特許第6836303号(P6836303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6836303ターボジェットおよびターボプロップ複合エンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836303
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ターボジェットおよびターボプロップ複合エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/78 20060101AFI20210215BHJP
   F02C 7/143 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   F02K9/78
   F02C7/143
【請求項の数】43
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-90907(P2019-90907)
(22)【出願日】2019年5月13日
(62)【分割の表示】特願2016-521300(P2016-521300)の分割
【原出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2019-152210(P2019-152210A)
(43)【公開日】2019年9月12日
【審査請求日】2019年6月12日
(31)【優先権主張番号】1318111.0
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】14/296,624
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516101075
【氏名又は名称】リアクション エンジンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ボンド アラン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーヴィル リチャード
【審査官】 小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第2238080(GB,A)
【文献】 特開平01−318752(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/032273(WO,A1)
【文献】 特開昭62−288352(JP,A)
【文献】 特開平04−101053(JP,A)
【文献】 米国特許第5101622(US,A)
【文献】 米国特許第2713243(US,A)
【文献】 米国特許第2673445(US,A)
【文献】 F.Jivraj, R.Varvill, A.Bond and G.Paniagua,The Scimitar Precooled Mach 5 Engine,2nd EUROPEAN CONFERENCE FOR AEROSPACE SCIENCES (EUCASS),2007年 7月
【文献】 Richard Varvill and Alan Bond,The SKYLON Spaceplane,journal of the British Interplanetary Society,英国,2003年10月 9日,vol.57,22-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/74− 9/78
F02C 7/12− 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤との燃焼のためのロケット燃焼室と、
燃料と酸化剤との燃焼のための空気吸込燃焼室と、
前記空気吸込燃焼室への供給のための空気を加圧するための圧縮機と、
前記ロケット燃焼室に燃料を送達するための第1の燃料送達システムと、
前記空気吸込燃焼室に燃料を送達するための第2の燃料送達システムと、
前記ロケット燃焼室に酸化剤を送達するための酸化剤送達システムと、
を含むエンジンであって、
空気吸込モードからフルロケットモードに切り替え可能なエンジンによって、前記空気吸込燃焼室および前記ロケット燃焼室は、独立して作動されるように構成され、
前記圧縮機による圧縮の前に伝熱媒体を使用して前記圧縮機に供給される空気を冷却するために設けられた入口と出口とを有する第1の熱交換器装置と、
前記伝熱媒体のための伝熱媒体ループと、
前記第1のまたは第2の燃料送達システムにより送達される燃料による前記伝熱媒体の冷却のために構成された第2の熱交換器装置と、
前記酸化剤送達システムにより供給される酸化剤を用いて前記ロケット燃焼室への送達の前に燃料を部分的に燃焼させるための第2のプレバーナと、
をさらに含み、
前記第2のプレバーナの排気は、前記第1の燃料送達システムおよび/または前記酸化剤送達システムを駆動するための1つ以上のタービンを駆動するのに使用される、エンジン。
【請求項2】
前記エンジンは、前記圧縮機を駆動するためのタービンをさらに含み、前記タービンは、前記第1の熱交換器装置の前記出口からの伝熱媒体の一部を使用して駆動されるように構成される、請求項1記載のエンジン。
【請求項3】
前記エンジンは、前記タービンへの送達の前に前記伝熱媒体を加熱するために構成される第3の熱交換器装置をさらに含む、請求項2記載のエンジン。
【請求項4】
前記エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前に前記燃料の少なくとも一部を部分的に燃焼するように構成される第1のプレバーナをさらに含む、請求項3記載のエンジン。
【請求項5】
前記第1のプレバーナからの排気は、前記伝熱媒体の加熱のための前記第3の熱交換器装置に接続される、請求項4記載のエンジン。
【請求項6】
前記第1のプレバーナは、前記第2の燃料送達システムからの燃料を用いて前記圧縮機からの空気を部分的に燃焼させるように構成される、請求項4または5記載のエンジン。
【請求項7】
前記第2の熱交換器装置は、1つ以上の再生器ステージを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項8】
前記再生器ステージは、一連の連続した熱交換器およびポンプを含む、請求項7記載のエンジン。
【請求項9】
前記エンジンは、前記第1の熱交換器装置の1つ以上のステージのまわりに前記伝熱媒体をバイパスさせるための前記伝熱媒体ループ内の1つ以上のバイパス弁を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項10】
前記エンジンは、前記第2の燃料送達システムから送達される燃料の一部を燃焼させるための1つ以上のバイパスバーナをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項11】
複数の前記空気吸込燃焼室は、前記ロケット燃焼室のまわりに提供されて配置される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項12】
前記ロケット燃焼室および前記空気吸込燃焼室は、共通のノズルを共有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項13】
前記第2の燃料送達システムからの燃料は、前記伝熱媒体ループのまわりに前記伝熱媒体を駆動するためのポンプに連結された1つ以上のタービンを駆動するために使用される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項14】
前記伝熱媒体ループは、閉フローループとして構成される、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項15】
前記エンジンは、前記伝熱媒体としてヘリウムを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項16】
前記第1のおよび第2の燃料送達システムは、前記燃料として水素を供給するように構成される、請求項1〜15のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項17】
前記空気吸込燃焼室は、燃料を用いて前記圧縮機からの圧縮空気を燃焼させるように構成される、請求項1〜16のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項18】
前記空気吸込燃焼室は、燃料を用いて前記圧縮機からの圧縮空気を燃焼させるように構成され、前記エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前に前記圧縮空気を用いた燃料の前記部分的燃焼が前記第1のプレバーナにおいて起こるように構成される、
請求項4に従属するときの請求項〜17のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項19】
前記エンジンは、0空気速度で連続作動において推力を生成するように適合される空気吸込モードへの点火のために適合される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項20】
燃料と酸化剤との燃焼のためのロケット燃焼室と、燃料と酸化剤との燃焼のための空気吸込燃焼室とを提供するステップであって、前記空気吸込燃焼室および前記ロケット燃焼室は、独立して作動されるように構成される、ステップと、
圧縮機を使用して前記空気吸込燃焼室に供給するための空気を加圧するステップと、
第1の作動モードにおいて第2の燃料送達システムを使用して前記空気吸込燃焼室に燃料を送達するステップと、
第2の作動モードにおいて第1の燃料送達システムを使用して前記ロケット燃焼室に燃料を送達するステップと、
前記第2の作動モードにおいて酸化剤送達システムを使用して前記ロケット燃焼室に酸化剤を送達するステップと、
を含み、
前記第2の作動モードにおいて前記エンジンはフルロケットモードで作動し、
前記第1の作動モードにおいて、伝熱媒体および入口と出口とを有する第1の熱交換器装置を使用して前記圧縮機に供給される空気を冷却するステップと、
前記伝熱媒体のための伝熱媒体ループを利用するステップと、
第2の熱交換器装置を用いて前記第1のまたは第2の燃料送達システムにより送達される燃料により前記伝熱媒体を冷却するステップと、
をさらに含み、
第2の作動モードにおいて、前記第1の燃料送達システムからの燃料は、前記ロケット燃焼室への送達の前に前記酸化剤送達システムからの酸化剤を用いて第2のプレバーナにおいて部分的に燃焼され、
前記第2のプレバーナの排気は、前記第1の燃料送達システムおよび/または前記酸化剤送達システムを駆動するための1つ以上のタービンを駆動する、エンジンの作動方法。
【請求項21】
前記第1の作動モードにおいて、前記伝熱媒体は、前記第1の熱交換器装置の1つ以上のステージのまわりをバイパスする、請求項20記載のエンジンの作動方法。
【請求項22】
前記第1の作動モードにおいて、前記圧縮機に送達される前記空気の温度は、前記伝熱媒体を用いて前記第1の熱交換器装置の前記1つ以上のステージを選択的にバイパスすることにより、水の氷点よりも上に維持される、請求項21記載のエンジンの作動方法。
【請求項23】
前記第2の燃料送達システムからの燃料は、前記空気吸込燃焼室への送達の前に、前記圧縮機からの空気を用いて部分的に燃焼される、請求項20〜22のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項24】
前記方法は、前記圧縮機を駆動するためのタービンを使用するステップであって、前記タービンは、前記第1の熱交換器装置の前記出口から供給される伝熱媒体の一部を使用して駆動される、ステップをさらに含む、請求項23記載のエンジンの作動方法。
【請求項25】
前記方法は、第3の熱交換器装置を使用するステップをさらに含み、前記第1の作動モードにおいて、前記伝熱媒体は、前記タービンへの送達の前に前記第3の熱交換器装置において加熱される、請求項24記載のエンジンの作動方法。
【請求項26】
前記方法は、前記燃料の少なくとも一部が前記空気吸込燃焼室への送達の前に部分的に燃焼される第1のプレバーナを使用するステップを含む、請求項25記載のエンジンの作動方法。
【請求項27】
前記第1のプレバーナからの排気は、前記第3の熱交換器装置に供給されて、前記伝熱媒体の加熱のために使用される、請求項26に記載のエンジンの作動方法。
【請求項28】
前記第1のプレバーナは、前記第2の燃料送達システムからの燃料を用いて前記圧縮機からの空気を部分的に燃焼させる、請求項26または27記載のエンジンの作動方法。
【請求項29】
前記第2の熱交換器装置は、1つ以上の再生器ステージを含み、前記伝熱媒体は、前記伝熱媒体を冷却するために前記1つ以上のステージに通される、請求項20〜28のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項30】
前記再生器ステージは、一連の連続した熱交換器およびポンプを含み、前記ポンプは、前記第2の燃料送達システムから送達される燃料により駆動されるタービンにより駆動される、請求項29記載のエンジンの作動方法。
【請求項31】
前記方法は、前記第2の燃料送達システムから送達される燃料の一部が燃やされる1つ以上のバイパスバーナを使用するステップを含む、請求項20〜30のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項32】
前記ロケット燃焼室および前記空気吸込燃焼室からの排気は、共通のノズルに供給される、請求項20〜31のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項33】
前記第2の燃料送達システムからの燃料は、前記伝熱媒体ループのまわりに前記伝熱媒体を駆動するためにポンプに連結された1つ以上のタービンを駆動する、請求項20〜32のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項34】
前記伝熱媒体としてヘリウムが使用される、請求項20〜33のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項35】
前記第1のおよび第2の燃料送達システムにより水素が送達される、請求項20〜34のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項36】
前記酸化剤送達システムにより酸素が送達される、請求項20〜35のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項37】
前記空気吸込燃焼室の作動圧力は、前記ロケット燃焼室の作動圧力よりも小さい、請求項20〜36のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項38】
前記空気吸込燃焼室は、20バール未満の圧力で作動する、請求項20〜37のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項39】
前記伝熱媒体の最高温度は、前記第1の作動モードの間を実質的に一定に保たれる、請求項20〜38のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項40】
前記第1の作動モードから前記第2の作動モードへの移行の間に、前記空気吸込燃焼室および前記ロケット燃焼室の両方が作動される、請求項20〜39のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項41】
請求項1〜19のいずれか一項に記載のエンジンを含む航空機、飛行機または航空宇宙ビークル。
【請求項42】
前記エンジンは、航空機、飛行機または航空宇宙ビークルにおいて構成される、請求項20〜40のいずれか一項に記載のエンジンの作動方法。
【請求項43】
空気吸込モード終了によるゼロ空気速度からの制御された水平離陸のために前記エンジンとともに動作するように適合された空力制御面を有する胴体をさらに含む、請求項41記載の航空機、飛行機または航空宇宙ビークル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119条(a)の下で、参照により本明細書に組み込まれる2013年10月11日に英国で出願された英国特許出願第1318111.0号の優先権を主張し、米国特許法第120条および第365条の下で、同様に参照により本明細書に組み込まれる2014年6月5日に出願された米国特許出願第14/296,624号の先の出願日の優先権および利益を主張する。
【0002】
[技術分野]
本開示は、例えば航空宇宙の応用例で使用されうるタイプのエンジンに関する。本開示は、かかるエンジンの作動方法のほか、かかるエンジンを含む航空機、飛行機または航空宇宙ビークルにも関する。
【背景技術】
【0003】
単段式宇宙往還機(SSTO;single stage to orbit)ビークルを製造する試みがなされている。商業的に実行可能であるためには、そのようなビークルは通常、様々な操作上の要件を満たすように適合できるよう、高いペイロード比が必要である。加えてそのようなビークルは、容易に地上操縦可能であり、短い保守ターンアラウンドサイクルを有すると考えられる。
【0004】
高性能ロケット推進を用いたSSTOを実現することは、理論的に可能である。しかし、離陸からロケットを使用すれば、酸化剤、例えば液体酸素の高いペイロードが必要となり、それによりビークルに相当な質量が加わる。1つの選択肢は、代替的動力推進ユニットによりロケットエンジンを増強し、それからロケット推進だけで軌道への上昇を完了することである。
【0005】
特許文献1は、デュアルモードまたはハイブリッド航空宇宙推進エンジンを記載する。このエンジンでは、第1の作動モードにおいて、エンジンが液体水素燃料を利用してターボ圧縮機の吸気を予冷し、これを高圧で酸化剤としてロケットタイプ燃焼器/ノズルアセンブリに送達する。高いマッハ数、例えばマッハ5超では、エンジンは第2の作動モードに変わり、液体水素燃料を酸化するためにビークルに載せた液体酸素を使用する従来の高性能ロケットエンジンとして作動する。
【0006】
そのようなハイブリッドエンジンは、ロケットエンジンに空気吸込能力を加えることにより、ロケットエンジンの性能を拡張するのに役立ちうる。ロケットエンジンは、例えば約4500m/sの有効真空排気速度(Vef)により軌道を達成するのに必要な速度を達成するために最適なエンジンであると考えられる。
【0007】
両方の推進モード(すなわちロケットモードおよび空気吸込モード)で共通の燃焼およびノズルシステムを利用できるためには、入口空気が通常、ロケット作動と類似するが必ずしも同一ではない高圧(約150バール)に圧縮されなければならない。そのために、送達温度を実用限界内(800K未満)に保ち、ターボ圧縮機の必要な圧縮機作業を最小化するために、入口空気がまず冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許出願公開第2240815(A)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、そのようなエンジンは、大きな燃料需要を有しうる。本開示は、問題を少なくともある程度まで軽減すること、および/または先行技術に関わる問題点にある程度まで対処することを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様によれば、
燃料と酸化剤との燃焼のためのロケット燃焼室と、
燃料と酸化剤との燃焼のための空気吸込燃焼室と、
前記空気吸込燃焼室への供給のための空気を加圧するための圧縮機と、
前記第1のロケット燃焼室に燃料を送達するための第1の燃料送達システムと、
前記空気吸込燃焼室に燃料を送達するための第2の燃料送達システムと、
前記ロケット燃焼室に酸化剤を送達するための酸化剤送達システムと、
を含むエンジンであって、
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室は、独立して作動されるように構成される、エンジンが提供される。
【0011】
したがって、このようなエンジンは、空気吸込燃焼室における燃焼のために酸化剤としての圧縮空気と燃料とを使用して作動することができる。これを航空機に取り入れると、空気を使用して離陸することが可能になる。これにより、ロケット燃焼室だけのエンジンと比較して燃料要求が減少しうる。
【0012】
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室は、独立して作動しうる、すなわち各タイプの燃焼室が他方に依存せずに酸化剤および燃料を燃焼させることができる。
【0013】
エンジンは、例えば航空機または航空宇宙用の推進エンジンとして構成されうる。
【0014】
エンジンは、所定の速度まで、例えば空気吸込エンジンの酸化剤需要が圧縮機によって満たされうる約マッハ5まで空気を使用して作動しうる。所定の速度より上、例えばマッハ5より上では、エンジンは、空気吸込モードからフルロケットモードに切り替わり、搭載された酸化剤が使用されうる。空気吸込モードからフルロケットモードへの移行の間には、両方のモードが作動可能であるように、例えば空気吸込モードがパワーダウンされるとともにロケットモードがパワーアップされるように、エンジンが構成されうる。
【0015】
第1のおよび第2の燃料送達システムは、1つ以上のポンプを含みうる。第1のおよび第2の燃料送達システムは、燃料を所定の燃焼室に導くスイッチまたは弁により組み合わせられうる。燃料は、搭載された貯蔵部に提供され、極低温の形で提供されうる。
【0016】
任意に、エンジンは、
前記圧縮機による圧縮の前に伝熱媒体を使用して前記圧縮機に供給される空気を冷却するために設けられた入口と出口とを有する第1の熱交換器装置と、
前記伝熱媒体のための伝熱媒体ループと、
前記燃料送達システムにより送達される燃料による前記伝熱媒体の冷却のために構成された第2の熱交換器装置と、
をさらに含む。
【0017】
第1の熱交換器装置は、複数の熱交換器ステージを含む熱交換器として構成されうる。これにより、着霜制御を助けるために熱交換器による冷却の程度を制御することが可能になりうる。例えばエンジンが航空機に組み込まれたときには、空気速度を減じるための減速デバイスを備えた空気取込部がエンジンに提供されうる。
【0018】
伝熱媒体または流体は、作動流体としても有用に働きうる、すなわち膨張および圧縮することができる。この流体は、エンジンのパワーループにおいて、例えばタービンを駆動するために使用されうる。
【0019】
第2の熱交換器装置は、1つ以上の熱交換器として構成されうる。第2の熱交換器装置は、1つ以上の対向流形熱交換器として形成されうる。したがって、燃料が燃焼室に通される前に伝熱媒体を冷却するための冷媒として燃料が有用に利用されうる。
【0020】
第1の熱交換器は、対向流形熱交換器として構成されうる。
【0021】
任意に、エンジンは、前記圧縮機を駆動するためのタービンをさらに含み、このタービンは、第1の熱交換器装置の出口からの伝熱媒体の一部を使用して駆動されるように構成される。
【0022】
本明細書ではタービンおよび圧縮機に言及しているが、作動流体により駆動されることができ、または作動流体を圧縮することができる任意の適切な機械が利用されうる。したがってタービンへの言及は、例えばガスなどの流体により駆動されうる任意の機械を含むものと理解されなければならず、圧縮機への言及は、流体を圧縮できる任意の機械を意味するものと理解されなければならない。
【0023】
任意に、エンジンは、前記タービンへの送達の前に前記伝熱媒体を加熱するために構成される第3の熱交換器装置をさらに含む。
【0024】
任意に、エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前に燃料の少なくとも一部を部分的に燃焼するように構成される第1のプレバーナを含む。第1のプレバーナには、第2の燃料送達システムからの燃料が供給されうる。
【0025】
任意に、前記プレバーナからの排気は、前記伝熱媒体の加熱のために前記第3の熱交換器装置に接続される。したがってプレバーナを、伝熱媒体のエンタルピーを増加させるために用いることができる。したがって伝熱媒体は、エンジンのターボ機械等のデバイスを駆動する作動流体として有用に利用されうる。
【0026】
任意に、第1のプレバーナは、前記第2の燃料送達システムからの燃料を用いて前記圧縮機からの空気を部分的に燃焼させるように構成される。それからプレバーナの燃焼生成物は、空気吸込燃焼室に送達されうる。第2の燃料送達システムにより、空気吸込燃焼室に追加の燃料が提供されうる。したがって燃料からのエネルギーを用いて、エンジンサイクルを駆動することができる。
【0027】
任意に、第2の熱交換器装置は、1つ以上の再生器ステージを含む。
【0028】
伝熱媒体は、サイクルの全ての場所で凝縮温度を上回るのが好ましい、高圧ガスを含みうる。
【0029】
第1の熱交換器装置への送達の前に伝熱媒体の温度/エンタルピーを減少させるために、再生器ステージは用いられうる。
【0030】
任意に、再生器ステージは、一連の連続した熱交換器およびポンプを含む。再生器ステージは、伝熱媒体から第2の燃料送達システムからの燃料へ熱を伝達するように構成されうる。
【0031】
任意に、エンジンは、伝熱媒体に第1の熱交換器装置の1つ以上のステージをバイパスさせるための伝熱媒体ループ内の1つ以上のバイパス弁を含む。
【0032】
バイパス弁により、圧縮機の前に所望の温度を達成するように空気の冷却を最適化できる。
【0033】
任意に、ロケット燃焼エンジンへの送達の前に酸化剤送達システムにより供給される酸化剤を用いて燃料を部分的に燃焼させるために、第2のプレバーナが提供される。
【0034】
任意に、第2のプレバーナの排気は、第1の燃料送達システムおよび/または酸化剤送達システムを駆動するための1つ以上のタービンを駆動するために用いられる。
【0035】
任意に、エンジンは、第2の燃料送達システムから送達される燃料の一部を燃焼させるための1つ以上のバイパスバーナをさらに含む。エンジンには、過剰の燃料が供給され、バイパスバーナが空気吸込モードで作動されうる。
【0036】
任意に、複数の前記空気吸込燃焼室が提供され、前記ロケット燃焼室のまわりに設けられる。
【0037】
任意に、ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室は、共通のノズルを共有する。
【0038】
これは、両方のタイプの燃焼室からの排気を単一のノズルに導くことにより、構成部品の必要を低下させうる。ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室の両方に共通する1つのノズルの使用は、ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室の各々で別々のノズルを必要なくすることにより、このようなエンジンを含むビークルにかかるベース抗力を減少させるのに役立ちうる。これはノズルが高い面積比を有しうることから高い抗力が生じうるためである。
【0039】
エンジンには、複数のロケット室および空気吸込燃焼室が提供されうる。
【0040】
任意に、第2の燃料送達システムからの燃料は、伝熱媒体を伝熱媒体ループに駆動するためのポンプに連結された1つ以上のタービンを駆動するために用いられる。伝熱媒体からの熱伝達の結果、第2の燃料送達システムからの燃料の温度/エンタルピーが増加しうる。この温度/エンタルピーの増加により、燃料を用いて伝熱媒体ループのポンプまたは再循環器を駆動するためのタービンを駆動することが可能になる。
【0041】
任意に、伝熱媒体は、閉フローループ内にまたは閉フローループとして設けられまたは構成される。伝熱流体は、閉フローループに含まれうる。必要に応じて伝熱媒体をループに補給しまたは伝熱媒体を排出するための手段が提供されうる。
【0042】
任意に、エンジンは、伝熱媒体または作動流体としてヘリウムを含む。ネオンもしくは他の任意の適切な伝熱媒体または作動流体が用いられうる。単原子ガスが好ましく、全サイクル圧力比を都合よく最小化しうる。これにより、作動流体のためにターボ機械において必要なステージ数は比較的高いものの、より大きい分子のガスの使用よりもエンジンのダクトサイズを減少することが可能になる。より大きい分子のガスは、ステージ数がより少ないより単純なターボ機械、例えばタービン、圧縮機などを可能にすることができるが、ダクトサイズおよびそれらの質量は増加しうる。
【0043】
伝熱媒体は、ワークおよび冷却サイクルの間にガス状であるのが好ましい。
【0044】
熱交換器においてガス状媒体を伝熱媒体として使用すること、または伝熱媒体がガス状にとどまるようにすることは、熱交換器においてエントロピー増大を減少させるのに役立つ。これは、ガス状のストリームでは、熱交換器内のストリーム間の温度差が実質的に一定にとどまりうるためである。ガス状の伝熱媒体または作動流体は、作動流体が液化しうるエンジンと比較して、ステージ数が減少されたより単純な再生器装置を可能にすることができる。
【0045】
任意に、第1のおよび第2の燃料送達システムは、前記燃料として水素を供給するように構成される。
【0046】
任意に、空気吸込燃焼エンジンは、前記圧縮機からの圧縮空気を燃料とともに燃焼させるように構成される。
【0047】
任意に、エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前の、前記圧縮空気を用いた燃料の部分的燃焼のために構成される。
【0048】
空気吸込燃焼室は、ロケット燃焼室よりも低い圧力で作動するように構成されうる。
【0049】
任意に、エンジンは、ゼロ空気速度で連続作動において推力を生成するように適合される空気吸込モードへの点火のために適合される。
【0050】
本開示の第2の態様によれば、エンジンの作動方法が提供され、このエンジンは、
燃料と酸化剤との燃焼のためのロケット燃焼室と、
燃料と酸化剤との燃焼のための空気吸込燃焼室と、
前記空気吸込燃焼室への供給のための空気を加圧するための圧縮機と、
前記第1のロケット燃焼室に燃料を送達するための第1の燃料送達システムと、
前記空気吸込燃焼室に燃料を送達するための第2の燃料送達システムと、
前記ロケット燃焼室に酸化剤を送達するための酸化剤送達システムと、
を含み、
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室は、独立して作動されるように構成され、
第1の作動モードでは空気吸込燃焼室に燃料および酸化剤が供給され;第2の作動モードではロケット燃焼室に燃料および酸化剤が供給される。
【0051】
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室の独立した作動により、エンジンが2つの作動モードで作動することが可能になり、供給される酸化剤および燃料による作動のために各タイプの燃焼室が最適化されうる。エンジンは、ロケット燃焼室および/または空気吸込燃焼室から推力を提供する推進エンジンとして作動されうる。
【0052】
任意に、エンジンは、
前記圧縮機による圧縮の前に伝熱媒体を使用して前記圧縮機に供給される空気を冷却するために設けられた入口と出口とを有する第1の熱交換器装置と、
前記伝熱媒体のための伝熱媒体ループと、
前記燃料送達システムにより送達される燃料による前記伝熱媒体の冷却のために構成された第2の熱交換器装置と、
をさらに含み、
第1の作動モードでは、第1の熱交換器装置において前記伝熱媒体により空気が冷却される。
【0053】
例えば航空機における作動時には、エンジンに供給される空気は、減速により比較的高い温度でありうる。第1の熱伝達装置を使用して、伝熱媒体を使用して空気を冷却することができる。第2の燃料送達システムにより供給される燃料は、少なくとも搭載された供給源においては極低温の形とすることができ、伝熱媒体を冷却するために使用されうる。
【0054】
任意に、第1の作動モードでは、伝熱媒体は、第1の熱交換器装置の1つ以上のステージをバイパスする。
【0055】
任意に、第1の作動モードでは、圧縮機に送達される空気の温度は、伝熱媒体との第1の熱交換器装置の1つ以上のステージを選択的にバイパスすることにより、水の氷点よりも上に維持される。このようにして空気の温度を制御することにより、追加の霜制御システムが必要なく、またはそれらの使用が最小化される。これにより、エンジンの単純な作動が可能になる。
【0056】
任意に、第2の燃料供給システムからの燃料は、前記空気吸込燃焼室への送達の前に、前記圧縮機からの空気を用いて部分的に燃焼される。
【0057】
任意に、エンジンは、前記圧縮機を駆動するためのタービンをさらに含み、このタービンは、第1の熱交換器装置の出口から供給される伝熱媒体の一部を使用して駆動される。
【0058】
任意に、エンジンは、第3の熱交換器装置をさらに含み、空気吸込作動モードにおいて、伝熱媒体は、前記タービンへの送達の前に前記第3の熱交換器装置において加熱される。
【0059】
任意に、エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前に燃料の少なくとも一部が部分的に燃焼される第1のプレバーナを含む。
【0060】
任意に、前記プレバーナからの排気は、前記第3の熱交換器装置に供給され、前記伝熱媒体の加熱のために使用される。
【0061】
任意に、第1のプレバーナは、前記圧縮機からの空気を前記第2の燃料送達システムからの燃料を用いて部分的に燃焼させる。したがって第1のプレバーナは、伝熱媒体の上部サイクル温度を制御するために用いられうる。任意に、上部サイクル温度は、エンジン速度に関わりなく一定レベルに維持される。第1のプレバーナにより生成される熱は、第2の燃料送達システムおよび伝熱媒体ループを駆動するために利用されうる。
【0062】
任意に、第2の熱交換器装置は、1つ以上の再生器ステージを含み、伝熱媒体が前記1つ以上ステージに通されて前記伝熱媒体が冷却される。
【0063】
任意に、再生器ステージは、一連の連続した熱交換器およびポンプを含み、ポンプは、第2の燃料送達システムから送達される燃料により駆動されるタービンにより駆動される。
【0064】
任意に、前記第2の作動モードでは、第1の燃料送達システムからの燃料が、ロケット燃焼室への送達の前に、酸化剤送達システムからの酸化剤を用いて第2のプレバーナにおいて部分的に燃焼される。
【0065】
任意に、第2のプレバーナの排気は、第1の燃料送達システムおよび/または酸化剤送達システムを駆動するための1つ以上のタービンを駆動する。
【0066】
任意に、エンジンは、第2の燃料送達システムから送達される燃料の一部が燃やされる1つ以上のバイパスバーナをさらに含む。
【0067】
任意に、ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室からの排気は、共通のノズルに供給される。
【0068】
任意に、第2の燃料送達システムからの燃料は、伝熱媒体を伝熱媒体ループに駆動するためのポンプに連結された1つ以上のタービンを駆動する。
【0069】
任意に、ヘリウムが伝熱媒体として用いられる。ネオンまたは他の任意の適切な伝熱媒体が用いられてもよい。
【0070】
任意に、第1のおよび第2の燃料送達システムにより水素が送達される。
【0071】
任意に、前記酸化剤送達システムにより酸素が送達される。
【0072】
任意に、空気吸込燃焼室の作動圧力は、ロケット燃焼室の作動圧力よりも小さい。これにより、空気吸込燃焼室の燃料要求を減らすことができる。
【0073】
任意に、空気吸込燃焼室は、20バール未満の圧力で作動する。任意に、空気吸込燃焼室は、6バールを上回る圧力で作動する。
【0074】
燃焼室の圧力が高いほど、より多くの燃料および酸化剤が供給されるため、燃焼室がよりコンパクトになる。再生器のステージが多いほど、空気吸込燃焼室の圧力および燃料要求が低くなるが、必要な推力を提供するためにより大きい燃焼室が必要になりうる。
【0075】
ロケット燃焼室は、従来のロケット燃焼室として構成されてもよく、任意の適切なロケット燃焼サイクルが利用されうる。
【0076】
任意に、伝熱媒体の最高温度は、第1の作動モードの間に実質的に一定に保たれる。
【0077】
任意に、第1の作動モードから第2の作動モードへの移行の間に、空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室の両方が作動される。
【0078】
本開示の第3の態様によれば、任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第1の態様によるエンジン、または任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第2の態様による方法により作動されるエンジンを含むビークルが提供される。
【0079】
本開示の第4の態様によれば、任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第1の態様によるエンジン、または任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第2の態様による方法により作動されるエンジンを含む航空機、飛行機もしくは航空宇宙ビークルが提供される。
【0080】
任意に、航空機、飛行機または航空宇宙ビークルは、空気吸込モード終了によるゼロ空気速度からの制御された水平離陸のためにエンジンとともに動作するように適合された空力制御面を有する胴体を含む。
【0081】
本開示は様々な方法で実行されることができ、次に本開示の実施形態を添付の図面に関して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1A】単段式宇宙往還(SSTO)航空機の側面図である。
図1B】単段式宇宙往還(SSTO)航空機の平面図である。
図1C】単段式宇宙往還(SSTO)航空機の背面図である。
図2】先行技術のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンモジュールを含むナセルの部分断面図である。
図3】ハイブリッド空気吸込ロケットエンジンのサイクル概略図である。
図4図3に示したサイクルで作動できるハイブリッド空気吸込ロケットエンジンの例の概略図である。
図5】フルロケットモードで、例えば典型的にマッハ5を上回る速度で作動する図3および図4のハイブリッド空気吸込ロケットエンジンのサイクル概略図である。
図6】低マッハ数、例えば典型的にマッハ5を下回る速度の空気吸込モードのハイブリッド空気吸込ロケットエンジンのサイクル概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1A図1Bおよび図1Cは、燃料および酸化剤貯蔵部6、7とペイロード領域8とを備えた胴体5を有する、格納式着陸装置2、3、4を備えた単段式宇宙往還(SSTO)航空機1を示す。方向舵11およびカナード12制御面をそれぞれ有する尾翼装置9およびカナード装置10は、胴体5に取り付けられる。エレボン14を有する主翼13は、胴体5の両側に取り付けられ、各翼13は、その翼端16にエンジンモジュール15が取り付けられている。図1Cおよび図2に示すように、各エンジンモジュール15の後部には、様々なバイパスバーナ18に囲まれた4つのロケットノズル17が提供される。
【0084】
図2は、先行技術のエンジンモジュール15を示す。先行技術のエンジンモジュール15は、空気入口19aと、4つの部分を含む熱交換器21と、ターボ圧縮機22と、サイクルフローコンジットまたはチャネル23とを含む。エンジンモジュール15は、図1A図1B図1Cに示した航空機1の航空機翼13等の航空機翼13に取り付けることができるナセル20内に含まれる。
【0085】
大気中におけるエンジンモジュール15の空気吸込作動モードでは、空気入口19aを通過する入来空気の一部は、熱交換器21を通ってターボ圧縮機22に至り、別の一部は、バイパスダクト19bに沿ってバイパスされてバイパスバーナ18に至る。
【0086】
好ましい実施形態では、先行技術のエンジンモジュールは、後述のように用意および制御されるエンジンモジュールに置き換えられる。
【0087】
図3に、エンジンモジュールまたは推進システムの概略図が示される。エンジンモジュールは、空気取込部19を含む。航空機が超音速で移動しているときに、空気取込部19が捕らえられた気流を斜めおよび垂直衝撃波を介して亜音速に減速するために働くように、空気取込部19は、軸対称でありうる。高マッハ数、例えば約マッハ5以上では、この減速により空気入口温度は、通常1250K超まで上昇しうる。
【0088】
空気取込部を通過する空気は、2つのフローパスに分かれる。これらのフローパスの1つである24aは、ノズルを含むバイパスバーナ18に空気を供給する。必要以上の水素がサイクルに供給され、バイパスバーナが主燃焼室と組み合わせて用いられて、燃料利用率およびエンジン性能が改善されうる。空気取込部19からの空気の別の部分は、フローパス24bを介して、圧縮された入口空気を冷却するために必要な予冷器として構成された第1の熱交換器装置へと通過する。本実施形態では、予冷器は、第1の熱交換器ステージ29および第2の熱交換器ステージ30を含むが、任意の数の熱交換器ステージを有する予冷器が想定されうる。熱交換器の第1のステージ29および交換器の第2のステージ30は、相対的に高い温度部分および相対的に低い温度部分にそれぞれ対応する。
【0089】
空気が熱交換器ステージ29、30を通過した後、空気は、以下にさらに詳述するように、タービン32により駆動される圧縮機31を通過する。圧縮機は、エンジンの性能要件に応じて所定の圧縮比を提供するように選択される。本実施形態では、圧縮機は、吸気が約16バールに圧縮されるように、通常13:1程度の圧縮比を有しうる。圧縮機は、2つのスプールを含み、チタンブレードを含みうる。
【0090】
通常、このようなエンジンには、複数の燃焼室および関連のロケットノズルが提供される。回路図では、4つのノズル17a、17b、17c、17dが示される。各ノズルを、2つのタイプの燃焼室が共有する。一方の燃焼室タイプは、圧縮機31からの加圧空気と水素等の燃料の燃焼のための空気吸込作動モードで使用される。空気は、空気吸込燃焼室に送達される前に、プレバーナ33において水素の一部を部分的に燃焼させるために使用されうる。もう一方の燃焼室タイプは、フルロケットモードにおいて、すなわち圧縮空気の代わりに液体酸素等の搭載された酸化剤が利用される場合に使用される。
【0091】
本エンジンの作動を説明する際には1つだけのノズルおよび上述のタイプの関連の燃焼室が強調されるが、提供された他の任意のロケット室/ノズルが類似または同一の様式で作動しうること、各々が作動およびビークルに推力を提供するためにある割合の燃料および酸化剤を受け取ることを理解されたい。
【0092】
通常の航空機またはビークルは、ナセル内に設けられた4つの燃焼室/ノズルアセンブリを含みうる。しかし、ビークルに必要な推力を提供するために任意の数の室/ノズルアセンブリが提供されうる。
【0093】
4つのノズルアセンブリを各々が含む2つのナセルを備えた航空機では、ノズルアセンブリは、空気吸込式上昇の間には単一のエンジンとしてふるまい、ロケット式上昇の間には2つのツインチャンバロケットエンジンとしてふるまうように構成されうる。これはミッション信頼度を高め、エンジンを最小化するのに役立ちうる。
【0094】
圧縮機31の出口からの圧縮空気は、フローパス24dを介してプレバーナ33に供給される。プレバーナ33には、本実施形態においては水素の形での燃料もフローパス26aを介して供給されうる。水素は、通常は極低温形態で航空機に搭載されて貯蔵され、本実施形態においてはポンプまたは圧縮機40により貯蔵部64から送達される。
【0095】
プレバーナ燃焼生成物から閉ループヘリウム冷却回路28へ熱を伝達するために、プレバーナ33の下流に熱交換器27が提供される。
【0096】
ヘリウム冷却回路28は、一部の作動モードでは、予冷器の第1のおよび第2のステージ29、30を通過しうる。予冷器は、対向流形熱交換器として作動する。そのようなモードでは、予冷器の第1のステージ29の後、すなわち第2のステージのヘリウムループの下流のステージで、ヘリウムストリームは、パス28aに沿ってプレバーナ燃焼熱交換器27へと通る。
【0097】
プレバーナ燃焼熱交換器27の後、ヘリウムループは、第1のおよび第2のヘリウムストリーム28bおよび28cに分かれる。第2のヘリウムストリーム28cは、本実施形態では約200バールの入口圧力および約60バールの出口圧力で、タービン32を通過する。圧縮機31を駆動するためにタービン32が用いられる。タービン32は、反転タービンでありうる。
【0098】
ヘリウムストリームは、タービン32を出た後、本実施形態では約600ケルビン度(600K)で熱交換器および再圧縮ステージへと通るが、このステージは、本実施形態では3つのヘリウム再生熱交換器34、35、36および再循環器、例えば圧縮機またはポンプ37、38、39を含む。
【0099】
再生熱交換器34、35、36は、表面内にマイクロチャネルが形成された何千もの拡散接合されたチタン薄板を含みうる。圧縮機または再循環器37、38、39は、遠心ターボ機械を含みうる。
【0100】
タービン32からのヘリウムストリームは、第1の、第2のおよび第3の再圧縮ヘリウムストリーム28d、28e、28fに分かれる。
【0101】
第1の再圧縮ヘリウムストリーム28dは、本実施形態では約600Kで第1の再生熱交換器34を通過し、約100Kに冷却される。それからヘリウムは、圧縮機38において、本実施形態では約60から約200バールに再圧縮され、その後第2の再生熱交換器35を通過し、第2の再生熱交換器35は、タービン32からの第2の再圧縮ヘリウムストリーム28eを本実施形態では600Kから約200Kへ冷却する働きをする。それから第1の再圧縮ヘリウムストリームは、ヘリウムストリーム28jに合流する。
【0102】
第2の再圧縮ヘリウムストリーム28eは、第2の再生熱交換器35の後、第3の圧縮機39において、本実施形態では約60バールから200バールへ再圧縮された後、ヘリウムストリーム28iへと通る。それからヘリウムストリーム28iは、プレバーナ熱交換器27からのヘリウムストリームに合流し、その後第1のダイバータ弁41に合流するが、第1のダイバータ弁41は、ここでは予冷器の第2のステージ30からのヘリウムストリームを誘導するために用いられうる。
【0103】
第3の再圧縮ヘリウムストリーム28fは、第3の再生熱交換器36に通り、水素ストリーム26gにより、本実施形態では600から50Kに冷却される。水素ストリームには、ここでは液体水素ポンプ40の形で燃料送達装置が提供され、液体水素ポンプ40が搭載された水素貯蔵部64から水素を送達する。
【0104】
第3の再圧縮ヘリウムストリームは、熱交換器36の後、第1の圧縮機37を通過し、ここで本実施形態ではヘリウムが約60から約200バールに圧縮される。それからヘリウムストリームは、上述のように第1の再圧縮ヘリウムストリーム28dを冷却する働きをする熱交換器34を通過し、その後、熱交換器35を通過した第1の再圧縮ヘリウムストリーム28dとともにヘリウムストリーム28jに合流する。
【0105】
ヘリウムストリーム28jは、第1のダイバータ弁41に通り、第1のダイバータ弁41は予冷器の所定のステージに、ここでは予冷器の第1のステージ29の前に、追加の冷却されたヘリウムを供給するために用いられうる。
【0106】
プレバーナ熱交換器27からのヘリウムストリームは、本実施形態では、第3の再生熱交換器36を通過した水素により、熱交換器43において約900から約300Kへ冷却される。熱交換器43に到達する前に、水素は、再圧縮ステージの第1の、第2のおよび第3の圧縮機36、37、38を駆動するために用いられるタービン44を通過する。水素は、ヘリウムを第2のダイバータ弁42に輸送するヘリウムポンプ46を駆動するためのタービン45も通過する。
【0107】
水素は、熱交換器43の後、搭載された水素貯蔵部64から水素を輸送する働きをする水素ポンプ40を駆動するタービン47を通過する。
【0108】
水素は、タービン47の後、バイパスバーナ18およびプレバーナ33に通り、それから空気吸込作動の間に、ロケットノズル17a、17b、17cの空気吸込燃焼室に通る。
【0109】
本実施形態では、燃焼室は、例えばGLIDCOP AL−20等のアルミナ分散強化銅または他の適切な熱伝導性材料を含むライナーを使用して裏打されうる。このような熱伝導性材料は、空気吸込作動モードの間に燃焼室において達しうる高い壁温を考慮して採用されうる。これにより、壁の熱ストレスが回避される。この作動モードでは、燃焼室における膜冷却により水素を用いて燃焼室が膜冷却されうる。
【0110】
本実施形態では、ノズル17a、17b、17c、17dは、例えばSEP‐CARBINOXの最終放射冷却拡張部を有する管状冷却スカートを含む。これは、エンジン冷却のために冷却剤が利用できないときに、ノズルが大気圏再突入の間の外部空気流加熱に耐えることを可能にしようとするものである。本実施形態では、冷却管状スカートは、複数の管を含みうるインコネル等の高温合金から作られる。
【0111】
本実施形態では、空気吸込モードの間には、スカートの管に水素を通すことにより液体水素がノズルスカートを冷却するように構成されうる。ロケットモードでは、水素は、ロケット燃焼室の噴射器(図示せず)に入る前に、別個のロケット燃焼室53のライナーおよび管状スカートを通過しうる。
【0112】
予冷器29、30は、空気吸込モードにおいて入口空気を冷却するために用いられる。本実施形態では、予冷器29、30は、閉ループの高圧ヘリウムガスを冷媒として使用する高性能熱交換器である。空気吸込モードのヘリウムループについては、以下でさらに詳述する。
【0113】
適切な予冷熱交換器は、通常は20〜30マイクロメートルの薄壁の直径1mm未満の冷却チャンネルまたはチューブのマトリックスを有する対向流形熱交換器として構成されうる。必要な性能を提供するために、例えば300,000〜600,000本などの多数のそのようなチューブが各熱交換器内に渦巻き状のスパイラルとして入れ子状に設けられる。チューブは、入口から出口まで螺旋状の通路にしたがい、チューブが半径方向または軸方向に延びうる。本実施形態では、予冷器は、入口空気を作動モードに応じて1250Kの温度から約400K以下の温度に冷却できるように構成される。本実施形態では、全ての速度で、空気の温度は水の氷点すなわち摂氏0度より上に維持される。
【0114】
上に概説したように、ポンプ40により貯蔵部64から水素が供給され、熱交換器36および43を介してヘリウム回路を冷却するために用いられる。燃料ポンプ40のキャビテーションを防ぎ、フィードラインに閉じ込められる残留流体を最小限にするために、ブーストポンプ(図示せず)が提供されてもよい。
【0115】
水素は、水素タービン47の後、フローパス26aに沿ってプレバーナ33に供給される。水素は、フローパス26b、26eを介してバイパスバーナ18にも供給されうる。加えて、空気吸込モードでは、水素がフローパス26cおよび26dに沿ってロケット燃焼室に供給され、フローパス25aおよび25bに沿って送達されるプレバーナ燃焼生成物とともに燃焼される。空気吸込モードでは、空気吸込燃焼室は、約12バールで作動する。この空気吸込燃焼室は、約170バールの相対的にはるかに高い圧力で作動するフルロケットモードで使用されるロケット燃焼室とは別個である。
【0116】
ロケットモードでは、燃料送達システムを使用して各ロケットノズルおよび燃焼室装置に水素が供給されるが、燃料送達システムは、本実施形態では、搭載された水素貯蔵部61と約315バールの圧力を達成する一連のポンプ48とを含む。本実施形態では、水素がまずロケット燃焼室53の冷却を提供するために送達される。
【0117】
水素は、燃焼室53を冷却するために使用された後、燃焼室プレバーナ52に供給され、本実施形態では液体酸素ポンプ50と補給ポンプ54とを含む酸化剤送達システムにより供給される酸素を用いて部分的に燃焼される。
【0118】
ロケットプレバーナ52の燃焼生成物は、酸素および水素ポンプ48、50、54を駆動するタービン49、51を駆動する働きをする。
【0119】
それからプレバーナ52の燃焼生成物は、酸素ポンプ50により供給される追加の酸素を用いて、燃焼室53で完全に燃焼される。
【0120】
エンジンの空気吸込作動モードでは、ロケット室のための酸化剤としての液体酸素は必要とされない。このようなエンジンを含む航空機は、空気吸込により別個の酸素源を使用することを必要とせずに、追加の推進手段を用いずに離陸できるため、航空機に追加の酸化剤を載せる必要性が減少することから大きな重量効果がある。
【0121】
プレバーナ33の排気は、熱交換器27を介してヘリウムを本実施形態では約930Kおよび200バールの圧力に予熱するために用いられ、その後ヘリウムがタービン32に通って吸気圧縮機31を駆動する。空気吸込モードの間の航空機のマッハ数から独立した、本実施形態では通常は約930Kのヘリウムの一定の上部サイクル温度を維持するために、例えば燃焼される水素の量が制御されるなどしてプレバーナ33が制御される。
【0122】
プレバーナ33は、フローパス24dに沿って供給される圧縮空気を用いて搭載された貯蔵部64からの水素を燃焼させる。プレバーナ出口ガスは、パス25aに沿って流れてから空気吸込燃焼室55に供給される。
【0123】
プレバーナ33は、エンジンの性能要件に応じて選択されうるが、本実施形態では、プレバーナ33および熱交換器27は、水素リッチ燃焼器と単一の浮動チューブシートを有するシェルアンドチューブ熱交換器とからなる一体的ユニットを形成する。
【0124】
図4は、図3に示したサイクルにより作動するように構成されうるロケットエンジンの概略断面を示す。上述のように予冷器(図示せず)を既に通過した空気24が、ヘリウムタービン32により駆動される圧縮機31に供給された後、プレバーナ33に通る。
【0125】
プレバーナ33の燃焼生成物はその後、軸方向に延びる室として提供される空気吸込燃焼室55に供給される。3つのそのような室が、各ロケット燃焼室53のまわりに等角で離間して提供されうる。ロケット燃焼室53は、軸方向に延びる室として形成されうる。水素が、ポンプ48を介してコンジット56a、56bに沿ってロケット燃焼室53に供給される。
【0126】
燃焼室55の排気は、それぞれのロケットノズル17a、17bに供給される。
【0127】
フルロケットモードでは、空気吸込燃焼室55とは別個のロケット燃焼室53に水素が供給される。フルロケットモードでは、ポンプ50を介してコンジット57a、57bに沿って酸素が送達される。ロケット燃焼室53は、通常約170バールで作動し、ノズル17a、17bと組み合わせて約500kNの総推力を生じる。
【0128】
したがって、空気吸込作動モードおよびフルロケット作動モードに異なるタイプの燃焼室が使用されるが、各モードで燃焼室が共通のノズルを共有することが分かる。
【0129】
エンジンは、スラストバー58を介して、図1Aに示されるような航空機の翼に接続される。
【0130】
図5は、フルロケットモードにおけるエンジンのサイクル概略図を示す。この作動モードでは、ロケット燃焼室53が搭載された供給源60からの液体酸素を用いて作動するため、ヘリウム冷却回路は余計であり、したがって図示されない。空気吸込燃焼室55は、この作動モードでは使用されない。
【0131】
上述のように、この作動モードでは、水素が極低温の形でポンプ48を介して搭載された供給源61から供給される。水素はまず燃焼室53を冷却するために用いられた後、プレバーナ52に供給され、補給ポンプ54により供給される酸素を用いて部分的に燃焼される。プレバーナ52は、水素リッチで作動する。
【0132】
プレバーナの燃焼生成物は、本実施形態では約1000Kおよび250バールの圧力であり、水素ポンプ48および液体酸素ポンプ54、50を駆動するタービン51、49を駆動するために用いられる。タービンをバイパスし、ポンプ48、54、50を駆動するタービン49、51に提供されるガスの流量を調節するために、バイパス弁62、63が提供される。バイパス弁62、63は、エンジンスロットリングを提供しうる。
【0133】
プレバーナ燃焼生成物はその後、ポンプ50から供給される酸素とともにロケット燃焼室53に供給される。ロケット燃焼室は、約3500Kの領域の温度および約170バールの圧力で作動する。これにより、約500kNの真空中推力が与えられる。
【0134】
水素および酸素ポンプ61、60のキャビテーションを防ぎ、フィードラインに閉じ込められる残留物を最小限にするために、ブーストポンプ(図示せず)が提供されてもよい。
【0135】
図6は、通常はマッハ5未満までの速度の空気吸込モードのエンジンのサイクル概略図を示す。このモードでは、フルロケットモードシステムは余計であるため図示されない。図3に関して上述したように、空気吸込燃焼室55を用いて、搭載された貯蔵部64からポンプ40を介して送達される水素と、搭載された貯蔵部64からの水素の一部が圧縮機31から送達される圧縮空気を用いて燃焼されるプレバーナ33の生成物とが燃焼される。空気吸込燃焼室は、ロケット燃焼室よりはるかに低い圧力で作動する。空気吸込燃焼室55は通常、20バール未満で作動する。
【0136】
ヘリウム再生熱交換器34、35、36および圧縮機37、38、39ならびに熱交換器43を用いた水素ループ26によるタービン32からのヘリウムストリームの冷却は、図3に関して上述した。空気吸込モードにおいて、冷却ヘリウムを用いて予冷熱交換器ステージ29、30で取込部19から送達される吸気が冷却されうる。
【0137】
ヘリウムループ28には、予冷器の1つ以上のステージをバイパスするようにヘリウムを誘導するように構成されうる2つのダイバータ弁41、42が提供される。本実施形態ではヘリウムが伝熱媒体流体として用いられるが、ネオンなど、他の任意の適切な流体が使用されうる。
【0138】
上述のように、本実施形態では、予冷器は、第1のステージ29および第2のステージ30を含む。予冷熱交換器は、冷却要件に応じて任意の数のステージを含みうる。
【0139】
上述のように、入口空気の減速により、予冷器の前の入口空気温度は約1250K以上に上昇しうる。本実施形態では、ヘリウムは、約200バールで、通常は約350Kの温度でバイパス弁41、42に送達される。バイパス弁は、一部の航空機速度では約1250Kまで上昇している入口空気温度を低下させるために冷却ヘリウムを予冷器に供給するように構成される。本実施形態では、空気は288K〜380Kの範囲で冷却されうるが、予冷器の着霜を防ぐために、空気温度は水の氷点より上すなわち標準圧力で273Kより上に保たれる。
【0140】
航空機速度に応じて予冷器の冷却要件は変動し、圧縮機31の前に所望の空気温度を達成するために適宜バイパス弁41、42が起動される。
【0141】
亜音速では、空気取込部19は、予冷器を過ぎて圧縮機31へと空気流をバイパスさせる。本実施形態では、約マッハ1.9の速度未満で、第1のおよび第2のバイパス弁41、42は、予冷器の第1のおよび第2のステージ29、30の両方をバイパスするように構成される。したがってヘリウムは、ストリーム28j、28iからバイパスストリーム28kへと通り、プレバーナ熱交換器27にヘリウムを送達する。熱交換器27の後、ヘリウムストリームは、タービン32と水素熱交換器43との間で分かれる。
【0142】
本実施形態では、約マッハ1.9〜2.9の間の速度では、ヘリウムストリーム28jに接続された第1のバイパス弁41は、ヘリウムに予冷器の第1のステージ29をバイパスさせる。第2のバイパス弁42は、ストリーム28iからの冷却されたヘリウムを予冷器の第2のステージ30に送達するように構成される。ヘリウムは、予冷器の第2のステージ30を通過した後、予冷器の第1のステージ29を通って流れる。それからヘリウムは、バイパスストリーム28kに合流し、その後プレバーナ熱交換器27へと流れる。
【0143】
本実施形態では、マッハ2.9を上回る速度、および約マッハ5を超えるフルロケットモードの前には、ストリーム28iおよび28lからの冷却されたヘリウムが予冷器の第1のステージ29に通り、再圧縮熱交換器34、35、36からのストリーム28mの冷却されたヘリウムが予冷器の第2のステージ30の入口に送達されるように、バイパス弁41、42は構成される。
【0144】
空気吸込作動モードでは、マッハ5で、空気吸込燃焼室55および関連するノズル17を使用して、エンジンは26kmの高度で約295kNの総推力を生じうる。
【0145】
再圧縮ステージからのヘリウムストリーム28iおよび水素熱交換器43からのヘリウムストリーム28lは、流れ交差部66で出会う。本実施形態では、2つの流れ28iおよび28lのエンタルピーまたは温度は、一致しないように設計される。これは、サイクルを全ての構成部品特徴にマッチするように調整できるようにしようとしたものである。
【0146】
ヘリウムループ28は、上述のように極低温水素燃料流に熱を伝達する閉サイクルループである。したがって水素は、ヒートシンクとして働く。プレバーナ33およびプレバーナ熱交換器27を用いて、ビークルの速度から独立した一定のヘリウムの上部サイクル温度が維持される。
【0147】
空気吸込プレバーナ33は、空気リッチで作動する。空気吸込モードにおいては、本実施形態では空気吸込燃焼室55が約12バールの比較的低い圧力で作動する。空気吸込モードのエンジンの当量比すなわち量論燃料空気比に対する実際の燃料空気比は、本実施形態では約1.2である。このようにして、空気吸込モードにおける水素の消費が最適化される。これにより空気がはるかに高い圧力に圧縮されるシステムよりも空気吸込モードにおいて必要とされる水素燃料が少なくなるため、ペイロードの増加が可能になりうる。
【0148】
エンジンは、離陸のために空気を使用して作動するように構成される。搭載された貯蔵部から水素および酸素を供給するために働くビークルの内部ガス状推進剤供給システムから駆動される補助ターボポンプ(図示せず)により、エンジンが開始されうる。
【0149】
空気吸込モードからロケットモードへの移行の間には、全体のビークル推力レベルを制御するために、ロケットエンジンが加速される一方で空気吸込エンジンが減速されなければならない。
【0150】
空気吸込モードおよびフルロケットモードの構成部品は共通のノズルを使用するが、別々である。エンジンは2つのタイプの燃焼室を含み、したがって1つのタイプだけが使用された場合よりも大きな質量および複雑さを含むが、水素燃料効率がこの質量増加を上回る。
【0151】
好ましいロケットエンジンサイクルが記載されているが、燃焼室に高い燃焼圧力を送達するために他の適切なサイクルが利用されてもよい。
【0152】
添付の請求の範囲により定められる本発明の範囲を逸脱することなく、記載された実施形態(単数または複数)に様々な修正が加えられうる。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6