(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
多孔質セルロース粒子等の多糖類及びその誘導体は、広い表面積を持つこと、機械的強度が大きいこと、及び水酸基を修飾することで多様なリガンドの担持が可能であること等の特徴を有することから、従来、化粧品、医薬品及び食品等の分野、その他工業用途の分野においても、ろ過、吸収及び吸着等の様々な機能を果たす目的で利用されている。
【0003】
以前、化粧品や工業用研磨材等には、スクラブ剤として天然のクルミやアプリコットなどの果物の種子及びヤシ殻等が含まれていた。しかし近年は、小さいものから大きいものまで粒子径を制御しやすく、表面積を非常に大きくすることができ、また他の物質への分散性が良いこと等から、ポリエチレンをはじめとする合成のポリマー微粒子が、特に化粧品や薬剤において用いられている。
【0004】
合成のポリマー微粒子の中でも、特にマイクロビーズとよばれているものがある。マイクロビーズは、ポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチックで作られた球状の小さなビーズである。大きさは数ミクロン〜数百ミクロン(0.001mm〜0.1mm)程度であるが、用途に応じ粒子径は異なる。マイクロビーズは、例えば、肌の汚れや古い角質を除去する目的で、いわゆるスクラブ機能を発揮する材料として、洗顔料、ボディウォッシュ及び練り歯磨き等の化粧品に添加されている。
【0005】
合成ポリマー微粒子、特にポリエチレンのポリマー微粒子は幅広く使われており、化粧品約3万点中2,000点以上の製品が含有している。具体的には、例えば、洗顔石鹸、洗顔フォーム及び洗顔パウダー等の洗顔料;クレンジングオイル、クレンジングジェル、クレンジングクリーム及びクレンジングポイントリムーバー等のクレンジング剤;スキンケア美容液乳液、フェイスクリーム、フェイスオイル、フェイスバーム及びリップケア等の保湿性化粧料;洗い流すパック、マスクシートパック、マスクゴマージュ及びピーリングマッサージ料等のスペシャルケア用化粧料;まつげ美容液等のアイケア用化粧料;ヘアケアシャンプー、コンディショナー、ヘアパック、ヘアトリートメント及び洗い流さないトリートメント等の毛髪又は頭皮用化粧料;ボディ洗浄料、ボディローション、ボディミルク、ボディクリーム、ボディオイル、ボディスクラブ、バストケア、ヒップケア、レッグケア、フットケア及びハンドケア等のボディケア用化粧料;顔用またはボディ用日焼け止め等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、マイクロビーズは、ポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチックで作られた球状の小さなビーズであり、比重が1以下と軽く、粒子径もあまりに小さすぎることから、水に浮きやすく、排水処理施設では除去できない場合があり、そのまま川やさらに川を通して海に流れ込むことがある。このため海洋等がプラスチックのマイクロビーズで汚染されるという問題がある。
【0007】
さらに、プラスチックは環境中の微量の化学汚染物質を吸着する性質があるため、その化学汚染物質を吸着したマイクロビーズをプランクトンや魚が飲み込むことで、人体へも悪影響を及ぼす可能性が生じる等、様々な影響を与えることが懸念されている。
【0008】
このような懸念から、多様な用途に用いられている合成ポリマーの微粒子を、生分解性のある粒子に代替しようとする試みが試されている。
【0009】
非特許文献1には、LESSONIA(レッソニア社:フランス)を製造元とし、研磨、スクラブ配合化粧品全版を配合用途とする生分解性のあるスクラブ剤が提案されている。また、そのスクラブ剤の原料は、酢酸セルロースであり、ポリエチレン系ビーズと同じ研磨性能、同じ粒径、同じ比重による同じ懸濁(分散)性を持ち合わせていることが記載されている。
【0010】
特許文献1には、粒径0.1〜1.0mm、かさ比重0.1〜0.7g/ccの多孔性球状セルロースが配合されていることを特徴とする化粧品が記載されている。
【0011】
特許文献2には、粒径が0.1〜1mm、かさ比重0.08〜0.7g/mlである非球状のセルロース粒子からなるスクラブ剤が記載されている。
【0012】
特許文献3には、微生物産生セルロースおよび甘藷の裏ごし残渣からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、スクラブ剤が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好ましい実施の形態の一例を具体的に説明する。
【0025】
[スクラブ剤]
本開示のスクラブ剤は、多孔質セルロース粒子からなるものである。ここで、スクラブ剤とは、角質、皮脂、埃等の毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等を除去して、身体、顔、頭皮等の皮膚及び爪等を美しくするための化粧料をいう。
【0026】
[多孔質セルロース粒子]
本開示の多孔質セルロース粒子は、セルロースII型結晶構造を有し、粒子径がメジアン径で100μm以上1,000μm以下、窒素法BET比表面積測定法により得られる比表面積が10m
2/g以上100m
2/g以下、かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下であり、かつ、生分解性速度が10日以内に50重量%以上である。
【0027】
[セルロースII型結晶構造]
本開示の多孔質セルロース粒子は、セルロースII型結晶構造を有するものである。そして、セルロースII型結晶構造を有していることは、CuKα(λ=1.542184Å)を用いたX線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=11〜13°付近、2θ=19〜21°付近及び2θ=21〜23°付近の3か所の位置に典型的なピークを有することにより同定することができる。
【0028】
また、セルロースI型結晶構造を有していることは、CuKα(λ=1.542184Å)を用いたX線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=15〜17°付近及び2θ=22〜23°付近の2か所の位置に典型的なピークを有することにより同定することができる。
【0029】
[粒子径]
本開示の多孔質セルロース粒子は、粒子径がメジアン径で100μm以上1,000μm以下である。そのメジアン径は、100μm以上900μm以下が好ましく、100μm以上800μm以下がより好ましく、100μm以上700μm以下がさらに好ましく、100μm以上600μm以下が最も好ましい。
【0030】
メジアン径が100μm以上1,000μm以下であることにより、当該多孔質セルロース粒子からなるスクラブ剤は、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等をこすり落としてまたは削り落として除去する能力が高いため優れた洗浄力を有すると共に、その感触がよいため優れた使用感を有する。メジアン径が100μm未満であると、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等を除去する能力が低いため洗浄力に劣ると共に、使用感にも劣る。そして、メジアン径が1,000μmを超えると、粒子が大きすぎるために、洗浄の際に感触が悪く、使用感に劣る。なお、洗浄力とは、角質、皮脂、埃等の毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等を除去する能力のことをいう。
【0031】
メジアン径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。具体的には、以下のとおりである。まず、100ppm濃度の多孔質セルロース粒子を、超音波振動装置を用いて純水懸濁液とすることにより、試料を調製する。その後、レーザー回折法(株式会社セイシン企業製「SKレーザーマイクロンサイザーLMS−2000e」、超音波処理1分、屈折率1.52)により、体積頻度粒度分布を測定することによりメジアン径を測定することができる。なお、ここでいうメジアン径とは、この粒度分布における散乱強度の積算50%に対応する粒子径の値(μm)のことをいう。
【0032】
[比表面積]
本開示の多孔質セルロース粒子は、窒素法BET比表面積測定法により得られる比表面積が10m
2/g以上100m
2/g以下である。その比表面積の上限値としては、50m
2/g以下であることが好ましく、40m
2/g以下であることがより好ましい。また、下限値としては、10.6m
2/g以上であることが好ましく、11m
2/g以上であることがより好ましい。比表面積が10m
2/g以上100m
2/g以下であることにより、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等をこすり落としてまたは削り落として除去する能力及び保油性が高く、優れた洗浄力を有すると共に、十分な使用感を有する。比表面積が10m
2/g未満であると、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等を除去する能力及び保油性が低いため洗浄力に劣る。比表面積は、洗浄力が向上するためより大きい方が好ましいが、大きすぎると、吸油性が高すぎるため、必要以上に皮膚の油分を吸い取り、乾燥を引き起こす。また、空間容積が大きすぎ、形状が保持できないため脆くなり、スクラブ剤として必要な十分な使用感が得られない。
【0033】
窒素法BET比表面積測定法を用いた比表面積は、予め試料をカンタクローム・インスツルメンツ社製MasterPrep脱気装置を用いて、温度100℃下にて約1時間の間、加熱真空排気した後、比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製「Autosorb iQ Station 2」)を用いて、窒素ガス吸着法により相対圧0.05〜0.28の範囲において7点程度、窒素吸着を測定し、BET法を適用して比表面積を算出することにより求めることができる。
【0034】
[かさ比重]
本開示の多孔質セルロース粒子は、かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下である。そのかさ比重は、0.38g/ml以上0.54g/ml以下であることが好ましく、0.38g/ml以上0.53g/ml以下であることがより好ましい。かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下であることにより、当該粒子の表面から内側に向かってより深い孔を形成するため、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等をこすり落としてまたは削り落として除去する能力が高く、優れた洗浄力を有する。かさ比重が小さすぎると(特に、0.1g/ml程度になると)、当該粒子が空気中に舞いやすくハンドリング性に劣る。かさ比重が大きすぎると、硬すぎるため使用感が悪くなる。
【0035】
かさ比重は、以下のとおり平均見掛比重として算出することができる。パウダテスタ(ホソカワミクロン株式会社製、TYPE PT−E)を用いて、ゆるみ見掛比重及び固め見掛比重の測定を行い、下記式にて平均見掛比重を算出できる。ゆるみ見掛比重は、ふるいを振動させて、サンプルをシュートを通じ落下させ、規定の容器に受け、測定することによって得られる。固め見掛比重は、規定の容器にサンプルを入れ、一定の高さから規定回数落下させ、落下の衝撃で固めた後、測定することによって得られる。
平均見掛比重=(ゆるみ見掛比重+固め見掛比重)/2
【0036】
[生分解性]
本開示の多孔質セルロース粒子は、生分解性速度が10日以内に50重量%以上である。その生分解性速度は、10日以内に55重量%以上であることが好ましく、58重量%以上であることがより好ましい。本開示の多孔質セルロース粒子をスクラブ剤として使用した後、排水として河川や海へ流入した場合に、スクラブ剤への微量の有害化学物質等の汚染物質の吸着を防ぐと共に、さらに河川や海で生息する生物(サンゴ、貝、プランクトン等)が汚染物質を吸着したスクラブ剤を飲み込む可能性を小さくできる結果、汚染物質による生態系への影響を小さくできることから、生分解性速度はより高い方が好ましい。したがって、上限値は特に限定されないが、生態系への影響を十分に小さくできるため、上限値としては例えば、10日以内に90重量%以下、または85重量%以下であってもよい。生分解性速度が10日以内に50重量%以上であると、天然の果物の種子及びヤシ殻等と同程度の生分解性を有することとなり、微生物や光によって自然に分解される。生分解性速度が50重量%未満であると、河川や海洋に長期間留まることとなり、スクラブ剤が環境中の有害化学物質等の汚染物質を吸着する結果、その汚染物質による生態系への影響が大きくなる。
【0037】
生分解性速度は、JIS K6950に準じた活性汚泥を使用する方法により測定することができる。
【0038】
[多孔質セルロース粒子の製造]
本開示の多孔質セルロース粒子は、以下の製造方法により得られる。
およそ粒子径120μm以上1,000μm以下でありアセチル置換度2.0以上の酢酸セルロースフレークを、有機溶媒/水混合溶液に浸けて膨潤させると共に、過剰量の強塩基によりけん化する工程(I)、前記けん化した酢酸セルロースフレークを中和剤により中和する工程(II)、前記中和の後、得られるセルロース粒子を含むスラリーを固液分離して固相のセルロース粒子を得る工程(III)、前記セルロース粒子を水で洗浄した後、有機溶媒で洗浄する工程(IV)、さらに、前記洗浄したセルロース粒子を乾燥する工程(V)を含むものである。
【0039】
(けん化工程(I))
粒子径120μm以上1,000μm以下でありアセチル置換度2.0以上の酢酸セルロースフレークを、有機溶媒/水混合溶液に浸けて膨潤させると共に、過剰量の強塩基によりけん化する工程(I)について詳述する。なお、けん化は、脱アセチル化と言い換えることができる。
【0040】
酢酸セルロースフレークの粒子径は120μm以上1,000μm以下であることが好ましく、さらに、120μm以上900μm以下、120μm以上800μm以下、120μm以上700μm以下、120μm以上650μm以下の順により好ましい。
【0041】
酢酸セルロースフレークは、機械粉砕することにより、粒子径を120μm以上1,000μm以下に調整してもよい。機械粉砕は、慣用の粉砕機によって行うことができる。粉砕機としては、例えば、サンプルミル、ハンマーミル、ターボミル、アトマイザー、カッターミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ジェットミル及びピンミルなどを用いることができる。これらの中でも、ピンミルを用いることが好ましい。また、凍結粉砕、常温での乾式粉砕、または湿式粉砕でもよい。
【0042】
本開示の多孔質セルロース粒子の製造に用いる酢酸セルロースフレークをアセチル置換度で分類すれば、セルローストリアセテート(アセチル置換度(DS):2.6以上3以下)及びセルロースジアセテート(アセチル置換度(DS):2.0以上2.6未満)を用いることができ、具体的には、例えば、セルローストリアセテートとしては、LT−55((株)ダイセル製)等、セルロースジアセテートとしては、L−50((株)ダイセル製)等を挙げることができる。
【0043】
酢酸セルロースフレークは、得られる多孔質セルロース粒子の比表面積をより高めることができる観点から、アセチル置換度がより高いセルローストリアセテートを用いることが好ましい。一方、けん化に要する時間を短くすることができ、生産性を高めることができる観点からは、アセチル置換度が比較的低いセルロースジアセテートを用いることが好ましい。
【0044】
けん化工程(I)において用いる有機溶媒/水混合溶液としては、酢酸セルロースフレークを膨潤させることができれば特に限定されないが、経済上安価であることから、イソプロピルアルコール/水混合溶液、アセトン/水混合溶液、エタノール/水混合溶液及びメタノール/水混合溶液等が挙げられる。これらの中でも、特に、酢酸セルロースフレークの膨潤性に優れることから、イソプロピルアルコール/水混合溶液を用いることが好ましい。
【0045】
これらの有機溶媒/水混合溶液の組成は、有機溶媒及び水がそれぞれ分離せず、混和すれば任意の比率とすることができ、限定されないが、膨潤性に優れることから、有機溶媒が有機溶媒及び水の合計重量に対し40重量%以上80重量%以下であることが好ましく、40重量%以上70重量%以下であることがより好ましく、40重量%以上60重量%以下であることがさらに好ましい。
【0046】
また、有機溶媒/水混合溶液の組成は、酢酸セルロースフレークのアセチル置換度によって膨潤性が変わるため、その置換度に応じ、適宜調整することが好ましい。例えば、酢酸セルロースフレークのアセチル置換度が2.0以上2.6未満のセルロースジアセテートの場合、有機溶媒/水混合溶液の組成は、有機溶媒が有機溶媒及び水の合計重量に対し20重量%以上80重量%以下が好ましく、35重量%以上70重量%以下がより好ましく、35重量%以上60重量%以下がさらに好ましく、37重量%以上52重量%以下であることが最も好ましい。また、酢酸セルロースフレークのアセチル置換度が2.6以上3以下のセルローストリアセテートの場合、50重量%以上80重量%以下であることが好ましく、55重量%以上75重量%以下であることがより好ましい。
【0047】
けん化工程(I)において有機溶媒/水混合溶液における水の量は、特に限定されないが、酢酸セルロースフレーク100重量部に対し、800重量部以上1,000重量部以下であることが好ましい。
【0048】
酢酸セルロースフレークを有機溶媒/水混合溶液に浸けて、酢酸セルロースフレークが膨潤したことは、目視により判断することができる。酢酸セルロースフレークが有機溶媒を吸い込んだ不透明な縣濁液となった状態が膨潤である。なお、高分子化合物の溶解とはフローリーらが提唱している通り、高分子鎖自由に伸張できる透明な溶液となった状態が溶解である。ここで、酢酸セルロースフレークを膨潤させるためには、酢酸セルロースフレークを有機溶媒/水混合溶液に、室温(23℃)で60分以上浸けることが好ましい。時間の上限値としては、特に限定されないが、あまり長すぎると酢酸セルロースが溶解してしまう場合があるため、例えば、室温の場合3時間以下である。
【0049】
このように、酢酸セルロースフレークを十分に膨潤させることによって、酢酸セルロースの内部深くまで、後述の強塩基が迅速、均一に浸透し、酢酸セルロースの内部深くにおいて、けん化が容易に進行する。その結果、後の乾燥工程(V)においても述べるが、セルロース粒子内部深くに含まれる有機溶媒及び水が、セルロース粒子内から抜け出すことにより、多孔質セルロース粒子の多孔質部分が形成され、比表面積が大きな多孔質セルロース粒子を得ることができる。
【0050】
けん化工程(I)において用いる過剰量の強塩基について述べる。強塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム又はこれらの混合物等が挙げられ、これらの強塩基は、水溶液として用いることができる。強塩基としては、経済性の観点から、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。水酸化ナトリウム水溶液は、例えば、2重量%以上6重量%以下のものを用いることができる。
【0051】
ここで、過剰量とは、酢酸セルロースフレーク中に存在するアセチル基のモル数に対して2倍当量を超えた当量をいう。過剰量の水酸化ナトリウムとしては、酢酸セルロースフレーク中に存在するアセチル基のモル数に対して2倍当量を超えたナトリウムイオンを含むような量をいう。好ましくは、5倍当量以上であることが好ましい。
【0052】
酢酸セルロースフレークとしてセルロースジアセテートを用いる場合、4重量%の水酸化ナトリウムの水溶液であれば、酢酸セルロースフレーク100重量部に対し、150重量部程度用いることができる。
【0053】
けん化工程(I)においては、酢酸セルロースフレークの膨潤とけん化が完了すれば、有機溶媒/水混合溶液、過剰量の強塩基及び酢酸セルロースフレークを反応器に入れる順序は限定されない。酢酸セルロースフレークを、有機溶媒/水混合溶液に浸けて十分に膨潤させた後、過剰量の強塩基を添加してけん化させてもよいし、予め有機溶媒/水混合溶液と過剰量の強塩基を混合した中に酢酸セルロースフレークを添加してもよい。更には、酢酸セルロースフレークを、有機溶媒/水混合溶液に浸けると同時または間を開けず過剰量の強塩基を添加してもよい。これらの中でも、予め有機溶媒/水混合溶液と過剰量の強塩基を混合した中に酢酸セルロースフレークを添加することが好ましい。なお、いずれの場合においても、反応器内で撹拌混合することが好ましい。
【0054】
ここで、けん化とは、酢酸セルロースフレークのアセチル置換度が実質的に0となることをいう。また、酢酸セルロースフレークのアセチル置換度は、赤外線(IR)吸収スペクトル1740から1750cm
−1のカルボキシル基に起因する吸収強度を測定し、定量的に評価することにより求められる。このとき、赤外線(IR)吸収スペクトルの測定方法の中でも特に、固体状の酢酸セルロースをATR法などを用いるのが好ましい。
【0055】
けん化工程(I)において、酢酸セルロースフレークを過剰量の強塩基によりけん化する際の反応系内の温度としては常温で行うことができる。ここで、常温とは30℃程度をいう。すなわち、本開示においては、けん化工程(I)における反応による発熱が少ないがないため、けん化工程(I)での反応系の温度上昇は僅かである。
【0056】
また、酢酸セルロースフレークを、有機溶媒/水混合溶液に浸けて十分に膨潤させた後、過剰量の強塩基を添加してけん化する場合に、有機溶媒/水混合溶液に浸けて十分に膨潤させる際の系内の温度は、20℃以上40℃以下の温度であってよく、室温(23℃)であってよい。
【0057】
酢酸セルロースフレークを過剰量の強塩基によりけん化する時間としては、けん化が完了すれば特に限定されない。セルローストリアセテート(アセチル置換度(DS):2.6以上3以下)の場合、常温下においては、例えば、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、2時間以上24時間程度でけん化を完了することができる。セルロースジアセテート(アセチル置換度(DS):2.0以上2.6未満)の場合、常温下においては、例えば、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、6時間以上12時間程度でけん化を完了することができる。酢酸セルロースフレークの置換度が高い程、けん化が完了するまでの時間が長くなる。
【0058】
(中和工程(II))
前記けん化した酢酸セルロースフレークを中和剤により中和する工程(II)について詳述する。
【0059】
中和工程(II)においては、けん化工程(I)で、酢酸セルロースフレークのけん化が完了した後、酢酸セルロースに有機溶媒/水混合溶液及び強塩基を添加した反応液中に、中和剤を添加することにより、中和反応を開始し、その反応液を中和する。中和は、その反応液のpHをできる限りpH7に近づけるようにする。
【0060】
中和剤としては、酢酸、プロピオン酸、塩酸等の酸が挙げられる。また、酢酸としては、2.9重量%から3.5重量%程度のものを用いることが好ましい。
【0061】
中和剤の量は、反応液を中和することができる量を用いればよく、pHが7になるように添加する。
【0062】
中和工程(II)において、反応系内の温度は、10℃以上40℃以下に調整することが好ましく、20℃以上30℃以下に調整することが好ましい。中和熱により発熱するので40℃以下に制御するのが好ましい。
【0063】
中和工程(II)における中和反応の時間は、中和反応が十分に進行すれば、特に限定されないが、例えば、10分以上30分以下とすることが好ましい。
【0064】
(固液分離工程(III))
前記中和の後、得られるセルロース粒子を含むスラリーを固液分離して固相のセルロース粒子を得る工程(III)について詳述する。
【0065】
前記中和の後、酢酸セルロースフレークは、けん化によりセルロースとなり、中和反応を行った反応液は、セルロース粒子を含むスラリーとなる。このセルロース粒子を含むスラリーを固液分離することによって固相を構成するセルロース粒子を得ることができる。ここで、固液分離は、遠心脱液機を用いても行うことができる。例えば、GEAウエストファリアセパレータージャパン(株)の固液分離装置などが利用できる。遠心脱離機の条件としては、通常の粒子の遠心分離の操作条件に従い、回転数と分離時間を調整すればよい。
【0066】
(洗浄工程(IV))
前記セルロース粒子を水で洗浄した後、有機溶媒で洗浄する工程(IV)について詳述する。
【0067】
固液分離工程(III)によって得られるセルロース粒子を水で洗浄することにより、けん化に要した強塩基、中和に要した中和剤及びそれらが反応した塩などを洗い流すことができる。その水による洗浄は、具体的には、例えば、セルロース粒子100重量部に対し、水4,000重量部以上5,000重量部以下を混合し、遠心脱液機によって固液分離することにより行うことができる。セルロース粒子と水との混合から遠心脱液機による固液分離までを1回とした場合、特に中和塩などが残留しないようにすることができれば、回数は特に限定されないが、中和の結果生成した塩、例えば酢酸ナトリウムを十分に洗い流すため、合計で3回以上行うことが好ましい。
【0068】
セルロース粒子の洗浄に用いる有機溶媒としては、有機溶媒が含まれていれば、有機溶媒単独であってもよく、有機溶媒/水混合溶液であってもよい。また、有機溶媒/水混合溶液は、けん化工程(I)において用いる有機溶媒/水混合溶液と同じものであっても異なるものであってもよい。この有機溶媒としては、イソプロピルアルコール、アセトン、等が挙げられるが、粒子が二次凝集を防ぐ意味で、親油性溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールを用いることが好ましい。
【0069】
以上のとおり、セルロース粒子を水で洗浄した後、さらに有機溶媒で洗浄することにより、セルロース粒子内の水素結合の生成を防ぐこと及び容易に乾燥することができ、後の乾燥工程において、二次凝集を防止できる。
【0070】
有機溶媒/水混合溶液を用いる場合、その組成は、有機溶媒及び水がそれぞれ分離せず、混和すれば任意の比率のものを用いることができ、特に限定されないが、溶解度などを考慮して、有機溶媒が有機溶媒及び水の合計重量に対し5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、7重量%以上15重量%以下であることがより好ましい。
【0071】
その有機溶媒による洗浄は、具体的には、水による洗浄と同様に、例えば、セルロース粒子100重量部に対し、有機溶媒300重量部以上600重量部以下を混合し、遠心脱液機によって固液分離することにより行うことができる。セルロース粒子と有機溶媒との混合から遠心脱液機による固液分離までを1回とした場合、セルロース粒子が凝集しないようにすることができれば、回数は特に限定されないが、有機溶媒での置換を確実にするため、合計で1回以上3回以下行うことが好ましい。
【0072】
(乾燥工程(V))
前記洗浄したセルロース粒子を乾燥する工程(V)について詳述する。
【0073】
前記洗浄したセルロース粒子を乾燥することにより、セルロース粒子内部深くに含まれる有機溶媒及び水が、セルロース粒子内から抜け出し、多孔質セルロース粒子の多孔質部分が形成され、比表面積が大きな多孔質セルロース粒子となる。
【0074】
前記洗浄したセルロース粒子の乾燥方法としては、セルロース粒子の多孔質を形成することができれば、特に限定されないが、減圧乾燥法を用いることが好ましい。減圧乾燥法における乾燥圧力としては、例えば、10kPa・A程度であればよい。減圧乾燥法に使用する乾燥機としては、例えば、ナウター型乾燥機、コニカル乾燥機、パドル乾燥機、棚型乾燥機、振動流動乾燥機及びバンド通風乾燥機などが挙げられる。
【0075】
最終的に得られる多孔質セルロース粒子は、原料として用いる酢酸セルロースフレークのメジアン径に対して、ある程度小さくなる。これは、けん化工程(I)や中和工程(II)等各工程における撹拌等によるせん断衝突、溶解、またはけん化工程(I)におけるけん化による化学反応に伴うものである。
【0076】
得られる多孔質セルロース粒子の内部には、酢酸セルロースフレークに基づくアセチル基が一定量残る。これは、本開示の多孔質セルロース粒子の製造は上述のとおり、酢酸セルロースフレーク原料を溶媒で膨潤させたのち強塩基を用いてけん化させる不均一系反応を用いるものであって、特にその内部は、けん化が進行しにくくアセチル基が残存しやすくなるためである。
【0077】
また、得られる多孔質セルロース粒子は、不定形状をとる。得られる多孔質セルロース粒子は、不定形状をとるため、洗浄力に優れる。不定形状をとるためには、上述のとおり、酢酸セルロースフレーク原料を機械粉砕することが好ましい。なお、不定形状とは、多孔質セルロース粒子表面の形状をいうものであり、その粒子表面に凹凸のない真球状ではなく、凹凸がある形状をいう。
【0078】
[皮膚洗浄用組成物]
本開示の皮膚洗浄用組成物は前記スクラブ剤を含有する。皮膚洗浄用組成物は、身体、顔、頭皮等の皮膚を洗浄するための組成物をいう。皮膚洗浄用組成物としては、洗顔剤組成物、頭皮洗浄用組成物(シャンプー)及び身体洗浄用組成物(ボディシャンプー)等が挙げられる。
【0079】
皮膚洗浄用組成物中における前記スクラブ剤の含有量としては、2重量%以上20重量%以下が好ましく、3重量%以上15重量%以下がより好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがさらに好ましい。この範囲にあることにより、その皮膚洗浄用組成物中において、スクラブ剤が良好な分散性を示し、その使用時に十分な洗浄力と使用感を両立することが可能である。
【0080】
本開示の皮膚洗浄用組成物は、水溶液、乳液、懸濁液等の液剤;ゲル及びクリーム等の半固形剤;粉末、顆粒及び固形等の固形剤のいずれの形態をとってもよい。
【0081】
本開示の皮膚洗浄用組成物のスクラブ剤以外の成分としては、従来の皮膚洗浄用組成物に含まれるものを採用することができるが、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン界面活性剤等の界面活性剤;グリセリン等の多価アルコール;植物油等の油脂類;スクワラン等の炭化水素類;ラウリン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール等の高級アルコール;鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン等のシリコーン;防腐剤;増粘剤;金属イオン封鎖剤;水溶性高分子等の高分子;紫外線吸収剤;紫外線遮断剤;ヒアルロン酸やアミノ酸等の保湿剤;香料;pH調整剤;パール化剤;乾燥剤;ビタミン類;皮膚賦活剤;血行促進剤;常在菌コントロール剤;活性酸素消去剤;抗炎症剤;美白剤;殺菌剤;及び生理活性成分等を含有させることもできる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0083】
後述する実施例及び比較例に記載の各物性は、以下の方法で評価した。
【0084】
<メジアン径>
メジアン径は、動的光散乱法を用いて測定した。まず、純水を用いサンプルを100ppm濃度とし、超音波振動装置を用いて純水懸濁液とした。その後、レーザー回折法(株式会社セイシン企業製「SKレーザーマイクロンサイザーLMS−2000e」、超音波処理1分、屈折率1.52)により、体積頻度粒度分布を測定することによりメジアン径を測定した。ここでいうメジアン径は、粒度分布における散乱強度の積算50%に対応する粒子径の値(μm)とした。
【0085】
<比表面積>
予め試料をMasterPrep脱気装置(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社)を用いて、温度100℃下にて約1時間の間、加熱真空排気した後、比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製「Autosorb iQ Station 2」)を用いて、窒素ガス吸着法により相対圧0.05〜0.28の範囲においてBET式(1)を求めた。
【0086】
【数1】
ここで、Pは吸着平衡における吸着質の気体の圧力、P
0は吸着平衡における吸着質の飽和蒸気圧、Wは吸着平衡圧Pにおける吸着量、Wmは単分子吸着量、CはBET定数である。x軸を相対圧力P
0/P、y軸を1/[W・{(P
0/P)−1}]としてプロット(BETプロット)すると線形となる。このプロットは7点行ったものであり、その直線の勾配と切片の和の逆数から単分子吸着量Wmを得た。
【0087】
次いで、比表面積Ssは下記式により求まる。
Ss=(Wm・N・Acs・M)/w
ここで、Nはアボガドロ数、Mは分子量、Acsは吸着断面積、wはサンプル重量である。窒素ガス分子の吸着断面積Acsを0.162nm
2(16.2Å
2)として、固体試料1gあたりの表面積である比表面積を求めた。
【0088】
<かさ比重(平均見掛比重)>
かさ比重は、以下のとおり平均見掛比重として算出した。パウダテスタ(ホソカワミクロン株式会社製、TYPE PT−E)を用いて、ゆるみ見掛比重及び固め見掛比重の測定を行い、平均見掛比重を算出した。ゆるみ見掛比重は、ふるいを振動させて、サンプルをシュートを通じ落下させ、規定の容器に受け、測定した。固め見掛比重は、規定の容器にサンプルを入れ、一定の高さから規定回数落下させ、落下の衝撃で固めた後、測定した。そして、平均見掛比重は下記式にて算出した。
平均見掛比重=(ゆるみ見掛比重+固め見掛比重)/2
【0089】
<生分解性速度>
生分解性速度は、JIS K6950に準じた活性汚泥を使用する方法により測定した。
活性汚泥は下水処理場から入手した。その活性汚泥を1時間程度放置して得られる上澄み液(活性汚泥濃度:約360ppm)を1培養瓶あたり約300mL使用した。サンプル0.03gを当該上澄み液中で撹拌した時点を測定開始とし、その24時間後から1回目の測定をし、さらにその後24時間おきに21回測定した。測定開始から240時間後までを10日以内とする。測定の詳細は以下のとおりである。大倉電気(株)製クーロメータ OM3001を用いて、各培養瓶中の生物化学的酸素要求量(BOD)を測定し、各試料の化学組成を元に生分解性(%)を算出した。
【0090】
<固形分濃度>
固形分濃度は、加熱重量減法で求めた。すなわち、次のようにして測定した。試料をアルミ皿に約10g秤量し(W2)、60℃の減圧乾燥機で3時間乾燥し、デシケーター中で室温まで冷却した後に秤量(W3)し、下記式に従って固形分濃度を求めることができる。
固形分濃度(%)=(W3−W1)/(W2−W1)×100
W1はアルミ皿の重量(g)、W2は乾燥前の試料を入れたアルミ皿の重量(g)、W3は乾燥後の試料を入れたアルミ皿の重量(g)
【0091】
(実施例1)
反応器に、イソプロピルアルコール(IPA)351.4重量部及び純水411.1重量部(IPA濃度46.08重量%)、並びに48重量%の水酸化ナトリウム水溶液74.7重量部を入れた。さらに、酢酸セルロースフレークとして、(メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレーク)50重量部を添加し、反応器の設定温度を30℃にして6時間撹拌混合を行った。
【0092】
次に、酢酸26.9重量部を反応器に添加し、反応器の温度を40℃以下に制御して、30分間撹拌混合を行った。得られた反応液は、スラリー状になっていた。このスラリー状の反応液を遠心脱液機を用いて、固相のセルロース粒子を分離した。分離したセルロース粒子は516重量部であり、その固形分濃度は約12重量%であった。続いて、得られたセルロース粒子(湿粉;脱液後のケーキ)258重量部と水500重量部とを混合し、遠心脱離機を用いて、固相のセルロース粒子を分離することによって、セルロース粒子を水で洗浄した。同様にセルロース粒子をさらに3回水で洗浄した。
【0093】
その後、セルロース粒子(湿粉;脱液後のケーキ)285重量部とイソプロピルアルコール(IPA)500重量部とを混合し、遠心脱離機を用いて、固相のセルロース粒子を分離することによって、セルロース粒子をイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。同様にセルロース粒子をさらにもう1回イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄した。最後に、セルロース粒子をコニカル乾燥機によって、フルバキューム80℃の条件下で、48時間乾燥して、多孔質セルロース粒子を得た。得られた多孔質セルロース粒子について、メジアン径、比表面積、かさ比重及び生分解性速度を求めた。結果は表1に示す。なお、実施例1により得られた多孔質セルロース粒子のX線回析で測定したセルロースの結晶構造はセルロースII型結晶構造であった。
【0094】
(実施例2)
酢酸セルロースフレークとして、メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークに代えて、メジアン径277μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークを用いた以外は実施例1と同様にして、多孔質セルロース粒子を得た。得られた多孔質セルロース粒子について、メジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。なお、得られた多孔質セルロース粒子のX線回析で測定したセルロースの結晶構造はセルロースII型結晶構造であった。
【0095】
(実施例3)
酢酸セルロースフレークとして、メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークに代えて、メジアン径400μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークを用いた以外は実施例1と同様にして、多孔質セルロース粒子を得た。得られた多孔質セルロース粒子について、メジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。なお、得られた多孔質セルロース粒子のX線回析で測定したセルロースの結晶構造はセルロースII型結晶構造であった。
【0096】
(実施例4)
酢酸セルロースフレークとして、メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークに代えて、メジアン径700μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークを用いた以外は実施例1と同様にして、多孔質セルロース粒子を得た。得られた多孔質セルロース粒子について、メジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。なお、得られた多孔質セルロース粒子のX線回析で測定したセルロースの結晶構造はセルロースII型結晶構造であった。
【0097】
(比較例1)
セルロース粒子、旭化成株式会社セオラス(登録商標)FD101について、実施例1と同様にメジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。この粒子は結構構造I型であった。結果は表1に示す。
【0098】
(比較例2)
ポリエチレン粒子、DSP五協フード&ケミカル株式会社MSC50PCについて、実施例1と同様にメジアン径を求めた。結果は表1に示す。
【0099】
(比較例3)
セルロース粒子、レンゴー株式会社ビスコパールミニ(登録商標)について、実施例1と同様にメジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。この粒子は結構構造II型であった。結果は表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
(実施例5)
(1)スクラブ剤を含有する洗浄用組成物の調製
イオン交換水に、ラウリル酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、グリセリン、プロピレングリコール及びヒドロキシプロピルセルロースを配合し、60℃で加熱溶解した。その後、ジステアリン酸エチレングリコールを添加し、さらに、スクラブ剤として実施例2で製造された多孔質セルロース粒子を添加し、均一に混合した。これを室温まで冷却し、スクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得た。各配合成分の配合量は、表2に示すとおりである。
【0102】
(2)使用感の評価
(1)で得られた洗浄用組成物について、下記の方法で使用感を評価した。
5人のパネリストが、それぞれ手の甲に少量の(1)で得られた洗浄用組成物を塗布し、指による摩擦洗浄を行った。その評価を下記の3段階で評価した。なお、5人中最も多かった評価を評価結果とした。その結果を表2に示す。
○:滑らかな感触と適度な刺激があり、心地よい。
△:刺激が強い傾向にあり、少し違和感がある。
×:刺激が強く、痛い。
【0103】
(3)洗浄力の評価
(1)で得られた洗浄用組成物について、下記の方法で洗浄力を評価した。
カーボンブラックで着色したモデル皮脂を手の甲に少量塗布し乾燥した後、(1)で得られた洗浄用組成物を塗布し、指による摩擦洗浄を行い、水洗した。さらに、乾燥後、手の甲に残ったモデル皮脂の度合いを光学顕微鏡で観察し、下記の3段階で評価した。その結果を表2に示す。
○:汚れがほぼ全量除去されており、洗浄力が高い。
△:汚れが7割程度除去できており、洗浄力は中程度。
×:汚れ除去が不十分であり、洗浄力が低い。
【0104】
(実施例6)
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、実施例3で製造された多孔質セルロース粒子を用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0105】
(比較例4)
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、セルロース粒子、旭化成株式会社セオラス(登録商標)FD101を用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0106】
(比較例5)
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、ポリエチレン粒子、DSP五協フード&ケミカル株式会社MSP50PCを用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0107】
(比較例6)
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、セルロース粒子、レンゴー株式会社ビスコパールミニ(登録商標)を用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
表1に示すように、本開示の多孔質セルロース粒子は、材質をセルロースとするため、優れた生分解性を有する。そして、表2に示すように、所定の粒子径、比表面積、及びかさ比重を有する実施例2及び3の多孔質セルロース粒子をスクラブ剤として含有する洗浄用組成物(実施例5及び6)は、いずれも滑らかな感触と適度な刺激があり使用感に優れると共に、高い洗浄力を備えることが確認された。これに対し、粒子径、比表面積及びかさ比重のいずれも不十分である比較例1の多孔質セルロース粒子をスクラブ剤として含有する洗浄用組成物(比較例4)は、使用感として違和感があるものであり、洗浄力も低いことが確認された。比較例2のポリエチレン粒子をスクラブ剤として含有する洗浄用組成物(比較例5)は、適度な刺激があり心地よいが、洗浄力は中程度であり劣ることが確認された。かさ比重が低い比較例3の多孔質セルロース粒子をスクラブ剤として含有する洗浄用組成物(比較例6)も、適度な刺激があり心地よいが、洗浄力は中程度であり劣ることが確認された。