【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様によれば、
燃料と酸化剤との燃焼のためのロケット燃焼室と、
燃料と酸化剤との燃焼のための空気吸込燃焼室と、
前記空気吸込燃焼室への供給のための空気を加圧するための圧縮機と、
前記第1のロケット燃焼室に燃料を送達するための第1の燃料送達システムと、
前記空気吸込燃焼室に燃料を送達するための第2の燃料送達システムと、
前記ロケット燃焼室に酸化剤を送達するための酸化剤送達システムと、
を含むエンジンであって、
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室は、独立して作動されるように構成される、エンジンが提供される。
【0011】
したがって、このようなエンジンは、空気吸込燃焼室における燃焼のために酸化剤としての圧縮空気と燃料とを使用して作動することができる。これを航空機に取り入れると、空気を使用して離陸することが可能になる。これにより、ロケット燃焼室だけのエンジンと比較して燃料要求が減少しうる。
【0012】
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室は、独立して作動しうる、すなわち各タイプの燃焼室が他方に依存せずに酸化剤および燃料を燃焼させることができる。
【0013】
エンジンは、例えば航空機または航空宇宙用の推進エンジンとして構成されうる。
【0014】
エンジンは、所定の速度まで、例えば空気吸込エンジンの酸化剤需要が圧縮機によって満たされうる約マッハ5まで空気を使用して作動しうる。所定の速度より上、例えばマッハ5より上では、エンジンは、空気吸込モードからフルロケットモードに切り替わり、搭載された酸化剤が使用されうる。空気吸込モードからフルロケットモードへの移行の間には、両方のモードが作動可能であるように、例えば空気吸込モードがパワーダウンされるとともにロケットモードがパワーアップされるように、エンジンが構成されうる。
【0015】
第1のおよび第2の燃料送達システムは、1つ以上のポンプを含みうる。第1のおよび第2の燃料送達システムは、燃料を所定の燃焼室に導くスイッチまたは弁により組み合わせられうる。燃料は、搭載された貯蔵部に提供され、極低温の形で提供されうる。
【0016】
任意に、エンジンは、
前記圧縮機による圧縮の前に伝熱媒体を使用して前記圧縮機に供給される空気を冷却するために設けられた入口と出口とを有する第1の熱交換器装置と、
前記伝熱媒体のための伝熱媒体ループと、
前記燃料送達システムにより送達される燃料による前記伝熱媒体の冷却のために構成された第2の熱交換器装置と、
をさらに含む。
【0017】
第1の熱交換器装置は、複数の熱交換器ステージを含む熱交換器として構成されうる。これにより、着霜制御を助けるために熱交換器による冷却の程度を制御することが可能になりうる。例えばエンジンが航空機に組み込まれたときには、空気速度を減じるための減速デバイスを備えた空気取込部がエンジンに提供されうる。
【0018】
伝熱媒体または流体は、作動流体としても有用に働きうる、すなわち膨張および圧縮することができる。この流体は、エンジンのパワーループにおいて、例えばタービンを駆動するために使用されうる。
【0019】
第2の熱交換器装置は、1つ以上の熱交換器として構成されうる。第2の熱交換器装置は、1つ以上の対向流形熱交換器として形成されうる。したがって、燃料が燃焼室に通される前に伝熱媒体を冷却するための冷媒として燃料が有用に利用されうる。
【0020】
第1の熱交換器は、対向流形熱交換器として構成されうる。
【0021】
任意に、エンジンは、前記圧縮機を駆動するためのタービンをさらに含み、このタービンは、第1の熱交換器装置の出口からの伝熱媒体の一部を使用して駆動されるように構成される。
【0022】
本明細書ではタービンおよび圧縮機に言及しているが、作動流体により駆動されることができ、または作動流体を圧縮することができる任意の適切な機械が利用されうる。したがってタービンへの言及は、例えばガスなどの流体により駆動されうる任意の機械を含むものと理解されなければならず、圧縮機への言及は、流体を圧縮できる任意の機械を意味するものと理解されなければならない。
【0023】
任意に、エンジンは、前記タービンへの送達の前に前記伝熱媒体を加熱するために構成される第3の熱交換器装置をさらに含む。
【0024】
任意に、エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前に燃料の少なくとも一部を部分的に燃焼するように構成される第1のプレバーナを含む。第1のプレバーナには、第2の燃料送達システムからの燃料が供給されうる。
【0025】
任意に、前記プレバーナからの排気は、前記伝熱媒体の加熱のために前記第3の熱交換器装置に接続される。したがってプレバーナを、伝熱媒体のエンタルピーを増加させるために用いることができる。したがって伝熱媒体は、エンジンのターボ機械等のデバイスを駆動する作動流体として有用に利用されうる。
【0026】
任意に、第1のプレバーナは、前記第2の燃料送達システムからの燃料を用いて前記圧縮機からの空気を部分的に燃焼させるように構成される。それからプレバーナの燃焼生成物は、空気吸込燃焼室に送達されうる。第2の燃料送達システムにより、空気吸込燃焼室に追加の燃料が提供されうる。したがって燃料からのエネルギーを用いて、エンジンサイクルを駆動することができる。
【0027】
任意に、第2の熱交換器装置は、1つ以上の再生器ステージを含む。
【0028】
伝熱媒体は、サイクルの全ての場所で凝縮温度を上回るのが好ましい、高圧ガスを含みうる。
【0029】
第1の熱交換器装置への送達の前に伝熱媒体の温度/エンタルピーを減少させるために、再生器ステージは用いられうる。
【0030】
任意に、再生器ステージは、一連の連続した熱交換器およびポンプを含む。再生器ステージは、伝熱媒体から第2の燃料送達システムからの燃料へ熱を伝達するように構成されうる。
【0031】
任意に、エンジンは、伝熱媒体に第1の熱交換器装置の1つ以上のステージをバイパスさせるための伝熱媒体ループ内の1つ以上のバイパス弁を含む。
【0032】
バイパス弁により、圧縮機の前に所望の温度を達成するように空気の冷却を最適化できる。
【0033】
任意に、ロケット燃焼エンジンへの送達の前に酸化剤送達システムにより供給される酸化剤を用いて燃料を部分的に燃焼させるために、第2のプレバーナが提供される。
【0034】
任意に、第2のプレバーナの排気は、第1の燃料送達システムおよび/または酸化剤送達システムを駆動するための1つ以上のタービンを駆動するために用いられる。
【0035】
任意に、エンジンは、第2の燃料送達システムから送達される燃料の一部を燃焼させるための1つ以上のバイパスバーナをさらに含む。エンジンには、過剰の燃料が供給され、バイパスバーナが空気吸込モードで作動されうる。
【0036】
任意に、複数の前記空気吸込燃焼室が提供され、前記ロケット燃焼室のまわりに設けられる。
【0037】
任意に、ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室は、共通のノズルを共有する。
【0038】
これは、両方のタイプの燃焼室からの排気を単一のノズルに導くことにより、構成部品の必要を低下させうる。ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室の両方に共通する1つのノズルの使用は、ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室の各々で別々のノズルを必要なくすることにより、このようなエンジンを含むビークルにかかるベース抗力を減少させるのに役立ちうる。これはノズルが高い面積比を有しうることから高い抗力が生じうるためである。
【0039】
エンジンには、複数のロケット室および空気吸込燃焼室が提供されうる。
【0040】
任意に、第2の燃料送達システムからの燃料は、伝熱媒体を伝熱媒体ループに駆動するためのポンプに連結された1つ以上のタービンを駆動するために用いられる。伝熱媒体からの熱伝達の結果、第2の燃料送達システムからの燃料の温度/エンタルピーが増加しうる。この温度/エンタルピーの増加により、燃料を用いて伝熱媒体ループのポンプまたは再循環器を駆動するためのタービンを駆動することが可能になる。
【0041】
任意に、伝熱媒体は、閉フローループ内にまたは閉フローループとして設けられまたは構成される。伝熱流体は、閉フローループに含まれうる。必要に応じて伝熱媒体をループに補給しまたは伝熱媒体を排出するための手段が提供されうる。
【0042】
任意に、エンジンは、伝熱媒体または作動流体としてヘリウムを含む。ネオンもしくは他の任意の適切な伝熱媒体または作動流体が用いられうる。単原子ガスが好ましく、全サイクル圧力比を都合よく最小化しうる。これにより、作動流体のためにターボ機械において必要なステージ数は比較的高いものの、より大きい分子のガスの使用よりもエンジンのダクトサイズを減少することが可能になる。より大きい分子のガスは、ステージ数がより少ないより単純なターボ機械、例えばタービン、圧縮機などを可能にすることができるが、ダクトサイズおよびそれらの質量は増加しうる。
【0043】
伝熱媒体は、ワークおよび冷却サイクルの間にガス状であるのが好ましい。
【0044】
熱交換器においてガス状媒体を伝熱媒体として使用すること、または伝熱媒体がガス状にとどまるようにすることは、熱交換器においてエントロピー増大を減少させるのに役立つ。これは、ガス状のストリームでは、熱交換器内のストリーム間の温度差が実質的に一定にとどまりうるためである。ガス状の伝熱媒体または作動流体は、作動流体が液化しうるエンジンと比較して、ステージ数が減少されたより単純な再生器装置を可能にすることができる。
【0045】
任意に、第1のおよび第2の燃料送達システムは、前記燃料として水素を供給するように構成される。
【0046】
任意に、空気吸込燃焼エンジンは、前記圧縮機からの圧縮空気を燃料とともに燃焼させるように構成される。
【0047】
任意に、エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前の、前記圧縮空気を用いた燃料の部分的燃焼のために構成される。
【0048】
空気吸込燃焼室は、ロケット燃焼室よりも低い圧力で作動するように構成されうる。
【0049】
任意に、エンジンは、ゼロ空気速度で連続作動において推力を生成するように適合される空気吸込モードへの点火のために適合される。
【0050】
本開示の第2の態様によれば、エンジンの作動方法が提供され、このエンジンは、
燃料と酸化剤との燃焼のためのロケット燃焼室と、
燃料と酸化剤との燃焼のための空気吸込燃焼室と、
前記空気吸込燃焼室への供給のための空気を加圧するための圧縮機と、
前記第1のロケット燃焼室に燃料を送達するための第1の燃料送達システムと、
前記空気吸込燃焼室に燃料を送達するための第2の燃料送達システムと、
前記ロケット燃焼室に酸化剤を送達するための酸化剤送達システムと、
を含み、
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室は、独立して作動されるように構成され、
第1の作動モードでは空気吸込燃焼室に燃料および酸化剤が供給され;第2の作動モードではロケット燃焼室に燃料および酸化剤が供給される。
【0051】
空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室の独立した作動により、エンジンが2つの作動モードで作動することが可能になり、供給される酸化剤および燃料による作動のために各タイプの燃焼室が最適化されうる。エンジンは、ロケット燃焼室および/または空気吸込燃焼室から推力を提供する推進エンジンとして作動されうる。
【0052】
任意に、エンジンは、
前記圧縮機による圧縮の前に伝熱媒体を使用して前記圧縮機に供給される空気を冷却するために設けられた入口と出口とを有する第1の熱交換器装置と、
前記伝熱媒体のための伝熱媒体ループと、
前記燃料送達システムにより送達される燃料による前記伝熱媒体の冷却のために構成された第2の熱交換器装置と、
をさらに含み、
第1の作動モードでは、第1の熱交換器装置において前記伝熱媒体により空気が冷却される。
【0053】
例えば航空機における作動時には、エンジンに供給される空気は、減速により比較的高い温度でありうる。第1の熱伝達装置を使用して、伝熱媒体を使用して空気を冷却することができる。第2の燃料送達システムにより供給される燃料は、少なくとも搭載された供給源においては極低温の形とすることができ、伝熱媒体を冷却するために使用されうる。
【0054】
任意に、第1の作動モードでは、伝熱媒体は、第1の熱交換器装置の1つ以上のステージをバイパスする。
【0055】
任意に、第1の作動モードでは、圧縮機に送達される空気の温度は、伝熱媒体との第1の熱交換器装置の1つ以上のステージを選択的にバイパスすることにより、水の氷点よりも上に維持される。このようにして空気の温度を制御することにより、追加の霜制御システムが必要なく、またはそれらの使用が最小化される。これにより、エンジンの単純な作動が可能になる。
【0056】
任意に、第2の燃料供給システムからの燃料は、前記空気吸込燃焼室への送達の前に、前記圧縮機からの空気を用いて部分的に燃焼される。
【0057】
任意に、エンジンは、前記圧縮機を駆動するためのタービンをさらに含み、このタービンは、第1の熱交換器装置の出口から供給される伝熱媒体の一部を使用して駆動される。
【0058】
任意に、エンジンは、第3の熱交換器装置をさらに含み、空気吸込作動モードにおいて、伝熱媒体は、前記タービンへの送達の前に前記第3の熱交換器装置において加熱される。
【0059】
任意に、エンジンは、前記空気吸込燃焼室への送達の前に燃料の少なくとも一部が部分的に燃焼される第1のプレバーナを含む。
【0060】
任意に、前記プレバーナからの排気は、前記第3の熱交換器装置に供給され、前記伝熱媒体の加熱のために使用される。
【0061】
任意に、第1のプレバーナは、前記圧縮機からの空気を前記第2の燃料送達システムからの燃料を用いて部分的に燃焼させる。したがって第1のプレバーナは、伝熱媒体の上部サイクル温度を制御するために用いられうる。任意に、上部サイクル温度は、エンジン速度に関わりなく一定レベルに維持される。第1のプレバーナにより生成される熱は、第2の燃料送達システムおよび伝熱媒体ループを駆動するために利用されうる。
【0062】
任意に、第2の熱交換器装置は、1つ以上の再生器ステージを含み、伝熱媒体が前記1つ以上ステージに通されて前記伝熱媒体が冷却される。
【0063】
任意に、再生器ステージは、一連の連続した熱交換器およびポンプを含み、ポンプは、第2の燃料送達システムから送達される燃料により駆動されるタービンにより駆動される。
【0064】
任意に、前記第2の作動モードでは、第1の燃料送達システムからの燃料が、ロケット燃焼室への送達の前に、酸化剤送達システムからの酸化剤を用いて第2のプレバーナにおいて部分的に燃焼される。
【0065】
任意に、第2のプレバーナの排気は、第1の燃料送達システムおよび/または酸化剤送達システムを駆動するための1つ以上のタービンを駆動する。
【0066】
任意に、エンジンは、第2の燃料送達システムから送達される燃料の一部が燃やされる1つ以上のバイパスバーナをさらに含む。
【0067】
任意に、ロケット燃焼室および空気吸込燃焼室からの排気は、共通のノズルに供給される。
【0068】
任意に、第2の燃料送達システムからの燃料は、伝熱媒体を伝熱媒体ループに駆動するためのポンプに連結された1つ以上のタービンを駆動する。
【0069】
任意に、ヘリウムが伝熱媒体として用いられる。ネオンまたは他の任意の適切な伝熱媒体が用いられてもよい。
【0070】
任意に、第1のおよび第2の燃料送達システムにより水素が送達される。
【0071】
任意に、前記酸化剤送達システムにより酸素が送達される。
【0072】
任意に、空気吸込燃焼室の作動圧力は、ロケット燃焼室の作動圧力よりも小さい。これにより、空気吸込燃焼室の燃料要求を減らすことができる。
【0073】
任意に、空気吸込燃焼室は、20バール未満の圧力で作動する。任意に、空気吸込燃焼室は、6バールを上回る圧力で作動する。
【0074】
燃焼室の圧力が高いほど、より多くの燃料および酸化剤が供給されるため、燃焼室がよりコンパクトになる。再生器のステージが多いほど、空気吸込燃焼室の圧力および燃料要求が低くなるが、必要な推力を提供するためにより大きい燃焼室が必要になりうる。
【0075】
ロケット燃焼室は、従来のロケット燃焼室として構成されてもよく、任意の適切なロケット燃焼サイクルが利用されうる。
【0076】
任意に、伝熱媒体の最高温度は、第1の作動モードの間に実質的に一定に保たれる。
【0077】
任意に、第1の作動モードから第2の作動モードへの移行の間に、空気吸込燃焼室およびロケット燃焼室の両方が作動される。
【0078】
本開示の第3の態様によれば、任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第1の態様によるエンジン、または任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第2の態様による方法により作動されるエンジンを含むビークルが提供される。
【0079】
本開示の第4の態様によれば、任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第1の態様によるエンジン、または任意の特徴を含むもしくは含まない本開示の第2の態様による方法により作動されるエンジンを含む航空機、飛行機もしくは航空宇宙ビークルが提供される。
【0080】
任意に、航空機、飛行機または航空宇宙ビークルは、空気吸込モード終了によるゼロ空気速度からの制御された水平離陸のためにエンジンとともに動作するように適合された空力制御面を有する胴体を含む。
【0081】
本開示は様々な方法で実行されることができ、次に本開示の実施形態を添付の図面に関して例として説明する。