(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836359
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】変圧器、変圧器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20210222BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20210222BHJP
H01F 27/245 20060101ALI20210222BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20210222BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
H01F30/10 F
H01F27/28 N
H01F27/245 155
H01F41/00 B
H01F27/30
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-167930(P2016-167930)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-37483(P2018-37483A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 卓彌
(72)【発明者】
【氏名】大森 茂生
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
(72)【発明者】
【氏名】陣田 圭吾
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−222453(JP,A)
【文献】
特開2016−152248(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1563259(KR,B1)
【文献】
特開平10−241978(JP,A)
【文献】
特開平06−342727(JP,A)
【文献】
実開昭61−179720(JP,U)
【文献】
特開昭62−021204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/245
H01F 27/28
H01F 27/30
H01F 41/00
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心挿入孔部を有する巻線と、
前記鉄心挿入孔部に挿入される鉄心と、
前記巻線に設けられる低圧側口出し部と、を備え、前記鉄心の3つの脚部にそれぞれ前記巻線を巻回した変圧器であって、
前記鉄心は、複数枚の鉄心材が巻回されることにより構成される巻鉄心であって、前記脚部のコーナー部に段差を有する有段差面部と前記脚部のコーナー部に段差が無い無段差平面部を前記鉄心材の積層方向に直交する方向に沿う両端部に有し、
前記巻線は、さらに高圧側口出し部を有するとともに、前記鉄心挿入孔部に巻型が備えられ、
前記高圧側口出し部は、前記有段差面部に対向する位置に配置され、
前記低圧側口出し部は、前記無段差平面部に対向する位置に配置されている変圧器。
【請求項2】
前記低圧側口出し部は、前記鉄心に対し前記巻線が巻き膨れることにより形成される空間内に収容されている請求項1に記載の変圧器。
【請求項3】
鉄心挿入孔部を有する巻線と、
前記鉄心挿入孔部に挿入される鉄心と、
前記巻線に設けられる低圧側口出し部と、を備え、
前記鉄心は、段差を有する有段差面部と段差が無い無段差平面部を有し、
前記低圧側口出し部は、前記無段差平面部に対向する位置に配置されている変圧器を製造する方法であって、
前記鉄心挿入孔部に前記鉄心を挿入する鉄心挿入行程では、前記巻線を前記低圧側口出し部を下側にした状態で配置し、この状態で、前記鉄心挿入孔部に前記鉄心を挿入する変圧器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、変圧器および変圧器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、従来の変圧器は、鉄心の脚部の全てのコーナー部に段差を有しており、このような段差を有する鉄心に巻線が巻回された構成となっている。この構成によれば、鉄心を構成する金属材料の使用量を抑えることができ、経済的な変圧器を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−6812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構成の変圧器では、鉄心の脚部のコーナー部に段差が存在しているため、当該コーナー部における巻線の巻き膨れは生じにくいものの当該巻線の曲がり径が大きくなってしまい、変圧器の大型化を招いてしまう。そのため、変圧器の小型化を図るための技術が求められている。
【0005】
そこで、本実施形態は、鉄心の脚部のコーナー部における巻線の曲がり径を小さくすることができ、小型化を図ることができる変圧器および当該変圧器の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る変圧器は、鉄心挿入孔部を有する巻線と、前記鉄心挿入孔部に挿入される鉄心と、前記巻線に設けられる低圧側口出し部と、を備え
、前記鉄心の3つの脚部にそれぞれ前記巻線を巻回した変圧器である。前記鉄心は、
複数枚の鉄心材が巻回されることにより構成される巻鉄心であって、前記脚部のコーナー部に段差を有する有段差面部と
前記脚部のコーナー部に段差が無い無段差平面部を
前記鉄心材の積層方向に直交する方向に沿う両端部に有する。
前記巻線は、さらに高圧側口出し部を有するとともに、前記鉄心挿入孔部に巻型が備えられ、前記高圧側口出し部は、前記有段差面部に対向する位置に配置され、前記低圧側口出し部は、前記無段差平面部に対向する位置に配置されている。
【0007】
本実施形態に係る変圧器の製造方法は、本実施形態に係る変圧器を製造する方法であって、前記鉄心挿入孔部に前記鉄心を挿入する鉄心挿入行程では、前記巻線を前記低圧側口出し部を下側にした状態で配置し、この状態で、前記鉄心挿入孔部に前記鉄心を挿入する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る変圧器の構成例を概略的に示す図
【
図2】本実施形態に係る変圧器の製造方法の一例を示す図(その1)
【
図3】本実施形態に係る変圧器の製造方法の一例を示す図(その2)
【
図4】本実施形態に係る変圧器の製造方法の一例を示す図(その3)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、変圧器および変圧器の製造方法に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に例示する変圧器10は、鉄心11および巻線12を備える。鉄心11は、複数枚の鉄心材が巻回されることにより構成される、いわゆる巻鉄心である。巻線12は、鉄心11の脚部に巻回される。巻線12は、その中央部に鉄心挿入孔部13を有する。鉄心11の脚部は、巻線12の鉄心挿入孔部13に挿入され、これにより、鉄心11の脚部に巻線12が巻回された変圧器10が構成される。この場合、変圧器10は、鉄心11の3つの脚部に、それぞれ巻線12を巻回した構成となっている。
【0010】
鉄心11は、脚部のコーナー部に段差を有する有段差面部11a、および、脚部のコーナー部に段差を有さない平面状の無段差平面部11bを備える。即ち、鉄心11は、脚部の全てのコーナー部に段差を有する従来構成とは異なり、一部、この場合、少なくとも2つのコーナー部において段差を有さない構成となっている。
【0011】
巻線12は、低圧側口出し部14を有する低圧側巻線、および、高圧側口出し部15を有する高圧側巻線を備える。低圧側口出し部14は、平板状に形成され、高圧側口出し部15は線状、いわゆるタップ状に形成されている。低圧側口出し部14は、帯状に延びる低圧側巻線の端部に例えば溶接などにより固定されている。高圧側口出し部15は、線状に延びる高圧側巻線の途中において、当該高圧側巻線をステム状に引き出すことにより構成されている。
【0012】
鉄心11の脚部の周囲においては、低圧側巻線が内側に巻回され、その外側に高圧側巻線が巻回されている。巻線12において、平板状の低圧側口出し部14が配置される部分は、当該低圧側口出し部14を帯状の低圧側巻線に沿わせて配置することができ、従って、平坦な状態とすることができる。一方、巻線12において、タップ状の高圧側口出し部15が配置される部分は、当該高圧側口出し部15により凹凸が形成された状態となる。
【0013】
巻線12の鉄心挿入孔部13には、巻型16が備えられる。巻型16は、巻型本体部17および絶縁部18を備える。巻型本体部17は、例えば鋼材で構成されている。巻型本体部17は、鉄心挿入孔部13の全周にわたって設けられておらず、その一部が開放された開放部17aとなっている。絶縁部18は、例えば絶縁材料で構成されている。絶縁部18は、平板状に構成されており、巻型本体部17の開放部17aを塞いでいる。鋼材からなる巻型を鉄心挿入孔部13の全周にわたって連続的に設けてしまうと、鉄心11を通る磁束により当該巻型16をループするような電流が発生する。そのため、巻型16の全てを鋼材で形成するのではなく、その一部を絶縁材料で構成することにより、巻型16に電流がループするように流れてしまうことを回避することができる。
【0014】
巻型本体部17の2つのコーナー部、この場合、開放部17aとは反対側の2つのコーナー部は、ほぼ直角に折り曲げられており、これにより、これらコーナー部の曲がり径が、他のコーナー部、つまり、開放部17a側の2つのコーナー部の曲がり径よりも小さくなっている。これにより、巻型16は、コーナー部の曲がり径が大きく、円弧状に形成された円弧状面部16a、および、コーナー部の曲がり径が小さく、段差を有さない平面状の無段差平面部16bを有する。このように構成される巻型16は、上部がドーム状、下部が矩形状となり、従って、この巻型16に巻回される巻線12の鉄心挿入孔部13も、上部がドーム状、下部が矩形状となる。
【0015】
そして、変圧器10において、高圧側口出し部15は、鉄心11の有段差面部11aおよび巻型16の円弧状面部16aに対向する位置に配置されている。一方、低圧側口出し部14は、鉄心11の無段差平面部11bおよび巻型16の無段差平面部16bに対向する位置に配置されている。変圧器10の周囲において、鉄心11の無段差平面部11bを構成する2つのコーナー部および巻型16の無段差平面部16bを構成する2つのコーナー部は、何れもほぼ直角になっている。従って、このようなほぼ直角なコーナー部の周辺においては、巻線12をコーナー部に沿ってほぼ直角に曲げることが困難であり、鉄心11および巻型16に対し巻線12が巻き膨れることにより空間が形成される。そこで、本実施形態に係る変圧器10では、このように巻線12の巻き膨れにより形成される空間内に低圧側口出し部14を収容している。
【0016】
次に、変圧器10の製造方法の一例について説明する。
図2に例示するように、まず、巻線12の巻回行程では、巻型16の周囲に巻線12を巻回する。このとき、まず、巻型16の周囲に低圧側巻線を巻回し、続いて、その外側に高圧側巻線を巻回していく。また、高圧側巻線を巻回する際には、高圧側口出し部15を低圧側口出し部14とは反対側の部位に配置する。次に、
図3に例示するように、巻線12の鉄心挿入孔部13に鉄心11の脚部を挿入する鉄心挿入行程では、巻線12を、低圧側口出し部14を下側にした状態で、平坦な鉄心挿入台100の上に配置する。そして、例えば鋼材からなる板状の鉄心挿入用の治具101を巻型16の無段差平面部16bの高さに合わせて配置する。これにより、鉄心挿入用の治具101と巻型16の無段差平面部16bとからなる面一な平面が形成される。このとき、巻型16の無段差平面部16bが段差の無い平面状であることから、当該無段差平面部16bの高さに、板状の鉄心挿入用の治具101を合わせる調整作業を容易に行うことができる。
【0017】
そして、
図4に例示するように、この状態で、鉄心挿入用の治具101および巻型16の無段差平面部16bからなる面一な平面上を滑らせるようにして、鉄心11を構成する鉄心材を鉄心挿入孔部13内に挿入していく。これにより、
図1に例示する変圧器10、即ち、巻線12の鉄心挿入孔部13に鉄心11の脚部が挿入された変圧器10が製造される。
【0018】
本実施形態に係る変圧器10によれば、鉄心11は、段差が無い平面状の無段差平面部11bを有しており、巻線12の低圧側口出し部14は、鉄心11の無段差平面部11bに対向する位置に配置されている。この構成によれば、少なくとも、鉄心11の無段差平面部11b側のコーナー部における巻線12の曲がり径を小さくすることができ、特に鉄心11の無段差平面部11b側において変圧器10の小型化を図ることができる。
【0019】
また、変圧器10によれば、鉄心11の無段差平面部11b側のコーナー部における巻線12の曲がり径が小さくなることに伴い、鉄心11の無段差平面部11bに対向する部位において巻線12の巻き膨れが生じやすくなる。そのため、鉄心11の無段差平面部11bに対向する部位、つまり、巻線12の巻き膨れにより形成される空間内に低圧側口出し部14を収容するようにした。これにより、巻線12の巻き膨れに伴い形成される空間を利用して低圧側口出し部14を配置することができ、低圧側口出し部14を配置するためのスペースを特別に設ける必要が無く、変圧器10の小型化を図ることができる。
【0020】
また、本実施形態に係る変圧器10の製造方法によれば、鉄心11を構成する鉄心材を鉄心挿入孔部13に挿入する鉄心挿入行程において、巻線12を、低圧側口出し部14を下側にした状態で配置し、この状態で、鉄心11を構成する鉄心材を鉄心挿入孔部13に挿入する。即ち、巻線12において低圧側口出し部14が配置される部位は、巻型16の無段差平面部16bつまり段差を有さない平坦な部分に対向する部位であり、また、低圧側口出し部14が平坦であることから、当該低圧側口出し部14が配置される巻線12の部位も平坦となる。よって、巻線12および巻型16の平坦な部位を下側にした状態で、鉄心11を構成する鉄心材を平坦面上で滑らせるようにして挿入することができ、鉄心11の鉄心材の挿入作業の作業性を向上することができる。また、巻型16の無段差平面部16bは、鋼材からなる巻型本体部17で構成されているので、挿入される鉄心11の鉄心材が滑りやすく、従って、鉄心材の挿入作業の作業性を一層向上することができる。
【0021】
また、本実施形態に係る変圧器10の製造方法によれば、鉄心11の無段差平面部11b側には段差を設ける必要が無いので、段差を設けるための治具を不要とすることができ、組立性の向上を図ることができる。また、巻型16の無段差平面部16bが段差の無い平面状であることから、当該無段差平面部16bの上面に鉄心材を配置することで、鉄心11の無段差平面部11bを形成することができ、無段差平面部11bを有する鉄心11を容易に形成することができる。
【0022】
なお、本実施形態は、上述した一実施形態に限られるものではなく、例えば、次のように拡張または変更することができる。例えば、鉄心11は、脚部の全てのコーナー部について段差を有さない構成としてもよい。また、鉄心挿入用の治具101は、巻型16に巻回された巻線12が挿入される孔部を有する1枚の板から構成してもよいし、巻型16に巻回された巻線12を、鉄心挿入孔部13の貫通方向の両側から挟む2枚の板から構成してもよい。
【0023】
本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
図面中、10は変圧器、11は鉄心、11bは無段差平面部、12は巻線、13は鉄心挿入孔部、14は低圧側口出し部を示す。