(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
以下の工程(1)及び(2)を含む、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、(b)有機酸、(c)リン酸三ナトリウムを含有する口腔内発泡製剤の製造方法であって、工程(1)において、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料、又は有機酸を含む粉体原料の少なくとも一方にリン酸三ナトリウムを添加する、方法。
(1)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料と、有機酸を含む粉体原料をそれぞれ別々に調製する工程
(2)工程(1)においてそれぞれ調製された粉体原料を合わせて混合する工程
炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、及び有機酸を含有する口腔内発泡製剤において、リン酸三ナトリウムを配合する工程を含む、当該口腔内発泡製剤の安定化方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の口腔内発泡製剤は、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、(b)有機酸及び(c)リン酸三ナトリウムを含有し、口腔内において炭酸ガスを発生して溶解する製剤である。
上記各成分を含む本発明の口腔内発泡製剤は、顆粒のような造粒物の形態であってもよく、造粒されていない粉末の形態であってもよい。また、当該粉末又は造粒物を打錠して調製される錠剤であってもよい。具体的には、口腔内崩壊錠、チュアブル錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠等の錠剤、顆粒剤、散剤等の形態が挙げられる。
【0012】
(a)成分の「炭酸塩及び重炭酸塩」は、有機酸による中和により、炭酸ガスを発生させる成分である。
炭酸塩及び重炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム等が挙げられ、このうち炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
口腔内発泡製剤中の炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上の含有量は、炭酸ガス発生量、風味の点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、且つ好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。また、好ましくは4〜35質量%であり、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは15〜25質量%である。
【0014】
(b)成分の「有機酸」は、炭酸塩を中和し、炭酸ガスを発生させるための成分である。
有機酸としては、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、等が挙げられ、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸が好ましい。
【0015】
口腔内発泡製剤中の有機酸の含有量は、発泡量と風味の点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、且つ風味の点から好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。また、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは8〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%である。
【0016】
また、口腔内発泡製剤中の(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上と(b)有機酸の含有量は、十分な発泡量を得る点から、成分(a)と成分(b)の合計で、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、且つ良好な打錠性、成形性を確保する点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。また、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜50質量%、更に好ましくは30〜45質量%である。
【0017】
また、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上と(b)有機酸の含有比率は、錠剤発泡の観点から、当量比で(a)成分を1とした場合に、(b)成分は1以上であるのが好ましく、より好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上であり、風味の観点から5以下が好ましく、より好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。また、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上:(b)有機酸(当量比)は、好ましくは1:1〜1:5、より好ましくは1:1.1〜1:3、より好ましくは1:1.2〜1:2である。
【0018】
本発明の口腔内発泡製剤には、安定化剤として、(c)リン酸三ナトリウム(Na
3PO
4)を含む。
リン酸三ナトリウムは、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上と(b)有機酸の合計量に対して、リン酸(PO
4)換算で、保存安定性の点から、好ましくは0.8質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、且つ風味の点から、好ましくは12質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。また、好ましくは0.8〜12質量%であり、より好ましくは1.0〜6質量%、更に好ましくは1.5〜3質量%である。
【0019】
また、リン酸三ナトリウムは、(b)有機酸に対して、リン酸(PO
4)換算で、保存安定性の点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、且つ風味の点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。また、好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは4〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である。
【0020】
また、本発明の口腔内発泡製剤は、25質量%水溶液のpHが、口腔粘膜や歯への刺激の点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5.5以上であり、且つ風味の点から、好ましくは7以下である。また、好ましくはpH2〜7であり、より好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH4〜7、更に好ましくはpH5.5〜7である。
【0021】
後記実施例に示すとおり、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、及び有機酸を含有する口腔内発泡製剤において、リン酸三ナトリウムを添加することにより、アミルピロー包装中50℃で1ヶ月保存した場合でも、当該容器の膨張は認められない(実施例1、表1)。一方、同じリン酸塩であってもリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムでは、同一の条件では安定化効果が殆ど得られない(比較例1〜9、表1)。
斯様に、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、及び有機酸を含有する口腔内発泡製剤において、リン酸三ナトリウムを配合することが極めて有効であり、当該口腔内発泡製剤の高温環境下で長期間の安定化を図ることができる。
すなわち、リン酸三ナトリウムは、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、及び有機酸を含有する口腔内発泡製剤における安定化剤として使用することができる。
【0022】
本発明の口腔内発泡製剤は、上記(a)成分、(b)成分及び(c)成分に加え、製剤添加剤である賦形剤を含むことができ、これにより、本発明の口腔内発泡製剤を、散剤、顆粒剤又は錠剤にした場合の当該固形製剤の分散性、成型性及び崩壊性をさらに向上させることが可能となる。
賦形剤としては、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース、イソマルト等の糖アルコール類;乳糖水和物、果糖、ショ糖、ブドウ糖、トレハロース等の糖類;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、タピオカデンプン等のデンプン類;グリシン、アラニンなどのアミノ酸類;軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等のケイ酸類;結晶セルロース、粉末セルロース等のセルロース類;タルク;酸化チタン等が挙げられる。賦形剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を用いてもよい。
【0023】
また、本発明の口腔内発泡製剤は、他の添加剤として、滑沢剤、結合剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、香料、防腐剤等の医薬品やサプリメントに一般的に使用される添加剤を、1種又は2種以上を適量含むことができる。
ここで、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の口腔内発泡製剤は、薬効成分を含むことができる。薬効成分は、本発明製剤の分散性、崩壊性、成型性等の損なわない種類及び量であれば良く、特に限定されない。
【0025】
本発明の、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、(b)有機酸及び(c)リン酸三ナトリウムを含有する口腔内発泡製剤は、以下の工程(1)及び(2)を含む方法であって、工程(1)において、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料、又は有機酸を含む粉体原料の少なくとも一方にリン酸三ナトリウムを添加することにより、製造することができる。
(1)酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料と、有機酸を含む粉体原料をそれぞれ別々に調製する工程
(2)工程(1)においてそれぞれ調製された粉体原料を合わせて混合する工程
すなわち、本発明の口腔内発泡製剤は、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料と、有機酸を含む粉体原料を別々に調製して、その少なくとも一方にリン酸三ナトリウムを添加した上で、両者を合わせて混合することにより製造される。
炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、有機酸及びリン酸三ナトリウムが同時に接触しない方法を採用することにより、リン酸三ナトリウムによる安定化効果が効果的に発揮できる(表5、実施例6、比較例15)。
【0026】
工程1は、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上と(b)有機酸について、それぞれ別々に粉体原料を調製する工程である。
粉体原料は、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上と(b)有機酸をそれぞれ単体で用いることもできるが、賦形剤等の製剤添加物を適宜添加して調製するのが好ましい。ここで、製剤添加物としては、上述した賦形剤、滑沢剤、甘味料等が挙げられる。
そして、本発明においては、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料、又は有機酸を含む粉体原料の少なくとも一方、すなわち何れか一方又は両方に、リン酸三ナトリウムが添加され、調製される。
調製は、当該分野で公知の混合、撹拌方法により、公知の装置等を利用して行うことができる。この際の混合は、湿潤又は加湿することなく行うことが好ましい。
【0027】
上記の粉体原料は、造粒されていない粉末の形態であってもよいが、顆粒のような造粒物の形態であってもよい。この場合、リン酸三ナトリウムを含む粉体原料を造粒物とするのが好ましい。造粒物を得るための造粒処理としては、乾式法と湿式法とに大別されるが、湿式法が好ましい。湿式法は、各成分を溶媒と練合し、次いでこれを造粒する処理であり、必要に応じて、一般的な製剤の製造に用いられる方法や装置を使用することができる。また、この処理で用いられる溶媒として、一般的な製剤の製造に用いられるエタノール、イソプロパノール等のアルコール類や水を溶媒として使用することができる。
造粒法としては、例えば、押出造粒法、転動造粒法、解砕造粒法、流動層造粒法、噴霧造粒法、破砕造粒法等が挙げられる。この中では造粒して出来上がった顆粒の溶解特性や打錠特性の観点から流動層造粒法が好ましい。流動層造粒法は、各成分を溶媒、又は溶媒と結合剤との混合液等を噴霧しながら造粒する処理であり、必要に応じて、一般的な製剤の製造に用いられる方法や装置を使用することができる。
【0028】
工程2では、工程1で別々に調製された、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料と、有機酸を含む粉体原料が、少なくとも一方にリン酸三ナトリウムが含まれるような態様で、合体され混合される。
【0029】
本工程においても、適宜、滑沢剤、着色剤、甘味剤、香料、防腐剤等の添加剤を適量添加することができる。尚、造粒物又はそれを用いた錠剤を製造する場合には、甘味剤、香料については、風味の低下防止の観点から、本工程において添加するのが好ましい。
【0030】
また、本発明の口腔内発泡製剤が錠剤である場合、打錠には、造粒された粉体原料の混合物を打錠する場合(湿式顆粒圧縮法)と、造粒されていない粉体原料の混合物を直打により打錠する場合(直接粉末圧縮法)が包含されるが、工程の簡便性から、直接粉末圧縮法を用いるのが好ましい。何れの場合も、粉体原料に、必要に応じて、結合剤、崩壊剤等のその他の成分を添加して混合し、圧縮成型すればよい。
【0031】
ここで、結合剤としては、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒプロメロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、結晶セルロース、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、プルラン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。中でも、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
【0032】
また、崩壊剤としては、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。
【0033】
圧縮成型には、ロータリー式打錠機、単発打錠機等の一般に錠剤の成型に使用される方法や装置を使用することができる。
尚、造粒物を用いる場合は、上記圧縮成型に先立ち、造粒物を、流動層乾燥機、棚式乾燥装置等を用いた乾燥、スクリーンミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル等を用いた整粒、振動ふるいを用いた篩過等の錠剤の製造に必要な操作に付してもよい。
【0034】
本発明の口腔内発泡製剤は、防湿性材料で形成された包装体に密封し、包装体外部からの水分浸入を抑制可能に包装して発泡性口腔用製品(医薬品、食品、サプリメント等)とすることが望ましい。ここで、防湿性材料としては、例えばポリ塩化ビニリデン単層、ポリ塩化ビニリデンを含む多層材料、アルミ箔を含む多層材料、シリカ蒸着、又はアルミ蒸着した単層若しくは多層材料等が挙げられる。中でもアルミ箔を含む多層材料が好ましい。また、包装形態としては、例えば、SP包装、PTP包装、ピロー包装、スティック包装等が挙げられ、これらを複数組み合わせてもよい。
【0035】
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>以下の工程(1)及び(2)を含む、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、(b)有機酸、(c)リン酸三ナトリウムを含有する口腔内発泡製剤の製造方法であって、工程(1)において、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料、又は有機酸を含む粉体原料の少なくとも一方にリン酸三ナトリウムを添加する、方法。
(1)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上を含む粉体原料と、有機酸を含む粉体原料をそれぞれ別々に調製する工程
(2)工程(1)においてそれぞれ調製された粉体原料を合わせて混合する工程
<2>工程(1)の粉体原料の調製が造粒処理を含む、<1>記載の方法。
<3>さらに、工程(2)で得られた混合物を、打錠成型する工程を含む、<1>又は<2>記載の方法。
<4>(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、(b)有機酸、及び(c)リン酸三ナトリウムを含有する口腔内発泡製剤であって、(c)リン酸三ナトリウムを、(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、及び(b)有機酸の混合物に対してリン酸換算で0.8〜12質量%含有する口腔内発泡製剤。
<5>口腔内発泡製剤の25質量%水溶液のpHが、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5.5以上であり、且つ好ましくは7以下であるか、又は好ましくはpH2〜7であり、より好ましくはpH3〜7、より好ましくはpH4〜7、更に好ましくはpH5.5〜7である<4>記載の口腔内発泡製剤。
<6>(c)リン酸三ナトリウムの含有量が、(b)有機酸に対して、リン酸(PO
4)換算で、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、且つ好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であるか、又は好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは4〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%である<4>又は<5>記載の口腔内発泡製剤。
<7>(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上と(b)有機酸の含有比率(当量比)は、好ましくは1:1〜1:5、より好ましくは1:1.1〜1:3、より好ましくは1:1.2〜1:2である<4>〜<6>のいずれかに記載の口腔内発泡製剤。
<8>(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上及び(b)有機酸の含有量が、合計で、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、且つ好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下であるか、又は好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは25〜50質量%、更に好ましくは30〜45質量%である<4>〜<7>のいずれかに記載の口腔内発泡製剤。
<9>(a)炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上が、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カルシウムである<4>〜<8>のいずれかに記載の口腔内発泡製剤。
<10>(b)有機酸が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸又はアスコルビン酸である<4>〜<9>のいずれかに記載の口腔内発泡製剤。
<11>炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、及び有機酸を含有する口腔内発泡製剤において、リン酸三ナトリウムを配合する工程を含む、当該口腔内発泡製剤の安定化方法。
<12>リン酸三ナトリウムを有効成分とする、炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上、及び有機酸を含有する口腔内発泡製剤の安定化剤。
【0036】
<13>製剤中の炭酸塩及び重炭酸塩から選ばれる1種以上の含有量が、好ましくは4質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、且つ好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下であるか、又は、好ましくは4〜35質量%であり、より好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは15〜25質量%である、<4>記載の口腔内発泡製剤。
<14>製剤中の有機酸の含有量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、且つ風味の点から好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であるか、又は好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは8〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%である、<4>記載の口腔内発泡製剤。
<15>口腔内崩壊錠、チュアブル錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠から選ばれる錠剤である、<4>〜<10>のいずれかに記載の口腔内発泡製剤。
<16>顆粒剤又は散剤である、<4>〜<10>のいずれかに記載の口腔内発泡製剤。
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0038】
<評価方法>
(1)保存安定性(容器の膨張)
試験製剤をアルミピロー(サイズ:縦85mm×横150mm シール幅:10mm層構成:PET12μm/PE15μm/AL7μm/PE20μm/PE60μm)に密閉封入し、50℃、50%に設定した恒温恒湿槽(プラチナスK エスペック社製)に保管しアルミピローの膨張を最大30日間観察した。アルミピローの初期厚みから厚みが1mm以上変化したものを膨張と定義し、膨張がない日数を記録した。アルミピローの厚みはダイヤルゲージを用いて測定した。
また、重曹の充填量2.5gは計算値で約600ccの炭酸ガス発生量に対し、アルミピローの充填容量は約120ccのため少しでも反応が進行し発泡すると容器が容易に膨張し、反応が進行すると最終的に容器が破裂する充填量とした。膨張しない日数が長い程、保存安定性が良好で好ましい。
【0039】
(2)発泡量
コック栓付きの出入口が2か所以上存在するフラスコ等の密閉容器とイオン交換水が入った水槽、回収容器を用意した。試験製剤4.5gを密閉容器内にいれ、イオン交換水13.5gを一方のコックから注入した。注入後、イオン交換水を投入したコックを締め、他方の出口に取り付けたガラス管を水温20±1℃のイオン交換水が入った水槽に入れた後、コックを解放し、密閉容器内に発生したガスを水上置換法により回収容器に回収した。試験製剤が完全に溶解するまでガスを回収した。回収容器には容量300mLのメスシリンダーを用い、メスシリンダー内に置換されたガスの容量をメスシリンダーのメモリから読み取り、試験製剤の発泡量とした。測定した発泡量は炭酸塩の重量で除すことで重曹1g当りの発泡量として表した。保存前と50℃30日保存後の発泡量を測定することで、保存中の反応の有無を確認した。保存前の発泡量と保存後の発泡量の差が小さい程保存安定性が高い。
【0040】
(3)pH
試験製剤4.5gを精製水13.5gに溶解(25質量%水溶液)し、コンパクトpHメータB−712(株式会社堀場製作所製)を用いてpHを測定した。なお、試験製剤を溶解させる水とは精製水であって、蒸留水又はイオン交換水をも含む意味である。
【0041】
(4)風味
比較例、実施例に記載の口中炭酸発泡製剤を専門パネル1名が以下の判断基準に従い評価した。
<苦味>5:強い、4:やや強い、3:やや弱い、2:弱い、1:ほとんど感じない
<酸味>5:強い、4:やや強い、3:やや弱い、2:弱い、1:ほとんど感じない
【0042】
実施例1 口腔内発泡製剤(粉末)の製造
炭酸水素ナトリウム2.5gとマルチトール10gを秤量後、これら原料をビニール袋に投入、混合し、混合原料(1)を得た。一方、これとは別にクエン酸1.9gとリン酸三ナトリウム0.07gを秤量後、ビニール袋に投入、混合して混合原料(2)を得た。次に、混合原料(1)に混合原料(2)を投入、混合し、粉末状の口腔内発泡製剤を得た。得られた製剤全量をアルミピローに封入した。
【0043】
比較例1
炭酸水素ナトリウム2.5gとマルチトール10g、クエン酸1.9gを秤量後、ビニール袋に投入、混合し、粉末状の口腔内発泡製剤を得た。得られた製剤全量をアルミピローに封入した。
【0044】
比較例2〜9
炭酸水素ナトリウム2.5gとマルチトール10gを秤量後、ビニール袋に投入、混合し、混合原料(1)を得た。一方、これとは別にクエン酸1.9gと表1に示す種類のリン酸塩を表1に示す配合量にて秤量後、ビニール袋に投入、混合して混合原料(2)を得た。次に混合原料(1)に混合原料(2)を投入、混合し、粉末状の口腔内発泡製剤を得た。得られた製剤はアルミピローに封入した。
【0045】
表1より、リン酸塩の中でもリン酸三ナトリウムを配合した場合にのみ、50℃で保存した場合の容器が膨張しない日数が30日を超え、保存中の体積増加が少なく保存安定性が特に高いことが示された。
【0046】
実施例2〜5 口腔内発泡製剤(粉末)の製造
リン酸三ナトリウムの配合量を表2に示す配合量に変更した以外は実施例1と同様の方法で粉末状の口腔内発泡製剤を製造した。
【0047】
比較例10〜12
リン酸三ナトリウムの配合量を表2に示す配合量に変更した以外は実施例1と同様の方法で粉末状の口腔内発泡製剤を製造した。
【0048】
表1(実施例1)及び表2より、保存安定性の効果を発現するためには、(c)リン酸三ナトリウムの配合量が、(a)炭酸塩および(b)有機酸の混合物に対してリン酸換算で、0.8%以上である場合に良好であり、また、風味の観点からリン酸三ナトリウムの配合量を増加すると苦みが強くなることから、12%以下が良好であると考えられた。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例6 口腔内発泡製剤(錠剤)の製造
炭酸水素ナトリウム17.04gと、エリスリトール35.00g及びマルチトール22.60gを秤量後、ビニール袋内で混合し、混合原料(1)を得た。一方、これとは別にクエン酸12.96gとリン酸三ナトリウム3.00gを秤量後、ビニール袋に投入、混合し、混合原料(2)を得た。次に、混合原料(1)に、アスパルテーム0.4gと微細セルロース5.00g、微粒二酸化ケイ素1.00g、ステアリン酸カルシウム3.00gと、混合原料(2)を投入し、混合し、混合原料(3)を得た。
混合原料(3)を、ロータリー打錠機を用いて、1錠900mg、直径13mmの円柱状に圧縮成形し、錠剤の口腔内発泡製剤を得た。得られた製剤15gをアルミピローに封入した。
【0052】
比較例13
リン酸三ナトリウムを添加しない他は実施例6と同様の方法で口腔内発泡製剤を製造した。
【0053】
実施例7 口腔内発泡製剤(顆粒剤)の製造
炭酸水素ナトリウム17.04gと、エリスリトール35.00g、マルチトール22.60gを秤量後、ビニール袋内で混合し、混合原料(1)を得た。流動層造粒機(フロイント社製FLO−5M)に混合原料(1)を投入し、吹き込み温度83℃、風量2m3/min、噴霧液温度23℃、噴霧速度50mL/min、噴霧時間25.0minの条件で水道水を噴霧し造粒した後、排気温度が50℃となるまで乾燥を行い、顆粒剤を調製した。一方、これとは別にクエン酸12.96gとリン酸三ナトリウム3.00gを秤量後、ビニール袋内で混合し、混合原料(2)を得た。次に、(1)で得られた造粒物(顆粒)にアスパルテーム0.4gと混合原料(2)を投入、混合し、顆粒状の口腔内発泡製剤を得た。得られた製剤15gをアルミピローに封入した。
【0054】
比較例14
リン酸三ナトリウムを添加しない他は実施例7と同様の方法で口腔内発泡製剤を製造した。
【0055】
表3より、リン酸三ナトリウムを配合した製剤のみ、50℃で保存した場合の容器が膨張しない日数が30日を超え、保存中の体積増加が少なく保存安定性が特に高いことが示された。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例8〜13 口腔内発泡製剤(粉末)の製造
クエン酸とリン酸三ナトリウムの配合量を表4に示す量に変更した以外は実施例1と同様の方法で口腔内発泡製剤を製造した。
【0058】
表4より、保存前の発泡量と風味の結果から、酸の配合比率が多い程、発泡量が多く、有機酸/炭酸塩の含有比率(当量比)で1以上がよいと考えられた。
また、pHと風味の結果から、pHが2〜7が好ましいと考えられた。
【0059】
【表4】
【0060】
比較例15 口腔内発泡製剤(錠剤)の製造
炭酸水素ナトリウム17.04g、エリスリトール35.00g、マルチトール22.60g、クエン酸12.96g、リン酸三ナトリウム3g、アスパルテーム0.4g、微細セルロース5.00g、微粒二酸化ケイ素1.00g、ステアリン酸カルシウム3.00gをビニール袋に投入、混合し、混合原料を得た。次いで、当該混合原料を、ロータリー打錠機を用いて、1錠900mg、直径13mmの円柱状に圧縮成形し、錠剤の口腔内発泡製剤を得た。得られた製剤15gをアルミピローに封入した。
表5より、成分(a)を含む混合物と、成分(b)と成分(c)を含む混合物を別々に調製した後、両者を合わせ、打錠する方法により製造された錠剤は、成分(a)、(b)及び(c)を含む混合物を打錠する方法で製造された錠剤に比べて、保存後の発泡量の減少が少なく、保存安定性が特に良好であることが示された。
【0061】
【表5】