(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0011】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
(実施の形態1)
《電力供給システム全体の概略構成》
図1は、本発明の実施の形態1による電力供給システムにおいて、全体の構成例を示す概略図である。
図1に示す電力供給システムは、マイクロコントローラMCUと、駆動装置DVICと、インバータ回路IVCとを有するインバータシステムである。インバータ回路IVCは、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってモータMT等の負荷に3相(u相、v相、w相)の交流電力を供給する。
【0014】
インバータ回路IVCは、電源電圧VBUSと3相出力端子U,V,Wとの間にそれぞれ結合されるハイサイドトランジスタTRhu,TRhv,TRhwと、接地電源電圧PGNDと3相出力端子U,V,Wとの間にそれぞれ結合されるロウサイドトランジスタTRlu,TRlv,TRlwとを有する。ハイサイドトランジスタおよびロウサイドトランジスタのそれぞれは、パワートランジスタである。本明細書では、各パワートランジスタを総称して、パワートランジスタTRと称する。また、本明細書では、パワートランジスタTRは、IGBTである場合を例とするが、MOSFET等であってもよい。この場合、コレクタおよびエミッタが、それぞれドレインおよびソースに置き換わる。
【0015】
電源電圧VBUSは、例えば、数百Vや、場合によっては数千Vといった電圧であり、ハイサイドトランジスタTRhu,TRhv,TRhwのコレクタに供給される。接地電源電圧PGNDは、ロウサイドトランジスタTRlu,TRlv,TRlwのエミッタに供給される。ハイサイドトランジスタTRhu,TRhv,TRhwには、それぞれ、還流ダイオードDhu,Dhv,Dhwが並列に結合され、ロウサイドトランジスタTRlu,TRlv,TRlwにも、それぞれ、還流ダイオードDlu,Dlv,Dlwが並列に結合される。
【0016】
駆動装置DVICは、ハイサイドトランジスタTRhu,TRhv,TRhwをそれぞれ駆動するゲートドライバGDVhu,GDVhv,GDVhwと、ロウサイドトランジスタTRlu,TRlv,TRlwをそれぞれ駆動するゲートドライバGDVlu,GDVlv,GDVlwとを備える。例えば、ゲートドライバGDVhuは、ハイサイドトランジスタTRhuのエミッタを接地電源電圧として動作し、マイクロコントローラMCUからのPWM信号PWMhuに基づいて、ハイサイドトランジスタTRhuのゲートを駆動する。同様に、ゲートドライバGDVhv,GDVhwも、それぞれ、マイクロコントローラMCUからのPWM信号PWMhv,PWMhwに基づいて、ハイサイドトランジスタTRhv,TRhwのゲートを駆動する。
【0017】
一方、例えば、ゲートドライバGDVluは、ロウサイドトランジスタTRluのエミッタを接地電源電圧として動作し、マイクロコントローラMCUからのPWM信号PWMluに基づいて、ロウサイドトランジスタTRluのゲートを駆動する。同様に、ゲートドライバGDVlv,GDVlwも、それぞれ、マイクロコントローラMCUからのPWM信号PWMlv,PWMlwに基づいて、ロウサイドトランジスタTRlv,TRlwのゲートを駆動する。マイクロコントローラMCUは、例えば、3相出力端子U,V,Wにおける相電流Iu,Iv,Iwの検出結果や、回転角センサPSENによるモータMTの回転角度の検出結果等を反映して、PWM信号PWMhu,PWMhv,PWMhw,PWMlu,PWMlv,PWMlwのデューティを適宜定める。
【0018】
図2(a)および
図2(b)は、
図1とは異なる電力供給システムの全体の構成例を示す概略図である。
図2(a)および
図2(b)に示す電力供給システムは、PWM制御によって所定の電源を生成するスイッチングレギュレータであり、
図2(a)は、降圧コンバータであり、
図2(b)は、昇圧コンバータである。
図2(a)の降圧コンバータは、ゲートドライバGDV1、電圧源VC1、パワートランジスタTR1、還流ダイオードD1、コイルL1、およびコンデンサC1を備える。
【0019】
ゲートドライバGDV1は、図示しないフィードバック制御回路からのPWM信号PWMiに基づきパワートランジスタTR1を駆動する。パワートランジスタTR1がオンの期間では、電圧源VC1→パワートランジスタTR1→コイルL1→コンデンサC1の経路で駆動電流が流れ、パワートランジスタTR1がオフの期間では、コイルL1→コンデンサC1→還流ダイオードD1の経路で還流電流が流れる。これによって、電圧源VC1の電圧を降圧した出力電圧VO1が負荷LD1に供給される。
【0020】
図2(b)の昇圧コンバータは、ゲートドライバGDV2、電圧源VC2、パワートランジスタTR2、昇圧ダイオードD2、コイルL2、およびコンデンサC2を備える。ゲートドライバGDV2は、図示しないフィードバック制御回路からのPWM信号PWMiに基づきパワートランジスタTR2を駆動する。パワートランジスタTR2がオンの期間では、電圧源VC2→コイルL2→パワートランジスタTR2の経路でコイルL2に電力が蓄積され、パワートランジスタTR2がオフの期間では、コイルL2の電流が昇圧ダイオードD2を介してコンデンサC2に流れる。これによって、電圧源VC2の電圧を昇圧した出力電圧VO2が負荷LD2に供給される。
【0021】
このような電力供給システムでは、パワートランジスタTRは、PWM信号に基づき、例えば、数kHzから数十kHzといったスイッチング周波数でオン・オフが頻繁に制御される。したがって、電力変換効率の向上や発熱の抑制等を図るためには、特に、スイッチング損失を低減することが重要となる。また、パワートランジスタTRを安全動作領域で使用する観点から、スイッチングに伴う各種スパイクノイズ等を抑制することも重要となる。
【0022】
《ゲートドライバ(比較例)の概要》
図19は、本発明の第1の比較例となるゲートドライバを用いた場合のパワートランジスタの駆動波形の一例を示す図であり、
図20は、
図19におけるゲートドライバ周りの構成例を示す概略図である。一般的に、パワートランジスタTRを駆動する際には、
図20に示すような駆動方式が用いられる。
図20では、ゲートドライバGDV’は、ゲート抵抗Rgを介してパワートランジスタ(IGBT)TRのゲートを駆動する。このゲート抵抗Rgの抵抗値を調整することで、パワートランジスタTRのスイッチング速度が調整される。
【0023】
図19に示すように、スイッチング速度が遅い場合(すなわちゲート抵抗Rgの抵抗値が高く、ゲートの充放電速度が遅い場合)、パワートランジスタTRがハーフオン(言い換えれば抵抗として振舞う)状態の時間が長くなり、パワートランジスタTRで発生するスイッチング損失Plossは増大する。その結果、システムの電力変換効率の低下や、パワートランジスタTRの放熱対策に伴うコストの増加等が生じ得る。
【0024】
逆に、スイッチング速度が速い場合(すなわちゲート抵抗Rgの抵抗値が低く、ゲートの充放電速度が速い場合)、コレクタ・エミッタ間電流Iceの傾き(dI/dt)や、コレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dV/dt)が大きくなる。“dI/dt”が大きくなると、パッケージや配線等の寄生インダクタンス(Ls)により、コレクタ・エミッタ間電圧Vceに大きなサージ電圧(Ls×(dI/dt))が生じる。この場合、パワートランジスタTRの耐圧超過等が生じる恐れがある。また、磁場の変動が大きくなるため、外部回路で生じる誘起電圧、つまり放射ノイズも大きくなり得る。
【0025】
一方、“dV/dt”が大きくなると、コレクタ・エミッタ間電流Iceに重畳するリカバリ電流が大きくなる事態や、容量結合によって誤動作を引き起こすような事態が生じ得る。リカバリ電流とは、例えば、
図1の還流ダイオードDluが還流動作を行っている状態でハイサイドトランジスタTRhuをターンオンした際の、還流ダイオードDluの逆バイアスへの回復に伴う電流である。このターンオンの速度が速いほど、リカバリ電流は大きくなる。
【0026】
このように、ゲート抵抗Rgの抵抗値でスイッチング速度を調整する場合、
図21に示されるようなトレードオフの関係が生じる。
図21は、
図19および
図20におけるゲート抵抗の抵抗値と各種特性との関係の一例を纏めた図であり、前述した説明内容を纏めたものである。ゲート抵抗Rgの抵抗値を定めるということは、このトレードオフの関係を考慮して妥協点を見つけるということになる。
【0027】
そこで、このようなトレードオフに制約される状況を打開するため、アクティブゲートドライバを用いることが有益となる。
図22は、本発明の第1の比較例となるゲートドライバを用いた場合とアクティブゲートドライバを用いた場合とで、パワートランジスタの駆動波形の一例を比較した図である。アクティブゲートドライバは、
図22に示すように、サージ電圧や放射ノイズの原因となる電流の傾き(dI/dt)や、リカバリ電流や容量結合による誤動作の原因となる電圧の傾き(dV/dt)を適切な値に抑制しつつ、スイッチング損失Plossを低減する。
【0028】
具体的には、パワートランジスタTRのゲートの充放電期間(言い換えればスイッチング期間)には、“dI/dt”や“dV/dt”に影響する期間[1]と、“dI/dt”や“dV/dt”に影響せずにスイッチング損失に影響する期間[2]とがある。アクティブゲートドライバは、前者の期間[1]では、ゲートの充放電速度を適度に抑え、後者の期間[2]では、できるだけ速くゲートの充放電を行うことで電力が消費される期間を短縮し、スイッチング損失Plossを低減する。このように、能動的にゲート電流を変えることで、
図21に示したゲート抵抗Rgの抵抗値が高い場合と低い場合のメリットを両立することが可能となる。
【0029】
アクティブゲートドライバの構成として、例えば、
図23(a)および
図23(b)に示されるような構成が考えられる。
図23(a)および
図23(b)のそれぞれは、本発明の第2の比較例となるゲートドライバの構成例を示す概略図である。
図23(a)のゲートドライバは、オープンループ型(フィードフォワード型)の構成であり、
図23(b)のゲートドライバは、アナログフィードバック型の構成である。
【0030】
オープンループ型の構成では、
図23(a)に示されるように、予め、パワートランジスタTRのゲートGの充放電期間が複数の区間(t0〜t1,t1〜t2,t2〜)に分割され、各区間の長さと各区間の充放電電流が固定的に定められる。この構成は、フィードバックを行うための電圧・電流の検出回路や、フィードバックの演算回路等が不要であるため、簡素かつ低コストで実現可能である。しかし、ゲートの充放電電流の波形が決め打ちのため、部品の製造ばらつき、電圧の変動、温度の変動といったPVTばらつきに起因するパワートランジスタTRの特性変動に追従することが困難であり、所望の性能を得られない場合がある。
【0031】
アナログフィードバック型の構成では、
図23(b)に示されるように、パワートランジスタTRの“dI/dt”や“dV/dt”の観測結果と目標値(Vref)との誤差が高速にアナログアンプAMPに反映され、当該アナログアンプAMPによってパワートランジスタTRが駆動される。この構成は、実際の観測結果をフィードバックするため、PVTばらつきに追従することが可能である。しかし、この構成は、高速のアナログフィードバックを必要とするので、高速のアナログアンプAMPが必要となり、特に、消費電力の増大が懸念される。
【0032】
例えば、数百V・数百Aをオン・オフする比較的大きなパワートランジスタTRでも、電流がゼロから数百Aまでスイッチングするのに、通常、数百ns程度で足りる。したがって、“dI/dt”や“dV/dt”を観測しながら、それらを目標値に制御するためには、数十ns以下で応答するような高速なフィードバックループを構築する必要がある。一般に高速なアナログフィードバックループを構成するには、高速なアンプが必要なため、消費電力が大きくなる。消費電力が大きくなると、ドライバ自身の発熱が大きくなるため、周囲温度の高い環境で使い難くなる。例えば、
図1に示したようなモータMTを駆動するシステムは、高温環境下で使われることが多く、ドライバの消費電力が大きくなることは望ましくない。
【0033】
また、このような高速・大電流のアナログ回路は、半導体チップ上で大きな面積を占有するため、ゲートドライバを含んだ駆動装置DVICのコストが高くなる。さらに、実際の設計の観点で、フィードバックループの応答速度を速めると、ループの安定性を確保することが困難となる恐れがある。
【0034】
《駆動装置(実施の形態1)の概略》
図3は、本発明の実施の形態1による駆動装置において、各ゲートドライバの構成例および動作例を示す概略図である。
図3に示すゲートドライバGDVは、コントローラCTRと、複数のレジスタREG1〜REGnと、選択回路SELと、可変電流ドライバ回路IDVCと、トリガ検出回路TDETと、傾き検出回路SDETとを有する。コントローラCTRは、電流切り替え回路ISWCと、電流値調整回路ITRMCとを備える。
【0035】
複数のレジスタREG1〜REGnのそれぞれは、例えば、8ビット等のレジスタであり、電流値をディジタル値で保持する。この例では、複数のレジスタREG1〜REGnは、それぞれ、電流値I1〜Inを保持する。可変電流ドライバ回路IDVCは、選択回路SELを介して複数のレジスタREG1〜REGnのいずれかのディジタル値(電流値)が入力され、当該ディジタル値に基づく駆動電流(ゲート電流Ig)でパワートランジスタTRを駆動する。
【0036】
トリガ検出回路TDETは、パワートランジスタTRのスイッチング期間(言い換えればゲートの充放電期間)で、パワートランジスタTRの端子間電圧または端子間電流を監視し、当該端子間電圧または端子間電流が所定の基準値に到達したことを検出する。具体的には、トリガ検出回路TDETは、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電圧Vceと、コレクタ・エミッタ間電流Iceと、ゲート・エミッタ間電圧Vgeの中の少なくとも一つ、望ましくは全てを検出する。なお、パワートランジスタTRがMOSFETの場合、コレクタ・エミッタ間電圧Vce、コレクタ・エミッタ間電流Ice、ゲート・エミッタ間電圧Vgeは、それぞれ、ドレイン・ソース間電圧Vds、ドレイン・ソース間電流Ids、ゲート・ソース間電圧Vgsとなる。
【0037】
この例では、トリガ検出回路TDETは、比較回路CMP1〜CMP3を備える。比較回路CMP1は、ゲート・エミッタ間電圧Vgeが所定の基準値Vrf1に到達したことを検出する。同様に、比較回路CMP2は、コレクタ・エミッタ間電流Iceが所定の基準値Vrf2に到達したことを検出し、比較回路CMP3は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが所定の基準値Vrf3に到達したことを検出する。
【0038】
傾き検出回路SDETは、パワートランジスタTRのスイッチング期間で、パワートランジスタTRの端子間電圧または端子間電流の傾きを検出する。具体的には、傾き検出回路SDETは、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)と、コレクタ・エミッタ間電流Iceの傾き(dIce/dt)の中の少なくとも一つ、望ましくは全てを検出する。この例では、傾き検出回路SDETは、比較回路CMP4,CMP5を備える。比較回路CMP4は、傾き(dIce/dt)と予め定めた目標値Vtg1との大小関係を検出し、比較回路CMP5は、傾き(dVce/dt)と予め定めた目標値Vtg2との大小関係を検出する。
【0039】
電流切り替え回路ISWCは、選択回路SELへ電流切り替え信号ISWを出力することで、複数のレジスタREG1〜REGnの中から可変電流ドライバ回路IDVCへ出力するレジスタを選択する。具体的には、電流切り替え回路ISWCは、例えば、ステートマシンで構成され、パワートランジスタTRのスイッチング期間で、トリガ検出回路TDETの検出結果をトリガとして選択するレジスタを切り換えることで可変電流ドライバ回路IDVCの駆動電流(ゲート電流Ig)を遷移させる。また、電流切り替え回路ISWCは、選択するレジスタを切り換える際のトリガとして、トリガ検出回路TDETの検出結果に加えて、外部からのPWM信号PWMも用いている。
【0040】
電流値調整回路ITRMCは、傾き検出回路SDETの検出結果が予め定めた目標値に近づくように、電流値調整信号TRMを用いて、複数のレジスタREG1〜REGnの中の所定のレジスタ(例えばREG2,REG5)の電流値(I2,I5)をフィードバック制御する。この際に、電流値調整回路ITRMCは、特に限定はされないが、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP2,CMP3)の検出結果をトリガとして、傾き検出回路SDETの検出結果を取り込むタイミング(すなわち、電流および電圧の立ち上がり/立ち下がり期間のタイミング)を得ている。
【0041】
このように、電流切り替え回路ISWCは、実質的に、オープンループ(フィードフォワード制御)によって、ゲート電流Igを高速に切り替えている。すなわち、検出結果と目標値との誤差を反映して制御量(アナログ値)を定めるような一般的なフィードバック制御でなく、検出結果を単にトリガとして用いる制御であるため、実質的に、フィードフォワード制御となる。このゲート電流Igの切り替えは、パワートランジスタTRの一回のターンオン期間またはターンオフ期間(例えば、数百ns)内に複数回行われるため、高速動作が可能なオープンループが用いられる。
【0042】
一方、電流値調整回路ITRMCは、傾き(Vce/dt)や傾き(Ice/dt)と、それぞれの目標値との誤差を反映して、所定のレジスタの電流値をフィードバック制御によって調整する。つまり、このレジスタの値によってゲート電流Igの大小が決まり、これに応じて、“Vce/dt”や“Ice/dt”が変化し、その検出結果と目標値との誤差を反映してレジスタの値が調整されるというフィードバックループが形成される。
【0043】
このレジスタの値は、一度適切な値に調整されると、その後は微修正だけでよいので、高速に値を変化させる必要は無く、フィードバックの速度は低速でよい。具体的には、パワートランジスタTRのPWM信号のスイッチング周波数は、数十kHz程度(例えば20kHz)であり、オンとオフは、50μs(=1/20kHz)の周期で行われる。フィードバックループのトラッキング時間は、その数倍以上、例えば1ms程度でもよく、フィードバックループのバンド幅は、1kHz程度でも良い。
【0044】
なお、
図3の構成例は、見方によっては、電流切り替え回路ISWCの動作に伴う内ループと、電流値調整回路ITRMCの動作に伴う外ループからなる二重ループの制御系として見ることができる。一般的に、二重ループでは、安定したフィードバック制御を行うためには、外ループのループ帯域は、内ループのループ帯域の1/3以下に定められる。したがって、電流値調整回路ITRMCによるフィードバック制御のループ帯域は、パワートランジスタTRのスイッチング周波数の1/3以下に定められることが望ましく、実際には、1/100や1/1000等であってもよい。また、
図3における基準値Vrf1〜Vrf3、目標値Vtg1,Vtg2、および電流値I1〜Inの初期値などを、外部からプログラミングできるように構成することも可能である。
【0045】
図4は、
図3の駆動装置による、パワートランジスタの概略的な駆動波形の一例を示す図である。電流切り替え回路ISWCは、
図4に示すように、一回のターンオン期間内および一回のターンオフ期間内で検出される複数のトリガに基づいてゲート電流Igの電流値を高速に切り替える。トリガは、入力されたPWM信号PWMの遷移に基づくターンオン指示およびターンオフ指示や、トリガ検出回路TDETによる、端子間電圧(Vge,Vce)および端子間電流(Ice)と基準値との比較結果である。
【0046】
このように、電流切り替え回路ISWCは、
図23(a)の場合のフィードフォワード制御とは異なり、予め固定されたタイミングでゲート電流Igを切り替えるのではなく、トリガ検出回路TDET等からのトリガに基づいてゲート電流Igを切り替える。このトリガが生じるタイミングは、パワートランジスタTRのPVTばらつき等に応じて変化する。したがって、電流切り替え回路ISWCは、
図23(a)の場合と異なり、パワートランジスタTRのPVTばらつき等を反映したタイミングで電流を切り替えることが可能になる。
【0047】
また、
図4において、特に重要なのは、コレクタ・エミッタ間電圧Vceおよびコレクタ・エミッタ間電流Iceが変化している最中に、ゲート電流Igを抑制するように電流の切り替えを行うことである。この電流の切り替え処理は、電流切り替え回路ISWCによって高速に行われる。一方、この切り替え後の電流値(例えばI2,I5)は、電流値調整回路ITRMCによって低速に調整される。
【0048】
具体的には、傾き検出回路SDETは、ターンオン期間とターンオフ期間のコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)およびコレクタ・エミッタ間電流Iceの傾き(Ice/dt)と目標値との大小関係を検出する。電流値調整回路ITRMCは、傾き検出回路SDETによる複数の検出結果(すなわち大小関係)を蓄積し、その集計値に基づいて所定のレジスタ(例えば、REG2,REG5)の電流値を調整する。つまり、電流値調整回路ITRMCは、過去の複数回(例えば、10回、100回、1000回等)のターンオン期間およびターンオフ期間を対象とした検出結果を反映して、時間をかけて電流値を調整する。
【0049】
このように、電流値の調整に際しては、
図23(b)の場合のように、現在の傾き(“dVce/dt”および“Ice/dt”)を検出し、それと目標値との誤差を即座に現在のゲート電流Igに反映させるような高速なフィードバック制御は行われず、低速なフィードバック制御が行われる。低速なフィードバック制御を用いることで、
図23(b)の場合と異なり、高速なアンプは必要とされず、消費電力の低減やチップ面積の低減等が可能になる。さらに、フィードバックループの安定性の確保が容易となる。
【0050】
《駆動装置(実施の形態1)の詳細》
図5(a)は、
図4において、パワートランジスタのターンオン時の詳細な駆動波形の一例を示す図であり、
図5(b)は、
図4において、パワートランジスタのターンオフ時の詳細な駆動波形の一例を示す図である。
【0051】
図5(a)において、電流切り替え回路ISWCは、外部からのPWM信号PWMに基づくターンオン指示TONをトリガとしてステート1(ST1)へ遷移し、当該ステート1(ST1)の処理として、レジスタREG1を選択する処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I1のゲート電流(ここではソース/シンクのソース電流)IgでパワートランジスタTRのゲートを充電し、パワートランジスタTRのゲート・エミッタ間電圧Vgeが立ち上がる。レジスタREG1が保持する電流値I1は、例えば、予め定めた固定値に基づく最大ソース電流値である。
【0052】
次いで、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP1)は、ゲート・エミッタ間電圧Vgeが基準値Vrf1(例えば3V等)まで上がったことを検出する。電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果をトリガ条件CND1として、ステート2(ST2)へ遷移し、当該ステート2(ST2)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG1からレジスタREG2に切り替える処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I2(|I2|<|I1|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを充電し、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電流Iceが立ち上がる際の傾きを制御する。
【0053】
このように、電流切り替え回路ISWCは、ゲート・エミッタ間電圧Vgeが所定のトランジスタしきい値(Vth)に達するまでは、主にゲート・エミッタ間容量(Cge)を、大きな電流で高速に充電する。そして、電流切り替え回路ISWCは、トランジスタしきい値(Vth)に達する頃に(例えば達する直前に)、電流値を小さくすることでコレクタ・エミッタ間電流Iceの傾き(dIce/dt)を抑制し、リカバリ電流等によるオーバシュートを低減する。なお、ここでは、ステート2(ST2)へのトリガ条件CND1として、ゲート・エミッタ間電圧Vgeを用いたが、代わりに、コレクタ・エミッタ間電流Iceの上がり始めを検出し、それをトリガ条件CND1とすることも可能である。
【0054】
その後、対向サイドの還流ダイオード(例えば、
図1のTRhuをターンオンする場合のDlu)が逆バイアスに回復し、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが立ち下がる。このコレクタ・エミッタ間電圧Vceの立ち下がりに伴い、電流値I2のゲート電流Igは、主に、ゲート・コレクタ間容量(ミラー容量)Cgcの充電に用いられる。その結果、ゲート・エミッタ間電圧Vgeがほぼフラットとなる所謂ミラープラトー期間が生じる。
【0055】
続いて、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP3)は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが基準値Vrf3(例えば7V等)まで下がったことを検出する。電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果をトリガ条件CND2として、ステート3(ST3)へ遷移し、当該ステート3(ST3)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG2からレジスタREG3に切り替える処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I3(|I3|>|I2|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを高速に充電する。
【0056】
このように、ステート3(ST3)では、電流切り替え回路ISWCは、ミラー容量の充電期間(ミラープラトー期間)を短縮し、コレクタ・エミッタ間電圧Vceを迅速に0Vレベルへ近づけることで電力損失を低減する。なお、ステート3(ST3)において、ゲート電流(ソース電流)Igが減少している期間は、電流を能動的に制御している期間ではなく、充電完了間近に伴い電流が受動的に制御される期間である。
【0057】
一方、
図5(b)において、電流切り替え回路ISWCは、外部からのPWM信号PWMに基づくターンオフ指示TOFFをトリガとしてステート4(ST4)へ遷移し、当該ステート4(ST4)の処理として、レジスタREG4を選択する処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I4のゲート電流(ここではソース/シンクのシンク電流)IgでパワートランジスタTRのゲートを放電し、パワートランジスタTRのゲート・エミッタ間電圧Vgeが立ち下がる。これに応じて、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電圧Vceは立ち上がる。レジスタREG4が保持する電流値I4は、例えば、予め定めた固定値に基づく最大シンク電流値である。
【0058】
次いで、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP3)は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが基準値Vrf3(例えば7V等)まで上がったことを検出する。電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果をトリガ条件CND3として、ステート5(ST5)へ遷移し、当該ステート5(ST5)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG4からレジスタREG5に切り替える処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I5(|I5|<|I4|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを放電し、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電圧Vceが立ち上がる際の傾きを制御する。
【0059】
このように、電流切り替え回路ISWCは、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが上がり始めるまでは、大きな電流でゲート・エミッタ間容量(Cge)およびゲート・コレクタ間容量(Cgc)を高速に放電する。そして、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが上がり始めると、電流切り替え回路ISWCは、電流値を小さくすることでコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)を小さくし、サージ電圧等によるオーバシュートを低減する。
【0060】
その後、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが十分に立ち上がると、対向サイドの還流ダイオードが順バイアスに切り替わり、コレクタ・エミッタ間電流Iceの立ち下がりが始まる。ここで、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP2)は、コレクタ・エミッタ間電流Iceが基準値Vrf2(例えば1A等)まで下がったことを検出する。または、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP1)は、ゲート・エミッタ間電圧Vgeが基準値Vrf1(例えば3V等)まで下がったことを検出する。
【0061】
電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果のいずれか一方あるいは両方をトリガ条件CND4として、ステート6(ST6)へ遷移し、当該ステート6(ST6)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG5からレジスタREG6に切り替える処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I6(|I6|>|I5|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを高速に放電する。これにより、電流切り替え回路ISWCは、ゲート・エミッタ間電圧Vgeを高速に0Vレベルへ近づけると共に、ゲートのインピーダンスを等価的に下げ、パワートランジスタTRの誤オン等を防止する。
【0062】
なお、ステート6(ST6)において、ゲート電流(シンク電流)Igが減少している期間は、電流を能動的に制御している期間ではなく、放電完了間近に伴い電流が受動的に制御される期間である。また、電流値調整回路ITRMCは、ステート2(ST2)およびステート5(ST5)の期間で、コレクタ・エミッタ間電流Iceの傾き(dIce/dt)やコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)と目標値との比較結果を取り込み、当該比較結果を以降のサイクルの電流値I2,I5に反映する。
【0063】
図6は、
図4の駆動装置において、電流切り替え回路の動作シーケンスの一例を示す状態遷移図である。電流切り替え回路ISWCは、例えば、
図6に示すような動作を行うステートマシンによって構成される。
図6において、各ステート1〜6(ST1〜ST6)の処理内容や、ステートを遷移する際のトリガ条件は、
図5(a)および
図5(b)で述べた通りである。
【0064】
加えて、
図6において、電流切り替え回路ISWCは、電源投入等による動作開始の指示INITを受けた場合、例えば、ステート6(ST6)へ遷移し、パワートランジスタTRをオフに駆動した状態から動作を開始する。また、必ずしも限定はされないが、電流切り替え回路ISWCは、ステート1,2,3(ST1,ST2,ST3)でターンオフ指示TOFFを受信した際には、それぞれ、ステート6,5,4(ST6,ST5,ST4)へ遷移する。逆に、電流切り替え回路ISWCは、ステート6,5,4(ST6,ST5,ST4)でターンオン指示TONを受信した際には、それぞれ、ステート1,2,3(ST1,ST2,ST3)へ遷移する。
【0065】
なお、電流切り替え回路ISWCは、
図5(a)および
図5(b)、
図6の例では、6個のステート1〜6(ST1〜ST6)で動作したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、ターンオン期間およびターンオフ期間のそれぞれで2以上のステートで動作すればよい。例えば、最大ソース電流値を用いるステートとして、ステート1(ST1)とステート3(ST3)を共通化することや、最大シンク電流値を用いるステートとして、ステート4(ST4)とステート6(ST6)を共通化することも場合によっては可能である。
【0066】
また、各ステートで使用するレジスタも適宜変更することが可能である。例えば、レジスタREG3はレジスタREG1と共通化され、ステート1(ST1)とステート3(ST3)とでレジスタREG1の電流値I1を共通で用いることが可能である。同様に、レジスタREG6はレジスタREG4と共通化され、ステート4(ST4)とステート6(ST6)とでレジスタREG4の電流値I4を共通で用いることが可能である。
【0067】
《電力供給システムの主要部の詳細》
図7は、本発明の実施の形態1による電力供給システムにおいて、トリガ検出に着目した主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
図7には、パワートランジスタTRと、駆動装置DVICに含まれるゲートドライバGDVと、パワートランジスタTRとゲートドライバGDVとの間の各種回路とが示される。パワートランジスタTRは、所定の負荷に電力を供給し、ゲートドライバGDVは、例えば、一つの半導体チップで構成され、PWM信号PWMに基づきパワートランジスタTRを駆動する。
【0068】
ゲートドライバGDVは、複数の外部端子PN1〜PN6を備える。外部端子PN6には、PWM信号PWMが入力される。コントローラCTRは、前述したように、各ステート1〜6(ST1〜ST6)に応じて選択回路SELc,SELdを制御し、所定のレジスタの電流値を可変電流ドライバ回路IDVCへ出力する。この例では、選択回路SELcは、充電(ステート1〜3(ST1〜ST3))に伴う電流値を出力し、選択回路SELdは、放電(ステート4〜6(ST4〜ST6))に伴う電流値を出力する。また、この例では、ステート1(ST1)とステート3(ST3)とでレジスタREG1の電流値I1が共通に用いられ、ステート4(ST4)とステート6(ST6)とでレジスタREG4の電流値I4が共通に用いられる。
【0069】
外部端子PN1は、比較回路CMP3と、パワートランジスタTRのコレクタとに結合される。ただし、パワートランジスタTRのコレクタは、例えば、プリント配線基板等に実装されるブロッキングダイオードDsatおよびロウパスフィルタLPF1を順に介して外部端子PN1に結合される。ブロッキングダイオードDsatは、高耐圧ダイオードである。
【0070】
コレクタ・エミッタ間電圧Vceは、パワートランジスタTRのオン・オフに応じて、略0VレベルとパワートランジスタTRの電源電圧(例えば400V等)レベルとの間で推移する。一方、ゲートドライバGDVは、例えば、15V等の電源電圧VDDで動作する。したがって、ゲートドライバGDVの耐圧により、400V等の電源電圧レベルを比較回路CMP3へ直接入力することはできない。そこで、ブロッキングダイオードDsatが設けられると共に、ゲートドライバGDV内の比較回路CMPの入力ノードに、当該ブロッキングダイオードDsatに微小なバイアス電流を流すためのバイアス回路が設けられる。
【0071】
コレクタ・エミッタ間電圧VceがゲートドライバGDVの電源電圧VDDよりも低い場合には、コレクタ・エミッタ間電圧VceにブロッキングダイオードDsatの順方向電圧(VF)を加えた電圧が比較回路CMP3の入力電圧になる。これにより、比較回路CMP3は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが7V等の基準値Vrf3に達したことを検出することができる。一方、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが電源電圧VDDよりも高い場合には、ブロッキングダイオードDsatが逆バイアスとなる。その結果、比較回路CMP3の入力ノードには、電源電圧VDD以上の電圧は印加されなくなる。ロウパスフィルタLPF1は、ブロッキングダイオードDsatのリカバリ電流を吸収し、ゲートドライバGDVに過電圧が印加されないように保護する役割を担う。
【0072】
外部端子PN2は、可変電流ドライバ回路IDVCと、パワートランジスタTRのゲートとに結合される。可変電流ドライバ回路IDVCは、電源電圧VDDと外部端子PN2との間に並列に設けられる複数のチャージ用トランジスタCT0〜CTmと、接地電源電圧GNDと外部端子PN2との間に並列に設けられる複数のディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmとを有する。本明細書では、複数のチャージ用トランジスタCT0〜CTmを総称して、チャージ用トランジスタCTと称し、複数のディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmを総称して、ディスチャージ用トランジスタDTと称する。例えば、チャージ用トランジスタCTは、pチャネル型のMOSFETで構成され、ディスチャージ用トランジスタDTは、nチャネル型のMOSFETで構成される。
【0073】
複数のチャージ用トランジスタCT0〜CTmは、選択回路SELcからの電流値(ディジタル値)に基づいてオンの数が制御され、複数のディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmは、選択回路SELdからの電流値(ディジタル値)に基づいてオンの数が制御される。より詳細には、例えば、選択回路SELcは、ディジタル値をデコードすることで、チャージ用トランジスタCT0〜CTmのそれぞれのオン・オフ信号を生成し、選択回路SELdも、ディジタル値をデコードすることで、ディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmのそれぞれのオン・オフ信号を生成する。
【0074】
ここで、外部端子PN2は、例えば、プリント配線基板等に実装されるゲート抵抗Rgを介してパワートランジスタTRのゲートに結合される。実施の形態1の方式を用いると、前述したように、ゲート抵抗Rgの代わりに電圧および電流の傾きを制御できるため、この観点では、ゲート抵抗Rgを削除することが可能である。ただし、以下の理由でゲート抵抗Rgを別途設けることも有益である。
【0075】
ゲート抵抗Rgは、(1)電圧および電流の傾きを調整する役割に加えて、(2)パワートランジスタTRおよびその接続配線の寄生容量および寄生インダクタに伴う発振を防止するためのダンピング抵抗としての役割と、(3)半導体チップの発熱を外に逃がす役割とを担うことができる。(3)に関して、例えば、チャージ用トランジスタCTをオンに制御する場合を想定する。この場合、電源電圧VDDは、チャージ用トランジスタCTのオン抵抗と、チップ外のゲート抵抗Rgとで分圧されるため、チャージ用トランジスタCTの発熱を低減することができる。
【0076】
そこで、ゲート抵抗Rgに前述した(2)および(3)の役割を担わせるため、ゲート抵抗Rgを別途設けることが有益となる。ただし、ゲート抵抗Rgの抵抗値は、実施の形態1の方式を用いない場合(すなわち、ゲート抵抗Rgに、加えて(1)の役割を担わせる場合)には5〜10Ω等に定められるが、実施の形態1の方式を用いる場合には、例えば、その半分以下の値(1〜2Ω等)に定められる。
【0077】
外部端子PN3は、パワートランジスタTRのメインエミッタEに結合され、ゲートドライバGDVの接地電源電圧GND用の端子として使用される。外部端子PN4は、比較回路CMP1と、パワートランジスタTRのゲートとに結合され、ゲート・エミッタ間電圧Vgeの検出端子となる。外部端子PN5は、比較回路CMP2に結合され、コレクタ・エミッタ間電流Iceの検出端子となる。
【0078】
詳細には、例えば、パワートランジスタTRがセンスエミッタSEを有するマルチエミッタ型のIGBTの場合、センスエミッタSEからのセンス電流が、センス抵抗Rsenによって電圧に変換された上で外部端子PN5へ入力される。この際に、センス抵抗Rsenによって変換された電圧は、ノイズを緩和するためのロウパスフィルタLPF2を介して外部端子PN5へ入力されてもよい。コレクタ・エミッタ間電流Iceの検出方法は、このようなセンスエミッタSEによる方法に限らず、メインエミッタEの電流をセンス抵抗でセンスする方法や、ホール素子や磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いる方法や、カレントトランスを用いる方法等であってもよい。
【0079】
図8は、本発明の実施の形態1による電力供給システムにおいて、傾き検出に着目した主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
図8に示すゲートドライバGDVは、一部図示は省略されているが、
図7に示した外部端子PN1〜PN6およびその各周辺回路を備え、加えて外部端子PN7,PN8を備える。外部端子PN7は、比較回路CMP5pと、パワートランジスタTRのコレクタとに結合される。ただし、パワートランジスタTRのコレクタは、例えば、プリント配線基板等に実装される微分回路DFCを介して外部端子PN7に結合される。
【0080】
微分回路DFCは、外部端子PN7とパワートランジスタTRのコレクタとの間に直列に挿入されるコンデンサCdと、並列に挿入される抵抗Rd1,Rd2とを備え、コレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)を反映した電圧を外部端子PN7へ出力する。特に限定はされないが、コンデンサCdの大きさは数十pF程度であり、抵抗Rd1,Rd2の抵抗値は、数Ω程度である。比較回路CMP5pは、当該微分回路DFCの出力電圧となるコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)と、予め定めた立ち上がりスロープの目標値Vtg2p(V+)との大小関係を検出する。
【0081】
外部端子PN8は、比較回路CMP4pと、パワートランジスタTRのパワーエミッタ(パワー端子)PEとに結合される。また、外部端子PN3は、パワートランジスタTRのケルビンエミッタ(ケルビン端子)KEに結合される。ケルビンエミッタKEとパワーエミッタPEとの間には、プリント配線基板の配線や、パワートランジスタTRのパッケージ内のリードフレームまたはボンディングワイヤ等に起因する寄生インダクタンス成分(Ls)が存在する。
【0082】
したがって、パワーエミッタPEには、ケルビンエミッタKEを基準として、コレクタ・エミッタ間電流Iceの傾き(dIce/dt)を反映した電圧(Ls×(dIce/dt))が生じる。比較回路CMP4pは、当該ケルビンエミッタKEの電圧を接地電源電圧GNDとして動作し、パワーエミッタPEに生じた電圧(Ls×(dIce/dt))と、予め定めた立ち上がりスロープの目標値Vtg1p(I+)との大小関係を検出する。
【0083】
図9(a)および
図9(b)は、
図8におけるパワートランジスタの構成例を示す概略図である。
図9(a)に示すように、パワートランジスタ(IGBT)TRは、半導体チップCHPに形成され、半導体チップCHPの表面には、エミッタパッドEP、ゲートパッドGP、センスエミッタパッドSEPが形成される。当該半導体チップCHPは、外部端子(リードまたはリードフレーム)PN_GT,PN_PE,PN_SE,PN_KE,PN_CRを備えるパッケージPKGによって封止される。
【0084】
外部端子PN_GT,PN_PE,PN_SEは、それぞれ、ゲート端子、パワーエミッタ端子(PE)、センスエミッタ端子(SE)であり、ゲートパッドGP、エミッタパッドEP、センスエミッタパッドSEPにボンディングワイヤBWを介して結合される。外部端子PN_KEは、ケルビンエミッタ端子(KE)であり、エミッタパッドEPにボンディングワイヤBWを介して結合される。外部端子PN_CRは、コレクタ端子であり、半導体チップCHPの裏面に形成されるコレクタパッドに結合される。
【0085】
パワーエミッタ端子(PE)は、所定の負荷へ電力を供給するための端子であり、コレクタ・エミッタ間電流Iceのほぼ全てが流れる端子となる。一方、ケルビンエミッタ端子(KE)は、ゲートドライバGDVに接地電源電圧GNDを供給するための端子であり、実質的に、コレクタ・エミッタ間電流Iceが流れない端子となる。したがって、ボンディングワイヤBWや外部端子等に起因する寄生インダクタンス成分であって、コレクタ・エミッタ間電流Iceに寄与する寄生インダクタンス成分(Ls)に関しては、等価的に、パワーエミッタ端子(PE)が有し、ケルビンエミッタ端子(KE)は有しないことになる。
【0086】
また、パワートランジスタ(IGBT)TRは、通常、
図9(b)に示されるように、半導体チップCHP内に形成される複数の単位IGBTによって構成され、当該複数の単位IGBTのコレクタ間やゲート間をそれぞれ共通に結合することで構成される。この複数の単位IGBTの一部(例えば1/1000等)は、センス用パワートランジスタTRsとなり、残りはメイン用パワートランジスタTRmとなる。センス用パワートランジスタTRsのエミッタは、センスエミッタSEとなる外部端子PN_SEに結合され、メイン用パワートランジスタTRmのエミッタは、パワーエミッタPEとなる外部端子PN_PEに結合される。
【0087】
なお、例えば、ケルビンエミッタKEを備えないパワートランジスタTRを用いる場合には、例えば、プリント配線基板上に、ケルビンエミッタKEに相当するような配線を別途設ければよい。例えば、プリント配線基板上で、パワートランジスタTRのエミッタ端子から接地用の配線と主電流経路用の配線とを引き出し、前者の配線をゲートドライバGDVに結合し、後者の配線を、所定の長さだけ引き出した先から分岐する形でゲートドライバGDVに結合すればよい。
【0088】
《電流値調整回路の詳細》
図10(a)は、
図3の駆動装置における電流値調整回路の主要部の構成例を示す概略図であり、
図10(b)および
図10(c)は、
図10(a)の動作例を説明する補足図である。
図10(a)に示す電流値調整回路ITRMCは、例えば、FIFO(First In First Out)等のメモリMEM1,MEM2と、メモリ制御回路MCTLと、乗算器MUL1,MUL2と、加算器ADDとを備える。
【0089】
まず、電流値調整回路ITRMCの動作方式について説明する。
図3の比較回路CMP4,CMP5による比較結果は、大小関係を表す2値(‘0’または‘1’)である。また、毎回のターンオン、ターンオフ時の電圧傾き(dVce/dt)や電流傾き(dIce/dt)は、
図10(b)に示されるように、ある程度のばらつきを持っており、
図10(c)に示されるように、“dVce/dt”や“dIce/dt”の値と発生頻度との関係には分布が生じる。さらに、比較回路CMP4,CMP5においても、熱雑音や1/f雑音により、時間によって2つの入力間にオフセット電圧が生じ、そのオフセット電圧は、正規分布になる。例えば、2つの入力に全く同じ電圧を印加した場合、出力は、50%の確率で‘0’になり、50%の確率で‘1’になる。
【0090】
そこで、この現象を応用し、比較回路CMP4,CMP5による比較結果から2値ではなくリニアリティを得る。例えば、“dVce/dt”や“dIce/dt”が目標値と一致している場合、比較回路CMP4,CMP5は、50%の確率で‘0’を、50%の確率で‘1’を出力する。“dVce/dt”や“dIce/dt”が目標値から僅かにずれると、この‘0’と‘1’の割合に変化が生じる。これを統計的に処理すると、ずれの量に応じたアナログ量を得ることができる。例えば、比較回路CMP4,CMP5が‘0’を出力する回数と‘1’を出力する回数とが等しくなるようにフィードバック制御を行うと、“dVce/dt”や“dIce/dt”の平均値が目標値とほぼ等しくなるように制御される。
【0091】
図10(a)では、例えば、電流値調整回路ITRMCが、
図8の比較回路CMP5pの検出結果(目標値との大小関係)に基づきコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)を制御する場合を想定する。この場合、コレクタ・エミッタ間電圧Vceの立ち上がりが生じる毎に、比較回路CMP5pによる検出結果がメモリMEM1,MEM2に蓄えられる。具体的には、目標値オーバー場合には、その旨を表す1ビット情報がメモリMEM1に蓄えられ、目標値アンダーの場合には、その旨を表す1ビット情報がメモリMEM2に蓄えられる。
【0092】
メモリ制御回路MCTLは、メモリMEM1,MEM2に所定の回数(例えば数十回や数百回等)の検出結果が蓄積される毎に、メモリMEM1,MEM2を読み出し、メモリMEM1に基づく目標値オーバーの発生回数N1を乗算器MUL1へ出力し、メモリMEM2に基づく目標値アンダーの発生回数N2を乗算器MUL2へ出力する。乗算器MUL1は、‘N1’に重み係数W1を乗算し、乗算器MUL2は、‘N2’に重み係数W2を乗算する。加算器ADDは、“N1×W1”と“N2×W2”の差分を算出する。
【0093】
電流値調整回路ITRMCは、加算器ADDからの差分値(言い換えれば、比較回路CMP5pによる複数回の検出結果の集計値)に基づいて、電流値を増加させるか、または減少させるか、あるいは維持するかを定める。そして、電流値調整回路ITRMCは、電流値の増加指示UP、減少指示DN、維持指示HLDのいずれかを表す電流値調整信号TRMを所定のレジスタへ出力する。
【0094】
ここで、仮に、重み係数W1と重み係数W2が等しい場合、“dVce/dt”は、50%の確率で目標値を超えてしまう。例えば、目標値を、サージ電圧や放射ノイズを許容できる上限値に定めた場合、“dVce/dt”は、50%の確率でこの上限値を超えてしまうことになる。そこで、重み係数W1は、重み係数W2よりも大きい値に設定される。この場合、目標値オーバーの回数N1に‘W1’を乗算した値と、目標値アンダーの回数N2に‘W2’(<W1)を乗算した値とが釣り合うようにフィードバック制御が行われる。その結果、
図10(c)に示されるように、“dVce/dt”が目標値(上限値)を超える頻度を極力下げることが可能になる。なお、ここでは、“dVce/dt”を制御する場合を想定したが、“dIce/dt”を制御する場合も同様である。
【0095】
図11(a)は、
図10(a)の電流値調整回路による動作方式を表す概念図であり、
図11(b)は、
図11(a)の比較例となる動作方式を表す概念図である。
図11(b)に示されるように、比較回路による1回の検出結果に基づいて電流値を調整する方式(所謂、bang−bang型の方式)を用いた場合、本来、電流値を維持すべき状況であっても定常的に電流値の増減が行われる。
【0096】
この場合、電圧および電流の傾きが定常的にばらつくことになる。そうすると、例えば、PWMデューティもばらつき、
図1のインバータシステムを例とすると、PWM信号に基づき生成される各相の正弦波に歪みが生じる恐れや、ノイズ成分が増大する恐れなどがある。また、フィードバックループの安定性とトラッキング速度を両立することが困難となる恐れがあり、制御の収束性が低下する場合がある。
【0097】
一方、
図10(a)の方式を用いた場合、
図11(a)に示されるように、複数回の検出結果と目標値との誤差に応じて、電流値の増加/減少に維持を加えた3種類の調整を行うことができる。例えば、
図10(a)の加算器ADDの算出結果がゼロか、あるいはゼロを中心とする所定の範囲(例えば±2以内等)の場合、電流値を維持するようなことが可能になる。その結果、
図11(b)で述べたような傾きのばらつきの問題を解決できる。
【0098】
また、加算器ADDの算出結果の値に応じて、電流値を増加/減少する量(例えば、ΔI増加、(2×ΔI)増加等)を調整することも可能である。具体的には、加算器ADDの算出結果の値が範囲[1](例えば+3〜+6等)であった場合にはΔI増加させ、範囲[1]に続く範囲[2](例えば+7〜+10等)であった場合には(2×ΔI)増加させるといったこともできる。さらに、複数回の検出結果を蓄積したのち反映するという低速なフィードバック制御を行っているため、安定したフィードバックループを容易に構築することができ、制御の収束性を向上させることも可能になる。
【0099】
図12は、
図3のゲートドライバを用いてパワートランジスタを駆動した場合のシミュレーション結果を示す波形図である。
図12には、比較例として、点線で示されるように、
図20のゲート抵抗方式でパワートランジスタTRの駆動した場合の波形図も併せて示されている。実施の形態1の方式を用いると、ゲート抵抗方式の場合と同等のコレクタ・エミッタ間電流Iceの傾き(dIce/dt)およびコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)を保ちながら、スイッチング時間を大幅に短縮することが可能になる。これにより、パワートランジスタTRでの電力損失が低減され、電力変換効率の向上や、放熱コストの削減等が図れる。
【0100】
《実施の形態1の代表的な効果》
以上、実施の形態1の駆動装置および電力供給システムを用いることで、サージ電圧や放射ノイズ等の原因となる電流の傾き、リカバリ電流や容量結合等による誤動作の原因となる電圧の傾きを適切な値に抑制しつつ、スイッチング損失を低減するアクティブゲートドライバが実現できる。さらに、当該アクティブゲートドライバによって、
図23(a)や
図23(b)の場合と比較して、パワートランジスタを、PVTばらつきを反映しつつ、低電力で駆動することが可能になる。この低電力化により、アクティブゲートドライバを高温環境下で用いられるシステムに適用することも容易となる。
【0101】
具体的に説明すると、
図23(a)のようなオープンループ型の構成は、ディジタル制御が可能であるため低電力化等が図れるが、PVTばらつきを反映することは困難となる。逆に、
図23(b)のようなアナログフィードバック型の構成は、PVTばらつきを反映できるが、アナログ回路が主体となるため低電力化等が図り難い。そこで、実施の形態1では、
図3等に示したように、パワートランジスタTRの端子間電圧や端子間電流が基準値に達したことをトリガとして電流を切り替える、ディジタル制御の高速なオープンループ系が設けられる。これにより、
図23(a)の構成と異なり、PVTばらつきを反映したタイミングで電流を高速に切り替えることができる。
【0102】
さらに、実施の形態1では、
図3等に示したように、端子間電圧や端子間電流の傾きを反映して電流値を調整するディジタル制御の低速なフィードバック系が設けられる。これにより、
図23(a)の場合と異なりPVTばらつきを反映した電流値でパワートランジスタTRを駆動できる。さらに、オープンループ系に加えてフィードバック系にもディジタル制御を用いることで、
図23(b)の場合と異なり低電力化等が図れる。なお、フィードバック系に関しては、ディジタル制御を適用するため、アナログアンプではなく比較回路が用いられる。そして、比較回路による複数回の検出結果に基づいてフィードバック制御を行うことで、アナログアンプのようなリニアな制御が可能になる。
【0103】
なお、傾き検出回路SDETは、このように消費電力や回路面積等の観点から比較回路で構成することが望ましいが、必ずしもこれに限定されない。例えば、アナログアンプやアナログディジタル変換器等のアナログ回路で構成し、そのディジタル出力を低速にフィードバックするような構成を用いることも場合によっては可能である。すなわち、実施の形態1の方式では、
図23(b)の方式と異なり、オープンループ制御を併用しているため、高速アンプを含んだ高速なフィードバック回路は不要であり、低速なフィードバック回路を用いることができるため、消費電力をある程度抑制することができる。
【0104】
(実施の形態2)
《電力供給システム(応用例[1])の主要部の詳細》
図13は、本発明の実施の形態2による電力供給システムにおいて、トリガ検出に着目した主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
図13に示す電力供給システムは、
図8の構成例と比較して、比較回路CMP4n,CMP5nが追加される点と、レジスタREG2がレジスタREG2a,REG2bに変更され、レジスタREG5がレジスタREG5a,REG5bに変更される点とが異なっている。
【0105】
比較回路CMP5nは、前述した比較回路CMP5pと共に外部端子PN7に結合され、微分回路DFCの出力電圧となるコレクタ・エミッタ間電圧Vceの傾き(dVce/dt)と、予め定めた立ち下がりスロープの目標値Vtg2n(V−)との大小関係を検出する。また、比較回路CMP4nも、前述した比較回路CMP4pと共に外部端子PN8に結合され、パワーエミッタPEに生じた電圧(Ls×(dIce/dt))と、予め定めた立ち下がりスロープの目標値Vtg1n(I−)との大小関係を検出する。
【0106】
図14(a)は、
図13において、パワートランジスタのターンオン時の詳細な駆動波形の一例を示す図であり、
図14(b)は、
図13において、パワートランジスタのターンオフ時の詳細な駆動波形の一例を示す図である。
図14(a)では、
図5(a)の場合と比較して、ステート2(ST2)がステート2A(ST2a)とステート2B(ST2b)とに分割されている。
【0107】
図5(a)の場合と同様に、電流切り替え回路ISWCは、トリガ条件CND1に応じて、ステート1(ST1)からステート2A(ST2a)へ遷移し、当該ステート2A(ST2a)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG1からレジスタREG2aに切り替える処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I2a(|I2a|<|I1|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを充電し、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電流Iceが立ち上がる際の傾きを制御する。
【0108】
次いで、トリガ検出回路TDET(
図13では省略)は、コレクタ・エミッタ間電流Iceが所定の基準値(例えば、立ち上がりの完了直前の値)まで上がったことを検出する。または、トリガ検出回路TDETは、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが所定の基準値(例えば、立ち下がりの開始直後の値)まで下がったことを検出する。電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果をトリガ条件CND2aとして、ステート2B(ST2b)へ遷移し、当該ステート2B(ST2b)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG2aからレジスタREG2bに切り替える処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I2b(例えば、|I1|>|I2b|>|I2a|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを充電し、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電圧Vceが立ち下がる際の傾きを制御する。
【0109】
その後、
図5(a)のトリガ条件CND2の場合と同様に、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP3)は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが基準値Vrf3(例えば7V等)まで下がったことを検出する。電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果をトリガ条件CND2bとして、ステート3(ST3)へ遷移し、当該ステート3(ST3)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG2bからレジスタREG3に切り替える処理を実行する。
【0110】
一方、
図14(b)でも、
図5(b)の場合と比較して、ステート5(ST5)がステート5A(ST5a)とステート5B(ST5b)とに分割されている。
図5(b)のトリガ条件CND3の場合と同様に、トリガ検出回路TDET(具体的には比較回路CMP3)は、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが基準値Vrf3(例えば7V等)まで上がったことを検出する。電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果をトリガ条件CND3aとして、ステート5A(ST5a)へ遷移し、当該ステート5A(ST5a)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG4からレジスタREG5aに切り替える処理を実行する。これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I5a(|I5a|<|I4|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを放電し、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電圧Vceが立ち上がる際の傾きを制御する。
【0111】
次いで、トリガ検出回路TDET(
図13では省略)は、コレクタ・エミッタ間電流Iceが所定の基準値(例えば、立ち下がりの開始直後の値)まで下がったことを検出する。または、トリガ検出回路TDETは、コレクタ・エミッタ間電圧Vceが所定の基準値(例えば、立ち上がりの完了直前の値)まで上がったことを検出する。電流切り替え回路ISWCは、当該検出結果をトリガ条件CND3bとして、ステート5B(ST5b)へ遷移し、当該ステート5B(ST5b)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG5aからレジスタREG5bに切り替える処理を実行する。
【0112】
これに応じて、可変電流ドライバ回路IDVCは、電流値I5b(例えば、|I4|>|I5b|>|I5a|)のゲート電流IgでパワートランジスタTRのゲートを放電し、パワートランジスタTRのコレクタ・エミッタ間電流Iceが立ち下がる際の傾きを制御する。その後は、
図5(b)の場合と同様に、電流切り替え回路ISWCは、トリガ条件CND4に応じて、ステート6(ST6)へ遷移し、当該ステート6(ST6)の処理として、選択するレジスタを、レジスタREG5bからレジスタREG6に切り替える処理を実行する。
【0113】
ここで、
図13の電流値調整回路ITRMCは、ステート2A(ST2a)での比較回路CMP4pの検出結果に基づき、レジスタREG2aの電流値I2aを調整し、ステート2B(ST2b)での比較回路CMP5nの検出結果に基づき、レジスタREG2bの電流値I2bを調整する。また、電流値調整回路ITRMCは、ステート5A(ST5a)での比較回路CMP5pの検出結果に基づき、レジスタREG5aの電流値I5aを調整し、ステート5B(ST5b)での比較回路CMP4nの検出結果に基づき、レジスタREG5bの電流値I5bを調整する。
【0114】
《実施の形態2の代表的な効果》
以上、実施の形態2の駆動装置および電力供給システムを用いることで、実施の形態1で述べた各種効果に加えて、さらに、電圧および電流の立ち上がり/立ち下がりの傾きをそれぞれ独立に制御でき、スイッチング特性の更なる向上を図れる場合がある。具体的に説明すると、
図5(a)では、電流値I2によってコレクタ・エミッタ間電流Iceの立ち上がりの傾きが制御され、この電流値I2のままコレクタ・エミッタ間電圧Vceの立ち下がりの傾きが制御された。同様に、
図5(b)では、電流値I5によってコレクタ・エミッタ間電圧Vceの立ち上がりの傾きが制御され、この電流値I5のままコレクタ・エミッタ間電流Iceの立ち下がりの傾きが制御された。
【0115】
一方、コレクタ・エミッタ間電圧Vceやコレクタ・エミッタ間電流Iceの立ち下がりの傾きを積極的に制御したい場合がある。これにより、例えば、オーバーシュートのみならずアンダーシュートの大きさを制御でき、また、アンダーシュートがさほど問題とならない場合には、電圧および電流の立ち下がり時間(すなわち、
図14(a)および
図14(b)のST2b,ST5bの期間)を可能な限り短縮することで、スイッチング損失の更なる低減が図れる。
【0116】
このような効果を得るため、実施の形態2のように、電圧および電流の立ち上がり/立ち下がりの傾きをそれぞれ独立に制御できるような構成を用いることが有益となる。ただし、ステートの数が増えると、その分、比較回路の数が増大し、回路面積の増大や、動作の複雑化等を招く恐れがある。この観点では、実施の形態1のように、スイッチング期間毎に3個のステート等を用いることが有益となる。
【0117】
(実施の形態3)
《電力供給システム(応用例[2])の主要部の詳細》
図15は、本発明の実施の形態3による電力供給システムにおいて、主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
図15は、前述した
図7の構成例と
図13の構成例とを組み合わせた構成例となっている。これに加えて、
図15のゲートドライバGDVは、外部端子PN9と、ロウパスフィルタLPFi1,LPFi4,LPFi5,LPFi7,LPFi8と、比較回路CMP6と、アクティブミラークランプ用スイッチSWclpと、発熱制御回路HCTRc,HCTRdとを備える。
【0118】
ロウパスフィルタLPFi1,LPFi4,LPFi5,LPFi7,LPFi8は、それぞれ、外部端子PN1,PN4,PN5,PN7,PN8に結合され、各比較回路の入力におけるノイズを除去する。比較回路CMP6は、ロウパスフィルタLPFi5を介して外部端子PN5に結合され、外部端子PN5で検出されるコレクタ・エミッタ間電流Iceに応じた電圧を基準値(例えば、0.5V)と比較することで過電流を検出する。外部端子PN9には、過電流が所定の期間継続的に検出された場合に、過電流検出信号OCDが出力される。また、電流切り替え回路ISWCは、過電流検出信号OCDを受けて、パワートランジスタTRを強制的にターンオフする等の所定の保護動作を行う。
【0119】
また、ここでは、前述した電流値調整回路ITRMC、各レジスタREGおよび選択回路SELは、ゲート制御回路GCTRに搭載されている。アクティブミラークランプ用スイッチSWclpは、外部端子PN4と接地電源電圧GNDとの間に結合される。ゲート制御回路GCTRは、電流切り替え回路ISWCからの電流切り替え信号ISWに基づきパワートランジスタTRをターンオフし、当該ターンオフが完了する際に、アクティブミラークランプ用スイッチSWclpをオンに制御する。これにより、パワートランジスタTRのゲートは、ゲート抵抗Rgを介さずに接地電源電圧GNDに結合され、パワートランジスタTRの誤点弧等がより確実に防止される。
【0120】
発熱制御回路HCTRcは、ゲート制御回路GCTRからチャージ用トランジスタCT0〜CTmのオン数を受け、チャージ用トランジスタCT0〜CTmのそれぞれのオン・オフを制御する。同様に、発熱制御回路HCTRdは、ゲート制御回路GCTRからディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmのオン数を受け、ディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmのそれぞれのオン・オフを制御する。
【0121】
《発熱制御回路の動作》
図16は、
図15における発熱制御回路の概略的な動作例を示す説明図である。
図15および
図16において、例えば、可変電流ドライバ回路IDVCの複数(m+1個)のチャージ用トランジスタCT0〜CTmは、同じトランジスタサイズで構成され、複数(m+1個)のディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmも、同じトランジスタサイズで構成される。発熱制御回路HCTRc,HCTRdのそれぞれは、複数のチャージ用トランジスタCT0〜CTmをオンに制御する毎に、当該オンに制御するチャージ用トランジスタの位置を変更し、複数のディスチャージ用トランジスタDT0〜DTmをオンに制御する毎に、当該オンに制御するディスチャージ用トランジスタの位置を変更する。
【0122】
例えば、
図16のPWMサイクルT1におけるタイミングt1(
図5(a)のステート1(ST1))では、複数のチャージ用トランジスタCT0〜CTmが全てオンに制御されることで4A等のゲート電流(ソース電流)Igが流れる。一方、タイミングt1に続くタイミングt2(
図5(a)のステート2(ST2))では、複数のチャージ用トランジスタCT0〜CTmの中の25%をオンに制御することで、ゲート電流Igが1A等に制御される。
【0123】
ここで、仮に、次のPWMサイクルT2のタイミングt8(ステート2(ST2))でも、タイミングt2の場合と同じ位置のトランジスタをオンに制御すると、可変電流ドライバ回路IDVCの一部に発熱が集中することになり、特性の変動や寿命の低下などにつながる。そこで、発熱制御回路HCTRcは、タイミングt8では、タイミングt2の場合とは異なる位置のチャージ用トランジスタCTをオンに制御する。同様に、発熱制御回路HCTRdは、PWMサイクルT1のタイミングt5(
図5(b)のステート5(ST5))とPWMサイクルT2のタイミングt11(ステート5(ST5))とで、異なる位置のディスチャージ用トランジスタDTをオンに制御する。これにより、熱の発生が分散され、温度上昇による特性変動の軽減や、長寿命化(信頼性の向上)等が図れる。
【0124】
図17(a)は、
図15における発熱制御回路の詳細な処理内容の一例を示すフロー図であり、
図17(b)は、
図17(a)の補足図である。ここでは、可変電流ドライバ回路IDVCは、256個のチャージ用トランジスタCT0〜CT255と、256個のディスチャージ用トランジスタDT0〜DT255を備える場合を想定する。
図17(a)において、発熱制御回路HCTRc(発熱制御回路HCTRdも同様)は、Kを0に定め(ステップS101)、ゲート制御回路GCTRからトランジスタのオン数N(例えば、N=0〜256の中の整数)を新たに受信するのを待つ(ステップS102)。
【0125】
発熱制御回路HCTRc(HCTRd)は、トランジスタのオン数Nを新たに受信すると、K番目〜(K+(N−1))番目のチャージ用トランジスタCT(ディスチャージ用トランジスタDT)をオンに制御する(ステップS103)。続いて、発熱制御回路HCTRc(HCTRd)は、Kを(K+N)で更新する(ステップS104)。その結果、K>255の場合には、発熱制御回路HCTRc(HCTRd)は、Kを(K−256)に定める。そして、発熱制御回路HCTRc(HCTRd)は、エラーやリセット等による動作終了の指示が無い限り、ステップS102へ戻り、処理を継続する(ステップS105)。
【0126】
このような処理内容を用いると、
図17(b)に示されるように、複数のトランジスタ(チャージ用トランジスタCTまたはディスチャージ用トランジスタDT)をオンに制御する毎に、当該オンに制御するトランジスタの位置が変更される。これによって、各オンサイクル毎に、熱の発生を分散することができる。ただし、
図17(b)の例では、互いに隣接するトランジスタがオンに制御されるため、各オンサイクルの中では、256個のトランジスタ領域内の局所的なエリアに発熱が集中してしまう。
【0127】
図18は、
図15において、可変電流ドライバ回路内の各トランジスタの配置構成例を示す概念図である。
図18に示すように、0番目〜m番目のトランジスタ(チャージ用トランジスタCTまたはディスチャージ用トランジスタDT)は、連続する番号のトランジスタが隣接しないように配置される。これにより、
図17(a)のステップS103の処理が行われると、
図18に示されるように、オンに制御されるトランジスタの位置がトランジスタ領域内で広く分散され、局所的な発熱の集中を抑制することが可能になる。その結果、温度上昇による特性変動を更に軽減すること等が可能になる。
【0128】
《実施の形態3の代表的な効果》
以上、実施の形態3の駆動装置および電力供給システムを用いることで、実施の形態1や実施の形態2で述べた各種効果に加えて、さらに、可変電流ドライバ回路IDVCにおける特性変動の軽減や、長寿命化(信頼性の向上)等が図れる。なお、発熱の分散方法は、必ずしも
図17(a)や
図18のような方式に限定されず、その他様々な方法で実現することが可能である。例えば、トランジスタをオンに制御する毎に擬似乱数発生回路等を用いたランダムな方法でオンに制御するトランジスタを定めてもよい。ただし、この場合、短期的には、発熱が集中する可能性があるため、この観点では、
図17(a)や
図18に示したような規則的な方法を用いることが望ましい。
【0129】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0130】
《付記》
(1)本実施の形態の駆動装置は、複数のレジスタと、可変電流ドライバ回路と、第1の検出回路と、電流切り替え回路と、第2の検出回路と、電流値調整回路とを有する。複数のレジスタは、それぞれ、電流値をディジタル値で保持する。可変電流ドライバ回路は、複数のレジスタのいずれかのディジタル値が入力され、当該ディジタル値に基づく駆動電流でパワートランジスタを駆動する。第1の検出回路は、パワートランジスタのスイッチング期間で、その端子間電圧または端子間電流を監視し、端子間電圧または端子間電流が所定の基準値に到達したことを検出する。電流切り替え回路は、複数のレジスタの中から可変電流ドライバ回路へ出力するレジスタを選択し、スイッチング期間で、第1の検出回路の検出結果をトリガとして選択するレジスタを切り替えることで可変電流ドライバ回路の駆動電流を遷移させる。第2の検出回路は、スイッチング期間で、パワートランジスタの端子間電圧または端子間電流の傾きを検出する。電流値調整回路は、第2の検出回路の検出結果が予め定めた目標値に近づくように、複数のレジスタの中の所定のレジスタの電流値をフィードバック制御する。
【0131】
(2)電流切り替え回路は、第1、第2および第3の処理を実行する。第1の処理において、電流切り替え回路は、外部からのパワートランジスタのターンオン指示をトリガとして、複数のレジスタに含まれる第1のレジスタを選択する。第2の処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第2の端子間電圧(ゲート・エミッタ間電圧またはゲート・ソース間電圧)または第1の端子間電流(コレクタ・エミッタ間電流またはドレイン・ソース間電流)の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第1のレジスタから第2のレジスタに切り替える。第3の処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第1の端子間電圧(コレクタ・エミッタ間電圧またはドレイン・ソース間電圧)の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第2のレジスタから第3のレジスタに切り替える。
【0132】
(3)電流切り替え回路は、第2の処理において、第2Aの処理と第2Bの処理とを実行する。第2Aの処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第2の端子間電圧または第1の端子間電流の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第1のレジスタから第2Aのレジスタに切り替える。第2Bの処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第1の端子間電流または第1の端子間電圧の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第2Aのレジスタから第2Bのレジスタに切り替える。
【0133】
(4)第3のレジスタは、第1のレジスタと共通化される。
【0134】
(5)電流切り替え回路は、第4、第5および第6の処理を実行する。第4の処理において、電流切り替え回路は、外部からのパワートランジスタのターンオフ指示をトリガとして、複数のレジスタに含まれる第4のレジスタを選択する。第5の処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第1の端子間電圧の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第4のレジスタから第5のレジスタに切り替える。第6の処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第2の端子間電圧または第1の端子間電流の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第5のレジスタから第6のレジスタに切り替える。
【0135】
(6)電流切り替え回路は、第5の処理において、第5Aの処理と第5Bの処理とを実行する。第5Aの処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第1の端子間電圧の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第4のレジスタから第5Aのレジスタに切り替える。第5Bの処理において、電流切り替え回路は、第1の検出回路による第1の端子間電流または第1の端子間電圧の検出結果をトリガとして、選択するレジスタを、第5Aのレジスタから第5Bのレジスタに切り替える。
【0136】
(7)第6のレジスタは、第4のレジスタと共通化される。
【0137】
(8)第2の検出回路は、端子間電圧または端子間電流の傾きと予め定めた目標値との大小関係を検出する比較回路であり、電流値調整回路は、当該比較回路による複数回の検出結果の集計値に基づいて所定のレジスタの電流値を増加させるか、または減少させるか、あるいは維持するかを定める。
【0138】
(9)電流値調整回路は、比較回路による複数回の検出結果から得られる、目標値よりも大きかった回数と、目標値よりも小さかった回数とにそれぞれ重み付けを行った結果の差分値に基づき、所定のレジスタの電流値を定める。
【0139】
(10)可変電流ドライバ回路は、電源電圧とパワートランジスタのゲートとの間に並列に設けられ、同一のトランジスタサイズで構成される複数のチャージ用トランジスタと、接地電源電圧とパワートランジスタのゲートとの間に並列に設けられ、同一のトランジスタサイズで構成される複数のディスチャージ用トランジスタとを有する。駆動装置は、複数のチャージ用トランジスタをオンに制御する毎に、当該オンに制御するチャージ用トランジスタの位置を変更し、複数のディスチャージ用トランジスタをオンに制御する毎に、当該オンに制御するディスチャージ用トランジスタの位置を変更する発熱制御回路を有する。
【0140】
(11)複数のチャージ用トランジスタまたは複数のディスチャージ用トランジスタは、0番目〜M番目のトランジスタで構成され、発熱制御回路は、0番目〜M番目のトランジスタの中からN(Nは0以上、(M+1)以下の整数)個のトランジスタをオンに制御する毎に、K番目〜K+(N−1)番目のトランジスタをオンに制御する処理と、Kの値を(K+N)の値で更新する処理とを実行する。
【0141】
(12)0番目〜M番目のトランジスタは、連続する番号のトランジスタが隣接しないように配置される。