特許第6836356号(P6836356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836356
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】飲料供給装置および飲料供給方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20210222BHJP
   B67D 1/07 20060101ALI20210222BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   C02F1/32
   B67D1/07
   A23L2/00 X
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-165933(P2016-165933)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-30117(P2018-30117A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年5月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澄田 康光
(72)【発明者】
【氏名】土田 晃大
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−508893(JP,A)
【文献】 特開平03−052688(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0264875(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0232358(US,A1)
【文献】 特開2010−274173(JP,A)
【文献】 特開平7−328661(JP,A)
【文献】 特開平8−154535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20 − 1/26
1/30 − 1/38
A23L 2/00 − 2/28
11/00 − 12/14
A23L 2/00 − 2/84
B67D 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ部とノズル部とを有する先端部を有する、飲料を供給する流路と、
マイクロウェーブ発生手段と、
マイクロウェーブにより紫外線発光する発光体と、
を備え、
前記発光体がドーナツ状の円筒型の形状を有し、前記チューブ部を覆い、前記ノズル部が露出するように、前記発光体の内側空間に前記流路の前記先端部が挿入されており、
前記マイクロウェーブ発生手段により発生させたマイクロウェーブを前記発光体に照射して、前記発光体から発光した紫外線により前記飲料の紫外線照射処理を行うとともに、前記流路の前記ノズル部の外側に前記マイクロウェーブと前記発光体から発光した紫外線とを照射することを特徴とする飲料供給装置。
【請求項2】
マイクロウェーブ発生手段により発生させたマイクロウェーブを、マイクロウェーブにより紫外線発光する発光体に照射して、前記発光体から発光した紫外線により飲料の紫外線照射処理を行う飲料供給方法であって、
前記発光体がドーナツ状の円筒型の形状を有し、前記発光体の内側空間に前記飲料を供給する流路のチューブ部とノズル部とを有する先端部を、前記チューブ部を覆い、前記ノズル部が露出するように挿入し、
前記発光体から発光した紫外線により前記飲料の紫外線照射処理を行うとともに、前記ノズル部の外側に前記マイクロウェーブと前記発光体から発光した紫外線とを照射することを特徴とする飲料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水等の飲料を供給するための、飲料供給装置および飲料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ式飲料自動販売機は、供給される水道水等を原水としてホット飲料、炭酸飲料、シロップ飲料等の各種飲料をカップ内に調理して販売するものである。このようなカップ式飲料自動販売機に供給される水道水は、例えば、フィルタを通して塩素等が除去され、自動販売機内に設けられたリザーバで一旦貯留される。そこから、ポンプによって、飲料調理用の冷水、温水、炭酸水、製氷用水として機内に送水される。リザーバで貯留されている原水は塩素が除去されているため殺菌力が低下しており、雑菌が混入した場合にはそのまま飲料の調理用水として排出されてしまう可能性がある。
【0003】
そのため、塩素発生器をリザーバに設置して定期的に電気分解を行うことで水道水中に含まれる塩化物イオンから殺菌力のある次亜塩素酸を生成し、流路内の菌の増殖を抑える方法が取られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
次亜塩素酸は経時的に減少していくため定期的に電気分解を行う必要があるが、水道水中の塩化物イオン濃度に依存して生成する次亜塩素酸濃度が変わるため、制御が非常に難しいことが知られている。さらに、調理用水中の次亜塩素酸濃度が高い場合には調理した飲料ににおいが残り、味が低下する可能性がある。そのため、残留性があり、飲料に影響を与えるような薬剤を使用しない、新しい菌の増殖抑制方法が検討されている。また、冷水を排出する冷水ノズルの外側に水が付着するとそこに菌が付着し、増殖することで冷水ノズル内に菌が進入する可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−318185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、飲料の味への影響を抑制して紫外線照射処理を行うことができる飲料供給装置および飲料供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、チューブ部とノズル部とを有する先端部を有する、飲料を供給する流路と、マイクロウェーブ発生手段と、マイクロウェーブにより紫外線発光する発光体と、を備え、前記発光体がドーナツ状の円筒型の形状を有し、前記チューブ部を覆い、前記ノズル部が露出するように、前記発光体の内側空間に前記流路の前記先端部が挿入されており、前記マイクロウェーブ発生手段により発生させたマイクロウェーブを前記発光体に照射して、前記発光体から発光した紫外線により前記飲料の紫外線照射処理を行うとともに、前記流路の前記ノズル部の外側に前記マイクロウェーブと前記発光体から発光した紫外線とを照射する、飲料供給装置である。
【0009】
また、本発明は、マイクロウェーブ発生手段により発生させたマイクロウェーブを、マイクロウェーブにより紫外線発光する発光体に照射して、前記発光体から発光した紫外線により飲料の紫外線照射処理を行う飲料供給方法であって、前記発光体がドーナツ状の円筒型の形状を有し、前記発光体の内側空間に前記飲料を供給する流路のチューブ部とノズル部とを有する先端部を、前記チューブ部を覆い、前記ノズル部が露出するように挿入し、前記発光体から発光した紫外線により前記飲料の紫外線照射処理を行うとともに、前記ノズル部の外側に前記マイクロウェーブと前記発光体から発光した紫外線とを照射する、飲料供給方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飲料の味への影響を抑制して紫外線照射処理を行うことができる飲料供給装置および飲料供給方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る飲料供給装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る飲料供給装置における紫外線照射処理装置の一例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る飲料供給装置における冷水供給流路の先端部付近の一例を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は上面図である。
図4】本発明の実施形態に係る飲料供給装置における紫外線照射処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の実施形態に係る飲料供給装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。飲料供給装置の一例として、カップ式飲料自動販売機の水流路部を例として以下説明するが、本実施形態に係る飲料供給装置は、これに限定されるものではない。
【0015】
飲料供給装置1は、飲料水を供給する流路として、冷水供給流路36と、マイクロウェーブ発生手段であるマイクロウェーブ発生装置を有する紫外線照射処理装置22とを備える。飲料供給装置1は、飲料水用の原水を貯留するためのリザーバ10と、原水を冷却して冷水を製造する冷水製造手段として冷却タンク12と、原水から製氷する製氷手段として製氷装置14と、氷を供給する氷供給流路40と、原水に二酸化炭素を混合して炭酸水を製造する炭酸水製造手段として炭酸水タンク16と、炭酸水を供給する炭酸水供給流路44と、原水を加熱して温水を製造する温水製造手段として温水タンク18と、温水を供給する温水供給流路48と、を備える。
【0016】
図1の飲料供給装置1において、リザーバ10の入口には、原水供給流路32がフィルタ20を介して接続されている。リザーバ10の製氷用原水出口と製氷装置14の入口とは、原水流路38により接続されている。製氷装置14の出口には、氷供給流路40が接続されている。リザーバ10の原水出口と冷却タンク12の入口とは、ポンプ24を介して原水流路34により接続されている。冷却タンク12の出口には、バルブ26を介して冷水供給流路36が接続されている。冷水供給流路36の冷水供給口(飲料水供給口)付近には、紫外線照射処理装置22が設置されている。原水流路34におけるポンプ24の後流側と炭酸水タンク16の入口とは、バルブ28を介して原水流路42により接続されている。炭酸水タンク16の出口には、炭酸水供給流路44が接続されている。原水流路34におけるポンプ24の後流側と温水タンク18の入口とは、バルブ30を介して原水流路46により接続されている。温水タンク18の出口には、温水供給流路48が接続されている。
【0017】
紫外線照射処理装置22の一例の概略構成を図2に示す。
【0018】
紫外線照射処理装置22の例えば長方体形状の筐体56には、冷水供給流路36のチューブ部60と冷水供給口(ノズル部)62とを含む先端部が挿入されている。マイクロウェーブにより紫外線発光する発光体58が冷水供給流路36の先端部(チューブ部60とノズル部62)を覆うように設置されている。発光体58は、例えば図3((a)は側面図、(b)は上面図)に示すように、ドーナツ状の円筒型の形状を有し、発光体58の内側空間に冷水供給流路36の先端部が挿入されている。こうして冷水供給流路36の先端部および発光体58の少なくとも一部は、紫外線照射処理装置22の筐体56により囲まれている。なお、冷水供給流路36のチューブ部を、ドーナツ状の円筒型の発光体の内側空間の入口部分に溶接して発光体の内側を直接通水させてもよい。この場合は、発光体の内側空間の出口部分が冷水供給口(ノズル部)として機能することになる。
【0019】
図2に示すように、紫外線照射処理装置22は、マイクロウェーブ発生手段としてマイクロウェーブ発生装置50を有し、マイクロウェーブ発生装置50が、冷水供給流路36の先端部に設置された発光体58にマイクロウェーブを照射できるように設置されている。
【0020】
本実施形態に係る飲料供給方法および飲料供給装置1の動作について説明する。
【0021】
図1に示すように、水道水等の原水は、フィルタ20により塩素等が除去され、原水供給流路32を通してリザーバ10に供給されて貯留される。リザーバ10に貯留された原水の少なくとも一部は、バルブ26が開状態、バルブ28,30が閉状態とされて、ポンプ24により原水流路34を通して冷却タンク12に供給される。冷却タンク12において、原水は、図示しない冷却装置により冷却されて、冷水供給流路36を通して、紫外線照射処理装置22により紫外線照射処理がされた(紫外線照射処理工程)後、冷水(飲料水)として冷水供給口(飲料水供給口)から図示しない飲料調理部に所定量が供給される。
【0022】
こうしてマイクロウェーブ発生装置50により発生させたマイクロウェーブを発光体58に照射して、発光体58から発光した紫外線により飲料水の紫外線照射処理を行う。紫外線照射処理では、マイクロウェーブの照射により発光体58から発光された紫外線によって、主に、冷水の細菌類の殺菌処理が行われる。
【0023】
このように、水道水等の原水を貯留するリザーバ10を設け、リザーバ10に貯留した原水を製氷、冷水、炭酸水、温水として使用するカップ式飲料自動販売機において、飲料調理部の前の冷水供給口付近に、マイクロウェーブを内部で発生し、マイクロウェーブを遮蔽する反応容器である筐体56を搭載し、筐体56の内部にマイクロウェーブによって紫外線を発光する円筒状等の発光体58と冷水を送水する冷水供給流路36の先端部(チューブ部60とノズル部62)とを設置し、発光体58からの紫外線の照射により冷水の殺菌を行う機構を備えるようにした。また、発光体58からの紫外線の照射により冷水供給流路36の先端部(チューブ部60とノズル部62)の殺菌も行うことができる。
【0024】
本実施形態に係る飲料供給方法および飲料供給装置により、飲料水等の飲料の味への影響を抑制して殺菌処理を行うことができる。冷水および冷水供給流路36の先端部(チューブ部60とノズル部62)の殺菌を行い、菌の増殖を抑制することができる。例えば飲料水を調理用または飲料用の水として使用する前に紫外線により殺菌することが可能となり、安全な飲料水等の飲料を提供することが可能となる。
【0025】
また、図4に示すように、冷水供給流路36の先端部のチューブ部60を覆うように発光体58を設置し、筐体56内の冷水を送水する冷水供給流路36のチューブ部60に紫外線を照射するとともにノズル部62の外側に紫外線とマイクロウェーブが照射されるように紫外線を発光する発光体58を設置してもよい。マイクロウェーブ発生装置50により発生させたマイクロウェーブを発光体58に照射して、発光体58から発光した紫外線により飲料水の紫外線照射処理を行うとともに、冷水供給流路36の冷水供給口(ノズル部62)の外側にマイクロウェーブと発光体58から発光した紫外線とを照射する。ノズル部62の外側に付着した水も紫外線により殺菌しながらマイクロウェーブで加熱することによって、ノズル部62を素早く乾燥させることができ、菌の増殖をより抑制することが可能となる。
【0026】
図2,4の例では、発光体58のノズル部62側の一端が筐体56内に入り、ノズル部62と反対側の他端は筐体56の外に露出するように発光体58が設置されているが、ノズル部62と反対側の他端も筐体56内に入るように発光体58が設置されてもよい。ノズル部62と反対側の他端が筐体56の外に露出するように発光体58が設置されると、流路に紫外線量を多く照射できるという利点がある。
【0027】
図1の飲料供給装置1において、炭酸水を供給する場合は、リザーバ10に貯留された原水の少なくとも一部は、バルブ28が開状態、バルブ26,30が閉状態とされて、ポンプ24により原水流路34,42を通して炭酸水タンク16に供給される。炭酸水タンク16において、図示しない炭酸ガスボンベ等から炭酸ガス(二酸化炭素ガス)が原水に供給されて、炭酸水として、炭酸水供給流路44を通して、図示しない飲料調理部に所定量が供給される。
【0028】
温水を供給する場合は、リザーバ10に貯留された原水の少なくとも一部は、バルブ30が開状態、バルブ26,28が閉状態とされて、ポンプ24により原水流路34,46を通して温水タンク18に供給される。温水タンク18において、図示しないヒータ等の加熱装置により原水が加熱されて、温水として、温水供給流路48を通して、図示しない飲料調理部に所定量が供給される。
【0029】
氷を供給する場合は、リザーバ10に貯留された原水の少なくとも一部は、原水流路38を通して製氷装置14に供給される。製氷装置14において、図示しない冷却装置により原水が冷却されて製氷され、氷として、氷供給流路40を通して、図示しない飲料調理部に所定量が供給される。
【0030】
飲料調理部では、例えば、氷、冷水、炭酸水および温水のうちの少なくとも1つに、シロップ等の飲料原液や、砂糖等の調味料とカップ内等で混合されて、ホット飲料、炭酸飲料、シロップ飲料等の各種飲料が調理され、販売される。
【0031】
図1の例では、紫外線照射処理装置22は、冷水供給流路36の冷水供給口(飲料水供給口)を含む先端部付近に設けられ、紫外線照射処理が行われている。これにより、飲料調理部への冷水(飲料水)供給直前に紫外線照射による殺菌処理が行われるため、より効果が高い。紫外線照射処理装置22の設置位置は、冷水供給流路36の供給口を含む先端部付近に限られず、水が流通する経路、装置のうちの少なくとも1つに設置されて、紫外線照射処理が行われればよい。例えば、リザーバ10、原水流路34,42,46や、冷水供給流路36の先端部以外のうちの少なくとも1つに設置されて、紫外線照射処理が行われてもよい。また、製氷装置14、原水流路38のうちの少なくとも1つに設置されて、紫外線照射処理が行われてもよい。炭酸水供給流路44はpHが低い(例えば、4〜5.5)炭酸水が通るため、また、温水供給流路48は加熱された(例えば、88℃〜98℃)温水が通るため、菌が増殖する可能性は低いが、炭酸水供給流路44および温水供給流路48のうちの少なくとも1つに設置されて、紫外線照射処理が行われてもよい。
【0032】
処理対象となる原水は、例えば、水道水、溜め水、井戸水等であり、特に制限はない。処理対象となる原水の細菌数は、例えば、100個/mL以上100,000個/mL以下である。
【0033】
マイクロウェーブ発生装置50は、マイクロウェーブ(周波数:例えば、2.450GHz±0.05GHz、5.800GHz±0.075GHz、24.125GHz±0.125GHz)を発生することができるものであればよく、その構成は特に制限はない。例えば、真空管を用いるマグネトロン方式の他に、半導体を用いるソリッドステート方式等が挙げられる。マグネトロン方式の発振器は、家庭用から業務用の電子レンジに幅広く用いられており比較的安価に入手できる利点があり、ソリッドステート方式の発振器は、寿命が比較的長く、波長の安定性が良好である等の利点がある。
【0034】
マイクロウェーブ発生装置50の構成例として、例えば、図2に示すように、電源装置52と、マイクロウェーブ発振器54と、導波管である筐体56とを備える構成が挙げられる。
【0035】
例えば、電源装置52から供給された電源により、マイクロウェーブ発振器54が発生したマイクロウェーブが、導波管である筐体56を通り、発光体58に照射される。図示しないスリースタブチューナにより、導波管である筐体56におけるインピーダンス整合を調整してもよい。マイクロウェーブ発生装置50は、筐体56の発光体58を挟んだ対抗側に短絡器(図示せず)を備えていてもよい。
【0036】
マイクロウェーブの照射は、発光体58のある1方向から行ってもよいし、2方向以上の複数方向から行ってもよい。発光体58の径が大きくなると(例えば、30cm以上)、マイクロウェーブが中心部まで到達しない場合があるので、発光体58に対して2方向以上の複数方向から照射を行うことが好ましい。
【0037】
発光体58は、マイクロウェーブにより紫外線(例えば、波長100nm〜400nmの光)発光するものであればよく、紫外線以外に可視光線(例えば、波長400nm〜780nmの光)や赤外線(例えば、波長780nm〜1mmの光)の発生有無による制限は特にない。発光体58としては、例えば、紫外線の吸収が小さい石英製やテフロン(登録商標)樹脂等のフッ素樹脂製であって、ドーナツ状の円筒形状、四角筒等の多角筒形状等の容器に、水銀ガス、水素ガス、キセノンガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、塩素ガス、フッ素ガス、重水素ガス等の、マイクロウェーブにより紫外線発光する放電ガスを所定の封入圧で封入した無電極紫外線発光体等が挙げられる。放電ガスを封入した無電極紫外線発光体に、マイクロウェーブを照射することにより、ガスが励起され、紫外線を発光する。放電ガスや封入圧を適宜選択することにより、発光波長を調整することができる。
【0038】
また、石英ガラス等のマイクロウェーブを透過する材質製の、ドーナツ状の円筒形状、多角筒形状等の充填容器を、冷水供給流路36の先端部を覆うように設置し、球形状や、円筒の両端を球状にしたカプセル形状等の容器に、水銀ガス、水素ガス、キセノンガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、塩素ガス、フッ素ガス、重水素ガス等の、マイクロウェーブにより紫外線発光する放電ガスを所定の封入圧で封入した無電極紫外線発光カプセル等を粒状の発光体として、充填容器に充填した構成のものを用いてもよい。放電ガスを封入した無電極紫外線発光カプセルに、マイクロウェーブを照射することにより、ガスが励起され、紫外線を発光する。
【0039】
発光体58がドーナツ状の円筒形状の場合、外径は、例えば、6mm〜25mmの範囲であり、内径は、例えば、4mm〜15mmの範囲であり、高さは、例えば、0mm〜100mmの範囲である。
【0040】
発光体58が粒状の発光体であり、球形状の場合、最大径は、例えば、1.0mm〜10mmの範囲であり、2.0mm〜4.0mmの範囲であることが好ましい。粒状の発光体が円筒の両端を球状にしたカプセル形状の場合、径は、例えば、1.0mm〜10mmの範囲であり、2.0mm〜4.0mmの範囲であることが好ましく、高さは、例えば、2.0mm〜20mmの範囲であり、4.0mm〜8.0mmの範囲であることが好ましい。
【0041】
発光体58の発光波長は、処理対象となる原水に含まれる細菌類の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に制限はない。細菌類の殺菌処理を主に行うには、通常、波長254±0.7nmや260±0.7nmの紫外線を発生する発光体が用いられる。なお、有機物の酸化分解処理を主に行う場合には、通常、波長185±0.1nmや220±0.1nmの紫外線を発生する発光体が用いられる。
【0042】
発光体58として、発光波長の異なる2種類以上の発光体を用いてもよい。発光波長の異なる2種類以上の発光体の使用比率は、特に制限はなく、原水の水質等に応じて、適宜変更すればよい。マイクロウェーブは水に吸収されやすいため、発光体に過剰に出力を与える場合があり、エネルギー的に損失が大きい。発光波長の異なる2種類以上の発光体を用い、その充填比率を適宜変更することにより、有機物、細菌類の両方を所定の除去率あるいは所定の処理液濃度とするために、いずれの対象に対しても適切な線量とすることができ、消費電力からみても効率的である。
【0043】
筐体56は、長方体等の多面体形状等の容器であり、マイクロウェーブを遮蔽する材質のものであればよく、特に制限はない。筐体56の材質としては、例えば、アルミ、銅等の金属等が挙げられる。上記の通り、筐体56は、マイクロウェーブの導波管としても機能する。
【0044】
紫外線照射処理が行われる部分(例えば、図1,2の例では、冷水供給流路36の先端部(チューブ部60とノズル部62))の材質は、紫外線が透過する材料であればよく、特に制限はない。例えば、石英ガラス等が挙げられる。先端部とは、例えば、冷水供給流路36等の流路の先端から100mm以下の部分のことをいう。
【0045】
フィルタ20は、原水中の塩素や固形分等を除去することができるものであればよく、特に制限はない。フィルタ20としては、例えば、活性炭フィルタ、中空糸膜等が挙げられる。
【0046】
リザーバ10は、飲料水用の原水を貯留することができるものであればよく、特に制限はない。リザーバ10には、例えば、レベルセンサが設置され、原水が所定量以下になった場合に原水が自動供給される構成としてもよい。
【0047】
冷却タンク12は、原水を冷却する冷却手段として冷却装置を備える。冷却装置としては、原水を冷却することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、冷媒を用いる冷却装置、熱交換器等が挙げられる。冷水の温度は、例えば、2℃〜10℃の範囲である。
【0048】
製氷装置14は、原水から製氷できるものであればよく、特に制限はない。製氷装置14としては、例えば、冷却された製氷室(セル)に原水を噴射しながら氷結させて製氷するセル方式、冷却された円筒の中に原水を通して氷結させ、スクリュ(オーガ)でかき上げて製氷するオーガ方式等が挙げられる。図1の例では、製氷装置14には、リザーバ10からポンプを用いずに原水が自動的に供給されているが、ポンプを用いて原水が供給されてもよい。
【0049】
温水タンク18は、原水を加熱する加熱手段として加熱装置を備える。加熱装置としては、原水を加熱することができるものであればよく、特に制限はないが、例えば、ヒータ、ヒートポンプ、熱交換器等が挙げられる。温水の温度は、例えば、88℃〜98℃の範囲である。
【0050】
炭酸水タンク16は、原水に炭酸ガス(二酸化炭素ガス)を供給して混合する、炭酸ガス供給手段を備える。例えば、炭酸ガス供給手段として炭酸ガスボンベから炭酸ガスが炭酸水タンク16内へ供給され、原水に炭酸ガスが混合される。
【0051】
本実施形態に係る飲料供給方法および飲料供給装置は、カップ式飲料自動販売機、ウォーターサーバ等の飲料水供給装置等の水流路部における殺菌処理、加熱処理等に好適に適用可能である。
【0052】
本実施形態に係る飲料供給方法および飲料供給装置により、例えば細菌数で2,000個/mL以上の原水等の原液の液質を、例えば細菌数で1個/mL以下の飲料水(処理水)等の飲料とすることができる。
【0053】
本実施形態に係る飲料供給方法および飲料供給装置において供給する飲料としては、飲料水の他に、清涼飲料や茶、コーヒー等の飲料が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1および比較例1>
実施例1では、カップ式飲料自動販売機の冷水出口(供給口)に図2に示す紫外線照射処理装置を搭載し、殺菌試験を行った。比較例1では、紫外線照射処理装置を搭載せずに、殺菌試験を行った。原水として、水道水(一般生菌数:0個/mL)を用いた。
【0056】
紫外線照射処理装置の仕様は以下の通りとした。
【0057】
[筐体]
・筐体形状:幅200mm×奥行109.22mm×高さ54.61mmの長方体
・筐体材質:アルミニウム製
【0058】
[冷水供給流路]
先端部:ノズル部を有する石英製の円筒状チューブ φ5mm
【0059】
[紫外線発光体(無電極紫外線発光体)の詳細]
・サイズ:ガス封入部 外径15mm、内径5mm×高さ(L)10mm ドーナツ状円筒型
・材質:石英ガラス
・封入ガス:水銀ガス、封入圧力10Pa
・ピーク波長:254nm
【0060】
[マイクロウェーブ発生装置]
・電源装置:300W(30〜300W可変式) 投入電力200W
・マイクロウェーブ発振器:マグネトロン
・周波数:2.45GHz
・導波管:L400mm×W200mm×H300mm、アルミニウム製
・チューナー:スリースタブ方式
【0061】
実施例1では、カップ式飲料自動販売機の飲料調理部の前の冷水供給口付近にマイクロウェーブを遮蔽する筐体(反応容器)を設置し、その中に冷水供給流路の出口の先端部(チューブ部とノズル部)とマイクロウェーブにより紫外線発光する無電極紫外線発光体を設置することで、発光体からの紫外線の照射により冷水および冷水供給流路の先端部の殺菌を行った。無電極紫外線発光体の内側の空間に、石英製の円筒状のチューブ部を差し込み、図4に示すようにノズル部は露出させて、冷水を通水できるようにした。
【0062】
マイクロウェーブ発生装置の電源装置の投入電力を、30Wに設定した。実施例1と比較例1の冷水の水質(一般生菌数)を表1に示す。一般生菌数は、標準寒天培地法(標準寒天培地(栄研化学製)を用いて36±1℃で24±2時間培養し、コロニー数を測定)で測定した。
【0063】
【表1】
【0064】
カップ式飲料自動販売機を1ヶ月稼動した後の冷水出口から得られた冷水中の一般生菌数は、比較例1の通常のカップ式飲料自動販売機が3200個/mLであったのに対して、実施例1の方法では一般生菌数が1個/mLと殺菌処理が良好に行われていることが確認できた。また、実施例1の方法では、殺菌に次亜塩素酸を用いていないため、味への影響はほとんどなかった。
【0065】
このように、実施例の方法により、飲料水の味への影響を抑制して紫外線照射処理を行うことができた。
【符号の説明】
【0066】
1 飲料供給装置、10 リザーバ、12 冷却タンク、14 製氷装置、16 炭酸水タンク、18 温水タンク、20 フィルタ、22 紫外線照射処理装置、24 ポンプ、26,28,30 バルブ、32 原水供給流路、34,38,42,46 原水流路、36 冷水供給流路、40 氷供給流路、44 炭酸水供給流路、48 温水供給流路、50 マイクロウェーブ発生装置、52 電源装置、54 マイクロウェーブ発振器、56 筐体、58 発光体、60 チューブ部、62 冷水供給口(ノズル部)。
図1
図2
図3
図4