を有する。第2ウェッジ要素9及びスリーブ14は、ネジ13及び第1ウェッジ要素8に関して1ユニットとして移動するであろう。他の実施形態において、スリーブ14は、第2ウェッジ要素9を貫通はしていない開口に受取られ、緊結される。スリーブ14は、ネジ13の雄ねじと螺合する雌ねじを有する。ネジ13を第1方向に回転させることにより、ネジ13はスリーブ14の中により深く螺合され、第1ウェッジ要素8と第2ウェッジ要素9との間の距離を短くする。ネジ13を第2方向に回転することにより、ネジ13はスリーブ14から出る方向に緩められ、第1ウェッジ要素8と第2ウェッジ要素9との間の距離を増やす。第1及と第2ウェッジ要素8、9との距離が減少すると、4つのウェッジ要素8、9、10、11の傾斜面によって、第3及び第4ウェッジ要素11、12は互いに離隔移動する。第1及び第2ウェッジ要素8、9の間の距離を増加すると、第3及び第4ウェッジ要素10、11は、4つのウェッジ要素8、9、10、11の傾斜面によって、互いに接近移動する。
【0013】
使用時は、ウェッジ7は、フレームの内側に挿入されていて非活線化位置にある。非活線化位置においては、第1及び第2ウェッジ要素8、9は互いに離れているが、第3及び第4ウェッジ要素10、11は互いに近接している。すべてのケーブル、パイプ又はワイヤがフレーム1の内側の1又は2以上のモジュール3の中に配置して、ネジ13を用いて、ウェッジ7を活線化位置に移動させる。活線化位置においては、第1及び第2ウェッジ要素8、9は互いに接近移動し、第3及び第4ウェッジ要素10、11は互いに離隔移動している。
図1に示すようにウェッジ7を配置することにより、第3ウェッジ要素10はフレーム1に対して圧縮されて、活線化位置にあるであろう。これと同時に、第4ウェッジ要素11は押し下げられるであろう。モジュール3は圧縮可能な材料製であるため、これによって、これらは互いに対して、ケーブル等及びフレーム1に対して圧縮されるであろう。
【0014】
ウェッジ7の内側にクリップ16が設置される。クリップ16は導電性材料製である。クリップ16は、中央延長部分18に配置された中央貫通開口17を有する。中央延長部分18の両端には、中央部分18に対して直角に屈曲された2つの端部19がある。2つの端部19は中央部分18から視て同じ方向に向いている。中央部分18及び屈曲端部19は1つの片から作られる。クリップ16は、クリップ16の屈曲端19を第1ウェッジ要素8の両側に配置して、ウェッジ7の第1ウェッジ要素8に設置される。使用時、クリップ16の開口17は、ウェッジ7のスリーブ14の端部に配置されてスリーブ14と接触している。ウェッジ7が活線化されて第1及び第2ウェッジ要素8、9が互いに接近移動していると、スリーブ14がクリップ16に対して圧縮されるであろう。これにより、クリップ16の屈曲端19がフレーム1の内側に対して圧縮されるであろう。これによって、ネジ13がスリーブ14と接続されるので、ネジ13はアース接続されるであろう。
【0015】
使用時は、ネジ13は自動的にアース接続されてウェッジ7の活線化位置にあるので、取付け者がこの種のウェッジの通常の扱いに付加して行わなければならないものは何もない。
【0016】
第2実施形態であるウェッジ20は基本的に第1実施形態のウェッジ7と同じ構成である。つまり、ウェッジ20は、第1ウェッジ要素21、第2ウェッジ要素22、第3ウェッジ要素23及び第4ウェッジ要素24を有する。ウェッジ20は、ネジ26及びねじ山によってネジ26と螺合するスリーブ27を更に有する。スリーブ27は外部自由端28を有する。ウェッジ要素21〜24は傾斜面を有し、これらは、上述したような方法で互いに接触する。ネジ26は第1ウェッジ要素21の貫通開口25の中に受け取られ、スリーブ27は第2ウェッジ要素22の貫通開口の中に受け取られて緊結される。上述のウェッジ7に相当する方法で、第1及び第2ウェッジ要素21、22は、ネジ26のスリーブ27内での回転方向によって、互いに接近移動したり互いに離隔移動したりする。第1及び第2ウェッジ要素21、22が互いに接近移動しているときは、第3及び第4ウェッジ要素23、24は更に離隔するように強いられる。第1及び第2ウェッジ要素21、22が互いに離隔移動しているときは、第3及び第4ウェッジ要素23、24は互いに接近移動している。
【0017】
使用時、ウェッジ20はフレームの内側に設置されていて非活線化位置にあり、第1及び第2ウェッジ要素21、22は互いに離隔している。その後、ウェッジ20はネジ26を用いて活線化位置に移動させられる。これにより、第1及び第2ウェッジ要素21、22は互いに接近移動させられ、第3及び第4ウェッジ要素23、24を互いに離隔するように強いる。
【0018】
ウェッジ20の内側には、2つのクリップ29が配置される。表示されている実施形態においては、前記クリップ29は同一であるが、180°回転している。それぞれのクリップ29は、中央延長部分30及び中央部分30の両端の2つの端部31、32を有する。2つの端部31、32は、中央部分30に対して直角に屈曲されており、中央部分30から視て同じ方向に向いている。1つの端部31は、他の端部32よりも、中央部分30からより短い距離で突出している。つまり、短い端部31と長い端部32がある。中央部分30及び端部31、32は1つの片から作られる。それぞれのクリップ29は、ウェッジ20の第1ウェッジ要素21に設置される。この場合、短い屈曲端31は、第1ウェッジ要素21の貫通開口の内側の、ウェッジ20のスリーブ22と第1ウェッジ要素の貫通開口25の内面との間に配置され、長い屈曲端32は、第1ウェッジ要素21の側面の、第1ウェッジ要素21とフレーム1との間に配置される。したがって、第1ウェッジ要素21を視ると、短い屈曲端31は内側の位置に配置されているということができ、長い屈曲端32は外側の位置に配置されているということができる。ウェッジ20が活線化されていて第1及び第2ウェッジ要素21、22が互いに接近移動していると、それぞれのクリップ29の短い屈曲端31はスリーブ27に対して圧縮され、それぞれのクリップ29の長い屈曲端32はフレーム1の内面に対して圧縮される。つまり、2つのクリップ29はフレーム1の両面に接触する。これにより、ネジ26がスリーブ27に接続されるので、ネジ26はアース接続されるであろう。
【0019】
当業者は、ウェッジ7、20及びクリップ16、29が交換可能であることを理解している。つまり、クリップ16、29のいずれも第1実施形態のウェッジ7にも第2実施形態のウェッジ20にもそれぞれ使用することができる。