(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
[HMDシステムの構成]
【0010】
図1を参照して、HMD(Head Mount Display:ヘッドマウントディスプレイ)システム100の構成について説明する。
図1は、ある実施の形態に従うHMDシステム100の構成の概略を表す図である。ある局面において、HMDシステム100は、家庭用のシステムとしてあるいは業務用のシステムとして提供される。
【0011】
HMDシステム100は、HMD装置110と、HMDセンサ120と、コントローラ160と、コンピュータ200とを備える。HMD装置110は、モニタ112と、注視センサ140とを含む。コントローラ160は、モーションセンサ130を含み得る。
【0012】
ある局面において、コンピュータ200は、インターネットその他のネットワーク19に接続可能であり、ネットワーク19に接続されているサーバ150その他のコンピュータと通信可能である。別の局面において、HMD装置110は、HMDセンサ120の代わりに、センサ114を含み得る。
【0013】
HMD装置110は、ユーザの頭部に装着され、動作中に仮想空間をユーザに提供し得る。より具体的には、HMD装置110は、右目用の画像および左目用の画像をモニタ112にそれぞれ表示する。ユーザの各目がそれぞれの画像を視認すると、ユーザは、両目の視差に基づき当該画像を3次元の画像として認識し得る。
【0014】
モニタ112は、例えば、非透過型の表示装置として実現される。ある局面において、モニタ112は、ユーザの両目の前方に位置するようにHMD装置110の本体に配置されている。したがって、ユーザは、モニタ112に表示される3次元画像を視認すると、仮想空間に没入することができる。ある実施の形態において、仮想空間は、例えば、背景、ユーザが操作可能なオブジェクト、およびユーザが選択可能なメニューの画像等を含む。ある実施の形態において、モニタ112は、所謂スマートフォンその他の情報表示端末が備える液晶モニタまたは有機EL(Electro Luminescence)モニタとして実現され得る。
【0015】
ある局面において、モニタ112は、右目用の画像を表示するためのサブモニタと、左目用の画像を表示するためのサブモニタとを含み得る。別の局面において、モニタ112は、右目用の画像と左目用の画像とを一体として表示する構成であってもよい。この場合、モニタ112は、高速シャッタを含む。高速シャッタは、画像がいずれか一方の目にのみ認識されるように、右目用の画像と左目用の画像とを交互に表示可能に作動する。
【0016】
HMDセンサ120は、複数の光源(図示しない)を含む。各光源は例えば、赤外線を発するLED(Light Emitting Diode)により実現される。HMDセンサ120は、HMD装置110の動きを検出するためのポジショントラッキング機能を有する。HMDセンサ120は、この機能を用いて、現実空間内におけるHMD装置110の位置および傾きを検出する。
【0017】
なお、別の局面において、HMDセンサ120は、カメラにより実現されてもよい。この場合、HMDセンサ120は、カメラから出力されるHMD装置110の画像情報を用いて、画像解析処理を実行することにより、HMD装置110の位置および傾きを検出することができる。
【0018】
別の局面において、HMD装置110は、位置検出器として、HMDセンサ120の代わりに、センサ114を備えてもよい。HMD装置110は、センサ114を用いて、HMD装置110自身の位置および傾きを検出し得る。例えば、センサ114が角速度センサ、地磁気センサ、加速度センサ、あるいはジャイロセンサ等である場合、HMD装置110は、HMDセンサ120の代わりに、これらの各センサのいずれかを用いて、自身の位置および傾きを検出し得る。一例として、センサ114が角速度センサである場合、角速度センサは、現実空間におけるHMD装置110の3軸周りの角速度を経時的に検出する。HMD装置110は、各角速度に基づいて、HMD装置110の3軸周りの角度の時間的変化を算出し、さらに、角度の時間的変化に基づいて、HMD装置110の傾きを算出する。また、HMD装置110は、透過型表示装置を備えていても良い。この場合、当該透過型表示装置は、その透過率を調整することにより、一時的に非透過型の表示装置として構成可能であってもよい。また、視界画像は仮想空間を構成する画像の一部に、現実空間を提示する構成を含んでいてもよい。例えば、HMD装置110に搭載されたカメラで撮影した画像を視界画像の一部に重畳して表示させてもよいし、当該透過型表示装置の一部の透過率を高く設定することにより、視界画像の一部から現実空間を視認可能にしてもよい。
【0019】
注視センサ140は、ユーザ190の右目および左目の視線が向けられる方向(視線方向)を検出する。当該方向の検出は、例えば、公知のアイトラッキング機能によって実現される。注視センサ140は、当該アイトラッキング機能を有するセンサにより実現される。ある局面において、注視センサ140は、右目用のセンサおよび左目用のセンサを含むことが好ましい。注視センサ140は、例えば、ユーザ190の右目および左目に赤外光を照射するとともに、照射光に対する角膜および虹彩からの反射光を受けることにより各眼球の回転角を検出するセンサであってもよい。注視センサ140は、検出した各回転角に基づいて、ユーザ190の視線方向を検出することができる。
【0020】
サーバ150は、コンピュータ200にプログラムを送信し得る。別の局面において、サーバ150は、他のユーザによって使用されるHMD装置に仮想現実を提供するための他のコンピュータ200と通信し得る。例えば、アミューズメント施設において、複数のユーザが参加型のゲームを行う場合、各コンピュータ200は、各ユーザの動作に基づく信号を他のコンピュータ200と通信して、同じ仮想空間において複数のユーザが共通のゲームやチャットを楽しむことを可能にする。
【0021】
コントローラ160は、ユーザ190からコンピュータ200への命令の入力を受け付ける。ある局面において、コントローラ160は、ユーザ190によって把持可能に構成される。別の局面において、コントローラ160は、ユーザ190の身体あるいは衣類の一部に装着可能に構成される。別の局面において、コントローラ160は、コンピュータ200から送られる信号に基づいて、振動、音、光のうちの少なくともいずれかを出力するように構成されてもよい。別の局面において、コントローラ160は、仮想現実を提供する空間に配置されるオブジェクトの位置および動き等を制御するためにユーザ190によって与えられる操作を受け付ける。
【0022】
モーションセンサ130は、ある局面において、ユーザの手に取り付けられて、ユーザの手の動きを検出する。例えば、モーションセンサ130は、手の回転速度、回転数等を検出する。検出された信号は、コンピュータ200に送られる。モーションセンサ130は、例えば、手袋型のコントローラ160に設けられている。ある実施の形態において、現実空間における安全のため、コントローラ160は、手袋型のようにユーザ190の手に装着されることにより容易に飛んで行かないものに装着されるのが望ましい。別の局面において、ユーザ190に装着されないセンサがユーザ190の手の動きを検出してもよい。例えば、ユーザ190を撮影するカメラの信号が、ユーザ190の動作を表す信号として、コンピュータ200に入力されてもよい。モーションセンサ130とコンピュータ200とは、有線により、または無線により互いに接続される。無線の場合、通信形態は特に限られず、例えば、Bluetooth(登録商標)その他の公知の通信手法が用いられる。
[ハードウェア構成]
【0023】
図2を参照して、本実施の形態に係るコンピュータ200について説明する。
図2は、一局面に従うコンピュータ200のハードウェア構成の一例を表すブロック図である。コンピュータ200は、主たる構成要素として、プロセッサ10と、メモリ11と、ストレージ12と、入出力インターフェース13と、通信インターフェース14とを備える。各構成要素は、それぞれ、バス15に接続されている。
【0024】
プロセッサ10は、コンピュータ200に与えられる信号に基づいて、あるいは、予め定められた条件が成立したことに基づいて、メモリ11またはストレージ12に格納されているプログラムに含まれる一連の命令を実行する。ある局面において、プロセッサ10は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)その他のデバイスとして実現される。
【0025】
メモリ11は、プログラムおよびデータを一時的に保存する。プログラムは、例えば、ストレージ12からロードされる。メモリ11に保存されるデータは、コンピュータ200に入力されたデータと、プロセッサ10によって生成されたデータとを含む。ある局面において、メモリ11は、RAM(Random Access Memory)その他の揮発性メモリとして実現される。
【0026】
ストレージ12は、プログラムおよびデータを永続的に保持する。ストレージ12は、例えば、ROM(Read-Only Memory)、ハードディスク装置、フラッシュメモリ、その他の不揮発性記憶装置として実現される。ストレージ12に格納されるプログラムは、HMDシステム100において仮想空間を提供するためのプログラム、シミュレーションプログラム、ゲームプログラム、ユーザ認証プログラム、および他のコンピュータ200との通信を実現するためのプログラム等を含む。ストレージ12に格納されるデータは、仮想空間を規定するためのデータおよびオブジェクト等を含む。
【0027】
なお、別の局面において、ストレージ12は、メモリカードのように着脱可能な記憶装置として実現されてもよい。さらに別の局面において、コンピュータ200に内蔵されたストレージ12の代わりに、外部の記憶装置に保存されているプログラムおよびデータを使用する構成が使用されてもよい。このような構成によれば、例えば、アミューズメント施設のように複数のHMDシステム100が使用される場面において、プログラムおよびデータ等の更新を一括して行うことが可能になる。
【0028】
ある実施の形態において、入出力インターフェース13は、HMD装置110、HMDセンサ120またはモーションセンサ130との間で信号を通信する。ある局面において、入出力インターフェース13は、USB(Universal Serial Bus)インターフェース、DVI(Digital Visual Interface)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)その他の端子を用いて実現される。なお、入出力インターフェース13は上述のものに限られない。
【0029】
ある実施の形態において、入出力インターフェース13は、さらに、コントローラ160と通信し得る。例えば、入出力インターフェース13は、モーションセンサ130から出力された信号の入力を受ける。別の局面において、入出力インターフェース13は、プロセッサ10から出力された命令を、コントローラ160に送る。当該命令は、振動、音声出力、発光等をコントローラ160に指示する。コントローラ160は、当該命令を受信すると、その命令に応じて、振動、音声出力または発光のいずれかを実行する。
【0030】
通信インターフェース14は、ネットワーク19に接続されて、ネットワーク19に接続されている他のコンピュータ(例えば、サーバ150)と通信する。ある局面において、通信インターフェース14は、例えば、LAN(Local Area Network)その他の有線通信インターフェース、あるいは、WiFi(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)その他の無線通信インターフェースとして実現される。なお、通信インターフェース14は上述のものに限られない。
【0031】
ある局面において、プロセッサ10は、ストレージ12にアクセスし、ストレージ12に格納されている1つ以上のプログラムをメモリ11にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。当該1つ以上のプログラムは、コンピュータ200のオペレーティングシステム、仮想空間を提供するためのアプリケーションプログラム、コントローラ160を用いて仮想空間で実行可能なゲームソフトウェア等を含み得る。プロセッサ10は、入出力インターフェース13を介して、仮想空間を提供するための信号をHMD装置110に送る。HMD装置110は、その信号に基づいてモニタ112に映像を表示する。
【0032】
なお、
図2に示される例では、コンピュータ200がHMD装置110の外部に設けられる構成が示されているが、別の局面において、コンピュータ200は、HMD装置110に内蔵されてもよい。一例として、モニタ112を含む携帯型の情報通信端末(例えば、スマートフォン)がコンピュータ200として機能してもよい。
【0033】
また、コンピュータ200は、複数のHMD装置110に共通して用いられる構成であってもよい。このような構成によれば、例えば、複数のユーザに同一の仮想空間を提供することもできるので、各ユーザは同一の仮想空間で他のユーザと同一のアプリケーションを楽しむことができる。
【0034】
ある実施の形態において、HMDシステム100では、グローバル座標系が予め設定されている。グローバル座標系は、現実空間における鉛直方向、鉛直方向に直交する水平方向、ならびに、鉛直方向および水平方向の双方に直交する前後方向にそれぞれ平行な、3つの基準方向(軸)を有する。本実施の形態では、グローバル座標系は視点座標系の一つである。そこで、グローバル座標系における水平方向、鉛直方向(上下方向)、および前後方向は、それぞれ、x軸、y軸、z軸と規定される。より具体的には、グローバル座標系において、x軸は現実空間の水平方向に平行である。y軸は、現実空間の鉛直方向に平行である。z軸は現実空間の前後方向に平行である。
【0035】
ある局面において、HMDセンサ120は、赤外線センサを含む。赤外線センサが、HMD装置110の各光源から発せられた赤外線をそれぞれ検出すると、HMD装置110の存在を検出する。HMDセンサ120は、さらに、各点の値(グローバル座標系における各座標値)に基づいて、HMD装置110を装着したユーザ190の動きに応じた、現実空間内におけるHMD装置110の位置および傾きを検出する。より詳しくは、HMDセンサ120は、経時的に検出された各値を用いて、HMD装置110の位置および傾きの時間的変化を検出できる。
【0036】
グローバル座標系は現実空間の座標系と平行である。したがって、HMDセンサ120によって検出されたHMD装置110の各傾きは、グローバル座標系におけるHMD装置110の3軸周りの各傾きに相当する。HMDセンサ120は、グローバル座標系におけるHMD装置110の傾きに基づき、uvw視野座標系をHMD装置110に設定する。HMD装置110に設定されるuvw視野座標系は、HMD装置110を装着したユーザ190が仮想空間において物体を見る際の視点座標系に対応する。
[uvw視野座標系]
【0037】
図3を参照して、uvw視野座標系について説明する。
図3は、ある実施の形態に従うHMD装置110に設定されるuvw視野座標系を概念的に表す図である。HMDセンサ120は、HMD装置110の起動時に、グローバル座標系におけるHMD装置110の位置および傾きを検出する。プロセッサ10は、検出された値に基づいて、uvw視野座標系をHMD装置110に設定する。
【0038】
図3に示されるように、HMD装置110は、HMD装置110を装着したユーザの頭部を中心(原点)とした3次元のuvw視野座標系を設定する。より具体的には、HMD装置110は、グローバル座標系を規定する水平方向、鉛直方向、および前後方向(x軸、y軸、z軸)を、グローバル座標系内においてHMD装置110の各軸周りの傾きだけ各軸周りにそれぞれ傾けることによって新たに得られる3つの方向を、HMD装置110におけるuvw視野座標系のピッチ方向(u軸)、ヨー方向(v軸)、およびロール方向(w軸)として設定する。
【0039】
ある局面において、HMD装置110を装着したユーザ190が直立し、かつ、正面を視認している場合、プロセッサ10は、グローバル座標系に平行なuvw視野座標系をHMD装置110に設定する。この場合、グローバル座標系における水平方向(x軸)、鉛直方向(y軸)、および前後方向(z軸)は、HMD装置110におけるuvw視野座標系のピッチ方向(u軸)、ヨー方向(v軸)、およびロール方向(w軸)に一致する。
【0040】
uvw視野座標系がHMD装置110に設定された後、HMDセンサ120は、HMD装置110の動きに基づいて、設定されたuvw視野座標系におけるHMD装置110の傾き(傾きの変化量)を検出できる。この場合、HMDセンサ120は、HMD装置110の傾きとして、uvw視野座標系におけるHMD装置110のピッチ角(θu)、ヨー角(θv)、およびロール角(θw)をそれぞれ検出する。ピッチ角(θu)は、uvw視野座標系におけるピッチ方向周りのHMD装置110の傾き角度を表す。ヨー角(θv)は、uvw視野座標系におけるヨー方向周りのHMD装置110の傾き角度を表す。ロール角(θw)は、uvw視野座標系におけるロール方向周りのHMD装置110の傾き角度を表す。
【0041】
HMDセンサ120は、検出されたHMD装置110の傾き角度に基づいて、HMD装置110が動いた後のHMD装置110におけるuvw視野座標系を、HMD装置110に設定する。HMD装置110と、HMD装置110のuvw視野座標系との関係は、HMD装置110の位置および傾きに関わらず、常に一定である。HMD装置110の位置および傾きが変わると、当該位置および傾きの変化に連動して、グローバル座標系におけるHMD装置110のuvw視野座標系の位置および傾きが変化する。
【0042】
ある局面において、HMDセンサ120は、赤外線センサからの出力に基づいて取得される赤外線の光強度および複数の点間の相対的な位置関係(例えば、各点間の距離など)に基づいて、HMD装置110の現実空間内における位置を、HMDセンサ120に対する相対位置として特定してもよい。また、プロセッサ10は、特定された相対位置に基づいて、現実空間内(グローバル座標系)におけるHMD装置110のuvw視野座標系の原点を決定してもよい。
[仮想空間]
【0043】
図4を参照して、仮想空間についてさらに説明する。
図4は、ある実施の形態に従う仮想空間2を表現する一態様を概念的に表す図である。仮想空間2は、中心21の360度方向の全体を覆う全天球状の構造を有する。
図4では、説明を複雑にしないために、仮想空間2のうちの上半分の天球が例示されている。仮想空間2では各メッシュが規定される。各メッシュの位置は、仮想空間2に規定されるXYZ座標系における座標値として予め規定されている。コンピュータ200は、仮想空間2に展開可能なコンテンツ(静止画、動画等)を構成する各部分画像を、仮想空間2において対応する各メッシュにそれぞれ対応付けて、ユーザによって視認可能な仮想空間画像22が展開される仮想空間2をユーザに提供する。
【0044】
ある局面において、仮想空間2では、中心21を原点とするXYZ座標系が規定される。XYZ座標系は、例えば、グローバル座標系に平行である。XYZ座標系は視点座標系の一種であるため、XYZ座標系における水平方向、鉛直方向(上下方向)、および前後方向は、それぞれX軸、Y軸、Z軸として規定される。したがって、XYZ座標系のX軸(水平方向)がグローバル座標系のx軸と平行であり、XYZ座標系のY軸(鉛直方向)がグローバル座標系のy軸と平行であり、XYZ座標系のZ軸(前後方向)がグローバル座標系のz軸と平行である。
【0045】
HMD装置110の起動時、すなわちHMD装置110の初期状態において、仮想カメラ1が、仮想空間2の中心21に配置される。仮想カメラ1は、現実空間におけるHMD装置110の動きに連動して、仮想空間2を同様に移動する。これにより、現実空間におけるHMD装置110の位置および向きの変化が、仮想空間2において同様に再現される。
【0046】
仮想カメラ1には、HMD装置110の場合と同様に、uvw視野座標系が規定される。仮想空間2における仮想カメラ1のuvw視野座標系は、現実空間(グローバル座標系)におけるHMD装置110のuvw視野座標系に連動するように規定されている。したがって、HMD装置110の傾きが変化すると、それに応じて、仮想カメラ1の傾きも変化する。また、仮想カメラ1は、HMD装置110を装着したユーザの現実空間における移動に連動して、仮想空間2において移動することもできる。
【0047】
仮想カメラ1の向きは、仮想カメラ1の位置および傾きに応じて決まるので、ユーザが仮想空間画像22を視認する際に基準となる視線(基準視線5)は、仮想カメラ1の向きに応じて決まる。コンピュータ200のプロセッサ10は、基準視線5に基づいて、仮想空間2における視界領域23を規定する。視界領域23は、仮想空間2のうち、HMD装置110を装着したユーザの視界に対応する。
【0048】
注視センサ140によって検出されるユーザ190の視線方向は、ユーザ190が物体を視認する際の視点座標系における方向である。HMD装置110のuvw視野座標系は、ユーザ190がモニタ112を視認する際の視点座標系に等しい。また、仮想カメラ1のuvw視野座標系は、HMD装置110のuvw視野座標系に連動している。したがって、ある局面に従うHMDシステム100は、注視センサ140によって検出されたユーザ190の視線方向を、仮想カメラ1のuvw視野座標系におけるユーザの視線方向とみなすことができる。
[ユーザの視線]
【0049】
図5を参照して、ユーザの視線方向の決定について説明する。
図5は、ある実施の形態に従うHMD装置110を装着するユーザ190の頭部を上から表した図である。
【0050】
ある局面において、注視センサ140は、ユーザ190の右目および左目の各視線を検出する。ある局面において、ユーザ190が近くを見ている場合、注視センサ140は、視線R1およびL1を検出する。別の局面において、ユーザ190が遠くを見ている場合、注視センサ140は、視線R2およびL2を検出する。この場合、ロール方向wに対して視線R2およびL2がなす角度は、ロール方向wに対して視線R1およびL1がなす角度よりも小さい。注視センサ140は、検出結果をコンピュータ200に送信する。
【0051】
コンピュータ200が、視線の検出結果として、視線R1およびL1の検出値を注視センサ140から受信した場合には、その検出値に基づいて、視線R1およびL1の交点である注視点N1を特定する。一方、コンピュータ200は、視線R2およびL2の検出値を注視センサ140から受信した場合には、視線R2およびL2の交点を注視点として特定する。コンピュータ200は、特定した注視点N1の位置に基づき、ユーザ190の視線方向N0を特定する。コンピュータ200は、例えば、ユーザ190の右目Rと左目Lとを結ぶ直線の中点と、注視点N1とを通る直線の延びる方向を、視線方向N0として検出する。視線方向N0は、ユーザ190が両目により実際に視線を向けている方向である。また、視線方向N0は、視界領域23に対してユーザ190が実際に視線を向けている方向に相当する。
【0052】
別の局面において、HMDシステム100は、HMDシステム100を構成するいずれかのパーツに、マイクおよびスピーカを備えてもよい。ユーザは、マイクに発話することにより、仮想空間2に対して、音声による指示を与えることができる。
【0053】
また、別の局面において、HMDシステム100は、テレビジョン放送受信チューナを備えてもよい。このような構成によれば、HMDシステム100は、仮想空間2においてテレビ番組を表示することができる。
【0054】
さらに別の局面において、HMDシステム100は、インターネットに接続するための通信回路、あるいは、電話回線に接続するための通話機能を備えていてもよい。
[視界領域]
【0055】
図6および
図7を参照して、視界領域23について説明する。
図6は、仮想空間2において視界領域23をX方向から見たYZ断面を表す図である。
図7は、仮想空間2において視界領域23をY方向から見たXZ断面を表す図である。
【0056】
図6に示されるように、YZ断面における視界領域23は、領域24を含む。領域24は、仮想カメラ1の基準視線5と仮想空間2のYZ断面とによって定義される。プロセッサ10は、仮想空間2における基準視線5を中心として極角αを含む範囲を、領域24として規定する。
【0057】
図7に示されるように、XZ断面における視界領域23は、領域25を含む。領域25は、基準視線5と仮想空間2のXZ断面とによって定義される。プロセッサ10は、仮想空間2における基準視線5を中心とした方位角βを含む範囲を、領域25として規定する。
【0058】
ある局面において、HMDシステム100は、コンピュータ200からの信号に基づいて、視界画像をモニタ112に表示させることにより、ユーザ190に仮想空間を提供する。視界画像は、仮想空間画像22のうち視界領域23に重畳する部分に相当する。ユーザ190が、頭に装着したHMD装置110を動かすと、その動きに連動して仮想カメラ1も動く。その結果、仮想空間2における視界領域23の位置が変化する。これにより、モニタ112に表示される視界画像は、仮想空間画像22のうち、仮想空間2においてユーザが向いた方向の視界領域23に重畳する画像に更新される。ユーザは、仮想空間2における所望の方向を視認することができる。
【0059】
ユーザ190は、HMD装置110を装着している間、現実世界を視認することなく、仮想空間2に展開される仮想空間画像22のみを視認できる。そのため、HMDシステム100は、仮想空間2への高い没入感覚をユーザに与えることができる。
【0060】
ある局面において、プロセッサ10は、HMD装置110を装着したユーザ190の現実空間における移動に連動して、仮想空間2において仮想カメラ1を移動し得る。この場合、プロセッサ10は、仮想空間2における仮想カメラ1の位置および向きに基づいて、HMD装置110のモニタ112に投影される画像領域(すなわち、仮想空間2における視界領域23)を特定する。すなわち、仮想カメラ1によって、仮想空間2におけるユーザ190の視野が定義される。
【0061】
ある実施の形態に従うと、仮想カメラ1は、二つの仮想カメラ、すなわち、右目用の画像を提供するための仮想カメラと、左目用の画像を提供するための仮想カメラとを含むことが望ましい。また、ユーザ190が3次元の仮想空間2を認識できるように、適切な視差が、二つの仮想カメラに設定されていることが好ましい。本実施の形態においては、仮想カメラ1が二つの仮想カメラを含み、二つの仮想カメラのロール方向が合成されることによって生成されるロール方向(w)がHMD装置110のロール方向(w)に適合されるように構成されているものとして、本開示に係る技術思想を例示する。
[コントローラ]
【0062】
図8を参照して、コントローラ160の一例について説明する。
図8は、ある実施の形態に従うコントローラ160の概略構成を表す図である。
【0063】
図8の状態(A)に示されるように、ある局面において、コントローラ160は、右コントローラ160Rと左コントローラとを含み得る。右コントローラ160Rは、ユーザ190の右手で操作される。左コントローラは、ユーザ190の左手で操作される。ある局面において、右コントローラ160Rと左コントローラとは、別個の装置として対称に構成される。したがって、ユーザ190は、右コントローラ160Rを把持した右手と、左コントローラを把持した左手とをそれぞれ自由に動かすことができる。別の局面において、コントローラ160は両手の操作を受け付ける一体型のコントローラであってもよい。以下、右コントローラ160Rについて説明する。
【0064】
右コントローラ160Rは、グリップ30と、フレーム31と、天面32とを備える。グリップ30は、ユーザ190の右手によって把持されるように構成されている。例えば、グリップ30は、ユーザ190の右手の掌と3本の指(中指、薬指、小指)とによって保持され得る。
【0065】
グリップ30は、ボタン33,34と、モーションセンサ130とを含む。ボタン33は、グリップ30の側面に配置され、右手の中指による操作を受け付ける。ボタン34は、グリップ30の前面に配置され、右手の人差し指による操作を受け付ける。ある局面において、ボタン33,34は、トリガー式のボタンとして構成される。モーションセンサ130は、グリップ30の筐体に内蔵されている。なお、ユーザ190の動作がカメラその他の装置によってユーザ190の周りから検出可能である場合には、グリップ30は、モーションセンサ130を備えなくてもよい。
【0066】
フレーム31は、その円周方向に沿って配置された複数の赤外線LED35を含む。赤外線LED35は、コントローラ160を使用するプログラムの実行中に、当該プログラムの進行に合わせて赤外線を発光する。赤外線LED35から発せられた赤外線は、右コントローラ160Rと左コントローラとの各位置および姿勢(傾き、向き)等を検出するために使用され得る。
図8に示される例では、二列に配置された赤外線LED35が示されているが、配列の数は
図8に示されるものに限られない。一列あるいは3列以上の配列が使用されてもよい。
【0067】
天面32は、ボタン36,37と、アナログスティック38とを備える。ボタン36,37は、プッシュ式ボタンとして構成される。ボタン36,37は、ユーザ190の右手の親指による操作を受け付ける。アナログスティック38は、ある局面において、初期位置(ニュートラルの位置)から360度任意の方向への操作を受け付ける。当該操作は、例えば、仮想空間2に配置されるオブジェクトを移動させるための操作を含む。
【0068】
ある局面において、右コントローラ160Rおよび左コントローラは、赤外線LED35その他の部材を駆動するための電池を含む。電池は、充電式、ボタン型、乾電池型等を含むが、これらに限定されない。別の局面において、右コントローラ160Rおよび左コントローラは、例えば、コンピュータ200のUSBインターフェースに接続され得る。この場合、右コントローラ160Rおよび左コントローラは、電池を必要としない。
【0069】
図8の状態(A)および状態(B)に示されるように、例えば、ユーザ190の右手810に対して、ヨー、ロール、ピッチの各方向が規定される。ユーザ190が親指と人差し指とを伸ばした場合に、親指の伸びる方向がヨー方向、人差し指の伸びる方向がロール方向、ヨー方向の軸およびロール方向の軸によって規定される平面に垂直な方向がピッチ方向として規定される。
[HMD装置の制御装置]
【0070】
図9を参照して、HMD装置110の制御装置について説明する。ある実施の形態において、制御装置は周知の構成を有するコンピュータ200によって実現される。
図9は、ある実施の形態に従うコンピュータ200をモジュール構成として表すブロック図である。
【0071】
図9に示されるように、コンピュータ200は、表示制御モジュール220と、仮想空間制御モジュール230と、メモリモジュール240と、通信制御モジュール250とを備える。表示制御モジュール220は、サブモジュールとして、仮想カメラ制御モジュール221と、視界領域決定モジュール222と、視界画像生成モジュール223と、基準視線特定モジュール224とを含む。仮想空間制御モジュール230は、サブモジュールとして、仮想空間定義モジュール231と、仮想オブジェクト制御モジュール232と、操作オブジェクト制御モジュール233とを含む。
【0072】
ある実施の形態において、表示制御モジュール220と仮想空間制御モジュール230とは、プロセッサ10によって実現される。別の実施の形態において、複数のプロセッサ10が表示制御モジュール220と仮想空間制御モジュール230として作動してもよい。メモリモジュール240は、メモリ11またはストレージ12によって実現される。通信制御モジュール250は、通信インターフェース14によって実現される。
【0073】
ある局面において、表示制御モジュール220は、HMD装置110のモニタ112における画像表示を制御する。仮想カメラ制御モジュール221は、仮想空間2に仮想カメラ1を配置し、仮想カメラ1の移動、挙動、傾き等を制御する。視界領域決定モジュール222は、HMD装置110を装着したユーザの頭の傾きや、ユーザ操作に基づいた移動に応じて、視界領域23を規定する。視界画像生成モジュール223は、決定された視界領域23に基づいて、モニタ112に表示される視界画像を生成する。基準視線特定モジュール224は、注視センサ140からの信号に基づいて、ユーザ190の視線を特定する。
【0074】
仮想空間制御モジュール230は、ユーザ190に提供される仮想空間2を制御する。仮想空間定義モジュール231は、仮想空間2を表す仮想空間データを生成することにより、HMDシステム100における仮想空間2を規定する。
【0075】
仮想オブジェクト制御モジュール232は、仮想空間2に配置される対象オブジェクトを生成する。また、仮想オブジェクト制御モジュール232は、仮想空間2における対象オブジェクトおよびキャラクタオブジェクトの動作(移動および状態変化等)を制御する。対象オブジェクトは、例えば、ゲームのストーリーの進行に従って配置される森、山その他を含む風景、動物等を含み得る。また、チャットを行うために定義された仮想空間にしたがって配置されるテーブル、椅子などであってもよい。キャラクタオブジェクトは、例えば、他のユーザのアバターなどである。アバターは複数種類用意されており、仮想オブジェクト制御モジュール232は、他のユーザのユーザIDに対応付けられたアバターを表現することができる。
【0076】
操作オブジェクト制御モジュール233は、仮想空間2に配置されるオブジェクトを操作するための操作オブジェクトを仮想空間2に配置する。ある局面において、操作オブジェクトは、例えば、HMD装置110を装着したユーザの手に相当する手オブジェクト、ユーザの指に相当する指オブジェクト、ユーザが使用するスティックに相当するスティックオブジェクト等を含み得る。操作オブジェクトが指オブジェクトの場合、特に、操作オブジェクトは、当該指が指し示す方向(軸方向)の軸の部分に対応している。
【0077】
チャット制御モジュール234は、同じ仮想空間2に滞在する他のユーザのアバターとチャットや会話をするための制御を行う。例えば、チャット制御モジュール234は、ユーザのアバターの位置・向きなどの情報や、ユーザ操作により入力された音声データをサーバ150に送信する制御を行う。なお、チャットのための音声データは、図示しないマイクから入力可能にし、図示しないスピーカから出力することで、音声によるチャット可能にする。なお、音声に限定するものではなく、テキストデータに基づいてチャットを可能にしてもよい。
【0078】
通報処理モジュール230aは、ユーザ操作により視界画像の撮影処理(スクリーンショット)を行うとともに、通報データの取得処理を行い、視界画像データ(スクリーンショットデータ)と通報データをサーバ150に送信する制御を行う。
【0079】
メモリモジュール240は、コンピュータ200が仮想空間2をユーザ190に提供するために使用されるデータを保持している。ある局面において、メモリモジュール240は、空間情報241と、オブジェクト情報242と、ユーザ情報243とを保持している。空間情報241には、例えば、仮想空間2を提供するために規定された1つ以上のテンプレートが含まれている。オブジェクト情報242には、例えば、仮想空間2において再生されるコンテンツ、当該コンテンツで使用されるオブジェクトを配置するための情報等が含まれている。当該コンテンツは、例えば、ゲーム、現実社会と同様の風景を表したコンテンツやユーザごとに設定されたアバターの情報等を含み得る。ユーザ情報243には、例えば、HMDシステム100の制御装置としてコンピュータ200を機能させるためのプログラム、オブジェクト情報242に保持される各コンテンツを使用するアプリケーションプログラム等が含まれている。
【0080】
メモリモジュール240に格納されているデータおよびプログラムは、HMD装置110のユーザによって入力される。あるいは、プロセッサ10が、当該コンテンツを提供する事業者が運営するコンピュータ(例えば、サーバ150)からプログラムあるいはデータをダウンロードして、ダウンロードされたプログラムあるいはデータをメモリモジュール240に格納する。
【0081】
通信制御モジュール250は、ネットワーク19を介して、サーバ150その他の情報通信装置と通信し得る。
【0082】
ある局面において、表示制御モジュール220および仮想空間制御モジュール230は、例えば、ユニティテクノロジーズ社によって提供されるUnity(登録商標)を用いて実現され得る。別の局面において、表示制御モジュール220および仮想空間制御モジュール230は、各処理を実現する回路素子の組み合わせとしても実現され得る。
【0083】
コンピュータ200における処理は、ハードウェアと、プロセッサ10により実行されるソフトウェアとによって実現される。このようなソフトウェアは、ハードディスクその他のメモリモジュール240に予め格納されている場合がある。また、ソフトウェアは、CD−ROMその他のコンピュータ読み取り可能な不揮発性のデータ記録媒体に格納されて、プログラム製品として流通している場合もある。あるいは、当該ソフトウェアは、インターネットその他のネットワークに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラム製品として提供される場合もある。このようなソフトウェアは、光ディスク駆動装置その他のデータ読取装置によってデータ記録媒体から読み取られて、あるいは、通信制御モジュール250を介してサーバ150その他のコンピュータからダウンロードされた後、メモリモジュール240に一旦格納される。そのソフトウェアは、プロセッサ10によってメモリモジュール240から読み出され、実行可能なプログラムの形式でRAMに格納される。プロセッサ10は、そのプログラムを実行する。
【0084】
図9に示されるコンピュータ200を構成するハードウェアは、一般的なものである。したがって、本実施の形態に係る最も本質的な部分は、コンピュータ200に格納されたプログラムであるともいえる。なお、コンピュータ200のハードウェアの動作は周知であるので、詳細な説明は繰り返さない。
【0085】
なお、データ記録媒体としては、CD−ROM、FD(Flexible Disk)、ハードディスクに限られず、磁気テープ、カセットテープ、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの半導体メモリ等の固定的にプログラムを担持する不揮発性のデータ記録媒体でもよい。
【0086】
ここでいうプログラムとは、プロセッサ10により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム形式のプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含み得る。
[制御構造]
【0087】
図10を参照して、本実施の形態に係るコンピュータ200の制御構造について説明する。
図10は、HMDシステム100が実行するプログラムの処理を表すフローチャートである。
【0088】
ステップS1において、コンピュータ200のプロセッサ10は、仮想空間定義モジュール231として、仮想空間画像データを特定し、仮想空間を定義する。
【0089】
ステップS2において、プロセッサ10は、仮想カメラ制御モジュール221として、仮想カメラ1を初期化する。例えば、プロセッサ10は、メモリのワーク領域において、仮想カメラ1を仮想空間2において予め規定された中心点に配置し、仮想カメラ1の視線をユーザ190が向いている方向に向ける。
【0090】
ステップS3において、プロセッサ10は、視界画像生成モジュール223として、初期の視界画像を表示するための視界画像データを生成する。生成された視界画像データは、視界画像生成モジュール223を介して通信制御モジュール250によってHMD装置110に送られる。
【0091】
ステップS4において、HMD装置110のモニタ112は、コンピュータ200から受信した信号に基づいて、視界画像を表示する。HMD装置110を装着したユーザ190は、視界画像を視認すると仮想空間2を認識し得る。
【0092】
ステップS5において、HMDセンサ120は、HMD装置110の向きを検出する。検出結果は、動き検出データとして、コンピュータ200に送られる。
【0093】
ステップS6において、プロセッサ10は、視界領域決定モジュール222および視界画像生成モジュール223として、仮想カメラ1の位置および向きに応じた視界画像を生成・出力する。その際、他のユーザのパラメータに基づいてアバターを生成して、出力する。例えば、ユーザIDごとにアバターの種類等がコンピュータ200(オブジェクト情報242)に登録されており、サーバ150から出力されたユーザのパラメータに基づいてアバターの生成を行うことができる。
【0094】
ステップS8において、HMD装置110のモニタ112は、受信した視界画像データに基づいて視界画像を更新し、更新後の視界画像を表示する。
【0095】
上述の通り、HMDセンサ120の動きに応じて、コンピュータ200は、視界画像を生成して、HMD装置110に出力することで、ユーザに対して仮想空間に滞在しているかのような体験を提供することができる。さらに、本実施形態のシステム100は、このユーザと同じ仮想空間に他のユーザのアバターを滞在させ、互いにチャットをさせることができる。例えば、
図2において、このシステム100に通信可能なサーバ150が記載されている。このサーバ150は、他のユーザが使用するコンピュータ200から、各ユーザのアバターの位置・向きおよび発言・行動を収集し、仮想空間を構成するパラ-メータとして各コンピュータ200に送信する。各コンピュータ200(仮想空間制御モジュール230)は、送信されたパラメータに基づいて他のユーザのアバターを含んだ仮想空間を生成することができる。以下、発言・行動をプレイ内容と称する場合があるが、これに限るものではなく、ユーザにより行われるあらゆる行為を含めてもよいし、いずれか一方のみをプレイ内容としてもよい。
【0096】
つぎに、このように仮想空間において音声によるチャットを実現するためのパラメータを各コンピュータ200に送信するためのサーバ150について説明する。
図11は、サーバ150の機能構成を示すブロック図である。
図11に示されるとおり、サーバ150は、通信制御モジュール151、パラメータ制御モジュール152、通報処理モジュール153、およびメモリモジュール154を含んで構成されている。メモリモジュール154は、プレイ履歴データベース154a、通報データベース154b、ブラックリストデータベース154cを含んでいる。このサーバ150は、コンピュータ200と同様に
図2に示されるようにプロセッサおよびメモリ等のハードウェアにより構成されている。
【0097】
パラメータ制御モジュール152は、通信制御モジュール151を介して送受信した他のユーザのHMD装置110の仮想空間における位置・向きおよび発言・行動を示すパラメータを用いて視界画像生成のための制御を行う部分である。
【0098】
通報処理モジュール153は、通信制御モジュール151を介して受信した通報データに基づいてブラックリストを生成する部分である。
【0099】
プレイ履歴データベース154aは、各HMD装置110から送信されたパラメータを記憶する部分であり、各ユーザのプレイ履歴データを記憶する部分である。
図12は、プレイ履歴データベース154aの具体例を示す図である。
図12に示されるとおり、プレイ履歴データベース154aは、ルームID、時間、ユーザID、ユーザの位置、向き、発言、行動を対応付けて記述している。
【0100】
ここでルームIDとは、チャットをするための仮想空間のIDを示す。通常、複数の仮想空間が用意されており、ユーザは任意の仮想空間または事業者から指定された仮想空間にログインすることができる。時間は、他のユーザが発言し行動をした時間である。ユーザIDは、発言・行動を行ったユーザのID、位置・向きは、仮想空間におけるユーザのアバターの位置およびその向き、発言は、チャットで発言した内容、行動は、ユーザがしている行為であって、走り回っている、歩いているなどである。
【0101】
なお、発言として、音声によるチャットを想定している。この場合、図示しない音声処理部が、音声データのファイルを、プレイ履歴データベース154aの発言欄に登録する。また、図示しない音声認識部が、入力された音声を音声認識処理によりテキストデータに変換して当該プレイ履歴データベース154aに登録するようにしてもよい。
【0102】
通報データベース154bは、通報者と通報対象者とを対応付けた通報データを記述する部分である。通報者とは、悪質なユーザがいた場合、その旨を通報したユーザであり、通報対象者とは、悪質なユーザである。
図14は、通報データベース154bの具体例を示す図である。
図14に示されるとおり、通報データベース154bは、通報者、ルームID、時間、通報対象者、近隣のユーザを対応付けて記述している。通報者は、通報したユーザのユーザIDを示し、ルームIDは、複数ある仮想空間のうち一の仮想空間を特定するためのIDを示す。時間は、通報者が通報した時間である、通報対象者は、通報対象となるユーザのIDである。近隣のユーザは、通報対象者の近隣にいるユーザである。近隣ユーザの判定は、通報対象者の位置から所定範囲にいるか否かにより行われる。
【0103】
ブラックリストデータベース154cは、通報データベース154bに基づいて決定されたブラックリストの対象となったユーザを示すリストを記述する部分である。
図15は、ブラックリストデータ154cの具体的な例を示す図である。
図15に示されるとおり、対象者、ルームID、時間、発言、行動、および判定を対応付けて記述している。対象者は通報対象者である。ほか、ルームIDから行動については、上述プレイ履歴データベース154aと同じである。判定は、ブラックリストとして登録されたユーザの悪質の度合いを示す。
図15においては、“警告”が記述されており、そのユーザに対してメール等により警告を行うことを要することを意味している。そのほか、仮想空間の利用を不可とする除名などがあり得る。
【0104】
つぎに、このように構成されたサーバ150およびコンピュータ200(HMD装置110を含む)の処理について説明する。
図16は、サーバ150を用いたブラックリストデータの生成処理を示すシーケンス図である。
【0105】
ステップS101aにおいて、コンピュータ200は、サーバ150に対して、ユーザのパラメータ(位置、向き、発言、行動)を出力する。また、ステップS101bにおいて、同様に他のユーザのコンピュータ200は、サーバ150に対して、ユーザのパラメータ(位置、向き、発言、行動)を出力する。
【0106】
ステップS102において、サーバ150は、通信制御モジュール151を用いて、各ユーザのコンピュータ200から送信された各ユーザのパラメータを受信し、パラメータ制御モジュール152を用いて、プレイ履歴データベース154aにプレイ履歴データを記憶する。
【0107】
ステップS103において、サーバ150は、パラメータ制御モジュール152を用いて、各ユーザのパラメータを、各ユーザが使用するコンピュータ200に対して送信する。
【0108】
ステップS104aにおいて、コンピュータ200は、通信制御モジュール250を用いてサーバ150から送信された各ユーザのパラメータを受信し、視界画像生成モジュール223を用いてパラメータに基づいた視界画像を生成する。ステップS104bにおいても、同様に、他のユーザのコンピュータ200は、パラメータの受信および視界画像の生成処理を行う。
【0109】
この視界画像を生成のためのパラメータは、
図13に示される情報からなるものである。例えば、パラメータは、ユーザを示すユーザID、そのユーザの位置、向き、発言および行動を示す情報からなる。コンピュータ200の視界画像生成モジュール223は、このパラメータを用いて、ユーザIDで特定されるアバターがどの位置にいて、どの向きに向いているか、またどのような発言をしているか、どのような行動をしているかを示す視界画像を生成することができる。また、チャット制御モジュール234は、その視界画像にどのユーザが含んでいるかということを把握することができる。
【0110】
ステップS105において、コンピュータ200のユーザはスクリーンショットの操作を行うと、コンピュータ200の通報処理モジュール230aは、視界画像の撮影処理を行う。ステップS106において、コンピュータ200の通報処理モジュール230aは、視界画像を生成しているパラメータに基づいて、通報対象などの通報データを抽出して、スクリーンショットデータとともにサーバ150に送信する。なお、通報処理モジュール230aは、ユーザの視線に基づいてアバターを特定することで、通報対象となる対象ユーザを特定することができるが、これに限定するものではない。対象ユーザの特定はあらゆる方法が考えられ、例えば、視界画像の中央にいるアバターを特定することで、ユーザを対象ユーザとして特定してもよい。また、コントローラ160を用いてポインタ・カーソルなどを操作して、アバターを特定することで、対象ユーザを特定してもよい。
【0111】
ステップS107において、サーバ150の通信制御モジュール151は、スクリーンショットデータおよび通報データを、コンピュータ200から受信し、通報データベース154bに記憶する。
【0112】
ステップS108において、サーバ150の通報処理モジュール153は、通報データベース154bおよびプレイ履歴データベース154aに基づいて、ブラックリストユーザを特定する。すなわち、通報処理モジュール153は、プレイ履歴データベース154aを参照して、通報データベース154bに記述されている通報対象者となるユーザの発言および行動を抽出し、予め定められた発言や行動をしていた場合、当該通報対象者となるユーザをブラックリストユーザとして特定する。そして、通報処理モジュール153は、ブラックリストデータベース154cに、該当するユーザの通報データを記憶する。ここで、通報処理モジュール153は、ブラックリストユーザの悪質度の度合いを判定して、ブラックリストデータベース154cに記憶する。
図15では、対象者であるユーザID:xxx1は、警告レベルとして判定されている。チャットの運営者は、この判定結果に基づいて電子メール等により警告を行う。なお、悪質度の度合いは、発言内容や行動が、予め定められた基準に達しているか否かに基づいて判定される。また、通報数や通報した人数(通報者数)に基づいて悪質度の度合いは判定されてもよい。
【0113】
つぎに、仮想空間2におけるアバターを用いたチャットの具体例および通報方法について視界画像を用いて説明する。
図17は、仮想空間2にアバターが存在していることを示す模式図である。
図17において、アバターA
1、アバターA
2、およびアバターA
3が示されている。例えばアバターA
1は通報者であるユーザであり、アバターA
2およびアバターA
3は他のユーザである。これらアバターA
1、アバターA
2およびアバターA
3は、サーバ150において収集されたユーザのパラメータに基づいて、各コンピュータ200の仮想オブジェクト制御モジュール232は、そのパラメータにしたがって、どのようなアバターが仮想空間2内のどの位置に、どの向きに向いているかを決定し、視界画像において表現することができる。
【0114】
図18は、通報者となるユーザの視界画像を示す。
図18に示されるとおり、視界画像には、他のユーザのアバターA
2およびアバターA
3が表示されている。また、操作アイコンOが画面左上に表示されており、コントローラ160などを用いて操作可能にしている。また、視点Pは、ユーザの視線に基づいて特定された部分であり、通報対象となる対象ユーザを特定するための情報である。メッセージQは、ここではアバターA
3のユーザにより入力されたチャットのための音声を示す。説明の便宜上、吹き出しにより表現しているが、図示しないスピーカから音声を出力することで、チャットを可能にする。オブジェクトRは、アバターA
2のユーザにより入力された感情を表すものである。一のユーザはコンピュータ200またはHMD装置110を操作することによって、チャット制御モジュール234は、一のユーザが他のユーザのアバターA
2およびA
3とチャットを行うための制御を行う。
【0115】
ここで、通報者となるユーザは、コンピュータ200を操作することにより視界画像の撮影操作(いあゆるスクリーンショット)を行うことができる。例えば、ユーザが、
図18に示されるような視界画像に対して撮影操作を行うと、通報処理モジュール230aは、操作アイコンOを視界画像に重畳表示する。そして、コンピュータ200の通報処理モジュール230aは、その操作に応じて視界画像の撮影処理を行うとともに、サーバ150から送信された視界画像を生成するための各種パラメータに基づいてアバターA
2およびA
3のユーザIDを抽出する。また、コンピュータ200の通報処理モジュール230aは、撮影した視界画像と、抽出したユーザIDに加えて、仮想空間2を識別するためのルームID、撮影した時間を抽出する。
【0116】
そして、ユーザは、コントローラ160などを用いて、このアイコンOを払うような操作をすることで、通報指示を行う。通報指示を行うと、通報処理モジュール153は、これら情報を通報データとしてサーバ150に送信する。
図18においては、視点Pが視線により特定された箇所を示す。したがって、コンピュータ200の通報処理モジュール230aは、その視線により特定されたアバターA
3のユーザIDを抽出することができる。また、通報処理モジュール230aは、通報対象者から所定範囲にいる近隣のユーザも同様にして、そのユーザIDを抽出することができる。
【0117】
上述の例示においては、サーバ150は、ユーザのパラメータ(位置や向きなど)のみを送信して、コンピュータ200は、それらパラメータに基づいて視界画像を生成しているが、これに限るものではない。サーバ150において、一のユーザおよび他のユーザの位置・向き等に基づいて視界画像を生成し、その視界画像を各コンピュータ200に送信するようにしてもよい。
【0118】
本発明に開示された主題は、例えば以下のような項目として示される。
(項目1)
一のユーザが使用するユーザ端末であるコンピュータ200(HMD装置110を含む)に対して、他のユーザのアバターを含んだ仮想空間2を提供する情報処理装置であるサーバ150の情報処理方法において、
仮想空間2における複数のコンピュータ200(HMD装置110)のそれぞれに対して視界画像を提供可能な情報を、複数のコンピュータ200(HMD装置110)のそれぞれに出力する出力ステップ(
図16のステップS103)と、
複数のコンピュータ200(HMD装置110)のうちの一のコンピュータ200において視界画像の撮影操作が行われると、当該一のコンピュータ200を使用しているユーザのユーザID(識別情報)、当該撮影操作の時刻、通報対象となるアバターを操作する対象ユーザのユーザID(識別情報)および視界画像を含んだ通報データを取得する取得ステップ(
図16のステップS107)と、
通報データに基づいて、通報対象となるアバターを操作する対象ユーザを特定する特定ステップ(
図16のステップS108)と、
を備える情報処理方法。
この開示によれば、ユーザによる簡単な操作で、仮想空間内において迷惑行為を行うようなユーザを容易に特定することができる。なお、迷惑行為を行うユーザを特定することに限定するものではなく、通報対象となるアバターを操作するユーザであれば何でもよい。例えば、仮想空間2内で人気投票のようなものを行いたい場合には、一のユーザが好みと思われるユーザを通報対象のユーザとして一意に特定することにも適用することができる。なお、コンピュータ200は、視界画像の撮影操作に基づいて通報データを抽出して、送信しているが、視界画像操作や視界画像自体は必須の要件ではない。ただし、サーバ150側で通報対象となる対象者を含んだ視界画像を得ることで、仮想空間の運営者が視覚により確認することができ、その判断を確実にすることができる。
(項目2)
取得ステップでは、
コンピュータ200における視界画像の撮影操作時に送信された一のユーザの識別情報、当該撮影操作の時刻、および視線情報を取得し、
特定ステップでは、
当該視線情報に基づいて通報対象となるアバターを操作する対象ユーザを特定する、
項目1に記載の情報処理方法。
この開示によれば、視線情報に基づいて通報対象となる対象ユーザを特定することができ、簡単な操作で迷惑行為を行うなどの所定のユーザを一意に特定することができる。
(項目3)
取得ステップでは、
対象ユーザの仮想空間2における位置の所定範囲にいる他のユーザである近隣ユーザのユーザID(識別情報)を含んだ通報データを取得し、
特定ステップでは、
近隣のユーザからの通報データを用いて通報対象となるアバターを操作する対象ユーザを特定する、
項目1または2に記載の情報処理方法。
この開示によれば、通報対象となる対象ユーザの仮想空間における位置の近隣の他のユーザからの通報データを使って所定のユーザを一意に特定することができる。すなわち、近隣のユーザからの通報データにより対象ユーザが特定された場合には、その対象ユーザは、迷惑行為を行ったなど、所定条件を満たしたユーザである可能性が高い。
(項目4)
仮想空間2における複数のユーザにより行われたプレイ内容と当該プレイ内容が行われた時刻とを含んだプレイ履歴データを記憶する履歴データ記憶ステップ(ステップS102)を備え、
特定ステップでは、プレイ履歴データと通報データとに基づいて、通報対象となるアバターを操作する対象ユーザを特定する、
項目1から3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
この開示によれば、プレイ履歴データと通報データとから所定条件を満たしたユーザを特定することができる。すなわち、迷惑行為や迷惑な行動や発言など、特定のプレイをしたことをプレイ履歴データでチェックすることができ、迷惑行為などをしていないユーザを、通報データのみから通報対象である対象ユーザとすることを防止することができる。すなわち、あるユーザがいたずらで通報データを送信したとしても、そのような通報データに基づいて迷惑行為を行ったなどの特定の行為をしたユーザとして特定することを防止することができる。
(項目5)
取得ステップでは、複数のユーザによる通報データを取得し、
特定ステップでは、複数のユーザによる通報データに基づいて、通報対象となるアバターを操作する対象ユーザを特定する、
項目1から4のいずれか一項に記載の情報処理方法。
この開示によれば、複数のユーザからの通報データに基づいて所定条件を満たしたユーザを特定することができ、対象ユーザを正確に決定することができる。
(項目6)
項目1〜6のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
(項目7)
項目6に記載のプログラムを格納したメモリと、
前記メモリに結合され、前記プログラムを実行するためのプロセッサとを備える、装置。